(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049996
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240403BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240403BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240403BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240403BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20240403BHJP
【FI】
E02F9/00 C
B60K1/04
H01M50/249
H01M50/271 S
H01M50/244 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156550
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 講介
(72)【発明者】
【氏名】谷▲崎▼ 麻純
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 雄介
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA19
3D235BB17
3D235BB20
3D235CC15
3D235DD28
3D235FF02
3D235FF44
5H040AA03
5H040AS06
5H040AY02
5H040AY10
(57)【要約】
【課題】走行用駆動源としての電動モータに電力を供給する複数のバッテリを下部走行体へとより適切に搭載可能な建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板36を有し、上面板32に作業装置10を備える上部旋回体6の取り付け部としての円筒体35と下面板34に第1開口部341とを有するシャーシ30を含む下部走行体2と、下部走行体2に搭載される走行用駆動源としての電動モータMとを備える。油圧ショベル1は、電動モータMに電力を供給する複数のバッテリBと、複数のバッテリBが搭載されるベースカバー51とを有するバッテリアッセンブリ50を備え、バッテリアッセンブリ50は、複数のバッテリが一対の側面板36の間に画成されるシャーシ30の内部空間Vに第1開口部341を介して格納され、ベースカバー51がシャーシ30に取り付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板を有し、上面に作業装置を備える上部旋回体の取り付け部と下面に開口部とを有するシャーシを含む下部走行体と、前記下部走行体に搭載される走行用駆動源としての電動モータとを備えた建設機械であって、
前記電動モータに電力を供給する複数のバッテリと、前記複数のバッテリが搭載されるベースカバーとを有するバッテリアッセンブリを備え、
前記バッテリアッセンブリは、前記複数のバッテリが前記一対の側面板の間に画成される前記シャーシの内部空間に前記開口部を介して格納され、前記ベースカバーが前記シャーシに取り付けられる建設機械。
【請求項2】
前記電動モータは、前記シャーシに対して車軸を支持するケーシングに取り付けられ、
前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、前記車軸上に位置する部分を含む範囲に格納される
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、後輪が取り付けられた車軸上に位置する部分を含む範囲に格納される請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ベースカバーは、前記複数のバッテリが搭載される基板部と、前記基板部の前端から前方側に向かうにつれて下方側に延びる傾斜部とを有する請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記シャーシは、前記一対の側面板間を延びるビームを含み、
前記ベースカバーは、前記複数のバッテリよりも前方側で上下方向に延び、前記ビームに取り付けられる取り付けカバーを有し、
前記取り付けカバーの下端部には、開口が形成されている
請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記シャーシの前記複数のバッテリの上方側に位置する部分には、排気口が形成されている請求項1に記載の建設機械。
【請求項7】
