(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049928
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両運転診断システム、車両運転診断方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156449
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】520423334
【氏名又は名称】ミラクシアエッジテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】福川 尚史
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 何奈
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB13
5H181EE12
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181MB02
5H181MB04
(57)【要約】
【課題】誤った運転診断がなされることを抑制できる車両運転診断システムなどを提供する。
【解決手段】車両運転診断システム100は、車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得部121と、実走行情報と、車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、複数の地点のそれぞれで、車両が、(i)所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定部122と、判定部122の判定結果に基づいて、複数の地点のうちの通行区分違反走行または走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、複数の地点に対する異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて車両の運転診断を行う診断部123と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得部と、
前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断部と、を備える、
車両運転診断システム。
【請求項2】
前記複数の地点は、複数の領域のいずれかに位置し、
前記診断部は、前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、前記車両の運転診断を行う、
請求項1に記載の車両運転診断システム。
【請求項3】
前記診断部は、
前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、前記車両の運転が正常であるか否かを判定することで前記車両の運転診断を行う、
請求項2に記載の車両運転診断システム。
【請求項4】
前記診断部は、さらに、
前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、当該領域における前記車両が走行する道路の距離に基づいて重みを決定し、
前記複数の領域のそれぞれの前記車両の運転診断の結果と、前記重みとに基づいて、前記複数の領域の全体での前記車両の運転診断を行う、
請求項3に記載の車両運転診断システム。
【請求項5】
さらに、前記複数の領域の位置、前記車両が走行した時間、前記複数の領域に含まれる道路の状況、および、前記車両が走行した際の天候の少なくともいずれかを示す情報に基づいて、前記複数の領域の大きさおよび形状の少なくとも一方を変更する変更部を備える、
請求項2に記載の車両運転診断システム。
【請求項6】
さらに、前記所定走行情報を記憶する記憶部を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両運転診断システム。
【請求項7】
車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得ステップと、
前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップでの判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断ステップと、を含む、
車両運転診断方法。
【請求項8】
請求項7に記載の車両運転診断方法をコンピュータに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両運転診断システム、車両運転診断方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を診断したりドライバに運転の指導を行うシステムがある。
【0003】
特許文献1には、道路を走行する車両の走行状況を取得し、走行状況から得られる車両が走行した道路形状に基づいて、当該道路形状に対応する理想軌跡を生成し、当該理想軌跡と、走行状況から得られる車両の運転走行軌跡とを比較して車両の運転を診断するシステムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、車載端末で収集された運行情報を加工処理して加工情報を作成し、加工情報に含まれる交通事故の予兆情報を検出し、この予兆情報に関連する交通安全の指導案を検索して指導書を作成する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-194620号公報
【特許文献2】特開2003-256980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、車両の運転診断を行うためには、例えば、車両の走行軌跡が用いられる。車両の走行軌跡、つまり、車両の位置に関する情報は、例えば、GPS(Global Poditioning System)などのセンサが用いられて取得される。
【0007】
ここで、センサの精度によっては、車両の実際の位置とセンサで取得された位置とに誤差が生じる場合がある。このような誤差が大きいと、車両の運転診断において、正常な運転が行われているにもかかわらず異常な運転が行われていると診断されるような、誤った運転診断がなされる可能性がある。
【0008】
