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特開2024-49981収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤及び食品の日持向上方法
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  • 特開-収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤及び食品の日持向上方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049981
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤及び食品の日持向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12J 1/00 20060101AFI20240403BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20240403BHJP
   A23L 3/3472 20060101ALI20240403BHJP
   A23B 7/10 20060101ALN20240403BHJP
   A23B 7/154 20060101ALN20240403BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20240403BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20240403BHJP
【FI】
C12J1/00 A
A23L3/3508
C12J1/00 102
A23L3/3472
A23B7/10 A
A23B7/154
A23L7/109 E
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156529
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000101215
【氏名又は名称】アサマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 瑞夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 元樹
(72)【発明者】
【氏名】原 昇平
【テーマコード(参考)】
4B021
4B036
4B046
4B128
4B169
【Fターム(参考)】
4B021LW01
4B021LW02
4B021LW10
4B021MC01
4B021MK02
4B021MK20
4B021MK28
4B021MP01
4B036LC04
4B036LE05
4B036LF19
4B036LH07
4B036LH11
4B036LH29
4B036LH30
4B036LH44
4B036LH50
4B036LK04
4B036LP19
4B036LP24
4B046LA06
4B046LB04
4B046LC09
4B046LE16
4B046LE18
4B046LG09
4B046LG15
4B046LG25
4B046LP41
4B046LP56
4B128BC03
4B128BL14
4B128BL19
4B128BL27
4B128BL35
4B128BP23
4B128BX04
4B169DA06
4B169DA09
4B169DB02
4B169DB10
4B169DB20
4B169KA01
4B169KB03
4B169KC22
4B169KC35
(57)【要約】
【課題】食品の日持ち向上効果と調味料としての風味の双方を満たすキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤、食品及び食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
【解決手段】醸造酢と、キトサンと、を含有し収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢であって、前記醸造酢の酢酸酸度が5~30%の範囲内であり、前記キトサンが、濃度比で前記醸造酢の1/10~1/60の範囲内である、キトサン含有醸造酢、これを含有する食品用日持向上剤及び食品並びに食品の日持向上方法により解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酢と、キトサンと、を含有し収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢であって、
前記醸造酢の酢酸酸度が5~30%の範囲内であり、
前記キトサンが、濃度比で前記醸造酢の1/10~1/60の範囲内である、
キトサン含有醸造酢。
【請求項2】
前記キトサン含有醸造酢が液状である、請求項1に記載のキトサン含有醸造酢。
【請求項3】