前記シャーシの下面には、前記シャーシから下方に延びる側部と、前記側部から車幅方向内側に延びる底部とを有するL字形状の支持ブラケットが車幅方向に間隔を空けて一対で取り付けられ、
前記ベースカバーは、前記一対の支持ブラケットの前記側部の間に挿入されて、前記底部により支持される
請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に関し、特に走行用駆動源としての電動モータに電力を供給する複数のバッテリを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械などの機体にバッテリを搭載するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、下部走行体と上部旋回体とを備えた油圧ショベルにおいて、上部旋回体の後部車体に、油圧ポンプを駆動するための電動モータへと電力を供給する複数のバッテリを搭載する構造が記載されている。また、特許文献2には、機体と、機体に搭載されたキャブとを備えたホイールローダにおいて、キャブの骨格柱体の下方に底板、縦板および横板からなる収納構造体を設け、当該収納構造体の内部にバッテリを配置する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5670274号公報
【特許文献2】特開2008-195348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設機械の下部走行体に走行用駆動源としての電動モータを搭載することがある。しかしながら、例えば特許文献1に記載の油圧ショベルのように、上部旋回体に電動モータへと電力を供給する複数のバッテリを搭載すると、バッテリから電動モータへの配線長さが長くなってしまい、電気的な損失の増大や部品点数の増加を招く。一方、例えば特許文献2に記載の構造では、複数のバッテリを搭載するためのスペースや、当該複数のバッテリを1つずつ建設機械に組み付ける作業を行うためのスペースを十分に確保することが難しい。また、複数のバッテリを建設機械に容易に組み付けることも求められる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走行用駆動源としての電動モータに電力を供給する複数のバッテリを下部走行体へとより適切に搭載可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板を有し、上面に作業装置を備える上部旋回体の取り付け部と下面に開口部とを有するシャーシを含む下部走行体と、前記下部走行体に搭載される走行用駆動源としての電動モータとを備えた建設機械であって、前記電動モータに電力を供給する複数のバッテリと、前記複数のバッテリが搭載されるベースカバーとを有するバッテリアッセンブリを備え、前記バッテリアッセンブリは、前記複数のバッテリが前記一対の側面板の間に画成される前記シャーシの内部空間に前記開口部を介して格納され、前記ベースカバーが前記シャーシに取り付けられる。
【0007】
この構成により、下部走行体のシャーシの内部空間に複数のバッテリを格納するため、比較的に多数のバッテリを搭載するためのスペースを十分に確保することができる。また、予め複数のバッテリをベースカバーに搭載したバッテリアッセンブリを用いることで、シャーシの内部空間で複数のバッテリを1つずつ組み付ける作業を行うためのスペースを考慮する必要がない。さらに、シャーシ下面の開口部から複数のバッテリを上記内部空間に挿入するため、複数のバッテリを容易に搭載位置に位置付けることができる。そして、複数のバッテリを下部走行体に搭載することで、複数のバッテリから電動モータへの配線長さの増長を抑制し、電気的な損失の増大や部品点数の増加を抑制することができる。したがって、本発明の建設機械によれば、走行用駆動源としての電動モータに電力を供給する複数のバッテリを下部走行体へとより適切に搭載可能となる。
【0008】
また、前記電動モータは、前記シャーシに対して車軸を支持するケーシングに取り付けられ、前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、前記車軸上に位置する部分を含む範囲に格納されることが好ましい。この構成により、電動モータと複数のバッテリとの距離を近づけ、複数のバッテリから電動モータへの配線長さの増長をより抑制し、電気的な損失の増大や部品点数の増加をより抑制することができる。
【0009】
また、前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、後輪が取り付けられた車軸上に位置する部分を含む範囲に格納されることが好ましい。この構成により、建設機械が前方に走行する際に、走行風を複数のバッテリへと導きやすくなる。その結果、複数のバッテリを良好に冷却することができる。
【0010】
