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特開2024-49871無線通信におけるチャネル推定を高度化する端末装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-無線通信におけるチャネル推定を高度化する端末装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049871
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】無線通信におけるチャネル推定を高度化する端末装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20240403BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240403BHJP
   H04W 72/20 20230101ALI20240403BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20240403BHJP
【FI】
H04L27/26 410
H04L27/26 114
H04B7/06 956
H04W72/04 136
H04W28/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156362
(22)【出願日】2022-09-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度総務省、「日米産学連携を通じた5G高度化の国際標準獲得のための無線リンク技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】神渡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067DD25
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】復調参照信号のポート数を拡大しながら、チャネル推定の周波数分解能の劣化を抑制すること。
【解決手段】端末装置は、接続中の基地局装置から端末装置に対して送信される復調参照信号(DMRS)を生成する際に用いる直交カバーコード(OCC)及びそのDMRSが送信されるリソースエレメントを特定する第1の情報と、そのDMRSによってチャネル推定を行うバンドの一部であるサブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを端末装置が特定可能とする第2の情報を、基地局装置から取得し、サブバンドの単位でのチャネル推定が可能である場合、サブバンドに対応するOCCの部分系列を用いてそのサブバンドの単位でのチャネル推定を実行し、サブバンドごとに対応するチャネル推定値を用いて基地局装置から端末装置へ送信されたデータを受信する
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置であって、
接続中の基地局装置から前記端末装置に対して送信される復調参照信号(DMRS)を生成する際に用いる直交カバーコード(OCC)及び当該DMRSが送信されるリソースエレメントを特定する第1の情報と、当該DMRSによってチャネル推定を行うバンドの一部であるサブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記端末装置が特定可能とする第2の情報を、前記基地局装置から取得する取得手段と、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記第2の情報に基づいて判定する判定手段と、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であると判定した場合、当該サブバンドに対応する前記OCCの部分系列を用いて当該サブバンドの単位でのチャネル推定を実行し、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能でないと判定した場合、前記OCCを用いて前記バンドの全体に対するチャネル推定を実行する実行手段と、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が実行された場合、当該サブバンドごとに対応するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信し、前記バンドの全体に対するチャネル推定が実行された場合、当該バンドに共通するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信する受信手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記第2の情報は、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを示す情報を含み、
前記判定手段は、前記第2の情報に従って、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記第2の情報は、前記サブバンドに対応する前記端末装置のための第1のOCCの第1の部分系列が、当該サブバンドにおいて当該部分系列と同じリソースエレメントで送信される他の端末装置のための第2のOCCの第2の部分系列の全てと直交しているか否かを示す情報を含み、
前記判定手段は、前記第1の部分系列が前記第2の部分系列の全てと直交している場合に前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記第2の情報は、前記サブバンドに対応する前記端末装置のための第1のOCCの第1の部分系列と、当該サブバンドにおいて当該第1の部分系列と同じリソースエレメントで送信される他の端末装置のための第2のOCCの第2の部分系列との相関値を示す情報を含み、
前記判定手段は、前記相関値に基づいて、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記相関値は、前記第2のOCCが送信されるビームを形成するためのプリコーディングが行われた場合の前記第2の部分系列と、前記第1の部分系列との相関値である、ことを特徴とする請求項4に記載の端末装置。
【請求項6】
前記実行手段は、前記サブバンドの単位でのチャネル推定を実行した場合に、複数のサブバンドに対応するチャネル推定値の間の差分値の大きさが所定値以上である場合に、当該チャネル推定値を平均化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
