IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-49904情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049904
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240403BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156416
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 斗紀知
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 健
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
(72)【発明者】
【氏名】玉置 一真
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても所望の農作物を栽培するための情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置101は、特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、栽培条件において栽培された特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得部212と、ユーザの所望の農作物の特性と、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得部213と、データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、ユーザが利用可能な土地においてユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する情報提供部215と、提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置から受け付ける通信部201と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、前記栽培条件において栽培された前記特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得手段と、
ユーザの所望の農作物の特性と、前記ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得手段と、
前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する提供手段と、
前記提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置から受け付ける受付手段と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、前記提供した肥料情報を含む前記栽培条件と関連付けて前記データセットに登録する登録手段を更に有する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提供手段は、前記新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報が関連付けられて登録された前記データセットに前記遺伝的アルゴリズムを適用する、ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記提供手段は、前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための、栽培条件を示す情報を抽出する抽出手段を更に含み、
前記抽出された栽培条件を示す情報のうちの肥料情報を取り出して、当該肥料情報を提供する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記データセットに基づいて、前記栽培条件を示す情報の分布に対する、前記農作物の特性の分布を示す応答曲面を生成する生成手段を更に有し、
前記抽出手段は、更に前記応答曲面を用いて、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を収穫するための、栽培条件を示す情報を抽出する、ことを特徴とする、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記入力取得手段は、前記ユーザが利用可能な土地に関する分析処理を実行することにより、当該ユーザが利用可能な土地に関する環境情報と土壌情報とを取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記入力取得手段は、前記ユーザの所望の農作物の特性を示す特性情報を、前記通信装置から取得する、ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記提供手段は、前記遺伝的アルゴリズムを前記データセットに適用する際に、前記栽培条件を示す情報のうち、最適化のために変化させ得る情報と、最適化のために変化させない情報とを区別して、前記遺伝的アルゴリズムを前記データセットに適用する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記最適化のために変化させない情報は、前記土壌情報における土地固有の情報を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置と通信装置とを含む情報処理システムであって、
特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、前記栽培条件において栽培された前記特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得手段と、
