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特開2024-50007観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラム
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  • 特開-観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050007
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/68 20060101AFI20240403BHJP
   B64G 1/24 20060101ALI20240403BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B64G1/68
B64G1/24 400
B64G3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156567
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】出水澤 大悟
(57)【要約】
【課題】デブリ検知専用のセンサを人工衛星に設置することなく、スペースデブリを観測することができる観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラムを提供する。
【解決手段】観測データ収集装置は、人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出手段と、上記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較手段と、上記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、上記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、上記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成手段と、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出手段と、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較手段と、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成手段と、を含む
観測データ収集装置。
【請求項2】
前記観測データ作成手段は、前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
請求項1に記載の観測データ収集装置。
【請求項3】
前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記算出手段は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を算出し、
前記比較手段は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記観測データ作成手段は、前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
請求項1又は請求項2に記載の観測データ収集装置。
【請求項4】
前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記観測データ作成手段は、前記複数の方位軸に関して前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
請求項2に記載の観測データ収集装置。
【請求項5】
人工衛星と、前記人工衛星を遠隔で管制する管制手段を有する地上管制局であって、請求項1、請求項2又は請求項4のいずれか一項に記載の観測データ収集装置をさらに有する地上管制局と、を含む
人工衛星システム。
【請求項6】
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出し、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
観測データ収集方法。
【請求項7】
前記スペースデブリの観測データの作成は、
前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出することにより行われる、
請求項6に記載の観測データ収集方法。
【請求項8】
前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を算出し、
前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
請求項6又は請求項7に記載の観測データ収集方法。
【請求項9】
前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記スペースデブリの観測データの作成は、
前記複数の方位軸に関して前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出することにより行われる、
請求項7に記載の観測データ収集方法。
【請求項10】
情報処理装置に、
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出機能と、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較機能と、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成機能と、を実現させる
観測データ収集プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラムに関し、特に微小なスペースデブリの軌道上観測に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な宇宙開発を将来にわたって進めていくためには、地球を取り巻くスペースデブリに関する問題を解決しなければならない。大型のスペースデブリは地上から観測できるので事前に対策することができるが、微小なスペースデブリ(以下、微小デブリと称する)は地上からは観測することが難しい。このため、人工衛星の軌道上にどのくらい微小デブリが存在しているのか正確に把握できておらず、解決すべき課題となっている。
【0003】
たとえ微小なデブリだとしても、運用中の宇宙機や、船外活動をしている宇宙飛行士に衝突すれば致命的な損傷を与えかねない。事前に衝突を回避するために、また衝突に備えて正しく防御設計するために、精度の高い微小デブリ環境のモデリングが必要とされている。そのためには、できるだけ多くの微小デブリの観測データが求められる。
【0004】
