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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049950
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】固体電池及び固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240403BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240403BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240403BHJP
   H01M 50/186 20210101ALN20240403BHJP
   H01M 50/191 20210101ALN20240403BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/191
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156477
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 明洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美那子
(72)【発明者】
【氏名】小林 正一
(72)【発明者】
【氏名】中野 年章
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC05
5H011KK00
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AM12
5H029DJ02
5H029HJ00
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】高性能及び高信頼性の固体電池を実現する。
【解決手段】固体電池1Aは、積層体10A及びカバー層20を含む。積層体10Aは、電解質層13と、電極層である正極層11及び負極層12とを含み、これらは第1方向D1に積層される。カバー層20は、積層体10Aの電極引き出し面となる端面が露出するように、積層体10Aを覆う。固体電池1Aの電極引き出し面となる端面側から見た断面視で、電解質層13は、カバー層20で覆われ且つ第1方向D1と直交する第2方向D2に面した端面13aが、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する。端面13aを湾曲面とすることで、電解質層13を起点にしてカバー層20にクラックが発生することを抑え、カバー層20の保護機能の低下、固体電池1Aの性能及び信頼性の低下を抑える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された電解質層と電極層とを含む積層体と、
前記積層体の第1端面が露出するように、前記積層体を覆うカバー層と、
を含み、
前記第1端面側から見た断面視で、前記電解質層は、前記カバー層で覆われ且つ前記第1方向と直交する第2方向に面した第2端面が、前記第2方向外側に膨らんだ湾曲面を有する、固体電池。
【請求項2】
前記第1端面側から見た断面視で、前記電解質層の前記第2方向の最先端は、前記電極層の前記第2方向の最先端よりも、前記第2方向外側に位置する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記第1端面側から見た断面視で、前記第2端面は、前記第2方向に対する接線の角度が、45°以上となる領域を含む、請求項1に記載の固体電池。
【請求項4】
前記第1端面側から見た断面視で、前記電極層は、前記カバー層で覆われ且つ前記第2方向に面した第3端面が、前記第2方向に非先鋭である非先鋭面を有する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項5】
前記第1端面側から見た断面視で、前記第3端面は、前記第1方向に平行な平面、又は、前記第2方向外側に膨らんだ湾曲面を有する、請求項4に記載の固体電池。
【請求項6】
前記第1端面側から見た断面視で、前記第3端面は、前記第2方向に対する接線の角度が、45°以上となる領域を含む、請求項4に記載の固体電池。
【請求項7】
第1方向に積層された電解質層と電極層とを含む積層体と、
前記積層体の第1端面が露出するように、前記積層体を覆うカバー層と、
を含む構造体を形成する工程を含み、
前記構造体を形成する工程は、前記第1端面側から見た断面視で、前記電解質層を、前記カバー層で覆われ且つ前記第1方向と直交する第2方向に面した第2端面が、前記第2方向外側に膨らんだ湾曲面を有するように、形成する工程を含む、固体電池の製造方法。
【請求項8】
前記構造体を形成する工程は、前記第1端面側から見た断面視で、前記電解質層の前記第2方向の最先端が、前記電極層の前記第2方向の最先端よりも、前記第2方向外側に位置するように、前記構造体を形成する工程を含む、請求項7に記載の固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記構造体を形成する工程は、前記第1端面側から見た断面視で、前記電極層を、前記カバー層で覆われ且つ前記第2方向に面した第3端面が、前記第2方向に非先鋭である非先鋭面を有するように、形成する工程を含む、請求項7に記載の固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池及び固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質を含有する電解質層と、固体電解質及び電極活物質を含有する電極層とが積層された積層体を電池要素として含む固体電池が知られている。
また、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品が知られている。
【0003】
積層セラミック電子部品に関し、例えば、第1セラミックグリーンシートと、それよりも可塑性の高い第2セラミックグリーンシートと含み、第1セラミックグリーンシート側に導体パターンが転写された複合セラミックグリーンシートを、所定枚数、一方の導体パターンが他方の第2セラミックグリーンシートに接するか又はこれに埋設されるように積層する技術が知られている(特許文献1)。このような技術により、導体パターンの厚みによって積層体内部に応力が偏在することを抑え、クラックの発生を抑えることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
このほか、積層セラミック電子部品に関し、例えば、誘電体グリーンシート上に、リン片状の金属粉を含有する金属粉を主成分とする導電性ペーストを用いて比較的厚みの薄い内部導体パターンを形成し、この内部導体パターンが形成された誘電体グリーンシートを複数積層して積層体を形成する技術が知られている(特許文献2)。このような技術により、内部導体の厚み分による段差を軽減し、クラックやデラミネーションを抑えることが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、セラミックスの破壊靭性に関する考察が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-213274号公報
【特許文献2】特開2008-198655号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「セラミックスの破壊靭性」、日本金属学会会報、1988年、第27巻、第8号、p.644-649
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、固体電解質を含有する電解質層と、固体電解質及び電極活物質を含有する電極層とが積層された積層体を電池要素として含む固体電池では、積層体を外気や外力から保護するために、積層体を覆うようにカバー層が設けられる場合がある。この場合、積層体は、外部電極を設けるための所定の端面(電極引き出し面)が露出するように、カバー層で覆われる。カバー層には、ガラス材料等、積層体の電気特性に影響を及ぼし難い材料が用いられる。
【0009】
しかし、このような積層体とそれを覆うカバー層とを含む固体電池では、積層体に含まれる電解質層及び電極層のうち少なくとも電解質層の形状に起因して、積層体を覆っているカバー層にクラックが発生する場合がある。即ち、カバー層で覆われていない端面(電極引き出し面)側から見た断面視で、カバー層で覆われた積層体部分の、電解質層及び電極層が積層される第1方向と直交する第2方向に面した電解質層の端面が、第2方向に先鋭であると、そこがクラックの起点となり、カバー層にクラックが発生することがある。尚、同様に、当該第2方向に面した電極層の端面が、第2方向に先鋭であると、そこを起点にカバー層にクラックが発生することもある。
【0010】
このように積層体の電解質層等の形状に起因してカバー層に発生するクラックは、カバー層の保護機能を低下させ、積層体を電池要素として含む固体電池の性能及び信頼性を低下させる恐れがある。
【0011】
1つの側面では、本発明は、高性能及び高信頼性の固体電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様では、第1方向に積層された電解質層と電極層とを含む積層体と、前記積層体の第1端面が露出するように、前記積層体を覆うカバー層と、を含み、前記第1端面側から見た断面視で、前記電解質層は、前記カバー層で覆われ且つ前記第1方向と直交する第2方向に面した第2端面が、前記第2方向外側に膨らんだ湾曲面を有する、固体電池が提供される。
