(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049977
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】増幅モジュールおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/68 20060101AFI20240403BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20240403BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H03F3/68 220
H03F1/02 188
H03F3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156525
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】田原 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳依
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA04
5J500AA21
5J500AA41
5J500AA62
5J500AA63
5J500AA65
5J500AC21
5J500AC36
5J500AC81
5J500AF07
5J500AF08
5J500AF10
5J500AF15
5J500AF16
5J500AF19
5J500AH06
5J500AH10
5J500AH35
5J500AK12
5J500AK16
5J500AK68
5J500AQ04
5J500AS14
5J500AT01
5J500CK03
5J500LV08
(57)【要約】
【課題】高効率かつ円偏波のアンテナ特性を有する増幅モジュールを提供する。
【解決手段】増幅モジュール1は、4つの給電点101、102、103および104を有するアンテナ10と、4つの電力増幅器20、30、40および50と、を備え、4つの電力増幅器20~50の出力端は、4つの給電点101~104に一対一で接続され、アンテナ10の主面を平面視した場合、4つの給電点101~104はアンテナ10の中心Pcに対して回転対称に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの給電点を有するアンテナと、
4つの電力増幅器と、を備え、
前記4つの電力増幅器の出力端は、前記4つの給電点に一対一で接続され、
前記アンテナの主面を平面視した場合、前記4つの給電点は前記アンテナの中心に対して回転対称に配置されている、
増幅モジュール。
【請求項2】
前記平面視において、前記中心に対して回転方向に隣り合う2つの給電点のそれぞれに入力される信号の位相差は90°である、
請求項1に記載の増幅モジュール。
【請求項3】
前記4つの電力増幅器のそれぞれは、ドハティ型の増幅器である、
請求項1に記載の増幅モジュール。
【請求項4】
前記4つの給電点は、前記中心に対して回転方向に第1給電点、第2給電点、第3給電点および第4給電点の順に配置され、
前記4つの電力増幅器のうちの第1電力増幅器は、前記第1給電点に接続され、第1キャリアアンプおよび第1ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第2電力増幅器は、前記第2給電点に接続され、第2キャリアアンプおよび第2ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第3電力増幅器は、前記第3給電点に接続され、第3キャリアアンプおよび第3ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第4電力増幅器は、前記第4給電点に接続され、第4キャリアアンプおよび第4ピークアンプを有し、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値である場合には、前記第1キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプ、および、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオン状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第1電力値よりも小さい第2電力値である場合には、前記第1キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第2電力値よりも小さい第3電力値である場合には、前記第1キャリアアンプおよび前記第2キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第3キャリアアンプおよび前記第4キャリアアンプはオフ状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第3電力値よりも小さい第4電力値である場合には、前記第1キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第2キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプはオフ状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となる、
請求項3に記載の増幅モジュール。
【請求項5】
前記アンテナは、
誘電体基板と、
前記誘電体基板を挟んで配置されたグランド平面導体、および、前記4つの給電点を含む給電平面導体と、を備え、
前記アンテナに入力される高周波信号の前記誘電体基板での波長をλとした場合、前記4つの給電点のそれぞれと前記中心との距離は、λ/4である、
請求項1に記載の増幅モジュール。
【請求項6】
高周波信号を処理する信号処理回路と、
前記信号処理回路に接続された請求項1~5のいずれか1項に記載の増幅モジュールと、備える、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅モジュールおよび通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力信号の電力レベルが第1レベル以上の領域において入力信号から分配された第1信号を増幅して第2信号を出力する第1アンプ(キャリアアンプ)と、第2信号が入力される第1トランスと、入力信号の電力レベルが第1レベルより高い第2レベル以上の領域において入力信号から分配された第3信号を増幅して第4信号を出力する第2アンプ(ピークアンプ)と、第4信号が入力される第2トランスと、を備える電力増幅回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電力増幅回路によれば、キャリアアンプおよびピークアンプがオン状態である高出力領域からキャリアアンプのみがオン状態である低出力領域までの電力差であるバックオフ量を確保できる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電力増幅回路をアンテナに接続し、電力増幅回路の出力信号を円偏波で放射させようとする場合、第2信号と第4信号との移相を調整しつつ第2信号および第4信号を合成する合成回路が必要となり、当該合成回路により出力信号が減衰するため、バックオフ量に対応した電力増幅回路の効率が劣化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、高効率かつ円偏波のアンテナ特性を有する増幅モジュールおよび通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る増幅モジュールは、4つの給電点を有するアンテナと、4つの電力増幅器と、を備え、前記4つの電力増幅器の出力端は、前記4つの給電点に一対一で接続され、前記アンテナの主面を平面視した場合、前記4つの給電点は前記アンテナの中心に対して回転対称に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高効率かつ円偏波のアンテナ特性を有する増幅モジュールおよび通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る増幅モジュールおよび通信装置の構成図である。
