(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049965
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】制御システム、制御装置、発信装置、発信システムおよび鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61L 23/06 20060101AFI20240403BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20240403BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240403BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B61L23/06
G08B21/24
G08B21/02
B61D37/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156505
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】新山 博幸
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA53
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA10
5C086CA11
5C086CA21
5C086CA25
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】騒音を抑制しつつ作業者に鉄道車両の接近を通知することができ、作業者の作業効率、安全性をより向上することができる制御システム、制御装置、発信装置、発信システムおよび鉄道車両を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る制御システムは、発信機と、第1の検知部と、制御装置と、情報提示装置とを具備する。発信機は鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波、または光を用いた発進信号を発信する。第1の検知部は鉄道車両を発進させる所定の発進手順の有無を検知する。制御装置は第1の検知部から発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する。情報提示装置は発進信号の有無を視覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに提示する情報提示部と、発進信号を受信し、情報提示部を駆動させる第2の駆動信号を生成する情報生成部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する発信機と、
停止している前記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検知する第1の検知部と、
前記第1の検知部の出力に基づいて前記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する制御装置と、
前記発進信号の受信の有無を視覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに提示する情報提示部と、前記発進信号を受信する受信部と、前記発進信号に基づいて前記情報提示部を駆動させる第2の駆動信号を生成する情報生成部と、を有する情報提示装置と
を具備する制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記第1の検知部は、逆転器による前記鉄道車両の進行方向の方向決めまたは前記鉄道車両のブレーキ解除の少なくとも一つを検知し、
前記制御装置は、前記第1の検知部が検知したときに、前記第1の駆動信号を生成する
制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記情報提示部は、前記発進信号の受信の有無を光によって前記ユーザに提示する光源を有する
制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記発進信号は、前記鉄道車両の前進方向のうち特定の領域の位置情報を含み、
前記情報提示装置は、前記ユーザの位置情報を取得する取得部と、前記受信部によって受信した前記特定の領域の位置情報と前記取得部によって取得した前記ユーザの位置情報とに基づいて、前記特定の領域内に前記ユーザが存在するかどうかを判定する位置判定部とをさらに有し、
前記情報生成部は、前記特定の領域内に前記ユーザが存在する場合、前記第2の駆動信号を生成する
制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記制御システムは、前記鉄道車両の走行時間、前記鉄道車両の走行距離、前記鉄道車両の走行速度、の少なくとも一つを検知する第2の検知部をさらに具備し、
前記制御装置は、前記第2の検知部の検知結果の値が所定以上の場合、前記第1の駆動信号の生成を中止する
制御システム。
【請求項6】
