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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049900
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/04 20060101AFI20240403BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H02K9/04 Z
H02K1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156412
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸吾
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA22
5H601GE11
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ02
5H609RR27
5H609RR36
5H609RR42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータの冷却性能を高めるために、導入された空気を効率よく流す。
【解決手段】回転電機10のロータ14は、冷却通路36を有するロータコア28と、ロータコア28の一端側に配置された第1保持部材41と、ロータコア28の他端側に配置された第2保持部材42とを有する。ロータコア28は冷却通路36を有する。第1保持部材41の入口側貫通孔52は、ロータ14の軸線AXに対して傾斜する。第2保持部材42の出口側貫通孔60は、ロータ14の軸線AXに対して傾斜する。ロータ14の回転時に、入口側貫通孔52を介して冷却通路36に冷却用の気体を導入し、出口側貫通孔60を介して冷却通路36から気体を排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、シャフトに固定されたロータと、を備えた回転電機であって、
前記ロータは、
前記シャフトに支持されたロータコアと、
前記回転電機の軸方向において前記ロータコアの一端側に配置された第1保持部材と、
前記ロータコアの他端側に配置された第2保持部材と、を有し、
前記ロータコアは、前記軸方向における前記ロータコアの一端面から他端面まで連通した冷却通路を有し、
前記第1保持部材は、前記冷却通路に連通した入口側貫通孔を有し、前記入口側貫通孔は、前記ロータの軸線に対して傾斜し、
前記第2保持部材は、前記冷却通路に連通した出口側貫通孔を有し、前記出口側貫通孔は、前記ロータの軸線に対して傾斜し、
前記ロータの回転時に、前記入口側貫通孔を介して前記冷却通路に冷却用の気体を導入し、前記出口側貫通孔を介して前記冷却通路から前記気体を排出する、回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機において、
前記第1保持部材は、前記軸方向に沿って前記ロータの外側に突出した突起部を有し、
前記突起部に、前記入口側貫通孔が前記軸線に対して連続して傾斜するように形成されている、回転電機。
【請求項3】
請求項2記載の回転電機において、
前記入口側貫通孔は、前記突起部の外表面に開口する上流端開口と、前記ロータコアに向かって開口する下流端開口とを有し、
前記ロータの径方向において、前記上流端開口が前記下流端開口よりも外側に配置されている、回転電機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記第2保持部材は、平板形状に形成され、
前記出口側貫通孔は、前記ロータの周方向において互いに向き合い且つ前記軸線に対して傾斜する傾斜内面を有する、回転電機。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記入口側貫通孔は複数設けられ、前記出口側貫通孔は複数設けられ、
前記複数の出口側貫通孔の流路面積の合計は、前記複数の入口側貫通孔の流路面積の合計よりも大きい、回転電機。
【請求項6】
請求項5記載の回転電機において、
前記入口側貫通孔は、管状通路であり、前記ロータの周方向に間隔を置いて複数設けられ、
前記出口側貫通孔は、前記ロータの径方向に沿った長穴形状であり、前記周方向に間隔を置いて放射状に複数設けられている、回転電機。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記ロータコアは、前記軸方向に積層された複数の電磁鋼板を有し、