【
図2】実施の形態に係るアンテナの平面図および断面図である。
【
図3A】実施例に係る増幅モジュールの第1の信号出力時の回路状態図である。
【
図3B】実施例に係る増幅モジュールの第2の信号出力時の回路状態図である。
【
図3C】実施例に係る増幅モジュールの第3の信号出力時の回路状態図である。
【
図3D】実施例に係る増幅モジュールの第4の信号出力時の回路状態図である。
【
図3E】実施例に係る増幅モジュールの出力電力と効率との関係を示すグラフである。
【
図4】実施例に係る増幅モジュールの円偏波のアンテナ特性を示す図である。
【
図5】実施例および比較例に係る増幅モジュールの相互変調歪を比較したグラフである。
【
図6A】変形例1に係る増幅モジュールの第1の信号出力時の回路状態図である。
【
図6B】変形例1に係る増幅モジュールの第2の信号出力時の回路状態図である。
【
図6C】変形例1に係る増幅モジュールの出力電力と効率との関係を示すグラフである。
【
図7】変形例2に係る増幅モジュールの構成図である。
【
図8】変形例3に係る増幅モジュールの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0011】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
【0012】
以下の各図において、X軸およびY軸は、誘電体基板の主面と平行な平面上で互いに直交する軸である。具体的には、平面視において誘電体基板が矩形状を有する場合、X軸は、誘電体基板の第1辺に平行であり、Y軸は、誘電体基板の第1辺と直交する第2辺に平行である。また、Z軸は、誘電体基板の主面に垂直な軸であり、その正方向は上方向を示し、その負方向は下方向を示す。
【0013】
本開示の回路構成において、「接続される」とは、接続端子および/または配線導体で直接接続される場合だけでなく、他の回路素子を介して電気的に接続される場合も含む。「AおよびBの間に接続される」とは、AおよびBの間でAおよびBの両方に接続されることを意味する。
【0014】
本開示の部品配置において、「平面視」とは、Z軸正側からXY平面に物体を正投影して見ることを意味する。
【0015】
また、本開示において、「平行」、「垂直」および「距離」などの要素間の関係性を示す用語、および、「矩形」などの要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。また、「第1方向と第2方向とが同じである」とは、第1方向の方向ベクトルと第2方向の方向ベクトルとのなす角度が厳密に0度であることに限らず、当該2つの方向ベクトルのなす角度が-10度以上かつ+10度以下であることを含むものと定義される。
【0016】
また、本開示において、「信号経路」とは、高周波信号が伝搬する配線、当該配線に直接接続された電極、および当該配線または当該電極に直接接続された端子等で構成された伝送線路であることを意味する。
【0017】
(実施の形態)
[1 増幅モジュール1および通信装置3の構成]
本実施の形態に係る増幅モジュール1および通信装置3の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態に係る増幅モジュール1および通信装置3の構成図である。
図2は、実施の形態に係るアンテナ10の平面図および断面図である。
【0018】
まず、通信装置3の構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る通信装置3は、増幅モジュール1と、信号処理回路2と、を備える。
【0019】
信号処理回路2は、高周波信号を処理する回路の一例である。信号処理回路2は、増幅モジュール1を制御する制御部を有する。具体的には、信号処理回路2は、送信信号をアップコンバート等により信号処理し、当該信号処理して生成された高周波送信信号を、増幅モジュール1に出力する。また、信号処理回路2は、増幅モジュール1の各電力増幅器に供給される電源電圧およびバイアス電流を制御する。なお、信号処理回路2の制御部としての機能の一部または全部は、信号処理回路2の外部に実装されてもよく、例えば、増幅モジュール1に実装されてもよい。
【0020】
増幅モジュール1は、アンテナ10と、電力増幅器20、30、40および50と、を備える。増幅モジュール1は、信号処理回路2から信号入力端子120、130、140および150を介して供給された高周波信号を増幅し、当該増幅された高周波信号をアンテナ10から放射する。
【0021】
アンテナ10は、4つの給電点101、102、103および104を有する。4つの電力増幅器20、30、40および50の出力端は、4つの給電点101、102、103および104に、一対一で接続される。具体的には、電力増幅器20の出力端は給電点101に接続され、電力増幅器30の出力端は給電点102に接続され、電力増幅器40の出力端は給電点103に接続され、電力増幅器50の出力端は給電点104に接続される。
【0022】
図2に示すように、アンテナ10は、誘電体基板11と、グランド平面導体13と、給電平面導体12と、を備える。
【0023】
誘電体基板11は、グランド平面導体13と給電平面導体12との間に、誘電体材料が充填された多層構造を有している。なお、誘電体基板11は、例えば、低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)基板、または、プリント基板などであってもよい。また、誘電体基板11は、誘電体材料が充填されていない単なる空間であってもよい。この場合には、給電平面導体12を支持する構造が必要となる。
【0024】
グランド平面導体13は、誘電体基板11の主面に略平行となるように、誘電体基板11の裏面側(Z軸負方向)の主面に形成された、グランド電位に設定される面状の導体である。
【0025】
給電平面導体12は、グランド平面導体13と対向するように(略平行となるように)、誘電体基板11の表面側(Z軸正方向)の主面に形成された面状の導体である。給電平面導体12とグランド平面導体13とは、互いに対向するアンテナ10の主面に相当する。
【0026】
電力増幅器20~50から出力された高周波信号は、誘電体基板11の裏面側に配置された信号入力端子に入力される。信号入力端子は、誘電体基板11内に形成された給電ビア導体を介して給電平面導体12上に配置された4つの給電点101、102、103および104に接続されている。
【0027】
4つの給電点101、102、103および104は、アンテナ10の主面(給電平面導体12)を平面視した場合(Z軸正側から負側を見た場合)、アンテナ10の中心Pcに対して回転対称に配置されている。
【0028】
なお、アンテナ10の中心Pcは、給電平面導体12を平面視した場合に、給電平面導体12の2本の対角線が交叉する点と定義される。また、給電平面導体12が矩形でない場合には、アンテナ10の中心Pcは、給電平面導体12の重心と定義される。
