(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049867
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156353
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA25
3E084AA26
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案する。
【解決手段】本発明のポンプ式吐出器100は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップ10と、キャップ10により口部に保持されステム7aが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口11dを有するとともにステム7aに連結するヘッドと、を備え、ヘッドは、キャップ10に向かうにつれてステム7aの中心軸線から離れる向きに傾く傾斜部11gを備え、キャップ10は、ヘッドをキャップ10に向けて移動させた際、傾斜部11gによって中心軸線Oに近づく向きに撓む弾性片10eを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッドは、前記キャップに向かうにつれて前記ステムの中心軸線から離れる向きに傾く傾斜部を備え、
前記キャップは、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記傾斜部によって前記中心軸線に近づく向きに撓む弾性片を有するポンプ式吐出器。
【請求項2】
前記キャップは、前記弾性片を複数備えるとともに隣り合う該弾性片の間に隙間を有するものであり、
前記ヘッドは、前記隙間に配置され、前記弾性片が前記中心軸線に近づく向きに撓んで該隙間の間隔が狭くなることによって弾性変形する弾性部を備える請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項3】
前記ヘッドは、ヘッド本体とリング部材を含んで構成され、
前記ヘッド本体は、前記吐出口と周壁とを備え、
前記リング部材は、前記周壁の内側に配置されて該周壁に保持されるとともに前記弾性部を有する環状壁を備える請求項2に記載のポンプ式吐出器。
【請求項4】
前記弾性部は、一端部と他端部が前記周壁に連結して該周壁との間で環状をなすとともに中間部が前記隙間に配置される形態をなす請求項3に記載のポンプ式吐出器。
【請求項5】
前記キャップは、前記中心軸線を周回する向きに延在して前記弾性片を取り囲むキャップ側周壁を有する請求項1~4の何れか一項に記載のポンプ式吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式吐出器として、容器の口部に装着されるキャップと、キャップにより口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、ステムに連結するヘッドとを備え、ヘッドをキャップに向けて移動させることによって容器内の内容液をヘッドの吐出口から吐出させるものが既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなポンプ式吐出器の内部には、特許文献1に示されているように、キャップに向けて移動させたヘッドを初期位置に復帰させるためにコイルスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのようなポンプ式吐出器は、大部分の部材は合成樹脂製であるものの、コイルスプリングは金属製である。このため使用後に廃棄するにあたって、このままの状態では樹脂品としてリサイクルすることができない。また一般にこの種のポンプ式吐出器では、通常の使用時において部材が外れてしまうことを避けるべく、例えば嵌合等によって部材同士は強固に固定されている。従って、ポンプ式吐出器を分解してコイルスプリングと他の部材とに分別するにも手間を要することとなる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッドは、前記キャップに向かうにつれて前記ステムの中心軸線から離れる向きに傾く傾斜部を備え、
前記キャップは、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記傾斜部によって前記中心軸線に近づく向きに撓む弾性片を有するポンプ式吐出器である。
【0008】
前記キャップは、前記弾性片を複数備えるとともに隣り合う該弾性片の間に隙間を有するものであり、
