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特開2024-49955軸部の取付構造、軸部の取付方法、及び軸部の取外方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049955
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】軸部の取付構造、軸部の取付方法、及び軸部の取外方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/10 20060101AFI20240403BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20240403BHJP
   B30B 15/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B21D37/10 A
B21D39/00 B
B30B15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156488
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】塗壁 健治
【テーマコード(参考)】
4E050
4E088
【Fターム(参考)】
4E050EA02
4E050EA11
4E088AA10
4E088BA10
(57)【要約】
【課題】軸部の取付けのやり直しが可能である軸部の取付構造を提供する。
【解決手段】軸部と、前記軸部の外周に配置された第一部材と、前記第一部材の外周に配置された第二部材と、前記軸部、前記第一部材、及び前記第二部材が嵌め込まれた穴を有するベース部と、を備え、前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きい、軸部の取付構造。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
前記軸部の外周に配置された第一部材と、
前記第一部材の外周に配置された第二部材と、
前記軸部、前記第一部材、及び前記第二部材が嵌め込まれた穴を有するベース部と、を備え、
前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、
前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きい、
軸部の取付構造。
【請求項2】
穴を有するベース部、軸部、第一部材、及び第二部材を準備する工程Aと、
前記軸部の外周に前記第一部材を配置する工程Bと、
前記第一部材の外周に前記第二部材を配置する工程Cと、
前記第一部材及び前記第二部材が配置された前記軸部を前記穴に嵌め込む工程Dと、を備え、
前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、
前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きく、
前記工程Cでは、前記第二部材を加熱し、膨張した前記第二部材の内側に前記第一部材が配置された前記軸部を嵌め込み、
前記工程Dでは、前記軸部、前記第一部材、及び前記第二部材の一体物を冷却し、前記一体物を前記穴に嵌め込む、
軸部の取付方法。
【請求項3】
軸部、第一部材、及び第二部材が順次内側から外側に配置された一体物と、前記一体物が嵌め込まれた穴を有するベース部とを準備する工程αと、
前記一体物のうち、前記軸部を前記穴から取り外す工程βと、
前記工程βの後に、前記第一部材を取り外す工程γと、
前記工程γの後に、前記第二部材を取り外す工程δと、を備え、
前記工程αにおいて、
前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、
前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きく、
前記工程βでは、前記軸部を冷却して収縮させ、
前記工程δでは、前記第二部材を冷却して収縮させる、
