(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049868
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20240403BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20240403BHJP
B60K 23/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A01D69/00 302E
A01D67/00 G
B60K23/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156359
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】新福 勇一
(72)【発明者】
【氏名】水畑 竜也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 真史
【テーマコード(参考)】
2B076
3D036
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA05
2B076CD05
2B076DA04
2B076DA19
2B076EA01
2B076EB05
2B076EC23
2B076ED06
2B076ED09
3D036AA05
3D036AA09
3D036GH12
3D036GJ12
(57)【要約】
【課題】作業者や補助作業者の安全性を確保しつつ、作業部への動力伝達が意図せずに遮断されることを抑制する作業車両を提供する。
【解決手段】
コンバイン1は、走行部2と、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部と、作業者が乗車するための操縦部9と、操縦部9に作業者が位置していることを検知する作業者検知部32と、作業部の駆動を制御する駆動制御部55(制御部)と、を備える。作業部は、走行部2の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、走行部2の走行速度に拘わらず一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかの駆動モードで駆動可能に構成される。駆動制御部55は、作業部が定速モードであるとき、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知しない場合、作業部の駆動を牽制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、
作業部と、
作業者が乗車するための操縦部と、
前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知する作業者検知部と、
前記作業部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記作業部は、前記走行部の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、前記走行速度に拘わらず一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかの駆動モードで駆動可能に構成され、
前記制御部は、前記作業部が前記定速モードであるとき、前記作業者検知部によって前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しない場合、前記作業部の駆動を牽制することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記作業部が前記定速モードであって前記作業部の駆動が停止しているとき、前記作業者検知部によって前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知した場合に、前記作業部の駆動を開始することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記駆動モードの前記連動モード又は前記定速モードへの切り換えを操作するためのモード切換操作具を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記モード切換操作具は、前記作業部の駆動の開始を操作するための作業操作具に配置されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記作業者検知部は、前記操縦部に設けられた運転席に前記作業者が着座していることを検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しなくなってから、所定の第1設定時間を経過するまでは前記作業部を駆動し、前記所定の第1設定時間を経過すると前記作業部の駆動を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しなくなってから、所定の第1設定時間を経過するまでは前記作業部を駆動し、前記所定の第1設定時間を経過すると前記作業者が前記操縦部にいないことを示す警報を報知し、更に所定の第2設定時間を経過すると前記作業部の駆動を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインやトラクタ等の作業車両は、エンジンで発生した動力を走行部や作業部へと伝達するように構成されている。作業車両は、作業者の安全性を確保するために、作業部への動力の伝達を制御して、作業部の駆動を停止することがある。また、作業車両は、作業者が乗車する操縦部を備えていて、操縦部には、作業車両の走行や作業を作業者が操作するための各種操作具が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1の乗用型作業機の運転制御装置は、動力取出装置の動力伝達を接合・遮断する電気式アクチュエータと、作業者の座席への着座の有無を検出する着座スイッチと、電気式アクチュエータのオン・オフ操作が可能なPTOスイッチと、電気式アクチュエータを、PTOスイッチの操作に応じてオン・オフ可能な状態とオフロック状態とに切り換える状態切換手段とを備えている。状態切換手段は、着座スイッチが離座を検出し、且つPTOスイッチが電気式アクチュエータのオン操作側へ操作されたとき、電気式アクチュエータをオフロック状態に切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乗用型作業機のような従来の作業車両では、着座スイッチがオフの場合に、電気式アクチュエータをオフロック状態に切り換えて、作業部への動力伝達を遮断している。しかしながら、従来の作業車両では、作業者が意図せずに着座スイッチをオフにしてしまい、その場合に常に作業部への動力伝達が遮断されるという煩わしさが発生してしまう。
