(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049987
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両用ドアロック解除装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/20 20140101AFI20240403BHJP
E05B 79/22 20140101ALI20240403BHJP
E05B 85/12 20140101ALI20240403BHJP
【FI】
E05B79/20
E05B79/22 A
E05B85/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156537
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 誠司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 忠士
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ49
2E250KK01
2E250LL01
2E250PP13
2E250PP15
(57)【要約】
【課題】ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れか一方の解除操作時には,他方を作動させずに,ドアロック装置を軽快にロック解除し得る,車両用ドアロック解除装置を提供する。
【解決手段】ドアハンドル13及びキーシリンダ錠14と,ドアロック装置15とは相互分離機構29を介して接続され,この相互分離機構29は,ドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れか一方の解除操作時に,他方を原位置に休止させるように構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア(10)の閉鎖状態をロックするドアロック装置(15)と,該ドアロック装置(15)をロック解除すべくドア(10)に個別に配設されるドアハンドル(13)及びキーシリンダ錠(14)とを備える車両用ドアロック解除装置であって,
前記ドアハンドル(13)及びキーシリンダ錠(14)と前記ドアロック装置(15)とが相互分離機構(29)を介して接続され,該相互分離機構(29)は,前記ドアハンドル(13)及びキーシリンダ錠(14)の一方の解除操作時に,前記ドアハンドル(13)及びキーシリンダ錠(14)の他方を非操作位置に留めるように構成されることを特徴とする,車両用ドアロック解除装置。
【請求項2】
所定の解除方向(A)へ駆動されることで前記ドアロック装置(15)をロック解除し得る従動部材(30)と,前記ドアハンドル(13)の解除操作力を受けて前記従動部材(30)を前記所定の解除方向(A)へ駆動すべく,該従動部材(30)に離隔可能に係合する第1駆動部材(31)と,前記キーシリンダ錠(14)の解除操作力を受けて前記従動部材(30)を前記所定の解除方向(A)へ駆動すべく,該従動部材(30)に離隔可能に係合する第2駆動部材(32)とで前記相互分離機構(29)が構成され,前記第1及び第2駆動部材(31,32)の一方が前記従動部材(30)を前記所定の解除方向(A)へ駆動するときは,前記従動部材(30)が前記第1及び第2駆動部材(31,32)の他方から離隔することを特徴とする,請求項1に記載の車両用ドアロック解除装置。
【請求項3】
前記相互分離機構(29)を収容するケース(12)に,前記従動部材(30)のガイド孔(52)を貫通して該従動部材(30)を所定の解除方向(A)に沿って摺動可能に誘導するガイド軸(53)が配設されることを特徴とする,請求項2に記載の車両用ドアロック解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,車両用ドアロック解除装置に関し,特に,ドアに個別に配設されるドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れの解除操作によってもドアロック装置をロック解除し得るようにした車両用ドアロック解除装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック解除装置において,ドアハンドルとドアロック装置との間をケーブル等で接続し,ドアハンドルの解除操作によってドアロック装置をロック解除するようにしたものは,例えば,下記特許文献1に開示されるように公知である。
【0003】