前記実行手段が前記チャネル推定値の平均化を行った場合に、平均化が行われたことを前記基地局装置へ通知する通知手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項8】
前記サブバンドの単位でのチャネル推定を行うことができることを示す能力情報を前記基地局装置へ通知する通知手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項9】
前記取得手段は、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)によって、前記基地局装置から前記第2の情報を取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項10】
端末装置によって実行される制御方法であって、
接続中の基地局装置から前記端末装置に対して送信される復調参照信号(DMRS)を生成する際に用いる直交カバーコード(OCC)及び当該DMRSが送信されるリソースエレメントを特定する第1の情報と、当該DMRSによってチャネル推定を行うバンドの一部であるサブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記端末装置が特定可能とする第2の情報を、前記基地局装置から取得することと、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記第2の情報に基づいて判定することと、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であると判定した場合、当該サブバンドに対応する前記OCCの部分系列を用いて当該サブバンドの単位でのチャネル推定を実行し、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能でないと判定した場合、前記OCCを用いて前記バンドの全体に対するチャネル推定を実行することと、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が実行された場合、当該サブバンドごとに対応するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信し、前記バンドの全体に対するチャネル推定が実行された場合、当該バンドに共通するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
端末装置に備えられたコンピュータに、
接続中の基地局装置から前記端末装置に対して送信される復調参照信号(DMRS)を生成する際に用いる直交カバーコード(OCC)及び当該DMRSが送信されるリソースエレメントを特定する第1の情報と、当該DMRSによってチャネル推定を行うバンドの一部であるサブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記端末装置が特定可能とする第2の情報を、前記基地局装置から取得させ、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記第2の情報に基づいて判定させ、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であると判定した場合、当該サブバンドに対応する前記OCCの部分系列を用いて当該サブバンドの単位でのチャネル推定を実行し、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能でないと判定した場合、前記OCCを用いて前記バンドの全体に対するチャネル推定を実行させ、
前記サブバンドの単位でのチャネル推定が実行された場合、当該サブバンドごとに対応するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信し、前記バンドの全体に対するチャネル推定が実行された場合、当該バンドに共通するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信におけるチャネル推定の高度化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))において、シングルユーザ(SU)又はマルチユーザ(MU)のMulti-input Multi-Output(MIMO)における空間多重されるレイヤの数を増やすための技術として、チャネル推定のために用いられる復調参照信号(DMRS)のポート数を拡大する手法が議論されている。非特許文献1には、DMRSのポート数を拡大するために、多重化のために使用される1つの直交カバーコード(OCC)が適用される周波数範囲を拡大する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP寄書、R1-2204370、2022年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのOCCが適用される周波数範囲に対して1つのチャネル推定値が得られる。このため、1つのOCCが適用される周波数範囲が拡大されると、その拡大された範囲に対して1つのチャネル推定値が得られることとなり、チャネル推定値の周波数分解能が低下してしまいうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、復調参照信号のポート数を拡大しながら、チャネル推定の周波数分解能の劣化を抑制する技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による端末装置は、接続中の基地局装置から前記端末装置に対して送信される復調参照信号(DMRS)を生成する際に用いる直交カバーコード(OCC)及び当該DMRSが送信されるリソースエレメントを特定する第1の情報と、当該DMRSによってチャネル推定を行うバンドの一部であるサブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記端末装置が特定可能とする第2の情報を、前記基地局装置から取得する取得手段と、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であるか否かを前記第2の情報に基づいて判定する判定手段と、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能であると判定した場合、当該サブバンドに対応する前記OCCの部分系列を用いて当該サブバンドの単位でのチャネル推定を実行し、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が可能でないと判定した場合、前記OCCを用いて前記バンドの全体に対するチャネル推定を実行する実行手段と、前記サブバンドの単位でのチャネル推定が実行された場合、当該サブバンドごとに対応するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信し、前記バンドの全体に対するチャネル推定が実行された場合、当該バンドに共通するチャネル推定値を用いて前記基地局装置から前記端末装置へ前記バンドにおいて送信されたデータを受信する受信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、復調参照信号のポート数を拡大しながら、チャネル推定の周波数分解能の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】DMRSのリソースエレメントへのマッピングの例を説明する図である。