【0013】
また、1つの態様では、上記のような固体電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
1つの側面では、高性能及び高信頼性の固体電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】固体電池の一例について説明する図(その1)である。
図2】固体電池の一例について説明する図(その2)である。
図3】固体電池の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図4】固体電池の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図5】固体電池のカバー層に発生するクラックについて説明する図である。
図6】第1実施形態に係る固体電池の構成例について説明する図である。
図7】電解質層の端面形状について説明する図である。
図8】第1実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図9】第1実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図10】第1実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
図11】第1実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その4)である。
図12】第2実施形態に係る固体電池の構成例について説明する図である。
図13】第2実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図14】第2実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図15】第2実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
図16】第2実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、固体電池の一例について説明する。
図1及び図2は固体電池の一例について説明する図である。図1には、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。図2(A)及び図2(B)にはそれぞれ、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。図2(A)は図1のL1線に沿った断面模式図であり、図2(B)は図1のL2線に沿った断面模式図である。
【0017】
図1並びに図2(A)及び図2(B)に示す固体電池1は、積層体10及びカバー層20を含む。
積層体10は、固体電池1の基本構造となる電池要素の一例である。積層体10は、図1並びに図2(A)及び図2(B)に示すように、正極層11と、それに対向する負極層12と、それらの間に介在される電解質層13とを有する。ここでは一例として、積層体10の最上層及び最下層にも電解質層13が設けられた構成を図示している。積層体10において、正極層11と負極層12とは、電解質層13を介して互いに部分的に重複するように設けられる。尚、正極層11及び負極層12の一方又は双方を、「電極層」とも言う。また、正極及び負極の一方又は双方を、「電極」とも言う。
【0018】
電解質層13は、固体電解質を含む。電解質層13の固体電解質には、例えば、酸化物固体電解質が用いられる。電解質層13の酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON(Na super ionic conductor)型(「ナシコン型」とも称される)の酸化物固体電解質の1種であるLAGPが用いられる。LAGPは、一般式Li1+xAlGe2-x(PO(0<x≦1)で表される酸化物固体電解質である。このほか、電解質層13の固体電解質には、LiS(硫化リチウム)-P(五硫化二リン)等の硫化物固体電解質が用いられてもよい。
【0019】
正極層11には、正極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。正極層11の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層13に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。正極層11の正極活物質には、例えば、LiCoP(ピロリン酸コバルトリチウム、「LCPO」とも言う)等が用いられる。正極層11の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電性材料が用いられる。
【0020】
負極層12には、負極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。負極層12の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層13に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。負極層12の負極活物質には、例えば、TiO(酸化チタン)、Nb(五酸化ニオブ)等が用いられる。このほか、負極層12の負極活物質には、Li(PO(リン酸バナジウムリチウム)、LiTi12(チタン酸リチウム)等が用いられてもよい。負極層12の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電性材料が用いられる。
【0021】
固体電池1の電池要素である積層体10において、その充電時には、正極層11から電解質層13を介して負極層12にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極層12から電解質層13を介して正極層11にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池1では、その積層体10におけるこのようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。
【0022】
図1並びに図2(A)及び図2(B)に示すように、上記積層体10を覆うように、カバー層20が設けられる。カバー層20は、積層体10の正極層11の側面の一部及び負極層12の側面の一部が露出するように、積層体10を覆う。カバー層20から露出する正極層11の側面の一部と負極層12の側面の一部とは、電解質層13、正極層11及び負極層12の積層方向と直交する方向(L1線に沿った方向)において対向する位置関係にある(図1及び図2(B))。カバー層20から露出する正極層11の側面の一部と負極層12の側面の一部とは、積層体10の外部との電気接続に用いられる。ここでは、カバー層20から正極層11の側面の一部が露出する積層体10の端面10aを、「正極引き出し面」とも言う。カバー層20から負極層12の側面の一部が露出する積層体10の端面10bを、「負極引き出し面」とも言う。尚、正極引き出し面及び負極引き出し面の一方又は双方を、「電極引き出し面」とも言う。
【0023】
カバー層20としては、積層体10に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層20が用いられる。例えば、電解質層13に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層20が用いられる。或いは、電解質層13に用いられる固体電解質、正極層11及び負極層12に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層20が用いられる。尚、カバー層20の絶縁性とは、電池要素である積層体10のリチウムイオン伝導、電子伝導に対する影響が無いか或いは十分に低い性質を言う。積層体10に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層20には、例えば、ガラス又はセラミックスが用いられる。
【0024】
カバー層20は、積層体10を外気や外力から保護する機能を有する。そのため、カバー層20には、上記のような硬度及び絶縁性を有するほか、水分又は水素や酸素等のガスの透過性が低く、良好な密閉性を実現できるものが用いられる。ガラス又はセラミックスは、これらの性質を併せ持たせることのできる材料の1種であり、積層体10を覆うカバー層20を形成するための材料として好適である。
【0025】
ここでは図示を省略するが、積層体10の、カバー層20から露出する一方の端面10aの正極引き出し面には、当該正極引き出し面から側面の一部が露出する正極層11と接続される外部電極が設けられる。積層体10の、カバー層20から露出する他方の端面10bの負極引き出し面には、当該負極引き出し面から側面の一部が露出する負極層12と接続される外部電極が設けられる。外部電極は、例えば、正極引き出し面(端面10a)及び負極引き出し面(端面10b)に対し、Ag(銀)等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを塗布して焼き付けたり、メッキ法等を用いてNi(ニッケル)やSn(スズ)等の金属を堆積したりすることで、形成される。固体電池1は、積層体10の正極引き出し面及び負極引き出し面に設けられる外部電極を用いて、回路基板等の他の電子部品と電気的に接続される。