【0029】
これによれば、4つの給電点101~104は中心Pcに対して回転対称に配置されているので、回転方向に隣り合う2つの給電点に入力される2信号の位相差は、略90°となる。よって、4つの電力増幅器20~50の出力信号を位相調整して合成する合成回路を配置せずに、各電力増幅器20~50が出力電力に応じてオンオフされることで、合成回路による損失なしに電力増幅器20~50のインピーダンスを変換できる。よって、バックオフ量に対応した高効率かつ円偏波のアンテナ特性を有する増幅モジュール1を提供できる。
【0030】
なお、アンテナ10に入力される高周波信号の誘電体基板11での波長をλとした場合、給電点101と中心Pcとの距離L1、給電点102と中心Pcとの距離L2、給電点103と中心Pcとの距離L3、および給電点104と中心Pcとの距離L4は、それぞれλ/4以下である。なお、距離L1、L2、L3およびL4は、それぞれλ/4であることが望ましい。
【0031】
これによれば、増幅モジュール1は、回転方向に隣り合う2つの給電点に入力される2信号の位相差を高精度に90°にできるので、バックオフ量に対応した、より高効率かつ円偏波のアンテナ特性を有することが可能となり、また、高調波歪成分を高精度に抑制できる。
【0032】
なお、
図2に示されたアンテナは、本発明に係るアンテナの例示的な構成であり、4つの給電点101~104が中心Pcに対して回転対称に配置されるという特徴を有するアンテナは、
図2に示されたアンテナ10に限定的に解釈されるべきではない。
【0033】
[2 実施例に係る増幅モジュール1Aの構成]
次に、4つの電力増幅器がドハティ型の増幅器である場合の増幅モジュール1Aの構成および動作について説明する。
【0034】
図3Aは、実施例に係る増幅モジュール1Aの第1の信号出力時の回路状態図である。
図3Bは、実施例に係る増幅モジュール1Aの第2の信号出力時の回路状態図である。
図3Cは、実施例に係る増幅モジュール1Aの第3の信号出力時の回路状態図である。
図3Dは、実施例に係る増幅モジュール1Aの第4の信号出力時の回路状態図である。
図3Eは、実施例に係る増幅モジュール1Aの出力電力と効率との関係を示すグラフである。
【0035】
図3A~
図3Dに示すように、実施例に係る増幅モジュール1Aは、アンテナ10と、電力増幅器20A、30A、40Aおよび50Aと、を備える。本実施例に係る増幅モジュール1Aは、実施の形態に係る増幅モジュール1と比較して、4つの電力増幅器の構成が異なる。以下、本実施例に係る増幅モジュール1Aについて、実施の形態に係る増幅モジュール1と同じ構成であるアンテナ10の構成については説明を省略し、異なる構成である電力増幅器20A~50Aの構成を中心に説明する。
【0036】
アンテナ10において、給電点101~104は、中心Pcに対して回転方向に給電点101(第1給電点)、給電点102(第2給電点)、給電点103(第3給電点)および給電点104(第4給電点)の順に配置されている。
【0037】
電力増幅器20Aは、第1電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ21と、ピークアンプ22と、1/4波長伝送線路24と、インピーダンス変換回路23と、を備える。
【0038】
キャリアアンプ21およびピークアンプ22のそれぞれは、増幅トランジスタを有する。上記増幅トランジスタは、例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタ、または、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等の電界効果トランジスタである。
【0039】
キャリアアンプ21は、第1キャリアアンプの一例であり、例えば、入力される高周波信号の全ての電力レベルに対して増幅動作可能なA級(またはAB級)増幅回路であり、特に、低出力領域および中出力領域において高効率な増幅動作が可能である。なお、キャリアアンプ21は、A級(またはAB級)増幅回路であればよく、キャリアアンプに限定されない。なお、キャリアアンプ21に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ22に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0040】
なお、本明細書において、効率とは電力付加効率を示す。
【0041】
ピークアンプ22は、第1ピークアンプの一例であり、例えば、入力される高周波信号の電力レベルが高い領域で増幅動作可能なC級増幅回路である。ピークアンプ22が有する増幅トランジスタには、キャリアアンプ21が有する増幅トランジスタに印加されるバイアス電圧よりも低いバイアス電圧が印加されているため、高周波信号の電力レベルが高くなるほど、出力インピーダンスが低くなる。これにより、ピークアンプ22は、高出力領域において低歪の増幅動作が可能である。なお、ピークアンプ22は、C級増幅回路であればよく、ピークアンプに限定されない。
【0042】
1/4波長伝送線路24は、キャリアアンプ21の出力端子とピークアンプ22の出力端子との間に接続されている。1/4波長伝送線路24は、キャリアアンプ21から出力される信号の位相を-90度シフトさせる(90度遅らせる)。1/4波長伝送線路24の配置により、キャリアアンプ21から出力された信号の位相とピークアンプ22から出力された信号の位相とが揃えられる。これにより、キャリアアンプ21から出力される信号と、ピークアンプ22から出力される信号とが、電流合成される。
【0043】
インピーダンス変換回路23は、主線路および副線路を有し、インピーダンス変換回路23の両端で位相をシフトさせるとともに、所定の変換比でインピーダンスを変換する。主線路は、例えば、1/8波長または1/16波長の長さを有する伝送線路である。主線路の一端は1/4波長伝送線路24の一端に接続されており、主線路の他端は給電点101に接続されている。1/4波長伝送線路24の他端は、キャリアアンプ21の出力端に接続されている。副線路は、例えば、1/8波長または1/16波長の長さを有する伝送線路である。副線路の一端は主線路の一端に接続されており、副線路の他端はグランドに接続されている。主線路の一端から他端へ向かう第1方向と、副線路の他端から一端へ向かう第2方向とは、同じである。
【0044】
電力増幅器20Aの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、キャリアアンプ21の出力インピーダンスは高くなる。つまり、小信号入力時には、ピークアンプ22がオフ状態となり、キャリアアンプ21の出力インピーダンスが高くなることで、電力増幅器20Aは高効率動作することが可能となる。
【0045】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ21およびピークアンプ22が動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ22の出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0046】
なお、電力増幅器20Aは、キャリアアンプ21の入力側およびピークアンプ22の入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0047】
以下、電力増幅器30A、40A、50Aの構成について、電力増幅器20Aの構成と同じ点については説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0048】