前記ヘッドは、前記隙間に配置され、前記弾性片が前記中心軸線に近づく向きに撓んで該隙間の間隔が狭くなることによって弾性変形する弾性部を備えることが好ましい。
【0009】
前記ヘッドは、ヘッド本体とリング部材を含んで構成され、
前記ヘッド本体は、前記吐出口と周壁とを備え、
前記リング部材は、前記周壁の内側に配置されて該周壁に保持されるとともに前記弾性部を有する環状壁を備えることが好ましい。
【0010】
前記弾性部は、一端部と他端部が前記周壁に連結して該周壁との間で環状をなすとともに中間部が前記隙間に配置される形態をなすことが好ましい。
【0011】
前記キャップは、前記中心軸線を周回する向きに延在して前記弾性片を取り囲むキャップ側周壁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポンプ式吐出器によれば、ヘッドをキャップに向けて移動させた際、傾斜部によって弾性片が撓むため、撓んだ弾性片が復元することによってヘッドを初期位置に復帰させることができる。すなわち本発明のポンプ式吐出器は、金属製のコイルスプリングを用いずとも従来のものと同じように使用することができ、また廃棄にあたっては、これを分解せずとも樹脂品としてリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態を示した図であって、(a)は側面視での断面図であり、(b)はA-Aに沿う断面図である。
【
図2】
図1に示したポンプ式吐出器においてヘッドを押圧した状態を示した図であって、(a)は側面視での断面図であり、(b)はB-Bに沿う断面図である。
【
図3】ヘッドを押圧する前の弾性片と弾性部の状態を示した図であって、(a)はキャップを単独で示した斜視図であり、(b)はリング部材を単独で示した斜視図である。
【
図4】ヘッドを押圧した後の弾性片と弾性部の状態を示した図であって、(a)はキャップを単独で示した斜視図であり、(b)はリング部材を単独で示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した中心軸線O(後述するステム7aの中心軸線)に沿う向きであって、パイプ4が位置する側が「下」であり、ヘッド本体11が位置する側が「上」である。また径方向とは、中心軸線Oに対して垂直な面内で中心軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で中心軸線Oを中心として周回する方向である。
【0015】
本実施形態のポンプ式吐出器100は、ボトル状をなす不図示の容器の口部に装着して使用される。ポンプ式吐出器100で吐出させる内容液は、例えばシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等である。
【0016】
ポンプ式吐出器100は、シリンダー1、弁部材2、パイプ4、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、ホルダー8、パッキン9、キャップ10、ヘッド本体11、リング部材12で構成されている。ここでシリンダー1、弁部材2、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、及びホルダー8は、本明細書等における「ポンプ」を構成する部材であり、ヘッド本体11、及びリング部材12は、本明細書等における「ヘッド」を構成する部材である。また上記の部材のうち、弁部材2、ピストン6、パッキン9、リング部材12は、弾性を有する軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン(LDPE、HDPE、発泡PE))により形成されていて、その他の部材は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリアセタール(POM)樹脂等)で形成されている。そしてポンプ式吐出器100を構成する各部材は、基本的に中心軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0017】
シリンダー1は、円板状をなしていて中央部が上方に突出する底壁部1aと、底壁部1aの外縁部から起立する円筒状の筒壁部1bと、筒壁部1bの上部から径方向外側に向けて延在するフランジ壁1cを備えている。底壁部1aにおける中央部の突出する部位には、貫通孔(吸込口1d)が設けられている。また底壁部1aの下面には、吸込口1dを取り囲んで下方に向けて延在し、パイプ4を保持する筒状の保持筒1eが設けられている。そして筒壁部1bには、貫通孔(通気口1f)が設けられている。
