(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004996
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体デバイス、及び流体デバイスの制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 43/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B01D43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104949
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 紘斗
(72)【発明者】
【氏名】久保 景太
(72)【発明者】
【氏名】新井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
(57)【要約】
【課題】省電力化及び長寿命化を図れる流体デバイスを提供する。
【解決手段】流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記微粒子を検出することで前記制御部に検出信号を送信し、前記制御部は、前記検出信号を受信したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路と、
前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、
前記流路の前記超音波送信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記検出部は、前記微粒子を検出することで前記制御部に検出信号を送信し、
前記制御部は、前記検出信号を受信したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる、流体デバイス。
【請求項2】
前記流路を流れる前記流体の流速を測定する流速測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記流速測定部が測定した流速に基づいて前記第一時間を算出する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記検出部は、前記流路を流れる前記流体に対して波を出力する波源と、前記波源から発せられた前記波を受ける受波素子とを備え、前記受波素子が受ける波の強度に基づいて前記微粒子を検出する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項4】
流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、を備える流体デバイスの制御方法であって、
前記検出部で前記微粒子を検出したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる、流体デバイスの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体デバイス、及び流体デバイスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体中に分散する微粒子を捕捉して、微粒子の濃度が高い濃縮流体と、微粒子の濃度が低い希釈流体とに分離する流体デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の流体デバイスでは、流路を挟んでアクチュエーターを配置し、アクチュエーターに駆動電圧を印加することで、流路内に定在波を形成する。これにより、定在波の節の位置で流路を流れる流体中の微粒子を捕捉する。この特許文献1では、電圧の印加によってアクチュエーター自身が振動するバルク型圧電素子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の流体デバイスでは、バルク型の圧電素子を用いているため、アクチュエーターで生成された振動を流体中に伝搬する超音波に変換する構成である。この場合、アクチュエーターから流路壁を形成する基板を介して流体に超音波を伝搬させる必要があり、超音波の伝搬効率が低くなる。より効果的に超音波を伝搬させるためには、アクチュエーターに印加する駆動電圧を大きくする必要があり、微粒子の捕捉に係る消費電力が大きくなる、との課題がある。
また、消費電力が大きいアクチュエーターを連続して駆動させることで、アクチュエーターへの負荷も大きくなり、アクチュエーターの寿命が短くなるとの課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様の流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送受信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記微粒子を検出することで前記制御部に検出信号を送信し、前記制御部は、前記検出信号を受信したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる。
【0006】
第一態様の流体デバイスにおいて、前記流路を流れる前記流体の流速を測定する流速測定部をさらに備え、前記制御部は、前記流速測定部が測定した流速に基づいて前記第一時間を算出することが好ましい。