軸部の取外方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部の取付構造、軸部の取付方法、及び軸部の取外方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プレス金型におけるガイドポスト、及びそのガイドポストの取付方法を開示する。ガイドポストは、金型をプレス機に固定するための上下のダイセットの位置合わせを行う部材である。特許文献1の技術では、ガイドポストをベースに取付け、このベースをダイセットにボルトで固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-152327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドポストをボルトなしでダイセットに直接固定する場合、以下のようにしてガイドポストをダイセットに取付ける。ダイセットにガイドポストの取付穴を形成する。取付穴の内径よりも少し大きい外径を有するガイドポストを準備する。ガイドポストを冷却して、ガイドポストの外径を収縮させた状態で、ガイドポストを取付穴に挿入する。ガイドポストが常温に戻ると、ガイドポストの外径が元に戻り、ガイドポストの外周面が取付穴の内周面に密着し、ガイドポストが取付穴に隙間なく取付けられる。この方法では、いわゆる冷やし嵌めによってガイドポストをダイセットに取付けている。
【0005】
冷やし嵌めによる取付けでは、外気温が高かったり、作業時間が長くなったりすると、ガイドポストを取付穴へ挿入している途中でガイドポストの外径が元に戻り、ガイドポストを取付穴の所定位置まで挿入できないおそれがある。ガイドポストを取付穴の所定位置まで挿入できないと、ガイドポストの取付けをやり直す必要があるが、現状そのやり直す方法が確立されていない。そのため、ガイドポストを取付穴の所定位置まで挿入できなかった場合、そのガイドポストを邪魔にならないように切断し、別のガイドポストをダイセットの別の箇所に冷やし嵌めによって取付けるしか方法がない。以下、ガイドポストを軸部、ダイセットをベース部と呼ぶ。
【0006】
本発明の目的の一つは、軸部の取付けのやり直しが可能である軸部の取付構造を提供することにある。本発明の別の目的の一つは、軸部の取付けのやり直しが可能である軸部の取付方法を提供することにある。本発明の別の目的の一つは、軸部の取付けのやり直しが可能である軸部の取外方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る軸部の取付構造は、軸部と、前記軸部の外周に配置された第一部材と、前記第一部材の外周に配置された第二部材と、前記軸部、前記第一部材、及び前記第二部材が嵌め込まれた穴を有するベース部と、を備える。前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さい。前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きい。
【0008】
本発明の一態様に係る軸部の取付方法は、穴を有するベース部、軸部、第一部材、及び第二部材を準備する工程Aと、前記軸部の外周に前記第一部材を配置する工程Bと、前記第一部材の外周に前記第二部材を配置する工程Cと、前記第一部材及び前記第二部材が配置された前記軸部を前記穴に嵌め込む工程Dと、を備える。前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きい。前記工程Cでは、前記第二部材を加熱し、膨張した前記第二部材の内側に前記第一部材が配置された前記軸部を嵌め込む。前記工程Dでは、前記軸部、前記第一部材、及び前記第二部材の一体物を冷却し、前記一体物を前記穴に嵌め込む。
【0009】
本発明の一態様に係る軸部の取外方法は、軸部、第一部材、及び第二部材が順次内側から外側に配置された一体物と、前記一体物が嵌め込まれた穴を有するベース部とを準備する工程αと、前記一体物のうち、前記軸部を前記穴から取り外す工程βと、前記工程βの後に、前記第一部材を取り外す工程γと、前記工程γの後に、前記第二部材を取り外す工程δと、を備える。前記工程αにおいて、前記第一部材は、前記軸部よりも熱伝導率が小さく、前記第二部材は、前記ベース部よりも線膨張係数が大きい。前記工程βでは、前記軸部を冷却して収縮させる。前記工程δでは、前記第二部材を冷却して収縮させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軸部の取付構造では、軸部の外周に第一部材と第二部材とが順に配置されている。