図3】OCCの例とOCC間の相関を説明する図である。
図4】装置のハードウェア構成例を示す図である。
図5】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図6】端末装置の機能構成例を示す図である。
図7】基地局装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
図8】端末装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。この無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)の通信規格や、その後継規格に準拠して形成されたセルラ通信システムであり、基地局装置101及び端末装置111~端末装置116を含む。なお、図1は、説明を簡単にするために、1つの基地局装置と少数の端末装置のみを示しているが、複数の基地局装置及び多数の端末装置が当然に存在しうる。なお、以下の説明では、基地局装置101が、端末装置111~端末装置116のそれぞれに1つずつのレイヤでデータを送信するものとする。ただし、これは説明を簡単にするためのものに過ぎず、1つの端末装置に対して複数のレイヤでデータが送信されることが当然に想定される。その場合、以下の説明における「端末装置」を「レイヤ」と読み替えてもよい。
【0011】
端末装置111~端末装置116は、基地局装置101に接続中であり、基地局装置101から送信された復調参照信号(DMRS)を受信し、そのDMRSに基づいて、チャネル推定を実行し、そのチャネル推定の結果を用いてユーザデータ等のデータの復調処理を実行する。DMRSは、例えば、所定数のレイヤごとに異なる周波数および時間リソースを用いて送信される。また、DMRSは、同じ周波数および時間リソースを使用する所定数のレイヤは、それらのレイヤのそれぞれが分離可能となるように、直交カバーコード(OCC)を用いて拡散される。このため、端末装置111~端末装置116は、まず、自装置が受信するレイヤに対応する周波数リソースと、そのレイヤに割り当てられたOCCの系列を特定する。なお、基地局装置101と端末装置111~端末装置116との間では、送信されるDMRSシンボルの情報が当然に共有されている。OCCを用いてDMRSが符号化されることによって得られたシンボル系列は、そのシンボル系列内のシンボルがそれぞれ1つのリソースエレメントにおいて送信されるように周波数および時間リソースにマッピングされる。例えば、OCCの符号長が4の場合、1つのDMRSシンボルが4つのシンボルに拡散され、その4つのシンボルがそれぞれ異なるリソースエレメントにマッピングされる。端末装置111~端末装置116は、DMRSが送信されるリソースエレメントにおいて受信されたシンボルを、OCCを用いて逆拡散し、その逆拡散した結果の値を、送信されたDMRSシンボルによって除算することにより、チャネル推定値を算出することができる。
【0012】
従来、リソースエレメントに対するDMRSの配置パターンは複数存在する。例えば、コンフィギュレーションタイプ1として、リソースブロック内の12個のサブキャリアが1つおきに使用されるパターンが用意されている。このパターンでは、例えば、サブキャリア番号が2n(0≦n≦5)のグループと、サブキャリア番号が2n+1(0≦n≦5)のグループの2つのグループに分けられ、各端末装置は、そのいずれかのグループを使用する。また、コンフィギュレーションタイプ2では、リソースブロック内の12個のサブキャリアが、周波数が高い方の6個のサブキャリアからなるサブバンドと周波数が低い方の6個のサブキャリアからなるサブバンドとの2つのサブバンドに分割され、各サブバンドにおいて、それぞれ連続する2つの周波数リソースからなる3つのグループが構成される。そして、各端末装置は、その3つのグループのうちのいずれかを使用する。また、DRMSは、時間領域において1つのリソースエレメントを使用する場合と、連続する2つのリソースエレメントを使用する場合とが存在する。
【0013】
これらの設定のうち、連続する2つのリソースエレメントを使用する場合の、コンフィギュレーションタイプ1及びコンフィギュレーションタイプ2のDMRSのリソースエレメントへのマッピングを、図2(A)及び図2(B)に示す。
【0014】
図2(A)に示すように、コンフィギュレーションタイプ1では、周波数領域において1つおきに2つかつ時間領域において連続する2つの単位でチャネル推定が行われる。すなわち、周波数領域において4つのリソースエレメントの範囲ごとに、チャネル推定が行われる。なお、各端末装置に対しては、サブキャリア番号が2n(0≦n≦5)のグループと、サブキャリア番号が2n+1(0≦n≦5)のグループのいずれかのサブキャリアのグループにおいてDMRSが送信される。この設定によれば、各端末装置には、チャネル推定が行われる周波数範囲に対して4つのリソースエレメントを用いてDMRSが送信される。この場合、基地局装置は、符号長が4のOCCを用いることにより、同じリソースエレメントを用いて4つのレイヤに対応するDMRSを多重化して送信することができる。このため、図2(A)に示すコンフィギュレーションタイプ1では、周波数方向におけるグループ化により得られる2つのグループに対して、時間および周波数領域にそれぞれ2つずつ、合計4つのリソースエレメントにおいて、符号長が4のOCCによる符号分割多重が行われるため、合計8個のレイヤについて並行してDMRSを送信することができる。なお、このように、リソースエレメントのグループ分けやOCCの符号により分離可能な形式でDMRSを送信することができる1つの単位を1ポートと呼ぶ。図2(A)の形式では、DMRSのポート数は、最大8ポートである、と言うことができる。
【0015】