【0026】
続いて、上記のような固体電池1の製造方法の一例について述べる。
図3及び図4は固体電池の製造方法の一例について説明する図である。図3(A)から図3(C)及び図4(A)から図4(C)にはそれぞれ、固体電池製造の各工程の模式図を示している。
【0027】
ここで、図3(A)において、下図は電極層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIIIa-IIIa断面模式図である。図3(B)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIIIb-IIIb断面模式図である。図3(C)において、下図はカバー層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIIIc-IIIc断面模式図である。図4(A)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIVa-IVa断面模式図である。図4(B)において、下図は電解質層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIVb-IVb断面模式図である。図4(C)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIVc-IVc断面模式図である。
【0028】
固体電池1の製造では、予め、電極層用ペースト、電解質層用ペースト及びカバー層用ペーストが準備される。
電極層用ペーストとしては、正極層用ペースト及び負極層用ペーストが準備される。正極層用ペーストであれば、正極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含む正極層用ペーストが準備される。一例として、正極活物質にLCPO、固体電解質にLAGP、導電助剤にカーボンファイバーを用いた正極層用ペーストが準備される。また、負極層用ペーストであれば、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含む負極層用ペーストが準備される。一例として、負極活物質にTiO又はNb、固体電解質にLAGP、導電助剤にカーボンファイバーを用いた負極ペーストが準備される。電極層用ペーストのうち、正極層用ペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって正極層11として形成される材料の一形態である。電極層用ペーストのうち、負極層用ペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって負極層12として形成される材料の一形態である。
【0029】
電解質層用ペーストとしては、固体電解質、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含む電解質層用ペーストが準備される。一例として、固体電解質にLAGPを用いた電解質層用ペーストが準備される。電解質層用ペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって電解質層13として形成される材料の一形態である。
【0030】
カバー層用ペーストとしては、例えば、ガラス成分を含むガラスペーストが準備される。例えば、600℃付近での焼成により溶融、焼結される、いわゆる低融点ガラスと称されるガラス成分を含むガラスペーストが準備される。カバー層用ペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によってカバー層20として形成される材料の一形態である。カバー層用ペーストには、焼成後の硬度が、焼成後の電解質層13、正極層11及び負極層12に含まれる固体電解質の硬度よりも高くなるようなものが用いられる。また、カバー層用ペーストには、焼成後の熱膨張係数が、焼成後の電解質層13、正極層11及び負極層12と同程度の熱膨張係数となるようなものが用いられることが好ましい。また、カバー層用ペーストには、焼成後に、焼成後の電解質層13、正極層11及び負極層12との間に良好な密着性が得られるようなものが用いられることが好ましい。カバー層用ペーストには、粒子状Al等のセラミックス材料が添加されてもよい。
【0031】
固体電池1の製造では、まず、図3(A)に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体30上に、スクリーン印刷法を用いて電極層用ペースト14(正極層用ペースト又は負極層用ペースト)が塗工される。その際は、電極層を形成する領域に開口部40aを有する印刷用スクリーン40が配置され、その開口部40aにスキージ50を用いて電極層用ペースト14が塗工される。
【0032】
電極層用ペースト14の塗工後、図3(B)に示すように、印刷用スクリーン40が除去される。例えば、印刷用スクリーン40の除去後、電極層用ペースト14は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。このようなスクリーン印刷法で形成される電極層用ペースト14の端面は、図3(B)に点線枠部を拡大断面図で模式的に示すように、断面視で、支持体30の上面に対して鋭角に傾斜した、先鋭面となる。
【0033】
電極層用ペースト14の形成後、図3(C)に示すように、支持体30上に、スクリーン印刷法を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。その際は、形成された電極層用ペースト14の周囲となる領域に開口部41aを有する印刷用スクリーン41が配置され、その開口部41aにスキージ51を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。
【0034】
カバー層用ペースト21の塗工後、図4(A)に示すように、印刷用スクリーン41が除去される。例えば、印刷用スクリーン41の除去後、カバー層用ペースト21は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。電極層用ペースト14の周囲に形成されるカバー層用ペースト21は、図4(A)に点線枠部を拡大断面図で模式的に示すように、断面視で、電極層用ペースト14の先鋭面である端面を覆う。尚、電極層用ペースト14の周囲に形成されるカバー層用ペースト21は、固体電池1の積層体10を覆うカバー層20の一部となる部分であって、「埋め込み層」とも称される。
【0035】
カバー層用ペースト21の形成後、図4(B)に示すように、形成された電極層用ペースト14及びその周囲のカバー層用ペースト21の上に、スクリーン印刷法を用いて電解質層用ペースト15が塗工される。その際は、形成された電極層用ペースト14及びカバー層用ペースト21の上となる領域に開口部42aを有する印刷用スクリーン42が配置され、その開口部42aにスキージ52を用いて電解質層用ペースト15が塗工される。
【0036】
電解質層用ペースト15の塗工後、図4(C)に示すように、印刷用スクリーン42が除去される。例えば、印刷用スクリーン42の除去後、電解質層用ペースト15は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。このようなスクリーン印刷法で形成される電解質層用ペースト15の端面は、図4(C)に点線枠部を拡大断面図で模式的に示すように、断面視で、支持体30の上面に対して鋭角に傾斜した、先鋭面となる。
【0037】
尚、電極層用ペースト14、カバー層用ペースト21及び電解質層用ペースト15の乾燥は、各々の塗工後にそれぞれ行われてもよいし、それらの塗工後に一括で行われてもよい。
【0038】
電極層用ペースト14として、正極層用ペーストが用いられ、上記図3(A)から図3(C)及び図4(A)から図4(C)に示したような方法により、正極層用ペーストである電極層用ペースト14、カバー層用ペースト21及び電解質層用ペースト15を含む積層シートが形成される。また、電極層用ペースト14として、負極層用ペーストが用いられ、上記図3(A)から図3(C)及び図4(A)から図4(C)に示したような方法により、負極層用ペーストである電極層用ペースト14、カバー層用ペースト21及び電解質層用ペースト15を含む積層シートが形成される。また、上記の例に従い、スクリーン印刷法を用いて、カバー層用ペースト21のシート、及び電解質層用ペースト15とその周囲に設けられたカバー層用ペースト21とを含むシート、或いは、これらのシートが積層された構造を有する積層シートが形成される。
【0039】
そして、このようにして形成されたシート群が、それらの正極層用ペースト(電極層用ペースト14)、負極層用ペースト(電極層用ペースト14)、電解質層用ペースト15及びカバー層用ペースト21がそれぞれ、上記図2(A)及び図2(B)に示したような対応する正極層11、負極層12、電解質層13及びカバー層20の積層順及び配置関係となるように、積層されて圧着される。
【0040】
更に、正極層用ペースト(電極層用ペースト14)の側面の一部、及び負極層用ペースト(電極層用ペースト14)の側面の一部が露出するように、裁断が行われる。そして、ペースト中のバインダー等の有機成分を除去するための熱処理(脱脂)、及びペースト中の固体電解質やガラス等を焼結させるための熱処理(焼成)が行われる。この熱処理により、正極層用ペースト(電極層用ペースト14)から正極層11が形成され、負極層用ペースト(電極層用ペースト14)から負極層12が形成され、電解質層用ペースト15から電解質層13が形成され、カバー層用ペースト21からカバー層20が形成される。