【0006】
なお、作業車両では、操縦部に乗車する作業者ではなく、補助作業者が作業部のメンテナンス等の補助作業を行うことがある。そのため、補助作業者が作業部の補助作業を行っている間に、操縦部の作業者が補助作業者を目視して補助作業者の安全性を確保することが求められる。
【0007】
本発明は、作業者や補助作業者の安全性を確保しつつ、作業部への動力伝達が意図せずに遮断されることを抑制する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の作業車両は、走行部と、作業部と、作業者が乗車するための操縦部と、前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知する作業者検知部と、前記作業部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記作業部は、前記走行部の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、前記走行速度に拘わらず一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかの駆動モードで駆動可能に構成され、前記制御部は、前記作業部が前記定速モードであるとき、前記作業者検知部によって前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しない場合、前記作業部の駆動を牽制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者や補助作業者の安全性を確保しつつ、作業部への動力伝達が意図せずに遮断されることを抑制することができる作業車両を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの一例を示す側面図である。
【
図2】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの操縦部の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの運転席の一例を示す正面図及び平面図である。
【
図4】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインのブロック図である。
【
図5】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の作業車両の一実施形態であるコンバイン1について
図1等を参照して説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。
【0012】
コンバイン1は、手動走行モード及び自動走行モードの何れかの走行モードが設定される。コンバイン1は、手動走行モードが設定されている場合、操縦部9に設けられた各種操作具の操作に応じて手動走行を行う。一方、コンバイン1は、自動走行モードが設定されている場合、予め設定された走行経路に従って自動走行しながら自動刈取する自動刈取走行を行う。
【0013】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7は、各種作業を行う作業部として機能するコンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0014】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられ、左右一対のクローラ式走行装置11を備える。走行部2は、動力部8においてエンジン26で発生した動力(例えば、回転動力)をトランスミッション27等を介して伝達され、この動力によってクローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。
【0015】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。刈取部3は、動力部8においてエンジン26で発生した動力(例えば、回転動力)をPTO軸等の動力伝達機構28等を介して伝達され、この動力によって各部を駆動することで、前方に位置する穀稈に対して、最大刈取条数以内の条列毎に刈取作業を行う。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、最大刈取条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0016】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられ、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。脱穀部4は、動力部8においてエンジン26で発生した動力(例えば、回転動力)を動力伝達機構28を介して伝達され、この動力によって各部を駆動することで、刈取部3で刈り取られた穀稈に対して脱穀作業を行う。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0017】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられ、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。選別部5は、動力部8においてエンジン26で発生した動力(例えば、回転動力)を動力伝達機構28を介して伝達され、この動力によって各部を駆動することで、脱穀部4で脱穀された脱穀物に対して選別作業を行う。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0018】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク23と、排出装置24とを備える。グレンタンク23は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置24は、オーガ等で構成され、穀粒の排出作業を行い、グレンタンク23に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0019】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。例えば、排藁処理部7は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を、排藁搬送装置によってそのまま機外(例えば、コンバイン1の後方や下方)へ排出する。あるいは、排藁処理部7は、排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後で機外(例えば、コンバイン1の後方)へ排出する。