また、前記ベースカバーは、前記複数のバッテリが搭載される基板部と、前記基板部の前端から前方側に向かうにつれて下方側に延びる傾斜部とを有することが好ましい。この構成により、建設機械が前方に走行する際に、傾斜部を介して走行風を複数のバッテリへと導くことができ、複数のバッテリを良好に冷却することができる。
【0011】
また、前記シャーシは、前記一対の側面板間を延びるビームを含み、前記ベースカバーは、前記複数のバッテリよりも前方側で上下方向に延び、前記ビームに取り付けられる取り付けカバーを有し、前記取り付けカバーの下端部には、開口が形成されていることが好ましい。この構成により、取り付けカバーによってベースカバーをシャーシに強固に取り付けつつ、建設機械が前方に走行する際に、取り付けカバーの開口を介して走行風を複数のバッテリへと導くことができ、複数のバッテリを良好に冷却することができる。
【0012】
また、前記シャーシの前記複数のバッテリの上方側に位置する部分には、排気口が形成されていることが好ましい。この構成により、例えば複数のバッテリの充電中において、複数のバッテリから排出される水素を排気口から排出し、水素がシャーシの内部空間に滞留することを抑制可能となる。また、シャーシの内部空間の雰囲気温度が高まることを抑制し、複数のバッテリを適切に保護することができる。
【0013】
また、前記シャーシの下面には、前記シャーシから下方に延びる側部と、前記側部から車幅方向内側に延びる底部とを有するL字形状の支持ブラケットが車幅方向に間隔を空けて一対で取り付けられ、前記ベースカバーは、前記一対の支持ブラケットの前記側部の間に挿入されて、前記底部により支持されることが好ましい。この構成により、バッテリアッセンブリをシャーシに対して容易に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建設機械によれば、走行用駆動源としての電動モータに電力を供給する複数のバッテリを下部走行体へとより適切に搭載可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベルを示す概略構成図である。
【
図2】下部走行体を上方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【
図3】下部走行体を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【
図4】シャーシの一部を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【
図5】バッテリアッセンブリを上方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【
図6】バッテリアッセンブリを上方側かつ車幅方向の左方側から視た斜視図である。
【
図7】バッテリアッセンブリが搭載された下部走行体を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【
図8】バッテリアッセンブリを下部走行体に組み付ける手順の一部を示す説明図である。
【
図9】バッテリアッセンブリの他の搭載スペースを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。以下の説明では、建設機械としての油圧ショベル1に搭乗した運転者を基準として、車両前後方向、車幅方向(左右方向)および上下方向を規定する。
【0017】
(油圧ショベル)
図1は、実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベル1を示す概略構成図である。
油圧ショベル1は、下部走行体2に配設された前輪3aおよび後輪3bを有する車輪3を駆動することで走行し、下部走行体2上に配設された上部旋回体6の作業装置10を操作することで掘削作業等の作業をすることが可能なホイール式油圧ショベルである。
【0018】
油圧ショベル1は、上部旋回体6が下部走行体2上に旋回ベアリング4を介して旋回可能に設けられている。上部旋回体6は、上部フレーム5を有し、上部フレーム5上の前部左側には運転室7が設けられ、運転室7の後方には、機関室9が設けられている。また、運転室7の右側の上部フレーム5の前方側中央部に作業装置10が配設されている。機関室9には、後述するブームシリンダ20、アームシリンダ22、バケットシリンダ24および図示しない旋回用油圧モータに圧油を供給するための図示しない油圧ポンプが収容される。また、機関室9には、図示しない油圧ポンプを駆動するための図示しないエンジンが収容されている。下部走行体2は、車体フレームとしてのシャーシ30(
図2参照)を有しており、シャーシ30に前輪3aおよび後輪3bが取り付けられる。また、下部走行体2には、走行駆動用の電動モータMおよびバッテリアッセンブリ50(