本開示は、誤った運転診断がなされることを抑制できる車両運転診断システムなどを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る車両運転診断システムは、車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得部と、前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る車両運転診断方法は、車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得ステップと、前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップでの判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断ステップと、を含む。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記車両運転診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様に係る車両運転診断システムなどによれば、誤った運転診断がなされることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る車両運転診断システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る所定走行情報を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る車両運転診断システムの処理手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、方向と数値との組み合わせの具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、車両の走行方向を数値で表した際の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る所定走行情報の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る実走行情報の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る判定結果の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る運転診断の際の重み付けの具体例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る運転診断の結果の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る車両運転診断システムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例に係る車両運転診断システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップおよびステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0016】
また、本明細書において、同じまたは一致などの要素間の関係性を示す用語、ならびに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、10%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0017】
(実施の形態)
[構成]
まず、車両運転診断システムの構成について説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る車両運転診断システム100の構成を示すブロック図である。
【0019】
車両運転診断システム100は、車両の運転(走行)を診断(評価)する、つまり、車両の運転診断を行うシステムである。具体的には、車両運転診断システム100は、車両の走行状況を示す実走行情報に基づいて、ドライバによる当該車両の運転の良し悪しを診断する。
【0020】
走行状況とは、車両の運転(走行)の状態であり、実走行情報は、車両の実際の運転の状態を示す情報である。実走行情報は、例えば、車両の位置および当該位置での時刻を示す情報、つまり、車両の位置の時間変化を示す情報である。例えば、実走行情報には、車両の速度、加速度、および、舵角などの情報が時刻と紐付けられて含まれていてもよい。また、実走行情報には、車両の周囲の歩行者の有無、および、信号機の灯色などの車両の周囲の情報が含まれていてもよい。
【0021】
車両運転診断システム100は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機などの車両の位置を検出できるセンサを備えるスマートフォンまたはタブレット端末などのコンピュータにより実現される。例えば、ドライバは、車両運転診断システム100の一例であるスマートフォンを車両に持ち込み当該車両を運転する。車両運転診断システム100は、車両の位置の時間変化を検出することで実走行情報を取得し、取得した実走行情報と、予め任意に定められた所定走行情報とに基づいて、車両の運転診断を行い、スマートフォンが備えるディスプレイに運転診断の結果(診断結果)を表示することで、診断結果をドライバに通知する。
【0022】
所定走行情報は、車両の所定の走行状況(運転の状態)を示す情報である。具体的には、所定走行情報は、交通ルールなどに即した車両の理想的な走行状況を示す情報である。例えば、車両運転診断システム100は、実走行情報と所定走行情報とを比較し、一致しているほど良い運転であると診断し、一致していないほど悪い運転であると評価する、所定走行情報は、例えば、スマートフォンが備えるメモリなどの記憶装置に予め記憶されている。
【0023】
車両運転診断システム100は、センサ110と、情報処理部120と、記憶部130と、表示部140と、を備える。
【0024】
センサ110は、車両の走行状況を検出するためのセンサである。センサ110は、例えば、GPS受信機である。センサ110は、GPSデータを受信することで車両の位置を検出する。
【0025】
情報処理部120は、車両の運転診断を行うコンピュータである。情報処理部120は、例えば、センサ110などと信号の送受信をするための通信インターフェース、および、プログラムを実行するプロセッサなどで実現される。当該通信インターフェースは、有線通信可能なように通信線が接続されるコネクタなどにより実現されてもよいし、無線通信可能なようにアンテナおよび無線通信回路などにより実現されてもよい。
【0026】
情報処理部120は、取得部121と、判定部122と、診断部123と、出力部124と、変更部125と、を備える。
【0027】
取得部121は、車両の走行状況を示す実走行情報を取得する処理部である。取得部121は、例えば、センサ110が検出した車両の位置を示すGPSデータを実走行情報として取得する。
【0028】
また、例えば、取得部121は、車両運転診断システム100が備える通信インターフェースを介して車両が走行する道路の状況および天候などを示す情報をサーバなどから取得してもよい。
【0029】
道路の状況とは、例えば、道路の工事が行われているか否か、および、事故などが発生しているか否かなどのような、車両が道路を走行可能であるか否かを示す情報である。