【0007】
第一態様の流体デバイスにおいて、前記検出部は、前記流路を流れる前記流体に対して波を出力する波源と、前記波源から発せられた前記波を受ける受波素子とを備え、前記受波素子が受ける波の強度に基づいて微粒子を検出することが好ましい。
【0008】
本開示の第二態様の流体デバイスの制御方法は、流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送受信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、を備える流体デバイスの制御方法であって、前記検出部で前記微粒子を検出したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態の流体デバイスの概略構成を模式的に示す図。
【
図2】第一実施形態の第一超音波素子の概略構成を示す断面図。
【
図3】第一実施形態の流体デバイスの制御方法を示すフローチャート。
【
図4】第二実施形態の流体デバイスの概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態について説明する。
(流体デバイスの構成)
図1は、第一実施形態の流体デバイス10の概略構成を模式的に示す図である。
流体デバイス10は、X軸に沿って延び、内部に流体Sを流通させる流路20を備える。また、流体デバイス10は、流路20内の流体SにY軸に沿った定在波SWを発生させる第一超音波素子30(超音波送信部)と、流路20内の流体Sに含まれる微粒子を検出する微粒子検出素子40と、第一超音波素子30の駆動を制御するコントローラー50と、を備える。なお、X軸およびY軸は互いに直交する軸であり、X軸およびY軸のそれぞれに直交する軸をZ軸とする。X軸において、+Xに向かう方向は流体Sが流れる流通方向に相当し、Y軸において、+Yに向かう方向は第一超音波素子30により超音波が送信される第1方向に相当する。
【0011】
この流体デバイス10では、流路20内のX軸方向の一部領域において、任意のモード次数の定在波SWがY軸方向に沿って形成される。流体S中に分散している微粒子Mは、流路20内を流通する過程で、定在波SWにより形成される圧力勾配の影響を受け、定在波SWの節を中心とする所定範囲に収束する。流体Sは、特に限定されないが、例えば水や血液である。微粒子Mは、例えば微小繊維や細胞であってもよい。
このような流体デバイス10では、例えば、流路20に対して、収束した微粒子Mを含む流体Sを選択的に流通させる濃縮用流路23と、それ以外の流体Sを選択的に流通させる希釈用流路24とを設けることにより、流体Sにおける微粒子Mを濃縮することができる。
なお、
図1では、流路20内で収束される微粒子Mの様子を模式的に例示している。また、
図1では、一例として、流路20内に発生する1次モードの定在波SWを模式的に示しているが、定在波SWのモード次数は特に限定されない。
【0012】
流路20は、Y軸方向において互いに対向する第一壁面21および第二壁面22を有する。これら第一壁面21および第二壁面22の間の流路幅Lは、既知の値である。流路20の具体的構成は、特に限定されないが、例えば、凹溝を形成されたベース基板と、当該凹溝を覆うリッド基板とによって形成され、各基板として、ガラス基板やシリコン基板などを利用できる。
また、本実施形態では、流路20の第一壁面21から第二壁面22の間の距離、つまり、Y軸(第二軸)に沿った幅が同一となるように形成されている。例えば、
図1に示すように、後述する第一超音波素子30が設けられる第一位置20Aから、微粒子検出素子40が設けられる第二位置20Bに亘って、流路20のY軸に沿った幅が同一に形成されており、これにより、第二位置20Bから第一位置20Aに向かって流れる流体Sの流速は一定となる。すなわち、流体Sに含まれる微粒子が第二位置20Bから第一位置20Aまで移動するために要する時間を容易に算出することが可能となる。
なお、流体Sに含まれる微粒子が、第二位置20Bから第一位置20Aまで微粒子が移動するために係る時間が予め計測されており、不変である場合では、第一位置20Aと第二位置20Bとの間で流路幅(Y軸の幅)が広がっていたり、狭まっていたりしてもよい。
【0013】
第一超音波素子30は、本開示の超音波送信部を構成する。この第一超音波素子30は、流路20の第一位置20Aにおいて、流路20内に面して設けられ、流体Sに対して所定の周波数の超音波を送信することで、当該流体SにY軸に沿った定在波SWを発生させる。
【0014】
図2は、本実施形態の第一超音波素子30の概略構成を示す断面図である。
本実施形態では、
図2に示すように、流路20の第一壁面21に凹部または孔部により構成された素子設置部21Aが設けられており、当該素子設置部21Aに対して第一超音波素子30が配置される。第一超音波素子30は、素子基板31に支持される振動膜32と、振動膜32に設けられる圧電素子33と、を備えている。
素子基板31は、Si等の半導体基板で構成される。この素子基板31は、流路20を構成する第一壁面21の素子設置部21Aにおいて、素子基板31の厚み方向がY方向に沿うように配置されており、素子基板31の外周面は、素子設置部21Aの内周面に対して液密に接している。
また、素子基板31には、素子基板31の厚み方向に沿って素子基板31を貫通する開口部311が設けられている。
【0015】