一方、図2(B)に示すコンフィギュレーションタイプ2では、チャネル推定の単位が周波数領域において6つのリソースエレメントの範囲ごとに行われる。なお、各端末装置に対しては、サブキャリア番号が6m及び6m+1(m=0、1)のグループと、サブキャリア番号が6m+2及び6m+3(m=0、1)のグループと、サブキャリア番号が6m+4及び6m+5(m=0、1)のグループのいずれかのサブキャリアのグループにおいてDMRSが送信される。このような構成により、コンフィギュレーションタイプ2においても、各端末装置には、チャネル推定が行われる周波数範囲に対して4つのリソースエレメントを用いてDMRSが送信される。このため、基地局装置は、符号長が4のOCCを用いることにより、同じリソースエレメントを用いて4つのレイヤに対応するDMRSを多重化して送信することができる。このため、図2(B)に示すコンフィギュレーションタイプ2では、周波数方向におけるグループ化により得られる3つのグループに対して、時間および周波数領域にそれぞれ2つずつ、合計4つのリソースエレメントにおいて、符号長が4のOCCによる符号分割多重が行われるため、DMRSのポート数は最大で12ポートとなる。3GPP(登録商標)のリリース15規格においては、図2(B)に示すような構成を用いることにより、DMRSのポートとして、最大で12ポートを確保することができる。
【0016】
近年、要求される通信速度の上昇や、多数の端末装置に対して並行して通信機会を与えることの需要の増大に伴い、マルチユーザ(MU)/シングルユーザ(SU)のMIMO(Multi-input Multi-Output)の多重レイヤ数の拡大が要求されている。このとき、従来の最大12ポートでは十分とは言えず、3GPP(登録商標)のリリース18規格に向けて、最大24ポートまで確保することが議論されている。このために、例えば、チャネル推定を行う周波数範囲の単位を拡大し、より多数のリソースエレメントを用いてより長い符号長のOCCを用いて拡散されたDMRSを送信することを可能とすることができる。例えば、図2(C)のように、図2(B)の場合と比べて、チャネル推定を行う周波数範囲の単位を倍にし、それぞれが8個のリソースエレメントを使用する3つのグループを形成する。このグループは図2(B)と同様に構成されうる。すなわち、サブキャリア番号が6m及び6m+1(m=0、1)のグループと、サブキャリア番号が6m+2及び6m+3(m=0、1)のグループと、サブキャリア番号が6m+4及び6m+5(m=0、1)のグループが構成されうる。ただし、図2(B)では、8個のリソースエレメントが2分割され、それぞれ符号長が4のOCCによって拡散されたDMRSを送信するのに使用されるのに対して、図2(C)では、8個のリソースエレメントにおいて、符号長が8のOCCによって拡散されたDMRSが送信される。これによれば、周波数方向におけるグループ化により得られる3つのグループに対して、時間領域に2つおよび周波数領域に4つの合計8つのリソースエレメントにおいて、符号長が8のOCCによる符号分割多重が行われるため、DMRSのポート数は最大で24ポートとなる。
【0017】
なお、本実施形態では、リソースエレメントの周波数領域におけるグループ化が、図2(B)の場合と同じ場合について説明するが、これに限られない。例えば、サブキャリア番号が0~3のグループと、サブキャリア番号が4~7のグループと、サブキャリア番号が8~11のグループが構成されてもよい。また、サブキャリア番号が{0、1、8、9}のグループと、サブキャリア番号が{2、3、6、7}のグループと、サブキャリア番号が{4、5、10、11}のグループが構成されてもよい。すなわち、周波数領域におけるグループ化は任意に行われてもよい。また、上述の例では、周波数領域において4サブキャリア分のグループが形成される例について説明しているが、周波数領域および時間領域において合計8個のリソースエレメントが確保されるように、任意のグループ化が行われてもよい。
【0018】
図2(C)のように、使用されるOCCの系列長を長くすると、チャネル推定が行われる周波数領域の単位が大きくなる。すなわち、多数のサブキャリアに対して1つのチャネル推定値のみが得られるようになる。これによれば、チャネル推定値の周波数分解能が低くなり、これにより、特に周波数方向でのチャネルの変動が大きい環境において、通信品質の劣化に繋がりうる。
【0019】
一方で、OCCの系列は、その性質上、系列全体としては当然に直交性が担保されるように構成されるが、その系列の一部のみを見ても直交性が担保されるような系列の組み合わせが存在する。ここで、図3(A)に、符号長が8のOCCの系列の例を示す。このOCCの系列の中の2つの系列における上位4ビット同士の相関値を図3(B)に、下位4ビット同士の相関値を図3(C)に示す。なお、相関値は、Σiii(ただし、aiは第1の系列のiビット目、biは第2の系列のiビット目を示す。なお、上位4ビットは0≦i≦3であり、下位4ビットは4≦i≦7である。)によって計算される。図3(A)に示される各系列は、系列全体としては、当然に他の系列と直交性が担保される(すなわち、相関値が0となる)が、図3(B)及び図3(C)に示すように、例えば、系列Aは、上位4ビット及び下位4ビットのみに着目すると、系列Eとの間では直交性が担保されない。一方で、系列Aは、他の系列との間では、上位4ビット及び下位4ビットのみであっても、直交性が維持されている(すなわち、相関値が0となっている)。このため、系列Aが使用されると共に、系列Eが使用されない状況であれば、その系列Aが割り当てられた端末装置は、チャネル推定が行われる周波数範囲の単位のうち、OCCの上位4ビット又は下位4ビットのみを用いて、チャネル推定を行うことができる。ここで、OCCの上位4ビットが、DMRSが送信される周波数範囲のうちの周波数の高い方(例えば図2(C)の上方)の4つのリソースエレメントにおいて送信され、下位4ビットが、DMRSが送信される周波数範囲のうちの周波数の低い方(例えば図2(C)の下方)の4つのリソースエレメントにおいて送信されるものとする。このようにすることで、端末装置は、上位4ビット及び下位4ビットをそれぞれ別個に用いて、DMRSが送信される周波数範囲のうちの周波数が高い方の第1のサブバンドと周波数が低い方の第2のサブバンドとについて、チャネル推定値を算出することができ、周波数分解能の低下を抑制することができる。
【0020】