このような車両用ドアロック解除装置において,さらに,キーシリンダ錠とドアロック装置との間をケーブル等により接続し,キーシリンダ錠を所定のキーをもって解除操作することによっても,ドアロック装置をロック解除し得るようにしたものも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,ドアロック装置の構造上,キーシリンダ錠とドアロック装置とを直接的に連結することが不可能な場合,キーシリンダ錠を,ドアハンドルを経由してドアロック装置に一連で連結することが考えられるが,そのようにすると,ドアハンドルの操作時にキーシリンダ錠を作動させたり,また逆にキーシリンダ錠の操作時にはドアハンドルを作動させたりして,ドアハンドルやキーシリンダ錠の操作荷重が増して,それぞれの操作性を悪くする不都合が生じる。
【0006】
本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであり,ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れか一方の解除操作時には,他方を非操作位置に留めて,ドアロック装置を軽快にロック解除し得る,車両用ドアロック解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,ドアの閉鎖状態をロックするドアロック装置と,該ドアロック装置をロック解除すべくドアに個別に配設されるドアハンドル及びキーシリンダ錠とを備える車両用ドアロック解除装置であって,前記ドアハンドル及びキーシリンダ錠と前記ドアロック装置とが相互分離機構を介して接続され,該相互分離機構は,前記ドアハンドル及びキーシリンダ錠の一方の解除操作時に,前記ドアハンドル及びキーシリンダ錠の他方を非操作位置に留めるように構成されることを第1の特徴とする。
【0008】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,所定の解除方向へ駆動されることで前記ドアロック装置をロック解除し得る従動部材と,前記ドアハンドルの解除操作力を受けて前記従動部材を前記所定の解除方向へ駆動すべく,該従動部材に離隔可能に係合する第1駆動部材と,前記キーシリンダ錠の解除操作力を受けて前記従動部材を前記所定の解除方向へ駆動すべく,該従動部材に離隔可能に係合する第2駆動部材とで前記相互分離機構が構成され,前記第1及び第2駆動部材の一方が前記従動部材を前記所定の解除方向へ駆動するときは,前記従動部材が前記第1及び第2駆動部材の他方から離隔することを第2の特徴とする。
【0009】
尚,前記ドアハンドルは,後述する本発明の実施形態中のインサイドドアハンドル13に対応する。また前記従動部材は従動スライダ30に,前記第1駆動部材は第1駆動スライダ31に,前記第2駆動部材は第2駆動スライダ32にそれぞれ対応する。
【0010】
さらに,本発明は,第2の特徴に加えて,前記相互分離機構を収容するケースに,前記従動部材のガイド孔を貫通して該従動部材を所定の解除方向に沿って摺動可能に誘導するガイド軸が配設されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば,ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れか一方の解除操作時には,他方は非操作位置に留められ,負荷とはならないので,ドアロック装置を軽快にロック解除することが可能となり,ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れの操作性も良好となる。
【0012】
本発明の第2の特徴によれば,比較的少ない構成部材をもって相互分離機構を構成でき,構造が簡単で安価な車両用ドアロック解除装置を提供することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば,相互分離機構を収容するケースに,従動部材を所定の解除方向に沿って摺動可能に誘導するガイド軸が配設されることで,従動部材を常に傾きのない安定した姿勢に保持することができる。したがって,ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れの解除操作によっても,第1又は第2駆動部材を介して従動部材を所定の解除方向にスムーズに駆動することができ,ドアハンドル及びキーシリンダ錠の何れの操作性も,より良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るドアロック解除装置を備える車両のドアの内側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
先ず