【0020】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、機体フレーム10の前部に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン26と、回転動力を変速して走行部2へと伝達するトランスミッション27と、回転動力を刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部へと伝達するためのPTO軸や作業クラッチ等の動力伝達機構28とを備える。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン26へ供給する燃料を収容する燃料タンク(図示せず)を備える。
【0021】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、コンバイン1を操縦する作業者が乗車するためのものであり、キャビン(操縦塔)30が設けられる。操縦部9には、
図2に示すように、キャビン30内に、作業者が座る座席である運転席31が設けられ、また、操縦部9に作業者が位置していることを検知する作業者検知部32が設けられる。作業者検知部32は、例えば、
図3(c)に示すように、運転席31に作業者が着座していることを検知するシートスイッチで構成される。
図3(a)は、運転席31の正面図であり、
図3(b)は、運転席31の平面図であり、
図3(c)は、座面クッション31aを取り外した運転席31の正面図である。シートスイッチは、運転席31の座面クッション31aの下方に内蔵されて、運転席31に掛かる荷重を検知することで作業者の着座又は離座を検出する。また、操縦部9には、様々な情報を表示して作業者に出力するためのモニタ等の表示部(図示せず)が設けられる。
【0022】
操縦部9には、運転席31の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するための各種操作具が設けられる。操縦部9は、操作具として、
図2に示すように、コンバイン1の走行の旋回操作をするためのハンドル33や、コンバイン1の走行の変速操作をするための主変速レバー35及び副変速レバー36等を備える。主変速レバー35及び副変速レバー36の操作に応じて、走行部2の走行速度が設定される。また、操縦部9には、主変速レバー35を強制的に中立位置に戻すための駐車ブレーキ(図示せず)が、ハンドル33の左側で床面(ステップ)上に設けられる。
【0023】
また、操縦部9は、操作具として、
図2や
図4に示すように、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部の駆動のオン・オフの切換操作をするための作業クラッチ操作具37を備える。作業クラッチ操作具37をオンにすることで、動力伝達機構28の作業クラッチがオン状態に切り換えられ、エンジン26の回転動力が動力伝達機構28を介して作業部へと伝達されて、作業部が駆動する。一方、作業クラッチ操作具37をオフにすることで、動力伝達機構28の作業クラッチがオフ状態に切り換えられて、エンジン26の回転動力の作業部への伝達が遮断され、作業部の駆動が停止する。
【0024】
また、操縦部9は、操作具として、
図4に示すように、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部の駆動モードを切り換えるためのモード切換操作具38を備える。モード切換操作具38は、駆動モードを、少なくとも、走行部2の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、走行部2の走行速度に拘わらず所定の一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかに切換可能にする。モード切換操作具38は、例えば、駆動モードとして連動モード又は定速モードを選択操作可能なボタン等で構成される。モード切換操作具38は、作業部の駆動の開始を操作するための作業操作具に配置されるとよく、例えば、副変速レバー36に設けられる。
【0025】
コンバイン1は、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する測位ユニット39を備えている。測位ユニット39は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット39の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を取得する。
【0026】
次に、コンバイン1の制御装置50について
図4を参照して説明する。制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51や、外部機器と通信を行う通信部52に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。制御装置50は、例えば、測位ユニット39を制御してコンバイン1の位置情報を取得する。
【0027】
記憶部51は、例えば、コンバイン1の作業対象である圃場の圃場情報を記憶する。圃場情報は、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場の未刈領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等を含む。
【0028】
通信部52は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末等の外部機器と無線通信可能となる。制御装置50は、通信部52を制御して外部機器と無線通信を行い、外部機器との間で各種情報を送受信する。
【0029】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、駆動制御部55(制御部)として動作する。なお、駆動制御部55は、本発明に係る駆動制御方法の駆動制御工程を実現するものである。
【0030】