停止している鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検出する第1の検知部の出力に基づいて、前記鉄道車両の前進方向に向けて超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部
を具備する制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置を備える鉄道車両。
【請求項8】
鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する発信機と、
停止している前記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検出する第1の検知部の出力に基づいて前記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する制御装置と
を具備する発信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発信装置を備える鉄道車両。
【請求項10】
鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する発信機と、
停止している前記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検出する第1の検知部と、
前記第1の検知部の出力に基づいて前記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する制御装置と
を具備する発信システム。
【請求項11】
請求項10に記載の発信システムを備える鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両が接近することを通知する制御システム、制御装置、発信装置、発信システムおよび鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が接近することを警笛等の音で通知し、線路工事作業者等に対してその領域から退避を促すことについて記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄道車両の車両基地などで鉄道車両が動き出す際に作業をしている作業者に対して危険を知らせるために警笛などで注意喚起を促す場合、音量が大きいと近隣の住民にとって騒音となるおそれがある。また警笛による注意喚起の場合、周りの作業音で作業者が気づかないおそれや運転手がその作業者を見落とすといったおそれがあった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、騒音を抑制しつつ作業者に鉄道車両の接近を通知することができ、作業者の作業効率、安全性をより向上することができる制御システム、制御装置、発信装置、発信システムおよび鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る制御システムは、発信機と、第1の検知部と、制御装置と、情報提示装置とを具備する。
上記発信機は、鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する。
上記第1の検知部は、停止している上記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検知する。
上記制御装置は、上記第1の検知部の出力に基づいて上記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する。
上記情報提示装置は、上記発進信号の受信の有無を視覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに提示する情報提示部と、上記発進信号を受信する受信部と、上記発進信号に基づいて上記情報提示部を駆動させる第2の駆動信号を生成する情報生成部と、を有する。
【0007】
上記制御システムにおいて、第1の検知部の出力に基づいて、発信機が超音波、電波または光を用いた発進信号を発信し、発進信号の受信の有無を視覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに提示することができる。これにより、作業者に鉄道車両の接近に関して注意(退避)を促すときに騒音を抑制することができる。
【0008】
上記第1の検知部は、逆転器による上記鉄道車両の進行方向の方向決めまたは上記鉄道車両のブレーキ解除の少なくとも一つを検知してもよい。その場合、上記制御装置は、上記第1の検知部が検知したときに、上記第1の駆動信号を生成する。
【0009】
上記発進信号は、上記鉄道車両の前進方向のうち特定の領域の位置情報を含み、上記情報提示装置は、上記ユーザの位置情報を取得する取得部と、上記受信部によって受信した上記特定の領域の位置情報と上記取得部によって取得した上記ユーザの位置情報とに基づいて、上記特定の領域内に上記ユーザが存在するかどうかを判定する位置判定部とをさらに有してもよい。その場合、上記情報生成部は、上記特定の領域内に上記ユーザが存在する場合、上記第2の駆動信号を生成してもよい。
【0010】