図1において,車両のドア10の内側部に,本発明のドアロック解除装置11のケース12が固着され,このケース12には,車内から操作されるインサイドドアハンドル13が軸支される。またドア10の外側部には,所定のキーをもって回動操作されるキーシリンダ錠14が取り付けられる。さらに,ドア10には,このドア10の閉鎖状態をロックするドアロック装置15が設けられ,このドアロック装置15は,前記インサイドドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れの解除操作によってもロック解除されるようになっている。
【0017】
その構成を以下に詳しく説明する。
【0018】
図2~
図5において,前記ケース12は,車両前後方向に長い直方体をなしており,その四箇所の角部に突設される支片12aがボルト等によりドア10に固着される。
【0019】
このケース12の表面側(車室側)にはケース12の前部上方に位置する第1前部室17が設けられ,ケース12の裏面側には,ケース12の後部に位置する後部室19と,第1前部室17の下方に位置する第2前部室18とが設けられる。
【0020】
また,ケース12の前後方向中間部には,ケース12の表面及び裏面に開口する中間室20が設けられる。
【0021】
さらに,ケース12には,第1前部室17及び中間室20間を仕切る隔壁21と,後部室19の底面から起立して中間室20に臨む凸壁22とが設けられる。
【0022】
前記隔壁21には,中間室20側に突出する支持壁13が突設され,この支持壁13とケース12の上側壁とにおいて,第1前部室17に配置される前記インサイドドアハンドル13の上下一対のボス13aが支軸24により支持される。
【0023】
而して,インサイドドアハンドル13は,その表面がケース12の表面と面一となる原位置から車室側へ回動可能であり,このインサイドドアハンドル13を常に原位置に付勢する捩じりコイルばねよりなる戻しばね25が前記支軸24に装着される。インサイドドアハンドル13の原位置は,例えばインサイドドアハンドル13の内側面を前記隔壁21の先端部に当接させることにより規定される(
図5参照)。
【0024】
このインサイドドアハンドル13には,その基部から中間室20側に向かって突出する作動アーム27が一体に形成される。
【0025】
図4,
図5,
図7及び
図8に示すように,後部室19には,従動スライダ30と,その上下両側に小間隙を挟んで並ぶ第1駆動スライダ31及び第2駆動スライダ32とよりなる相互分離機構29が配設される。
【0026】
従動スライダ30は,車両前後方向に沿って摺動可能であり,その摺動を誘導するため,後部室19の底面に形成されて車両前後方向に沿って延びる一対のレール溝33に,従動スライダ30に形成される一対のスライド突起34が摺動可能に係合される。さらに,従動スライダ30の倒れ,及びレール溝33からの離脱を防ぎながら前記摺動を確保すべく,レール溝33に平行して従動スライダ30のガイド孔52を摺動可能に貫通するガイド軸53の両端部が,前記凸壁22と後部室の後端壁19aとにより固定支持される。
【0027】
この従動スライダ30は,後部室19の後端壁19aを貫通する第1ケーブル41を介して前記ドアロック装置15(
図1)に接続される。符号41aは,第1ケーブル41のガイドチューブを示す。
【0028】
而して,従動スライダ30は,ロック状態のドアロック装置15によって規定される原位置から車両前方に向かう所定の解除方向Aへ移動することにより,第1ケーブル41を牽引して前記ドアロック装置15をロック解除し得るようになっている。
【0029】
一方,前記第1及び第2駆動スライダ31,32の車両前後方向に沿う摺動を誘導するため,後部室19の底面に形成されるレール溝35,37に,第1及び第2従動スライダ31,32にそれぞれ形成されるスライド突起34,36が摺動可能にそれぞれ係合される。さらに,これら第1及び第2駆動スライダ32の倒れ,及びレール溝35,37からの離脱を防ぎながら前記摺動を確保すべく,ケースカバー40が第1及び第2駆動スライダ31,32を覆うようにしてケース12に取り付けられる。
【0030】
そのケースカバー40の取り付けに当たっては,
図4に示すように,ケースカバー40の前端部の一対の爪片40aが,ケース12に設けられる受け孔46に係合されると共に,ケースカバー40の後端部の一対の突片40bがビス43によりケース12に固着される。
【0031】
このケースカバー40には,第1及び第2駆動スライダ31,32と,後部室19の上下両側壁19bとのそれぞれ間隙を調整するシム壁40cが一体に形成されている。
【0032】
図3,
図6及び
図7に示すように,第1駆動スライダ31の前端部には,前記インサイドドアハンドル13の作動アーム27に挿入される角形の連結孔31aが,また後端部には,前記従動スライダ30の後端の受圧面30aの一側部に離隔可能に当接係合する第1フック31bがそれぞれ設けられる。
【0033】
従動スライダ30が原位置にあるとき,その受圧面30aに第1フック31bを単に当接させる第1駆動スライダ31の原位置は,前記戻しばね25により原位置に保持されるインサイドドアハンドル13によって規定される。
