(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049882
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】繊維、繊維形成体および繊維製品
(51)【国際特許分類】
D06M 15/61 20060101AFI20240403BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20240403BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20240403BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240403BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20240403BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240403BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240403BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D06M15/61
D06M13/224
D06M13/17
D06M15/53
D06M13/292
A01N25/10
A01P3/00
A01N47/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156382
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】506276907
【氏名又は名称】ES Indorama Ventures株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506275575
【氏名又は名称】イーエス インドラマ ベンチャーズ リミテッド パートナーシップ
(71)【出願人】
【識別番号】506276332
【氏名又は名称】イーエス インドラマ ベンチャーズ デンマーク アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 真
(72)【発明者】
【氏名】百武 孝洋
【テーマコード(参考)】
4H011
4L033
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB04
4H011DA10
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA39
4L033CA48
4L033CA57
(57)【要約】
【課題】 細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れた繊維、繊維成形体および繊維製品を提供すること。
【解決手段】 ポリアルキレンビグアナイド化合物と、ポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤が付着された繊維による。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)および成分(B)が付着された繊維。
(A)一般式(1)で示されるポリアルキレンビグアナイド化合物;
(B)ポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤;
(式中、R
1は炭素数2~8のアルキレン基、nは2~18の整数を示す。)
【請求項2】
さらに下記成分(C)が付着された、請求項1に記載の繊維。
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤
【請求項3】
前記成分(A)の付着量が、前記繊維の質量に対して0.003~0.5質量%である、請求項1または2に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維がオレフィン系樹脂を含む熱接着性複合繊維である、請求項1または2に記載の繊維。
【請求項5】
前記成分(B)のポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、およびポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤である、請求項1または2に記載の繊維。
【請求項6】
前記成分(B)の多価アルコール型ノニオン界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコール型ノニオン界面活性剤である、請求項1または2に記載の繊維。
【請求項7】
請求項1または2に記載の繊維を含む、繊維成形体。
【請求項8】
請求項1または2に記載の繊維を含む、繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性および耐久親水性を有する繊維に関する。更に詳しくは、おむつ、ナプキン、パッドなどの吸収性物品、衛生マスクなどの医療材料に適した抗菌性および耐久親水性を有する繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活の快適性や衛生性が重視され、これに対応するように抗菌機能や消臭機能を有する繊維が多くの商品に応用されている。このため、抗菌機能を有する繊維製品の市場は、今後も引き続き継続的な拡大が期待されている。このような市場動向の中で、繊維に抗菌性を付与する方法としては、銀系無機抗菌剤に代表される無機抗菌剤や、光触媒機能を示す無機材料等を、繊維紡糸工程で繊維内に練り込む方法が主流である(特許文献1)。また、別の方法としては、抗ウイルス剤と塩化ベンザルコニウムとを有する抗ウイルス性繊維加工剤を繊維表面に塗工する方法もある(特許文献2)。