【0041】
これにより、上記図1並びに図2(A)及び図2(B)に示したような、電解質層13、正極層11及び負極層12を含む積層体10、並びにそれを覆うカバー層20が形成される。更に、積層体10の、正極層11及び負極層12の各側面の一部がカバー層20から露出する端面10a及び端面10bにそれぞれ、図示しない外部電極が形成される。
【0042】
以上のような方法により、積層体10及びそれを覆うカバー層20、並びに外部電極(図示せず)を備える、固体電池1が製造される。
固体電池1では、外部電極が形成される端面10a及び端面10bを除いて積層体10がカバー層20で覆われることで、電池要素である積層体10が外気や外力から保護されることが期待される。しかし、上記のような方法を用いて製造される固体電池1では、その積層体10の、カバー層20で覆われた部分の形状によっては、カバー層20にクラックが発生する場合がある。
【0043】
図5は固体電池のカバー層に発生するクラックについて説明する図である。図5には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。図5図2(A)のP0部に相当する拡大断面模式図の一例である。
【0044】
固体電池1の製造において、上記のようにスクリーン印刷法を用いて電極層用ペースト14(図3(A)及び図3(B))並びに電解質層用ペースト15(図4(B)及び図4(C))を形成すると、それらの端面は、断面視で、支持体30の上面に対して鋭角に傾斜した、先鋭面となる。断面視でこのような先鋭面である端面を有する電極層用ペースト14及び電解質層用ペースト15を含むシート群が、上記のように積層されて圧着され、脱脂及び焼成のために熱処理される。これにより形成される正極層11及び負極層12並びに電解質層13は、図5に示すように、断面視で、正極層11及び負極層12並びに電解質層13が積層される第1方向D1と直交する第2方向D2に面した端面が、第2方向D2に先鋭な先鋭面となる。固体電池1では、断面視でこのような先鋭面となる端面を有する正極層11及び負極層12並びに電解質層13を覆うように、カバー層20が設けられる。
【0045】
固体電池1の製造時には、カバー層用ペースト21で覆われた電極層用ペースト14及び電解質層用ペースト15について、それらの先鋭面である端面、それらを含むシート間の積層及び圧着時の段差、脱脂及び焼成のための熱処理時の有機成分除去や焼結に伴う体積変化、加熱及び冷却に伴う膨張及び収縮等により、応力が発生し得る。また、固体電池1の充放電動作時には、カバー層用ペースト21で覆われた電極層用ペースト14及び電解質層用ペースト15から形成される、カバー層20で覆われた正極層11及び負極層12並びに電解質層13について、充放電動作時の温度上昇及び温度低下に伴う膨張及び収縮等により、応力が発生し得る。カバー層20で覆われた正極層11及び負極層12並びに電解質層13の端面が先鋭面となっていると、応力が発生した際、そこがクラック100の起点となり、当該端面を覆っているカバー層20にクラック100が発生することが起こり得る。
【0046】
固体電池1では、正極層11及び負極層12よりも電解質層13の方が第2方向D2の外側に延びた形状、即ち、正極層11及び負極層12の第2方向D2の最先端よりも、電解質層13の第2方向D2の最先端の方が、第2方向D2の外側に位置するような形状とされる。そのため、応力はとりわけ、正極層11及び負極層12のいずれからも第2方向D2に突出してカバー層20で覆われる電解質層13の最先端に集中し易く、当該電解質層13の最先端を起点に、カバー層20にクラック100が発生し易くなる。
【0047】
カバー層20にクラック100が発生すると、外気や外力に対するカバー層20の保護機能が低下する恐れがある。カバー層20の保護機能が低下すると、積層体10の性能及び信頼性、積層体10を電池要素として含む固体電池1の性能及び信頼性が低下する恐れがある。
【0048】
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施形態として示すような手法を用い、高性能及び高信頼性の固体電池を実現する。
[第1実施形態]
図6は第1実施形態に係る固体電池の構成例について説明する図である。図6には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0049】
図6に示す固体電池1Aは、積層体10A及びカバー層20を含む構造体を備える。
積層体10Aは、固体電池1Aの電池要素の一例であって、第1方向D1に積層された正極層11及び負極層12並びに電解質層13を含む。積層体10Aは、正極層11と負極層12とが、それらの間に電解質層13を介して、対向して配置される。積層体10Aの正極層11及び負極層12並びに電解質層13にはそれぞれ、前述のような材料が用いられる。即ち、正極層11には、所定の正極活物質、導電助剤及び固体電解質を含む材料が用いられる。負極層12には、所定の負極活物質、導電助剤及び固体電解質を含む材料が用いられる。電解質層13には、所定の固体電解質を含む材料が用いられる。
【0050】
カバー層20は、積層体10Aの正極層11及び負極層12並びに電解質層13の、第1方向D1と直交する第2方向D2の端面を覆うように、設けられる。カバー層20には、前述のような材料が用いられる。即ち、カバー層20には、ガラス又はセラミックス、例えば、低融点ガラスを含む材料が用いられる。
【0051】
ここでは図示されないが、積層体10Aは、正極層11及び負極層12の各々の側面の一部が露出するように、即ち、電極引き出し面となる端面(後述の端面10Aa及び端面10Ab)が露出するように、カバー層20で覆われる。図6は、積層体10Aの、カバー層20から露出する電極引き出し面となる端面側から見た要部断面の一例であって、積層体10Aの、カバー層20で覆われる部分の断面の一例を、模式的に示したものである。尚、積層体10Aの、電極引き出し面となる端面(後述の端面10Aa及び端面10Ab)を、「第1端面」とも言う。
【0052】
図6に示すように、固体電池1Aの積層体10Aの正極層11及び負極層12並びに電解質層13は、断面視で、電解質層13の第2方向D2の最先端13bが、電極層である正極層11及び負極層12の各々の第2方向D2の最先端11b及び最先端12bよりも、第2方向D2の外側に位置するように、設けられる。
【0053】
更に、固体電池1Aの積層体10Aは、図6に示すように、断面視で、その電解質層13の、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した端面13aが、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する。電解質層13の端面13aは、電解質層13の厚さ方向(第1方向D1)に対向する両主面間を接続する側面(第2方向D2に面した側面)であり、当該側面が全体的に第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面となっている。尚、このような湾曲面を有する電解質層13の端面13aを、「第2端面」とも言う。図6に示す固体電池1Aの積層体10Aは、このように電解質層13の端面13aが断面視で湾曲面を有する点で、上記図5等に示した固体電池1の積層体10と相違する。
【0054】
第1実施形態に係る固体電池1Aの積層体10A(図6)は、その電解質層13の端面13aが、断面視で湾曲面を有することで、断面視で先鋭面を有する場合(図5)に比べて、当該端面13aがクラックの起点となり難くなる。即ち、上記図5に示したようなクラック100の起点となり難くなる。そのため、固体電池1Aでは、積層体10Aを覆うカバー層20にクラックが発生することが抑えられる。従って、カバー層20の保護機能が十分に発揮され、積層体10A及びそれを含む固体電池1Aの性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0055】
図7は電解質層の端面形状について説明する図である。図7(A)には、端面が断面視で先鋭面を有する電解質層及びそれを覆うカバー層の要部断面図を模式的に示している。図7(B)には、端面が断面視で湾曲面を有する電解質層及びそれを覆うカバー層の要部断面図を模式的に示している。
【0056】
図7(A)に示すように、電解質層13の第2方向D2の端面13cが断面視で先鋭面を有する固体電池1(図5)では、当該端面13cが鋭角となる。即ち、固体電池1において、断面視で先鋭面を有する電解質層13の端面13cは、第2方向D2(最先端13dを通る第2方向D2の線)に対する角度θaが45°未満となる。固体電池1では、断面視でこのような先鋭面を有する端面13cが、カバー層20で覆われる。固体電池1では、電解質層13の端面13cが断面視で先鋭面を有するため、固体電池1の製造時や充放電動作時に発生する応力が、電解質層13の、先鋭で且つ電解質層13とは異なる材料が用いられたカバー層20と接する最先端13dに集中し易く、最先端13dを起点にクラックが発生し易くなる。
【0057】