特許文献1は、地球周回軌道のスペースデブリを観測するスペースデブリ観測衛星に関するものである。特許文献1では、宇宙に放出されると自動的に風船状に膨らんで球形状になる風船状物体を、衛星本体に取り付けることや、風船状物体にデブリ検知センサを取り付けることが提案されている。特許文献1のスペースデブリ観測衛星では、球形状に膨らんだ表面もしくは内面に多数のデブリ検知センサが取り付けている。特許文献1のスペースデブリ観測衛星では、地球を周回中にスペースデブリが風船状物体に衝突し、衝突による衝撃により風船状物体が振動するとデブリ検知センサが作動し、検知信号が内部機器に送られ、スペースデブリを観測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-286500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スペースデブリのうち微小デブリは地上からは観測できず、観測データが不足している。そのため、特許文献1では、軌道上で微小デブリ検知専用のセンサを用いて観測する試みがなされているが、微小デブリ検知専用のセンサを設置した面に微小デブリが衝突しなければ検知することができない。このため、微小デブリ検知専用のセンサを用いた観測では、限られた軌道でしか微小デブリを検知することができない。特許文献1は、スペースデブリ観測衛星に関するものであるが、デブリ検知センサを用いてスペースデブリを観測するものであり、同様な課題がある。
【0007】
人工衛星の表面には他の機器も設置されるため、微小デブリ検知専用のセンサを人工衛星に設置できる面積は限られている。そのため、微小デブリ検知専用のセンサを設置することなく、どの角度から微小デブリが衝突してもその衝突を検知し、観測データを取得することが課題である。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、デブリ検知専用のセンサを人工衛星に設置することなく、スペースデブリを観測することができる観測データ収集装置、観測データ収集方法、及び観測データ収集プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る観測データ収集装置は、
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出手段と、
上記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較手段と、
上記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、上記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、上記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成手段と、を含む。
【0010】
本発明に係る観測データ収集方法は、
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出し、
上記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
上記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、上記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、上記スペースデブリの観測データを作成する。
【0011】
本発明に係る観測データ収集プログラムは、
情報処理装置に、
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出機能と、
上記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較機能と、
上記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、上記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、上記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、デブリ検知専用のセンサを人工衛星に設置することなく、スペースデブリを観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施形態の観測データ収集装置が適用される人工衛星システムを説明するためのブロック図である。
図1B図1Aの人工衛星システムの一例を示す外観図である。
図2図1Aの地上管制局の構成を説明するためのブロック図である。
図3図1Aの人工衛星システムの動作、及び観測データ収集方法を説明するためのフローチャートである。
図4】人工衛星と設定される方位軸との関係を説明するための外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
〔一実施形態〕
本発明の一実施形態による観測データ収集方法や、これを実現するためのシステムなどについて、説明する。図1Aは、本発明の一実施形態の観測データ収集装置が適用される人工衛星システムを説明するためのブロック図である。図1Bは、図1Aに示される人工衛星システムの一例を示す外観図である。図2は、図1Aの地上管制局の構成を説明するためのブロック図である。
【0016】
(実施形態の構成)
図1A及び図1Bの人工衛星システムは、地上管制局11と、人工衛星12と、を含んで構成される。図1A図1Bに示される地上管制局11は、遠隔で例えば地球上から人工衛星12を管制するものであり、また人工衛星12との間でデータを送受信する。本実施形態の地上管制局11は、図2に示すように、遠隔で例えば地球上から人工衛星12を管制する管制機能50と、本実施形態の観測データ収集装置と、を含む。
【0017】
人工衛星12は図1Aに示されるようにその内部に、データ処理系13、通信系14、姿勢系15、姿勢センサ16、及びアクチュエータ17を含んで構成される。
【0018】
人工衛星12のデータ処理系13は、CPU(Central Processing Unit)131、メモリ132、及び入出力インタフェース135を含んで構成される。データ処理系13のメモリ132は、プログラムデータ133、姿勢データ134などを保持している。データ処理系13は、地上管制局11と人工衛星12の間で送受信されるデータを生成・監視する。通信系14は、実際に地上管制局11と人工衛星12の間でデータを送受信する機能を果たす。
【0019】
人工衛星12の姿勢センサ16は、搭載されている人工衛星12の姿勢に関するデータを取得する。ここで姿勢センサ16は、例えば人工衛星12のX、Y、Z軸にそれぞれ搭載されていることとする。人工衛星12のアクチュエータ17は、入力信号に応じて人工衛星12の姿勢を変更又は維持する。人工衛星12の姿勢系15は、姿勢センサ16が取得したデータを基に、人工衛星12の姿勢データを算出すると共に、必要に応じてアクチュエータ17を制御することで、人工衛星12の姿勢を管理する。
【0020】
姿勢系15で算出された人工衛星12の姿勢に関するデータは、メモリ132内部のプログラムデータ133に従って、メモリ132に姿勢データ134として格納される。
【0021】