上記制御システムは、上記鉄道車両の走行時間、上記鉄道車両の走行距離、上記鉄道車両の走行速度、の少なくとも一つを検知する第2の検知部をさらに具備してもよい。その場合、上記制御装置は、上記第2の検知部の検知結果の値が所定以上の場合、上記第1の駆動信号の生成を中止する。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る制御装置は、停止している鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検出する第1の検知部の出力に基づいて、上記鉄道車両の前進方向に向けて超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を備える。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る鉄道車両は、上記制御装置を備える。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る発信装置は、発信機と、制御装置とを具備する。
上記発信機は、鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する。
上記制御装置は、停止している上記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検知する第1の検知部の出力に基づいて上記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る鉄道車両は、上記発信装置を備える。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る発信システムは、発信機と、第1の検知部と、制御装置とを具備する。
上記発信機は、鉄道車両の前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する。
上記第1の検知部は、停止している上記鉄道車両を発進させるための所定の発進手順の有無を検知する。
上記制御装置は、上記第1の検知部の出力に基づいて上記発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する信号生成部を有する。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る鉄道車両は、上記発信システムを備える。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、騒音を抑制しつつ作業者に車両の接近を通知することができ、作業者の作業効率、安全性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態における制御システムのブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における制御システムの使用例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における制御システムのフローチャートである。
【
図4】変形例2における制御システムのブロック図である。
【
図5】第2の実施形態における制御システムのブロック図である。
【
図6】第3の実施形態に係る制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における制御システム1のブロック図であり、
図2は、制御システム1の使用例を示す図である。
【0020】
<第1の実施形態>
図1に示すように制御システム1は、発信システム200と、情報提示装置30とを備える。発信システム200は、第1の検知部40と、発信装置100とを備え、発信装置100は、制御装置10と、発信機20と、を有する。
【0021】
(第1の検知部)
第1の検知部40は、鉄道車両Tに設けられており、停止している鉄道車両Tを発進させるための所定の発進手順の有無を検知する。第1の検知部40は、鉄道車両Tの状態を検知するための各種センサであり、各センサからのデータを制御装置10に出力する。第1の検知部40が有する各種センサの種類や数は、特に限られない。
【0022】
各種センサは、例えば、速度センサ、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、や、逆転器ハンドル、ブレーキハンドル、マスコンの操作ハンドルなどの操作ユニッT1のハンドル位置を認識するセンサなどである。
【0023】
ここで所定の発進手順とは、例えば逆転器T11による鉄道車両Tの進行方向の方向決め、鉄道車両Tのブレーキの解除、鉄道車両Tに力行指令を出すマスコンT13の操作である。
【0024】
逆転器T11による鉄道車両Tの進行方向の方向決めの第1の検知部40による検知について説明する。ここで逆転器T11とは、例えばハンドル操作により、前と後ろと中立との状態をとることで接点が開閉して鉄道車両Tの電動機に電流を供給する向きを変化(逆転)させる機器である。ハンドルを前にするとは、鉄道車両Tの長さ方向のうち、例えば
図2における進行方向側に倒すことであり、進行方向側に進む設定である。またハンドルを後ろにするとは、
図2における進行方向とは反対側に倒すことであり、進行方向とは反対方向に進む設定である。またハンドルを中立にするとは、上記前と上記後ろの中間に位置し、鉄道車両Tが前後ともに動かない設定(ニュートラル状態)である。つまり、第1の検知部40は、例えば上記電動機の電気の流れやハンドルの位置を検知することで、逆転器T11による鉄道車両Tの進行方向の方向決めを検知することができる。