これに対し、図7(B)に示すように、電解質層13の第2方向D2の端面13aが断面視で湾曲面を有する固体電池1A(図6)では、当該端面13aが鈍角となる。即ち、固体電池1Aにおいて、断面視で湾曲面を有する電解質層13の端面13aは、第2方向D2(最先端13bを通る第2方向D2の線)に対する接線200の角度θbが45°以上となる領域を含む。断面視で湾曲面を有する電解質層13の端面13aは、少なくとも第2方向D2の最先端13b及びその付近に、第2方向D2に対する接線200の角度θbが45°以上となる領域を含む。固体電池1Aでは、断面視でこのような湾曲面を有する端面13aが、カバー層20で覆われる。固体電池1Aでは、電解質層13の端面13aが断面視で湾曲面を有するため、電解質層13が、それとは異なる材料が用いられたカバー層20と接していても、固体電池1Aの製造時や充放電動作時に発生する応力が、湾曲した端面13aにおいて分散、緩和され易くなり、端面13aを起点としたクラックの発生が抑えられる。
【0058】
第1実施形態に係る固体電池1Aによれば、カバー層20にクラックが発生することを抑え、その保護機能により、性能及び信頼性の低下を効果的に抑えることが可能になる。
続いて、上記のような固体電池1Aの製造方法について説明する。
【0059】
図8から図11は第1実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図である。図8(A)及び図8(B)、図9(A)から図9(C)、図10(A)から図10(C)、並びに図11(A)から図11(C)にはそれぞれ、固体電池製造の各工程の模式図を示している。
【0060】
ここで、図8(A)において、下図は電解質層用シート形成工程の要部平面模式図であり、上図は下図のVIIIa-VIIIa断面模式図である。図8(B)において、下図は電解質層用シートハーフカット工程の要部平面模式図であり、上図は下図のVIIIb-VIIIb断面模式図である。図9(A)において、下図はカバー層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIXa-IXa断面模式図である。図9(B)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIXb-IXb断面模式図である。図9(C)において、下図は電極層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のIXc-IXc断面模式図である。図10(A)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXa-Xa断面模式図である。図10(B)において、下図はカバー層用ペースト印刷工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXb-Xb断面模式図である。図10(C)において、下図は印刷用スクリーン除去工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXc-Xc断面模式図である。
【0061】
また、図11(A)及び図11(B)は積層及び圧着工程の要部断面模式図である。図11(A)は積層及び圧着により得られる積層体の対向する端面の一方側から見た要部断面模式図であり、図11(B)は積層及び圧着により得られる積層体の対向する端面のそれらの対向方向に沿った要部断面模式図である。図11(C)は外部電極形成工程後の固体電池の要部断面模式図である。
【0062】
固体電池1Aの製造では、まず、図8(A)に示すような支持体30上の電解質層用シート16が準備される。支持体30には、PETフィルム等が用いられる。電解質層用シート16は、前述のような電解質層用ペースト(上記図4(B)及び図4(C)に示したような電解質層用ペースト15)を支持体30上に塗工し、乾燥することで、形成される。支持体30上の電解質層用シート16には、図8(A)に点線矢印及び点線で示すような所定の位置に、ハーフカット位置16cが設定される。
【0063】
そして、支持体30上の電解質層用シート16は、図8(B)に示すように、設定されたハーフカット位置16cで、支持体30を切断しないようにハーフカットされ、部分的に除去される。電解質層用シート16のハーフカットには、例えば、回転式、押圧式又は走査式のブレードで電解質層用シート16をカットする手法が用いられる。
【0064】
電解質層用シート16のハーフカットは、図8(B)に示すようなハーフカットの段階で、例えば、電解質層用シート16の切断面が支持体30の上面に対して垂直面となるようにすることができる。或いは、電解質層用シート16のハーフカットは、ブレードを振動又は傾斜させて、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。或いは、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるような形状のブレードを用い、ハーフカットを行うこともできる。或いは、異なる形状の複数種のブレードを多段階で使用してハーフカットを行い、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。電解質層用シート16の切断面は、図8(B)に示すようなハーフカットの段階で、このような所定の手法が用いられ、断面視で外側に膨らんだ湾曲面とされてもよい。
【0065】
電解質層用シート16のハーフカット後、図9(A)に示すように、スクリーン印刷法を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。その際は、電解質層用シート16のハーフカットされた領域の一部に開口部43aを有する印刷用スクリーン43が配置され、その開口部43aにスキージ53を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。
【0066】
カバー層用ペースト21の塗工後、図9(B)に示すように、印刷用スクリーン43が除去される。例えば、印刷用スクリーン43の除去後、カバー層用ペースト21は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。これにより、電解質層用シート16のハーフカットされた領域の一部に、カバー層用ペースト21が形成される。
【0067】
カバー層用ペースト21の形成後、図9(C)に示すように、スクリーン印刷法を用いて電極層用ペースト14(正極層用ペースト14a又は負極層用ペースト14b)が塗工される。その際は、電極層を形成する領域に開口部44aを有する印刷用スクリーン44が配置され、その開口部44aにスキージ54を用いて電極層用ペースト14が塗工される。
【0068】
電極層用ペースト14の塗工後、図10(A)に示すように、印刷用スクリーン44が除去される。例えば、印刷用スクリーン44の除去後、電極層用ペースト14は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。このようなスクリーン印刷法で形成される電極層用ペースト14の端面は、図10(A)に点線枠部を拡大断面図で模式的に示すように、断面視で、支持体30及びその上の電解質層用シート16の上面に対して鋭角に傾斜した、先鋭面となる。
【0069】
電極層用ペースト14の形成後、図10(B)に示すように、スクリーン印刷法を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。その際は、形成された電極層用ペースト14の周囲となる領域に開口部45aを有する印刷用スクリーン45が配置され、その開口部45aにスキージ55を用いてカバー層用ペースト21が塗工される。
【0070】
カバー層用ペースト21の塗工後、図10(C)に示すように、印刷用スクリーン45が除去される。例えば、印刷用スクリーン45の除去後、カバー層用ペースト21は、所定の雰囲気中、所定の温度で乾燥される。電極層用ペースト14の周囲に形成されるカバー層用ペースト21は、図10(C)に点線枠部を拡大断面図で模式的に示すように、断面視で、電極層用ペースト14の先鋭面である端面を覆う。尚、電極層用ペースト14の周囲及び電解質層用シート16のハーフカットされた部分に形成されるカバー層用ペースト21は、固体電池1Aの積層体10Aを覆うカバー層20の一部となる部分であって、「埋め込み層」とも称される。
【0071】
尚、電極層用ペースト14及びカバー層用ペースト21の乾燥は、各々の塗工後にそれぞれ行われてもよいし、それらの塗工後に一括で行われてもよい。
電極層用ペースト14として、正極層用ペースト14aが用いられ、上記図8(A)及び図8(B)、図9(A)から図9(C)、並びに図10(A)から図10(C)に示したような方法により、正極層用ペースト14a、カバー層用ペースト21及び電解質層用シート16を含む積層シートが形成される。また、電極層用ペースト14として、負極層用ペースト14bが用いられ、上記図8(A)及び図8(B)、図9(A)から図9(C)、並びに図10(A)から図10(C)に示したような方法により、負極層用ペースト14b、カバー層用ペースト21及び電解質層用シート16を含む積層シートが形成される。また、上記の例に従い、スクリーン印刷法を用いて、カバー層用ペースト21のシート、及び電解質層用シート16とその外側に設けられたカバー層用ペースト21とを含むシート、或いは、これらのシートが積層された構造を有する積層シートが形成される。
【0072】
そして、このようにして形成されたシート群が、それらの正極層用ペースト14a、負極層用ペースト14b、電解質層用シート16及びカバー層用ペースト21がそれぞれ、図11(A)及び図11(B)に示すような積層順及び配置関係となるように、積層されて圧着される。尚、図11(A)及び図11(B)には、積層及び圧着時の加圧19を太矢印で模式的に示している。
