(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049905
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】水底マウンドの法面整形装置及び法面整形方法
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156418
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】中尾 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 歩
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045CA32
(57)【要約】
【課題】法面傾斜角の異なる水底マウンドに適応でき、且つ、設計上の法面角度に合わせて効率的且つ精密に法面を均すことができる水底マウンドの法面整形装置及び法面整形方法の提供。
【解決手段】この水底マウンドの法面整形装置は、整形用錘体8に一対の吊りワイヤ7,7に吊り持ちされるフレーム20と、フレーム20の下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材21と、均し部材21の他端に接続された回動操作用ワイヤ22,22と、回動操作用ワイヤ22,22の繰り出し・巻取り動作により均し部材21の均し面傾斜角度を調整する傾斜角制御手段30とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起重機船のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤに支持された整形用錘体を備え、該整形用錘体の下面を水底マウンドの法面に向けて降下させて前記法面を均すようにした水底マウンドの法面整形装置において、
前記整形用錘体は、前記一対の吊りワイヤに吊り持ちされるフレームと、該フレームの下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材と、該均し部材の他端に接続された回動操作用ワイヤと、該回動操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記均し部材の均し面傾斜角度を調整する傾斜角制御手段とを備えていることを特徴とする水底マウンドの法面整形装置。
【請求項2】
前記一対の吊りワイヤが挿通される旋回操作ガイド部材と、該旋回操作ガイド部材の同一端面上の水平方向にそれぞれ間隔をおいて先端が接続された一対の旋回操作用ワイヤと、該旋回操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記旋回操作ガイド部材の旋回方向姿勢を制御する旋回方向姿勢制御手段とを備えた請求項1に記載の水底マウンドの法面整形装置。
【請求項3】
前記均し部材は、回動操作用ワイヤ側が厚い側面視台形状に形成されている請求項1又は2に記載の水底マウンドの法面整形装置。
【請求項4】
前記均し部材は、回動操作用ワイヤ側端部上面又は端面部に錘が固定されている請求項1又は2に記載の水底マウンドの法面整形装置。
【請求項5】
前記フレームの前記均し部材の上面と対向する位置に緩衝部材が固定されている請求項1又は2に記載の水底マウンドの法面整形装置。
【請求項6】
起重機船のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤに支持された整形用錘体を降下させ、該整形用錘体の下面で水底マウンドの法面を押圧して均す水底マウンドの法面整形方法において、
前記整形用錘体は、前記一対の吊りワイヤに吊り持ちされるフレームと、該フレームの下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材と、該均し部材の他端に接続された回動操作用ワイヤとを備え、
該回動操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により設計上の傾斜角に合わせて前記均し部材の傾斜角度を調整し、その状態で前記整形用錘体を前記マウンドの法面に降下させることを特徴とする水底マウンドの法面整形方法。
【請求項7】
前記一対の吊りワイヤが挿通される旋回操作ガイド部材と、該旋回操作ガイド部材の同一端面上の水平方向にそれぞれ間隔をおいて先端が接続された一対の旋回操作用ワイヤとを備え、