【0025】
鉄道車両Tのブレーキ解除の第1の検知部40による検知について説明する。ここでブレーキT12とは、例えば空気ブレーキであり、ハンドル操作により、圧縮した空気をブレーキ装置(シリンダ)に送りブレーキパッドやディスクによって車輪の回転を抑えて鉄道車両Tを停止させる機器である。つまり、第1の検知部40は、例えばシリンダ内の空気圧を検知することで、鉄道車両Tのブレーキ解除を検知することができる。
【0026】
鉄道車両に力行指令を出すマスコンT13の操作(ノッチを入れる)の第1の検知部40による検知について説明する。ここでマスコンT13とは、例えば有接点マスコンの場合、ハンドル操作によりカムを回転させることで接点のオンオフを行い、電気信号として力行を行う鉄道車両Tの制御装置に力行に関する情報を送信する。つまり、第1の検知部40は、例えばカムの回転や接点のオンオフ、電気信号等を検知することで、第1の検知部40による鉄道車両Tに力行指令を出すマスコンT13の操作を検知することができる。もちろん、有接点マスコンに限らず、例えば無接点マスコンであってもよく、この場合、ノッチやハンドルの角度を読み取るエンコーダが出力する電気信号を検知することでマスコンT13の操作を検知することができる。
【0027】
本実施形態において第1の検知部40は、上述した3つの例に限られず、例えば鉄道車両Tの電源を入れたことを検知してもよい。また第1の検知部40は、上述した3つの例の一つのみを検知することに限られない。例えば逆転器T11による方向決めの操作とブレーキ解除の操作との両方の操作が行われたにより所定の発進手順があったと検知してもよい。
【0028】
ここで停止している鉄道車両Tとは、鉄道車両を収容するための車庫(または車両基地)で停止している鉄道車両のことである。本実施形態において鉄道車両Tは、その車庫で停止している状態から発進する際(これから発進しようとしている(逆転器T11による方向決めまたはブレーキ解除をした状態)または発進した状態(ノッチを入れた状態))の本発明の動作について説明する。
【0029】
(制御装置)
図1、2に示すように制御装置10は、鉄道車両Tに設けられており、CPU(Central Processing Unit)等により構成され、第1の取得部11と、信号判定部12と、信号生成部13と、第1の記憶部14と、を有する。
【0030】
第1の取得部11は、第1の検知部40から上述した発進手順の有無に関する情報を取得する。
【0031】
信号判定部12は、取得した発進手順の有無に関する情報と後述する第1の記憶部14に記憶された発進手順の有無に関する情報とに基づいて、所定の発進手順があったかどうかを判定する。つまり、信号判定部12は、第1の取得部11によって取得した第1の検知部40の出力値と、第1の記憶部14に記憶された所定の発進手順があった際の第1の検知部40の出力値とを比較して、一致した場合、所定の発進手順があったと判定する。
【0032】
信号生成部13は、信号判定部12の判定結果に基づいて、超音波、電波または光を用いた発信機20(後述)を駆動させる第1の駆動信号を生成する。信号生成部13は、信号判定部12が所定の発進手順があったと判定した場合、第1の駆動信号を生成する。
【0033】
ここで電波を用いた情報発信について説明する。信号生成部13は、BluetoothLE(Low Energy)の規格に従い、アンテナから発進信号を発信させる第1の駆動信号を生成する。BluetoothLE(Low Energy)を用いたデバイスとして例えばビーコンが挙げられる。
【0034】
次に光を用いた(光通信技術を用いた)情報発信について説明する。信号生成部13は、光ファイバーを介して送信器に光信号を送信させる第1の駆動信号を生成する。
【0035】
次に超音波を用いた情報発信について説明する。信号生成部13は、音響通信を行うための超音波をスピーカ23に発信させる第1の駆動信号を生成する。本実施形態では、第1の駆動信号は、超音波帯域の音響信号であり、第1の記憶部14に記憶された発信機20を駆動させる情報(コード)を変調し、超音波帯域(高い周波数帯域側)へシフトさせたものである。ここで超音波帯域とは人の耳に聞かせることを目的としない周波数であり例えば18kHz以上であるが、もちろんこれに限られない。
【0036】
ここで、信号生成部13の第1の駆動信号を生成するとは、第1の駆動信号を生成するだけでなく、生成した第1の駆動信号を発信機20に出力することも含む。信号生成部13は、後述するように発信機20が複数ある場合、複数すべての発信機20に出力してもよいし、第1の検知部40の出力に基づいて、前進方向する方向の発信機20や発信させたい発信機20に対してのみ第1の駆動信号を生成してもよい。
【0037】
第1の記憶部14は、制御装置10の例えば信号判定部12や信号生成部13の各種機能を実行させるプログラムや各種パラメータに関する情報を記憶する。例えば所定の発進手順があった際の第1の検知部40の出力値(参考値)や発信機20を駆動させる際の超音波、電波、光に関するデータなどが記憶される。超音波、電波、光に関するデータとは、発信機20によって出力される様々な超音波、電波、光の種類(振幅や周波数、出力時間などが異なるもの)などを記憶したものである。
【0038】
(発信機)