【0073】
更に、正極層用ペースト14aの側面の一部、及び負極層用ペースト14bの側面の一部が露出するように、即ち、電極引き出し面(図11(C)に示す端面10Aa及び端面10Ab)が形成されるように、図11(B)に点線で示すような裁断位置18で、裁断が行われる。
【0074】
そして、ペースト中のバインダー等の有機成分を除去するための熱処理(脱脂)、及びペースト中の固体電解質やガラス等を焼結させるための熱処理(焼成)が行われる。この熱処理により、正極層用ペースト14aから正極層11が形成され、負極層用ペースト14bから負極層12が形成され、電解質層用シート16から電解質層13が形成され、カバー層用ペースト21からカバー層20が形成される。
【0075】
これにより、図11(C)に示すような電解質層13、正極層11及び負極層12を含む積層体10A、並びにそれを覆うカバー層20が形成される。更に、図11(C)に示すように、積層体10Aの、正極層11及び負極層12の各側面の一部がカバー層20から露出する端面10Aa及び端面10Ab(電極引き出し面又は第1端面)にそれぞれ、外部電極60及び外部電極70が形成される。
【0076】
以上のような方法により、積層体10A及びそれを覆うカバー層20、並びに外部電極60及び外部電極70を備える、固体電池1Aが製造される。
上記図6は、図11(A)のP1部の、図11(A)から図11(C)で述べたような積層、圧着、裁断及び熱処理後における拡大断面模式図に相当する。
【0077】
ここで、電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図6)は、図8(A)及び図8(B)に示したような電解質層用シート16のハーフカットによって、断面視(即ち図11(C)の端面10Aa側又は端面10Ab側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0078】
或いは、電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図6)は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図11(C)の端面10Aa側又は端面10Ab側から見た断面視)で、第1方向D1に平行な平面の状態から第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図6)は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図11(C)の端面10Aa側又は端面10Ab側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態から更に外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0079】
例えば、このような図8(A)及び図8(B)に示したような電解質層用シート16のハーフカット工程、図11(A)から図11(C)で述べたような積層、圧着、裁断及び熱処理工程が、電解質層13をその端面13aが第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有するように形成する工程に相当する。
【0080】
[第2実施形態]
図12は第2実施形態に係る固体電池の構成例について説明する図である。図12(A)及び図12(B)にはそれぞれ、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0081】
図12(A)に示す固体電池1Bは、積層体10B及びカバー層20を含む構造体を備える。図12(A)に示す固体電池1Bは、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した正極層11の端面11a及び負極層12の端面12aが、第1方向D1に平行な平面を有する積層体10Bを備える点で、上記第1実施形態で述べた固体電池1Aと相違する。正極層11の端面11aは、正極層11の厚さ方向(第1方向D1)に対向する両主面間を接続する側面(第2方向D2に面した側面)であり、当該側面が全体的に第1方向D1に平行な平面となっている。負極層12の端面12aは、負極層12の厚さ方向(第1方向D1)に対向する両主面間を接続する側面(第2方向D2に面した側面)であり、当該側面が全体的に第1方向D1に平行な平面となっている。尚、図12(A)に示す固体電池1Bの積層体10Bの電解質層13は、上記第1実施形態で述べた固体電池1Aと同様に、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した端面13aが、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する形状とされる。
【0082】
また、図12(B)に示す固体電池1Bは、積層体10B及びカバー層20を含む構造体を備える。図12(B)に示す固体電池1Bは、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した正極層11の端面11a及び負極層12の端面12aが、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する積層体10Bを備える点で、上記第1実施形態で述べた固体電池1Aと相違する。正極層11の端面11aは、正極層11の厚さ方向(第1方向D1)に対向する両主面間を接続する側面(第2方向D2に面した側面)であり、当該側面が全体的に第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面となっている。負極層12の端面12aは、負極層12の厚さ方向(第1方向D1)に対向する両主面間を接続する側面(第2方向D2に面した側面)であり、当該側面が全体的に第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面となっている。尚、図12(B)に示す固体電池1Bの積層体10Bの電解質層13は、上記第1実施形態で述べた固体電池1Aと同様に、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した端面13aが、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する形状とされる。
【0083】
第2実施形態に係る固体電池1Bは、図12(A)に示すような構成を有していてもよいし、図12(B)に示すような構成を有していてもよい。
ここでは図示されないが、固体電池1Bの積層体10Bは、正極層11及び負極層12の各々の側面の一部が露出するように、即ち、電極引き出し面となる端面(後述の端面10Ba及び端面10Bb)が露出するように、カバー層20で覆われる。図12(A)及び図12(B)はそれぞれ、積層体10Bの、カバー層20から露出する電極引き出し面となる端面側から見た要部断面の一例であって、積層体10Bの、カバー層20で覆われる部分の断面の一例を、模式的に示したものである。
【0084】
尚、積層体10Bの、電極引き出し面となる端面(後述の端面10Ba及び端面10Bb)を、「第1端面」とも言う。積層体10Bの、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する、電解質層13の端面13aを、「第2端面」とも言う。積層体10Bの、第1方向D1に平行な平面、又は、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有する、正極層11の端面11a及び負極層12の端面12aの一方又は双方を、「第3端面」とも言う。
【0085】
図12(A)及び図12(B)に示すように、固体電池1Bの正極層11及び負極層12並びに電解質層13は、断面視で、電解質層13の第2方向D2の最先端13bが、電極層である正極層11及び負極層12の各々の第2方向D2の最先端11b及び最先端12bよりも、第2方向D2の外側に位置するように、設けられる。
【0086】
図12(A)及び図12(B)に示す固体電池1Bは、電極引き出し面となる第1端面側(後述の端面10Ba側及び端面10Bb側)から見た断面視で、電極層である正極層11及び負極層12の、カバー層20で覆われ且つ第2方向D2に面した第3端面である各々の端面11a及び端面12aが、第2方向D2に先鋭である先鋭面ではなく、第2方向D2に非先鋭である非先鋭面を有する。図12(A)及び図12(B)に示す固体電池1Bは、正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aがこのような形状を有する点で、上記第1実施形態で述べた固体電池1Aと相違する。
【0087】
固体電池1Bでは、上記第1実施形態で述べたように、その電解質層13の端面13aが、断面視で湾曲面を有することで、当該端面13aがクラックの起点となり難くなり、積層体10Bを覆うカバー層20にクラックが発生することが抑えられる。
【0088】
また、正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aが、断面視で先鋭面であると、そこを起点にクラックが発生し易くなる恐れがある。固体電池1Bでは、その正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aが、断面視で平面や湾曲面といった非先鋭面を有することで、断面視で先鋭面を有する場合に比べて、当該端面11a及び端面12aがクラックの起点となり難くなる。そのため、固体電池1Bでは、積層体10Bを覆うカバー層20にクラックが発生することが抑えられる。