第一部材の熱伝導率が軸部よりも小さいことで、軸部の熱が第二部材及びベース部に伝わり難い。よって、軸部のみを冷却によって収縮し、軸部のみを他の部材から取り外すことができる。第二部材の線膨張係数がベース部よりも大きいことで、第二部材がベース部よりも温度変化によって膨張又は収縮し易い。よって、ベース部に第二部材が嵌められた状態で第二部材が冷却されると、ベース部も冷却されるものの、第二部材がベース部よりも大きく収縮し、第二部材をベース部から取り外すことができる。以上により、本発明の軸部の取付構造では、ベース部から軸部、第一部材、及び第二部材を容易に取り外すことができ、軸部の取付けのやり直しが可能である。
【0011】
本発明の軸部の取付方法では、冷やし嵌めによって軸部をベース部の穴に嵌め込む。軸部をベース部の穴に嵌め込む際には、軸部の外周に第一部材と第二部材とを順に配置している。つまり、本発明の軸部の取付方法では、軸部、第一部材、及び第二部材の一体物を冷却し、上記一体物をベース部の穴に嵌め込む。本発明の軸部の取付方法でも、外気温が高かったり、作業時間が長くなったりすると、上記一体物をベース部の穴に挿入している途中で一体物の収縮が元に戻り、一体物をベース部の穴の所定位置まで挿入できないことがある。本発明の軸部の取付方法では、軸部の外周に第一部材と第二部材とを配置していることで、上述したように、ベース部から軸部、第一部材、及び第二部材を容易に取り外すことができ、軸部の取付けのやり直しが可能である。
【0012】
本発明の軸部の取外方法では、軸部の冷却及び第二部材の冷却によって各部材を取り外している。そのため、軸部、第一部材、第二部材、及びベース部の各々を破壊することなく、ベース部から軸部、第一部材、及び第二部材を容易に取り外すことができる。本発明の軸部の取外方法では、軸部の外周に第一部材と第二部材とを配置していることで、上述したように、ベース部から軸部、第一部材、及び第二部材を容易に取り外すことができ、軸部の取付けのやり直しが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の軸部の取付構造を適用したプレス金型の一例を模式的に示す構成図である。
図2図2は、実施形態の軸部の取付構造を示す断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、実施形態の軸部の取付方法の工程の一部を説明する説明図である。
図5図5は、実施形態の軸部の取付方法の工程の別の一部を説明する説明図である。
図6図6は、実施形態の軸部の取外方法の工程の一部を説明する説明図である。
図7図7は、実施形態の軸部の取外方法の工程の別の一部を説明する説明図である。
図8図8は、実施形態の軸部の取外方法の工程の別の一部を説明する説明図である。
図9図9は、実施形態の軸部の取外方法の工程の別の一部を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の軸部の取付構造、軸部の取付方法、及び軸部の取外方法の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。
【0015】
<軸部の取付構造>
軸部の取付構造1は、図2に示すように、ベース部2、軸部3、第一部材4、及び第二部材5を備える。ベース部2には、穴20が設けられている。軸部3の第一端部31には、第一部材4と第二部材5とが順に配置されている。第一端部31は、第一部材4及び第二部材5と共に穴20に嵌め込まれている。軸部の取付構造1の特徴の一つは、軸部3の取付けのやり直しが可能な構造を有する点にある。軸部3よりも熱伝導率が小さい第一部材4が軸部3の外周に配置され、かつベース部2よりも線膨張係数が大きい第二部材5が第一部材4の外周に配置されている。この第一部材4及び第二部材5の配置によって、軸部3の取付けのやり直しが可能である。
【0016】