発信機20は、鉄道車両Tに設けられており、鉄道車両Tの前進方向に向けて、超音波、電波または光を用いた発進信号を発信する。本実施形態において発信機20は、超音波を用いた発進信号を発信するがもちろんこれに限られず、電波または光を用いてもよい。本実施形態において発信機20は、第1の受信部21と、信号処理部22と、スピーカ23とを有する。
【0039】
第1の受信部11は、上記信号生成部13によって生成された第1の駆動信号を受信する。
【0040】
信号処理部22は、D/A変換処理と、増幅処理とを実行する。つまり、信号処理部22は、受信したデジタル信号である第1の駆動信号をD/A変換処理によってアナログ信号に変換する。そして、変換されたアナログ信号を増幅処理(アンプ)によって増幅する。
【0041】
スピーカ23は、アンプによって増幅されたアナログ信号に基づく音(発進信号)を出力する。本実施形態では、停止している鉄道車両Tは作業者が作業している特定の領域Wに向けて発信しており、鉄道車両Tと特定の領域Wとの距離は、数十メートルであるが、これに限らず、数百メートルや数メートルであってもよい。
【0042】
図2に示すように発信機20は、鉄道車両Tの進行方向に対して前後に2つ設けられている。これにより、鉄道車両Tの折り返し運転にも対応することができる。もちろん発信機20の設置個所はこれに限らず、側面や床下に向けて発信できるように設けられてもよい。これにより、様々な場所にいる作業者に発信することができる。つまり、発信機20の発信方向は、鉄道車両Tの前進方向には限られない。
【0043】
上述したように信号生成部13が複数すべての発信機20に対して第1の駆動信号を生成した場合、信号処理部22は、第1の駆動信号に基づいて、前進方向する方向の発信機20や発信させたい発信機20のみが発進信号を発信するように制御してもよい。
【0044】
(情報提示装置)
情報提示装置30は、端末装置300と、情報提示装置33とを有する。端末装置300は、第2の受信部31と、情報生成部32と、第2の記憶部33とを有する。
【0045】
端末装置300は、作業者(ユーザ)に携帯され、例えば、作業者により把持された状態で携帯されたり、ポケットやカバン等の中に入れられた状態で携帯されたりする。本実施形態において端末装置300は、例えばスマートフォンである。
【0046】
第2の受信部31は、スピーカ23から発信された発進信号を受信するマイクである。もちろん発進信号が電波の場合、第2の受信部31は、アンテナであり、発進信号が光の場合、第2の受信部31は、光を受信する受信器である。
【0047】
情報生成部32は、発進信号に基づいて後述する情報提示部34を駆動させる第2の駆動信号を生成する。情報生成部32は、変調された波形から所定の発進手順があったことに関する情報を取り出す復調処理を行う。そして復調処理されて取り出した情報に基づいて第2の駆動信号を生成する。
【0048】
ここで、情報生成部32の第2の駆動信号を生成するとは、第2の駆動信号を生成するだけでなく、生成した第2の駆動信号を情報提示部34に出力することも含む。情報生成部32は、例えばBluetooth(登録商標)により情報提示部34に第2の駆動信号を出力する。
【0049】
第2の記憶部33は、端末装置300の各種機能を実行させるプログラムや各種パラメータに関する情報を記憶する。例えば受信した波形から復調処理を行うためのプログラムや、その復調処理されて取り出した情報から第2の駆動信号を生成するためのプログラムである。
【0050】
情報提示部34は、発進信号の受信の有無を視覚または触覚の少なくとも一つを介して作業者に提示する。情報提示部34は、受信した第2の駆動信号に基づいて、所定の動作が実行される。本実施形態において情報提示部34は、発進信号の受信の有無を光によって作業者に提示する光源Lであり、
図2に示すように光源Lは作業着Cに複数装着されている。
【0051】
光源Lは、特に限られないが、例えばLEDである。光の色も特に限られないが、例えば赤色である。光の光らせ方は、点灯に限らず、点滅であってもよい。光源Lの位置、数も特に限られず、作業者が気づきやすいように適宜設定可能である。
【0052】
本実施形態では光を用いて作業者に発進信号の受信の有無を知らせたが、もちろんこれに限られない。例えば、振動(例えば、バイブレーターによる)や熱(例えば、ペルチェ素子による)、電気刺激(例えば、電気刺激装置による)を提示する機器を用いて知らせてもよい。これらは、例えば、作業者の手足やヘルメットなど刺激が伝わる箇所に設けられる。
【0053】
これにより、例えば、昼間の作業時など光による提示が見えにくい場合でも作業者に発進信号の受信があったことを知らせることができる。また作業者は作業者にしか音が聞こえないようなヘッドホン等の装置によって音を発生させてもよい。これにより、作業している場所の周囲に対して騒音が伝わることを抑制することができる。また端末装置300を用いる場合、作業者が所持しているその端末装置300に専用のアプリをインストールするだけでよいため、情報提示装置30のコストを抑えることができる。
【0054】
また情報提示部34は、作業者の目につきやすい位置に設けられた表示板に発進信号の受信の有無を提示してもよい。この場合、表示板には「注意」などの文字や、赤色や黄色などの光を作業者に提示してもよい。
【0055】