【0089】
正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aが断面視で非先鋭面を有する固体電池1Bでは、当該端面11a及び端面12aが鈍角となる。即ち、固体電池1Bにおいて、非先鋭面を有する当該端面11a及び端面12aはそれぞれ、上記図7(B)で電解質層13の端面13aについて述べたのと同様に、第2方向D2(各々最先端11b及び最先端12bを通る第2方向D2の線)に対する接線の角度が45°以上となる領域を含む。断面視で非先鋭面を有する端面11a及び端面12aはそれぞれ、少なくとも第2方向D2の最先端11b及びその付近並びに最先端12b及びその付近に、第2方向D2に対する接線の角度が45°以上となる領域を含む。固体電池1Bでは、断面視でこのような非先鋭面を有する端面11a及び端面12aが、カバー層20で覆われる。固体電池1Bでは、正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aが断面視で非先鋭面を有するため、正極層11及び負極層12が、それとは異なる材料が用いられたカバー層20と接していても、固体電池1Bの製造時や充放電動作時に発生する応力が、非先鋭の端面11a及び端面12aにおいて分散、緩和され易くなり、端面11a及び端面12aを起点としたクラックの発生が抑えられる。
【0090】
固体電池1Bでは、電解質層13の端面13aのほか、正極層11及び負極層12の各々の端面11a及び端面12aを起点とするクラックの発生が抑えられることで、カバー層20の保護機能が十分に発揮され、固体電池1Bの性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0091】
続いて、上記のような固体電池1Bの製造方法について説明する。
図13から図16は第2実施形態に係る固体電池の製造方法の一例について説明する図である。図13(A)から図13(C)、図14(A)から図14(C)、図15(A)及び図15(B)、並びに図16(A)から図16(C)にはそれぞれ、固体電池製造の各工程の模式図を示している。
【0092】
ここで、図13(A)において、下図はカバー層用シート及び電極層用シート形成工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIIIa-XIIIa断面模式図である。図13(B)において、下図はカバー層用シート及び電極層用シートハーフカット工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIIIb-XIIIb断面模式図である。図13(C)において、下図はカバー層用シート及び電極層用シート圧着工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIIIc-XIIIc断面模式図である。図14(A)において、下図はカバー層用シート及び電解質層用シート形成工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIVa-XIVa断面模式図である。図14(B)において、下図はカバー層用シート及び電解質層用シートハーフカット工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIVb-XIVb断面模式図である。図14(C)において、下図はカバー層用シート及び電解質層用シート圧着工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXIVc-XIVc断面模式図である。図15(A)において、下図は圧着シートの要部平面模式図であり、上図は下図のXVa-XVa断面模式図である。図15(B)において、下図は圧着シート積層体形成工程の要部平面模式図であり、上図は下図のXVb-XVb断面模式図である。
【0093】
また、図16(A)及び図16(B)は圧着シート積層体の積層及び圧着工程の要部断面模式図である。図16(A)は積層及び圧着により得られる積層体の対向する端面の一方側から見た要部断面模式図であり、図16(B)は積層及び圧着により得られる積層体の対向する端面のそれらの対向方向に沿った要部断面模式図である。図16(C)は外部電極形成工程後の固体電池の要部断面模式図である。
【0094】
固体電池1Bの製造では、まず、図13(A)に示すような支持体31上のカバー層用シート22、及び支持体32上の電極層用シート17(正極層用シート17a又は負極層用シート17b)が準備される。支持体31及び支持体32には、PETフィルム等が用いられる。カバー層用シート22は、前述のようなカバー層用ペースト21を支持体31上に塗工し、乾燥することで、形成される。支持体31上のカバー層用シート22には、図13(A)に点線矢印及び点線で示すような所定の位置に、ハーフカット位置22cが設定される。電極層用シート17は、前述のような電極層用ペースト14(正極層用ペースト14a又は負極層用ペースト14b)を支持体32上に塗工し、乾燥することで、形成される。支持体32上の電極層用シート17には、図13(A)に点線矢印及び点線で示すような所定の位置に、ハーフカット位置17cが設定される。
【0095】
そして、支持体31上のカバー層用シート22は、図13(B)に示すように、設定されたハーフカット位置22cで、支持体31を切断しないようにハーフカットされ、部分的に除去される。支持体32上の電極層用シート17は、図13(B)に示すように、設定されたハーフカット位置17cで、支持体32を切断しないようにハーフカットされ、部分的に除去される。カバー層用シート22及び電極層用シート17のハーフカットには、例えば、回転式、押圧式又は走査式のブレードでカバー層用シート22及び電極層用シート17をカットする手法が用いられる。カバー層用シート22及び電極層用シート17は、相補的な形状となるように、ハーフカットされる。
【0096】
電極層用シート17のハーフカットは、図13(B)に示すようなハーフカットの段階で、例えば、電極層用シート17の切断面が支持体32の上面に対して垂直面(平面)となるようにすることができる。或いは、電極層用シート17のハーフカットは、ブレードを振動又は傾斜させて、電極層用シート17の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。或いは、電極層用シート17の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるような形状のブレードを用い、ハーフカットを行うこともできる。或いは、異なる形状の複数種のブレードを多段階で使用してハーフカットを行い、電極層用シート17の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。電極層用シート17の切断面は、図13(B)に示すようなハーフカットの段階で、このような所定の手法が用いられ、断面視で外側に膨らんだ湾曲面とされてもよい。
【0097】
ハーフカットされたカバー層用シート22及び電極層用シート17は、図13(C)に示すように、互いに圧着される。例えば、支持体32上に、電極層用シート17を囲むように、カバー層用シート22が圧着される。尚、電極層用シート17を囲むように圧着されるカバー層用シート22は、固体電池1Bのカバー層20の一部となる部分であって、「埋め込み層」とも称される。
【0098】
また、図14(A)に示すような支持体33上のカバー層用シート22、及び支持体34上の電解質層用シート16が準備される。支持体33及び支持体34には、PETフィルム等が用いられる。カバー層用シート22は、前述のようなカバー層用ペースト21を支持体33上に塗工し、乾燥することで、形成される。支持体33上のカバー層用シート22には、図14(A)に点線矢印及び点線で示すような所定の位置に、ハーフカット位置22cが設定される。電解質層用シート16は、前述のような電解質層用ペースト15を支持体34上に塗工し、乾燥することで、形成される。支持体34上の電解質層用シート16には、図14(A)に点線矢印及び点線で示すような所定の位置に、ハーフカット位置16cが設定される。
【0099】
そして、支持体33上のカバー層用シート22は、図14(B)に示すように、設定されたハーフカット位置22cで、支持体33を切断しないようにハーフカットされ、部分的に除去される。支持体34上の電解質層用シート16は、図14(B)に示すように、設定されたハーフカット位置16cで、支持体34を切断しないようにハーフカットされ、部分的に除去される。カバー層用シート22及び電解質層用シート16のハーフカットには、例えば、回転式、押圧式又は走査式のブレードでカバー層用シート22及び電解質層用シート16をカットする手法が用いられる。カバー層用シート22及び電解質層用シート16は、相補的な形状となるように、ハーフカットされる。
【0100】
電解質層用シート16のハーフカットは、図14(B)に示すようなハーフカットの段階で、例えば、電解質層用シート16の切断面が支持体34の上面に対して垂直面(平面)となるようにすることができる。或いは、電解質層用シート16のハーフカットは、ブレードを振動又は傾斜させて、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。或いは、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるような形状のブレードを用い、ハーフカットを行うこともできる。或いは、異なる形状の複数種のブレードを多段階で使用してハーフカットを行い、電解質層用シート16の切断面が断面視で外側に膨らんだ湾曲面となるようにすることもできる。電解質層用シート16の切断面は、図14(B)に示すようなハーフカットの段階で、このような所定の手法が用いられ、断面視で外側に膨らんだ湾曲面とされてもよい。