電力増幅器30Aは、第2電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ31と、ピークアンプ32と、1/4波長伝送線路34と、インピーダンス変換回路33と、を備える。
【0049】
キャリアアンプ31およびピークアンプ32のそれぞれは、増幅トランジスタを有する。
【0050】
キャリアアンプ31は、第2キャリアアンプの一例であり、例えば、A級(またはAB級)増幅回路であり、特に、低出力領域および中出力領域において高効率な増幅動作が可能である。なお、キャリアアンプ31に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ32に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0051】
ピークアンプ32は、第2ピークアンプの一例であり、例えば、C級増幅回路である。ピークアンプ32は、高出力領域において低歪の増幅動作が可能である。また、ピークアンプ32に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ22に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0052】
1/4波長伝送線路34は、キャリアアンプ31の出力端子とピークアンプ32の出力端子との間に接続されている。1/4波長伝送線路34により、キャリアアンプ31から出力される信号と、ピークアンプ32から出力される信号とが、電流合成される。
【0053】
インピーダンス変換回路33は、主線路および副線路を有し、インピーダンス変換回路33の両端で位相をシフトさせるとともに、所定の変換比でインピーダンスを変換する。主線路の一端は1/4波長伝送線路34の一端に接続されており、主線路の他端は給電点102に接続されている。1/4波長伝送線路34の他端は、キャリアアンプ31の出力端に接続されている。
【0054】
電力増幅器30Aの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、ピークアンプ32がオフ状態となり、キャリアアンプ31の出力インピーダンスが高くなることで、電力増幅器30Aは高効率動作することが可能となる。
【0055】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ31およびピークアンプ32が動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ32の出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0056】
なお、電力増幅器30Aは、キャリアアンプ31の入力側およびピークアンプ32の入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0057】
電力増幅器40Aは、第3電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ41と、ピークアンプ42と、1/4波長伝送線路44と、インピーダンス変換回路43と、を備える。
【0058】
キャリアアンプ41およびピークアンプ42のそれぞれは、増幅トランジスタを有する。
【0059】
キャリアアンプ41は、第3キャリアアンプの一例であり、例えば、A級(またはAB級)増幅回路であり、特に、低出力領域および中出力領域において高効率な増幅動作が可能である。なお、キャリアアンプ41に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ42に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0060】
ピークアンプ42は、第3ピークアンプの一例であり、例えば、C級増幅回路である。ピークアンプ42は、高出力領域において低歪の増幅動作が可能である。また、ピークアンプ42に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ32に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0061】
1/4波長伝送線路44は、キャリアアンプ41の出力端子とピークアンプ42の出力端子との間に接続されている。1/4波長伝送線路44により、キャリアアンプ41から出力される信号と、ピークアンプ42から出力される信号とが、電流合成される。
【0062】
インピーダンス変換回路43は、主線路および副線路を有し、インピーダンス変換回路43の両端で位相をシフトさせるとともに、所定の変換比でインピーダンスを変換する。主線路の一端は1/4波長伝送線路44の一端に接続されており、主線路の他端は給電点103(第3給電点)に接続されている。1/4波長伝送線路44の他端は、キャリアアンプ41の出力端に接続されている。
【0063】
電力増幅器40Aの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、ピークアンプ42がオフ状態となり、キャリアアンプ41の出力インピーダンスが高くなることで、電力増幅器40Aは高効率動作することが可能となる。
【0064】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ41およびピークアンプ42が動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ42の出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0065】
なお、電力増幅器40Aは、キャリアアンプ41の入力側およびピークアンプ42の入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0066】
電力増幅器50Aは、第4電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ51と、ピークアンプ52と、1/4波長伝送線路54と、インピーダンス変換回路53と、を備える。
【0067】
キャリアアンプ51およびピークアンプ52のそれぞれは、増幅トランジスタを有する。
【0068】
キャリアアンプ51は、第4キャリアアンプの一例であり、例えば、A級(またはAB級)増幅回路であり、特に、低出力領域および中出力領域において高効率な増幅動作が可能である。なお、キャリアアンプ51に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ52に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0069】
ピークアンプ52は、第4ピークアンプの一例であり、例えば、C級増幅回路である。ピークアンプ52は、高出力領域において低歪の増幅動作が可能である。また、ピークアンプ52に入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ42に入力される高周波信号の位相よりも90°進んでいる。
【0070】
1/4波長伝送線路54は、キャリアアンプ51の出力端子とピークアンプ52の出力端子との間に接続されている。1/4波長伝送線路54により、キャリアアンプ51から出力される信号と、ピークアンプ52から出力される信号とが、電流合成される。
【0071】