振動膜32は、例えばSiO2膜およびZrO2膜など、複数種類の膜を積層した積層体等より構成されている。この振動膜32は、素子基板31に支持されると共に、開口部311の一方側(流路20側とは反対側)を閉塞する。
また、振動膜32のうち、素子基板31の厚み方向から見た際に開口部311と重なる部分は、超音波の送信を行う振動部321を構成する。振動部321が有する一対の面のうち一方の面は、流路20から開口部311内に流入する流体Sに接する流体接触面322となる。
ここで、振動膜32は、振動膜32の厚み方向(流体接触面322の法線方向)がY方向に沿うように配置される。
【0016】
圧電素子33は、振動部321に対して流体接触面322とは反対側の面に設けられている。この圧電素子33は、図示を省略するが、振動部321上に下部電極、圧電膜および上部電極が順に積層されることにより構成されている。
なお、
図2には、説明の簡略化のため、1つの振動部321及び圧電素子33を備える第一超音波素子30を模式的に示しているが、実際には、振動部321及び圧電素子33により構成される素子が複数アレイ状に配置された第一超音波素子30が用いられる。
【0017】
このような第一超音波素子30では、圧電素子33に駆動信号が入力されると、下部電極と上部電極との間に電圧が印加され、圧電膜が伸縮する。これにより、振動部321は、振動部321の短辺方向の寸法などに応じた所定の発振周波数で、流体接触面322の法線方向に撓み振動する。振動部321の撓み振動は、流体Sの粗密波に変換されることで超音波の伝搬が行われる。また、本実施形態では、第一超音波素子30の流体接触面322は、第一壁面21と略同一面であり、流体接触面322から流路20を挟んで対向する第二壁面22までの距離はLとなる。これにより、Y方向に沿って伝搬された超音波は、第一壁面21(流体接触面322)と第二壁面22との間で反射を繰り返して流路20内に定在波SWを発生させる。
このような構成の薄膜型の第一超音波素子30では、低電力で強い音圧の超音波を流路20内の流体Sに伝搬させることができる。つまり、第一壁面21を介してバルク型の圧電素子を配置する場合、バルク型の圧電素子を振動させて発生させた超音波を、第一壁面21を介して流体Sに伝搬させることになる。この場合、バルク型の圧電素子と、第一壁面21を構成するベース基板との音響インピーダンスの差、第一壁面21と流体Sとの音響インピーダンスの差により、超音波が反射及び減衰されることで、流体Sに伝搬される超音波の音圧が低下し、より大きい駆動電力が必要となる。これに対して、本実施形態のように、振動部321の振動によって流路20内の流体Sに直接超音波が出力するため、振動部321の音響インピーダンスによらず、流体Sに強い音圧の超音波を伝搬させることができる。
【0018】
なお、
図2に示す構成は、薄膜側の超音波素子の一例であり、
図2の構成に限定されない。例えば、振動膜32が素子基板31の流路20側に設けられる構成としてもよく、この場合、第一壁面21と流体接触面322とをより正確に面一にできる。
また、第一超音波素子30の厚み方向がY方向に沿うものとしたが、例えば、第一超音波素子30が第一壁面21や第二壁面22に直交する凹溝の底面やリッド基板に設けられ、厚み方向がZ方向に沿うものであってもよい。このような構成でも、第一超音波素子30から出力された超音波は、振動部321を中心に放射状に拡散されるため、このうちY方向に向かって進む超音波が、流路20の内壁で反射を繰り返すことで、流路20内に定在波SWを発生させることができる。
【0019】
微粒子検出素子40は、流路20を流れる流体Sに含まれる微粒子Mを検出するためのセンサーである。この微粒子検出素子40は、波を発生させる波源、当該波を受ける受波素子を含んで構成される。本実施形態では、波として超音波を用い、波源は超音波を発生させる超音波送信素子40Aであり、受波素子は当該超音波を受信する超音波受信素子40Bである。
なお、これらの超音波送信素子40A及び超音波受信素子40Bとしては、第一超音波素子30と略同様の構成を用いることができる。すなわち、本実施形態では、超音波送信素子40Aは、第一超音波素子30と略同様、素子基板31に支持される振動膜32と、振動膜32に設けられる圧電素子33と、を備える。
ここで、超音波送信素子40A及び超音波受信素子40Bにおいて、開口部311の開口寸法は、第一超音波素子30とは異なり、第一超音波素子30とは発振周波数が異なっている。また、超音波送信素子40A及び超音波受信素子40Bの開口部311の開口寸法は同一である。
【0020】
このような構成の微粒子検出素子40では、超音波送信素子40Aに所定の駆動電圧を印加することで、超音波送信素子40Aから流体S中に超音波受信素子40Bに向かって超音波が送信される。超音波送信素子40Aから出力される超音波は、第一超音波素子30から出力される超音波とは異なる発振周波数であるため、流体S中に定在波SWは発生しない。
また、超音波送信素子40Aから送信された超音波は、超音波受信素子40Bで受信される。超音波送信素子40Aの開口部311と超音波受信素子40Bの開口部311とは開口寸法が同一であり、同一の共振周波数を有する。したがって、超音波送信素子40Aから送信された超音波が超音波受信素子40Bで受信されると、超音波受信素子40Bの振動部321が大きく振動し、これにより、超音波受信素子40Bの圧電素子33から受信信号を得ることができる。