【0018】
弁部材2は、基部2aと、吸込口1dを覆って底壁部1aの上面に着座する弁体部2bと、基部2aと弁体部2bとを連結する弾性変形可能な連結片2cとを備えている。弁部材2は逆止弁として機能するものであって、シリンダー1内が減圧状態になると、吸込口1dを閉鎖していた弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dを開放させることができる。
【0019】
基部2aは、本実施形態では有蓋筒状をなしていて、吸込口1dを通過した内容液が通過する不図示の開口を備えている。基部2aは、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるものであり、これにより弁部材2は、シリンダー1内で保持される。
【0020】
パイプ4は、中空状をなすものであって、上端部は保持筒1eに挿入されてこれに嵌合保持されている。
【0021】
内部部材5は、シリンダー1の内部に配置され、シリンダー1に対して上下動する部材である。内部部材5は、円筒状をなす連結筒5aと、連結筒5aの下端部を閉鎖するとともに径方向外側に延在する底部5bとを備えている。また連結筒5aには、これを貫通する孔(連通口5c)が設けられていて、底部5bの上面には、連結筒5aとの連結部よりも径方向外側に位置する環状部5dが設けられている。
【0022】
ピストン6は、連結筒5aに挿通されて底部5bの上方に配置される。本実施形態のピストン6は、円環状の基部6aを備えている。基部6aの外縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する外側摺動片6bが設けられている。外側摺動片6bは、筒壁部1bの内周面に対して摺動可能に液密に当接するものである。そして基部6aの内縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する内側摺動片6cが設けられている。内側摺動片6cは、その下部は環状部5dの内周面に対して摺動可能に液密に当接し、その上部は筒状部材7における後述する拡径部7bの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。
【0023】
筒状部材7は、全体的に筒状をなす部材である。筒状部材7は、円筒状をなすステム7aと、ステム7aの下端部に連結するとともにステム7aよりも大径になる拡径部7bを備えている。ステム7aに連結筒5aが挿入されると両者は嵌合されるため、内部部材5と筒状部材7は、シリンダー1に対して一体的に移動する。
【0024】
ホルダー8は、ステム7aの径方向外側に位置する部位と拡径部7bの径方向外側に位置する部位を持ち、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるホルダー基部8aを備えている。ホルダー基部8aの上端部には、径方向外側に向けて延在するフランジ8bが設けられている。ホルダー8によって、内部部材5、ピストン6、筒状部材7のシリンダー1からの抜け出しを防止している。
【0025】
パッキン9は、円環板状をなすものであって、シリンダー1の筒壁部1bに挿通されてこれに嵌合保持されている。ポンプ式吐出器100を不図示の容器に取り付けた際、パッキン9は容器の口部とフランジ壁1cに挟持される。これにより、例えば容器を倒した際に内容液が口部から溢れる等の不具合が防止される。
【0026】
キャップ10は、円板状をなしていて中央部に貫通孔を備える天壁10aを備えている。天壁10aの外縁部には、下方に向けて延在する下側周壁10bと、上方に向けて延在する上側周壁10cが設けられている。なお上側周壁10cは、本明細書等における「キャップ側周壁」に相当する。下側周壁10bは、その内周面でフランジ壁1cを嵌合保持することが可能であって、これによりシリンダー1は、キャップ10に保持される。また下側周壁10bの内周面には、容器の口部に設けた雄ねじ部に螺合する雌ねじ部10dが設けられていて、雄ねじ部と雌ねじ部10dとを螺合させることにより、キャップ10を容器に装着することができる。
【0027】
またキャップ10は、天壁10aにおける貫通孔の径方向外側に、天壁10aの上面から上方に向けて延在し、径方向内側に向けて弾性変形可能な板状の弾性片10eを備えている。本実施形態の弾性片10eは、
図1(b)、
図3(a)に示すように平面視において円弧状をなすものであって、これらは、中心軸線Oを中心として周方向に隙間Sをあけて合計4つ設けられている。なお弾性片10eは、上側周壁10cの径方向内側に位置する。