該旋回操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記法面に合わせて前記旋回操作ガイド部材の旋回方向姿勢を制御する請求項6に記載の水底マウンドの法面整形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン等の水中構造物の基礎として水底部に構築された水底マウンドの法面を突き固めて整形するための水底マウンドの法面整形装置及び法面整形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソン等の水中に設置される構造物は、水底地盤上に捨石等を積み上げて水底マウンドを形成し、この水底マウンド上に載置されるようになっている。
【0003】
この水底マウンドは、一般に周囲に水底に向けて傾斜した法面を有する四角錘台状に形成され、捨石等のマウンド材を積み上げて水底マウンドの大凡の形状を形成した後、水底マウンドの上面及び法面を均して整形することにより構築される。
【0004】
従来、水底マウンドの整形作業は、起重機船のジブ先端より繰り出された吊りワイヤに支持されたグラブバケットや整形用錘体を水底マウンドの上面に向けて降下させ、グラブバケットや整形用錘体の底面を天端面に衝突させて均すようにしていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、傾斜した法面の整形は、潜水士による手作業で行われることが一般的であったが、設計上の法面の傾斜に合わせて傾斜させた底面(均し面)を有する整形用錘体を使用し、この整形用錘体を水底マウンドの法面に向けて降下させ、傾斜した均し面を法面に衝突させることによって均す方法も開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平5-13777号公報
【特許文献2】特開2000-96569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、クレーンに吊り持ちされた整形用錘体が潮流や降下時の水の抵抗等を受けて水平方向で旋回(ヨーイング)するため、整形用錘体を法面に衝突させる際、整形用錘体の底面(均し面)が設計上の法面角度と異なる方向に向いた状態で衝突するおそれがあった。
【0008】
また、法面が一定の幅を有する場合、整形用錘体を幅方向に移動させつつ複数回に分けて均す必要があるが、ジブの旋回によって移動させようとすると、ジブの旋回に伴い整形用錘体が法面の法線と異なる方向に向けられるため、整形用錘体を法面の法線と平行な状態にするには、その都度起重機船を移動させなければならず、作業が煩雑であるとともに工期が長期化するという問題があった。
【0009】
さらには、水底マウンドの法面は、傾斜角が工事案件毎に異なることが多いため、他の事例で使用した整形用錘体を転用することができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、法面傾斜角の異なる水底マウンドに適応でき、且つ、設計上の法面傾斜角に合わせて効率的且つ精密に法面を均すことができる水底マウンドの法面整形装置及び法面整形方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、起重機船のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤに支持された整形用錘体を備え、該整形用錘体の下面を水底マウンドの法面に向けて降下させて前記法面を均すようにした水底マウンドの法面整形装置において、前記整形用錘体は、前記一対の吊りワイヤに吊り持ちされるフレームと、該フレームの下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材と、該均し部材の他端に接続された回動操作用ワイヤと、該回動操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記均し部材の均し面傾斜角度を調整する傾斜角制御手段とを備えていることにある。
【0012】
本発明に係る請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記一対の吊りワイヤが挿通される旋回操作ガイド部材と、該旋回操作ガイド部材の同一端面上の水平方向にそれぞれ間隔をおいて先端が接続された一対の旋回操作用ワイヤと、該旋回操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記旋回操作ガイド部材の旋回方向姿勢を制御する旋回方向姿勢制御手段とを備えたことにある。
【0013】