前記キトサン含有醸造酢が粉末状である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキトサン含有醸造酢。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のキトサン含有醸造酢を含有することを特徴とする、食品用日持向上剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のキトサン含有醸造酢を含有することを特徴とする、食品。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のキトサン含有醸造酢を食品に添加することを特徴とする、食品の日持向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品保存剤としての日持ち向上効果と調味料としての風味の双方を満たすキトサン含有醸造酢、これを含む食品用日持向上剤及び食品、並びに食品の日持向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品添加物すなわち化学品原料の供給安定化やSDGsの観点から、醸造酢の日持向上剤としての利用を積極的に進めており、これまで種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特開2021-145659号公報には、醸造酢にカルシウムを溶解したカルシウム液をもって、バクテリオシンやスターターカルチャーを組成分とし、これらの抗菌効果の強化と、抗菌対象の範囲の拡大、そして有用微生物の健全な増殖を達成する抗菌剤が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、特開2020-62003号公報には、高酸度醸造酢に含まれる酢酸を無機のナトリウム塩で中和してなる、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢であって、酢酸/酢酸ナトリウムの比率が0.05~0.14の範囲内であることを特徴とする、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢及び該高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を用いた食品用日持向上剤が開示されている(特許文献2)。
【0005】
醸造酢はpHが2.4~3.2の強酸性を示すため抗菌性が最も高い調味料として知られているが、醸造酢の抗菌性は乳酸菌に対しては働かず、乳酸菌が多くの抗菌物質に対して非常に抵抗性であるか若しくは非感受性のものが多いという問題があった(松田,食品微生物制御の化学,幸書房,1998)。そこで発明者らは、醸造酢と、抗菌性を有することが知られているキトサンとの組み合わせ利用を検討した。
【0006】
キトサンは麹カビ(Aspergillus niger)や ケカビ(Mucor属)などのカビの細胞壁に含まれているため、発酵により生産することができる。また、キトサンは従来からエビ、カニなどのキチンを濃アルカリで脱アセチル化することにより製造する方法もある。乳酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸等の有機酸に溶解する。キトサンはポリカチオンの性質を持ち、古くから水処理用凝集剤として使われている。
【0007】
キトサンは食品関係への利用も一時盛んになったが、アレルゲン表示の義務化がきっかけで使用は限られてきた。最近、発酵生産技術が向上し、カビ由来のキトサンが商品化されるようになった。発明者らはポリカチオン性物質としてサケ由来のプロタミンを永年取り扱ってきたが、地球温暖化の影響でサケ資源の限界が見えてきており、新しいポリカチオン性物質としてキトサンに注目した。キトサンはタンク培養による発酵生産物でもあることから、資源的にも見通しがたつという点でプロタミンに代わる機能性物質として期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-145659号公報
【特許文献2】特開2020-62003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キトサンには特有の収斂味があり(松田,食品危害微生物のターゲット制御,幸書房,2009)、調味料や食品用日持向上剤として使用するにはその収斂味がネックとなっていた。このため醸造酢とキトサンを組み合わせ、食品保存剤としての日持ち向上効果と調味料としての官能面の双方を満たす調和のとれた調味酢の開発が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明は、食品の日持ち向上効果と調味料としての風味の双方を満たすキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤、食品及び食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは醸造酢とキトサンを含むキトサン含有醸造酢について、収斂味を低減しつつ日持向上効果を発揮する配合について種々検討したところ、意外にも、ある特定の範囲の配合において、日持向上効果を有しつつ、キトサンの収斂味をマスキングすることができるとの知見を得た。