流体S中に微粒子Mが存在する場合、超音波の伝搬が微粒子Mによって阻害されるため、超音波受信素子40Bで受信される超音波の音圧が低下し、これによって超音波受信素子40Bから出力される受信信号の信号強度が低下する。したがって、本実施形態の微粒子検出素子40では、流体S中に微粒子が存在しない場合の受信信号の信号強度(基準値)を予め測定しておくことで、基準値から信号強度が低下したか否かを測定することで、容易に流体S中の微粒子Mの有無を検出することができる。
【0021】
コントローラー50は、第一超音波素子30に接続された連続波発生回路51と、微粒子検出素子40に接続された検出回路52と、各回路を制御する制御部53とを備えている。
【0022】
連続波発生回路51は、制御部53の制御に基づいて所定周波数の駆動信号を生成し、第一超音波素子30に対して連続的に出力する。なお、連続波発生回路51で形成される駆動信号の周波数は、流体Sに定在波を形成するように設定された周波数である。
【0023】
検出回路52は、微粒子検出素子40とともに、本開示の検出部を構成する。この検出回路52は、バースト波発生回路521、受信回路522、及び判定回路523を備える。バースト波発生回路521は、制御部53からの測定要求に応じて任意周波数の駆動信号を生成し、超音波送信素子40Aに対して出力する。
受信回路522は、例えば、増幅回路や検波回路を含んで構成され、超音波受信素子40Bで超音波を受信した際に出力される受信信号の信号強度を測定する。
判定回路523は、受信回路522により検出された受信信号の信号強度が基準値から低下したか否かを判定し、信号強度が低下した場合に微粒子Mを検出した旨の検出信号を制御部53に出力する。
なお、信号強度の低下量が微小である場合、ノイズ成分の可能性がある。したがって、判定回路523は、受信信号の信号強度が基準値よりも所定値だけ低い値を閾値として、当該閾値以下となった場合に、微粒子Mが検出されたと判定してもよい。
【0024】
制御部53は、各種プログラムや各種データが記憶されるメモリー54と、メモリー54に記憶されたプログラムを実行するプロセッサー55とを含む。
メモリー54には、第一超音波素子30により定在波SWを発生させるための駆動周波数の値などが記憶されている。また、メモリー54には、受信信号の信号強度に対して、微粒子Mの有無を示す強度範囲が記録されていてもよい。
【0025】
プロセッサー55は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、メモリー54に記憶されたプログラムを実行することで、測定制御部551、及び捕捉制御部552として機能する。
測定制御部551は、検出回路52を用いて微粒子検出素子40を制御し、流路20を流れる流体S中に微粒子Mが含まれるか否かを判定する。
捕捉制御部552は、測定制御部551により、微粒子Mが含まれると判定された場合に、微粒子Mの検出タイミングから所定の第一時間経過後に、連続波発生回路51を用いて第一超音波素子30を制御し、流体S中に定在波SWを発生させる。また、微粒子Mにより微粒子Mが検出されなくなったタイミングから少なくとも第一時間が経過した後に第一超音波素子30の駆動を停止する。
【0026】
[流体デバイス10の制御方法]
次に、本実施形態の流体デバイス10の制御方法について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
本実施形態では、流体デバイス10の流路20に流体Sが導入されると、測定制御部551は微粒子検出素子40を駆動させる(ステップS1)。測定制御部551は、流路20の流体Sが導入される間(流体Sが流れている間)、常時微粒子検出素子40を駆動させる。
ここで、微粒子検出素子40における超音波送信素子40Aにより送信する超音波の音圧は、第一超音波素子30で定在波SWを形成する場合に比べて十分に小さい。つまり、定在波SWを用いて微粒子を捕捉する場合では、定在波SWの節の部分に微粒子Mが収束されるように圧力勾配の大きい定在波SWを形成する必要があり、音圧を大きくする必要がある。これに対して、微粒子検出素子40で微粒子Mを検出する場合では、微粒子Mの検出による音圧低下か、ノイズによる誤差成分かを区別できる程度の音圧であればよく、微粒子Mの捕捉に用いるような音圧が不要となる。したがって、微粒子検出素子40を常時駆動させた場合でも、第一超音波素子30を常時駆動させる場合に比べて、省電力化を図れる。
【0028】
そして、測定制御部551は、微粒子検出素子40により流体S中に微粒子Mを検出したか否かを判定する(ステップS2)。
つまり、測定制御部551は、バースト波発生回路521により、超音波送信素子40Aから所定周波数の所定音圧の超音波を流体S中に送信し、超音波受信素子40Bで超音波を受信させる。超音波受信素子40Bで超音波を受信すると、超音波受信素子40Bから受信回路522に受信信号が出力され、受信回路522で受信信号の信号強度が測定される。そして、判定回路523が、受信回路522で測定された信号強度が基準値(または基準値より所定値だけ低い閾値)以下に低下したか否かを判定する。判定回路523によって信号強度が基準値(または閾値)以下に低下したと判定された場合、判定回路523は、微粒子Mが検出された旨を示す検出信号を制御部53に出力する。
ステップS2でNOと判定される場合、つまり、微粒子Mが検出されない場合は、捕捉制御部552は、第一超音波素子30を非駆動のままとし、ステップS2の判定処理を継続する。