なお、ここでは、DMRSが送信されるバンド(ここでは、1つのリソースブロックに対応する12サブキャリア分のバンド)を、2つのサブバンドに分割する場合の例について説明したが、DMRSが送信されるバンドは3つ以上のサブバンドに分割されてもよい。すなわち、上述のようなサブバンドにおけるチャネル推定を可能とするには、DMRSが送信される際に所定のレイヤのために使用されるOCCの系列の一部である部分系列が所定のサブバンドに対応するリソースエレメントで送信される際に、その所定のレイヤと異なる他のレイヤのためにそのリソースエレメントで送信されるOCCの部分系列の全てと直交することが要求される。すなわち、あるサブバンド内のリソースエレメントで送信される部分系列が他の部分系列の全てと直交している限りにおいて、バンド全体とは別個にそのサブバンドにおけるチャネル推定が可能なのであって、その部分系列の長さや、対応するサブバンドの大きさ、すなわち、分割されて得られるサブバンドの数については特に制限されない。例えば、符号長が8のOCCの系列が、3サブキャリアごとかつ時間連続する2つのリソースエレメントにおいて送信される場合であって、1つのサブキャリアの2つのリソースエレメントで送信される2ビットの部分系列が同じ周波数および時間リソースで送信される他の部分系列と直交している場合には、端末装置は、その部分系列を用いて、対応する3サブキャリア分のサブバンドについてのチャネル推定を行うことが可能である。
【0021】
本実施形態では、このような事情に鑑み、端末装置に対して割り当てられたOCCの系列のうち、その系列の全部を用いてチャネル推定が行われる周波数帯域(バンド)のうちの部分帯域(サブバンド)に対応する、部分系列を用いて、チャネル推定を行うことを可能とする。なお、上述の例において、端末装置に系列Aが割り当てられている場合に、系列Eが使用されるか否かをその端末装置は認識できない。このため、本実施形態では、基地局装置が、各端末装置に対して割り当てられるOCCの部分系列を用いたチャネル推定が可能であるか否かを、それらの端末装置に通知しうる。一例において、基地局装置は、サブバンドごとのチャネル推定が可能であるか否かを示す情報を、各端末装置に対して通知する。すなわち、ある端末装置に対して、その端末装置のために送信されるDMRSのうち、そのDMRSが送信されるバンドの一部であるサブバンドにおいて送信されるOCCの部分系列が、他の端末装置のためにそのサブバンドの同じリソースエレメントで送信されるOCCの部分系列の全てと直交しているか否かが通知される。なお、端末装置に対して複数のレイヤが割り当てられる場合、その複数のレイヤのそれぞれについての情報が、その端末装置へ通知されうる。バンドは、一例において、12個のサブキャリアから成る1つのリソースブロックの周波数帯域であり、サブバンドは、その半分の6個のサブキャリアの周波数帯域である。また、基地局装置は、上述の通知を、例えば、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)によって送信する。
【0022】
基地局装置は、例えば、各サブバンドについて、チャネル推定が可能である(そのサブバンドで送信されるOCCの部分系列が他の割り当てられているOCCの部分系列と直交している)場合に「0」を、チャネル推定が可能でない(そのサブバンドで送信されるOCCの部分系列と直交していない、他の割り当てられているOCCの部分系列がある)場合には「1」を、端末装置に通知しうる。例えば、DMRSが送信されるバンドが2つのサブバンドに分割される場合、その2つのサブバンドについて、情報「00」によって2つのサブバンドの両方においてチャネル推定が可能であることが示されうる。また、情報「01」によって1つ目のサブバンド(例えば周波数が高い方のサブバンド)においてチャネル推定が可能であると共に2つ目のサブバンド(例えば周波数が低い方のサブバンド)においてチャネル推定が可能でないことが示されうる。同様に、情報「10」によって1つ目のサブバンド(例えば周波数が高い方のサブバンド)においてチャネル推定が可能でなく、2つ目のサブバンド(例えば周波数が低い方のサブバンド)においてチャネル推定が可能であることが示され、情報「11」によって2つのサブバンドの両方においてチャネル推定が可能でないことが示されうる。なお、0と1の意味が逆であってもよく、すなわち、チャネル推定が可能である場合に「1」が、チャネル推定が可能でない場合に「0」を、端末装置に通知されてもよい。
【0023】
なお、基地局装置は、バンドが2つのサブバンドに分割されることを示す情報をさらに通知してもよい。一例として、基地局装置は、情報「2、1、1」により、サブバンドが2つに分割されうること、及び、2つのサブバンドの両方においてチャネル推定が可能であることを端末装置に通知しうる。また、基地局装置は、情報「4、1、1、0、0」により、サブバンドが4つに分割されうること、及び、第1のサブバンド及び第2のサブバンドにおいてチャネル推定が可能であり、第3のサブバンド及び第4のサブバンドにおいてチャネル推定が可能でないことを端末装置に通知しうる。サブバンドの数が通知されることにより、端末装置は、サブバンドごとのチャネル推定が可能であるか否かを示す情報の長さを特定することができる。なお、サブバンドの数が事前に決まっている場合、この情報は通知される必要がない。
【0024】
なお、サブバンドで送信されるOCCの部分系列と直交していない、他の割り当てられているOCCの部分系列がある場合であっても、その相関値が所定値より低くなることが想定される場合など、一定の精度でチャネル推定を実行可能である場合には、チャネル推定が可能であることを示す情報が端末装置に通知されてもよい。例えば、基地局装置が、多数のアンテナを用いて複数のビームを形成して、信号を空間多重する場合、その空間分離性能を加味して、上述のOCCの部分系列の直交性の評価が行われてもよい。すなわち、同じリソースエレメントで送信されるDMRSを受信する複数の端末装置のそれぞれのために割り当てられるOCCの部分系列が直交しない場合であっても、基地局装置における空間分離性能によって、相互のサブバンドにおけるチャネル推定への影響が低減されうる。このため、基地局装置は、そのような空間分離の影響を以下の式(1)によって評価しうる。
【0025】
式(1)
ここで、nは、サブバンドのインデクスを示し、例えば、DMRSによってチャネル推定が行われるバンドが2つのサブバンドに分割される場合は0又は1の値をとる。また、wk'は、端末装置k’に向けるビームを形成するためのプリコーディングベクトルであり、h は、基地局装置から端末装置kまでのチャネル推定値であり、bk'は、端末装置k’のために設定されたOCCのうち、サブバンドnに対応する部分系列を示すベクトルである。これらの値により、wk' k' Tは、端末装置k’のために設定されたOCCのうちのサブバンドnに対応する部分系列の端末装置kにおける受信信号を示すベクトルを表すことができる。なお、上付きのTは、ベクトルの転置を示す。端末装置kでは、受信信号に対して、端末装置kのために設定されたOCCのうちのサブバンドnに対応する部分系列を示すベクトルakを乗じることにより、相関値を算出する。ここで、それぞれ部分系列を示すベクトルbk'とベクトルakとが直交している場合、bk' Tkがゼロであるから、wk' k' Tkもゼロである。一方で、ベクトルbk'とベクトルakとが直交していない場合であっても、wk' が十分に小さくなるようなウェイトベクトルwk'が用いられている場合には、式(1)の値が十分に小さく、端末装置kにおけるチャネル推定に対する影響が十分に小さいことが想定される。