【0028】
ヘッド本体11は、円筒状をなし、ステム7aに挿入されてこれに嵌合保持される筒状部11aを備えている。筒状部11aの上部には、平面視で円形状をなしていて上面が平坦に形作られ、内部に筒状部11aに通じる通路を有する頂部11bが設けられている。頂部11bには、円筒状をなしていて径方向外側に向けて延在し、頂部11bの内部に設けた通路に通じるノズル11cが設けられている。ノズル11cの先端には、ポンプ式吐出器100によって内容液が吐出される吐出口11dが設けられている。
【0029】
またヘッド本体11は、頂部11bの外縁部から下方に向けて延在する円筒状の周壁11eを備えている。周壁11eの径方向内側には、筒状部11aと周壁11eとを連結するリブ11fが設けられている。本実施形態のリブ11fは、中心軸線Oを中心として周方向に隙間をあけて合計4つ設けられている。リブ11fの下面には、
図1(a)に示すように下方に向かうにつれて中心軸線Oから離れる向きに傾く傾斜部11gと、傾斜部11gの径方向外側に位置して水平方向に延在する位置決め部11hが設けられている。また周壁11eの内周面において位置決め部11hの下方には、
図1(b)に示すように、径方向外側に向けて周壁11eの内周面を切り欠く位置決め凹部11jが設けられている。位置決め凹部11jは、中心軸線Oを中心として周方向に隙間をあけて合計2つ設けられている。
【0030】
リング部材12は、平面視で円環状になる環状壁12aを備えている。環状壁12aの外周面には、
図3(b)に示すように周方向に沿って延在するとともに径方向外側に突出する環状凸部12bと、位置決め凹部11jに入り込むように形作られた位置決め凸部12cが設けられている。リング部材12を周壁11eの内側に挿入すると、環状凸部12bが周壁11eの内周面に嵌合するため、リング部材12はヘッド本体11に対して脱落しない状態で保持される。また位置決め凹部11jに位置決め凸部12cが入り込むことにより、リング部材12はヘッド本体11に対して周方向に位置決め保持される。
【0031】
またリング部材12は、ポンプ式吐出器100として組み立てられた際、隣り合う弾性片10eの間に設けられた隙間Sに入り込む弾性部12dを備えている。弾性部12dは、隙間Sの間隔が狭くなることで周方向に押し潰されるように弾性変形するものであって、このように弾性変形することによって弾性片10eには、弾性部12dによる周方向に向かう復元力が作用する。本実施形態の弾性部12dは、図示したように平面視でU字状をなしていて、径方向内側に向けて延在する2つの直線状部分12eと、直線状部分12e同士をつなぐ円弧状部分12fとを備えている。弾性部12dの一端部12gと他端部12hは、環状壁12aの内周面に一体に連結している。また一端部12gと他端部12hの間に位置する弾性部12dの中間部(2つの直線状部分12eと円弧状部分12fで構成される部位)において、2つの直線状部分12eは、隙間Sの間に配置されている。本実施形態の弾性部12dは、中心軸線Oを中心として周方向に隙間をあけて合計4つ設けられている。なお
図1(b)に示すように、弾性部12dが隙間Sに入り込んだ状態において、リブ11fは平面視において弾性片10eと重なる位置にある。
【0032】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器100は、ヘッド本体11を上方から押圧すると、
図2(a)に示すように、ステム7aがヘッド本体11とともに押し下げられる(中心軸線Oに沿ってステム7aがキャップ10に向けて移動する)。またステム7aが押し下げられるに伴い、
図2に示すように連結筒5aを介して底部5bも下降するため、環状部5dと内側摺動片6cの下部との液密な当接が解除される。そしてヘッド本体11を更に押し下げていくと、筒状部材7及び内部部材5とともにピストン6も下降して、シリンダー1の内部が加圧される。このためシリンダー1内の内容液は、連通口5cを通過し、連結筒5a、ステム7a、筒状部11a、頂部11bの内部に設けた通路、及びノズル11cの内側を通って吐出口11dから外界に吐出される。なお、ヘッド本体11を押圧してピストン6が通気口1fよりも下降すると、不図示の容器は、通気口1fを介して外界と連通する。これにより容器に収容した内容液が減っても容器内は負圧化されず、容器がつぶれるように変形する不具合が防止される。
【0033】
またヘッド本体11が押し下げられると、リブ11fの傾斜部11gが弾性片10eの上端部に押圧力を付与するため、弾性片10eは径方向内側に撓んでいく。また弾性片10eが径方向内側に撓むと、