【0029】
ステップS2でYESと判定される場合、つまり、微粒子検出素子40によって微粒子Mが検出されて検出回路52から制御部53に検出信号が入力された場合、捕捉制御部552は、検出信号が入力されたタイミング(検出タイミング)から時間をカウントし、第一時間となったか否かを判定する(ステップS3)。
ここで、本実施形態において、第一時間は、微粒子Mが微粒子検出素子40の位置する第二位置20Bから、第一超音波素子30が設けられる第一位置20Aまで移動するのに要する時間である。本実施形態では、微粒子Mのサイズ及び重量が十分に小さいため、微粒子Mの移動速度は流体Sの流速と同一であるとする。また、第一位置20A及び第二位置20Bは既知であり、流路20を流れる流体Sの流速は一定とする。したがって、第一時間は、(第一位置20Aから第二位置20Bまでの距離)/(流速)により求めることができる。
【0030】
ステップS3でNOと判定される場合は、捕捉制御部552は検出タイミングからの経過時間を継続する。なお、ステップS3においてカウントされる時間は、最初に入力された検出信号の入力タイミングからの経過時間である。したがって、複数の微粒子Mが断続的に流路20を流れる場合では、第一時間の経過前に複数の検出信号が入力されるが、捕捉制御部552は、最初に入力された検出信号の入力タイミングからの時間をカウントする。
ステップS3でYESと判定される場合、つまり、検出信号の入力タイミングから第一時間が経過すると、捕捉制御部552は、第一超音波素子30を駆動させて、流路20内に定在波SWを発生させる(ステップS4)。これにより、流路20内を流れる微粒子Mが、定在波SWの節の位置で捕捉される。
【0031】
また、上述したように、本実施形態では、微粒子検出素子40は、流体Sが流れている間、常時駆動されている。流路20内を微粒子Mが順次流される場合、断続的に微粒子Mが検出されるため、一定の間隔で検出信号が出力される。この検出信号が出力されるタイミングが所定の第二時間以内である場合、捕捉制御部552は、第一超音波素子30の駆動を継続させ、流路20内に定在波SWが継続して形成される。なお、本実施形態では、第二時間として、ステップS3で用いる第一時間と同じ時間を設定する。
【0032】
一方、捕捉制御部552は、検出回路52からの検出信号を受信した後、第二時間を超えて次の検出信号が受信されない場合、第一超音波素子30の駆動を停止させる。
つまり、捕捉制御部552は、最後の検出信号から第二時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5でNOと判定される場合(次の検出信号が第二時間以内に入力される場合)、ステップS4を継続、つまり定在波SWを継続して形成する。
ステップS5でYESと判定される場合(次の検出信号が第二時間を超えても得られない場合)、捕捉制御部552は、第一超音波素子30の駆動を停止させる(ステップS6)。
【0033】
この後、流体デバイス10の流路20への流体Sの導入が停止されたか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7でYESと判定される場合は、測定制御部551は、微粒子検出素子40の駆動を停止させる(ステップS8)。
ステップS7でNOと判定される場合は、ステップS2に戻り、微粒子検出素子40を用いた微粒子Mの検出を継続する。
【0034】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の流体デバイス10は、流体が流通する流路20と、流路20に設けられる第一超音波素子30と、流路20の第一超音波素子30よりも-X側(流通方向の上流側)に設けられる微粒子検出素子40と、制御部53と、を備える。第一超音波素子30は、流体Sに超音波を送信することで流路20内の流体SにY方向に沿って定在波SWを発生させる。微粒子検出素子40は、コントローラー50の検出回路52とともに検出部を構成し、流体Sに含まれる微粒子Mを検出し、微粒子Mを検出することで制御部53に検出信号を送信(出力)する。制御部53は、検出信号を受信したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、第一超音波素子30を駆動させて流路20に超音波を送信して定在波SWを発生させる。
【0035】
このような本実施形態では、流路20内を流れる流体Sに微粒子Mが含まれない場合には、第一超音波素子30が駆動されない。これにより、第一超音波素子30の駆動による電力消費を抑制でき、また、第一超音波素子30の不必要な駆動が抑制されることで、第一超音波素子30の劣化を抑制して長寿命化を図ることができる。
【0036】
微粒子検出素子40は、流路20の流通方向(X方向)に沿った第一壁面21に設けられて超音波を発する超音波送信素子40A(波源)と、第一壁面21と対向する第二壁面22に設けられて超音波送信素子40Aから発せられた超音波を受ける超音波受信素子40Bとを備え、超音波受信素子40Bが受ける超音波の強度に基づいて微粒子Mを検出する。つまり、検出回路52は、超音波受信素子40Bで受信した超音波の音圧が基準値よりも低下した場合、或いは、ノイズ成分を考慮して基準値から所定値だけ低い値を閾値とし閾値よりも低下した場合に微粒子Mを検出した旨の検出信号を制御部53に出力する。