前記複数の電磁鋼板に形成された孔部が連なることで、前記冷却通路が螺旋状に形成されている、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機が発熱して高温になると損失が大きくなり、効率が低下するため、回転電機を冷却することが望ましい。例えば、下記特許文献1では、回転電機のロータを冷却するために、ロータヨークにドーム型ファンが設けられている。ドーム型ファンからの風をロータヨークの内側に流すことで、ロータヨークの内側に冷却風が導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4701895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータの冷却性能をより高めるために、導入された空気をより効率良く流すことが望まれる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シャフトと、シャフトに固定されたロータと、を備えた回転電機であって、前記ロータは、前記シャフトに支持されたロータコアと、前記回転電機の軸方向において前記ロータコアの一端側に配置された第1保持部材と、前記ロータコアの他端側に配置された第2保持部材と、を有し、前記ロータコアは、前記軸方向における前記ロータコアの一端面から他端面まで連通した冷却通路を有し、前記第1保持部材は、前記冷却通路に連通した入口側貫通孔を有し、前記入口側貫通孔は、前記ロータの軸線に対して傾斜し、前記第2保持部材は、前記冷却通路に連通した出口側貫通孔を有し、前記出口側貫通孔は、前記ロータの軸線に対して傾斜し、前記ロータの回転時に、前記入口側貫通孔を介して前記冷却通路に冷却用の気体を導入し、前記出口側貫通孔を介して前記冷却通路から前記気体を排出する、回転電機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転電機によれば、第1保持部材に設けられた入口側貫通孔により、ロータコア内の冷却通路への冷却用の気体の導入を促進する。第2保持部材に設けられた出口側貫通孔により、冷却通路からの気体の排出を促進する。これにより、冷却通路に効率的に気体を流すことができるため、ロータの冷却性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る回転電機の全体概略図である。
図2図2は、ロータコアを構成する電磁鋼板の平面図である。
図3図3は、第1保持部材の平面図である。
図4図4Aは、第1保持部材の断面斜視図である。図4Bは、図3におけるIVB-IVB線に沿った断面図である。
図5図5Aは、第2保持部材の平面図である。図5Bは、図5AにおけるVB-VB線に沿った断面図である。
図6図6は、回転電機を備えたプロペラ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す回転電機10は、電動モータ又は発電機である。回転電機10の用途は特に限定されるものではなく、二輪、四輪等の車両や航空機、船舶等にも用いられる。回転電機10が電動モータである場合、例えば、回転電機10は、航空機等の飛翔体のプロペラ106(図6参照)を駆動するための動力源として使用され得る。回転電機10は、回転可能に支持されたシャフト12と、シャフト12に固定されたロータ14と、ロータ14を囲むステータ16とを有する。回転電機10は、シャフト12、ロータ14及びステータ16を収容するケーシング20をさらに有する。
【0010】
シャフト12は、回転電機10の軸線AX上に配置されている。軸線AXは、シャフト12の中心軸線である。シャフト12は、ケーシング20の一端部と他端部とにそれぞれ配置された第1軸受24及び第2軸受26によって、回転可能に支持されている。シャフト12の一端には、例えば変速機102(図6参照)を介して負荷(例えば、プロペラ106)が連結される。シャフト12は、変速機102を介さずに直接、負荷に連結されてもよい。
【0011】
シャフト12とロータ14とは一体的に回転する。ロータ14は、シャフト12に支持されたロータコア28と、ロータコア28に固定された複数の磁石30とを有する。ロータコア28は、ロータ14の軸方向に積層された複数の電磁鋼板32を有する。ロータコア28は、複数の電磁鋼板32が積層されてなる積層体である。ロータコア28は、中心孔280を有する円筒形状である。ロータコア28の中心孔280にシャフト12が挿入されている。