インピーダンス変換回路53は、主線路および副線路を有し、インピーダンス変換回路53の両端で位相をシフトさせるとともに、所定の変換比でインピーダンスを変換する。主線路の一端は1/4波長伝送線路54の一端に接続されており、主線路の他端は給電点104に接続されている。1/4波長伝送線路54の他端は、キャリアアンプ51の出力端に接続されている。
【0072】
電力増幅器50Aの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、ピークアンプ52がオフ状態となり、キャリアアンプ51の出力インピーダンスが高くなることで、電力増幅器50Aは高効率動作することが可能となる。
【0073】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ51およびピークアンプ52が動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ52の出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0074】
なお、電力増幅器50Aは、キャリアアンプ51の入力側およびピークアンプ52の入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0075】
なお、電力増幅器20A~50Aは、1/4波長伝送線路およびインピーダンス変換回路を用いてキャリアアンプの出力とピークアンプの出力とを電流合成する構成を有するが、トランスフォーマを用いてキャリアアンプの出力とピークアンプの出力とを電圧合成する構成を有していてもよい。
【0076】
ここで、出力電力に対する増幅モジュール1Aの動作について説明する。
【0077】
まず、
図3Aに示すように、第1の信号出力時(Max Power出力時)では、全てのキャリアアンプ21、31、41および51および全てのピークアンプ22、32、42および52が動作する(ON)。この場合、キャリアアンプ21~51およびピークアンプ22~52の各出力インピーダンスは、Z
Lであるとする。
【0078】
次に、
図3Bに示すように、第1の信号出力よりも低電力である第2の信号出力時(6dB Back off Power出力時)では、全てのキャリアアンプ21~51が動作し(ON)、全てのピークアンプ22~52が動作しない(OFF)。この場合、キャリアアンプ21~51の各出力インピーダンスは、2Z
Lとなる。なお、このとき、ピークアンプ22~52の出力インピーダンスはオープン状態となっている。つまり、第2の信号出力時には、ピークアンプ22~52がオフ状態となり、キャリアアンプ21~51の出力インピーダンスが高くなることで、6dBのバックオフ量が得られ、増幅モジュール1Aは高効率動作することが可能となる。
【0079】
次に、
図3Cに示すように、第2の信号出力よりも低電力である第3の信号出力時(12dB Back off Power出力時)では、キャリアアンプ21および31が動作し(ON)、キャリアアンプ41、51およびピークアンプ22~52が動作しない(OFF)。この場合、キャリアアンプ21および31の各出力インピーダンスは、4Z
Lとなる。なお、このとき、キャリアアンプ41、51およびピークアンプ22~52の出力インピーダンスはオープン状態となっている。つまり、第3の信号出力時には、キャリアアンプ41、51およびピークアンプ22~52がオフ状態となり、キャリアアンプ21および31の出力インピーダンスが高くなることで、12dBのバックオフ量が得られ、増幅モジュール1Aは高効率動作することが可能となる。
【0080】
次に、
図3Dに示すように、第3の信号出力よりも低電力である第4の信号出力時(18dB Back off Power出力時)では、キャリアアンプ21が動作し(ON)、キャリアアンプ31、41、51およびピークアンプ22~52が動作しない(OFF)。この場合、キャリアアンプ21の出力インピーダンスは、8Z
Lとなる。なお、このとき、キャリアアンプ31、41、51およびピークアンプ22~52の出力インピーダンスはオープン状態となっている。つまり、第4の信号出力時には、キャリアアンプ31、41、51およびピークアンプ22~52がオフ状態となり、キャリアアンプ21の出力インピーダンスが高くなることで、18dBのバックオフ量が得られ、増幅モジュール1Aは高効率動作することが可能となる。
【0081】
図3Eにおいて、横軸は増幅モジュール1Aから出力される信号の電力レベルを示し、縦軸は増幅モジュール1Aの効率(電力付加効率)を示している。
【0082】
増幅モジュール1Aから出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値(第1の信号出力:
図3EのI)から第2電力値(第2の信号出力:
図3EのII)へと低下した場合には、オン状態であるキャリアアンプ21~51のインピーダンスは大きくなる。このため、第2の信号出力時には、全てのキャリアアンプ21~51および全てのピークアンプ22~52がオン状態で動作している場合(
図3EではAB級アンプと図示)と比較して、効率が高くなっている。
【0083】
また、増幅モジュール1Aから出力される高周波信号の電力レベルが第2電力値(第2の信号出力:
図3EのII)から第3電力値(第3の信号出力:
図3EのIII)へと低下した場合には、オン状態であるキャリアアンプ21および31のインピーダンスはさらに大きくなる。このため、第3の信号出力時には、全てのキャリアアンプ21~51および全てのピークアンプ22~52がオン状態で動作している場合(
図3EではAB級アンプと図示)と比較して、効率が高くなっている。
【0084】
また、増幅モジュール1Aから出力される高周波信号の電力レベルが第3電力値(第3の信号出力:
図3EのIII)から第4電力値(第4の信号出力:
図3EのIV)へと低下した場合には、オン状態であるキャリアアンプ21のインピーダンスはさらに大きくなる。このため、第4の信号出力時には、全てのキャリアアンプ21~51および全てのピークアンプ22~52がオン状態で動作している場合(
図3EではAB級アンプと図示)と比較して、効率が高くなっている。
【0085】
つまり、増幅モジュール1Aは、6dBごとに段階的に、合計18dBのバックオフ量を確保できるので、効率劣化を最小に抑えることで高効率動作することが可能となる。
【0086】
図4は、実施例に係る増幅モジュール1Aの円偏波のアンテナ特性を示す図である。同図に示すように、実施例に係る増幅モジュール1Aでは、電界および磁界がZ軸を回転軸として回転する、いわゆる円偏波のアンテナ特性を実現している。これは、第1~第4の信号出力時において、中心Pcに対して回転対象に配置された給電点101~104のうち隣り合う2つの給電点に対して、90°の位相差を有する高周波信号が供給されることによるものである。
【0087】
図5は、実施例および比較例に係る増幅モジュールの相互変調歪を比較したグラフである。同図には、実施例および比較例に係る増幅モジュールにおける、出力電力に対する3次相互変調歪(IMD3)および5次相互変調歪(IMD5)の特性が示されている。
【0088】
図5に示された、実施例に係る増幅モジュール1Aでは、例えば、電力増幅器20Aのキャリアアンプ21に供給されるバイアス電流を電力増幅器40Aのキャリアアンプ41に供給されるバイアス電流よりも大きく設定し、電力増幅器20Aのピークアンプ22に供給されるバイアス電流を電力増幅器40Aのピークアンプ42に供給されるバイアス電流よりも大きく設定している。また、電力増幅器30Aのキャリアアンプ31に供給されるバイアス電流を電力増幅器50Aのキャリアアンプ51に供給されるバイアス電流よりも大きく設定し、電力増幅器30Aのピークアンプ32に供給されるバイアス電流を電力増幅器50Aのピークアンプ52に供給されるバイアス電流よりも大きく設定している。