流路20を流れる流体Sに含まれる微粒子Mを、カメラ等の撮像手段を用いて画像で検出する場合は、非常に高精細なカメラが必要となり、コストが高くなる。これに対して、超音波等の波の強度の変化に基づいて微粒子Mを検出する構成では、上記のような高精細な画像を撮像するカメラ等も不要であり、簡素な構成で精度よく微粒子Mを検出することができる。
【0037】
また、本実施形態では、制御部53の測定制御部551は、微粒子検出素子40から継続して超音波を出力し、捕捉制御部552は、検出回路52からの検出信号が入力された後、第二時間を超えて次の検出信号が入力されない場合に、第一超音波素子30の駆動を停止する。
これにより、流路20内に流れる流体Sに微粒子Mが含まれなくなると、第一超音波素子30の駆動が停止されることで、第一超音波素子30の駆動による電力消費を抑制できる。また、第一超音波素子30の不必要な駆動がさらに抑制されることで、第一超音波素子30の長寿命化を図ることができる。すなわち、本実施形態では、流路20に流れる流体Sに微粒子Mが含まれる場合に、第一超音波素子30を駆動させて微粒子Mを捕捉させ、微粒子が含まれない場合には、第一超音波素子30の駆動を停止させることができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態の流体デバイスについて説明する。
上述した第一実施形態では、流路20を流れる流体Sの流速が一定であるとした。
これに対して、第二実施形態では、流体Sの流速が変化する場合であっても適切なタイミングで第一超音波素子30の駆動及び非駆動を制御する構成を説明する。
【0039】
図4は、第二実施形態の流体デバイス10Aの概略構成を模式的に示す図である。なお、以降の説明において、既に説明した構成には同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
流体デバイス10Aは、第一実施形態と同様、流路20を有し、当該流路20の第一位置20Aに第一超音波素子30が設けられ、第二位置20Bに微粒子検出素子40が設けられている。
また、本実施形態では、さらに、第一位置20Aと第二位置20Bとの間の第三位置20Cに、流路20を流れる流体Sの流速を測定する流速測定部60が設けられている。
【0040】
流速測定部60としては、流路20内の流体Sの流速を測定可能な装置であれば特に限定されない。例えば、流速測定部60としては、超音波式流速計、電磁式流速計、熱式流速計等の各種流速計を選択可能である。
超音波式流速計では、流体Sの流通方向(X方向)に対して傾斜する方向に沿って、流路20を挟んで、一対の超音波送受信素子(第一の超音波送受信素子、第二の超音波送受信素子)を対向配置する。そして、第一の超音波送受信素子から第二の超音波送受信素子に超音波を送信して超音波が受信されるまでの第一伝搬時間と、第二の超音波送受信素子から第一の超音波送受信素子に超音波を送信して超音波が受信されるまでの第二伝搬時間と、を測定し、これらの第一伝搬時間と第二伝搬時間とに基づいて流速を算出する。電磁式流速計は、流路20内に水などの導電性流体を流す場合に利用でき、流路20に形成した磁場に導電性の流体Sが流れることで発生する起電力に基づいて流速を測定する。熱式流速計は、流路20が流れる流体Sが熱源から奪った熱量を計測することで、流速を測定する。
【0041】
コントローラー50Aは、第一実施形態と同様、連続波発生回路51、検出回路52、及び制御部53を備える。
また、制御部53のプロセッサー55は、測定制御部551、捕捉制御部552に加え、さらに、時間算出部553としても機能する。
この時間算出部553は、流速測定部60によって測定される流速に基づいて、流体Sが、流路20の第二位置20Bから第一位置20Aまでを流れるまでに要する第一時間及び第二時間を算出する。
そして、本実施形態の捕捉制御部552は、時間算出部553により算出された第一時間及び第二時間に基づいて、第一超音波素子30の駆動及び非駆動を制御する。
【0042】
本実施形態では、
図3に示す第一実施形態と同様の方法により流体デバイス10Aを制御する。
この際、本実施形態では、時間算出部553は、流速測定部60により測定された流速に基づいて継続的に第一時間及び第二時間を算出してメモリー54に記録(更新)する。なお、第一時間としては、上記第一実施形態と同様、第一位置20A及び第二位置20Bまでの距離を流速で割った時間(流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまで流れるために要する時間)が例示できる。また、第二時間としては、第一実施形態と同様、第一時間と同じ時間であってもよく、第一時間に所定時間を加えた時間であってもよい。
そして、ステップS3において、捕捉制御部552は、検出回路52からの検出信号が入力(受信)されると、メモリー54に記録された第一時間を読み出し、検出信号の入力タイミングから第一時間が経過したか否かを判定する。
また、ステップS5においても、捕捉制御部552は、メモリー54に記録される第二時間を読み出し、最後に入力された検出信号の入力タイミングからの経過時間が、第二時間を超えたか否かを判定する。
【0043】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の流体デバイス10Aでは、流路20を流れる流体Sの流速を測定する流速測定部60をさらに備える。そして、制御部53は、流速測定部60が測定した流速に基づいて第一時間を算出する。