地上管制局11は図2に示される既存の管制機能50の遠隔制御によって、これまでも人工衛星12の姿勢に関する管制を担っている。このような管制機能50による姿勢制御においては、人工衛星12のメモリ132に格納された姿勢データ134を地上管制局11で受信し、人工衛星12の姿勢データを地上管制局11で解析する。姿勢データを解析した結果、もし必要が認められるときは、地上管制局11は人工衛星12にコマンドを送り、人工衛星12のアクチュエータ17を動かすことで、人工衛星12の姿勢を制御することができる。
【0022】
本実施形態の人工衛星システムでは、人工衛星12の姿勢に関するデータを姿勢データ134としてメモリ132へ一定時間毎に保存する。人工衛星12は、この姿勢データ134を地上管制局11に送信する。姿勢データ134を受信した地上管制局11では、一定時間毎の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を計算する。人工衛星12は宇宙空間で果たすべき機能に応じて、例えば地球との相対的な方位が設定され、これが維持されるように地上管制局11から管制される。人工衛星12は宇宙空間で果たすべき機能の通常運用時には、外乱に起因し想定される誤差範囲を含みつつも、姿勢データが一定となり、或いは周期性を維持しつつ姿勢データが一定となるように制御され、運用される。
【0023】
本実施形態の観測データ収集方法では、計算された姿勢角の変化値を用いて、人工衛星12に微小デブリの衝突があったかどうかを判定する。例えば、外乱に起因し想定される誤差範囲を越えて姿勢データが変化した場合、或いは外乱に起因し想定される誤差範囲を越えて周期性の姿勢データが変化した場合に、人工衛星12に微小デブリの衝突があり人工衛星12の姿勢が変化したものとみなす。人工衛星12に微小デブリの衝突があったと判定した場合は、姿勢角の変化値から微小デブリの衝突角度を算出し、微小デブリの観測データを生成する。
【0024】
なお、管制機能50、算出機能51、比較機能52及び観測データ作成機能53の各々は、管制手段、算出手段、比較手段及び観測データ作成手段に対応する。
【0025】
(実施形態の動作)
本実施形態の観測データ収集方法、及び人工衛星システムの動作について、フローチャートを参照しながら説明する。図3は、本実施形態の人工衛星システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、人工衛星12のデータ処理系13は、人工衛星12の姿勢に関するデータを収集する(S21)。姿勢系15で算出された人工衛星12の姿勢に関するデータは、データ処理系13のメモリ132内部のプログラムデータ133に従って、メモリ132に姿勢データ134として格納される。
【0027】
次に、人工衛星12は、通信系14を介してメモリ132の姿勢データ134を、地上管制局11にダウンリンクする(S22)。
【0028】
次に、地上管制局11は、ダウンリンクされた人工衛星12の姿勢データを一定時間毎に保存する。さらに地上管制局11は、時系列の姿勢データの差分の一例として、姿勢データの一定時間毎の差分から姿勢角の変化値を算出する(S23)。この姿勢角の変化値の算出は、図2の観測データ収集装置の算出機能51によって実行される。
【0029】
次に、地上管制局11は、姿勢角の変化値を閾値と比較し、姿勢角の変化値が閾値より高いか否かを判断する(S24)。この姿勢角の変化値と閾値との比較は、図2の観測データ収集装置の比較機能52によって実行される。姿勢角の変化値が閾値よりも大きければ(S24のYES)、人工衛星12に微小デブリの衝突があったと判定する(S25)。
【0030】
ここで、姿勢角の変化値と閾値との比較に用いる姿勢角の変化値は、例えば次の式で表される。次の式は、時系列の姿勢データの差分に対する絶対値を算出している。
姿勢角の変化値 = |姿勢データ(t) - 姿勢データ(t-1)|
なおここで、姿勢データ(t)は、時刻(t)に人工衛星12の姿勢センサ16によって取得された姿勢に関するデータであり、姿勢データ(t-1)は、時刻(t-1)に人工衛星12の姿勢センサ16によって取得された姿勢に関するデータである。なおここで、時刻(t)、時刻(t-1)、時刻(t-2)、・・・、時刻(t-n)は時系列を表す。
【0031】
微小デブリの衝突と判定した場合(S25)、姿勢データが取得された時刻と姿勢角の変化幅から、微小デブリの衝突時刻と衝突角度を算出し、微小デブリの観測データを作成する(S26)。この微小デブリの観測データの作成は、図2の観測データ収集装置の観測データ作成機能53によって実行される。その後、再びS21に戻る。
【0032】
姿勢角の変化値が閾値よりも小さいか等しいときは(S24のNO)、微小デブリの衝突以外の外乱或いは微小デブリの衝突はないと判定する(S27)。この微小デブリの衝突以外の外乱などと判定したときは、微小デブリの観測データを作成せずに、再びS21に戻る。
【0033】
(実施形態の効果)
本実施形態の観測データ収集方法によれば、算出機能51が人工衛星12の姿勢データの一定時間毎の差分から姿勢角の変化値を算出する算出処理を実行する。さらに比較機能52が、姿勢角の変化値を閾値と比較する比較処理を実行する。姿勢角の変化値が閾値よりも大きければ、人工衛星12に微小デブリの衝突があったと判定して、微小デブリの観測データを作成する観測データ生成処理を実行する。こうして、人工衛星12の姿勢データの一定時間毎の差分から姿勢角の変化値から、微小デブリの観測データを作成することができる。
【0034】
本実施形態によれば、微小デブリ検知専用のセンサを設置することなく、人工衛星12から地上管制局11に送られる人工衛星12の姿勢状態を表す姿勢データから、一定時間毎の姿勢変化値を算出し、その算出された値と予め設定した異常判定値とを比較することで微小デブリの衝突を検知する。姿勢センサ16がX、Y、Z軸にそれぞれ搭載されている場合、どの角度から微小デブリが人工衛星12に衝突しても衝突を検知できる。
【0035】
微小デブリの観測データの作成の際には、微小デブリの衝突と判定された場合の、姿勢データが取得された時刻と姿勢角の変化幅から、微小デブリの衝突時刻と衝突角度を算出し、微小デブリの観測データを作成することができる。
【0036】
よって、本実施形態の観測データ収集方法によれば、人工衛星12に標準搭載されている姿勢センサ16から取得される姿勢データを用いるので、微小デブリ検知専用のセンサを人工衛星12に搭載することなく、微小デブリの観測データを取得できる。これにより、すでに打ちあがっている人工衛星からも微小デブリの観測データを取得することができ、かつ地上管制局に蓄積されている過去の姿勢データからも微小デブリの観測データを取得することができる。
【0037】
本実施形態の観測データ収集方法によれば、人工衛星からの姿勢データを活用して、スペースデブリの環境モデリングに寄与することができる。微小デブリの観測データが増えることは、スペースデブリ環境モデルの精度向上に繋がる。それによって、デブリ衝突による損傷リスクの低減、軌道上環境保全に必要なデブリ対策の立案に大きく貢献できる。
【0038】
〔その他の実施形態〕
次に、本発明のその他の実施形態について説明する。本発明の実施形態の観測データ収集装置は、既存の地上管制局11に上述した、算出処理、比較処理、や観測データ生成処理を実行させるプログラムを読み込んで実行させる機能を付加することによっても、実現することができる。