【0026】
なお、基地局装置は、上述の式(1)におけるチャネル推定値h を、端末装置kから受信した上りリンク信号(例えば、サウンディング参照信号(SRS))に基づいて取得しうる。また、基地局装置は、前回DMRSを送信した際に端末装置kによって算出されたチャネル推定値の報告を受信し、そのチャネル推定値を、h として使用してもよい。なお、SRSによって取得されるチャネル推定値は、サブバンドにおける伝送路の状態を必ずしも正確に表現しない場合があり、また、前回のDMRSに基づくチャネル推定値は、現在のチャネルの状態を正確に反映していないことが想定される。このため、基地局装置は、空間分離の影響を、チャネル推定値の不正確性を考慮して、以下の式(2)によって評価してもよい。
式(2)
なお、ekは、伝送路推定値の誤差に相当するランダム変数でありうる。なお、ekの電力の大きさは、例えば、過去のチャネル推定値の正確性などに基づいて、経験的に定められうる。
【0027】
基地局装置は、上述の式(1)や式(2)によって算出した値が所定値より小さいと判定した場合に、OCCの部分系列が他の部分系列と直交していない場合であっても、その部分系列に対応するサブバンドでのチャネル推定が可能であることを端末装置に通知してもよい。また、基地局装置は、OCCの部分系列が他の部分系列と直交しているか否かを示す情報と、上述の式(1)や式(2)によって算出した値とを、端末装置に通知してもよい。また、基地局装置は、上述の式(1)や式(2)の計算結果のみを端末装置に通知してもよい。なお、基地局装置は、空間多重の影響やチャネルの影響を含めずに相関値を計算した結果を端末装置に通知してもよい。
【0028】
端末装置は、基地局装置から受信した情報に基づいて、サブバンド単位でのチャネル推定が可能である場合に、サブバンド単位でのチャネル推定を行いうる。なお、端末装置は、例えば、サブバンド単位でチャネル推定値を算出した場合に、そのサブバンドごとのチャネル推定値の変動の大きさに基づいて、チャネル推定値を平均化するか否かを判定してもよい。例えば、端末装置は、サブバンド間でチャネル推定値の変化が所定値以下である場合には、そのチャネル推定値を平均化(チャネル推定値同士を加算して加算したサンプルの数で除算)すると判定しうる。サブバンド間でのチャネル推定値の変化の大きさは、例えば、算出したチャネル推定値同士の相関値を計算することにより、相関値が大きい場合には変化が小さく、相関値が小さい場合には変化が大きいと判定されてもよい。また、チャネル推定値の差の大きさにより、変化の大きさが判定されてもよい。これによれば、端末装置は、例えば熱雑音等の影響を抑制し、より正確なチャネル推定値を得ることができる。一方で、端末装置は、サブバンド間でチャネル推定値の変化が所定値を超える場合には、そのチャネル推定値を平均化しないと判定しうる。ここで、端末装置は、DMRSに対応するバンド(例えばリソースブロック)を超えて、隣接するバンド(例えば隣接するリソースブロック)におけるチャネル推定値を加算して、平均値の算出を行ってもよい。端末装置は、平均値の算出を行った場合、その計算が行われたこと又はサブバンドごとのチャネル推定が必要でないと想定されることを、基地局装置へ通知してもよい。なお、端末装置は、サブバンド単位でのチャネル推定を行う能力があるか否かを示す能力情報を、事前に基地局装置へ通知してもよい。
【0029】
(装置構成)
図4を用いて、基地局装置および端末装置のハードウェア構成例について説明する。基地局装置および端末装置は、一例において、プロセッサ401、ROM402、RAM403、記憶装置404、及び、通信回路405を含んで構成される。プロセッサ401は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM402や記憶装置404に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM402は、基地局装置および端末装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM403は、プロセッサ401がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置404は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路405は、例えば、5Gやその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、図4では、1つの通信回路405が図示されているが、例えば基地局装置及び端末装置は、2つ以上の通信回路を有してもよい。また、例えば、基地局装置および端末装置は、5G用やその後継規格用の無線通信回路と共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置および端末装置は、5G用のアンテナとその後継規格用のアンテナとを別個に有してもよい。また、端末装置は、無線LAN等の他の無線通信ネットワークのための通信回路を有してもよい。なお、基地局装置および端末装置は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路を有してもよい。なお、本実施形態では、端末装置は、共通の周波数帯域での通信が可能な複数の通信回路を有するものとする。また、基地局装置は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。
【0030】
図5は、基地局装置の機能構成例を示す図である。基地局装置は、例えば、OCC決定部501、DMRS生成部502、DMRS情報通知部503、及び、送信部504を含んで構成される。なお、図5では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置は、5Gやその後継規格の基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図5の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図5の各機能は、例えば、プロセッサ401がROM402や記憶装置404に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路405の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0031】