情報提示部34は、第2の受信部31と、情報生成部32と、第2の記憶部33とを有する端末装置300を介して情報提示部34を駆動させていたが、これに限られない。例えば、作業着Cに第2の受信部31と、情報生成部32と、第2の記憶部33とを含む制御装置が備え付けられていてもよい。この場合、作業者が端末装置300を忘れてしまい、発進信号が受信できないということを防ぐことができる。
【0056】
また情報提示装置30は、端末装置300に情報提示部34の機能を付与してもよい。つまり、端末装置300自体が光ったり、振動してユーザに発進信号の受信の有無を提示したりしてもよい。
【0057】
続いて、本実施形態における制御システム1の動作について説明する。
図3は、本実施形態における制御システム1のフローチャートである。以下、鉄道車両Tは、車庫で停止しており、作業者は、特定の領域Wで作業しているものとする。
【0058】
まず、第1の検知部40は、停止している鉄道車両Tを発進させるための所定の発進手順の有無を検知する(ステップ101)。ここで第1の検知部40は、本実施形態では鉄道車両Tに力行指令を出すマスコンの操作を検知する。
【0059】
次に、信号判定部12は、第1の検知部40の出力に基づいて、マスコンの操作があったかどうかを判定する(ステップ102)。
【0060】
次に、信号生成部13は、信号判定部12の判定結果に基づいて、発信機20を駆動させる第1の駆動信号を生成する(ステップ103)。
【0061】
次に、第1の駆動信号に基づいて、発信機20は、鉄道車両Tの前進方向に向けて、超音波を用いた発進信号を発信する(ステップ104)。
【0062】
次に、情報生成部32は、受信した発進信号に基づいて情報提示部34を駆動させる第2の駆動信号を生成する(ステップ105)。
【0063】
その後、情報提示部34は、第2の駆動信号に基づいて、発進信号の受信の有無を光によって作業者に提示する(ステップ106)。
【0064】
これにより、鉄道車両Tが発進すること警告する警笛を鳴らす必要がなくなるため、鉄道車両Tの接近を作業者に通知するときの騒音を抑制することができる。
【0065】
また従来のように警笛の場合、作業音などにより聞き取りづらい場合や警笛の音量が大きすぎると作業者が驚いてその場から退避することが遅れるといった場合があるが、本実施形態のように例えば光を発する場合、作業者は鉄道車両Tの接近を周りの作業音に関係なく素早く知ることができ、かつ驚くことなく迅速にその場から退避できるため、作業者の安全性をより向上させることができる。
【0066】
さらに本実施形態では発進信号が超音波である。超音波は、電波に比べ回折しにくいため、特定の領域にいる作業者に対して発進信号を発信することができる。これにより、鉄道車両Tの発進情報を提示したい作業者に対してのみ発進信号を発信することが可能となり、作業者の作業効率が向上する。
【0067】
また所定の発進手順は上述したようにマスコンT13の操作の他に、第1の検知部40は、逆転器T11による方向決めの操作とブレーキ解除の操作との両方の操作が行われたにより所定の発進手順があったと検知してもよい。つまり、制御装置10は、鉄道車両Tの発進前に発進信号を発信機20で発信することが可能となり、作業者に早い段階(鉄道車両Tが発進する前)で発進信号の受信の有無を知らせることができるため、作業者の作業時の安全性をより確保することができる。
【0068】
また発信システム200の発信機20の発信時間に関しては、特に限られず、例えば所定の発進手順があったと検知してから所定時間(例えば、10秒間)経過時に発信することを中止してもよい。
【0069】
また発信機20によって鉄道車両固有の識別信号を含んだ発進信号を発信させてもよい。つまり、信号生成部13は、第1の駆動信号に鉄道車両固有の識別信号を含んだ第1の駆動信号を生成し、上記発進信号を発信機20に発信させる。そして発進信号を発進させたい領域で作業する作業者の端末装置300の第2の記憶部33に上記固有の識別信号に関する情報を記憶させる。これにより、その固有の識別信号を含む発進信号が発信された場合、その固有の識別信号に関する情報を記憶している端末装置300を有する作業者に対してのみ発進信号の受信の有無を光等で提示することができるため、作業者の作業効率を向上させることができる(退避する必要のない作業者まで光等で提示しなくてすむため)。
【0070】
ここで鉄道車両固有の識別信号を含んだ発進信号とは例えば音声ID信号である。音声ID信号とは、鉄道車両固有のコードを重畳させた音響信号である。もちろん、音声ID信号に限らず、ビーコンであってもよい。また重畳させるコードは、鉄道車両に限らず、例えば発進信号の種類などであってもよい。
【0071】
<変形例1>
続いて、本発明の変形例1について説明する。第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成についてはその説明を省略または簡略化する。
【0072】
本変形例では、発信装置100が鉄道車両Tとは別の場所に設けられている点で、第1の実施形態と異なる。
【0073】
例えば、発信装置100は、鉄道車両Tの周囲に設置され、第1の検知部40から所定の発進手順の有無に関する情報を有線又は無線で通信可能に構成されてもよい。
【0074】