【0012】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、醸造酢と、キトサンと、を含有し収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢であって、前記醸造酢の酢酸酸度が5~30%の範囲内であり、前記キトサンが、濃度比で前記醸造酢の1/10~1/60の範囲内である、キトサン含有醸造酢を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記キトサン含有醸造酢を含有することを特徴とする、食品用日持向上剤を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記キトサン含有醸造酢を含有する、食品を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記キトサン含有醸造酢を食品に添加する、食品の日持向上方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤、食品及び食品の日持ち向上方法によれば、食品の日持ち向上効果と調味料としての風味の双方を満たすキトサン含有醸造酢、食品用日持向上剤、食品及び食品の日持向上方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る食品用日持向上剤を添加したパスタの保存試験(15℃)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るキトサン含有醸造酢について説明する。本実施形態のキトサン含有醸造酢は、醸造酢と、キトサンと、を含有し収斂味が抑制されたキトサン含有醸造酢であって、前記醸造酢の酢酸酸度が5~30%の範囲内であり、前記キトサンが、濃度比で前記醸造酢の1/10~1/60の範囲内である。
【0019】
本実施形態において、醸造酢とは、食酢品質表示基準(平成20年10月16日農林水産省告示第1507号)に規定された醸造酢をいい、1)穀類(酒かす等の加工品を含む。以下同じ。)、果実(果実の搾汁、果実酒等の加工品を含む。以下同じ。)、野菜(野菜の搾汁等の加工品を含む。以下同じ。)、その他の農産物(さとうきび等及びこれらの搾汁を含む。以下同じ。)若しくははちみつを原料としたもろみ又はこれにアルコール若しくは砂糖類を加えたものを酢酸発酵させた液体調味料であって、かつ、氷酢酸又は酢酸を使用していないもの;2)アルコール又はこれに穀類を糖化させたもの、果実、野菜、その他の農産物若しくははちみつを加えたものを酢酸発酵させた液体調味料であって、かつ、氷酢酸又は酢酸を使用していないもの;3)1及び2を混合したもの;4)1、2又は3に砂糖類、酸味料(氷酢酸及び酢酸を除く。)、調味料(アミノ酸等)、食塩等(香辛料を除く。以下同じ。)を加えたものであって、かつ、不揮発酸、全糖又は全窒素の含有率(それぞれ酸度を4.0%に換算したときの含有率をいう。以下同じ。)が、それぞれ1.0%、10.0%又は0.2%未満のもの、をいう。
【0020】
本実施形態において使用される、酢酸酸度が5~30%の範囲内の醸造酢のうち、酢酸酸度が5~20%までは一般的な高酸度醸造酢の製法で造ることができ、酢酸酸度30%醸造酢は20%醸造酢を凍結濃縮することにより製造することができる。また、市販の醸造酢のうち、酢酸酸度が上記範囲内のものを選択することもできる。例えば、酢酸酸度20%の高酸度醸造酢(DV-20(商標)、内堀醸造社製)が挙げられる。
【0021】
本実施形態において使用されるキトサンは、微生物の発酵生産物由来のキトサン、エビ・カニ由来のキトサンのいずれを使用することができ、市販のキトサンを使用することもできる。
【0022】
本実施形態において、キトサン含有醸造酢は液状であることが好ましい。液状であれば、一般的な醸造酢と同様の使い方ができる。
【0023】
本実施形態において、キトサン含有醸造酢は粉末状であることもできる。粉末状であれば、濃度を60%以上まで高めることができる。
【0024】
次に、本発明の食品用日持向上剤について説明する。本実施形態に係る食品用日持向上剤は、上述したキトサン含有醸造酢を含有することを特徴とする。
【0025】
本実施形態の食品用日持向上剤の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤、液状、ペースト状としてよい。粉末状、粒状又は顆粒状とした場合、保管コストや輸送コストを大きく減少させることができるので好ましい。
【0026】
本実施形態において、食品用日持向上剤の添加量は、食品の重量に対し0.1~3.0%であることが好ましく、0.2~1.0%であることがより好ましく、0.3~0.8%であることがさらに好ましい。
【0027】
次に、本発明の食品の日持向上方法について説明する。本実施形態に係る食品の日持向上方法は、上述したキトサン含有醸造酢を食品に添加することを特徴とする。
【0028】
添加のタイミングは特に限定されることなく、食品の調理前、調理中、調理後のいずれかに、必要量のキトサン含有醸造酢を食品に添加すればよい。
【0029】
本実施形態に係るキトサン含有醸造酢は、天然抗菌物質や日持向上効果のある食品添加物と組み合わせて、食品全般に利用できる。本実施形態において、「食品」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等を幅広く含むものである。
【実施例0030】
1.醸造酢の濃度(酢酸酸度)とキトサン配合量との関係
醸造酢の濃度(酢酸酸度)とキトサン配合量との関係を、味を指標にして、食品に添加する濃度を、予備実験から見込みをつけた後、各種高酸度ビネガー(5%ビネガー:内堀醸造社製10%ビネガーを水で2倍希釈、10%ビネガー:内堀醸造社製10%ビネガー、15%ビネガー:キューピー醸造社製15%ビネガー、30%ビネガー:内堀醸造社製20%ビネガーを自社にて凍結濃縮)と植物性キトサンであるキトグリーン(商標、セティ社製)を用いて以下の試験を行った。
【0031】
まず、A群として、酢酸酸度として500、1000、1500、3000ppmの酢酸濃度系列を用意した。B群として、酢酸酸度500ppmの溶液にキトサン100ppm、酢酸酸度1000ppmの溶液にキトサン200ppm、酢酸酸度1500ppmの溶液にキトサン300ppm、酢酸酸度3000ppmの溶液にキトサンを600ppm添加した濃度系列を用意した。