【0089】
一方、比較例に係る増幅モジュールは、実施例に係る増幅モジュール1Aと同じ回路構成を有するが、電力増幅器20Aのキャリアアンプ21に供給されるバイアス電流と電力増幅器40Aのキャリアアンプ41に供給されるバイアス電流とは同じ電流値であり、電力増幅器20Aのピークアンプ22に供給されるバイアス電流と電力増幅器40Aのピークアンプ42に供給されるバイアス電流とは同じ電流値である。また、電力増幅器30Aのキャリアアンプ31に供給されるバイアス電流と電力増幅器50Aのキャリアアンプ51に供給されるバイアス電流とは同じ電流値であり、電力増幅器30Aのピークアンプ32に供給されるバイアス電流と電力増幅器50Aのピークアンプ52に供給されるバイアス電流とは同じ電流値である。
【0090】
実施例に係る増幅モジュール1Aによれば、電力増幅器20Aの入出力特性をゲインコンプレッション(ゲイン圧縮)型とし、電力増幅器40Aの入出力特性をゲインエクスパンジョン型とできる。また、電力増幅器30Aの入出力特性をゲインコンプレッション(ゲイン圧縮)型とし、電力増幅器50Aの入出力特性をゲインエクスパンジョン型とできる。これにより、電力増幅器20Aから発生する非線形歪成分と電力増幅器40Aから発生する非線形歪成分とを相殺でき、また、電力増幅器30Aから発生する非線形歪成分と電力増幅器50Aから発生する非線形歪成分とを相殺できるので、
図5に示すように、IMD3およびIMD5の成分を抑制することが可能となる。
【0091】
[3 変形例1に係る増幅モジュール1Bの構成]
図6Aは、変形例1に係る増幅モジュール1Bの第1の信号出力時の回路状態図である。
図6Bは、変形例1に係る増幅モジュール1Bの第2の信号出力時の回路状態図である。
図6Cは、変形例1に係る増幅モジュール1Bの出力電力と効率との関係を示すグラフである。
【0092】
図6Aおよび
図6Bに示すように、変形例1に係る増幅モジュール1Bは、アンテナ10と、キャリアアンプ20Bおよび30Bと、ピークアンプ40Bおよび50Bと、トランス61および62と、1/4波長伝送線路25、35、44、45、54および55と、を備える。本変形例に係る増幅モジュール1Bは、実施の形態に係る増幅モジュール1と比較して、4つの電力増幅器の構成が異なる。以下、本変形例に係る増幅モジュール1Bについて、実施の形態に係る増幅モジュール1と同じ構成であるアンテナ10の構成については説明を省略し、異なる構成であるキャリアアンプ20Bおよび30Bならびにピークアンプ40Bおよび50Bの構成を中心に説明する。
【0093】
キャリアアンプ20Bは、第1電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ20Bの出力端は、トランス61および1/4波長伝送線路25を介して給電点101に接続される。
【0094】
キャリアアンプ30Bは、第2電力増幅器の一例であり、キャリアアンプ30Bの出力端は、トランス62および1/4波長伝送線路35を介して給電点102に接続される。
【0095】
ピークアンプ40Bは、第3電力増幅器の一例であり、ピークアンプ40Bの出力端は、トランス61、1/4波長伝送線路44および45を介して給電点103に接続される。
【0096】
ピークアンプ50Bは、第4電力増幅器の一例であり、ピークアンプ50Bの出力端は、トランス62、1/4波長伝送線路54および55を介して給電点104に接続される。
【0097】
1/4波長伝送線路44は、ピークアンプ40Bの出力端とトランス61の入力側コイルの他端との間に配置されている。1/4波長伝送線路54は、ピークアンプ50Bの出力端とトランス62の入力側コイルの他端との間に配置されている。
【0098】
トランス61は、入力側コイルおよび出力側コイルを有する。入力側コイルの一端はキャリアアンプ20Bの出力端に接続され、入力側コイルの他端は1/4波長伝送線路44を介してピークアンプ40Bの出力端に接続されている。出力側コイルの一端は1/4波長伝送線路25を介して給電点101に接続され、出力側コイルの他端は1/4波長伝送線路45を介して給電点103に接続されている。
【0099】
トランス62は、入力側コイルおよび出力側コイルを有する。入力側コイルの一端はキャリアアンプ30Bの出力端に接続され、入力側コイルの他端は1/4波長伝送線路54を介してピークアンプ50Bの出力端に接続されている。出力側コイルの一端は1/4波長伝送線路35を介して給電点102に接続され、出力側コイルの他端は1/4波長伝送線路55を介して給電点104に接続されている。
【0100】
キャリアアンプ20Bおよびピークアンプ40Bの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、キャリアアンプ20Bの出力インピーダンスは高くなる。つまり、小信号入力時には、ピークアンプ40Bがオフ状態となり、キャリアアンプ20Bの出力インピーダンスが高くなることで、キャリアアンプ20Bは高効率動作することが可能となる。
【0101】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ20Bおよびピークアンプ40Bが動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ40Bの出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0102】
なお、キャリアアンプ20Bに入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ40Bに入力される高周波信号の位相よりも90°進んでおり、1/4波長伝送線路25により90°遅れて給電点101に供給される。また、ピークアンプ40Bに入力される高周波信号の位相は、1/4波長伝送線路44により90°遅れ、さらに1/4波長伝送線路45により90°遅れて給電点103に供給される。つまり、給電点103に供給される高周波信号の位相は、給電点101に供給される高周波信号の位相よりも180°進んでいる。
【0103】
なお、増幅モジュール1Bは、キャリアアンプ20Bの入力側およびピークアンプ40Bの入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0104】
また、キャリアアンプ30Bおよびピークアンプ50Bの上記構成によれば、大信号入力時に対して小信号入力時には、キャリアアンプ30Bの出力インピーダンスは高くなる。つまり、小信号入力時には、ピークアンプ50Bがオフ状態となり、キャリアアンプ30Bの出力インピーダンスが高くなることで、キャリアアンプ30Bは高効率動作することが可能となる。
【0105】
一方、大信号入力時には、キャリアアンプ30Bおよびピークアンプ50Bが動作することで大電力信号を出力することができ、かつ、ピークアンプ50Bの出力インピーダンスが低くなることで、信号歪を抑制することが可能となる。
【0106】
なお、キャリアアンプ30Bに入力される高周波信号の位相は、ピークアンプ50Bに入力される高周波信号の位相よりも90°進んでおり、1/4波長伝送線路35により90°遅れて給電点102に供給される。また、ピークアンプ50Bに入力される高周波信号の位相は、1/4波長伝送線路54により90°遅れ、さらに1/4波長伝送線路55により90°遅れて給電点104に供給される。つまり、給電点104に供給される高周波信号の位相は、給電点102に供給される高周波信号の位相よりも180°進んでいる。
【0107】