ユーザの所望の農作物の特性と、前記ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得手段と、
前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する提供手段と、
前記提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を受け付ける受付手段と、を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項11】
特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、前記栽培条件において栽培された前記特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得工程と、
ユーザの所望の農作物の特性と、前記ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得工程と、
前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する提供工程と、
前記提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置から受け付ける受付工程と、を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラムを格納する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、記憶媒体及び情報処理システム
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な要因により農地の利用が促進され、農業に関する経験が無い或いは少ない者が新たに農業を始めることを望む場合がある。ある土地において長年農業に従事してきた者であれば、その土地において特定の農作物を栽培するために、どのような時期にどのような肥料や農薬を与えればよいかといったノウハウを有していることが多い。しかし、そのようなノウハウは広く公開されているものではなく、また、新規参入者が経験豊かな者から指導を受ける機会を有しない場合も多い。
【0003】
特許文献1は、農業用インテリジェンスコンピュータシステムを用いて、耕種学的モデルを訓練して生成し、耕種学的モデルにより作物、肥料や農薬、収穫等の推奨を行うシステムを開示している。新規参入者は、農業用インテリジェンスコンピュータシステムを用いることにより、肥料や農薬等の推奨を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-508939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の農業用インテリジェンスコンピュータシステムにより訓練、生成されたモデルを用いて種々の提案を行うためには、予め大規模なデータを蓄積している必要がある。しかしながら、特定の土地で実際に栽培(試行)を行う者の数が限られているなどの様々な要因により、特定の土地において、所望の農作物を栽培するための肥料や農薬に関する大規模なデータセットを収集することが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても所望の農作物を栽培するための情報を提供することが可能な技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、前記栽培条件において栽培された前記特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得手段と、
ユーザの所望の農作物の特性と、前記ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得手段と、
前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する提供手段と、
前記提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置から受け付ける受付手段と、を有することを特徴とする情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても所望の農作物を栽培するための情報を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの一例を示す図
図2】本実施形態に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図
図3】本実施形態に係る通信装置の機能構成例を示すブロック図
図4】本実施形態に係る遺伝的アルゴリズムを用いる際に入力される栽培条件(遺伝子コード)のデータの例を模式的に示す図
図5】本実施形態に係る遺伝的アルゴリズムを用いた栽培条件の抽出について説明する図
図6】本実施形態に係る土壌の改良に用いる栽培条件の抽出について説明する図
図7】本実施形態に係る栽培条件最適化処理の一連の動作を示すフローチャート(1)
図8】本実施形態に係る栽培条件最適化処理の一連の動作を示すフローチャート(2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<情報処理システムの構成>
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理システムについて説明する。情報処理システム100は、例えば、情報処理装置101と通信装置102とを含む。これらの装置のそれぞれは、ネットワーク104を介して接続され、例えば所定のインターネットプロトコルを用いて装置間で通信することができる。
【0012】