図4(a)に示すように隣り合う弾性片10eの隙間Sの間隔が狭くなる。このため、隙間Sに入り込んでいる弾性部12dは、
図4(b)に示すように、2つの直線状部分12e同士が近づくように弾性変形することになる。すなわち弾性片10eには、径方向内側に撓むことによる復元力に加え、弾性部12dが弾性変形することによる復元力が作用する。
【0034】
その後、ヘッド本体11への押圧を解除すると、撓んでいた弾性片10eは、それ自身の復元力と弾性変形した弾性部12dの復元力によって
図1(a)に示す状態に戻っていくため、弾性片10eに接触するリブ11fによってヘッド本体11は上昇し始める。これに伴い、環状部5dに対して内側摺動片6cの下部が再び液密に当接しつつ、ピストン6が内部部材5とともに上昇するため、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dが開放されて、パイプ4を通して容器内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0035】
このように本実施形態のポンプ式吐出器100によれば、金属製のコイルスプリングを用いずとも、内容液を吐出させた後のヘッド本体11を復帰させることができ、従来のポンプ式吐出器と同じように使用することができる。
【0036】
また弾性片10eの如きものは、上記のように径方向内側へ繰り返し撓ませるとへたりが生じることがある。一方、本実施形態のポンプ式吐出器100は、ヘッド本体11を復帰させるにあたり、弾性片10eが径方向内側に撓むことによる復元力だけでなく、弾性部12dが弾性変形することによる復元力も利用しているため、弾性部12dを利用せずに弾性片10eのみでヘッド本体11を復帰させるものに比して、へたりによる不具合を抑制することができる。特に本実施形態のポンプ式吐出器100によれば、弾性部12dの復元力は、弾性片10eが撓む方向(径方向)とは異なる方向(周方向)から作用するため、弾性部12dのへたりがより生じにくくなる。
【0037】
また本実施形態のポンプ式吐出器100は、上側周壁10cで弾性片10eを取り囲むことによって径方向外側から弾性片10eが視認できないようにしているため、見栄えの点でも優れている。特に本実施形態では、
図1(a)に示すようにヘッド本体11が上方へ復帰した状態において、上側周壁10cの上端部は周壁11eの下端部に対して上下方向で重なった位置にあり、弾性片10eを含めた内側の構造物が常時視認できない状態であるため、見栄えがより優れている。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0039】
例えば上述したポンプは一例であって、他の形式のポンプを採用した場合も本発明に含まれる。また弾性片10e及び弾性部12dの数は任意に設定可能であって、複数に限られず単数でもよい。
【0040】
本実施形態のヘッドは、ヘッド本体11とリング部材12で構成したが、リング部材12に設けた弾性部12dをヘッド本体11に設けてヘッド本体11のみでヘッドを構成してもよい。
【0041】
また弾性部12dも、図示したように平面視でU字状になるものに限られず、例えば円弧状部分12fが直線状になって平面視でコ字状になるものでもよいし、2つの直線状部分12eを湾曲させて全体として円弧状になるものでもよい。また円弧状部分12fを省略して2つの直線状部分12eのみで弾性部12dを構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:シリンダー
1a:底壁部
1b:筒壁部
1c:フランジ壁
1d:吸込口
1e:保持筒
1f:通気口
2:弁部材
2a:基部
2b:弁体部
2c:連結片
4:パイプ
5:内部部材
5a:連結筒
5b:底部
5c:連通口
5d:環状部
6:ピストン
6a:基部
6b:外側摺動片
6c:内側摺動片
7:筒状部材
7a:ステム
7b:拡径部
8:ホルダー
8a:ホルダー基部
8b:フランジ
9:パッキン
10:キャップ
10a:天壁
10b:下側周壁
10c:上側周壁
10d:雌ねじ部
10e:弾性片
11:ヘッド本体
11a:筒状部
11b:頂部
11c:ノズル
11d:吐出口
11e:周壁
11f:リブ
11g:傾斜部
11h:位置決め部
11j:位置決め凹部
12:リング部材
12a:環状壁
12b:環状凸部
12c:位置決め凸部
12d:弾性部
12e:直線状部分
12f:円弧状部分
12g:一端部
12h:他端部
100:ポンプ式吐出器
O:中心軸線
S:隙間