図3参照)が搭載されている。
【0019】
作業装置10は、ブーム12、アーム14及びバケット16を備えている。ブーム12は、上部フレーム5に回転可能に連結される。アーム14は、ブーム12に回転可能に連結される。バケット16は、アーム14に回転可能に連結される。作業装置10は、ブームシリンダ20を伸縮させることでブーム12を起伏し、アームシリンダ22を伸縮させることでアーム14を回動し、バケットシリンダ24を伸縮させることでアーム14の先端に取付けられたバケット16を回動することが可能である。ブームシリンダ20、アームシリンダ22およびバケットシリンダ24は、油圧により作動する。
【0020】
(下部走行体の構成)
次に、下部走行体2の構成について、
図2から
図4を参照しながら説明する。
図2は、下部走行体2を上方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
図3は、下部走行体2を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
図4は、シャーシ30の一部を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【0021】
(シャーシ)
シャーシ30は、下部走行体2を構成する車体フレームである。シャーシ30は、
図2から
図4に示すように、上面板(上面)32と、下面板(下面)34と、一対の側面板36とを有する。シャーシ30は、上面板32、下面板34および一対の側面板36の間に画成される内部空間Vを有している。
【0022】
上面板32は、車両前後方向に延びる。上面板32の車両前後方向における略中央部には、
図2に示すように、円筒体(取り付け部)35が配設されており、当該円筒体35上に上述した旋回ベアリング4を中心として上部旋回体6が旋回可能に取り付けられる。また、上面板32には、
図4に示すように、後述するバッテリアッセンブリ50の上方に位置するように、排気口32aが形成されている。上面板32の排気口32aの周囲には、
図2に示すように、排気口32aを上方側から覆い、後方に向けて開口する排気口カバー32bが設けられる。
【0023】
下面板34は、
図3および
図4に示すように、上面板32と上下方向で対向して設けられ、車両前後方向に延びる。下面板34は、下向きに開口して上記内部空間Vと連通する第1開口部(開口部)341および第2開口部342が形成されている。第1開口部341は、第2開口部342よりも車両前後方向の後部に設けられ、第2開口部342よりも大きく開口する。第1開口部341は、後述する後輪3bが取り付けられる図示しない車軸の車軸ケーシング(ケーシング)35Rの上方の位置を含んで開口する。また、下面板34には、第1開口部341の側方で下方に延び、ボルト挿通孔343aが形成されたフレーム側締結部343が車幅方向において一対で形成されている。さらに、下面板34の後端部近傍には、
図4に示すように、一対の支持ブラケット40が固定される。一対の支持ブラケット40は、車幅方向に互いに間隔を空けて、第1開口部341の側方に設けられる。支持ブラケット40は、下面板34から下方に延びる側部41と、側部41から第1開口部341側に向けて延びる底部42とを有するL字形状部材とされている。支持ブラケット40の底部42には、車両前後方向に互いに間隔を空けてボルト挿通孔40aが形成されている。
【0024】
一対の側面板36は、上面板32および下面板34の車幅方向の両端部に接続され、車両前後方向に延びる。一対の側面板36の間には、車幅方向に延びる補強部材としてのビーム38が接続されている。ビーム38には、後述するボルト83(
図7参照)を締結されるボス部381が車幅方向に互いに間隔を空けて2つ設けられている。
【0025】
以上のように構成されるシャーシ30には、
図3に示すように、下面板34の前端部近傍に、車幅方向に延びる図示しない車軸が車軸ケーシング(ケーシング)35Fを介して回転可能に取り付けられ、当該車軸の先端部に左右の前輪3aが取り付けられる。また、下面板34の後端部近傍には、車幅方向に延びる図示しない車軸が車軸ケーシング35Rを介して回転可能に取り付けられ、当該車軸の先端部に左右の後輪3bが取り付けられる。本実施形態において、車軸ケーシング35Rには、走行駆動用の電動モータMが固定されており、当該電動モータMからの回転駆動力が図示しない動力伝達機構を介して車軸へと伝達されることにより、油圧ショベル1が走行する。
【0026】
(バッテリアッセンブリ)
また、本実施形態において、下部走行体2には、上記電動モータMへと電力を供給するためのバッテリアッセンブリ50が搭載される。以下、
図5から