例えば、車庫内に鉄道車両Tが複数停車し、それぞれの鉄道車両Tの周囲でそれぞれの作業者が作業している場合、一つの発信装置100を介して特定の鉄道車両Tの作業者に発進信号を発信することができる。これにより、鉄道車両T一台ずつに設置しなくてもよいため(つまり一つの発信装置100で複数の鉄道車両の操作ユニットの信号を受信できるため)、コストが低減できる。
【0075】
また発信装置100である制御装置10と発信機20のうち制御装置10のみ鉄道車両Tに取り付けられ、発信機20は鉄道車両Tの周囲に設けられてもよいし、逆に発信機20のみ鉄道車両Tに取り付けられ、制御装置10が鉄道車両Tの周囲に設けられてもよい。また発信装置100は実際に設置されていなくてもよく、例えばクラウド上で管理されていてもよい。
【0076】
<変形例2>
続いて、本発明の変形例2について説明する。
図4は、変形例2に係る制御システム1Aのブロック図である。第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成についてはその説明を省略または簡略化する。
【0077】
本変形例では発信システム200Aが第2の検知部50を有している点で第1の実施形態とは異なる。
【0078】
第2の検知部50は、鉄道車両Tの発進してからの走行時間、鉄道車両Tの発進してからの走行距離、鉄道車両Tの発進してからの走行速度、の少なくとも一つを検知する。第2の検知部50は、例えばGPS等を用いて鉄道車両Tの走行時間、走行距離、走行速度を検知してもよいし、操作ユニットT1の操作量から鉄道車両Tの走行時間、走行距離、走行速度を検知してもよい。
【0079】
制御装置10(信号生成部13)は、第2の検知部50の検出結果の値が所定以上の場合、第1の駆動信号の生成を中止する。例えば制御装置10は、第2の検知部50の検知結果である走行時間が10秒以上の場合、第1の駆動信号の生成を中止する。これにより、作業者に対して必要以上の時間、光等を提示することを抑制でき、作業者とって注意すべきタイミングがわかりやすいため、作業者の作業性を向上させることができる。
【0080】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る制御システム1Bのブロック図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0081】
本実施形態では、情報提示装置30B(端末装置300B)が第2の取得部35と位置判定部36とを有している点で、第1の実施形態と異なる。本実施形態では、第1の記憶部14は、特定の領域Wの位置情報に関する情報を記憶する。また信号生成部13は、第1の駆動信号に特定の領域Wの位置情報に関する情報を付加させ、その情報を含んだ発進信号を発信機20に発信させる。
【0082】
第2の取得部35は、例えばGPS等を用いて作業者(端末装置300B)の位置情報を取得する。位置判定部36は、第2の受信部31によって受信した特定の領域Wの位置情報と第2の取得部35によって取得した作業者の位置情報とを比較して特定の領域W内に作業者が存在するかどうかを判定する。位置判定部36が、作業者が特定の領域W内に存在すると判定した場合、情報生成部32は、第2の駆動信号を生成する。
【0083】
これにより、作業者が特定の領域Wにいる場合のみ光等で発進信号の受信の有無を提示でき、提示させる必要のない(退避させる必要のない)作業者に提示させて、作業を中断させることを抑制できるため、作業効率を向上させることができる。
【0084】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態に係る制御システム1Cのブロック図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0085】
本実施形態では、制御装置10Cが位置情報受信部15を有し、情報提示装置30B(端末装置300B)が送信部37を有している点で、第2の実施形態と異なる。
【0086】
送信部37は、位置判定部36により判定した特定の領域W内に作業者が存在するかどうかの判定結果を制御装置10Cに送信する。
【0087】
位置情報受信部15は、送信部37によって送信された判定結果を受信する。信号生成部13は、位置情報受信部15の受信した判定結果が、作業者が特定の領域W内に存在しない場合、信号生成部13は、第1の駆動信号の生成を中止する。
【0088】
これにより、作業者が特定の領域Wから退避したタイミングで第1の駆動信号の生成を中止することができるため、作業者にとっては退避できたことを確認でき安全性が向上される。また退避したあと光り続けることがないため、別の作業を行え、作業者の作業効率が向上する(光で手元が見えにくいといったことが起こりにくいため)。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論であり、各実施形態及び変形例の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…制御システム
10…制御装置
11…第1の取得部
12…信号判定部
13…信号生成部
14…第1の記憶部
20…発信機
21…第1の受信部
22…信号処理部
23…スピーカ
30…情報提示装置
31…第2の受信部
32…情報生成部
33…第2の記憶部
34…情報提示部
40…第1の検知部
100…発信装置
200…発信システム
300…端末装置
T…鉄道車両