【0030】
判定部122は、取得部121が取得した実走行情報と、車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、当該複数の地点のそれぞれで、車両が、(i)所定走行情報が示す走行方向(進行方向)とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する処理部である。つまり、判定部122は、各地点のそれぞれで、通行区分違反走行、または、走行禁止領域走行が車両によって実行されているか否かを判定する。
【0031】
図2は、実施の形態に係る所定走行情報を説明するための図である。具体的には、
図2は、車両が走行する道路の地図の一部および当該一部における所定走行情報を模式的に示す図である。
【0032】
例えば、走行する道路を示す地図(地図情報)が記憶部130に予め記憶されている。また、当該地図には、複数の運転診断領域が定められている。
【0033】
運転診断領域は、診断部123が車両の運転診断を行う領域である。
【0034】
また、運転診断領域には、複数の走行判定領域が定められている。
【0035】
走行判定領域は、車両の所定の走行を示す領域である。判定部122は、走行判定領域に含まれる地点を車両が走行した際に、当該地点において車両が通行区分違反走行、または、走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する。これらの領域は、例えば、矩形であり、当該領域の各頂点(
図2に示す黒丸)の地図における座標を示す情報で定められている。
【0036】
走行禁止領域走行とは、例えば、交通ルールで走行禁止と定められた領域の走行である。走行禁止領域走行には、例えば、車両の一例である自転車による歩道の走行が含まれる。例えば、所定走行情報として、各走行判定領域には走行方向(
図2に模式的に示す白抜き矢印)または走行禁止である旨(
図2に模式的に示す×印)が定められている。判定部122は、実走行情報における車両の位置(第1地点)を示す情報と、当該位置の次の位置(第2地点)を示す情報とに基づいて、第1地点における車両の走行方向を決定する。さらに、判定部122は、第1地点および決定した走行方向と、第1地点が含まれる走行判定領域における走行方向または走行禁止である旨を示す所定走行情報とに基づいて、第1地点において車両が通行区分違反走行、または、走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する。
【0037】
通行区分違反走行とは、例えば、交通ルールで定められた走行方向とは異なる方向への走行である。通行区分違反走行には、例えば、いわゆる逆走が含まれる。例えば、判定部122は、所定走行情報が示す走行方向と、決定した車両の走行方向とが異なる場合に、第1地点において通行区分違反走行が実行されたと判定する。
【0038】
また、例えば、判定部122は、所定走行情報が走行禁止である旨を示す走行判定領域に第1地点が位置している場合に、第1地点において走行禁止領域走行が実行されたと判定する。
【0039】
なお、運転診断領域および走行判定領域の形状およびサイズは、任意に定められてよい。例えば、運転診断領域および走行判定領域の形状およびサイズは、変更部125によって所定の条件に基づいて変更(決定)されてもよい。
【0040】
例えば、所定走行情報には、運転診断領域を示す情報と、走行判定領域を示す情報と、走行判定領域に設定された車両の所定の走行(走行方向または走行禁止など)を示す情報とが含まれる。
【0041】
診断部123は、判定部122の判定結果に基づいて、複数の地点のうちの通行区分違反走行または走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、複数の地点に対する異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて車両の運転診断を行う処理部である。つまり、診断部123は、例えば、判定部122による各地点の判定結果に基づいて算出される異常運転地点の数に基づいて、車両の運転診断を行う。あるいは、診断部123は、例えば、判定部122により判定された地点の総数に対する判定部122による各地点の判定結果に基づいて算出される異常運転地点の数の割合に基づいて、車両の運転診断を行う。このように、車両運転診断システム100では、判定部122による各地点の判定結果を用いて、各地点の総合的な運転診断(評価)を行う。具体的には、判定部122が判定する複数の地点は、複数の運転診断領域のいずれかに位置し、診断部123は、複数の運転診断領域のそれぞれの領域ごとに、各領域に含まれる各地点の判定部122による判定結果を用いて、車両の運転診断を行う。記憶部130には、例えば、任意の運転診断領域単位で車両の所定の走行方向が示された所定走行情報が記憶されている。診断部123は、当該任意の運転診断領域単位で運転診断を行う。
【0042】
例えば、診断部123は、複数の運転診断領域のそれぞれの領域ごとに、車両の運転が正常であるか否かを判定することで車両の運転診断を行う。
【0043】
なお、診断部123は、複数の運転診断領域のそれぞれの領域ごとの、車両の運転が正常であるか否かを判定結果に基づいて、複数の運転診断領域の総合的な運転診断を行ってもよい。この際に、診断部123は、例えば、複数の運転診断領域のそれぞれに重み付けを行ってもよい。例えば、診断部123は、さらに、複数の運転診断領域のそれぞれの領域ごとに、当該領域における車両が走行する道路の距離に基づいて重みを決定し、複数の運転診断領域のそれぞれの車両の運転診断の結果と、重みとに基づいて、複数の運転領域の全体での車両の運転診断を行う。例えば、診断部123は、距離が長い道路を含む運転診断領域の運転診断の結果に、距離が短い道路を含む運転診断領域の運転診断の結果よりも影響を大きくするような重み付けを行う。重み付けの具体例については、後述する。
【0044】
出力部124は、診断部123の運転診断の結果を出力する処理部である。例えば、出力部124は、運転診断の結果を示す情報(結果情報)を表示部140に出力することで、表示部140に結果情報を表示させる。
【0045】
なお、車両運転診断システム100(具体的には、情報処理部120)は、変更部125を備えてもよい。
【0046】
変更部125は、複数の領域の位置、車両が走行した時間、複数の領域に含まれる道路の状況、および、車両が走行した際の天候の少なくともいずれかを示す情報に基づいて、複数の領域の大きさおよび形状の少なくとも一方を変更する処理部である。なお、ここでいう複数の領域はいずれも、例えば、運転診断領域のことであるが、走行判定領域であってもよいし、両方であってもよい。変更部125は、例えば、取得部121が取得したこれらの情報に基づいて、記憶部130に記憶されている各領域の大きさおよび形状の少なくとも一方を変更する。