【0012】
ロータコア28は、軸方向に離間した第1端面281と第2端面282とを有する。ロータコア28の第1端面281は、第1軸受24と第2端面282との間に配置される。ロータコア28の第2端面282は、第2軸受26と第1端面281との間に配置される。ロータコア28は、第1端面281から第2端面282まで連通した冷却通路36を有する。複数の電磁鋼板32に形成された孔部320が互いに連なることで、冷却通路36が形成されている。冷却通路36は、磁石30よりもロータ14の径方向内側に形成されている。
【0013】
図2に示すように、各電磁鋼板32は、周方向に間隔を置いて形成された複数の孔部320を有する。従って、ロータコア28は、周方向に間隔を置いて形成された複数の冷却通路36を有する。図2において、孔部320は三角形状に形成されているが、孔部320の形状は特に限定されず、他の形状(長方形状、台形状)でもよい。
【0014】
図1に示す本実施形態では、複数の電磁鋼板32は、1枚単位で又は複数枚単位で、所定角度ずつ周方向の位相がずれて配置されている。このため、複数の電磁鋼板32に形成された孔部320が連なることで、冷却通路36が軸線AXを中心とする螺旋状に形成されている。このように冷却通路36が螺旋状に延びるため、ロータコア28の回転により冷却通路36には旋回流が発生する。
【0015】
図2に示すように、ロータコア28(電磁鋼板32)の外周部に複数の磁石30が周方向に互いに間隔を置いて配置されている。ロータコア28(電磁鋼板32)の外周部は、周方向に互いに間隔を置いて形成された複数の磁石装着孔283を有する。複数の磁石装着孔283は、複数の孔部320よりも径方向外側に形成されている。複数の磁石装着孔283にそれぞれ複数の磁石30が挿入されている。磁石30は、永久磁石である。
【0016】
図1に示すように、ロータ14は、回転電機10の軸方向においてロータコア28の一端側に配置された第1保持部材41と、ロータコア28の他端側に配置された第2保持部材42とをさらに有する。
【0017】
第1保持部材41は、ロータコア28の第1端面281に当接する。第1保持部材41は、ロータコア28と向かい合う内面411と、内面411とは反対側の外面412を有し、内面411がロータコア28に当接する。第1保持部材41の中心部に形成された第1挿通孔413にシャフト12が挿通されている。第1保持部材41の内周部は、シャフト12に固定された係止リング44によって係止されている。
【0018】
第2保持部材42は、ロータコア28の第2端面282に当接する。第2保持部材42は、ロータコア28と向かい合う内面421と、内面421とは反対側の外面422を有し、内面421がロータコア28に当接する。第2保持部材42の中心部に形成された第2挿通孔423にシャフト12が挿通されている。第2保持部材42の内周部は、シャフト12に形成された環状係止突起46によって係止されている。第1保持部材41と第2保持部材42との間にロータコア28が保持されることで、シャフト12に対してロータコア28が軸方向に位置決めされている。
【0019】
図3に示すように、第1保持部材41は、円環状に形成されている。第1保持部材41は、軸方向に沿ってロータ14の外側に突出した突起部50を有する(図1も参照)。第1保持部材41は、平板円環状のベースプレート部48を有する。ベースプレート部48から突起部50が軸方向に突出している。複数の突起部50が周方向に互いに間隔を置いて配置されている。図3において、複数の突起部50は、周方向に等間隔に配置されている。
【0020】
図1に示すように、第1保持部材41は、冷却通路36に連通した入口側貫通孔52を有する。ロータ14の回転時に、第1保持部材41は、入口側貫通孔52を介して冷却通路36に冷却用の気体(空気)を導入する。図3に示すように、第1保持部材41において、複数の入口側貫通孔52が周方向に間隔を置いて形成されている。入口側貫通孔52は、管状通路である。複数の入口側貫通孔52は、複数の突起部50にそれぞれ形成されている。
【0021】
図4Aに示すように、突起部50は、突端面501と、ロータ14の回転方向Rにおける前方を向く端面(以下、「回転前方端面502」という)とを有する。入口側貫通孔52は、突起部50の突端面501と回転前方端面502とに開口する。
【0022】
図4Bに示すように、入口側貫通孔52は、ロータ14の軸線AX(図1参照)に対して傾斜する。入口側貫通孔52は、突起部50に、入口側貫通孔52が軸線AXに対して連続して傾斜するように形成されている。入口側貫通孔52は、第1保持部材41の外面412から内面411に向かって、ロータ14の回転方向Rと逆方向に傾斜する。