駆動制御部55は、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部の駆動を制御するものである。
【0031】
例えば、駆動制御部55は、モード切換操作具38によって駆動モードが連動モードに設定されている場合、主変速レバー35及び副変速レバー36の操作に応じて設定された走行部2の走行速度に連動するように作業部の駆動速度を設定する。そして、駆動制御部55は、連動モードの場合、作業者検知部32の検知結果に拘わらず、走行速度に連動した駆動速度で作業部が駆動するように、動力伝達機構28や作業部を制御する。
【0032】
また、駆動制御部55は、モード切換操作具38によって駆動モードが定速モードに設定されている場合、走行部2の走行速度に拘わらず予め設定された一定速度で作業部の駆動速度を設定する。そして、駆動制御部55は、定速モードの場合であって、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知している場合、一定駆動速度で作業部が駆動するように、動力伝達機構28や作業部を制御する。
【0033】
一方、駆動制御部55は、定速モードの場合であって、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知していない場合、作業部の駆動を牽制するように、動力伝達機構28や作業部を制御する。駆動制御部55は、作業部の駆動の牽制として、例えば、動力伝達機構28の作業クラッチを強制的にオフ状態に切り換えて作業部への動力伝達を遮断し、あるいは他の手段で作業部の駆動を強制的に停止する。
【0034】
作業部の駆動の牽制を開始してから、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知するようになった場合、駆動制御部55は、作業部の駆動の牽制を解除して作業部の駆動を開始し、一定駆動速度で作業部が駆動するように、動力伝達機構28や作業部を制御する。換言すれば、作業部が定速モードであって作業部の駆動が停止しているとき、駆動制御部55は、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知した場合に、作業部の駆動を開始する。
【0035】
なお、作業部の駆動の牽制を開始してから、モード切換操作具38によって駆動モードが連動モードに切り換えられた場合、駆動制御部55は、作業部の駆動の牽制を解除して、走行部2の走行速度に連動した駆動速度で作業部が駆動するように動力伝達機構28や作業部を制御する。
【0036】
なお、駆動制御部55は、走行部2が走行停止中の場合に、モード切換操作具38による定速モードへの切り換えを可能にする一方、走行部2が走行中の場合に、モード切換操作具38による定速モードへの切り換えを不能にする。あるいは、他の例として、駆動制御部55は、走行部2が走行中か走行停止中かに拘わらず、モード切換操作具38による定速モードへの切り換えを可能にしてもよい。
【0037】
次に、コンバイン1における作業部の駆動の動作例を
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
先ず、駆動モードが連動モードか定速モードかを判定する(ステップS1)。駆動モードが連動モードである場合(ステップS1:Yes)、駆動制御部55は、走行部2の走行速度に連動した駆動速度で作業部が駆動するように動力伝達機構28や作業部を制御する(ステップS2)。
【0039】
一方、駆動モードが定速モードである場合(ステップS1:No)、駆動制御部55は、作業者検知部32の検知結果に基づいて、操縦部9に作業者が位置しているか否かを判定する(ステップS3)。
【0040】
操縦部9に作業者が位置していることを検知している場合(ステップS3:Yes)、駆動制御部55は、一定駆動速度で作業部の駆動を制御する(ステップS4)。
【0041】
一方、操縦部9に作業者が位置していることを検知していない場合(ステップS3:No)、駆動制御部55は、作業部の駆動を牽制するように制御する(ステップS5)。
【0042】
上記のように、本実施形態によれば、作業車両の例であるコンバイン1は、走行部2と、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7等の作業部と、作業者が乗車するための操縦部9と、操縦部9に作業者が位置していることを検知する作業者検知部32と、作業部の駆動を制御する駆動制御部55(制御部)と、を備える。作業部は、走行部2の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、走行部2の走行速度に拘わらず一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかの駆動モードで駆動可能に構成される。駆動制御部55は、作業部が定速モードであるとき、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知しない場合、作業部の駆動を牽制する。
【0043】
これにより、コンバイン1では、定速モードである作業部に補助作業者が近づいて作業するときには、操縦部9に乗車した作業者が補助作業者を目視できる状況である場合に作業部が駆動されるが、作業者が補助作業者を目視できる状況でないと判定される場合には作業部の駆動が牽制されるので、補助作業者の安全性をより確実に確保することができる。従って、補助作業者は、コンバイン1のメンテナンス等の補助作業を安全に行うことができる。また、連動モードでは、作業者検知部32による作業者の検知結果に拘わらず、作業部の駆動を継続することができ、定速モードでは、操縦部9に作業者が位置していることを検知していれば、作業部の駆動を継続することができるので、作業部への動力伝達が意図せずに遮断されることを抑制することができる
【0044】
また、駆動制御部55は、作業部が定速モードであって作業部の駆動が停止しているとき、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知した場合に、作業部の駆動を開始する。これにより、コンバイン1では、操縦部9に乗車した作業者が補助作業者を目視できる状況である場合に作業部の駆動を開始するが、作業者が補助作業者を目視できる状況でないと判定される場合には作業部の駆動を開始しないので、補助作業者の安全性をより確実に確保することができる。
【0045】
また、コンバイン1は、駆動モードの連動モード又は定速モードへの切り換えを操作するためのモード切換操作具38を更に備える。これにより、コンバイン1では、作業部の駆動モードをモード切換操作具38によって簡易に切換操作することができる。