通信装置102は、ユーザ(例えば農作物を栽培する事業を新たに開始しようとする者。新規ユーザともいう)が用いる、例えば携帯型装置であり、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、車載デバイス、及びウェアラブル端末などの電子デバイスを含む。
【0013】
情報処理装置101は、例えば情報処理を行うサーバを含み、後述する栽培条件最適化処理などを実行する。また、情報処理装置101は、過去に様々な栽培条件において栽培された農作物に関する情報を、栽培条件情報として保持している。詳細は後述するが、栽培条件情報は、特定の農作物を栽培した際の、環境情報(例えば天候、日照、PH等の情報)と、肥料情報と、土壌情報(例えば土地のあるエリア固有の土壌の情報、赤土など追加物の情報)とを含む栽培条件を示す情報である。また、情報処理装置101は、ある栽培条件において栽培された特定の農作物の特性を示す特性情報(例えば、甘く、成長が早い果物X)と、当該栽培条件とを関連付けてデータセットとして保持している。すなわち、情報処理装置101は、どのような栽培条件においてどのような特性の農作物が栽培されるかを関連付けたデータセットを保持している。なお、このデータセットは、大量である必要はなく、特定の農作物についての初期データ(パラメータ数nに対して2n+1個)があれば良い。
【0014】
情報処理装置101は、例えば、通信装置102を介して、ユーザの所望の農作物の特性(例えば、甘く、成長が早く、環境に強い果物X)と、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する。ユーザは自身が利用する土地に関する詳細な情報を有していない場合、土地に関する環境情報及び土壌情報の代わりに、土地の位置情報と、土地に設置した土壌センサの情報とを情報処理装置101に送信するようにしてもよい。この場合、情報処理装置101が、土地の位置情報に基づいて外部装置から天候情報、日照情報、PHの情報を取得したり、土壌センサの情報及びエリア固有の土壌情報などを用いる分析処理を実行することにより、当該ユーザが利用可能な土地に関する環境情報と土壌情報とを取得してもよい。
【0015】
情報処理装置101は、ユーザの所望の農作物の特性(例えば、甘く、成長が早く、環境に強い果物X)と、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを加味して、遺伝的アルゴリズムを実行することにより、1つ以上の栽培条件を抽出する。詳細は後述するが、栽培条件には肥料情報が含まれているため、ユーザは、情報処理装置101が抽出した栽培条件に含まれる肥料情報に従って農作物を栽培することができる。更に、ユーザは肥料情報に従って農作物を栽培した後に、実際に所望の特性を有する農産物を栽培することができたかを検証する。そして、情報処理装置101は、例えば通信装置102を介して、実際に得られた農作物の特性を取得し、データセットに登録する。情報処理装置101は、このような栽培条件最適化処理を実行することにより、農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても、データを徐々に拡充し、所望の農作物を栽培するための情報を提供することができる。
【0016】
なお、情報処理装置101においてコンピュータプログラムが実行されることによって通信装置102に提供されるサービスは、例えば、新規ユーザの農業参入を支援するサービス業者(単に農業支援業者ともいう)によって管理される。ハードウェアとしての情報処理装置101は、農業支援業者によって管理されてもよいし、或いは、データセンタなどを運用する別の事業者によって管理されてもよい。なお、情報処理装置101によって実現される機能は、サーバと通信端末との間に配置され得るエッジノードによって実現されてもよい。
【0017】
農業支援業者によって提供される肥料情報の提供サービスは、主に、新規ユーザに対して、当該新規ユーザが特定の農作物をより容易に栽培することができるように提供される。すなわち、新規ユーザは、経験豊かな者から指導を受ける機会に恵まれない場合であっても、当該サービスから提供される情報を活用することで、所望の特性を有する特定の農作物をより容易に栽培することができる。
【0018】
<情報処理装置の構成>
次に、図2を参照して、情報処理装置101の機能構成例について説明する。なお、図を参照して説明する機能ブロックの各々は、統合されまたは分離されてもよく、また説明する機能が別のブロックで実現されてもよい。また、ハードウェアとして説明するものがソフトウェアで実現されてもよく、その逆であってもよい。更に、本実施形態では、情報処理装置101が単体の装置である場合を例に説明するが、情報処理装置101が複数の装置で構成されてもよいし、また、1つ以上の仮想マシンとして構成されてもよい。
【0019】
通信部201は、通信装置102と、ネットワーク104を介して通信可能な通信回路又は通信モジュールを含む。
【0020】
制御部202は、プロセッサ210と、メモリ211とを含む。プロセッサ210は1つ以上のプロセッサから構成されてよい。制御部202は、プロセッサ210によって、メモリ211又は記憶部204に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理装置101の各部の動作を制御する。また、制御部202に含まれるデータ取得部212~データ登録部216は、例えば、プロセッサ210がプログラムを実行することにより実現される。
【0021】
メモリ211は、例えばDRAM等の揮発性の記憶媒体であり、制御部202がコンピュータプログラムを実行するためのパラメータや処理結果等を一時的に記憶する。電源部203は、情報処理装置101の各部が動作するための電力を提供するための電源である。
【0022】