【0003】
吸収性物品や医療衛生材料に用いられる繊維製品は、肌に長時間触れることから、肌への刺激性が少なく、優れた風合いが求められる他、蒸れにくさや通液特性を向上させる目的で、繰り返しの通液に対する透過性(耐久親水性)が求められている。特に、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パッドなどに代表される吸収性物品の表面材には、耐久親水性を高めることによって、尿や経血などの液体を残さず迅速に吸収材へと通過させる性能が不可欠である。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、紡糸工程で抗菌剤を繊維内に練り込む方法では、繊維内に練り込まれた抗菌剤は熱可塑性ポリマーに覆われてしまっているため抗菌効果を発揮しにくく、抗菌性を高めようとして抗菌剤の濃度を増加させると、糸切れや延伸不良の原因となり、良好な紡糸性が得られないという問題がある。また、抗菌剤として、銀や亜鉛などを含む無機系抗菌剤が開示されているが、耐久親水性を有する界面活性剤などと併用すると耐久親水性が低下または失活してしまい、満足できる通液特性が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に開示されている繊維製品では、肌への刺激性が比較的強いとされるカチオン界面活性剤の一つである塩化ベンザルコニウムを必須成分としている。このため、当該繊維製品は肌への刺激性が強い恐れがあり、長時間直接肌に触れる吸収性物品や医療衛生材料向けの繊維製品には向かないという問題がある。さらに、開示されている繊維材料は、綿、絹、麻、ウールなどの天然繊維やレーヨン等のセルロース繊維、酢酸セルロース繊維などの半合成繊維、ポリエステルやポリアミド、ポリアクリロニトリルなどの合成繊維といった風合いに乏しい繊維材料であり、また、通液特性に関する課題や効果についても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-228823号公報
【特許文献2】特開2019-210563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れた繊維、繊維成形体、および繊維製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、抗菌剤としてポリアルキレンビグアナイド化合物を使用することで、添加量が少ない割に高い抗菌性を示すこと、耐久親水性が悪化しにくいことを見出した。そして、ポリアルキレンビグアナイド化合物と特定のノニオン界面活性剤を併用することで、優れた抗菌性と耐久親水性を兼ね備えた繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1]下記の成分(A)および成分(B)が付着された繊維。
(A)一般式(1)で示されるポリアルキレンビグアナイド化合物;
(B)ポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤および多価アルコール型ノニオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤;
(式中、R
1は炭素数2~8のアルキレン基、nは2~18の整数を示す。)
[2]さらに下記成分(C)が付着された、[1]に記載の繊維。
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤;
[3]前記成分(A)の付着量が、前記繊維の質量に対して0.003~0.5質量%である、[1]または[2]に記載の繊維。
[4]前記繊維がオレフィン系樹脂を含む熱接着性複合繊維である、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維。
[5]前記成分(B)のポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、およびポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤である、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維。
[6]前記成分(B)の多価アルコール型ノニオン界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコール型ノニオン界面活性剤である、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の繊維を含む、繊維成形体。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の繊維を含む、繊維製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維を用いることで、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れた繊維、繊維成形体、および繊維製品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の繊維は、下記で詳述する成分(A)および成分(B)が付着していることが重要であり、必要に応じて成分(C)および/またはその他成分を含んでいてもよい。
【0012】
(成分(A))
本発明に用いる成分(A)は、一般式(1)で示されるポリアルキレンビグアナイド化合物である。
(式中、R
1は炭素数2~8のアルキレン、nは2~18の整数を示す。)
【0013】