【0046】
また、モード切換操作具38は、作業部の駆動の開始を操作するための副変速レバー36等の作業操作具に配置される。これにより、コンバイン1では、作業部を操作する作業操作具にモード切換操作具38を配置することで作業者の使い勝手を向上することができる。
【0047】
また、作業者検知部32は、操縦部9に設けられた運転席31に作業者が着座していることを検知する。これにより、コンバイン1では、運転席31に着座した作業者を検知することで、作業者が操縦部9に位置していることをより確実に判定することができる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、作業者検知部32が、シートスイッチで構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、作業者検知部32は、操縦部9の床面であるステップ上に作業者にいることを検知するステップセンサや、キャビン30のドアに設けられたセンサであって操縦部9への作業者の乗車を検知する乗車センサや、キャビン30内の人を検知する人感センサ等で構成されて、操縦部9に作業者が位置していることを検知してもよい。
【0049】
また、上記した実施形態では、駆動制御部55は、定速モードであって操縦部9に作業者が位置していることを検知していない場合に、作業部の駆動の牽制として、即座に、動力伝達機構28の作業クラッチを強制的にオフ状態に切り換えて作業部への動力伝達を遮断し、あるいは他の手段で作業部の駆動を強制的に停止する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、駆動制御部55は、作業部の駆動の牽制を段階的に行って、所定時間経過後に作業部の駆動を停止するように制御してもよい。
【0050】
例えば、駆動制御部55は、定速モードであって操縦部9に作業者が位置していることを検知しなくなってから、所定の第1設定時間(例えば、5秒)を経過するまでは作業部の駆動を継続し、所定の第1設定時間を経過すると作業部の駆動を停止するように制御してもよい。
【0051】
あるいは、駆動制御部55は、定速モードであって操縦部9に作業者が位置していることを検知しなくなってから、所定の第1設定時間(例えば、5秒)を経過するまでは作業部の駆動を継続し、所定の第1設定時間を経過すると作業者が操縦部9にいないことを示す警報を報知し、更にその後、所定の第2設定時間(例えば、10秒)を経過すると作業部の駆動を停止するように制御してもよい。
【0052】
更に、駆動制御部55は、上記した作業部の駆動継続、作業者不在の警報及び作業部の駆動停止に加えて、エンジン26の作動停止や、走行部2の走行停止等の他の処理を組み合わせて、作業部の駆動の牽制を複数の設定時間毎に複数段階で行ってもよい。なお、各設定時間は、予め設定された初期値が用いられてよいが、作業者の任意の操作に応じて設定されてもよい。
【0053】
これにより、コンバイン1では、作業者が操縦部9の機器を操作するために運転席31から離座したりすることで、作業者検知部32によって操縦部9に作業者が位置していることを検知しなくなっても、作業部の駆動を停止しない猶予時間を設けることができる。従って、作業者や補助作業者は、コンバイン1の作業や補助作業を円滑に進めることができる。
【0054】
上記した実施形態では、本発明の作業車両が、自脱型のコンバイン1で構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、本発明の作業車両は、普通型のコンバイン、トラクタ、乗用田植機、乗用草刈機、運搬車、除雪車、ホイールローダ等の他の乗用作業車両で構成されてもよい。
【0055】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う作業車両もまた本発明の技術思想に含まれる。
【0056】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0057】
<付記1>
走行部と、
作業部と、
作業者が乗車するための操縦部と、
前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知する作業者検知部と、
前記作業部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記作業部は、前記走行部の走行速度に連動した駆動速度で駆動する連動モードと、前記走行速度に拘わらず一定駆動速度で駆動する定速モードとの何れかの駆動モードで駆動可能に構成され、
前記制御部は、前記作業部が前記定速モードであるとき、前記作業者検知部によって前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しない場合、前記作業部の駆動を牽制することを特徴とする作業車両。
【0058】
<付記2>
前記制御部は、前記作業部が前記定速モードであって前記作業部の駆動が停止しているとき、前記作業者検知部によって前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知した場合に、前記作業部の駆動を開始することを特徴とする付記1に記載の作業車両。
【0059】
<付記3>
前記駆動モードの前記連動モード又は前記定速モードへの切り換えを操作するためのモード切換操作具を更に備えることを特徴とする付記1又は2に記載の作業車両。
【0060】
<付記4>
前記モード切換操作具は、前記作業部の駆動の開始を操作するための作業操作具に配置されることを特徴とする付記3に記載の作業車両。
【0061】
<付記5>
前記作業者検知部は、前記操縦部に設けられた運転席に前記作業者が着座していることを検知することを特徴とする付記1~4の何れかに記載の作業車両。
【0062】
<付記6>
前記制御部は、前記操縦部に前記作業者が位置していることを検知しなくなってから、所定の第1設定時間を経過するまでは前記作業部を駆動し、前記所定の第1設定時間を経過すると前記作業者が前記操縦部にいないことを示す警報を報知し、更に所定の第2設定時間を経過すると前記作業部の駆動を停止することを特徴とする付記1~5の何れかに記載の作業車両。
【符号の説明】
【0063】
1 コンバイン(作業車両)
2 走行部
3 刈取部(作業部)
4 脱穀部(作業部)
5 選別部(作業部)
6 貯留部(作業部)
7 排藁処理部(作業部)
8 動力部
9 操縦部
12 動力伝達機構
31 運転席
32 作業者検知部
36 副変速レバー(作業操作具)
37 作業クラッチ操作具
38 モード切換操作具
50 制御装置
55 駆動制御部(制御部)