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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050018
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F02D45/00 345
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156581
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】末藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 洋行
(72)【発明者】
【氏名】出口 寿明
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA27
3G384DA22
3G384DA50
3G384ED07
3G384FA06Z
3G384FA28Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】乗員の意図によらず使用可能な機関回転速度領域が変化することによる違和感を与えてしまうのを回避する。
【解決手段】車両100は、エンジン104aのエンジン回転速度NEを検出するクランクパルサ131と、乗員が操作するアクセルグリップ15と、エンジン104aを冷却する冷却水の水温TWを測定する水温センサ132と、水温TWに応じて設定される制御介入回転速度以上となった場合にエンジン回転速度NEの上昇を抑制する過回転抑制制御を実行可能な制御ユニット50と、を備える。制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値を超えた後で、アクセルグリップ15が操作されることを条件に制御介入回転速度を変更可能にする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関(104a)の機関回転速度を検出する回転速度検出部(131)と、
乗員が操作する操作部(15)と、
前記機関の温度である機関温度を測定する機関温度測定部(132)と、
前記機関回転速度が、前記機関温度に応じて設定される制御介入回転速度以上となった場合に、前記機関回転速度の上昇を抑制する過回転抑制制御を実行する制御部(50)と、
を備える車両(100)において、
前記制御部は、前記機関温度が機関温度閾値を超えた後で、前記操作部が操作されることを条件に前記制御介入回転速度を変更可能にする、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記制御部は、前記機関温度が前記機関温度閾値を超えた後で、前記操作部が操作されることと、前記機関回転速度が前記制御介入回転速度未満となることと、を条件に前記制御介入回転速度を変更可能にする、車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両であって、
前記機関回転速度は、前記操作部に対する操作量に伴って変化する、車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両であって、
前記機関温度が前記機関温度閾値を超えた場合に、乗員に対して前記操作部を操作することを促す通知を行う通知部(17)をさらに備える、車両。
【請求項5】
請求項4に記載の車両であって、
前記通知部は、前記機関温度が上昇して前記機関温度閾値に近づいた場合に、前記機関温度が前記機関温度閾値に近づいたことを乗員に対してさらに通知する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源となる機関(例えばエンジンやモータ)を備える車両には、機関の回転速度を制御的に制限することで、機関が過負荷状態となるのを抑制するものがあった。例えば、下記特許文献1には、エンジンを冷却するための冷却水の温度に対応した制限回転速度にエンジン回転速度が達したことを含むエンジン回転速度抑制条件が成立すると、エンジン回転速度を抑制するための回転速度抑制制御が実行されるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6413178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術にあっては、エンジン回転速度を変化させるような操作を乗員が行っていないにもかかわらず、冷却水の温度に応じて制限回転速度が自動的に変更され、これに伴ってエンジン回転速度も変化することがあった。このような乗員の意図していないエンジン回転速度の変化は、乗員の違和感につながり、車両における操作性低下の一因となり得る。
【0005】
また、上記の従来技術にあっては、制限回転速度の変更前後で、乗員の意図によらず自動的に乗員が使用できるエンジン回転速度領域が変化してしまう(例えば高いエンジン回転速度領域が使用可能になる)ことがあった。このような乗員の意図していない使用可能なエンジン回転速度領域の変化は、乗員の違和感につながり、車両における操作性低下の一因となり得る。
【0006】