【0023】
このような入口側貫通孔52を形成する方法の一例を説明する。例えば、第1保持部材41の素材に対して切削工具54(ドリル等)を図4BにおけるA1方向(第1保持部材41の厚み方向に対して傾斜する方向)に移動させて、貫通孔を形成する。次に、貫通孔の鋭利なエッジを除去するために、切削工具54をA2方向とA3方向(第1保持部材41の厚み方向)に順に移動させて、エッジを削り取る。A2方向とA3方向の加工の順序は逆でもよい。
【0024】
入口側貫通孔52は、突起部50の外表面で開口する上流端開口521と、第1保持部材41の内面411で開口する下流端開口522とを有する。
【0025】
図3に示すように、ロータ14の径方向において入口側貫通孔52の上流端開口521が下流端開口522よりも外側に配置されるように、入口側貫通孔52はロータ14の周方向に対して傾斜している。
【0026】
図1に示すように、第2保持部材42は、平板形状に形成されている。第2保持部材42は、冷却通路36に連通した出口側貫通孔60を有する。第2保持部材42は、ロータ14の回転時に、出口側貫通孔60を介して冷却通路36から気体を排出する。出口側貫通孔60は、第2保持部材42の一端面(内面421)から他端面(外面422)まで貫通する。図5Aに示すように、第2保持部材42において、複数の出口側貫通孔60が周方向に間隔を置いて形成されている。出口側貫通孔60は、ロータ14の径方向に沿った長穴形状である。
【0027】
複数の出口側貫通孔60は、第2挿通孔423を中心に放射状に設けられている。本実施形態では、出口側貫通孔60の個数は、入口側貫通孔52(図3)の個数よりも多い。なお、出口側貫通孔60の個数は、入口側貫通孔52の個数と同じ、又はそれより少なくてもよい。複数の出口側貫通孔60の流路面積の合計は、複数の入口側貫通孔52の流路面積の合計よりも大きい。
【0028】
図5Bに示すように、出口側貫通孔60は、ロータ14の軸線AX(図1参照)に対して傾斜する。出口側貫通孔60は、第2保持部材42の内面421から外面422に向かって、ロータ14の回転方向Rと逆方向に傾斜する。出口側貫通孔60は、ロータ14の周方向において互いに向き合い且つロータ14の軸線AXに対して傾斜する傾斜内面601を有する。一方の傾斜内面601と他方の傾斜内面601とは互いに平行である。
【0029】
このような出口側貫通孔60を形成する方法の一例を説明する。例えば、第2保持部材42の素材に対して切削工具54(ドリル等)を図5BにおけるB1方向(第2保持部材42の厚み方向に対して傾斜する方向)に移動させて、貫通孔を形成する。次に、貫通孔の鋭利なエッジを除去するために、切削工具54をB2方向とB3方向(第2保持部材42の厚み方向)に順に移動させて、エッジを削り取る。B2方向とB3方向の加工の順序は逆でもよい。
【0030】
図1において、上記のように構成されたロータ14は、ロータ14の回転時に、入口側貫通孔52を介して冷却通路36に冷却用の気体(空気)を導入し、出口側貫通孔60を介して冷却通路36から気体を排出する。
【0031】
ステータ16は、中空円筒状に形成されており、ケーシング20の内周面に固定されている。ステータ16の内周面とロータ14の外周面との間には、軸方向に延在する環状空間が形成されている。この環状空間は、気体を流通させる気体流路17である。ステータ16は、ステータコア62と、ステータコア62に保持されたコイル64とを有する。コイル64は、ステータコア62に形成された複数のスロット63に挿通されている。コイル64は、ステータコア62の一端面621から軸方向に突出した第1コイルエンド部641と、ステータコア62の他端面622から軸方向に突出した第2コイルエンド部642とを有する。
【0032】
ステータ16は、第1コイルエンド部641と第2コイルエンド部642とを覆うモールド部を有する。具体的に、モールド部は、第1樹脂モールド71と第2樹脂モールド72とを有する。第1樹脂モールド71は、第1コイルエンド部641を覆い、ステータコア62の環状の一端面621に沿って配置されている。第1樹脂モールド71は、軸線AXを中心に周方向に延在する円環状に形成されている。第2樹脂モールド72は、第2コイルエンド部642を覆い、ステータコア62の環状の他端面622に沿って配置されている。第2樹脂モールド72は、軸線AXを中心に周方向に延在する円環状に形成されている。
【0033】