軸部の取付構造1は、例えば、図1に示すプレス金型における下ダイセット92へのガイドポスト93の取付箇所に適用される。図1に示すプレス金型は、上ダイセット91、下ダイセット92、ガイドポスト93、及びガイドブッシュ94を備える。上ダイセット91には、上パンチ95が取付けられている。下ダイセット92には、ダイ96が取付けられている。ガイドポスト93及びガイドブッシュ94は、上ダイセット91と下ダイセット92との位置合わせを行っている。ガイドポスト93は、下ダイセット92に固定されている。下ダイセット92が上述したベース部2であり、ガイドポスト93が上述した軸部3である。ガイドポスト93、つまり軸部3の第一端部31が下ダイセット92に固定されており、第二端部32がガイドブッシュ94の内側に摺動自在に嵌められている。ガイドブッシュ94は、上ダイセット91に固定されている。上ダイセット91がガイドポスト93及びガイドブッシュ94を介して上下方向に移動することで、上パンチ95とダイ96との間に挟まれた被加工物がプレス加工される。
【0017】
≪ベース部≫
ベース部2は、軸部3を固定するための台座である。ベース部2は、図2に示すように、軸部3が嵌め込まれた穴20を有する。穴20の断面形状は、軸部3の断面形状と同じである。本例の穴20の断面形状は円形状である。穴20の内径20D(図5)は、常温時の第二部材5の外径に対応して設定されている。穴20の内径20Dと第二部材5の外径との関係は後述する。本例の穴20は、底を有する止まり穴である。穴20は、ベース部2における互いに向かい合う二つの面を貫通する孔であってもよい。
【0018】
ベース部2は、金属材料で構成されている。金属材料は、例えば鉄系材料である。ベース部2の線膨張係数は、例えば9.0×10-6/℃以上20×10-6/℃以下、9.0×10-6/℃以上15×10-6/℃以下、又は9.0×10-6/℃以上12×10-6/℃以下である。ベース部2の熱伝導率は、例えば10W/mK以上60W/mK以下、20W/mK以上55W/mK以下、又は30W/mK以上50W/mK以下である。本例のベース部2は、鋳鉄で構成されている。鋳鉄では、線膨張係数が約10.5×10-6/℃、熱伝導率が約48W/mKである。
【0019】
≪軸部≫
軸部3は、第一端部31及び第二端部32を有する棒状部材である。軸部3の第一端部31は、図2に示すように、ベース部2の穴20に嵌め込まれている。第一端部31は、冷やし嵌めによって穴20に嵌め込まれている。軸部3の横断面形状は、図3に示すように、円形状である。
【0020】
軸部3は、金属材料で構成されている。金属材料は、例えば鉄系材料である。軸部3の熱膨張係数は、ベース部2の線膨張係数よりも小さくても大きくても同じでもよい。軸部3の熱伝導率は、ベース部2の熱伝導率よりも小さくても大きくても同じでもよい。本例の軸部3は、機械構造用炭素鋼で構成されている。機械構造用炭素鋼では、線膨張係数が約11.9×10-6/℃、熱伝導率が約45W/mKである。
【0021】
≪第一部材≫
第一部材4は、軸部3の第一端部31の直上に配置されている。第一部材4は、第二部材5の熱収縮に伴って変形自在であるとよい。第一部材4が第二部材5の熱収縮に伴って変形自在であれば、後述する軸部の取付方法において軸部3、第一部材4、及び第二部材5を冷却した際、第一部材4が第二部材5の内周に配置されていたとしても、第二部材5を冷却によって収縮させることができる。第一部材4は、常温において単体で扱った際に人力で変形自在であるとよい。第一部材4が人力で変形自在なフレキシブルな部材であれば、後述する軸部の取付方法において軸部3を穴20から取り外すと、第一部材4を常温でも穴20から人力で取り外すことができる。
【0022】
第一部材4は、軸部3から第二部材5及びベース部2への伝熱を低減又は遮断する機能を有する。第一部材4の熱伝導率は、軸部3の熱伝導率よりも小さい。第一部材4の熱伝導率が軸部3よりも小さいことで、軸部3の熱が第二部材5及びベース部2に伝わり難い。そのため、後述する軸部の取外方法において軸部3を冷却した際、軸部3のみを冷却によって収縮させることができる。第一部材4の熱伝導率は小さいほどよい。第一部材4の熱伝導率は、例えば、軸部3の熱伝導率の1/10倍以下、1/20倍以下、1/50倍以下、又は1/100倍以下である。第一部材4の熱伝導率は、例えば、1.0W/mK以下、0.5W/mK以下、又は0.1W/mK以下である。第一部材4の熱伝導率は、第二部材5の熱伝導率よりも小さくても大きくても同じでもよい。第一部材4の熱伝導率は、ベース部2の熱伝導率よりも小さくても大きくても同じでもよい。
【0023】