【0039】
例えば、CPUやMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサとRAM(Random Access Memory)などのメモリを含む情報処理装置に、上述した算出処理、比較処理、や観測データ生成処理を実行させる観測データ収集プログラムを読み込んで、観測データ収集装置の算出機能、比較機能、や観測データ作成機能を実現することもできる。このような観測データの収集を実現する観測データ収集プログラムは、プログラムを記録した記録媒体の形態で、流通され得る。このプログラムは、CF(Compact Flash(登録商標))又はSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記録デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの光学記録媒体などの形態で、流通され得る。
【0040】
上述した実施形態における、人工衛星12から地上管制局11が受信する姿勢データ134についてより具体的には、例えば図4に外観が示される人工衛星12に対して、複数の方位軸を設定して、時刻ごとの複数の方位軸に関する姿勢角を姿勢データとする。図4では、互いに直交する3つの方位軸(X、Y、Z軸)を人工衛星12に対して設定した場合を示しており、このような設定の場合には、時刻ごとの3つの方位軸(X、Y、Z軸)に関する姿勢角を姿勢データとする。そして地上管制局11においては、人工衛星12からこの姿勢データをダウンリンクし、複数の方位軸のそれぞれについて姿勢角の変化値を算出し、算出された姿勢角の変化値をそれぞれ閾値と比較する。そして、姿勢角の変化値が閾値よりも大きければ、人工衛星12に微小デブリの衝突があったと判定して、姿勢データが取得された時刻と姿勢角の変化幅から、微小デブリの衝突時刻と衝突角度を算出し、微小デブリの観測データを作成する。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0042】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出手段と、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較手段と、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成手段と、を含む
観測データ収集装置。
(付記2)前記観測データ作成手段は、前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記1に記載の観測データ収集装置。
(付記3)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記算出手段は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を算出し、
前記比較手段は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記観測データ作成手段は、前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記1又は付記2に記載の観測データ収集装置。
(付記4)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記観測データ作成手段は、前記複数の方位軸に関して前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記2に記載の観測データ収集装置。
(付記5)人工衛星と、前記人工衛星を遠隔で管制する管制機能を有する地上管制局であって、付記1、付記2又は付記4のいずれか一つに記載の観測データ収集装置をさらに有する地上管制局と、を含む
人工衛星システム。
(付記6)人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出し、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
観測データ収集方法。
(付記7)前記スペースデブリの観測データの作成は、
前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出することにより行われる、
付記6に記載の観測データ収集方法。
(付記8)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を算出し、
前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記6又は付記7に記載の観測データ収集方法。
(付記9)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記スペースデブリの観測データの作成は、
前記複数の方位軸に関して前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出することにより行われる、
付記7に記載の観測データ収集方法。
(付記10)情報処理装置に、
人工衛星の時系列の姿勢データの差分から姿勢角の変化値を算出する算出機能と、
前記姿勢角の変化値を閾値と比較する比較機能と、
前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する観測データ作成機能と、を実現させる
観測データ収集プログラム。
(付記11)前記観測データ作成機能は、前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記10に記載の観測データ収集プログラム。
(付記12)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記算出機能は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を算出し、
前記比較機能は、前記複数の方位軸に関してそれぞれ前記姿勢角の変化値を閾値と比較し、
前記観測データ作成機能は、前記姿勢角の変化値が閾値よりも大きいときは、前記人工衛星に対するスペースデブリの衝突があったと判定して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記10又は付記11に記載の観測データ収集プログラム。
(付記13)前記人工衛星に対して、複数の方位軸が設定されており、
前記観測データ作成機能は、前記複数の方位軸に関して前記姿勢データが取得された時刻と前記姿勢角の変化幅から、前記スペースデブリの衝突時刻と衝突角度を算出して、前記スペースデブリの観測データを作成する、
付記11に記載の観測データ収集プログラム。
【符号の説明】
【0043】
11 地上管制局
12 人工衛星
13 データ処理系
131 CPU
132 メモリ
133 プログラムデータ
134 姿勢データ
14 通信系
15 姿勢系
16 姿勢センサ
17 アクチュエータ
50 管制機能
51 算出機能
52 比較機能
53 観測データ作成機能
図1A
図1B
図2
図3
図4