図7を参照しながら、バッテリアッセンブリ50の構成について説明する。以下の説明では、バッテリアッセンブリ50が下部走行体2に搭載された状態を基準として、各構成要素の方向を規定する。
図5は、バッテリアッセンブリ50を上方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図であり、
図6は、バッテリアッセンブリ50を上方側かつ車幅方向の左方側から視た斜視図である。また、
図7は、バッテリアッセンブリ50が搭載された下部走行体2を下方側かつ車幅方向の右方側から視た斜視図である。
【0027】
(複数のバッテリ)
図5および
図6に示すように、バッテリアッセンブリ50は、複数のバッテリBがベースカバー51に搭載されたものである。なお、
図5では、複数のバッテリBに接続されるケーブル類の記載を省略している。複数のバッテリBは、本実施形態では、6つのバッテリB1、B2、B3、B4、B5、B6を含む。各バッテリB1~B6は、例えば、プラグイン充電および給電が可能なリチウムイオン二次電池が用いられ、図示しない複数のバッテリセルを接続したバッテリモジュールである。各バッテリB1~B6は、
図6に示すように、ケーブル71により電気的に直列接続される。また、バッテリB6は、ベースカバー51に形成されたケーブル孔510を通して延びるケーブル72により、電動モータMに電気的に接続される。なお、複数のバッテリBを充電するために、図示しないエンジンにより駆動されるジェネレータを油圧ショベル1に搭載してもよい。
【0028】
また、バッテリB1は、ケーブル73、74およびグランド接続切り替えスイッチ75を介してベースカバー51に電気的に接続されている。それにより、バッテリアッセンブリ50の下部走行体2への搭載時に複数のバッテリB1~B6の基準電位が接地電位される。グランド接続切り替えスイッチ75は、バッテリB1とベースカバー51との電気的な接続および接続の解除が可能なスイッチである。例えば、油圧ショベル1を比較的に長期にわたって使用しないときや、電気系整備などを行うときに、作業者がグランド接続切り替えスイッチ75を操作して上記接続を解除することができる。
【0029】
(ベースカバー)
ベースカバー51は、長方形状の基板部52と、基板部52の車両前後方向の前端52aから延びる傾斜部53とを有する。基板部52は、
図7に示すように、シャーシ30に取り付けられた2つの支持ブラケット40の底部42に載置される部分である。基板部52の車幅方向の長さは、第1開口部341よりも長く、2つの支持ブラケット40の側部41同士の車幅方向における距離よりもわずかに短い程度とされている。傾斜部53は、基板部52の前端52aから離れるにつれて、すなわち、車両前後方向の後方側から前方側に向かうにつれて、下方側に延びるように形成されている。
【0030】
(ベースカバーへのバッテリ搭載構造)
ベースカバー51への複数のバッテリBの搭載構造について説明する。ベースカバー51の基板部52上には、複数のバッテリB1~B6が3つずつ並んで、間隔を空けて2列に配置される。以下、基板部52の前端52a側の複数のバッテリB1~B3をまとめて「前列のバッテリBF」と称し、基板部52の後端52b側の複数のバッテリB4~B6をまとめて「後列のバッテリBR」と称する。
【0031】
基板部52上には、前列のバッテリBFの下部における前面および側面を覆うコの字型の第1ブラケット61が取り付けられている。また、基板部52上には、後列のバッテリBRの下部における後面および側面を覆うコの字型の第2ブラケット62が取り付けられている。さらに、基板部52上には、前列のバッテリBFの側面および後列のバッテリBRの側面を両側から挟み込む第3ブラケット63が取り付けられている。第3ブラケット63は、前列のバッテリBFと後列のバッテリBRとの間を延びる連結部631と、上記側面と当接する当接部632とを含み、当接部632が基板部52に固定される。
【0032】
また、前列のバッテリBFの上方および後列のバッテリBRの上方には、それぞれ第4ブラケット64が配置される。第4ブラケット64は、車幅方向に延びる板状部641と、板状部641から下方に延びて上記側面を両側から挟み込む当接部642とを有する。第4ブラケット64は、板状部641の車幅方向の両端部に、上下方向に延びて基板部52に係止され、板状部641を基板部52に向けて押圧可能なステー65が取り付けられている。これにより、前列のバッテリBFおよび後列のバッテリBRが上記第1ブラケット61、第2ブラケット62、第3ブラケット63および第4ブラケット64によってベースカバー51に移動不能に搭載される。
【0033】
(ベースカバーの取り付け構造)
ベースカバー51をシャーシ30に取り付けるための構造について説明する。ベースカバー51は、上述したように、基板部52がシャーシ30に取り付けられた支持ブラケット40の底部42上に載置される。
図5および