一般式(1)中のR1は、炭素数2~8のアルキレンから選ばれ、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレンなどの直鎖状のアルキレンの他、イソプロピレン、イソブチレン、イソペンチレン、ジメチルプロピレン、ジメチルブチレンなどの分岐鎖状のアルキレンを選択できる。中でも、細菌やカビ、ウイルスなどに対する増殖抑制効果の観点から、R1は、炭素数が4~8のアルキレンが好ましく、ヘキサメチレンであることがより好ましい。また、単一のR1であるポリアルキレンビグアナイド化合物を単独で用いてもよいし、R1の異なる2種以上のポリアルキレンビグアナイド化合物を併用してもよい。
【0014】
一般式(1)中のnは、ポリアルキレンビグアナイド化合物の重合度を示しており、2~18の整数から選ばれる。中でも、細菌やカビ、ウイルスなどに対する増殖抑制効果、取り扱い性の観点から、10~14の整数であることが好ましく、11~13の整数であることがより好ましい。また、単一の重合度nであるポリアルキレンビグアナイドを単独で用いてもよいし、重合度nの異なるポリアルキレンビグアナイドを併用してもよい。
【0015】
本発明において、ポリアルキレンビグアナイド化合物は、塩酸、硝酸、もしくは硫酸などの無機酸との塩、または酢酸、乳酸、もしくはグルコン酸などの有機酸との塩の形態も含まれる。かかる塩の中では、塩酸塩、酢酸塩、またはグルコン酸塩であることが好ましく、塩酸塩であることがより好ましい。また、ポリアルキレンビグアナイド化合物およびその塩を併用することも可能である。
【0016】
ポリアルキレンビグアナイド化合物は、公知の方法に従って製造したものを用いてもよく、市販の製品を用いてもよい。市販の製品としては、例えば、「マルカサイドAV(大阪化成株式会社製)」や「Pr.CLEAN 500(プレミアライン株式会社製)」が挙げられる。
【0017】
本発明の繊維への成分(A)の付着量は、特に限定されないが、繊維の質量に対して0.003~0.5質量%であることが好ましく、0.005~0.1質量%であることがより好ましく、0.005~0.05質量%であることがさらに好ましく、0.005~0.03質量%であることが特に好ましい。成分(A)の付着量は、0.003質量%以上であれば、細菌やカビ、ウイルスなどに対する増殖抑制効果が満足できるものとなり、0.5質量%以下であれば、満足できる耐久親水性が得られる他、肌への刺激性の低減、使用量削減による環境負荷・コスト低減などが可能となる。
【0018】
(成分(B))
本発明に用いる成分(B)は、ポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤(成分(B1))および多価アルコール型ノニオン界面活性剤(成分(B2))からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤である。
【0019】
本発明に用いるポリアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤(成分(B1))は、特に限定されないが、繊維に優れた耐久親水性を付与する観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、およびポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤であることが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、およびポリオキシアルキレン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤であることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いる多価アルコール型ノニオン界面活性剤(成分(B2))は、特に限定されないが、繊維に優れた耐久親水性を付与する観点から、グリセリン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコール型ノニオン界面活性剤であることが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコール型ノニオン界面活性剤であることがより好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルであることがさらに好ましい。
【0021】
本発明に用いる成分(B)を構成するアルキルは、特に限定されず、炭素数が8~24のアルキルを例示でき、耐久親水性の向上と繊維処理剤中での分散安定性の観点から、炭素数が12~22のアルキルであることが好ましい。このアルキルは、任意の-CH2-の一部が-CH=CH-、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンなどで置き換えられてもよい。このアルキルは、パーム油、牛脂、ナタネ油、米糠油、または魚油などの天然油脂由来のアルキルであっても、合成系のアルキルであってもよい。
【0022】
本発明に用いる成分(B)を構成する脂肪酸は、特に限定されず、炭素数が6以上の脂肪酸を例示でき、耐久親水性の向上の観点から、炭素数が8~24の脂肪酸であることが好ましい。この脂肪酸を構成する任意の-CH2-の一部が-CH=CH-、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンなどで置き換えられてもよい。この脂肪酸は、パーム油、牛脂、ナタネ油、米糠油、または魚油などの天然油脂由来の脂肪酸であっても、合成系の脂肪酸であってもよい。
【0023】