ケーシング20は、ステータ16を囲む円筒状の周壁部74と、ケーシング20の軸方向の一端部を構成する第1端壁部81と、ケーシング20の軸方向の他端部を構成する第2端壁部82とを有する。周壁部74には、螺旋状に延在する水冷流路76が形成されている。すなわち、周壁部74は、ウォータージャケット77を有する。ウォータージャケット77によりステータ16が冷却される。
【0034】
なお、回転電機10のステータ16の形態は限定されない。例えば、周壁部74が気体(空気)に晒されることで冷却される空冷方式が採用されてもよい。第1コイルエンド部641及び第2コイルエンド部642が第1樹脂モールド71及び第2樹脂モールド72によって覆われた構成に限らず、第1コイルエンド部641及び第2コイルエンド部642の外面がワニス塗布によって処理されてもよい。
【0035】
第1端壁部81は、ケーシング20内に冷却用の気体(空気)を導入する複数の流入口810を有する。第2端壁部82は、ケーシング20内から気体を排出する複数の流出口820を有する。気体は、例えば、回転電機10の外側に配置された送風装置(図6参照のファン108又はポンプ)により流入口810を介してケーシング20内に圧送され、ロータ14内の冷却通路36へと導入される。なお、ケーシング20に、以下のような気体の循環経路が構築されてもよい。循環経路では、例えば、冷却通路36から排出された気体がケーシング20内で例えばウォータージャケット77によって冷却されるとともに、冷却された気体が第1保持部材41の周囲空間へと戻るように構成される。
【0036】
図6に示すように、回転電機10は、プロペラ装置100に適用され得る。なお、回転電機10は、プロペラ装置100に限らず、他の装置の動力源として用いることができる。プロペラ装置100は、回転電機10と、回転電機10に取り付けられた変速機102と、回転電機10及び変速機102を収容する収容部104と、変速機102に連結されたプロペラ106とを備える。
【0037】
プロペラ装置100は、例えば、垂直離着陸型航空機に用いられる。そのため、プロペラ装置100の使用状態で回転電機10の軸線AXが上下方向を向くように、回転電機10が配置される。プロペラ装置100は、使用状態での回転電機10の軸線AXが略水平方向を向くように配置される構成であってもよい。
【0038】
回転電機10のシャフト12の下端には、収容部104内に気流を発生させるファン108が取り付けられている。変速機102は、例えば遊星歯車機構であり、回転電機10の上部に配置される。プロペラ106は、変速機102の出力軸に連結されたプロペラシャフト110と、プロペラシャフト110の上端に設けられたハブ112と、ハブ112から径方向外方に突出した複数のブレード114とを有する。
【0039】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0040】
図1に示すように、ロータコア28は冷却通路36を有する。第1保持部材41は、冷却通路36に連通した入口側貫通孔52を有する。第2保持部材42は、冷却通路36に連通した出口側貫通孔60を有する。ロータ14の回転時に、入口側貫通孔52を介して冷却通路36に冷却用の気体を導入し、出口側貫通孔60を介して冷却通路36から気体を排出する。第1保持部材41に設けられた傾斜した入口側貫通孔52により、ロータコア28内の冷却通路36への冷却用の気体の導入を促進するとともに、第2保持部材42に設けられた傾斜した出口側貫通孔60により、冷却通路36からの気体の排出を促進する。これにより、冷却通路36に効率的に気体を流すことができるため、ロータ14の冷却性能を高めることができる。
【0041】
第1保持部材41は、軸方向に沿ってロータ14の外側に突出した突起部50を有する。図4Bに示すように、突起部50に、入口側貫通孔52が軸線AXに対して連続して傾斜するように形成されているため、冷却通路36への気体の流入を促進させることができる。
【0042】
図3に示すように、入口側貫通孔52は、突起部50の外表面に開口する上流端開口521と、ロータコア28に向かって開口する下流端開口522とを有する。ロータ14の径方向において、上流端開口521が下流端開口522よりも外側に配置されているため、導入される気体の流速を高めて、冷却通路36への気体の流入を一層促進させることができる。
【0043】