OCC決定部501は、各端末装置のためのDMRSを送信する際に使用する、直交カバーコード(OCC)を決定する。OCC決定部501は、データを送信する先の各端末装置に対して、例えば、最も粗い周波数分解能に対応するバンドに含まれる、DMRSを送信するためのリソースエレメントの数に応じた符号長のOCCを割り当てる。例えば、図2(C)のように、最も粗い周波数分解能である1リソースブロック分のバンドにおいて、DMRSを送信するのに使用されるリソースエレメントが8個の場合、基地局装置は、各端末装置に対して、図3(A)に示すような符号長が8のOCCを割り当てる。DMRS生成部502は、OCC決定部501において決定されたOCCを用いて、各端末装置のチャネル推定のためのDMRSを生成する。DMRS情報通知部503は、各端末装置のために割り当てたOCCの部分系列を用いて、上述の最も粗い周波数分解能より精細な周波数分解能に対応するサブバンドごとに、チャネル推定が可能であるか否かを示す情報を生成する。この情報は、例えば、上述のように、OCC決定部501によって割り当てられたOCCの系列の一部であり、各サブバンドに対応する部分系列が、同じリソースエレメントにおいて送信される他の端末装置のための他のOCCの部分系列の全てと直交しているか否かを示す情報を含む。また、この情報は、例えば、割り当てられたOCCについての部分系列が他のOCCの部分系列と直交していない場合であっても、空間多重によって干渉を抑制することにより、サブバンドごとのチャネル推定が可能である場合には、サブバンドごとのチャネル推定が可能ことを示しうる。また、この情報に、空間多重により、直交しないOCCの部分系列が存在する場合に、チャネル推定精度にどの程度の影響を与えることとなるかを示す、例えば上述の式(1)や式(2)の算出結果の値を示す情報が含められてもよい。送信部504は、例えば、DMRS生成部502によって生成されたDMRSとユーザデータとを含んだ下りリンクの信号を送信する。
【0032】
図6は、端末装置の機能構成例を示す図である。端末装置は、例えば、DMRS情報受信部601、受信部602、チャネル推定部603、及び平均化処理部604を含んで構成される。なお、図6では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置は、5Gやその後継規格の端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図6の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図6の各機能は、例えば、プロセッサ401がROM402や記憶装置404に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路405の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0033】
DMRS情報受信部601は、例えば、DMRSが送信されるリソースエレメントを特定可能とする情報や、OCCの系列の情報を受信する。また、DMRS情報受信部601は、上述のDMRS情報通知部503によって通知された、サブバンド単位でのチャネル推定が可能か否かを判定可能とする情報を受信する。受信部602は、例えば、基地局装置から送出されたDMRS及びユーザデータを含んだ下りリンクの信号を受信する。チャネル推定部603は、DMRS情報受信部601によって受信した情報に基づいて、DMRSを用いてチャネル推定を行う。チャネル推定部603は、DMRS情報受信部601において受信された情報がサブバンド単位でのチャネル推定が可能であることを示す場合、サブバンド単位でチャネル推定を行う。なお、チャネル推定部603は、一部のサブバンドにおいてのみサブバンド単位でのチャネル推定が可能であり、他のサブバンドにおいてはサブバンド単位のチャネル推定をすることができない(干渉が大きく十分な精度でチャネル推定を行うことができない)場合、その一部のサブバンドにおいてのみサブバンド単位のチャネル推定を行い、他のサブバンドについては、DMRSが送信されるバンド(例えばリソースブロック)全体のチャネル推定のみを行うようにしてもよい。また、チャネル推定部603は、DMRS情報受信部601によって受信した情報がサブバンド単位のチャネル推定を行うことができないことを示す場合、バンド全体のチャネル推定を行い、サブバンド単位のチャネル推定を行わない。平均化処理部604は、例えば、チャネル推定部603によって複数のサブバンドについてサブバンド単位のチャネル推定が行われた場合に、その複数のサブバンドのそれぞれについて得られたチャネル推定値を平均化するか否かを判定する。例えば、平均化処理部604は、サブバンド単位のチャネル推定値の変化の大きさを、チャネル推定値間の差分値や相関値を算出することにより特定し、変化が小さい場合(差分値が所定値以下、又は、相関値が所定値以上の場合など)に、チャネル推定値の平均化を行いうる。チャネル推定部603又は平均化処理部604によって得られたチャネル推定値又はその平均値は、受信部602に入力され、ユーザデータの復調の際に使用されうる。サブバンドごとのチャネル推定値が用いられる場合は、サブバンド内の信号の復調に、そのサブバンドに対応するチャネル推定値が使用される。一方、バンド(例えばリソースブロック)全体のチャネル推定値が用いられる場合は、そのバンド内の信号の復調に、そのバンド全体のチャネル推定値が使用される。
【0034】
(処理の流れ)
続いて、図7を用いて基地局装置によって実行される処理の流れの例について説明する。なお、図7に示す処理ステップの詳細は上述の通りであるため、ここでは処理の流れを概説するにとどめ、その詳細については繰り返さない。また、図7に示す処理ステップの順序は一例であり、その前後が入れ替えられてもよい。
【0035】
まず、基地局装置は、各端末装置に割り当てるOCCを決定する(S701)。ここでのOCCの割り当ては、例えば、図2(C)のように、1つのDMRSでチャネル推定が行われる周波数範囲が拡張され、例えば符号長が8に拡張されたOCCの割り当てが行われるものとする。そして、基地局装置は、第1の端末装置に割り当てたOCCの、サブバンド単位での第2の端末装置に割り当てたOCCとの直交性の評価を行う(S702)。例えば、基地局装置は、DMRSが送信されるリソースエレメントをサブバンドに分割し、そのサブバンド内のDMRS用のリソースエレメントにマッピングされる、第1の端末装置のためのOCCの部分系列と、同じリソースエレメントにマッピングされる第2の端末装置のためのOCCの部分系列との相関値を算出する。そして、基地局装置は、その相関値がゼロである場合には、第1の端末装置のOCCの部分系列と第2の端末装置のOCCの部分系列とが直交していると評価し、相関値がゼロでない場合には、第1の端末装置のOCCの部分系列と第2の端末装置のOCCの部分系列とが直交していないと評価する。なお、基地局装置は、上述のように、空間多重のために使用されるウェイトベクトルを用いて相関値を算出してもよい。