【0032】
次に、A群を横軸に、B群を縦軸に並べ、表1のマトリックスを作成した。マトリックスに従って、AとBを等量ずつ混ぜた。例えば、A1とB1を等量ずつ混ぜると酢酸濃度500ppm、キトサン濃度50ppmのA1B1ができ、A1/B1比は10になる。以下同様に配合し、A/Bを計算して表1を完成した。
【0033】
【表1】
【0034】
A1B1からA4B4までの試験区について官能試験によりキトサンの収斂味について検査を行った。官能試験の結果を表2に示す。
【0035】
パネラー5名による4段階評価で、評価点として、「収斂味を感じない」場合を0とし、「収斂味をわずかに感じる」を1として、「収斂味を感じる」を2にして,「収斂味を顕著に感じる」を3とした。表2には5名の評価点の合計で示した。5点未満の組み合わせを収斂味を実用的に感じさせない組み合わせ(合格)とした。ただし、A4列は酸味が強すぎて収斂味の評価が困難だったので、水で1/2に希釈して評価した。したがって、官能試験の結果はA3列の一部と重なった。
【0036】
【表2】
【0037】
本官能試験の結果から、キトサンに対して一定比率の酢酸がキトサンの収斂味を減殺することが明らかとなった。すなわち、収斂味の少ない、官能的にも問題ないキトサン・酢酸(酸度)溶液はA/B比すなわち酢酸(酸度)/キトサン比が濃度比で10~60の範囲にあることがわかった。
【0038】
逆に、B/Aで考えた場合、キトサン/酢酸(酸度)比は濃度比で1/10~1/60になる。すなわち、キトサンを酢酸量の1/10から1/60の濃度比の範囲で添加すれば、収斂味が抑制されたキトサン・酢酸製剤が出来ることになる。
【0039】
2.パスタの官能試験および保存試験
30%の高酸度ビネガー(内堀醸造社製20%ビネガーを凍結濃縮して内製)にキトグリーン(商標、セティ社製)を3%(純度80%品を純品換算で添加、以下、本実施例では全て同様)溶解してキトサン含有醸造酢を有効成分とする食品用日持向上剤を調製した。
【0040】
そして、調製した食品用日持向上剤を用いてパスタの官能試験と保存試験を行った。市販の昭和産業社製スパゲッティ7分茹、200gを2Lのお湯で7分間茹で、冷水で2分間冷やした。水切り後、2等分して対照区と試験区とした。試験区は食品用日持向上剤の0.5%溶液、500mlに2分間浸漬後、水切りしてポリ容器3個に小分けした。対照区も同様に3個に小分けした。15℃に保存して、肉眼観察と、菌数測定(3個平均)を行った。結果を図1に示す。
【0041】
図1から対照区と比べて試験区の保存効果が優れていることが解る。5名による官能試験を1日後に行ったが、キトサン由来の収斂味について両試験区とも「問題無し」であった。なお、食品用日持向上剤の0.5%溶液中には酢酸1500ppm、キトサン150ppmが含まれる。
【0042】
3.ポテトサラダの官能試験および保存試験
酢酸酸度20%の高酸度酢(内堀醸造社製)に、キトグリーン(商標、セティ社製)を2%溶解してキトサン含有醸造酢を有効成分とする食品用日持向上剤を調製した。
【0043】
そして、これを用いてポテトサラダの保存試験を行った。材料は、茹でポテト130g、茹で人参10g、生キュウリ10g、マヨネーズ20g、塩1g、砂糖1gとした。出来上がったポテトサラダを、無添加対照区と、食品用日持向上剤を0.8%添加した区に分け、15℃で保存した。
【0044】
保存試験と官能試験の結果を表3に示す。官能試験では、無添加区の「基準」に対して添加区はキトサン由来の収斂味について「問題なし」であった。対照区がD+6で腐敗したのに対し、食品用日持向上剤添加区はまだ風味に問題なく、生菌数は10の4乗のオーダーであった。5名による官能試検査を0日に行ったが試験区も「問題なし」であった。なお、食品用日持向上剤の0.8%溶液には酢酸1600ppm、キトサン120ppmが含まれる。
【0045】
【表3】
【0046】
4.キュウリ浅漬けの官能試験および保存試験
酢酸濃度15%の醸造酢(キューピー醸造社製)にキトグリーン(商標、セティ社製)を0.5%添加溶解して食品用日持向上剤を調製し、キュウリ浅漬けの保存試験を行った。
【0047】
試験方法は次の通りである。キュウリを縦に半分に切り、それを5cm幅程度に切り水洗いした。次に、200ppmの次亜塩素酸水に切ったキュウリを10分間浸漬した。その後3分間流水洗浄し、キュウリ重量と等量の6%食塩水を加えて5時間浸漬した。5時間経過後、食塩水からキュウリを取り出し、1試験区あたり100gずつ袋に分けた。キュウリと調味液を1:1の割合で混合した。調味液の処方は、白だし(5.0%)、食塩(2.0%)、グルタミン酸ナトリウム(0.5%)、食品用日持向上剤(1%)または5%醸造酢(1%)、水(91.5%:対照2区、日持向上剤区)または(92.5%:対照1区)とした。得られたキュウリ漬けを官能評価試験に供し、官能評価後は10℃で保存し保存試験に供した。
【0048】
結果を表4に示す。無添加対照区1がD+7で、乳酸菌の増殖による濁りを発生し、5%醸造酢対照区2が、D+10で同じく濁りを発生した。それに対して食品用日持向上剤添加区はD+14で、同じく濁りを発生した。結果として食品用日持向上剤の添加により、乳酸菌の増殖は抑制され、保存日数は4日間延長した。D+0における官能試験で食品用日持向上剤はキトサン由来の収斂味について官能的に問題がなかった。 なお、浅漬け漬け液の酢酸濃度は約1200ppm、キトサン濃度は約40ppmであった。
【0049】
【表4】
図1