本発明は、乗員が意図していないタイミングで機関回転速度が変化することや、乗員の意図によらず使用可能な機関回転速度領域が変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両における操作性を向上させることを目的としたものである。そして、延いては交通の安全性をより一層改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
機関の機関回転速度を検出する回転速度検出部と、
乗員が操作する操作部と、
前記機関の温度である機関温度を測定する機関温度測定部と、
前記機関回転速度が、前記機関温度に応じて設定される制御介入回転速度以上となった場合に、前記機関回転速度の上昇を抑制する過回転抑制制御を実行する制御部と、
を備える車両において、
前記制御部は、前記機関温度が機関温度閾値を超えた後で、前記操作部が操作されることを条件に前記制御介入回転速度を変更可能にする、車両を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員の意図によらず使用可能な機関回転速度領域が変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両における操作性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る鞍乗型車両100(車両100)の側面図である。
図2図2は、車両100の正面図である。
図3図3は、車両100の制御構成の例を示すブロック図である。
図4図4は、制御ユニット50が実行するメイン処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、各回転速度設定処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、状態遷移処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、TWREVSTS#0処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、TWREVSTS#1処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、TWREVSTS#2処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、TWREVSTS#3処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、車両100の具体的な挙動の一例を示すタイムチャートである。
図12図12は、表示装置17の表示例を示す図である。
図13図13は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第1例を示す図である。
図14図14は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第2例を示す図である。
図15図15は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第3例を示す図である。
図16図16は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第4例を示す図である。
図17図17は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第5例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両の一実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<鞍乗型車両の概要>
図1は、一実施形態に係る鞍乗型車両100(以下、単に「車両100」とも称する)の側面図(右側面図)である。図2は、車両100の正面図である。図1および図2は、車両100が垂直姿勢で起立した状態での側面図および正面図を示している。本実施形態の車両100は、前輪101と後輪102とを備えた自動二輪車を例示するが、本発明は他の形式の鞍乗型車両にも適用可能である。
【0012】
また、図1および図2において、矢印XおよびYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。以下の図1および図2の説明では、車両100の進行方向をX方向とし、これを前後方向として前、後を規定している。また、車両100の車幅方向をY方向とし、これを車両の前進方向を基準として左右方向とし、左、右を規定している。
【0013】
車両100は、その骨格をなす車体フレーム103を備える。車体フレーム103には後輪102を駆動するパワーユニット104が支持されている。パワーユニット104はエンジン104a(例えば多気筒の4サイクルエンジン)と、エンジン104aの出力を変速する変速機104bと、を備え、変速機104bの出力がチェーン伝動機構により後輪102に伝達される。エンジン104aは、車両100を駆動する機関の一例である。
【0014】
車体フレーム103の後部には、乗員(ライダ)が着座するシート108を支持するシートフレーム103aが連結されている。車体フレーム103の後部にはスイングアーム109が揺動自在に支持されており、スイングアーム109には後輪102が回転自在に支持されている。
【0015】
車体フレーム103の前部にはヘッドパイプが設けられている。ヘッドパイプは、操舵機構10を回動可能に支持している。
【0016】