第一部材4の線膨張係数は特に限定されない。第一部材4が常温において人力で変形自在であれば、後述する軸部の取付方法において、第一部材4を軸部3に巻き付けたり貼り付けたりすることで、軸部3に第一部材4を容易に配置することができる。第一部材4が常温において人力で変形自在であれば、後述する軸部の取外し方法において、軸部3を穴20から取り外すことによって、付随的に第一部材4も穴20から容易に取り外すことができる。そのため、第一部材4の線膨張係数は、軸部3の線膨張係数よりも小さくても大きくても同じでもよい。第一部材4の線膨張係数は、第二部材5の線膨張係数よりも小さくても大きくても同じでもよい。第一部材4の線膨張係数は、ベース部2の線膨張係数よりも小さくても大きくても同じでもよい。
【0024】
第一部材4は、例えば第一端部31を覆うシート又はフィルムで構成されている。シートは、厚さが0.25mm以上の薄い板状のものである。フィルムは、厚さが0.25mm未満の膜状のものである。本例の第一部材4は、厚さが約10μmのフィルムで構成されている。第一部材4は、例えば、一枚のシート又はフィルムが第一端部31の直上に巻き付けられて構成されている。第一部材4は、複数枚のシート又はフィルムが第一端部31の直上に貼り付けられて構成されていてもよい。第一部材4の厚さ4T(図4)は、例えば10μm以上25μm以下である。例えば、一枚のシート又はフィルムが多層に巻き付けられて第一部材4が構成されている場合、第一部材4の厚さ4Tは、多層のシート又はフィルムの合計厚さである。第一部材4の軸部3に沿った長さは、例えば穴20の深さと同じである。
【0025】
第一部材4は、常温において単体で扱った際に人力で変形自在でなくてもよい。つまり、第一部材4は、ある程度大きい剛性を有していてもよい。例えば、第一部材4が複数の分割片で構成され、各分割片が第一端部31に貼り付け可能であれば、人力で容易に軸部3に第一部材4を取付けることも取り外すこともできる。
【0026】
第一部材4は、例えば、第一端部31の外周面の全域に設けられている。第一部材4は、第一端部31と第二部材5との間に空間を構成するように第一端部31の外周面の一部に設けられていてもよい。上記空間には空気が存在する。そのため、第一部材4が第一端部31の外周面の一部に設けられていたとしても、上記空間が存在することで、軸部3から第二部材5及びベース部2への伝熱を低減又は遮断することができる。
【0027】
第一部材4は、断熱性を有する材料、例えば樹脂又はゴムで構成されている。本例の第一部材4は、ポリエチレンで構成されている。第一部材4は、グラスウール、ロックウール、紙、経木、又は皮革で構成されていてもよい。
【0028】
≪第二部材≫
第二部材5は、第一部材4の直上に配置されている。第二部材5は、例えば、第一部材4の外周面の全域に設けられている。第二部材5は、例えば筒状部材である。第二部材5は、焼き嵌めによって第一部材4を介して軸部3の第一端部31に一体化されている。第二部材5は、軸部3及び第一部材4と共にベース部2の穴20に嵌め込まれている。第二部材5は、軸部3と同様に、冷やし嵌めによって穴20に嵌め込まれている。第二部材5の断面形状は、図3に示すように、円環状である。第二部材5の軸方向の長さは、例えば穴20の深さと同じである。穴20に嵌め込まれる前の常温時の第二部材5の外径は、冷やし嵌めによって穴20に嵌め込むことができる範囲で小さいほどよい。第二部材5の上記外径が小さいと、穴20の内径20Dを小さくでき、軸部2の配置スペースを小さくできる。軸部2の配置スペースを小さくできると、軸部2の周辺部材の配置を行い易い。穴20に嵌め込まれる前の常温時の第二部材5の内径を一定として上記外径を小さくすると、第二部材5の厚さも小さくなる。穴20に嵌め込まれる前の常温時の第二部材5の厚さは、例えば5mm以上30mm以下、5mm以上20mm以下、又は5mm以上10mm以下である。本例の第二部材5は、厚さが10mmの円筒状部材である。
【0029】
第二部材5は、第一部材4が軸部3に配置された状態を保持する機能を有する。第二部材5の内周面は、第一部材4の外周面に密着している。第二部材5の外周面は、ベース部2の穴20の内周面に密着している。第二部材5の線膨張係数は、ベース部2よりも大きい。第二部材5の線膨張係数がベース部2よりも大きいことで、第二部材5がベース部2よりも温度変化によって膨張又は収縮し易い。そのため、後述する軸部の取外方法において第二部材5を冷却した際、ベース部2よりも大きく第二部材5を収縮させることができる。第二部材5の線膨張係数は、例えば、ベース部2の線膨張係数の1.5倍以上、2倍以上、又は2.2倍以上である。第二部材5の線膨張係数は、例えば、軸部3の線膨張係数よりも大きい。第二部材5の線膨張係数は、第一部材4の厚さ4Tにもよるが、大きいほどよい。第二部材5の線膨張係数が大きいほど、後述する軸部の取付外方法において第二部材5を加熱した際、第一部材4が配置された軸部3を第二部材5の内側に嵌め込み易い。