【0047】
例えば、変更部125は、工事が行われている場所を示す情報、および、積雪などにより車両が走行できない場所などの情報が取得部121によって取得された場合、これらの場所が含まれないように各領域のサイズおよび形状などを変更したり、これらの場所を含む領域を運転診断領域からはずす処理を行う。
【0048】
つまり、変更部125は、記憶部130に記憶された所定走行情報における運転診断領域、言い換えると、診断部123が用いる運転診断領域を、車両が走行する道路を示す地図の位置および/または時間などの静的な情報によって、当該運転診断領域の大きさおよび/または形状を変更する。
【0049】
また、変更部125は、記憶部130に記憶された所定走行情報における運転診断領域、言い換えると、診断部123が用いる運転診断領域を、道路状況などの動的な情報によって、当該運転診断領域の大きさおよび/または形状を変更する。
【0050】
もちろん、変更部125は、各領域の位置および設定される領域の数などを変更してもよい。
【0051】
また、記憶部130に各領域を示す情報が記憶されていない場合には、取得部121が取得したこれらの情報および地図に基づいて、各領域を設定してもよい。
【0052】
また、変更部125は、例えば、走行判定領域の車両の所定の走行の内容を変更してもよい。例えば、変更部125は、所定の走行方向が西向きと設定されている走行判定領域で事故が発生して通行禁止となった場所を示す情報が取得部121によって取得された場合、当該走行判定領域の所定の走行を走行禁止に変更してもよい。
【0053】
記憶部130は、情報処理部120が実行するプログラム、および、各種情報を記憶する記憶装置である。例えば、記憶部130は、地図、および、所定走行情報を記憶する。記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリなどにより実現される。
【0054】
表示部140は、診断部123による運転診断の結果を表示する。表示部140は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される。
【0055】
[処理手順]
続いて、車両運転診断システム100の処理手順について説明する。
【0056】
図3は、実施の形態に係る車両運転診断システム100の処理手順の具体例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、取得部121は、例えばセンサ110が検出した車両の位置の時間変化を示す実走行情報を取得する。例えば、取得部121が取得する実走行情報は、GPSデータである。例えば、取得部121は、センサ110から定期的に(例えば、1秒ごとに)位置情報を取得して記憶部130に記憶させる。
【0058】
なお、実走行情報が既に記憶部130に記憶されている場合には、実走行情報が記憶部130から取得されてもよい。
【0059】
次に、判定部122は、取得部121が取得した実走行情報が示すGPSデータを地図の座標に変換するように、実走行情報を加工する(S110)。また、例えば、判定部122は、実走行情報が示す各座標、つまり、車両が走行した複数の地点(走行点ともいう)の走行方向を算出する。例えば、判定部122は、実走行情報に基づいて、第1地点から次の第2地点に向かうベクトルを算出し、算出したベクトルの向きを、当該第1地点における車両の走行方向として算出する。本実施の形態では、判定部122は、2つの走行点の方位角を16分割して0~15のいずれかの数値(期待値)で車両の走行方向を算出する。また、判定部122は、2つの走行点が同じ位置である場合、つまり、車両が移動していない場合、車両の走行方向を示す数値を16とする。
【0060】
次に、判定部122は、記憶部130に記憶されている所定走行情報が示す複数の走行判定領域を確認することで、実走行情報が示す車両が通過した各走行点が、当該複数の走行判定領域のどの領域に位置しているかを確認する(S120)。
【0061】
次に、診断部123は、各走行点において、車両が通行区分違反走行を実行したか走行禁止領域走行を実行したかいずれの違反走行でもない正常な走行を実行したかを判定する(S120~S180)。
【0062】
図4は、方向と数値との組み合わせの具体例を示す図である。
【0063】
例えば、判定部122は、実走行情報が示す各地点のそれぞれについて、算出した車両の方向を示す
図4に示す期待値を決定する。期待値は、方向(方角)に応じて固有に定められる数値である。
【0064】
例えば、車両の走行方向が北である場合には、期待値が0と定められる。また、例えば、車両が停止している、つまり、第1地点と次の第2地点とが同じ位置である場合には、期待値が16と定められる。
【0065】
同様に、例えば、所定走行情報が示す走行判定領域の所定の走行方向は、
図4に示す期待値で定められる。例えば、第1走行判定領域における車両の所定の走行方向が北である場合には、当該第1走行判定領域には所定の走行方向として0が設定される。また、例えば、第2走行判定領域が走行禁止である場合には、当該第2走行判定領域には17が設定される。
【0066】
図5は、車両の走行方向を数値で表した際の具体例を示す図である。
【0067】
図5に示すように、例えば、車両の走行経路が、西→北西→西南西→西である場合には、12→14→11→12のように定められる。
【0068】
図6は、実施の形態に係る所定走行情報の具体例を示す図である。なお、
図6においては、走行判定領域A1~A6を破線で示し、運転診断領域を一点鎖線で示している。
【0069】
図6に示すように、例えば、走行判定領域A1には、所定の走行方向として4が設定されている。また、例えば、走行判定領域A2には、所定の走行方向として12が設定されている。また、例えば、走行判定領域A3には、所定の走行方向として17が設定されている。また、例えば、走行判定領域A4には、所定の走行方向として4が設定されている。また、例えば、走行判定領域A5には、所定の走行方向として12が設定されている。また、例えば、走行判定領域A6には、所定の走行方向として17が設定されている。
【0070】
例えば、判定部122は、ある地点の車両の位置が、数値が17と設定されている走行判定領域に位置している場合、ある地点において車両が走行禁止領域走行を実行したと判定し、当該ある地点の車両の位置が、数値が17と設定されている走行判定領域に位置していない場合、当該ある地点において車両が走行禁止領域走行を実行していないと判定する。
【0071】
このような方法により、例えば、
図3に示すように、判定部122は、ある走行点における車両の位置が、走行禁止と設定されている走行判定領域に位置しているか否かを判定する(S130)。判定部122は、ある走行点における車両の位置が、走行禁止と設定されている走行判定領域に位置していると判定した場合(S130でYes)、当該ある地点において車両が走行禁止領域走行を実行したと判定する(S140)。