本発明に係る請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記均し部材は、回動操作用ワイヤ側が厚い側面視台形状に形成されていることにある。
【0014】
本発明に係る請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記均し部材は、回動操作用ワイヤ側端部上面又は端面部に錘が固定されていることにある。
【0015】
本発明に係る請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記フレームの前記均し部材の上面と対向する位置に緩衝部材が固定されていることにある。
【0016】
本発明に係る請求項6に記載の発明の特徴は、起重機船のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤに支持された整形用錘体を降下させ、該整形用錘体の下面で水底マウンドの法面を押圧して均す水底マウンドの法面整形方法において、前記整形用錘体は、前記一対の吊りワイヤに吊り持ちされるフレームと、該フレームの下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材と、該均し部材の他端に接続された回動操作用ワイヤとを備え、該回動操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により設計上の傾斜角に合わせて前記均し部材の傾斜角度を調整し、その状態で前記整形用錘体を前記マウンドの法面に降下させることにある。
【0017】
本発明に係る請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記一対の吊りワイヤが挿通される旋回操作ガイド部材と、該旋回操作ガイド部材の同一端面上の水平方向にそれぞれ間隔をおいて先端が接続された一対の旋回操作用ワイヤとを備え、該旋回操作用ワイヤの繰り出し・巻取り動作により前記法面に合わせて前記旋回操作ガイド部材の旋回方向姿勢を制御することにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水底マウンドの法面整形装置は、請求項1に記載の構成を具備することによって、法面角度の異なる水底マウンドに適応することができる。
【0019】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、整形用錘体の水平方向の旋回(ヨーイング)を抑え、均し部材を法面の法線と略平行に衝突させることができ、法面を精密に均すことができる。また、法面幅方向に対しジブの旋回によって整形用錘体を移動させた場合であっても、均し部材を法面の法線と平行に向けることができ、起重機船を移動させる必要がなく、工事費の削減及び工期の短縮を図ることができる。
【0020】
さらに、本発明において、請求項3乃至4に記載の構成を具備することによって、均し部材の回動先端側の重量が増し、均し部材を好適に法面に衝突させることができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、均し部材が衝突の反動によってフレーム側に回動した場合であっても、その衝撃を緩衝部材で吸収し、フレームの破損を防止することができる。
【0022】
また、本発明に係る水底マウンドの法面均し方法は、請求項6の構成を具備することによって、法面角度の異なる水底マウンドに適応することができる。
【0023】
また、本発明において、請求項7の構成を具備することによって、整形用錘体の水平方向の旋回(ヨーイング)を抑え、均し部材を法面の法線と平行に衝突させることができ、法面を精密に均すことができる。また、法面幅方向に対しジブの旋回によって整形用錘体を移動させた場合であっても、均し部材を法面の法線と平行に向けることができ、起重機船を移動させる必要がなく、工事費の削減及び工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る水底マウンドの法面整形装置の概略を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る水底マウンドの法面整形方法において、ジブを旋回させた際の状態を説明するための簡略化した平面図である。
【
図5】(a)は同上の旋回操作用ワイヤの繰り出し量を計算する方法を説明するための概略平面図、(b)は同概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る水底マウンドの法面整形装置の実施態様を
図1~
図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水底マウンド、符号2は水面、符号3は起重機船である。