操舵機構10は、前輪101を操舵するものであり、一対のフロントフォーク11と、左右のハンドル14とを含む。一対のフロントフォーク11は、ヘッドパイプに回動可能に支持される。一対のフロントフォーク11は、その上端部がトップブリッジで連結され、このトップブリッジの下方においてボトムブリッジで連結されている。また、トップブリッジとボトムブリッジとの間に延びるようにステアリングステム(不図示)が取り付けられ、ステアリングステムがヘッドパイプ内に回転自在に取り付けられている。
【0017】
一対のフロントフォーク11の上部には前輪101を操舵するセパレート式の左右のハンドル14が設けられており、ハンドル14は乗員が把持するグリップ14aを備えている。左右のハンドル14は、車両正面視で車幅方向外側に向かって下方へ傾斜するように配置されており、乗員が前傾姿勢で搭乗し易い配置とされている。
【0018】
車両100は制動装置112、113を備える。制動装置112は、前輪101の制動装置であり、前輪101に設けられたブレーキディスク112aとフロントフォーク11に支持されたブレーキキャリパ112bとを含む。右側のハンドル14にはブレーキキャリパ112bを操作するブレーキレバー114aが設けられている。左側のハンドル14には変速機104bのクラッチを操作するクラッチレバー114bが設けられている。
【0019】
制動装置113は、後輪102の制動装置であり、後輪102に設けられたブレーキディスク113aとスイングアーム109に支持されたブレーキキャリパ113bとを含む。車両100の右側部にはブレーキキャリパ113bを操作するブレーキペダル115が設けられている。車両100の左右側部には、それぞれ乗員が脚部を載置するステップ116が設けられており、右側のステップ116の近傍にはブレーキペダル115が配置され、左側のステップ116の近傍には不図示のシフトペダルが配置されている。
【0020】
さらに、車両100は、アクセルグリップ15と、表示装置17を備える。アクセルグリップ15は、乗員が操作する操作部の一例である。アクセルグリップ15は、乗員の手(具体的には右手)によるひねり操作に応じて、グリップ14aの軸周りに回動可能な状態でグリップ14aに設けられている。
【0021】
図1に示した方向から見て、乗員がアクセルグリップ15を反時計回りにひねって回動する操作は、アクセルグリップ15に対する操作量であるアクセル開度APを増加させる操作となり、車両100の加速を指示する操作である。以下、アクセル開度APを増加させる操作(すなわち車両100の加速を指示する操作)を、「加速操作」とも称する。また、加速操作のうち、アクセルグリップ15を限界まで反時計回りにひねる操作を、以下、「全開操作」とも称する。
【0022】
一方、図1に示した方向から見て、反時計回りにひねったアクセルグリップ15を時計回りに戻す操作は、アクセル開度APを低下させる操作となり、車両100の減速を指示する操作である。以下、アクセル開度APを低下させる操作(すなわち車両100の減速を指示する操作)を、「減速操作」とも称する。また、減速操作のうち、アクセルグリップ15を限界まで時計回りに戻す操作を、以下、「全閉操作」とも称する。
【0023】
表示装置17は、シート108に着座した乗員が視認可能な位置に設けられ、タコメータやスピードメータ等をあらわす画像を表示可能に構成される。また、表示装置17は、乗員に対する通知を行う通知部としても機能し得る。表示装置17は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等によって実現される。
【0024】
<制御構成>
図3は、車両100の制御構成の例を示すブロック図である。図3には、後述の本実施形態との関係で必要な構成を中心に図示している。
【0025】
車両100は、ECU(Electric Control Unit)等によって構成される制御ユニット50を含む。制御ユニット50は、制御部の一例であり、車両100全体を統括制御するコンピュータとして機能する。制御ユニット50は、処理部51、RAM,ROM等の記憶部52、および外部デバイスと処理部51との信号の送受信を中継するI/F部53(インタフェース部)を含む。処理部51は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部52に記憶されたプログラムを実行する。記憶部52には、処理部51が実行するプログラムのほか、処理部51が処理に使用するデータ等が格納される。
【0026】
また、車両100は、クランクパルサ131と、水温センサ132と、アクセル開度センサ133とをさらに含む。クランクパルサ131は、エンジン104a(例えばクランクシャフト)の回転速度であるエンジン回転速度NEを検出し、その検出値を制御ユニット50へ出力するセンサである。クランクパルサ131は、回転速度検出部の一例であり、機関回転速度の一例としてのエンジン回転速度NEを検出する。
【0027】
水温センサ132は、エンジン104aを冷却する冷却水の温度である水温TWを測定し、その測定値を制御ユニット50へ出力するセンサである。水温センサ132は、機関温度測定部の一例であり、機関の温度である機関温度の一例としての水温TWを測定する。
【0028】
アクセル開度センサ133は、アクセルグリップ15に対する操作量であるアクセル開度APを検出し、その検出値を制御ユニット50へ出力するセンサである。
【0029】