記憶部204は、例えばハードディスクや半導体メモリ等の不揮発性の記憶媒体を含み、情報処理装置101の動作に必要な設定値や、コンピュータプログラム等を格納する。記憶部204に保持されるコンピュータプログラムは、情報処理装置101の諸機能を実現するためのオペレーティングシステムや種々の業務用アプリケーションを含む。記憶部204は、例えば、栽培条件情報220、環境DB221、農作物特性情報222を含む。
【0023】
栽培条件情報220は、過去に様々な栽培条件において栽培された農作物に関する情報である。栽培条件情報は、例えば、図4に示すように、特定の農作物を収穫した際の、環境情報401と、肥料情報402と、土壌情報403とを含む。環境情報401は、例えば天候、栽培時期、日照、PHといった情報を含む。天候情報は、例えば月ごとの、降水量と平均最高気温及び平均最低気温とを含んでよい。栽培時期は、例えば種を植える時期と収穫時期とを含む。日照は、例えば月ごとの日照時間を含む。PHは、例えば、その土地で農作物の栽培のために用いる水又は雨水のpHの値、或いは土地の土壌のpHの値を含む。
【0024】
肥料情報402は、例えば、農作物に対して与えるミネラルの量と、肥料Aの量と、肥料Bの量と含む。図4に示す例では、ミネラルの他に2種類の肥料で構成されるが、一般的に用いられる肥料のうちの数種類~数十種類の肥料で構成されてもよい。この場合、特定の農作物に対して与える肥料の情報は、肥料Aという名称の肥料がXグラム、肥料Bという名称の肥料がYグラムなどのように記載されてよい。
【0025】
なお、図4に示す栽培条件のデータセットに、栽培条件情報411~416が含まれることを示している。図4に示す栽培条件情報411~416は、同一の種別の情報(例えば、天候)において、ハッチング部分は同じ内容であることを示している。すなわち、栽培条件情報414と415は、天候について同じ情報を有しているが、他の栽培条件は、栽培条件情報414と415の天候の情報とは異なる天候の情報を有することを示している。
【0026】
土壌情報403は、例えば、土地のあるエリア固有(不変)の土壌の成分情報と、当該エリアに固有の土壌に、農作物の栽培のために追加される赤土、腐葉土など追加物の量を示す。図4における土壌B及び土壌Cは、それぞれ例えば赤土、腐葉土である。栽培情報の土壌情報403は、例えば、土壌Aの成分情報と、例えば赤土、腐葉土である土壌B及び土壌Cの量と、を含む。
【0027】
環境DB221は、土地に関する環境情報を含む。例えば、土地の位置情報と、当該土地についての天候情報、日照情報、PHの情報を含む。
【0028】
農作物特性情報222は、栽培された農作物の特性、例えば、農作物の品種とその特性(甘く、成長が早い)の情報を含む。農作物の特性は、糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値を含んでよい。
【0029】
データ取得部212は、例えば、栽培条件最適化処理を行う際に、栽培する農作物についての、栽培条件情報220の情報と、個々の栽培条件情報220において栽培された農作物の農作物特性情報222とを取得する。すなわち、データ取得部212は、特定の農作物を栽培した際の栽培条件情報(環境情報と肥料情報と土壌情報)と、当該栽培条件において栽培された農作物の特性情報とを関連付けたデータセットを取得する。
【0030】
入力取得部213は、通信装置102を介して、ユーザの所望の農作物の特性を取得する。上述のように、所望の農作物の特性は、糖度の範囲の指定、大きさの範囲の指定、病気の発生率の指定などの数値を含んでよい。
【0031】
入力取得部213は、通信装置102を介して、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報と土壌情報を取得してもよい。或いは、入力取得部213は、ユーザが利用可能な土地に関する分析処理を実行することにより、当該土地に関する環境情報と土壌情報とを取得する。この場合、入力取得部213は、土地の位置情報に基づいて環境DB221から天候情報、日照情報、PHの情報を取得したり、土壌センサの情報及びエリア固有の土壌情報などを用いる分析処理を実行することにより、当該土地に関する環境情報と土壌情報とを取得してもよい。例えば、入力取得部213は、通信装置102を介して土地の位置情報を取得する。また、入力取得部213は、通信装置102を介して、土地に設置した土壌センサの情報を取得するようにしてもよい。情報処理装置101が、様々な土地に設置された土壌センサとネットワークを介して通信可能である場合、入力取得部213は、取得した土地の位置情報に関連付けれれている土壌センサから、情報を取得してもよい。入力取得部213は、土壌センサの情報に所定の機械学習アルゴリズムを適用することにより、当該土地のあるエリア固有の土壌が、どの種別の土壌であるかを識別してもよい。
【0032】
最適解抽出部214は、後述する栽培条件最適化処理により、ユーザの所望の農作物の特性と、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを加味して、遺伝的アルゴリズムを実行することにより、1つ以上の栽培条件を生成する。
【0033】
本実施形態に係る栽培条件最適化処理について、図5を参照して説明する。栽培条件最適化処理では、まず、データ取得部212により、特定の農作物を栽培した際の栽培条件情報(環境情報401と肥料情報402と土壌情報403)と、当該栽培条件において栽培された農作物の特性情報とを関連付けたデータセットを取得する。栽培条件最適化処理では、栽培条件情報を、遺伝的アルゴリズムにおける遺伝子コードとして扱う。
【0034】
最適解抽出部214は、例えば、栽培条件情報である遺伝子コードと、農作物の特性情報との関係から、応答曲面420を生成する。応答曲面は、栽培条件を示す情報の分布に対する、農作物の特性の分布を示す。つまり、応答曲面420は、栽培条件で特定されるパラメータを入力した際に、農作物の特性を出力する関数の出力の曲面を示す。最適解抽出部214は、栽培条件情報220に含まれる栽培条件情報と、農作物特性情報222に含まれる農作物の特性とから、公知の技術を用いて応答曲面420を推定してよい。このとき、農作物の特性は、応答曲面上の出力値として数値化されている。