図6に示すように、基板部52の車幅方向の両端部には、ボルト81(
図7参照)が締結されるボス部が形成されたカバー側締結部522が設けられている。カバー側締結部522は、
図7に示すバッテリアッセンブリ50のシャーシ30への取り付け時において、シャーシ30のフレーム側締結部343と互いに当接する。カバー側締結部522は、上記ボルト挿通孔343a(
図4参照)を介して車幅方向外側から挿通されるボルト81により、当該フレーム側締結部343に締結される。
【0034】
また、
図5および
図6に示すように、基板部52の車幅方向の両端部には、車両前後方向に間隔を空けて、ボルト82(
図7参照)を締結可能な2つのカバー側ボス部523が設けられている。2つのカバー側ボス部523は、
図7に示すバッテリアッセンブリ50のシャーシ30への取り付け時において、支持ブラケット40のボルト挿通孔40a(
図4参照)と同軸に並ぶ。各カバー側ボス部523は、ボルト挿通孔40aを介して下方側から挿通されるボルト82により、支持ブラケット40に締結される。
【0035】
さらに、
図5および
図6に示すように、基板部52上には、前端52aの近傍で上方向に延びる板状の取り付けカバー54が取り付けられている。取り付けカバー54のベースカバー51側の下端部には、車幅方向に延びる切り欠きが設けられており、それにより、取り付けカバー54とベースカバー51との間に開口55が形成される。取り付けカバー54は、
図7に示すバッテリアッセンブリ50のシャーシ30への取り付け時において、ビーム38に前方側から当接する。また、取り付けカバー54には、ビーム38のボス部381(
図4参照)と同軸に並ぶボルト挿通孔54a(
図5、6参照)が形成されている。取り付けカバー54は、ボルト挿通孔54aを介して取り付けカバー54の前方側から挿通されるボルト83がボス部381に締結されることにより、ビーム38に固定される。
【0036】
なお、取り付けカバー54は、上記グランド接続切り替えスイッチ75が取り付け部としても機能する。グランド接続切り替えスイッチ75は、取り付けカバー54の車両前後方向の前面側に操作端が露出する。それにより、作業者が容易にグランド切り替えスイッチ75を操作することができる。なお、グランド接続切り替えスイッチ75は、操作端が基板部52の下面に露出するものであってもよい。
【0037】
(バッテリアッセンブリの組み付け手順)
図8は、バッテリアッセンブリ50を下部走行体2に組み付ける手順の一部を示す説明図である。バッテリアッセンブリ50は、作業者により下部走行体2に組み付けられる。作業者は、図中のステップS10の実線矢印に示すように、シャーシ30の第1開口部341を介して、バッテリアッセンブリ50の複数のバッテリBや取り付けカバー54を下方側から内部空間Vへと挿入する。このとき、ベースカバー51は、支持ブラケット40よりも車両前後方向の前方側に位置する。
【0038】
そして、作業者は、ステップS20に示すように、ベースカバー51の基板部52を支持ブラケット40よりも上方に位置づける。さらに、作業者は、ステップS20の実線矢印に示すように、バッテリアッセンブリ50を車両前後方向の後方側へとスライドさせる。それにより、
図7に示すように、ベースカバー51が支持ブラケット40の底部42と下面板34との間に差し込まれて当該底部42に載置され、バッテリアッセンブリ50の上下方向の位置決めがなされる。また、取り付けカバー54がビーム38に当接し、バッテリアッセンブリ50の車両前後方向の位置決めがなされる。その後、作業者は、上述したベースカバー51の取り付け構造にしたがって、ボルト81、82、83によってベースカバー51をシャーシ30に締結して固定する。これにより、バッテリアッセンブリ50は、複数のバッテリBが、シャーシ30の内部空間Vのうち、後輪3bが取り付けられた車軸上に位置する部分V1(
図3の破線参照)を含む範囲に格納されることになる。なお、バッテリアッセンブリ50を下部走行体2から取り外す際には、上記手順を逆に行えばよい。
【0039】
以上説明したように、実施形態の油圧ショベル(建設機械)1は、車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板36を有し、上面板(上面)32に作業装置10を備える上部旋回体6の取り付け部としての円筒体35と下面板(下面)34に第1開口部(開口部)341とを有するシャーシ30を含む下部走行体2と、下部走行体2に搭載される走行用駆動源としての電動モータMとを備えた油圧ショベルであって、電動モータMに電力を供給する複数のバッテリBと、複数のバッテリBが搭載されるベースカバー51とを有するバッテリアッセンブリ50を備え、バッテリアッセンブリ50は、複数のバッテリBが一対の側面板36の間に画成されるシャーシ30の内部空間Vに第1開口部341を介して格納され、ベースカバー51がシャーシ30に取り付けられる。