【0072】
一方、判定部122は、ある走行点における車両の位置が、走行禁止と設定されている走行判定領域に位置していないと判定した場合(S130でNo)、次の判定に移行する。
【0073】
例えば、判定部122は、
図5に示す各地点の車両の走行方向の数値と、
図6に示す各走行判定領域における車両の所定の走行方向の数値とを比較することで、車両が通行区分違反走行をしているか否かを判定する。例えば、判定部122は、ある地点の車両の走行方向の数値と、車両の所定の走行方向の数値との差分が±1以内であれば、当該ある地点において車両の走行方向と所定の走行方向との向きが一致しており車両が通行区分違反走行を実行していないと判定し、車両の所定の走行方向の数値との差分が+2以上または-2以下であれば、当該ある地点において車両の走行方向と所定の走行方向との向きが一致しておらず車両が通行区分違反走行を実行したと判定する。
【0074】
このような方法により、例えば、
図3に示すように、判定部122は、ある走行点における車両の走行方向が所定の走行方向(所定走行方向)であるか否かを判定する(S150)。具体的には、判定部122は、ある走行点における車両の走行方向と、当該ある走行点が位置している走行判定領域に設定される車両の所定の走行方向(所定走行方向)との向きが一致しているか否かを判定する。判定部122は、ある走行点における車両の走行方向が所定の走行方向ではないと判定した場合(S150でNo)、当該ある走行点において車両が通行区分違反走行を実行したと判定する(S160)。
【0075】
一方、判定部122は、ある走行点における車両の走行方向が所定の走行方向であると判定した場合(S150でYes)、当該ある走行点において車両が正常な走行を実行したと判定する(S170)。
【0076】
なお、走行方向の比較においては、例えば、15の次の数値(1を足した数値)は、0として扱われる。例えば、15と0との差分は、1または-1として扱われる。
【0077】
また、方角に応じた数値および差分の判定に用いられる±1などの数値は、任意に設定されてよく特に限定されない。
【0078】
また、ある走行点において車両が移動していない場合、つまり、ある走行点における車両の走行方向を示す数値が16の場合、当該ある走行点については評価されてもよいしされなくてもよい。例えば、診断部123は、ある走行点における車両の走行方向を示す数値が16の場合に、当該ある走行点が含まれる走行判定領域に設定されている車両の所定の走行方向の数値が0~15のいずれかであるとき、当該ある走行点において車両が通行区分違反走行を実行しなかったと判定してもよい。
【0079】
判定部122は、ステップS140、160、または、S170の次に、実走行情報に含まれる複数の走行点であって、所定走行情報が示す1以上の走行判定領域のいずれかに含まれる全ての走行点について判定したか否か(具体的には、車両が通行区分違反走行を実行したか走行禁止領域走行を実行したかいずれの違反走行でもない正常な走行を実行したか)を判定する(S180)。
【0080】
判定部122は、実走行情報に含まれる複数の走行点であって、所定走行情報が示す1以上の走行判定領域のいずれかに含まれる全ての走行点について判定していない場合(S180でNo)、処理をS120に戻し、判定していない走行点について、ステップS120の当該走行点が含まれる走行判定領域の確認から判定までの処理を繰り返し実行する。
【0081】
これにより、各走行点における判定部122の判定結果が生成される。
【0082】
図7は、実施の形態に係る実走行情報の具体例を示す図である。なお、
図7においては、黒丸は走行点を示し、矢印は車両の走行方向を示し、黒丸および当該黒丸を起点として矢印の組み合わせは判定部122により判定される対象(判定対象B1~B8)を示す。
【0083】
図8は、実施の形態に係る判定結果の具体例を示す図である。具体的には、
図8は、
図7に示す判定対象B1~B7のそれぞれに判定部122による判定結果を示す表である。なお、走行判定領域A1~A6に設定された所定の走行方向は、
図6に示す例と同じである。
【0084】
図8に示すように、判定部122は、判定対象B1~B8について、つまり、各走行点について、走行禁止領域走行(
図8に示す「走行禁止」)が実行されたか、通行区分違反走行(
図8に示す「通行区分違反」)が実行されたか、正常な走行(
図8に示す「正常」)が実行されたかを判定する。
【0085】
判定部122が、実走行情報に含まれる複数の走行点であって、所定走行情報が示す1以上の走行判定領域のいずれかに含まれる全ての走行点について判定した場合(S180でYes)、診断部123は、判定部122の判定結果に基づいて、所定走行情報が示す1以上の運転診断領域のそれぞれにおける車両の運転診断を行う。具体的には、診断部123は、所定走行情報が示す運転診断領域および当該運転診断領域に含まれる走行点の判定部122による判定結果を確認し、当該運転診断領域における車両の運転診断を行う(S190)。
【0086】
例えば、診断部123は、運転診断領域に含まれる各走行点の判定部122による判定結果が、通行区分違反走行および走行禁止領域走行である走行点(異常運転地点ともいう)の数、または、当該異常運転地点の割合を算出する。例えば、
図8に示す例では、異常運転地点の数は、4であり、異常運転地点の割合は、4/8=0.5である。
【0087】
診断部123は、算出結果である算出した数または割合に基づいて、当該運転診断領域についての運転診断を行う。例えば、当該数または割合について予め閾値が定められて記憶部130に記憶されている。例えば、診断部123は、算出した数または割合が閾値以上であれば当該運転診断領域における車両の運転は異常であると判定し、算出した数または割合が閾値未満であれば当該運転診断領域における車両の運転は正常であると判定する。
【0088】
なお、診断部123は、ステップS190では、運転診断領域に含まれる走行点の数が所定の数以下である場合、当該運転診断領域の運転診断を行わなくてもよい。
【0089】
次に、診断部123は、車両が通過した全ての運転診断領域について、つまり、実走行情報が示す複数の走行点のいずれかが位置する運転診断領域について、運転診断を行ったか否かを判定する(S200)。
【0090】
診断部123は、車両が通過した全ての運転診断領域について、運転診断を行っていないと判定した場合(S200でNo)、運転診断を行っていない運転診断領域について、ステップS190を実行する。
【0091】
一方、診断部123が、車両が通過した全ての運転診断領域について、運転診断を行ったと判定した場合(S200でYes)、出力部124は、診断部123の運転診断の結果を出力することで、表示部140に当該結果を表示させる(S210)。
【0092】
当該結果は、例えば、各運転診断領域についての運転診断の結果が表示される。
【0093】