なお、増幅モジュール1Bは、キャリアアンプ30Bの入力側およびピークアンプ50Bの入力側に、入力される高周波信号の位相をシフトさせる移相回路を有していてもよい。
【0108】
ここで、出力電力に対する増幅モジュール1Bの動作について説明する。
【0109】
まず、
図6Aに示すように、第1の信号出力時(Max Power出力時)では、キャリアアンプ20Bおよび30Bならびにピークアンプ40Bおよび50Bが動作する(ON)。この場合、キャリアアンプ20Bおよび30Bならびにピークアンプ40Bおよび50Bの各出力インピーダンスは、kR
Lであるとする。
【0110】
次に、
図6Bに示すように、第1の信号出力よりも低電力である第2の信号出力時(9dB Back off Power出力時)では、キャリアアンプ20Bおよび30Bが動作し(ON)、ピークアンプ40Bおよび50Bが動作しない(OFF)。この場合、キャリアアンプ20Bおよび30Bの各出力インピーダンスは、4kR
Lとなる。なお、このとき、ピークアンプ40Bおよび50Bの出力インピーダンスはオープン状態となっている。つまり、第2の信号出力時には、ピークアンプ40Bおよび50Bがオフ状態となり、キャリアアンプ20Bおよび30Bの出力インピーダンスが高くなることで、9dBのバックオフ量が得られ、増幅モジュール1Bは高効率動作することが可能となる。
【0111】
図6Cにおいて、横軸は増幅モジュール1Bから出力される信号の電力レベルを示し、縦軸は増幅モジュール1Bの効率(電力付加効率)を示している。
【0112】
増幅モジュール1Bから出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値(第1の信号出力:
図6CのI)から第2電力値(第2の信号出力:
図6CのII)へと低下した場合には、オン状態であるキャリアアンプ20Bおよび30Bのインピーダンスは大きくなる。このため、第2の信号出力時には、全てのキャリアアンプ20Bおよび30Bならびにピークアンプ40Bおよび50Bがオン状態で動作している場合(
図6CではAB級アンプと図示)と比較して、効率が高くなっている。
【0113】
つまり、増幅モジュール1Bは、9dBのバックオフ量を確保できるので、高効率動作することが可能となる。
【0114】
また、変形例1に係る増幅モジュール1Bでは、円偏波のアンテナ特性を実現できる。これは、第1および第2の信号出力時において、中心Pcに対して回転対象に配置された給電点101~104のうち隣り合う2つの給電点に対して、90°の位相差を有する高周波信号が供給されることによるものである。
【0115】
[4 変形例2に係る増幅モジュール1Cの構成]
図7は、変形例2に係る増幅モジュール1Cの構成図である。同図に示すように、変形例2に係る増幅モジュール1Cは、アンテナ72、73、74および75と、電力増幅器20A、30A、40Aおよび50Aと、を備える。本変形例に係る増幅モジュール1Cは、実施の形態に係る増幅モジュール1と比較して、アンテナ72~75の構成が異なる。以下、本変形例に係る増幅モジュール1Cについて、実施の形態に係る増幅モジュール1と同じ構成である電力増幅器の構成については説明を省略し、異なる構成であるアンテナ72~75の構成を中心に説明する。
【0116】
アンテナ72~75のそれぞれは、ダイポールアンテナであり、各アンテナの長さは、各アンテナに入力される高周波信号のアンテナでの波長をλとした場合、それぞれλ/4である。
【0117】
アンテナ72の給電点は、電力増幅器20Aの出力端に接続されている。アンテナ73の給電点は、電力増幅器30Aの出力端に接続されている。アンテナ75の給電点は、電力増幅器40Aの出力端に接続されている。アンテナ74の給電点は、電力増幅器50Aの出力端に接続されている。
【0118】
本構成によれば、増幅モジュール1Cは、12dBのバックオフ量を確保できるので、高効率動作することが可能となる。
【0119】
[5 変形例3に係る増幅モジュール1Dの構成]
図8は、変形例3に係る増幅モジュール1Dの構成図である。同図に示すように、変形例3に係る増幅モジュール1Dは、アンテナ81および82と、キャリアアンプ20Bおよび30Bと、ピークアンプ40Bおよび50Bと、トランス61および62と、1/4波長伝送線路25、35、44、45、54および55と、を備える。本変形例に係る増幅モジュール1Dは、変形例1に係る増幅モジュール1Bと比較して、アンテナ81および82の構成が異なる。以下、本変形例に係る増幅モジュール1Dについて、変形例1に係る増幅モジュール1Bと同じ構成については説明を省略し、異なる構成であるアンテナ81および82の構成を中心に説明する。
【0120】
アンテナ81および82のそれぞれは、ループアンテナであり、各アンテナの長さは、各アンテナに入力される高周波信号のアンテナでの波長をλとした場合、それぞれλ/2である。
【0121】
アンテナ81の一端に位置する給電点は、キャリアアンプ20Bの出力端に接続されている。アンテナ81の他端に位置する給電点は、ピークアンプ40Bの出力端に接続されている。アンテナ82の一端に位置する給電点は、キャリアアンプ30Bの出力端に接続されている。アンテナ82の他端に位置する給電点は、ピークアンプ50Bの出力端に接続されている。
【0122】
本構成によれば、増幅モジュール1Dは、9dBのバックオフ量を確保できるので、高効率動作することが可能となる。
【0123】
[6 効果など]
以上のように、本実施の形態に係る増幅モジュール1は、4つの給電点101、102、103および104を有するアンテナ10と、4つの電力増幅器20、30、40および50と、を備え、4つの電力増幅器20~50の出力端は、4つの給電点101~104に一対一で接続され、アンテナ10の主面を平面視した場合、4つの給電点101~104はアンテナ10の中心Pcに対して回転対称に配置されている。
【0124】
これによれば、4つの給電点101~104は回転対称に配置されているので、回転方向に隣り合う給電点に入力される信号は、90°位相がずれる。よって、4つの電力増幅器20~50の出力信号を位相調整して合成する合成回路を配置せずに、各電力増幅器が出力電力に応じてオンオフされることで、合成による損失なしに電力増幅器のインピーダンスを変換できる。よって、バックオフによる高効率かつ円偏波のアンテナ特性を得ることが可能となる。
【0125】
また例えば、増幅モジュール1において、上記平面視で中心Pcに対して回転方向に隣り合う2つの給電点のそれぞれに入力される信号の位相差は90°であってもよい。
【0126】
また例えば、実施例に係る増幅モジュール1Aにおいて、4つの電力増幅器20A~50Aのそれぞれは、ドハティ型の増幅器であってもよい。
【0127】
これによれば、4つの電力増幅器20A~50Aのそれぞれが、キャリアアンプおよびピークアンプを有することで、大きなバックオフ量を確保できる。
【0128】