車両100を駆動する機関の一例であるエンジン104aは、スロットルバルブ121と燃料噴射装置122とを含む。スロットルバルブ121は、エンジン104aに供給される空気量(以下、「吸気量」とも称する)を調整可能な弁である。本実施形態では、スロットルバルブ121は、電子制御式スロットルバルブとなっており、制御ユニット50の制御に従って吸気量を調整可能に構成されている。また、燃料噴射装置122は、制御ユニット50の制御に従って、エンジン104aに燃料を噴射(すなわち供給)する装置である。
【0030】
制御ユニット50は、スロットルバルブ121や燃料噴射装置122を制御することにより、エンジン104aを制御する。例えば、制御ユニット50は、クランクパルサ131によって検出されたエンジン回転速度NE、水温センサ132によって測定された水温TW、アクセル開度センサ133によって検出されたアクセル開度AP等に基づき、エンジン104aが発生するトルクの目標値となる目標トルクを導出し、導出した目標トルクに基づきエンジン104aを制御する。また、制御ユニット50は、表示装置17を制御して、表示装置17に所定の通知を行わせることもできる。なお、制御ユニット50が行う制御の詳細については再度後述する。
【0031】
なお、制御ユニット50が複数のECU(Electric Control Unit)を含んで構成され、それぞれがプロセッサ、記憶デバイスおよび外部I/Fを備えていてもよい。例えば、制御ユニット50が、スロットルバルブ121および燃料噴射装置122を制御する駆動制御用ECUと、表示装置17を制御する表示制御用ECUとを含んで構成されてもよい。また、ECUの数や、各ECUが担当する機能については適宜設計可能であり、上記の例よりも細分化したり、あるいは、統合したりすることが可能である。
【0032】
<制御ユニット50が行う特徴的な制御>
次に、本実施形態の制御ユニット50が行う特徴的な制御について説明する。制御ユニット50は、エンジン回転速度NEが、所定の制御介入回転速度以上となった場合に、エンジン回転速度NEの上昇を抑制する過回転抑制制御を実行する。
【0033】
ここで、過回転抑制制御は、例えば、スロットルバルブ121による吸気量を抑制する吸気量抑制制御と、燃料噴射装置122によるエンジン104aへの燃料噴射を間引く燃料供給停止制御とを含む。このような過回転抑制制御を実行することにより、制御ユニット50は、過剰なエンジン回転速度NEの上昇を抑制して、エンジン104aが過負荷状態となるのを抑制することが可能となる。なお、過回転抑制制御の詳細な一例については再度後述する。
【0034】
また、本実施形態において、過回転抑制制御の実行条件となる制御介入回転速度は、水温TWに応じて設定される。より具体的には、水温TWが所定の機関温度閾値Tth以下である場合には、制御介入回転速度はN1aとされる。一方、水温TWが機関温度閾値Tthよりも高い場合には、制御介入回転速度はN1b(ただしN1b>N1a)とされる。このように過回転抑制制御の実行条件となる制御介入回転速度を、水温TW(すなわちエンジン104aの温度)に応じて変更することで、エンジン104aを適切に保護することが可能となる。なお、機関温度閾値Tth、N1a、およびN1bは、例えば、車両100の製造者等により制御ユニット50にあらかじめ設定される。
【0035】
ところで、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた際に、制御ユニット50が自動的に制御介入回転速度を変更するようにした場合、エンジン回転速度NEを変化させるような操作を乗員が行っていないにもかかわらず、制御介入回転速度の変更に伴ってエンジン回転速度NEが変化することがある。このような乗員の意図していないエンジン回転速度NEの変化は、乗員の違和感につながり、車両100における操作性低下の一因となり得る。
【0036】
また、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた際に、制御ユニット50が自動的に制御介入回転速度を変更するようにした場合、制御介入回転速度の変更前後で、乗員の意図によらず自動的に乗員が使用できるエンジン回転速度領域が変化してしまう(例えば高いエンジン回転速度領域が使用可能になる)ことがある。このような乗員の意図していない使用可能なエンジン回転速度領域の変化は、乗員の違和感につながり、車両100における操作性低下の一因となり得る。
【0037】
そこで、本実施形態では、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた後で、アクセルグリップ15が操作されることを条件に制御介入回転速度を変更可能にする。これにより、乗員の操作に基づき制御介入回転速度を変更することが可能となるため、乗員の意図によらず使用可能なエンジン回転速度領域が変化してしまうのを抑制することが可能となる。これにより、乗員の意図によらず使用可能なエンジン回転速度領域が変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両100における操作性(すなわちドライバビリティ)を向上させることができる。
【0038】
また、乗員の操作に基づき制御介入回転速度を変更することで、例えば、乗員が意図していないタイミングで制御介入回転速度が自動的に変更され、これに伴ってエンジン回転速度NEが変化してしまうのを抑制することも可能となる。したがって、乗員が意図していないタイミングでエンジン回転速度NEが変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両100における操作性を向上させることができる。