本発明に用いる成分(B)を構成する多価アルコールは、特に限定されず、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、ショ糖、ポリグリセリン、ジエタノールアミン、またはジプロパノールアミンなどの2~8価のアルコールを例示できる。中でも、耐久親水性の向上の観点から、グリセリン、ソルビタン、ポリグリセリン、またはジエタノールアミンが好ましく、ソルビタンであることがより好ましい。
【0024】
成分(B1)を構成するポリオキシアルキレン(ポリアルキレンオキシド)は、特に限定されず、ポリエチレングリコール、またはアルキレンオキシドを繰り返し単位とする重合物を例示できる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドを例示でき、炭素数が同一のアルキレンオキシドの単独重合物であっても、炭素数が異なるアルキレンオキシドのランダムもしくはブロック共重合物であってもよく、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムもしくはブロック共重合物であってもよい。中でも、繊維に優れた耐久親水性を付与する観点から、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド単独重合物、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムもしくはブロック共重合物が好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量mは、特に限定されないが、200~600が好ましい。なお、ポリエチレングリコールをPEGと略し、数平均分子量mの場合に、PEG(m)と表記する場合がある。また、アルキレンオキシドを繰り返し単位とする重合物におけるアルキレンオキシドの繰り返し数nは、特に限定されないが、5~50が好ましく、アルキレンオキシドのうち50~100%がエチレンオキシドであることが好ましい。なお、エチレンオキシドをEOと略し、繰り返し数nの場合に、EO(n)として表記する場合がある。
【0025】
成分(B1)は、アルコール、脂肪酸もしくはアルキルアミンなどに直接アルキレンオキシドを付加させる方法、グリコール類にアルキレンオキシドを付加させて得られるポリエチレングリコール類に脂肪酸などを反応させる方法、または多価アルコールに脂肪酸を反応して得られたエステル化物もしくはアミド化物にアルキレンオキシドを付加させる方法などにより得ることが可能である。
【0026】
成分(B2)は、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化またはアミド化反応をさせる方法などにより得ることが可能である。
【0027】
成分(B)の付着量は、特に限定されないが、繊維の質量に対して0.015~1.0質量%であることが好ましく、0.02~0.8質量%であることがより好ましく、0.04~0.6質量%であることがさらに好ましい。1.0質量%以下であれば、繊維にべたつきを感じにくくなるため風合いが良好になり、0.015質量%以上であれば、耐久親水性に優れた繊維が得られる。
【0028】
成分(A)に対する成分(B)の付着量比率(成分(B)の付着量/成分(A)の付着量)は、特に限定されないが、0.1~100であることが好ましく、1~50であることがより好ましい。0.1以上であれば、耐久親水性に優れ、100以下であれば、抗菌性に優れる繊維が得られる。
【0029】
(成分(C))
本発明の繊維は、特に限定されないが、繊維、繊維成形体、または繊維製品への静電気を抑制する目的で、さらに成分(C)として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤が付着されていてもよい。成分(C)の付着による静電気の抑制によって、例えば、繊維に優れたカード通過性(カード機からの繊維の排出性)を付与できる他、異物付着防止、剥離帯電防止、機能材塗布時の弾き防止、繊維製品脱着時の静電気防止などの効果が得られる。
【0030】
カルボン酸塩は、特に限定されず、オレイン酸カリウム塩、またはラウリン酸ナトリウム塩を例示できる。スルホン酸塩は、特に限定されず、ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、またはセチルスルホン酸ナトリウム塩などのアルキルスルホン酸塩類、ラウリルベンゼンスルホン酸塩などのアルキルベンゼンスルホン酸塩を例示できる。硫酸エステル塩は、特に限定されず、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩などのアルキル硫酸エステル塩、ラウリルアルコールにオキシアルキレンを付加した化合物の硫酸エステルナトリウム塩などの硫酸アルキル(ポリオキシアルキレン)エステル塩を例示できる。リン酸エステル塩は、特に限定されず、ステアリルアルコールなどの高級アルコールまたはこれにポリオキシアルキレンを付加した化合物のリン酸エステル塩を例示できる。中でも高級アルコール、ポリオキシアルキレンを付加した硫酸エステルアルカリ金属塩またはリン酸エステルアルカリ金属塩が制電性に優れているため好ましく、リン酸エステルアルカリ金属塩は繊維の平滑性にも優れているため特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
成分(C)の付着量は、特に限定されないが、繊維の質量に対して0.02~0.6質量%であることが好ましく、0.06~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.4質量%であることがさらに好ましい。0.02質量%以上であれば、静電気が抑制されてカード通過性が良好となり、0.6質量%以下であれば、抗菌性に優れた繊維が得られる。
【0032】