【0035】
最適解抽出部214は、栽培条件情報411~416のなかから、応答曲面420に従って、所望の農作物の特性に近い栽培条件情報(遺伝子コード)を選択する。最適解抽出部214は、更に、選択した栽培条件情報(例えば、栽培条件情報414及び415)の少なくとも一部の栽培条件情報を交叉させて、栽培条件情報411~416に存在しない栽培条件情報416を生成する。また、栽培条件情報を例えばランダムに突然変異させて、栽培条件情報411~416に存在しない栽培条件情報417を生成する。このようにして、最適解抽出部214は、栽培条件の候補430を生成する。
【0036】
最適解抽出部214は、例えば、シミュレーションによって栽培条件情報を複数世代にわたって進化させることができる。栽培条件情報を生成する場合には、栽培条件の候補430を更に応答曲面420に照らして、栽培条件情報に対する出力(農作物の特性)を推定する。一方、栽培条件の候補430に従って、ユーザが実際に農作物を栽培する場合、得られた農作物の特性が評価される。そして、栽培条件に対応付けられた農作物の品種とその特性(例えば甘く病気に強いことを示す糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値)が登録される。最適解抽出部214は、データ登録部216を介して、新たに得られた農作物の特性情報と、対応する栽培条件情報とをデータセットに追加する。最適解抽出部214は、通信装置102を介して、所望の農作物の特性が得られたことを示す入力を受け付けた場合、ユーザの所望の農作物の特性が得られた(最適解を得られた)と判定して、処理を終了してよい。或いは、最適解抽出部214は、シミュレーションによって、予め定められた世代数の演算を繰り返した場合にも、処理を終了してよい。
【0037】
最適解抽出部214は、通信装置102を介して、ユーザの所望の農作物の特性が得られたことを示す入力を受け付けなかった場合、或いはシミュレーションによって、予め定められた世代数の演算を繰り返した場合、図5に示した処理を繰り返す。
【0038】
なお、最適解抽出部214は、栽培条件情報を交叉する又は突然変異させる場合に、栽培条件を示す情報のうち、最適化のために変化させ得る情報と、最適化のために変化させない情報とを区別して、遺伝的アルゴリズムを栽培条件情報に適用する。具体的には、最適解抽出部214は、土壌情報における土地固有の情報を、最適化のために変化させない情報として処理を実行する。
【0039】
例えば、図6に示すように、地方Xでは、エリアAとエリアA´において土地の本来の土壌の質が共通し、地方Yでは、エリアBとエリアB´において土地の本来の土壌の質が共通しているとする。このとき、最適解抽出部214は、地方Xにおける栽培条件情報の最適解を探索する場合、土壌情報のうちの土地固有の情報(土壌Aの情報)については変化させない。一方、最適解抽出部214は、土地固有の情報ではない、追加情報の土壌の情報(土壌B及び土壌Cの量)を変化させる。このような遺伝的アルゴリズムを用いて最適な栽培条件情報を得た場合、土地固有の土壌に対して、どのような肥料を与えるかを示す情報に加えて、どのような土壌を追加するか(すなわち土壌をどのように改良するか)を示す栽培条件情報を得ることができる。
【0040】
情報提供部215は、通信装置102に表示される表示用情報を生成する。例えば、情報提供部215は、提案する肥料の情報を通信装置102に送信する。
【0041】
データ登録部216は、データ登録部216を介して、新たに得られた農作物の特性情報と、対応する栽培条件情報とをデータセットに追加する。特に、ユーザが実際に農作物を栽培した場合、栽培して得られた農作物の特性(例えば甘く病気に強いことに対応する糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値)を農作物特性情報222に登録する。
【0042】
<通信装置の構成>
次に、図3を参照して、通信装置102の機能構成例について説明する。本実施形態では、通信装置の一例として、スマートフォンを用いる場合を例に説明する。なお、以降の図を参照して説明する機能ブロックの各々は、統合されまたは分離されてもよく、また説明する機能が別のブロックで実現されてもよい。また、ハードウェアとして説明するものがソフトウェアで実現されてもよく、その逆であってもよい。
【0043】
通信部301は、例えば通信用回路等を含み、例えばLTE等の移動体通信を介してインターネットに接続したり、無線LAN通信を介してネットワークに接続したりして、情報処理装置101との通信を行う。
【0044】
制御部302は、プロセッサ310及びメモリ311を含み、例えば記憶部307に記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサ310が実行することにより、通信装置102内の各部の動作を制御する。プロセッサ310は、1つ以上のプロセッサを含み、メモリ311は、例えばDRAMなどの揮発性メモリを含む。
【0045】
操作部303は、通信装置102の備えるボタンやタッチパネルを含み、ボタンや、表示部306に表示される各種操作用のGUIに対するユーザ操作を受け付ける。電源部304は、通信装置102の各部へ電力を提供する。
【0046】
撮像デバイス305は、例えば、撮像素子を含むカメラ機構であり、制御部302からの指示に応じて撮影を行う。例えば、ユーザは、栽培された農作物などの画像を撮影することができる。撮影された画像は、例えば、農作物の特性情報の付帯情報として記憶されてもよい。
【0047】