なお、運転診断の結果は、各運転診断領域の診断結果が鑑みられた総合結果であってもよい。この際に、例えば、診断部123は、各運転診断領域の診断結果に重み付けを行って各運転診断領域の総合の運転診断を行う。
【0094】
図9は、実施の形態に係る運転診断の際の重み付けを説明するための図である。なお、
図9においては、各走行点について、判定部122による判定結果が正常な走行である走行点を白丸で示し、通行区分違反走行である走行点を黒丸で示し、走行禁止領域走行を×印で示している。また、運転診断領域C1~C3を一点鎖線で示している。
【0095】
例えば、運転診断領域C1は、車両が走行する道路の距離が20mであるとする。例えば、運転診断領域C2およびC3はそれぞれ、車両が走行する道路の距離が10mであるとする。
【0096】
また、例えば、運転診断領域C1は、異常な運転が行われたと判定されたとする。また、運転診断領域C2およびC3はそれぞれ、正常な運転が行われたと判定されたとする。
【0097】
このような場合に、例えば、診断部123は、車両の運転全体(本例では運転診断領域C1~C3のみとする)を見た場合に正常な運転が行われた比率が(正常な運転が行われた運転診断領域数=2)/(全運転診断領域数=3)≒0.66(66%)であると総合的な運転診断をしてもよい。しかしながら、複数の運転診断領域のそれぞれで車両が走行する道路の距離が異なると、実際に正常な運転が行われた走行距離が反映されない可能性がある。そこで、診断部123は、例えば、正常な運転が行われた比率を(正常な運転が行われた運転診断領域の道路の総距離=20)/(全運転診断領域の道路の総距離=40)≒0.50(50%)であると総合的な運転診断をしてもよい。
【0098】
図10は、実施の形態に係る運転診断の結果を示す図である。具体的には、
図10は、表示部140に表示される、診断部123による運転診断の結果を示す画像を示す図である。
【0099】
図10に示すように、例えば、運転診断の結果として、車両が走行した地図と、当該地図に重畳して表示される、判定部122による判定結果と、診断部123による運転診断の結果とが表示部140に表示される。例えば、診断部123による車両の運転診断が行われた運転診断領域が一点鎖線で示される。また、例えば、判定部122による判定結果が正常な走行である走行点が白丸で示され、通行区分違反走行である走行点が黒丸で示され、走行禁止領域走行である走行点が×印で示される。また、例えば、交差点のような判定部122による判定が行われておらず車両が走行した箇所が実線で示される。
【0100】
例えば、
図10に示す「OK」は、車両の運転全体を見た場合に正常な運転が行われた比率である。
【0101】
また、診断部123は、例えば車両の運転全体を見た場合に正常な運転が行われた比率に基づいて、車両の運転の評価(判定)を決定してもよい。例えば、診断部123は、車両の運転全体を見た場合に正常な運転が行われた比率が、0%以上20%未満の場合には、「運転マナー 判定 E」と判定し、20%以上40%未満の場合には、「運転マナー 判定 D」と判定し、40%以上60%未満の場合には、「運転マナー 判定 C」と判定し、60%以上80%未満の場合には、「運転マナー 判定 B」と判定し、80%以上100%未満の場合には、「運転マナー 判定 A」と判定する。0%以上20%未満などのこれらの閾値およびAまたはBなどの診断結果は、任意に定められてよく、特に限定されない。
【0102】
また、例えば、
図10に示す「通行区分違反走行率」は、車両の運転全体を見た場合に通行区分違反走行が行われた比率である。通行区分違反走行が行われた比率は、例えば、(通行区分違反走行が行われた運転診断領域の道路の総距離)/(全運転診断領域の道路の総距離)で算出される。このように、例えば、診断部123は、ある運転診断領域における運転診断の結果が異常である場合には、通行区分違反走行および走行禁止領域走行のいずれの異常であるかを判定し、判定結果に基づいて異常の種別を決定してもよい。例えば、診断部123は、当該ある運転診断領域に含まれる走行点の判定部122の判定結果が通行区分違反走行の方が走行禁止領域走行よりも多い場合には、当該ある運転診断領域を通行区分違反走行と運転診断する。また、例えば、診断部123は、当該ある運転診断領域に含まれる走行点の判定部122の判定結果が走行禁止領域走行の方が通行区分違反走行よりも多い場合には、当該ある運転診断領域を走行禁止領域走行と運転診断する。
【0103】
また、例えば、
図10に示す「走行禁止領域走行率」は、車両の運転全体を見た場合に走行禁止領域走行が行われた比率である。走行禁止領域走行が行われた比率は、例えば、(走行禁止領域走行が行われた運転診断領域の道路の総距離)/(全運転診断領域の道路の総距離)で算出される。
【0104】
また、
図10に示すように、通行区分違反走行が行われた運転診断領域の道路の総距離(通行区分違反走行距離)および走行禁止領域走行が行われた運転診断領域の道路の総距離(走行禁止領域走行距離)が運転診断の結果として表示部140に表示されてもよい。また、診断部123は、これらの距離に基づいて、車両の運転の評価(例えば上記した「運転マナー」)を決定してもよい。例えば、診断部123は、通行区分違反走行が行われた運転診断領域の道路の総距離および走行禁止領域走行が行われた運転診断領域の道路の総距離の合計距離が、200m未満の場合には、「運転マナー 判定 A」と判定し、200m以上400m未満の場合には、「運転マナー 判定 B」と判定し、400m以上600m未満の場合には、「運転マナー 判定 C」と判定し、600m以上800m未満の場合には、「運転マナー 判定 D」と判定し、800m以上の場合には、「運転マナー 判定 E」と判定する。200m未満などのこれらの閾値およびAまたはBなどの診断結果は、任意に定められてよく、特に限定されない。
【0105】
なお、診断部123は、複数の運転診断領域を1つの運転診断領域と考えて、全ての運転診断領域に含まれる全ての走行点の判定部122による判定結果に基づいて、正常な走行、通行区分違反走行、および、走行禁止領域走行の各走行点の比率を算出してもよい。
【0106】
また、表示部140に表示される運転診断の結果には、車両が急ブレーキした回数、ブレーキした回数に対する急ブレーキした回数(急ブレーキの割合)、一時不停止などの交通ルールを違反した回数、または、道路標識などによる停止場所を通過した回数に対する当該停止場所において停止しなかった回数(一時不停止の割合)などが含まれていてもよい。これらの判定が情報処理部120で行われるために、記憶部130には、停止位置などの交通ルールを示す情報が含まれていてもよい。また、センサ110には、車両の速度または加速度などを検出するセンサが含まれ、取得部121は、車両の速度または加速度を示す情報を取得してもよい。例えば、情報処理部120では、単位時間当たりに車両の速度が所定の閾値より減少した場合、車両が急ブレーキしたと判定する。当該所定の閾値は予め任意に定められて記憶部130に記憶されていてもよい。