【0040】
この構成により、下部走行体2のシャーシ30の内部空間Vに複数のバッテリBを格納するため、比較的に多数のバッテリBを搭載するためのスペースを十分に確保することができる。また、予め複数のバッテリBをベースカバー51に搭載したバッテリアッセンブリ50を用いることで、シャーシ30の内部空間Vで複数のバッテリBを1つずつ組み付ける作業を行うためのスペースを考慮する必要がない。さらに、シャーシ30の下面板34の第1開口部341から複数のバッテリBを上記内部空間Vに挿入するため、複数のバッテリBを容易に搭載位置に位置付けることができる。そして、複数のバッテリBを下部走行体2に搭載することで、複数のバッテリBから電動モータMへの配線長さの増長を抑制し、電気的な損失の増大や部品点数の増加を抑制することができる。したがって、本発明の建設機械によれば、走行用駆動源としての電動モータMに電力を供給する複数のバッテリBを下部走行体2へとより適切に搭載可能となる。
【0041】
また、電動モータMは、シャーシ30に対して車軸を支持する車軸ケーシング(ケーシング)35Rに取り付けられ、複数のバッテリBは、内部空間Vのうち、車軸上に位置する部分を含む範囲に格納される。この構成により、電動モータMと複数のバッテリBとの距離を近づけ、複数のバッテリBから電動モータMへの配線長さの増長をより抑制し、電気的な損失の増大や部品点数の増加をより抑制することができる。
【0042】
また、複数のバッテリBは、内部空間Vのうち、後輪3bが取り付けられた車軸上に位置する部分V1(
図3の破線参照)を含む範囲に格納される。この構成により、油圧ショベル1が前方に走行する際に、走行風を複数のバッテリBへと導きやすくなる。その結果、複数のバッテリBを良好に冷却することができる。
【0043】
また、ベースカバー51は、複数のバッテリBが搭載される基板部52と、基板部52の前端から前方側に向かうにつれて下方側に延びる傾斜部53とを有する。この構成により、油圧ショベル1が前方に走行する際に、傾斜部53を介して走行風を複数のバッテリBへと導くことができ、複数のバッテリBを良好に冷却することができる。
【0044】
また、シャーシ30は、一対の側面板36間を延びるビーム38を含み、ベースカバー51は、複数のバッテリBよりも前方側で上下方向に延び、ビーム38に取り付けられる取り付けカバー54を有し、取り付けカバー54の下端部には、開口55が形成されている。この構成により、取り付けカバー54によってベースカバー51をシャーシ30に強固に取り付けつつ、油圧ショベル1が前方に走行する際に、取り付けカバー54の開口55を介して走行風を複数のバッテリBへと導くことができ、複数のバッテリBを良好に冷却することができる。
【0045】
また、シャーシ30の複数のバッテリBの上方側に位置する部分には、排気口32aが形成されている。この構成により、例えば複数のバッテリBの充電中において、複数のバッテリBから排出される水素を排気口32aから排出し、水素がシャーシ30の内部空間Vに滞留することを抑制可能となる。また、シャーシ30の内部空間Vの雰囲気温度が高まることを抑制し、複数のバッテリBを適切に保護することができる。
【0046】
また、シャーシ30の下面には、シャーシ30から下方に延びる側部41と、側部41から車幅方向内側に延びる底部42とを有するL字形状の支持ブラケット40が車幅方向に間隔を空けて一対で取り付けられ、ベースカバー51は、一対の支持ブラケット40の側部41の間に挿入されて、底部42により支持される。この構成により、バッテリアッセンブリ50をシャーシ30に対して容易に組み付けることができる。
【0047】
(変形例)
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、建設機械としてホイール式の油圧ショベル1を例に本発明の態様を説明したが、建設機械の種別はこれに限るものではなく、例えばホイールローダといった電動モータにより走行可能な建設機械に適用されてもよい。
【0048】
また、電動モータMは、後輪3bが取付けられた車軸の車軸ケーシング35Rに限らず、下部走行体2のいずれかに搭載されるものであればよい。例えば、電動モータMは、例えばホイールインモータなどであってもよい。
【0049】
また、複数のバッテリBは、内部空間Vのうち、後輪3bが取付けられた車軸上の位置を含む範囲以外の箇所に格納されてもよい。
図9は、バッテリアッセンブリ50の他の搭載スペースを示す説明図である。バッテリアッセンブリ50は、例えば複数のバッテリBが内部空間Vのうち