【0026】
起重機船3は、台船4上にクレーン5を備えるとともに、クレーン5のジブ6の先端より繰り出された一対の吊りワイヤ7,7に吊り持ちされた整形用錘体8を用いて水底マウンド1の法面1Aを整形する装置(以下、法面整形装置という)を具備している。
【0027】
クレーン5は、台船4上に旋回可能に設置された旋回部9と、旋回部9に回動可能に支持されたジブ6とを備え、ジブ6の先端より繰り出された吊りワイヤ7,7の先端部に整形用錘体8が吊り持ちされている。
【0028】
法面整形装置は、起重機船3のジブ6先端より繰り出された一対の吊りワイヤ7,7に支持された整形用錘体8の下面を水底マウンド1の法面1Aに向けて降下させて法面1Aを均すようになっている。
【0029】
また、この法面整形装置は、一対の吊りワイヤ7,7が挿通される旋回操作ガイド部材10と、旋回操作ガイド部材10の同一端面上の水平方向にそれぞれ間隔をおいて先端が接続された一対の旋回操作用ワイヤ11,12と、旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し・巻取り動作により旋回操作ガイド部材10の旋回方向姿勢を制御する旋回方向姿勢制御手段とを備え、整形用錘体8が法面1Aに対して適切な方向に維持されるようになっている。
【0030】
整形用錘体8は、
図3に示すように、一対の吊りワイヤ7,7に吊り持ちされるフレーム20と、フレーム20の下端部に一方の端部が回動可能に支持された均し部材21と、均し部材21の他端に接続された回動操作用ワイヤ22,22と、回動操作用ワイヤ22,22の繰り出し・巻取り動作により整形用錘体8の下面である均し部材21の均し面21aの傾斜角度を調整する傾斜角制御手段とを備え、均し部材21の傾斜角度を対象となる水底マウンド1の法面1Aの設計上の傾斜角度に合わせて調節することができるようになっている。
【0031】
フレーム20は、矩形枠状の上部フレーム23と、上部フレーム23の前端両側部より垂下された一対の支持部24,24と、各支持部24,24の下端と上部フレーム23の後端両側部とを連結する一対の補強部材25,25とを備え、各支持部24,24の下端部に均し部材21の一方の端部が回動可能に支持されている。
【0032】
尚、このフレーム20は、均し部材21の上面と対向する位置に緩衝部材26が固定され、均し部材21が回動した際、例えば、均し部材21が法面1Aに衝突した際の反動でフレーム20側に回動し、フレーム20と衝突した場合であっても、その衝撃を緩衝部材26で吸収し、フレーム20を破損させることを防止している。
【0033】
緩衝部材26は、ゴム等の弾性部材によって構成され、上部フレーム23の後端両側部間下面や補強部材25,25の下面等に固定してもよく、上部フレーム23の後端部を構成する管材の外周に巻き付けて設置してもよい。
【0034】
均し部材21は、一定の重量と強度を具備する鋼材等の材料によって構成され、平面視矩形状且つ、フレーム20に回動可能に支持される側に比べ、回動操作用ワイヤ22,22側が厚い側面視台形状に形成され、傾斜した下面が水底マウンド1の法面1Aを押圧する均し面21aを成している。
【0035】
この均し部材21は、回動操作用ワイヤ22,22側を厚く形成することにより、重心を回動操作用ワイヤ22,22側に片寄らせ、法面1Aに衝突した際に確実に均し部材21で法面1Aを押圧できるようにしている。
【0036】
尚、上述の実施例では、均し部材21が回動操作用ワイヤ22,22側が厚い側面視台形状に形成された場合について説明したが、均し部材21を平坦な版状に形成し、回動操作用ワイヤ22,22側の端部上面又は端面部に錘が固定されたものであってもよい。
【0037】
この均し部材21は、厚みが薄い側の端部上面両側部に均し部材側軸受け部材27が突設され、均し部材側軸受け部材27が支持部24,24の下端に固定された一対のフレーム側軸受け部材28,28間に挿入され、両フレーム側軸受け部材28,28及びその間に挿入された均し部材側軸受け部材27を回動軸29が貫通し、均し部材21が支持部24,24下端に回動可能に支持されている。
【0038】
回動操作用ワイヤ22,22は、クレーン5の旋回部9上に設置された傾斜角制御手段を構成するウインチ30,30より巻取り・繰り出し自在に繰り出され、ジブ6に設置された中継シーブ31及びフレーム20の上部フレーム23後端部に設置されたフレーム側シーブ32を経て、先端が均し部材21の後端部に連結されている。
【0039】