【0034】
また,
図6に示すように,第2駆動スライダ32の前端部にはケーブル接続ボス32aが設けられ,このケーブル接続ボス32aには,前記キーシリンダ錠14(
図1)の回転部(図示せず)から延出する第2ケーブル42が接続される。その際,この第2ケーブル42は,第2前部室18の前端壁18aを貫通して第2前部室18を通過するように配置される。符号42aは,この第2ケーブル42のガイドチューブである。
【0035】
また,第2駆動スライダ32の後端部には,前記従動スライダ30の受圧面30aの他側部に離隔可能に当接係合する第2フック32b(
図2,
図6参照)が設けられる。この第2フック32bを原位置の従動スライダ30の後端面に単に当接させる第2駆動スライダ32の原位置は,キーシリンダ錠14の図示しない戻しばねにより規定される。
【0036】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0037】
ドア10の閉鎖状態をロックしているドアロック装置15をロック解除するため,先ず,例えばインサイドドアハンドル13を,その原位置から車内側に回動すると,作動アーム27が第1駆動スライダ31を車両前方へ牽引するので,この第1駆動スライダ31の第1フック31bが従動スライダ30の受圧面30aを押圧することにより,従動スライダ30は所定の解除方向Aへ駆動され,第1ケーブル41を牽引して,ドアロック装置15をロック解除することができる。
【0038】
その間,第2駆動スライダ32は,その原位置に残る。つまり,第2駆動スライダ32は,第1駆動スライダ31及び従動スライダ30から分離され,従動スライダ30の解除方向Aへの移動に干渉せず,負荷とはならない。したがって,インサイドドアハンドル13の解除操作を軽快に行うことができ,その操作性が良好となる。
【0039】
また,上記とは別に,キーシリンダ錠14を所定のキーをもって解錠すると,キーシリンダ錠14の回転部が第2ケーブル42を介して第2駆動スライダ32を車両前方へ牽引するので,この第2駆動スライダ32の第2フック32bが従動スライダ30の受圧面30aを押圧することにより,従動スライダ30が所定の解除方向Aへ駆動され,それに伴い第1ケーブル41を牽引して,ドアロック装置15をロック解除することができる。
【0040】
この場合は,第1駆動スライダ31は,その原位置に残る。つまり,第1駆動スライダ31は,第2駆動スライダ32及び従動スライダ30から分離され,従動スライダ30の解除方向Aへの移動に干渉せず,負荷とはならない。したがって,キーシリンダ錠14の解除操作も軽快に行うことができ,その操作性も良好となる。
【0041】
このように,インサイドドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れか一方の解除操作時には,他方を,その原位置に休止させて,前記一方の解除操作の負荷となることを回避でき,インサイドドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れの操作性をも向上させることができる。
【0042】
しかも,従動スライダ30,第1駆動スライダ31及び第2駆動スライダ32よりなる相互分離機構29は,構成部材が少ないので,構造が簡単で安価なドアロック解除装置を提供することができる。
【0043】
また,相互分離機構29を収容するケース12には,従動スライダ30を解除方向Aに沿って摺動可能に誘導するガイド軸53が配設されるので,従動スライダ30を常に傾きのない安定した姿勢に保持することができ,したがって,インサイドドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れの解除操作によっても,第1又は第2駆動スライダ31,32を介して従動スライダ30を解除方向Aへスムーズに駆動することができ,インサイドドアハンドル13及びキーシリンダ錠14の何れの操作性も,より良好にすることができる。
【0044】
以上,本発明の実施形態について説明したが,本発明は前記実施形態に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。例えば,前記インサイドドアハンドル13を,ドア10の外側に配設されるアウトサイドドアハンドルに置き替えることもできる。
【符号の説明】
【0045】
10・・・ドア
11・・・ドアロック解除装置
12・・・ケース
13・・・ドアハンドル(インサイドドアハンドル)
14・・・キーシリンダ錠
15・・・ドアロック装置
29・・・相互分離機構
30・・・従動部材(従動スライダ)
31・・・第1駆動部材(第1駆動スライダ)
32・・・第2駆動部材(第2駆動スライダ)
52・・・ガイド孔
53・・・ガイド軸
A・・・・所定の解除方向