【0101】
ハーフカットされたカバー層用シート22及び電解質層用シート16は、図14(C)に示すように、互いに圧着される。例えば、支持体34上に、電解質層用シート16を囲むように、カバー層用シート22が圧着される。尚、電解質層用シート16を囲むように圧着されるカバー層用シート22は、固体電池1Bのカバー層20の一部となる部分であって、「埋め込み層」とも称される。
【0102】
このようにして、図15(A)に示すような圧着シート、即ち、カバー層用シート22及び電極層用シート17が圧着された圧着シートと、カバー層用シート22及び電解質層用シート16が圧着された圧着シートとが準備される。そして、これらの圧着シート同士が、図15(B)に示すように、互いに圧着される。例えば、支持体32上に形成されたカバー層用シート22及び電極層用シート17の圧着シートの上に、カバー層用シート22及び電解質層用シート16の圧着シートが圧着される。その際は、電極層用シート17が電解質層用シート16の所定の部位と対向するように、圧着シート同士が圧着される。これにより、図15(B)に示すような圧着シート積層体が形成される。
【0103】
電極層用シート17の材料として、正極層用ペースト14aから形成される正極層用シート17aが用いられ、上記図13(A)から図13(C)、図14(A)から図14(C)、並びに図15(A)及び図15(B)に示したような方法により、正極層用シート17a、カバー層用シート22及び電解質層用シート16を含む圧着シート積層体が形成される。また、電極層用シート17の材料として、負極層用ペースト14bから形成される負極層用シート17bが用いられ、上記図13(A)から図13(C)、図14(A)から図14(C)、並びに図15(A)及び図15(B)に示したような方法により、負極層用シート17b、カバー層用シート22及び電解質層用シート16を含む圧着シート積層体が形成される。
【0104】
そして、このようにして形成された圧着シート積層体群のほか、カバー層用シート22、並びにハーフカットされたカバー層用シート22及び電極層用シート17を圧着した圧着シートが、それらの正極層用シート17a、負極層用シート17b、電解質層用シート16及びカバー層用シート22がそれぞれ図16(A)及び図16(B)に示すような積層順及び配置関係となるように、積層されて圧着される。尚、図16(A)及び図16(B)には、積層及び圧着時の加圧19を太矢印で模式的に示している。
【0105】
更に、正極層用シート17aの側面の一部、及び負極層用シート17bの側面の一部が露出するように、即ち、電極引き出し面(図16(C)に示す端面10Ba及び端面10Bb)が形成されるように、図16(B)に点線で示すような裁断位置18で、裁断が行われる。
【0106】
そして、シート中のバインダー等の有機成分を除去するための熱処理(脱脂)、及びシート中の固体電解質やガラス等を焼結させるための熱処理(焼成)が行われる。この熱処理により、正極層用シート17aから正極層11が形成され、負極層用シート17bから負極層12が形成され、電解質層用シート16から電解質層13が形成され、カバー層用シート22からカバー層20が形成される。
【0107】
これにより、図16(C)に示すような電解質層13、正極層11及び負極層12を含む積層体10B、並びにそれを覆うカバー層20が形成される。更に、図16(C)に示すように、積層体10Bの、正極層11及び負極層12の各側面の一部がカバー層20から露出する端面10Ba及び端面10Bb(電極引き出し面又は第1端面)にそれぞれ、外部電極60及び外部電極70が形成される。
【0108】
以上のような方法により、積層体10B及びそれを覆うカバー層20、並びに外部電極60及び外部電極70を備える、固体電池1Bが製造される。
上記図12(A)及び図12(B)は、図16(A)のP2部の、図16(A)から図16(C)で述べたような積層、圧着、裁断及び熱処理後における拡大断面模式図に相当する。
【0109】
ここで、電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図12(A)及び図12(B))は、図14(A)及び図14(B)に示したような電解質層用シート16のハーフカットによって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0110】
或いは、電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図12(A)及び図12(B))は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第1方向D1に平行な平面の状態から第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。電解質層用シート16から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる電解質層13の端面13a(図12(A)及び図12(B))は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態から更に外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0111】
例えば、このような図14(A)及び図14(B)に示したような電解質層用シート16のハーフカット工程、図16(A)から図16(C)で述べたような積層、圧着、裁断及び熱処理工程が、電解質層13をその端面13aが第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面を有するように形成する工程に相当する。
【0112】
また、電極層用シート17から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる正極層11の端面11a及び負極層12の端面12a(図12(A)及び図12(B))は、上記図12(A)に示したように第1方向D1に平行な平面として存在していてもよく、上記図12(B)に示したように第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面として存在していてもよい。
【0113】
電極層用シート17から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる正極層11の端面11a及び負極層12の端面12a(図12(A)及び図12(B))は、図13(A)及び図13(B)に示したような電極層用シート17のハーフカットによって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0114】
或いは、電極層用シート17から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる正極層11の端面11a及び負極層12の端面12a(図12(A)及び図12(B))は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第1方向D1に沿った平面の状態から第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。電極層用シート17から積層、圧着、裁断及び熱処理を経て得られる正極層11の端面11a及び負極層12の端面12a(図12(A)及び図12(B))は、当該積層、圧着、裁断及び熱処理の際の作用、例えば、積層及び圧着時の加圧力、熱処理時の膨張力等によって、断面視(即ち図16(C)の端面10Ba側又は端面10Bb側から見た断面視)で、第2方向D2の外側に膨らんだ湾曲面の状態から更に外側に膨らんだ湾曲面の状態とされてもよい。
【0115】
例えば、このような図13(A)及び図13(B)に示したような電極層用シート17のハーフカット工程、図16(A)から図16(C)で述べたような積層、圧着、裁断及び熱処理工程が、正極層11及び負極層12をそれらの端面11a及び端面12aが第2方向D2に非先鋭である非先鋭面を有するように形成する工程に相当する。
【符号の説明】
【0116】
1、1A、1B 固体電池
10、10A、10B 積層体
10a、10b、10Aa、10Ab、10Ba、10Bb、11a、12a、13a、13c 端面
11 正極層
11b、12b、13b、13d 最先端
12 負極層
13 電解質層
14 電極層用ペースト
14a 正極層用ペースト
14b 負極層用ペースト
15 電解質層用ペースト
16 電解質層用シート
16c、17c、22c ハーフカット位置
17 電極層用シート
17a 正極層用シート
17b 負極層用シート
18 裁断位置
19 加圧
20 カバー層
21 カバー層用ペースト
22 カバー層用シート
30、31、32、33、34 支持体
40、41、42、43、44、45 印刷用スクリーン
40a、41a、42a、43a、44a、45a 開口部
50、51、52、53、54、55 スキージ
60、70 外部電極
100 クラック
200 接線
D1 第1方向
D2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16