これにより、流路20を流れる流体Sの流速が変動する場合であっても、微粒子Mが第二位置20Bから第一位置20Aまで流れる時間をより正確に算出することができる。このため、微粒子Mが検出されてから、定在波SWを発生させるまでの第一時間を適正に設定することができる。
【0044】
[変形例]
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、および各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0045】
(変形例1)
上記実施形態において、検出部を構成する微粒子検出素子40が、第一壁面21に設けられる超音波送信素子40Aと、第二壁面22に設けられる超音波受信素子40Bとにより構成される例を示すが、これに限定されない。例えば、第一壁面21に超音波送信素子40A及び超音波受信素子40Bが設けられ、超音波送信素子40Aから出力されて第二壁面22で反射された超音波を超音波受信素子40Bで受信する構成としてもよい。また、この場合、1つの超音波送受信素子を用い、当該超音波送受信素子で超音波の送信及び受信を切り替えて用いてもよい。
【0046】
(変形例2)
また、上記実施形態では、検出部を構成する微粒子検出素子40として、波源として超音波を送信する超音波送信素子40Aを用い、受信素子として超音波を受信する超音波受信素子40Bを用いる例を示したがこれに限定されない。
例えば、波として音波を用いるものであってもよい。また、波源と光源を用い、受波素子として受光素子を用いてもよく、この場合、光源から発せさせる光を、受光素子で受光し、受光量の変化に基づいて微粒子Mの有無を検出してもよい。
【0047】
(変形例3)
第二実施形態において、第一位置20A及び第二位置20Bの間に流速測定部60を設ける構成としたが、これに限定されない。
例えば、流体デバイス10の流路20を流れる流体Sの流速が場所によらず一様な構成であれば、第二位置20Bの上流側に流速測定部60を設けてもよい。
また、第一位置20Aに設けられた第一超音波素子30や、第二位置20Bに設けられた超音波送信素子40A及び超音波受信素子40Bとして、一部に流速測定用の超音波素子(振動部321、圧電素子33)を設ける構成としてもよい。
【0048】
(変形例4)
上記実施形態において、第一時間として、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまでを流れる時間としたが、これに限定されない。
例えば、第一時間として、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまでを流れる時間よりも所定時間短い時間を設定してもよい。微粒子Mが第一位置20Aに到達した時点で定在波SWが形成された場合、微粒子Mが定在波SWの節に捕捉される前に流体Sの流れに乗って下流側に移動する場合がある。これに対して、上記のように、第一時間として、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまでを流れる時間よりも所定時間短い時間を設定することで、微粒子Mが第一位置20Aに到達する前に定在波SWを形成でき、微粒子Mが定在波SWの節で捕捉されずに流れてしまう不都合を抑制できる。
【0049】
また、この場合、ステップS5において用いる第二時間は、第一時間に対して所定のマージン時間を加えた時間としてもよい。例えば、第二時間として、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまで流れるのに要する時間であってもよく、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまで流れるのに要する時間に対してさらに所定時間を加えた時間であってもよい。
つまり、上記のように、第一時間として、第二位置20Bから第一位置20Aまでを流れる時間よりも短い時間を設定し、第二時間を第一時間と同じにした場合、微粒子Mが捕捉されずに、希釈用流路24に流れる場合がある。最後の検出信号が入力されて第一時間経過後に第一超音波素子30を停止させると、微粒子Mが第一位置20Aに到達していない場合があるためである。これに対して、上記のように、第一時間に対して、所定のマージン時間を加えた第二時間の経過後に第一超音波素子30の駆動を停止させる構成とすることで、最後に検出された微粒子Mが定在波SWの節で捕捉されるように制御できる。また、第二時間として、流体Sが第二位置20Bから第一位置20Aまで流れるのに要する時間に対してさらに所定時間を加えた時間を設定する場合では、微粒子Mのサイズや重量が大きく、流速よりも遅い速度で微粒子Mが流れる場合であっても定在波SWの節で微粒子Mを捕捉することができる。つまり、流体デバイス10によって捕捉したい微粒子Mの最大サイズや重量と、流速とに基づいて第二時間を設定してもよい。
【0050】
(変形例5)
上記実施形態では、第一超音波素子30が設けられる第一位置20Aの上流側となる第二位置20Bに微粒子検出素子40を設ける構成を例示したが、さらに、希釈用流路24に対して、第二の微粒子検出素子を設ける構成としてもよい。
第一超音波素子30を駆動した直後に、第二の微粒子検出素子により微粒子Mが検出され、その後、第二の微粒子検出素子により検出される微粒子Mが減少した場合、第一超音波素子30の駆動タイミングが遅いことを意味する。この場合、制御部53は、メモリー54に記録されている第一時間を修正して、より短い第一時間を設定することができる。これにより、より確実に微粒子Mを捕捉することができる。