【0036】
そして、基地局装置は、S702において実行した直交性の評価の結果を含んだDMRS情報を生成して、端末装置へ送信する(S703)。例えば、基地局装置は、S702において、あるサブバンドについて、第1の端末装置のOCCの部分系列が、第1の端末装置と異なるいずれの第2の端末装置のOCCの部分系列とも相関値がゼロであった場合には、そのサブバンドはサブバンド単位でのチャネル推定が可能であることを示す情報を、DMRS情報として含めて、第1の端末装置へ送信する。また、基地局装置は、S702において各端末装置のためのOCCの部分系列が他の端末装置のためのOCCと直交しているか否かを示す情報と、空間多重のためのウェイトベクトルを含めて算出した相関値とを、DMRS情報に含めて送信してもよい。なお、DMRS情報は、例えば、そのDMRS情報が送信される端末装置に割り当てられたOCCの情報と、そのOCCがマッピングされるリソースエレメントの情報とを含む。また、DMRS情報は、どの周波数範囲がサブバンドに該当するかを示す情報を含んでもよい。なお、サブバンドへの分割の仕方は、例えば事前に規格上の定義がなされていてもよく、その場合は、どの周波数範囲がサブバンドに該当するかなどの情報が端末装置へ通知される必要はない。基地局装置は、端末装置に対して割り当てたOCCを用いてDMRSを生成し、また、その端末装置宛てのユーザデータを含んだ無線信号を生成し、その端末装置へ送信する(S704)。
【0037】
次に、図8を用いて端末装置によって実行される処理の流れの例について説明する。なお、図8に示す処理ステップの詳細は上述の通りであるため、ここでは処理の流れを概説するにとどめ、その詳細については繰り返さない。また、図8に示す処理ステップの順序は一例であり、その前後が入れ替えられてもよい。
【0038】
まず、端末装置は、基地局装置から、DMRS情報を受信する(S801)。端末装置は、そのDMRS情報から、自装置のためのDMRSで使用されるOCCの系列及びそのDMRSがどのリソースエレメントで送信されるかを特定する情報を受信する。また、端末装置は、受信したDMRS情報に基づいて、自装置に割り当てられたOCCの系列により、サブバンド単位でのチャネル推定が可能であるか否かを判定する(S802)。例えば、DMRS情報にサブバンド単位でのチャネル推定の可否を示す情報が含まれている場合、端末装置はその情報に従う。一方、DMRS情報に上述の式(1)や式(2)の計算結果が含まれる場合には、端末装置は、例えば、自装置のためのDMRSの受信強度や、受信器の性能に基づいて、サブバンド単位で所定のチャネル推定精度が得られると判定した場合にはサブバンド単位でのチャネル推定が可能であると判定しうる。このように、基地局装置は、上述の式(1)や式(2)の計算結果など、端末装置においてサブバンド単位でのチャネル推定が可能であるか否かを特定可能な情報を送信すれば足りる。一例において、同じDMRS情報を第1の端末装置及び第2の端末装置が受信した場合に、第1の端末装置はサブバンド単位でのチャネル推定が可能であると判定し、第2の端末装置はサブバンド単位でのチャネル推定が可能でないと判定してもよい。
【0039】
端末装置は、サブバンド単位でのチャネル推定が可能と判定した場合(S802でYES)、各サブバンドに対応するOCCの部分系列を用いて、サブバンドごとのチャネル推定を実行する(S803)。そして、端末装置は、サブバンド単位でのチャネル推定値を平均化するか否かを判定する(S804)。端末装置は、例えば、サブバンド単位でのチャネル推定値の変化量が所定値以上である場合又はチャネル推定値の相関値が所定値以下である場合、チャネル推定値を平均化しないと判定する(S804でNO)。この場合、端末装置は、サブバンドごとに、対応するチャネル推定値を用いてユーザデータ等の受信処理を実行する(S805)。一方、端末装置は、サブバンド単位でのチャネル推定値の変化量が所定値未満である場合又はチャネル推定値の相関値が所定値を超える場合、チャネル推定値を平均化すると判定する(S804でYES)。この場合、端末装置は、チャネル推定値を平均化し(S806)、その平均化したチャネル推定値をバンド全体(例えばリソースブロック)で共通のチャネル推定値として使用して、そのバンド全体のユーザデータ等の受信処理を実行する(S807)。これにより、サブバンド単位でのチャネル推定により周波数分解能の低下を抑制しながら、その変化量が小さくチャネル推定値がバンド全体で一定とみなすことができる場合には、平均化処理を行うことにより熱雑音等の影響を抑制してチャネル推定値の高精度化を図ることができる。なお、端末装置は、チャネル推定値の平均化を行った場合、基地局装置に対して、平均化が行われたこと又はサブバンド単位のチャネル推定が不要であることを通知してもよい。
【0040】
なお、平均化は、バンドの範囲を超えて、例えば隣接するサブバンド間のチャネル推定値を用いて行われてもよい。すなわち、各サブバンドに対して、それぞれ異なる範囲でチャネル推定値の平均化が行われてもよい。例えば、所定のサブバンドのチャネル推定値と、そのサブバンドと周波数が高い方向に隣接するサブバンドのチャネル推定値と、そのサブバンドと周波数が低い方向に隣接するサブバンドのチャネル推定値との平均値が算出されうる。この場合、各サブバンドに対して異なるチャネル推定値の集合が用いられて平均値が算出されるため、サブバンドごとに異なる平均化後のチャネル推定値が算出される。このようにして、サブバンドごとに平均値が算出された場合、端末装置は、その平均値を用いて、S805のように、サブバンドごとのデータの受信処理を行ってもよい。
【0041】
また、端末装置は、サブバンド単位でのチャネル推定が可能でないと判定した場合(S802でNO)は、OCCの系列全体を用いて、バンド全体に対するチャネル推定を実行する(S808)。そして、端末装置は、そのチャネル推定値を用いて、そのバンド全体のユーザデータ等の受信処理を実行する(S807)。
【0042】
以上のように、OCCの系列が系列全体のみならずその一部も他の系列と直交する状況において、基地局装置から端末装置へ、その部分系列を用いたサブバンド単位のチャネル推定が可能であることが通知される。これにより、チャネル推定値の周波数分解能の低下を抑制することができ、それに伴う通信性能の低下を防ぐことができる。また、必要に応じてサブバンドごとのチャネル推定値を平均化することによって、チャネル推定値の周波数方向における変動が少ない場合に、チャネル推定値を高精度化することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0043】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8