また例えば、増幅モジュール1Aにおいて、4つの給電点101~104は、中心Pcに対して回転方向に給電点101、102、103、104の順に配置され、電力増幅器20Aは、給電点101に接続され、キャリアアンプ21およびピークアンプ22を有し、電力増幅器30Aは、給電点102に接続され、キャリアアンプ31およびピークアンプ32を有し、電力増幅器40Aは、給電点103に接続され、キャリアアンプ41およびピークアンプ42を有し、電力増幅器50Aは、給電点104に接続され、キャリアアンプ51およびピークアンプ52を有する。アンテナ10から出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値である場合には、キャリアアンプ21、31、41および51、および、ピークアンプ22、32、42および52はオン状態となる。アンテナ10から出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値よりも小さい第2電力値である場合には、キャリアアンプ21、31、41および51はオン状態となり、かつ、ピークアンプ22、32、42および52はオフ状態となる。アンテナ10から出力される高周波信号の電力レベルが第2電力値よりも小さい第3電力値である場合には、キャリアアンプ21および31はオン状態となり、かつ、キャリアアンプ41および51はオフ状態となり、かつ、ピークアンプ22、32、42および52はオフ状態となる。アンテナ10から出力される高周波信号の電力レベルが第3電力値よりも小さい第4電力値である場合には、キャリアアンプ21はオン状態となり、かつ、キャリアアンプ31、41および51はオフ状態となり、かつ、ピークアンプ22、32、42および52はオフ状態となる。
【0129】
これによれば、増幅モジュール1Aは、6dBごとに段階的に18dBのバックオフ量を確保できるので、効率劣化を最小に抑えることで高効率動作することが可能となる。また、第1電力値~第4電力値において、中心Pcに対して回転対象に配置された給電点101~104のうち隣り合う2つの給電点に対して、90°の位相差を有する高周波信号が供給されるので、円偏波のアンテナ特性を有することが可能となる。
【0130】
また例えば、増幅モジュール1および1Aにおいて、アンテナ10は、誘電体基板11と、誘電体基板11を挟んで配置されたグランド平面導体13、および、4つの給電点101~104を含む給電平面導体12と、を備え、高周波信号の誘電体基板11での波長をλとした場合、4つの給電点101~104のそれぞれと中心Pcとの距離は、λ/4であってもよい。
【0131】
これによれば、回転方向に隣り合う2つの給電点に入力される2信号の位相差を高精度に90°にできるので、高調波歪成分を高精度に抑制できる。
【0132】
また、本実施の形態に係る通信装置3は、高周波信号を処理する信号処理回路2と、信号処理回路2に接続された増幅モジュール1と、を備える。
【0133】
これによれば、増幅モジュール1の効果を通信装置3で実現することができる。
【0134】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る増幅モジュールおよび通信装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明に係る増幅モジュールおよび通信装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、上記増幅モジュールおよび通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0135】
例えば、上記実施の形態に係る増幅モジュールおよび通信装置の回路構成において、図面に開示された各回路素子および信号経路を接続する経路の間に、別の回路素子および配線などが挿入されてもよい。
【0136】
以下に、上記実施の形態および変形例に基づいて説明した増幅モジュールおよび通信装置の特徴を示す。
【0137】
<1>
4つの給電点を有するアンテナと、
4つの電力増幅器と、を備え、
前記4つの電力増幅器の出力端は、前記4つの給電点に一対一で接続され、
前記アンテナの主面を平面視した場合、前記4つの給電点は前記アンテナの中心に対して回転対称に配置されている、増幅モジュール。
【0138】
<2>
前記平面視において、前記中心に対して回転方向に隣り合う2つの給電点のそれぞれに入力される信号の位相差は90°である、<1>に記載の増幅モジュール。
【0139】
<3>
前記4つの電力増幅器のそれぞれは、ドハティ型の増幅器である、<1>または<2>に記載の増幅モジュール。
【0140】
<4>
前記4つの給電点は、前記中心に対して回転方向に第1給電点、第2給電点、第3給電点および第4給電点の順に配置され、
前記4つの電力増幅器のうちの第1電力増幅器は、前記第1給電点に接続され、第1キャリアアンプおよび第1ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第2電力増幅器は、前記第2給電点に接続され、第2キャリアアンプおよび第2ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第3電力増幅器は、前記第3給電点に接続され、第3キャリアアンプおよび第3ピークアンプを有し、
前記4つの電力増幅器のうちの第4電力増幅器は、前記第4給電点に接続され、第4キャリアアンプおよび第4ピークアンプを有し、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが第1電力値である場合には、前記第1キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプ、および、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオン状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第1電力値よりも小さい第2電力値である場合には、前記第1キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第2電力値よりも小さい第3電力値である場合には、前記第1キャリアアンプおよび前記第2キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第3キャリアアンプおよび前記第4キャリアアンプはオフ状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となり、
前記アンテナから出力される高周波信号の電力レベルが前記第3電力値よりも小さい第4電力値である場合には、前記第1キャリアアンプはオン状態となり、かつ、前記第2キャリアアンプ~前記第4キャリアアンプはオフ状態となり、かつ、前記第1ピークアンプ~前記第4ピークアンプはオフ状態となる、<3>に記載の増幅モジュール。
【0141】
<5>
前記アンテナは、
誘電体基板と、
前記誘電体基板を挟んで配置されたグランド平面導体、および、前記4つの給電点を含む給電平面導体と、を備え、
前記アンテナに入力される高周波信号の前記誘電体基板での波長をλとした場合、前記4つの給電点のそれぞれと前記中心との距離は、λ/4である、<1>~<4>のいずれかに記載の増幅モジュール。
【0142】
<6>
高周波信号を処理する信号処理回路と、
前記信号処理回路に接続された<1>~<5>のいずれかに記載の増幅モジュールと、備える、通信装置。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、マルチバンド対応のフロントエンド部に配置される増幅モジュールまたは通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B、1C、1D 増幅モジュール
2 信号処理回路
3 通信装置
10、72、73、74、75、81、82 アンテナ
11 誘電体基板
12 給電平面導体
13 グランド平面導体
20、20A、30、30A、40、40A、50、50A 電力増幅器
20B、21、30B、31、41、51 キャリアアンプ
22、32、40B、42、50B、52 ピークアンプ
23、33、43、53 インピーダンス変換回路
24、25、35、34、44、45、54、55 1/4波長伝送線路
61、62 トランス
101、102、103、104 給電点
120、130、140、150 信号入力端子