図5Bに示すように第2保持部材42は、平板形状に形成される。出口側貫通孔60は、ロータ14の周方向において互いに向き合い且つ軸線AXに対して傾斜する傾斜内面601を有する。この構成により、第2保持部材42の厚みを増大させることなく(突起部を設けることなく)、冷却通路36からの気体の排出を促進させることができる。従って、第2保持部材42の重量増大を抑制しながら、冷却効率を高めることができる。
【0044】
図1において、複数の出口側貫通孔60の流路面積の合計は、複数の入口側貫通孔52の流路面積の合計よりも大きい。この構成により、冷却通路36における気体の入口側で相対的に圧力を高め、気体の出口側で相対的に圧力を下げることで、入口側と出口側の圧力差を大きくし、冷却通路36での気体の流れを促進させることができる。
【0045】
入口側貫通孔52は、管状通路であり、ロータ14の周方向に間隔を置いて複数設けられる。出口側貫通孔60は、ロータ14の径方向に沿った長穴形状であり、周方向に間隔を置いて放射状に複数設けられる。この構成により、複数設けられた長穴形状の出口側貫通孔60によって冷却通路36からの排気効率が高められるため、管状通路である入口側貫通孔52での気体の流入を一層促進させることができる。なお、入口側貫通孔52の管状通路はその断面が円形状であればよく、真円に限らず楕円や長円でもよい。出口側貫通孔60の長穴形状は径方向に延びる穴形状であればよく、例えば楕円であってもよい。
【0046】
ロータコア28は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板32を有する。複数の電磁鋼板32に形成された孔部320が連なることで、冷却通路36が螺旋状に形成されている。この構成により、冷却通路36が螺旋状に形成されるため、ロータ14の回転時に、冷却通路36への気体の流入を促進させることができる。
【0047】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0048】
上記の実施形態は、シャフト(12)と、シャフトに固定されたロータ(14)と、を備えた回転電機(10)であって、前記ロータは、前記シャフトに支持されたロータコア(28)と、前記回転電機の軸方向において前記ロータコアの一端側に配置された第1保持部材(41)と、前記ロータコアの他端側に配置された第2保持部材(42)と、を有し、前記ロータコアは、前記軸方向における前記ロータコアの一端面(281)から他端面(282)まで連通した冷却通路(36)を有し、前記第1保持部材は、前記冷却通路に連通した入口側貫通孔(52)を有し、前記入口側貫通孔は、前記ロータの軸線(AX)に対して傾斜し、前記第2保持部材は、前記冷却通路に連通した出口側貫通孔(60)を有し、前記出口側貫通孔は、前記ロータの軸線に対して傾斜し、前記ロータの回転時に、前記入口側貫通孔を介して前記冷却通路に冷却用の気体を導入し、前記出口側貫通孔を介して前記冷却通路から前記気体を排出する、回転電機を開示する。
【0049】
前記第1保持部材は、前記軸方向に沿って前記ロータの外側に突出した突起部(50)を有し、前記突起部に、前記入口側貫通孔が前記軸線に対して連続して傾斜するように形成されている。
【0050】
前記入口側貫通孔は、前記突起部の外表面に開口する上流端開口(521)と、前記ロータコアに向かって開口する下流端開口(522)とを有し、前記ロータの径方向において、前記上流端開口が前記下流端開口よりも外側に配置されている。
【0051】
前記第2保持部材は、平板形状に形成され、前記出口側貫通孔は、前記ロータの周方向において互いに向き合い且つ前記軸線に対して傾斜する傾斜内面(601)を有する。
【0052】
前記入口側貫通孔は複数設けられ、前記出口側貫通孔は複数設けられ、前記複数の出口側貫通孔の流路面積の合計は、前記複数の入口側貫通孔の流路面積の合計よりも大きい。
【0053】
前記入口側貫通孔は、管状通路であり、前記ロータの周方向に間隔を置いて複数設けられ、前記出口側貫通孔は、前記ロータの径方向に沿った長穴形状であり、前記周方向に間隔を置いて放射状に複数設けられている。
【0054】
前記ロータコアは、前記軸方向に積層された複数の電磁鋼板(32)を有し、前記複数の電磁鋼板に形成された孔部(320)が連なることで、前記冷却通路が螺旋状に形成されている。
【0055】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0056】
10…回転電機 12…シャフト
14…ロータ 28…ロータコア
36…冷却通路 41…第1保持部材
42…第2保持部材 52…入口側貫通孔
60…出口側貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6