表示部306は、例えばLCDやOLED等の表示デバイスを含む。表示部306は、制御部302の指示に応じて、情報処理装置101から受信する各種表示用情報に基づきGUIを表示する。表示用情報は、例えば、実際に栽培された農作物の特性を入力する不図示の特性入力画面の情報を含む。制御部302は、例えば、ウェブブラウザ又は専用アプリケーションを実行して、情報処理装置101から受信した表示用情報を表示部306に表示させる。
【0048】
記憶部307は、例えば半導体メモリ等の不揮発性メモリを含み、制御部302が実行するプログラムや設定値を保持したりする。記憶部307に保持されるコンピュータプログラムは、通信装置102の諸機能を実現するためのオペレーティングシステムや種々のアプリケーションを含む。
【0049】
<情報処理装置101における栽培条件最適化処理の一連の動作>
次に、情報処理装置101における栽培条件最適化処理の一連の動作について、図7及び図8を参照して説明する。なお、本処理は、制御部202のプロセッサ210が記憶部204に記録されるプログラムを実行することにより実現される。なお、以下で説明する処理では、S703~S711の処理を、遺伝的アルゴリズムにおける1つの世代の処理として繰り返し、最終的に最適解を得るように実行される。
【0050】
S701において、データ取得部212は、栽培条件情報と、栽培条件情報のそれぞれに対応する農作物特性情報とに係るデータセットを、それぞれ記憶部204から取得して、メモリ211に格納する。
【0051】
S702において、入力取得部213は、ユーザの通信装置102から、ユーザの所望の農作物の特性情報と、土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する。ユーザの所望の農作物の特性情報と、土地に関する環境情報及び土壌情報とは、例えば通信装置102に表示されるユーザインタフェースを介して入力される。ユーザの所望の農作物の特性情報とは、例えば、農作物が甘く病気に強いことに対応する糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値を含む。ユーザは、通信装置102のユーザインタフェース上で、例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率を指定することができる。
【0052】
また、ユーザは新規ユーザであるため、自身が利用可能な土地に関して詳細な情報を把握していない場合もある。このため、入力取得部213は、ユーザが利用可能な土地に関する情報として、土地の位置情報を取得してもよい。この場合、情報処理装置101は、土地に設置された1つ以上の土壌センサとネットワークを介して通信可能であってよい。入力取得部213は、取得した土地の位置情報に関連付けられている土壌センサから、土壌情報を取得する。入力取得部213は、土壌センサの情報に所定の機械学習アルゴリズムを適用することにより、当該土地のあるエリア固有の土壌が、どの種別の土壌であるかを識別してもよい。また、入力取得部213は、土地の位置情報に基づいて環境DB221から天候情報、日照情報、PHの情報を取得する。入力取得部213は、土地の位置情報に基づいて、外部装置から天候情報、日照情報、PHの情報を取得してもよい。なお、S702において、入力取得部213が土地に関する環境情報及び土壌情報、或いは、土地の位置情報を取得する際に、入力取得部213は、ユーザが利用可能である土地の指定を受け付けてもよい。例えば、入力取得部213は、不図示のデータベース上に登録されている土地(或いは複数の土地を含むエリア)をユーザの通信装置102に表示させ、ユーザの選択を受け付けてもよい。ユーザは、通信装置102において、ユーザが利用可能な土地、すなわち自身の所有する土地や利用を予約又は契約(所有者と約束している等)している土地を選択する。入力取得部213は、ユーザ選択に応じて、上述の土地に関する情報を不図示のデータベースや環境DB221、外部装置等から取得してもよい。
【0053】
S703において、最適解抽出部214は、適応度を評価する。但し、本処理を開始した直後では、本ステップを実行することなく、S705まで処理を進める。最適解抽出部214は、後述するS710で通信装置102を介して受け付ける、新たに収穫された農作物の特性と、ユーザの所望の農作物の特性とが合致しているかを評価する。最適解抽出部214は、受け付けた農作物の特性(例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値)と、所望の特性としてユーザが指定した特性(例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率)との合致度合いを演算する。最適解抽出部214は、両者の合致度合いが高いほど適応度が高いと評価する。
【0054】
S704において、最適解抽出部214は、S703で算出した合致度合いが所定の閾値を超えるか否かを判定し、当該合致度合いが所定の閾値以上である場合には終了条件を満たすと判定して、処理をS712に進める。この場合、ユーザの所望の農産物の特性に対して、最適解(すなわち最適な栽培条件)が得られたことを意味する。一方、最適解抽出部214は、合致度合いが所定の閾値未満である場合には、処理をS705に進める。この場合、最適解抽出部214は、最適解を得るための遺伝的アルゴリズムの実行を継続することを意味する。
【0055】
S705において、最適解抽出部214は、S701で取得した栽培条件情報(例えば、栽培条件情報411~416)のなかから、選択基準を満たす栽培条件を選択する。選択基準を満たす栽培条件は、応答曲面420に従って、所望の農作物の特性に近い栽培条件情報を選択する。最適解抽出部214は、応答曲面420を用いて推定される農作物の特性と、所望の特性としてユーザが指定した特性(例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率)との合致度合いを演算してよい。最適解抽出部214は、合致度合いが、栽培条件を選択するための所定の閾値より高い場合に、選択基準を満たすと判定してよい。