成分(A)に対する成分(C)の付着量比率(成分(C)の付着量/成分(A)の付着量)は、特に限定されないが、0.1~100であることが好ましく、2~65であることがより好ましい。0.1以上であれば、静電気が抑制でき、100以下であれば、抗菌性に優れる繊維が得られる。
【0033】
(その他成分)
本発明の繊維は、成分(A)、成分(B)または成分(C)以外の成分(その他成分)が付着していてもよい。その他成分は、特に限定されず、炭素数2~4のアルカノールアミンなどのpH調整剤、EDTA、ポリリン酸ナトリウムなどのキレート剤、スクワラン、もしくはヒアルロン酸ナトリウムなどの皮膚保護剤、アルキルベタイン、もしくはポリオキシエチレン変性シリコーンなどの親水剤、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、もしくはパーフルオロアルキル基含有化合物などの撥水剤、フェニルエチルアルコール、もしくはヘキシルシンナミックアルデヒドなどの香料、防腐剤、防錆剤、または消泡剤を添加してもよい。
【0034】
(繊維)
本発明の繊維は、単一成分からなる繊維(単一繊維)であっても、2種類以上の成分からなる複合繊維であってもよい。また、繊維の断面形状は、特に限定されず、円や楕円などの丸型、三角や四角などの角型、星型や八葉型などの異型、または分割や中空などのいずれも使用することができる。
【0035】
本発明の繊維が単一繊維の場合、特に限定されず、天然繊維(木質繊維など)、再生繊維(レーヨンなど)、半合成繊維(アセテートなど)、合成繊維(ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、塩化ビニル系樹脂など)などの繊維を例示できるが、ポリオレフィン系樹脂からなる合成繊維であると、不織布や繊維製品に優れた風合いを付与する効果が得られるため好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン系樹脂、結晶性ポリプロピレン(PP)、またはプロピレンを主成分とするプロピレンとαオレフィン(プロピレンを除く)との共重合体(Co-PP)などのポリプロピレン系樹脂を例示できる。
【0036】
本発明の繊維が複合繊維の場合、その複合形態は、特に限定されず、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型、放射型または海島型を例示できるが、風合いや強度の観点から、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、または並列型が好ましい。また、複合繊維を構成する成分は、特に限定されないが、少なくとも一方の成分がポリオレフィン系樹脂であると、不織布や繊維製品に優れた風合いを付与する効果が得られる。また、複合繊維を構成する成分の組み合わせとしては、特に限定されないが、融点差が10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。融点差を有することで、複合繊維に熱接着性を付与することができ、接着剤などの肌への刺激性を少なからず有する成分を用いずに不織布化できることから、肌への刺激性を低減することが可能となる。具体的な高融点成分/低融点成分の組み合わせとしては、PP/HDPE、PP/LLDPE、PP/Co-PP、ポリエチレンテレフタレート(PET)/HDPE、PET/LLDPE、PET/共重合ポリエチレンテレフタレート(Co-PET)、PET/PP、またはポリ乳酸(PLA)/HDPEを例示できるが、風合い、原料コスト、生産安定性などの観点から、PP/HDPEまたはPET/HDPEの組み合わせであることが好ましく、PP/HDPEの組み合わせであることがより好ましい。また、複合繊維の熱接着性の観点から、複合繊維の表面に低融成分が50%以上占めていることが好ましく、70%以上占めていることがより好ましい。
【0037】
また、低融点成分と高融点成分の体積比としては、特に限定されないが、低融点成分の比率が大きいと、複合繊維同士の接着点強度が向上して強度が高い不織布が得られる傾向にあり、高融点成分の比率が大きいと、不織布や繊維製品の風合いが向上する傾向にある。かかる観点から、20/80~80/20であることが好ましく、30/70~70/30であることがより好ましい。
【0038】
本発明の繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、または可塑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0039】
繊維の繊度は、特に限定されないが、0.6~5.0dtexを例示できる。特に紙おむつなど吸収性物品の表面材に用いる場合、繊維をより低い繊度とすることで、不織布や繊維製品の風合いが良好となる。さらに、繊度が低いとスムース性が向上することから、肌との摩擦が低減し、かぶれが低減する。一方、加工性、ハンドリング性、生産コストなどの観点から、ある程度の繊度を有することが好ましい。かかる観点から、繊維の繊度は、0.8~2.2dtexがより好ましく、1.1~1.7dtexがさらに好ましい。
【0040】
(繊維成形体)
本発明の繊維成形体は上述した繊維を含んでいるため、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れる。
【0041】
本発明の繊維成形体としては、特に限定されず、ネット、ウェブ、編織物、または不織布を例示できるが、肌触りや風合いの観点から、不織布であることが好ましい。不織布としては、特に限定されず、スルーエアー不織布、エアレイド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、またはニードルパンチ不織布を例示できるが、肌触りや風合いの観点から、スルーエアー不織布であることが好ましい。
【0042】