傾斜角制御手段は、クレーン5の旋回部9上等に設置されたウインチ30,30と、両ウインチ30,30を同期させて制御する制御部(図示せず)によって構成され、両ウインチ30,30の繰り出し量によって均し部材21の傾斜角を制御するようになっている。
【0040】
この傾斜角制御手段は、制御部によって整形用錘体8を支持する吊りワイヤ7,7の巻取り・繰り出し動作と連動して回動操作用ワイヤ22,22の巻取り・繰り出し動作を行い、整形用錘体8が降下した際、均し部材21が所定の傾斜角で法面1Aを押圧できるようになっている。
【0041】
旋回操作ガイド部材10は、
図3に示すように、水平方向に間隔をおいて穿孔されたワイヤ挿通孔40,40が形成された板状に形成され、このワイヤ挿通孔40,40に整形用錘体8を吊り持ちする吊りワイヤ7,7が挿通されている。
【0042】
また、旋回操作ガイド部材10の上面には、両端部にガイド用吊りワイヤ41,41の先端が連結され、旋回操作ガイド部材10がガイド用吊りワイヤ41,41を介してクレーン5に吊り持ちされ、サーボ付きウインチ等からなる高さ制御手段によってガイド用吊りワイヤ41,41の繰り出し量を制御することによってジブ6先端部と整形用錘体8との間の所定の高さに旋回操作ガイド部材10を配置できるようになっている。
【0043】
さらに、旋回操作ガイド部材10の後端側の側面には、旋回操作用ワイヤ11,12の先端が連結される連結具42,42が固定され、旋回方向姿勢制御手段によって旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し・巻取り動作することによって旋回操作ガイド部材10の旋回方向姿勢が制御されるようになっている。
【0044】
尚、旋回操作用ワイヤ11,12は、台船4等との接触によって切断する虞がある場合、ジブ6に取り付けた中継シーブ43,43を経由して旋回操作ガイド部材10に連結することが望ましい。
【0045】
旋回方向姿勢制御手段は、クレーン5の旋回部9上等に設置されたウインチ44,45によって構成され、各ウインチ44,45の繰り出し量によって旋回操作ガイド部材10の旋回方向位置を制御するようになっている。
【0046】
旋回操作用ワイヤ11,12は、
図2に示すように、各ウインチ44,45の位置と対極の位置の連結具42,42に先端部が連結され、途中で交差した状態となっており、一方のウインチ44で旋回操作用ワイヤ11を繰り出し、他方のウインチ45で旋回操作用ワイヤ12を巻き取ることによって上面から見て反時計回り方向に旋回し、他方のウインチ45で旋回操作用ワイヤ12を繰り出し、一方のウインチ44で旋回操作用ワイヤ11を巻き取ることによって上面から見て時計回り方向に旋回し、旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し量・巻取り量によって旋回操作ガイド部材10の向きを所定の旋回方向位置に移動させることができるようになっている。
【0047】
尚、旋回操作ガイド部材10は、特に図示しないが、外面にGNSS機器を備え、GNSS機器によって水平方向の位置及び水面2からの高さ等を計測するようにしてもよい。
【0048】
また、旋回操作ガイド部材10には、加速度センサ等の旋回位置計測装置を備え、整形用錘体8の旋回姿勢を検知できるようにしてもよい。
【0049】
次に、上述した法面整形装置を使用した水底マウンド1の法面整形方法について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0050】
水底マウンド1は、捨石等のマウンド材を積み上げ、四方に水底に向けて傾斜した法面1Aを有する四角錘台状に形成され、天端面及び四方の法面1Aを押圧して均すことにより整形される。
【0051】
法面1Aを整形するには、先ず、起重機船3を所定の位置まで移動させ、クレーン5の旋回部9を旋回させるとともに、ジブ6を所望の角度に回動させ、整形用錘体8を押圧する法面1Aの所定の位置上に移動させる。
【0052】
また、旋回方向姿勢制御手段により旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し・巻取り動作をさせ、旋回操作ガイド部材10の旋回方向姿勢を所定の向き、即ち、旋回操作ガイド部材10と法面1Aの法線とが平行となる向きに合わせる。
【0053】
具体的には、
図4に示すように、クレーン5を反時計回りに旋回させた場合には、一方のウインチ44で旋回操作用ワイヤ11を繰り出し、他方のウインチ45で旋回操作用ワイヤ12を巻き取ることによって旋回操作ガイド部材10を上面から見て時計回り方向に旋回させ、旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し量・巻取り量によって旋回操作ガイド部材10の向きを所定の旋回方向位置に移動させる。