【0030】
第二部材5の熱伝導率は、例えば、ベース部2の熱伝導率よりも大きい。第二部材5の熱伝導率がベース部2よりも大きいことで、第二部材5がベース部2よりも早く温度変化し易い。第二部材5の熱伝導率がベース部2よりも大きいことで、第二部材5を一端から冷却しても、第二部材5の全域を早く冷却できる。そのため、後述する軸部の取外方法において第二部材5を冷却した際、ベース部2よりも早く第二部材5を収縮させることができる。第二部材5の熱伝導率は、大きいほどよい。第二部材5の熱伝導率は、例えば、ベース部2の熱伝導率の1.5倍以上、又は2倍以上である。第二部材5の熱伝導率は、例えば、軸部3の熱伝導率よりも大きい。
【0031】
第二部材5は、金属材料で構成されている。金属材料は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。本例の第二部材5は、A5052合金で構成されている。A5052合金では、線膨張係数が約23.8×10-6/℃、熱伝導率が約140W/mKである。
【0032】
第二部材5の端面には、図3に示すように、ボルト穴50が設けられている。本例では、第二部材5の端面における径方向に向かい合う箇所に二つのボルト穴50が設けられている。
【0033】
<軸部の取付方法>
図4及び図5を参照して、軸部の取付方法を説明する。この軸部の取付方法は、冷やし嵌めによって軸部3をベース部2の穴20に嵌め込む方法である。軸部の取付方法は、以下の工程A、工程B、工程C、及び工程Dを備える。
【0034】
≪工程A≫
工程Aでは、上述したベース部2、軸部3、第一部材4、及び第二部材5を準備する。常温時の軸部3の外径3D1(図4)は、常温時のベース部2の穴20の内径20D(図5)よりも小さい。本例の第一部材4は、一枚のフィルムを多層に巻き付けて構成している。常温時の第二部材5の内径は、常温時の第一部材4の外径4D1(図4)よりも小さい。上記外径4D1は、常温時の軸部3の外径3D1と第一部材4の厚さ4Tを2倍した厚さとの合計である。常温時の第二部材5の外径は、ベース部2の穴20の内径20D(図5)よりも若干大きい。
【0035】
≪工程B≫
工程Bでは、図4の上図に示すように、軸部3の第一端部31の外周に第一部材4を配置する。本例では、一枚のフィルムを第一端部31の外周の直上に多層に巻き付けて第一部材4を構成している。第一部材4の厚さ4Tは、第一部材4における軸部3との接触面と第一部材4の外周面との間の長さである。第一部材4の厚さ4Tは、例えば、第一部材4の周方向に略均一である。
【0036】
工程Cでは、第一部材4の外周に第二部材5を配置する。工程Cは、工程C1と工程C2とを備える。工程C1では、図4の下図に示すように、第二部材5を加熱する。加熱温度は、加熱時の第二部材5の内径5D1が常温時の第一部材4の外径4D1よりも大きくなる温度である。また、加熱温度は、加熱された第二部材5に第一部材4が接触した際に第一部材4が溶融しない程度の温度である。加熱温度は、例えば、常温との差が60℃以上180℃以下、70℃以上150℃以下、又は80℃以上100℃以下となる温度とする。例えば、第一部材4がポリエチレンで構成されている場合、加熱温度は100℃以下がよい。加熱により、第二部材5が膨張し、第二部材5の内径5D1が常温時よりも大きくなる。加熱時の第二部材5の内径5D1は、常温時の第一部材4の外径4D1よりも大きい。工程C2では、加熱により膨張した第二部材5の内側に、第一部材4が配置された軸部3を嵌め込む。図4の白抜き矢印は、第二部材5の内側への軸部3の嵌め込み方向を示している。工程C2では、いわゆる隙間嵌めによって、第一部材4が配置された軸部3を第二部材5の内側に嵌め込んでいる。
【0037】
工程Cの後、第二部材5が常温に戻ると、第二部材5の内径が元に戻り、第二部材5が第一部材4を締め付けるように第一部材4が軸部3に配置された状態を保持して軸部3に一体化される。
【0038】