本発明の繊維成形体は、本発明の効果を阻害しない限り、本発明の繊維以外の繊維を含んでいてもよく、その割合は、特に限定されないが、不織布の全重量に対して1~30質量%とすることができる。本発明の繊維以外の繊維の割合が1質量%以上であれば使用に見合う効果が得られ、30質量%以下であれば、細菌やカビ、ウイルスなどに対して満足できる増殖抑制効果および耐久親水性を有する不織布を得ることができる。
【0043】
繊維成形体は、一種類の(単層の)繊維成形体からなっていてもよいし、繊度、成分、密度、または製法などが異なる2種類以上の繊維成形体が積層されていてもよい。2種類以上の繊維成形体が積層されてなる場合、例えば、繊度や成分の異なる繊維成形体を積層することによって、繊維間に形成される隙間の大きさや耐久親水性の度合いが変化する繊維成形体とし、風合いや耐久親水性などをコントロールすることができる。
【0044】
本発明の繊維成形体は、特に限定されないが、本発明の繊維を含まない繊維成形体と積層一体化されていてもよい。積層一体化させることで、風合い、耐久親水性、強度などの各種物性をコントロールすることができる。本発明の繊維を含まない繊維成形体としては、スルーエアー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、フィルム、メッシュ、ネット、または織編物を例示できる。積層一体化させる方法としては、特に限定されないが、ホットメルトなどの接着剤により積層一体化する方法、スルーエアーや熱エンボスなどの熱接着により積層一体化する方法を例示できる。
【0045】
本発明の繊維成形体は、本発明の効果を損なわない範囲で、制電加工、撥水加工、親水加工、抗菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工、またはエレクトレット加工などを目的に応じて施されていてもよい。
【0046】
(繊維製品)
本発明の繊維製品は上述した繊維を含んでいるため、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れる。
【0047】
本発明の繊維製品は、特に限定されず、おむつ、ナプキン、または失禁パットなどの吸収性物品、マスク、ガウン、または術衣などの衛生材、壁用シート、障子紙、または床材などの室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、または生ごみ用カバーなどの生活関連材、使い捨てトイレまたはトイレ用カバーなどのトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、またはペット用タオルなどのペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、またはインクタンク用吸着剤などの産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、細菌に対する増殖抑制効果、蒸れにくさや通液特性が要求される様々な繊維製品を例示できる。特に、おむつ、ナプキン、または失禁パットなどの吸収性物品の表面材に好適である。
【0048】
(繊維の製造方法)
本発明の繊維は、特に限定されないが、成分(A)と成分(B)を混合した繊維処理剤を繊維に付着させても、成分(B)を繊維に付着させた上から成分(A)を付着(上塗り)させてもよい。また、付着させる方法は、特に限定されず、繊維の紡糸および/または延伸工程、もしくは熱処理・乾燥工程後に、オイリングロールとの接触、浸漬槽への浸漬、またはスプレー噴霧などの公知の方法により付着させることができる。
【0049】
(繊維成形体の製造方法)
本発明の繊維成形体は、成分(A)および成分(B)が付着された繊維を用いて繊維成形体に加工してもよく、成分(B)が付着した繊維を用いて繊維成形体に加工した後に、成分(A)を付着してもよく、繊維成形体を成形した後に、成分(A)および成分(B)を付着させてもよい。
【0050】
繊維成形体への加工方法は、特に限定されず、公知の方法を用いればよい。繊維成形体が不織布である場合、スルーエアー法もしくはポイントボンド法などのサーマルボンド法、ニードルパンチ法もしくはスパンレース法などの交絡法、または接着剤などを用いたレジンボンド法などにより、ウェブを一体化する方法を例示できる。ウェブは、特に限定されないが、スパンボンド法、メルトブローン法、またはトウ開繊法などにより形成された長繊維ウェブであっても、短繊維(ステープルやチョップ)を用いて、カード法、エアレイド法または湿式法などにより形成された短繊維ウェブであってもよい。肌触りや風合いの観点から、繊維長が20~102mmの短繊維を用いて、カード法により形成されたウェブを、スルーエアー法で一体化する方法が好ましい。なお、本発明において、「ウェブ」とは、シート状を保持できる程度に繊維が緩く絡まった状態の繊維集合体を言い、繊維同士が接着していない状態、または繊維同士がしっかり絡んでいない状態を意味する。
【実施例0051】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。尚、実施例で用いた原料、物性値の測定方法を以下に示す。
【0052】
(繊維処理剤)
本発明の繊維に付着させる繊維処理剤(1)~(13)の組成を表1に示す。
【0053】
【0054】
(繊維の繊度)
JIS L 1015に準拠し、繊維の繊度を測定した。
(繊維処理剤の付着量)
迅速残脂抽出装置R-II型(東海計器(株)製)を用いて、迅速抽出法により、繊維処理剤の付着量を測定した。試料繊維2gを金属製の筒(内径16mm、長さ130mm、底部はすり鉢状で最底部には1mmの孔があるもの)に詰め、上部よりメタノール25mlを数回に分けて投入した。底部の孔より滴下した液体を加熱したアルミ皿で受け、メタノールを蒸発させた。アルミ皿にある残留物の質量(g)を測定し、以下の式により付着量を算出した。残留物の質量は、2回測定したときの平均値とした。