【0054】
一方、クレーン5を反対側(時計回り方向)に旋回させた際には、他方のウインチ45で旋回操作用ワイヤ12を繰り出し、一方のウインチ44で旋回操作用ワイヤ11を巻き取ることによって旋回操作ガイド部材10を上面から見て反時計回り方向に旋回させる。
【0055】
尚、旋回操作用ワイヤ11,12の繰り出し量は、例えば、次式より求めることができる。尚、次式において、
図5に示すように、Rは旋回径(中継シーブ43からジブ6先端までの水平方向距離)、Hは中継シーブ43を基準とした旋回操作ガイド部材10の吊り下げ高さ、θは起重機船3正面からの旋回角、W1は中継シーブ43,43の間隔、W2はワイヤ挿通孔40,40間距離、L1は旋回操作ワイヤの中継シーブを基準とした水平方向長、L2は旋回操作ワイヤの中継シーブ43を基準とした水平方向長である。
【数1】
【数2】
【数3】
【0056】
次に、傾斜角制御手段により回動操作用ワイヤ22,22を繰り出し・巻取り動作させ、法面1Aの設計上の傾斜角に合わせて均し部材21の傾斜角度を調整する。
【0057】
これにより、旋回操作ガイド部材10下に位置する整形用錘体8は、旋回操作ガイド部材10と平行となる方向に旋回し、均し部材21が法面1Aの法線と平行に向き、且つ、均し部材21が設計上の法面1Aの傾斜角度に維持される。
【0058】
そして、整形用錘体8の旋回方向姿勢及び均し部材21の傾斜角度が確定したら、旋回操作ガイド部材10の状態を維持したまま、吊りワイヤ7,7及び回動操作用ワイヤ22,22を同期させた状態で繰り出し、整形用錘体8を自由落下により法面1Aに衝突する位置まで降下させる。
【0059】
その際、整形用錘体8は、旋回操作ガイド部材10によって少なくとも吊りワイヤ7,7が制御された旋回方向に保持されているので、旋回操作ガイド部材10と同じ方向に維持された状態で降下する。
【0060】
一方、均し部材21は、回動操作用ワイヤ22,22によって、回動操作用ワイヤ22,22側の端部が所定の傾斜角を成す位置から下側に向けた回動が制限されており、且つ、重心が厚みのある回動操作用ワイヤ22,22側に片寄っていることから、均し面21aが設計上の法面1Aの傾斜角度で法面1Aに衝突する。
【0061】
また、均し部材21は、法面1Aに衝突した衝撃の反動によりフレーム20側に回動するが、回動操作用ワイヤ22,22によって、回動操作用ワイヤ22,22側の端部が所定の傾斜角を成す位置から下側に向けた回動が制限されており、且つ、重心が厚みのある回動操作用ワイヤ22,22側に片寄っていることから、反動で回動した位置から法面1A側に回動して再度均し面21aが設計上の法面1Aの傾斜角度で法面1Aに衝突する。
【0062】
そして、均し部材21は、衝突の反動によるフレーム20側への回動と、自重による法面1A側への回動とを繰り返し、最終的に均し面21aが法面1Aと重なった位置に収束し、法面1Aが設計上の傾斜角度で突き固められて整形される。
【0063】
尚、フレーム20には、均し部材21の上面と対向する位置に緩衝部材26が固定されているので、均し部材21が法面1Aに衝突した衝撃の反動によりフレーム20側に回動し、フレーム20と衝突することがあってもその衝撃が緩衝部材26によって吸収され、フレーム20が破損しないようになっている。
【0064】
尚、突き固めが不十分な場合には、吊りワイヤ7,7及び回動操作用ワイヤ22,22を巻き上げ、所定の高さまで整形用錘体8を引き上げ、引き上げた状態から再度整形用錘体8を降下させて法面1Aを突き固める。
【0065】
そして、クレーン5の旋回、ジブ6角度の調整をしながら、上述の一連の突き固め作業を繰り返すことによって、水底マウンド1の法面1A全体を常に均し部材21の均し面21aを設計上の法面1Aと平行に向けた状態で法面1Aの整形作業を行うことができ、精度の高い法面1Aを形成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 水底マウンド
2 水面
3 起重機船
4 台船
5 クレーン
6 ジブ
7 吊りワイヤ
8 整形用錘体
9 旋回部
10 旋回操作ガイド部材
11,12 旋回操作用ワイヤ
20 フレーム
21 均し部材
22 回動操作用ワイヤ
23 上部フレーム
24 支持部
25 補強部材
26 緩衝部材
27 均し部材側軸受け部材
28 フレーム側軸受け部材
29 回動軸
30 ウインチ
31 中継シーブ
32 フレーム側シーブ
40 ワイヤ挿通孔
41 ガイド用吊りワイヤ
42 連結具
43 中継シーブ
44,45 ウインチ