工程Dでは、第一部材4及び第二部材5が配置された軸部3をベース部2の穴20に嵌め込む。工程Dは、工程D1と工程D2とを備える。工程D1では、図5に示すように、軸部3、第一部材4、及び第二部材5の一体物を冷却する。冷却により、軸部3が収縮し、軸部3の外径3D2が常温時の外径3D1(図4)よりも小さくなる。また、冷却により、第二部材5が収縮し、第二部材5の内径及び外径5D2が常温時の内径及び外径よりも小さくなる。冷却時の上記一体物の外径、つまり冷却時の第二部材5の外径5D2は、穴20の内径20Dよりも小さい。工程D2では、冷却により収縮した上記一体物を穴20に嵌め込む。図5の白抜き矢印は、穴20への上記一体物の嵌め込み方向を示している。冷却時の上記一体物の外径、つまり冷却時の第二部材5の外径5D2によっては、工具89を用いて上記一体物を穴20に圧入してもよい。工程D2では、いわゆる隙間嵌め、中間嵌め、又はしまり嵌めによって、上記一体物を穴20に嵌め込んでいる。
【0039】
工程Dの後、上記一体物が常温に戻ると、軸部3の外径及び第二部材5の外径が元に戻り、軸部3が第一部材4を介して第二部材5に嵌め込まれ、第二部材5が穴20に嵌め込まれた状態が保持される。工程Dの後、上記一体物が常温に戻ると、図2に示すように、軸部3、第一部材4、及び第二部材5が順次内側から外側に配置された一体物が穴20に固定される。
【0040】
<軸部の取外方法>
図6から図9を参照して、軸部の取外方法を説明する。上述した軸部の取付方法において、外気温が高かったり、作業時間が長くなったりすると、上記一体物をベース部2の穴20に挿入している途中で一体物の収縮が元に戻り、一体物を穴20の所定位置まで挿入できないことがある。軸部の取外方法は、上記一体物を穴20の所定位置まで挿入できず、軸部3の取付けのやり直しを行うために、一体物を穴20から取り外す方法である。軸部の取外方法は、一体物が穴20の所定位置まで挿入された状態から一体物を穴20から取り外すこともできる。軸部の取外方法は、以下の工程α、工程β、工程γ、及び工程δを備える。
【0041】
≪工程α≫
工程αでは、軸部3、第一部材4、及び第二部材5が順次内側から外側に配置された一体物と、一体物が嵌め込まれた穴20を有するベース部2とを準備する。一体物は、穴20の途中まで嵌め込まれている。一体物は、図2に示すように、穴20の所定位置まで嵌め込まれていてもよい。
【0042】
≪工程β≫
工程βでは、上記一体物のうち、軸部3を穴20から取り外す。工程βは、工程β1と工程β2とを備える。工程β1では、図6に示すように、軸部3を冷却する。軸部3の冷却は、例えば冷却材80を用いて行う。冷却材80は、例えばドライアイスである。本例では、軸部3をカバー81で覆い、カバー81内を冷却材80で冷却している。カバー81は、軸部3のうちベース部2から突出する領域を覆い、外気から軸部3への熱侵入を抑制する機能を有する。カバー81は、熱伝導率が小さい材料で構成されている。カバー81は、例えば第一部材4と同じ材料で構成されている。軸部3が金属材料で構成されていることから、冷却材80によって軸部3の全体が冷却される。軸部3の第一端部31が第一部材4で覆われているため、軸部3から第二部材5及びベース部2に熱が伝わり難く、第二部材5及びベース部2は冷却され難い。よって、工程β1では、実質的に軸部3のみが冷却によって収縮する。冷却により、軸部3の外径3D2(図7)が常温時よりも小さくなる。冷却時の軸部3の外径3D2は、第一部材4の内径4D2(図7)よりも小さくなる。軸部3が冷却されると、軸部3と第一部材4との間に隙間が形成される。工程β2では、図7に示すように、冷却により収縮した軸部3を穴20から抜き取る。図7の白抜き矢印は、軸部3の抜き取り方向を示している。
【0043】
≪工程γ≫
工程γでは、工程βの後に、第一部材4を取り外す。本例の第一部材4はフィルムで構成されているため、軸部3を穴20から取り外すと、第一部材4は常温でも穴20から取り外すことができる。
【0044】
≪工程δ≫