付着量(質量%)=(残留物の質量(g)/2(g))×100
(成分(A)、成分(B)、成分(C)およびその他成分の付着量)
繊維処理剤の付着量と表1の組成比率から、成分(A)、成分(B)、成分(C)およびその他成分の付着量を算出した。
(不織布の目付)
100mm×100mmに切り出した不織布質量を測定し、単位面積あたりに換算した値を不織布の目付(g/m2)とした。
(抗菌性の評価)
JIS L1902:2015菌液吸収法(定量試験)に準じて、抗菌性試験行った。オートクレーブ滅菌した不織布0.4gに対し、接種菌濃度(CFU/ml)が1×105~3×105に調整された液に界面活性剤(Tween80(東京化成工業(株)製商品名))を0.05質量%添加した試験菌液0.2mlを、不織布に対し均一に接種して、滅菌したキャップを締め付けた。これを37±1℃で18時間培養し、培養後の生菌数を測定した。試料には標準綿布と各実施例で作製した不織布の2種類であり、試験菌としては黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を用いた。そして、以下の式により抗菌性の指標である抗菌活性値を算出した。
抗菌活性値=(logCt-logC0)-(logTt -logT0)
ここで、logC0:標準布の接種直後に回収した菌数の平均値、logCt:標準布の18時間培養後回収した菌数の平均値、logT0:加工布の接種直後に回収した菌数の平均値、logTt:加工布の18時間培養後回収した菌数の平均値を示す。
抗菌性の評価は下記の3段階で行った。
◎:抗菌活性値が3.0以上
○:抗菌活性値が2.5以上3.0未満
×:抗菌活性値が2.5未満
(耐久親水性の評価)
EDANA ERT §153.0-02(ストライクスルー法)の液体の通液時間の測定に準じた方法により評価した。なお、使用した吸収紙は(株)クレシア製キムタオル(商品名)を約90mm×90mm(5.00~5.05gになるように調整)に裁断したものを用い、生理食塩水15mlの通液時間を測定し、それを3回繰り返した。各通液時間は、2回測定したときの平均値とした。耐久親水性の評価は、以下の3段階で行った。
◎:1~3回目の通液時間の最大値が5秒未満
○:1~3回目の通液時間の最大値が5秒以上、20秒未満
×:1~3回目の通液時間の最大値が20秒以上
(制電性の評価)
試料繊維30gを200ccのビーカーに入れ、ガラス棒でビーカーに押し詰めた。次いで、漏洩電気抵抗測定器SM-8213(日置電機(株)製)を用い、測定電圧5kVとし、電極を2kgの荷重で試料繊維に押し付けて測定した。測定値の対数をとり漏洩電気抵抗値とした(logR(Ω))。logRが小さいほど、電気が漏洩しづらく、制電性に優れるといえる。
【0055】
[実施例1]
鞘成分にHDPE(密度:0.956g/cm3、メルトフローレート(190℃ 荷重21.18N):16g/10min、融点:131℃)、芯成分にPET(固有粘度(フェノールと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い、濃度0.5g/100ml、温度20℃での測定値):0.65dl/g、融点:255℃)を体積比50/50で配した同心鞘芯型の複合繊維を溶融紡糸した。その際、繊維処理剤(1)の付着量が繊維の質量に対して0.5質量%程度となるように、イオン交換水で希釈した水溶液をオイリングロールに接触させて、繊維表面に繊維処理剤(1)を付着させた。延伸工程を経た後、乾燥させて繊維を得た。次いで、該繊維をカッターでカット長51mmの短繊維とし、これを試料繊維として用いた。試料繊維をローラーカード試験機にてカードウェブとし、このウェブをサクションドライヤーにて130℃でスルーエアー加工して不織布を得た。
【0056】
[実施例2~11、比較例1~2]
表2に示す通り、繊維処理剤を変更した以外は、実施例1と同様に試料繊維および不織布を得た。
【0057】
実施例1~11、比較例1~2で得られた繊維の繊度、各成分の付着量、不織布の目付、抗菌性、耐久親水性、および制電性の結果を表2にまとめる。
【0058】
【0059】
表2の結果から分かるように、成分(A)および成分(B)が付着した本発明の繊維は、優れた抗菌性と耐久親水性を兼ね備えていることが分かる。特に、成分(A)の付着量が、繊維の質量に対して、特定の範囲とすることで、抗菌性と耐久親水性を高いレベルで兼ね備えることが分かる。また、成分(A)、(B)および(C)を含む実施例1~10は、成分(C)を含まない実施例11に対して、静電気が抑制されたものであった。
本発明の繊維は、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、かつ、蒸れにくさや通液特性を満足する耐久親水性に優れるため、おむつ、ナプキン、または失禁パットなどの吸収性物品、マスク、ガウン、または術衣などの衛生材、壁用シート、障子紙、または床材などの室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、または生ごみ用カバーなどの生活関連材、使い捨てトイレまたはトイレ用カバーなどのトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、またはペット用タオルなどのペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、またはインクタンク用吸着剤などの産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、細菌に対する増殖抑制効果、蒸れにくさや通液特性が要求される様々な繊維製品への用途に好適に利用することができる。