【0056】
S706において、最適解抽出部214は、選択した栽培条件情報(例えば、栽培条件情報414及び415)の少なくとも一部の栽培条件情報を交叉させて、既存の栽培条件情報に存在しない栽培条件情報を生成する。また、S707において、最適解抽出部214は、栽培条件情報を例えばランダムに突然変異させて、既存の栽培条件情報に存在しない栽培条件情報417を生成する。このようにして、最適解抽出部214は、栽培条件の候補を生成する。
【0057】
S708において、情報提供部215は、生成した栽培条件の情報のうちの肥料情報を、通信装置102に提供する。なお、情報提供部215は、この例に限らず、肥料情報に加えて、生成した栽培条件の土壌情報を提供してもよい。
【0058】
S709において、制御部202は、通信装置102からフィードバックの情報を受信したかを判定する。フィードバックの情報は、例えば、提供した栽培条件に従ってユーザが実施に農作物を栽培した際の、農作物の特性情報を含む。農作物の特性情報は、S702と同様に、通信装置102のユーザインタフェースを介して、例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率等が入力される。
【0059】
S710において、データ登録部216は、通信装置102においてユーザが入力した農作物の特性情報を受け付ける。そして、S711において、データ登録部216は、S710で受け付けた農作物の特性情報を、提案した肥料情報(或いは提案した肥料情報及び土壌情報)を含む栽培条件情報と関連付けてデータセットとして登録し、農作物特性情報222に記録する。制御部202は、農作物の特性情報をデータセットとして登録すると、処理をS703に戻す。このように、ユーザが実際に栽培して得られた農作物の特性情報と、提案した栽培条件情報とを関連付けて登録することで、遺伝的アルゴリズムを実行する際のデータセットを増大させることができる。
【0060】
なお、上述のS703~S711の処理から、できる限り多くのフィードバックを収集するため、S708では、複数の栽培条件(例えば選択、交叉、突然変異を含む4つの栽培条件)の肥料情報をそれぞれ提示してもよい。ユーザは、自身の土地を4分割して、それぞれの栽培条件で農作物を栽培してもよい。この場合、情報処理装置101は、4つの農作物の特性情報を取得することができる。
【0061】
S712において、最適解抽出部214は、S704において終了条件を満たすと判定した場合、最適解となる栽培条件を選択する。このとき、情報提供部215は、最適解となる栽培条件の肥料情報を、通信装置に提供する。このようにすることで、ユーザは、所望の農作物の特性に対して最適な肥料情報を把握することができる。制御部202は、S712の処理を完了すると、本一連の処理を終了する。
【0062】
なお、上述したS703~S711の一連の動作では、S708で情報処理装置101が肥料情報を通信装置102に提供した後に、ユーザが実際に農作物を栽培する作業が介在する。一方、複数の世代に渡った最適化をより高速化するため、予め定められた世代の数だけ、S703~S707とS710~711の処理をシミュレーションで動作させるようにしてもよい。
【0063】
シミュレーションによって、予め定められた世代数の演算を繰り返す場合、S703では、最適解抽出部214は、(S705~707において)選択、交叉及び突然変異させた栽培条件で栽培される農作物が、ユーザの所望の農作物の特性と合致しているかを評価する。つまり、最適解抽出部214は、選択、交叉及び突然変異させた栽培条件で栽培される農作物の特性(例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値)と、ユーザによって指定された糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率との合致度合いを演算する。シミュレーションでは、最適解抽出部214は、応答曲面を用いて、栽培条件に対する農作物の特性(例えば糖度の範囲、大きさの範囲、病気の発生率などの数値)を取得(予測)すればよい。シミュレーションでは、肥料情報に対する農作物の特性を、応答曲面を用いて得ることができるため、制御部202は、S708とS709を実行しなくてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の情報処理装置101は、特定の農作物を栽培した際の栽培条件(環境情報と肥料情報と土壌情報)を示す情報と、栽培条件において栽培された特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けて記憶するようにした。そして、ユーザの所望の農作物の特性と、ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する。情報処理装置101は、データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、ユーザが利用可能な土地においてユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する。情報処理装置101は、提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置102から受け付けるようにした。このようにすることで、農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても所望の農作物を栽培するための情報を提供することが可能になる。
【0065】