図9において破線で囲んだ範囲V2に格納されるように、下部走行体2に搭載されてもよい。すなわち、バッテリアッセンブリ50は、内部空間Vのうち、前輪3aが取り付けられた車軸上に位置する部分を含む範囲V2に格納されてもよい。この場合、複数のバッテリBなどが当該範囲V2で側面板36の間を延びるビームを避けるように格納されればよい。
【0050】
また、ベースカバー51は、傾斜部53を有するものでなくてもよい。
【0051】
また、バッテリアッセンブリ50をシャーシ30に取り付けることができれば、取り付けカバー54は、バッテリアッセンブリ50から省略されてもよい。また、取り付けカバー54の開口55は、複数のバッテリBの冷却を十分に行うことができれば、省略されてもよい。
【0052】
また、内部空間V内に水素が滞留することを抑制し、かつ、雰囲気温度が高まることを抑制することさえできれば、上面板32の排気口32aは、省略されてもよく、シャーシ30のいずれか他の位置に形成されてもよい。
【0053】
また、バッテリアッセンブリ50をシャーシ30に取り付けることができれば、支持ブラケット40に限らず、ベースカバー51を他の支持手段により支持するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 車輪
3a 前輪
3b 後輪
10 作業装置
30 シャーシ
32 上面板(上面)
32a 排気口
32b 排気口カバー
34 下面板(下面)
35 円筒体(取り付け部)
35F、35R 車軸ケーシング(ケーシング)
36 側面板
38 ビーム
40 支持ブラケット
41 側部
42 底部
50 バッテリアッセンブリ
51 ベースカバー
52 基板部
52a 前端
52b 後端
53 傾斜部
54 取り付けカバー
55 開口
341 第1開口部(開口部)
B、B1、B2、B3、B4、B5、B6 バッテリ
M 電動モータ
V 内部空間
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板を有し、上面に作業装置を備える上部旋回体の取り付け部と下面に開口部とを有するシャーシを含む下部走行体と、前記下部走行体に搭載される走行用駆動源としての電動モータとを備えた建設機械であって、
前記電動モータに電力を供給する複数のバッテリと、前記複数のバッテリが搭載されるベースカバーとを有するバッテリアッセンブリを備え、
前記バッテリアッセンブリの前記ベースカバーは、前記開口部の前縁から後方に離間した位置において、前記複数のバッテリを前記一対の側面板の間に画成される前記シャーシの内部空間に前記開口部を介して格納した状態で、前記シャーシに取付けられる建設機械。
【請求項2】
前記電動モータは、前記シャーシに対して車軸を支持するケーシングに取り付けられ、
前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、前記車軸上に位置する部分を含む範囲に格納される
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記複数のバッテリは、前記内部空間のうち、後輪が取り付けられた車軸上に位置する部分を含む範囲に格納される請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ベースカバーは、前記複数のバッテリが搭載される基板部と、前記基板部の前端から前方側に向かうにつれて下方側に延びる傾斜部とを有する請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
車幅方向に間隔を空けて設けられた一対の側面板を有し、上面に作業装置を備える上部旋回体の取り付け部と下面に開口部とを有するシャーシを含む下部走行体と、前記下部走行体に搭載される走行用駆動源としての電動モータとを備えた建設機械であって、
前記電動モータに電力を供給する複数のバッテリと、前記複数のバッテリが搭載されるベースカバーとを有するバッテリアッセンブリを備え、
前記バッテリアッセンブリは、前記複数のバッテリが前記一対の側面板の間に画成される前記シャーシの内部空間に前記開口部を介して格納され、前記ベースカバーが前記シャーシに取り付けられ、
前記シャーシは、車幅方向に前記一対の側面板同士を連結して延びるビームを含み、
前記ベースカバーは、前記複数のバッテリよりも前方側で上下方向に延び、前記ビームに取り付けられる取り付けカバーを有し、
前記取り付けカバーの下端部には、開口が形成されている建設機械。
【請求項6】
前記シャーシの前記複数のバッテリの上方側に位置する部分には、排気口が形成されている請求項1に記載の建設機械。
【請求項7】
前記シャーシの下面には、前記シャーシから下方に延びる側部と、前記側部から車幅方向内側に延びる底部とを有するL字形状の支持ブラケットが車幅方向に間隔を空けて一対で取り付けられ、
前記ベースカバーは、前記一対の支持ブラケットの前記側部の間に挿入されて、前記底部により支持される
請求項1に記載の建設機械。