工程δでは、工程γの後に、第二部材5を取り外す。工程δは、工程δ1と工程δ2とを備える。工程δ1では、図8に示すように、第二部材5を冷却する。第二部材5の冷却は、例えば冷却材80を用いて行う。本例では、第二部材5の上方の開口部を塞ぐように伝熱部材83を配置し、その伝熱部材83を介して第二部材5をカバー82で覆い、カバー82内を冷却材80で冷却している。伝熱部材83は、熱伝導率が大きい材料で構成されている。伝熱部材83は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金で構成されている。伝熱部材83は、例えば第二部材5の端面の全周に接触する大きさの板状部材である。伝熱部材83は、第二部材5のうちベース部2から突出する外周面も覆っていてもよい。つまり、伝熱部材83は、第二部材5の端面を覆う板状部分、及び第二部材5の外周面を覆う筒状部分とで構成されていてもよい。板状部材と筒状部分とが別体で構成されていてもよい。この場合、筒状部分は、径方向に分割可能に構成されているとよい。板状部分と筒状部分とが一体に構成されていてもよい。カバー82は、熱伝導率が小さい材料で構成されている。カバー82は、例えば第一部材4と同じ材料で構成されている。カバー82は、第二部材5の上方及び外周を覆っている。第二部材5が金属材料で構成されていることから、冷却材80によって第二部材5の全体が冷却される。冷却により、第二部材5は収縮する。第二部材5を介してベース部2もある程度冷却されるものの、第二部材5の線膨張係数がベース部2よりも大きいため、第二部材5はベース部2よりも大きく収縮する。冷却により、第二部材5の外径5D2(図9)が常温時よりも小さくなる。冷却時の第二部材5の外径5D2は、ベース部2の穴20の内径20D(図9)よりも小さくなる。第二部材5が冷却されると、第二部材5と穴20との間に隙間が形成される。工程δ2では、図9に示すように、冷却により収縮した第二部材5を穴20から抜き取る。本例では、第二部材5の端面に設けられたボルト穴50(図3)にボルト85を取付け、ボルト85を引っ張って第二部材5を穴20から抜き取っている。図9の白抜き矢印は、第二部材5の抜き取り方向を示している。
【0045】
上記伝熱部材83は配置しなくてもよい。例えば、冷却材80を第二部材5の内側に配置してもよい。例えば、クラッシュドライアイスを袋に入れ、その袋を第二部材5の内周面に接するように配置してもよい。袋は、例えば、クラッシュドライアイスよりも小さな孔が開いた樹脂フィルムである。冷却によって第二部材5が収縮すると、袋入りのクラッシュドライアイスは変形可能であり、第二部材5の収縮を妨げ難い。袋にクラッシュドライアイスを入れておけば、第二部材5を冷却した後、袋ごとクラッシュドライアイスを容易に取り出せる。
【0046】
工程δの後、第二部材5が常温に戻ると、第二部材5の外径が元に戻る。上述した軸部の取外方法であれば、軸部3、第一部材4、第二部材5、及びベース部2の各々を破壊することなく、ベース部2の穴20から軸部3、第一部材4、及び第二部材5を容易に取り外すことができる。
【0047】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、以下の変更が可能である。
【0048】
(1)第一部材4の熱伝導率が軸部3よりも小さく、かつ第二部材5の線膨張係数がベース部2よりも大きいのであれば、ベース部2、軸部3、第一部材4、及び第二部材5の各材質を適宜選択できる。第二部材5を構成する金属材料は、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、鉛、鉛合金、又は真鍮であってもよい。ベース部2及び軸部3を構成する金属材料は、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タングステン、又はタングステン合金であってもよい。
【0049】
(2)軸部の取付構造1は、プレス金型における下ダイセット92へのガイドポスト93の取付箇所以外に、機械装置における軸と穴の嵌め合いに適宜適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 軸部の取付構造
2 ベース部、20 穴、20D 内径
3 軸部、31 第一端部、32 第二端部、3D1,3D2 外径
4 第一部材、4T 厚さ、4D1 外径、4D2 内径
5 第二部材、50 ボルト穴、5D1 内径、5D2 外径
80 冷却材、81,82 カバー、83 伝熱部材
85 ボルト、89 工具
91 上ダイセット、92 下ダイセット
93 ガイドポスト、94 ガイドブッシュ
95 上パンチ、96 ダイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9