【0107】
[まとめ]
図11は、実施の形態に係る車両運転診断システム100の処理手順を示すフローチャートである。
【0108】
まず、取得部121は、車両の走行状況を示す実走行情報を取得する(S10)。
【0109】
次に、判定部122は、実走行情報と、車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、複数の地点のそれぞれで、車両が、(i)所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する(S20)。
【0110】
次に、診断部123は、判定部122の判定結果に基づいて、複数の地点のうちの通行区分違反走行または走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、複数の地点に対する異常運転地点の割合を算出する(S30)。
【0111】
次に、診断部123は、ステップS30での算出結果に基づいて車両の運転診断を行う(S40)。
【0112】
次に、出力部124は、診断部123の運転診断の結果を出力する(S50)。
【0113】
以上説明したように、車両運転診断システム100は、取得部121と、判定部122と、診断部123と、を備える。
【0114】
これによれば、複数の地点のそれぞれの判定結果によって車両の運転診断が行われるため、例えば一部の地点において車両の実際の位置との誤差が大きかったとしても、複数の地点の数を増やすことにより誤差による誤判定の影響を小さくできる。そのため、誤った運転診断がなされることを抑制できる。また、例えば、当該運転診断の結果が車両を運転するドライバに通知されることで、ドライバの運転マナーの向上が期待される。
【0115】
また、例えば、複数の地点は、複数の領域(上記の運転診断領域)のいずれかに位置し、診断部123は、複数の領域のそれぞれの領域ごとに、車両の運転診断を行う。診断部123は、複数の領域のそれぞれの領域ごとに、車両の運転が正常であるか否かを判定することで車両の運転診断を行う。このとき、例えば、診断部123は、さらに、複数の領域のそれぞれの領域ごとに、当該領域における車両が走行する道路の距離に基づいて重みを決定し、複数の領域のそれぞれの車両の運転診断の結果と、当該重みとに基づいて、複数の領域の全体での車両の運転診断を行う。
【0116】
距離が長い道路を含む領域の運転診断の結果は、距離が短い道路を含む領域の運転診断の結果よりも、長い距離車両によって走行されている可能性が高いことから適切な運転診断がなされている可能性が高い。そこで、例えば、距離が長い道路を含む領域の運転診断の結果に、距離が短い道路を含む領域の運転診断の結果よりも影響を大きくするような重み付けが行われて複数の領域の全体での車両の運転診断を行われることにより、誤った運転診断がなされることを抑制できる。
【0117】
また、例えば、車両運転診断システム100は、例えば、複数の領域の位置、車両が走行した時間、複数の領域に含まれる道路の状況、および、車両が走行した際の天候の少なくともいずれかを示す情報に基づいて、複数の領域の大きさおよび形状の少なくとも一方を変更する変更部125を備える。
【0118】
例えば昼間などに歩行者が多いような、特に運転の良し悪しに影響を与えるような重要な領域が含まれるように複数の領域が設定されることにより、車両のドライバにとって知る価値の高い運転診断が行われ得る。
【0119】
なお、本開示は、車両運転診断システム100などのコンピュータによって実行される車両運転診断方法として実現されてもよい。また、本開示は、車両運転診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0120】
[変形例]
車両運転診断システムは、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよい。
【0121】
図12は、変形例に係る車両運転診断システム101の構成を示す図である。
【0122】
車両運転診断システム101は、センサ機器200と、サーバ300と、情報端末400と、を備える。
【0123】
センサ機器200は、車両の走行状況を検出する機器である。センサ機器200は、例えば、車両に配置される。センサ機器200は、センサ110と、取得部121と、を備える。
【0124】
取得部121は、例えば、センサ110から取得した実走行情報を、センサ機器200が備える通信インターフェースを介してサーバ300に送信する。
【0125】
サーバ300は、センサ機器200から実走行情報を受信し、受信した実走行情報に基づいて、車両の運転診断を行うコンピュータである。サーバ300は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0126】
サーバ300は、変更部125と、判定部122と、診断部123と、出力部124と、記憶部130と、を備える。
【0127】
出力部124は、例えば、診断部123の運転診断の結果を示す結果情報を、サーバ300が備える通信インターフェースを介して情報端末400に送信する。
【0128】
情報端末400は、サーバ300から結果情報を受信し、受信した結果情報をユーザに通知するコンピュータである。情報端末400は、例えば、スマートフォンである。
【0129】
情報端末400は、表示部140を備える。
【0130】
表示部140は、結果情報を画像で表示することで、結果情報をユーザに通知する。
【0131】
以上のように、例えば、本開示に係る車両運転診断システムは、クライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
【0132】
なお、車両運転診断システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された車両運転診断システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、車両運転診断システムは、センサ110および表示部140を備える情報端末であるクライアントと、情報処理部120および記憶部130を備えるコンピュータであるサーバと、により実現されてもよい。この場合、例えば、クライアントは、車両の走行状況の検出および運転診断の結果の表示などを行う情報端末であり、サーバは、車両の運転診断を行う情報端末である。
【0133】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る車両運転診断システムなどについて上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0134】
例えば、車両運転診断システムが運転診断する車両は、ドライバにより操作(運転)される車両であってもよいし、自動運転車両であってもよい。
【0135】