【0039】
<メイン処理>
以下、図4から図10を参照しながら、制御ユニット50が実行する処理の具体的な一例について説明する。図4は、制御ユニット50が実行するメイン処理の一例を示すフローチャートである。例えば、制御ユニット50は、車両100のイグニッション電源がオンであるときに、図4に示すメイン処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0040】
メイン処理において、まず、制御ユニット50はセンサ値取得処理を実行する(ステップS1)。センサ値取得処理は、クランクパルサ131、水温センサ132、アクセル開度センサ133等を含む車両100の各センサの検出値を取得する処理である。
【0041】
次に、制御ユニット50は各回転速度設定処理を実行する(ステップS2)。各回転速度設定処理は、過回転抑制制御の実行条件となる制御介入回転速度のほか、過回転抑制制御に用いられる目標回転速度や上限回転速度等を設定する処理である。各回転速度設定処理の一例は図5等を用いて後述する。
【0042】
次に、制御ユニット50は差分回転速度算出処理を実行する(ステップS3)。差分回転速度算出処理は、各回転速度設定処理で設定された目標回転速度(例えば後述のN2a、N2b)と、現在のエンジン回転速度NEとの差分である差分回転速度を算出する処理である。差分回転速度算出処理によって算出された差分回転速度は、後述するステップS5のエンジン制御処理等で用いられる。
【0043】
次に、制御ユニット50は状態遷移処理を実行する(ステップS4)。状態遷移処理は、車両100の状態をあらわすフラグであるTWREVSTSのフラグ値に応じた個別の処理に遷移するための処理である。車両100の状態をあらわすTWREVSTS、および状態遷移処理の詳細は図6等を用いて後述する。
【0044】
次に、制御ユニット50はエンジン制御処理を実行する(ステップS5)。エンジン制御処理は、現在のエンジン回転速度NEおよびアクセル開度APに基づき、図示せぬマップ(テーブル)を参照することによって、エンジン104aが発生するトルクの目標値となる目標トルクを導出し、導出した目標トルクに基づきエンジン104aを制御する処理である。このエンジン制御処理には、過回転抑制制御を実現する各種処理も含まれる。
【0045】
次に、制御ユニット50は、表示制御処理を実行して(ステップS6)、メイン処理を終了する。表示制御処理は、表示装置17の表示内容を制御する処理である。例えば、表示制御処理において、制御ユニット50は、現在のエンジン回転速度NE、アクセル開度AP、水温TW等に基づき、図12図17等に示す表示画面を表示装置17に表示させる。
【0046】
<各回転速度設定処理>
図5は、各回転速度設定処理の一例を示すフローチャートである。各回転速度設定処理において、まず、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値が0または1であるか否かを判定する(ステップS21)。前述したように、TWREVSTSは、車両100の状態をあらわすフラグである。より具体的には、TWREVSTSは、0から4までのいずれかの整数をフラグ値としてとり得る。TWREVSTSの各フラグ値と、車両100の状態との対応関係は、以下の通りである。
【0047】
・TWREVSTS=0 :エンスト状態
・TWREVSTS=1 :各NE更新許可状態
・TWREVSTS=2 :各NE更新禁止状態
・TWREVSTS=3 :トルク算出状態
・TWREVSTS=4 :通常状態
【0048】
ここで、エンスト状態は、エンジン104aの運転が停止した状態である。各NE更新許可状態は、制御介入回転速度等の各NEの更新(すなわち変更)が許可された状態である。ここで、各NEには、例えば、過回転抑制制御の実行条件となる制御介入回転速度としてのN1aやN1b、過回転抑制制御に用いられる目標回転速度としてのN2aやN2b(後述)、過回転抑制制御に用いられる上限回転速度としてのN3aやN3b(後述)が含まれ得る。また、各NE更新禁止状態は、制御介入回転速度等の各NEの更新が禁止された状態である。トルク算出状態は、エンジン104aが発生するトルクの目標値となる目標トルクの導出(算出)が行われている状態である。通常状態は、これら3つの状態を除く状態である。
【0049】
TWREVSTSのフラグ値が0でも1でもないと判定した場合(ステップS21;No)、すなわち、TWREVSTSのフラグ値が2~4のいずれかである場合、制御ユニット50は、そのまま各回転速度設定処理を終了する。この場合には、制御介入回転速度等の回転速度は更新(すなわち変更)されず、現在の設定値が維持される。
【0050】
一方、TWREVSTSのフラグ値が0または1であると判定した場合(ステップS21;Yes)、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tth以下であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0051】
水温TWが機関温度閾値Tth以下であると判定した場合(ステップS22;Yes)、制御ユニット50は、車両100を低水温モードに設定して(ステップS23)、各回転速度設定処理を終了する。
【0052】