また、第一超音波素子30の駆動を停止した直後に、第二の微粒子検出素子により微粒子Mが検出される場合、第一超音波素子30の停止タイミングが早いことを意味する。この場合、ステップS5において、捕捉制御部552は、最後の検出信号の入力から、第二時間に対して所定のマージン時間を加算した時間が経過したか否かを判定してもよい。
このような第二の微粒子検出素子としては、常時駆動させる必要がなく、第一超音波素子30の駆動と同時、または、第一超音波素子30の駆動から、第一位置20Aから第二の微粒子検出素子までの距離を流体Sが流れる時間だけ経過後に駆動させればよい。また、第一超音波素子30の停止から所定時間経過後、例えば、第一位置20Aから第二の微粒子検出素子までの距離を流体Sが流れる時間、或いは当該時間に所定のマージン時間を加えた時間の経過後に、第二の微粒子検出素子の駆動を停止させればよい。したがって、第二の微粒子検出素子を設ける場合でも、流体デバイス10の駆動に係る消費電力を抑えることができる。
【0051】
(変形例6)
さらに、濃縮用流路23に、第三の微粒子検出素子を設ける構成としてもよい。
この場合、捕捉制御部552は、ステップS5からステップS6において、第二時間を超えても次の検出信号が得られず、かつ、第三の微粒子検出素子により微粒子Mが検出されなくなったタイミングで、第一超音波素子30の駆動を停止させるようにしてもよい。これにより、流路20内を流れる微粒子Mが濃縮用流路23に流れた後に第一超音波素子30が停止されることになり、微粒子Mの希釈用流路24への流出を抑制できる。
【0052】
[本開示のまとめ]
本開示に係る第一態様の流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送受信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記微粒子を検出することで前記制御部に検出信号を送信し、前記制御部は、前記検出信号を受信したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる。
【0053】
これにより、流路内を流れる流体に微粒子が含まれない場合には、超音波送信部が駆動されない。これにより、超音波送信部の駆動による電力消費を抑制でき、また、超音波送信部の不必要な駆動が抑制されることで、超音波送信部の劣化を抑制して長寿命化を図ることができる。
【0054】
第一態様の流体デバイスにおいて、前記流路を流れる前記流体の流速を測定する流速測定部をさらに備え、前記制御部は、前記流速測定部が測定した流速に基づいて前記第一時間を算出することが好ましい。
これにより、流路を流れる流体の流速に基づいて、検出部により微粒子の有無を検出する位置から、超音波送受部により形成される定在波によって微粒子が捕捉される位置までを流体が流れる時間を算出できる。微粒子の移動する速度を流速と同一として、算出された時間を第一時間として設定してもよく、算出された時間に対して所定のマージン時間を加えて第一時間として設定してもよい。これにより、定在波によって適切に微粒子を捕捉する時間を設定することができ、超音波送信部の不要な駆動を抑制して省電力化及び長寿命化を図りつつ、流体から微粒子を適切に分離することができる。
【0055】
第一態様の流体デバイスにおいて、前記検出部は、前記流路を流れる前記流体に対して波を出力する波源と、前記波源から発せられた前記波を受ける受波素子とを備え、前記受波素子が受ける波の強度に基づいて微粒子を検出する。
これにより、高精細な画像を撮像する撮像手段等を用いずに、簡素な構成で精度よく微粒子を検出することができる。
【0056】
本開示の第二態様の流体デバイスの制御方法は、流体が流通する流路と、前記流路に設けられて、前記流体に超音波を送信することで、前記流路内の前記流体に前記流体の流通方向に直交する第1方向に沿って定在波を発生させる超音波送信部と、前記流路の前記超音波送受信部よりも前記流通方向の上流側に設けられ、前記流体に含まれる微粒子を検出する検出部と、を備える流体デバイスの制御方法であって、前記検出部で前記微粒子を検出したタイミングから所定の第一時間が経過した後に、前記超音波送信部から前記流路に前記超音波を送信して前記定在波を発生させる。
これにより、上記第一態様と同様に、流路内を流れる流体に微粒子が含まれない場合には、超音波送信部が駆動されず、超音波送信部の駆動による電力消費を抑制でき、また、超音波送信部の不必要な駆動が抑制されることで、超音波送信部の劣化を抑制して長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10,10A…流体デバイス、20…流路、20A…第一位置、20B…第二位置、20C…第三位置、21…第一壁面、21A…素子設置部、22…第二壁面、23…濃縮用流路、24…希釈用流路、30…第一超音波素子(超音波送信部)、40…微粒子検出素子(検出部)、40A…超音波送信素子(波源)、40B…超音波受信素子(受波素子)、50,50A…コントローラー、51…連続波発生回路、52…検出回路(検出部)、53…制御部、54…メモリー、55…プロセッサー、60…流速測定部、521…バースト波発生回路、522…受信回路、523…判定回路、551…測定制御部、552…捕捉制御部、553…時間算出部、M…微粒子、S…流体。