また、車両は、例えば、自動車であるが、バイクまたは自転車などであってもよい。
【0136】
また、例えば、車両運転診断システムは、変更部を備えなくてもよい。
【0137】
また、運転診断の結果は、表示部による画像ではなく、アンプおよびスピーカなどによる音声で通知されてもよい。
【0138】
また、例えば、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0139】
また、運転診断は、任意のタイミングで行われてよい。例えば、運転診断は、車両が走行中に行われてもよいし、車両が停止した場合に行われてもよい。
【0140】
また、上記実施の形態において、各構成要素(各処理部)は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0141】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0142】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0143】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0144】
(付記)
以下、本明細書の開示内容から得られる技術を例示し、例示される技術から得られる効果などについて説明する。
【0145】
[技術1]
車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得部と、前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断部と、を備える、車両運転診断システム。
【0146】
これによれば、複数の地点のそれぞれの判定結果によって車両の運転診断が行われるため、例えば一部の地点において車両の実際の位置との誤差が大きかったとしても、複数の地点の数を増やすことにより誤差による誤判定の影響を小さくできる。そのため、誤った運転診断がなされることを抑制できる。
【0147】
[技術2]
前記複数の地点は、複数の領域のいずれかに位置し、前記診断部は、前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、前記車両の運転診断を行う、技術1に記載の車両運転診断システム。
【0148】
これによれば、複数の領域のそれぞれの領域ごとに運転診断がなされるため、例えば、交差点がある領域またはカーブが急な道路がある領域など、領域ごとの特徴的な道路の状態についての運転診断がなされ得る。そのため、例えば、運転診断の診断結果が領域ごとに車両のドライバに通知されることで、ドライバがこのような道路の状態で問題のある運転がなされているかを当該ドライバに理解されやすくできる。
【0149】
[技術3]
前記診断部は、前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、前記車両の運転が正常であるか否かを判定することで前記車両の運転診断を行う、技術2に記載の車両運転診断システム。
【0150】
このような2種類のみの評価で運転診断の結果が例えば車両のドライバに通知されることで、例えば10段階の得点などによって運転診断の結果がドライバに通知されるよりも、ドライバがこのような道路の状態で問題のある運転がなされているかを当該ドライバにさらに理解されやすくできる。
【0151】
[技術4]
前記診断部は、さらに、前記複数の領域のそれぞれの領域ごとに、当該領域における前記車両が走行する道路の距離に基づいて重みを決定し、前記複数の領域のそれぞれの前記車両の運転診断の結果と、前記重みとに基づいて、前記複数の領域の全体での前記車両の運転診断を行う、技術3に記載の車両運転診断システム。
【0152】
距離が長い道路を含む領域の運転診断の結果は、距離が短い道路を含む領域の運転診断の結果よりも、長い距離車両によって走行されている可能性が高いことから適切な運転診断がなされている可能性が高い。そこで、例えば、距離が長い道路を含む領域の運転診断の結果に、距離が短い道路を含む領域の運転診断の結果よりも影響を大きくするような重み付けが行われて複数の領域の全体での車両の運転診断を行われることにより、誤った運転診断がなされることを抑制できる。
【0153】
[技術5]
さらに、前記複数の領域の位置、前記車両が走行した時間、前記複数の領域に含まれる道路の状況、および、前記車両が走行した際の天候の少なくともいずれかを示す情報に基づいて、前記複数の領域の大きさおよび形状の少なくとも一方を変更する変更部を備える、技術2~4のいずれか1つに記載の車両運転診断システム。
【0154】
例えば昼間などに歩行者が多いような、特に運転の良し悪しに影響を与えるような重要な領域が含まれるように複数の領域が設定されることにより、車両のドライバにとって知る価値の高い運転診断が行われ得る。
【0155】
[技術6]
さらに、前記所定走行情報を記憶する記憶部を備える、技術1~5のいずれか1つに記載の車両運転診断システム。
【0156】
これによれば、例えば所定走行情報を他の装置と通信することで取得することなく記憶部から取得できるため、通信エラーなどによる所定走行情報の取得の失敗などの発生が抑制され得る。
【0157】
[技術7]
車両の走行状況を示す実走行情報を取得する取得ステップと、前記実走行情報と、前記車両が走行した複数の地点における所定の走行状況を示す所定走行情報とに基づいて、前記複数の地点のそれぞれで、前記車両が、(i)前記所定走行情報が示す走行方向とは異なる方向に走行する通行区分違反走行、または、(ii)走行が禁止されている地点を走行する走行禁止領域走行を実行したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップでの判定結果に基づいて、前記複数の地点のうちの前記通行区分違反走行または前記走行禁止領域走行が実行された異常運転地点の数、または、前記複数の地点に対する前記異常運転地点の割合を算出し、算出結果に基づいて前記車両の運転診断を行う診断ステップと、を含む、車両運転診断方法。
【0158】
これによれば、上記車両運転診断システムと同様の効果を奏する。
【0159】
[技術8]
技術7に記載の車両運転診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0160】
これによれば、上記車両運転診断システムと同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示は、車両の運転を診断する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0162】
100、101 車両運転診断システム
110 センサ
120 情報処理部
121 取得部
122 判定部
123 診断部
124 出力部
125 変更部
130 記憶部
140 表示部
200 センサ機器
300 サーバ
400 情報端末