ここで、低水温モードとは、過回転抑制制御の実行条件となる制御介入回転速度がN1aに、過回転抑制制御に用いられる目標回転速度がN2aに、過回転抑制制御に用いられる上限回転速度がN3aに、それぞれ設定される状態のことをいう。N1a、N2a、およびN3aは、N1a<N2a<N3aの関係を満たすものとする。N1a、N2a、およびN3aとして採用する具体的な値は、エンジン104aの特性等を勘案して、車両100の製造者が適宜定めることができる。
【0053】
一方、水温TWが機関温度閾値Tth以下でないと判定した場合(ステップS22;No)、制御ユニット50は、車両100を通常モードに設定して(ステップS24)、各回転速度設定処理を終了する。
【0054】
ここで、通常モードは、制御介入回転速度がN1bに、過回転抑制制御に用いられる目標回転速度がN2bに、過回転抑制制御に用いられる上限回転速度がN3bに、それぞれ設定される状態のことをいう。N1b、N2b、およびN3bは、N1b<N2b<N3bの関係を満たし、さらに、N1b>N1a、N2b>N2a、N3b>N3aの関係を満たすものとする。N1b、N2b、およびN3bとして採用する具体的な回転速度は、エンジン104aの特性等を勘案して、車両100の製造者が適宜定めることができる。
【0055】
以上に説明した各回転速度設定処理によれば、水温TWが機関温度閾値Tth以下である場合には低水温モードに設定し、水温TWが機関温度閾値Tthよりも高い場合には通常モードに設定することができる。これにより、現在の水温TWに応じた適切な値を、制御介入速度、目標回転速度、および上限回転速度として設定することが可能となる。
【0056】
<状態遷移処理>
図6は、状態遷移処理の一例を示すフローチャートである。状態遷移処理において、まず、制御ユニット50は、エンストが発生しているか否かを判定する(ステップS41)。エンストが発生していると判定した場合(ステップS41;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を0に設定して(ステップS42)、状態遷移処理を終了する。
【0057】
一方、エンストが発生していないと判定した場合(ステップS41;No)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値がいずれの値であるかを判別する(ステップS43)。
【0058】
そして、TWREVSTSのフラグ値が0であった場合、制御ユニット50は、図7を用いて後述するTWREVSTS#0処理を実行して(ステップS44)、状態遷移処理を終了する。TWREVSTSのフラグ値が1であった場合、制御ユニット50は、図8を用いて後述するTWREVSTS#1処理を実行して(ステップS45)、状態遷移処理を終了する。
【0059】
また、TWREVSTSのフラグ値が2であった場合、制御ユニット50は、図9を用いて後述するTWREVSTS#2処理を実行して(ステップS46)、状態遷移処理を終了する。TWREVSTSのフラグ値が3であった場合、制御ユニット50は、図10を用いて後述するTWREVSTS#3処理を実行して(ステップS47)、状態遷移処理を終了する。TWREVSTSのフラグ値が4であった場合、制御ユニット50は、そのまま状態遷移処理を終了する。
【0060】
<TWREVSTS#0処理>
図7は、TWREVSTS#0処理の一例を示すフローチャートである。前述したように、このTWREVSTS#0処理は、TWREVSTSのフラグ値が0、すなわちエンスト状態であるときに実行される処理である。
【0061】
TWREVSTS#0処理において、まず、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthよりも高いか否かを判定する(ステップS441)。水温TWが機関温度閾値Tthよりも高いと判定した場合(ステップS441;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を4(すなわち通常状態)に設定して(ステップS442)、TWREVSTS#0処理を終了する。
【0062】
一方、水温TWが機関温度閾値Tth以下と判定した場合(ステップS441;No)、制御ユニット50は、アクセルオン中であるか否かを判定する(ステップS443)。ここで、アクセルオンとは、乗員がアクセルグリップ15に対して所定量以上(例えば、いわゆるアクセルグリップ15の遊び分以上)の操作を加えていることにより、0よりも大きいアクセル開度APが検出されている状態である。より具体的には、本実施形態では、アクセルオンとアクセルオフが切り替わるアクセル開度APをアクセル開度閾値APthとする。すなわち、本実施形態では、アクセル開度APがアクセル開度閾値APth以上の状態をアクセルオンとし、アクセル開度APがアクセル開度閾値APth未満の状態をアクセルオフとする。ここで、アクセル開度閾値APthは、例えば0とすることができるが、これに限られず、0よりも大きい値であってもよい。すなわち、アクセルオフは、アクセルグリップ15に対する全閉操作に限られない。
【0063】
アクセルオン中であると判定した場合(ステップS443;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を2(すなわち各NE更新禁止状態)に設定して(ステップS444)、TWREVSTS#0処理を終了する。
【0064】