なお、上述の実施形態では、栽培条件の情報に肥料情報を含む場合を例に説明したが、肥料情報は肥料の情報ほか、農薬の情報が含まれてもよい。また、上述の実施形態では、ユーザの通信装置102に肥料情報が提供される場合を例に説明したが、肥料情報と共に土壌情報も提供されてもよい。土壌情報が提供されることにより、ユーザは、所望の農作物を栽培する際に適した土壌の改良を行うことができる。
【0066】
なお、上述した制御部202の構成は、情報処理システムとして様々な形態で機能してよい。例えば、上述の制御部202の少なくとも一部が情報処理装置101の外部の装置、例えば通信装置102で構成される形態で、情報処理システムを構成してもよい。或いは、情報処理システムが、情報処理装置101であってもよいし、情報処理システムがサーバ上で動作する仮想マシンであってよい。更に、移動体制御システムは、制御部202であってもよい。
【0067】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の情報処理装置(例えば、101)は、
特定の農作物を栽培した際の、環境情報と肥料情報と土壌情報とを含む栽培条件を示す情報と、前記栽培条件において栽培された前記特定の農作物の特性を示す特性情報とを関連付けたデータセットを取得するデータ取得手段(例えば、212)と、
ユーザの所望の農作物の特性と、前記ユーザが利用可能な土地に関する環境情報及び土壌情報とを取得する入力取得手段(例えば、213)と、
前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための肥料情報を提供する提供手段(例えば、214)と、
前記提供された肥料情報に従って新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、通信装置から受け付ける受付手段(例えば、216)と、を有する。
【0068】
この実施形態によれば、農作物の既存の栽培者からデータを取得することが容易でない場合であっても所望の農作物を栽培するための情報を提供することが可能になる。
【0069】
2.上記実施形態の情報処理装置は、
前記新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報を、前記提供した肥料情報を含む前記栽培条件と関連付けて前記データセットに登録する登録手段を更に有する。
【0070】
この実施形態によれば、ユーザから受け付けた、栽培された農作物の特性をデータセットに登録することで、信頼性の高いデータセットを拡張してゆくことが可能になる。
【0071】
3.上記実施形態の情報処理装置は、
前記提供手段は、前記新たに栽培された農作物の特性を示す特性情報が関連付けられて登録された前記データセットに前記遺伝的アルゴリズムを適用する。
【0072】
この実施形態によれば、拡張してゆくデータセットに遺伝的アルゴリズムを適用することで、遺伝的アルゴリズムの精度を向上させることができる。
【0073】
4.上記実施形態の情報処理装置は、
前記提供手段は、前記データセットに遺伝的アルゴリズムを適用して、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を栽培するための、栽培条件を示す情報を抽出する抽出手段を更に含み、
前記抽出された栽培条件を示す情報のうちの肥料情報を取り出して、当該肥料情報を提供する。
【0074】
この実施形態によれば、環境情報と肥料情報と土壌情報とで構成される栽培条件情報を遺伝子コードとして遺伝的アルゴリズムを適用しながら、ユーザには、必要な部分である肥料情報を提供することが可能になる。
【0075】
5.上記実施形態の情報処理装置は、
前記データセットに基づいて、前記栽培条件を示す情報の分布に対する、前記農作物の特性の分布を示す応答曲面を生成する生成手段を更に有し、
前記抽出手段は、更に前記応答曲面を用いて、前記ユーザが利用可能な土地において前記ユーザの所望の農作物の特性を有する農作物を収穫するための、栽培条件を示す情報を抽出することが可能になる。
【0076】
この実施形態によれば、遺伝的アルゴリズムによる最適化処理の一部を、シミュレーションによって実行可能になる。
【0077】
6.上記実施形態の情報処理装置は、
前記入力取得手段は、前記ユーザが利用可能な土地に関する分析処理を実行することにより、当該土地に関する環境情報と土壌情報とを取得する。
【0078】
この実施形態によれば、ユーザが土地に関する詳細な情報を有していない場合であっても、ユーザは肥料情報の提供を受けることが可能になる。
【0079】
7.上記実施形態の情報処理装置は、
前記入力取得手段は、前記ユーザの所望の農作物の特性を示す特性情報を、前記通信装置から取得する。
【0080】
この実施形態によれば、ユーザは、所望の農作物の特性を、情報処理装置101に容易に提供することができる。
【0081】
8.上記実施形態の情報処理装置は、
前記提供手段は、前記遺伝的アルゴリズムを前記データセットに適用する際に、前記栽培条件を示す情報のうち、最適化のために変化させ得る情報と、最適化のために変化させない情報とを区別して、前記遺伝的アルゴリズムを前記データセットに適用する。
【0082】
この実施形態によれば、土地固有の情報であってアルゴリズムによって変動させることができない情報を固定したうえで、アルゴリズムを適用することができる。
【0083】
9.上記実施形態の情報処理装置は、
前記最適化のために変化させない情報は、前記土壌情報における土地固有の情報を含む。
【0084】
この実施形態によれば、土地固有の土壌の情報を固定することで、変動させ得る情報を土地固有の土壌を改善するための情報とすることが可能になる。
【0085】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
101…情報処理装置、 102…通信装置、 212…データ取得部、 213…入力取得部、 214…最適解抽出部、 215…情報提供部、 216…データ登録部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8