一方、アクセルオン中でないと判定した場合(ステップS443;No)、すなわちアクセルオフ中と判定した場合、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を1(すなわち各NE更新許可状態)に設定して(ステップS445)、TWREVSTS#0処理を終了する。
【0065】
<TWREVSTS#1処理>
図8は、TWREVSTS#1処理の一例を示すフローチャートである。前述したように、このTWREVSTS#1処理は、TWREVSTSのフラグ値が1、すなわち各NE更新許可状態であるときに実行される処理である。
【0066】
TWREVSTS#1処理において、まず、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthよりも高いか否かを判定する(ステップS451)。水温TWが機関温度閾値Tthよりも高いと判定した場合(ステップS451;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を4(すなわち通常状態)に設定して(ステップS452)、TWREVSTS#1処理を終了する。
【0067】
一方、水温TWが機関温度閾値Tth以下であると判定した場合(ステップS451;No)、制御ユニット50は、エンジン回転速度NEが設定中の制御介入回転速度以上であるか否かを判定する(ステップS453)。すなわち、低水温モードに設定している場合には、制御ユニット50は、ステップS453において、エンジン回転速度NEがN1a以上であるか否かを判定する。一方、通常モードに設定している場合には、制御ユニット50は、ステップS453において、エンジン回転速度NEがN1b以上であるか否かを判定する。
【0068】
エンジン回転速度NEが制御介入回転速度以上と判定した場合(ステップS453;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を3(すなわちトルク算出状態)に設定して(ステップS454)、TWREVSTS#1処理を終了する。
【0069】
一方、エンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満であると判定した場合(ステップS453;No)、制御ユニット50は、前述したステップS443と同様に、アクセルオン中であるか否かを判定する(ステップS455)。
【0070】
アクセルオン中と判定した場合(ステップS455;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を2(すなわち各NE更新禁止状態)に設定して(ステップS456)、TWREVSTS#1処理を終了する。一方、アクセルオン中でない(すなわちアクセルオフ中)と判定した場合(ステップS455;No)、制御ユニット50は、そのままTWREVSTS#1処理を終了する。
【0071】
<TWREVSTS#2処理>
図9は、TWREVSTS#2処理の一例を示すフローチャートである。前述したように、このTWREVSTS#2処理は、TWREVSTSのフラグ値が2、すなわち各NE更新禁止状態であるときに実行される処理である。
【0072】
TWREVSTS#2処理において、まず、制御ユニット50は、前述したステップS453と同様に、エンジン回転速度NEが設定中の制御介入回転速度以上であるか否かを判定する(ステップS461)。
【0073】
エンジン回転速度NEが制御介入回転速度以上と判定した場合(ステップS461;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を3(すなわちトルク算出状態)に設定して(ステップS462)、TWREVSTS#2処理を終了する。
【0074】
一方、エンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満であると判定した場合(ステップS461;No)、制御ユニット50は、前述したステップS443と同様に、アクセルオン中であるか否かを判定する(ステップS463)。
【0075】
アクセルオン中と判定した場合(ステップS463;Yes)、制御ユニット50は、そのままTWREVSTS#2処理を終了する。一方、アクセルオン中でない(すなわちアクセルオフ中)と判定した場合(ステップS463;No)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を1(すなわち各NE更新許可状態)に設定して(ステップS464)、TWREVSTS#2処理を終了する。
【0076】
<TWREVSTS#3処理>
図10は、TWREVSTS#3処理の一例を示すフローチャートである。前述したように、このTWREVSTS#3処理は、TWREVSTSのフラグ値が3、すなわちトルク算出状態であるときに実行される処理である。
【0077】
TWREVSTS#3処理において、まず、制御ユニット50は、前述したステップS453と同様に、エンジン回転速度NEが設定中の制御介入回転速度以上であるか否かを判定する(ステップS471)。エンジン回転速度NEが制御介入回転速度以上と判定した場合(ステップS471;Yes)、制御ユニット50は、そのままTWREVSTS#3処理を終了する。
【0078】
一方、エンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満であると判定した場合(ステップS471;No)、制御ユニット50は、前述したステップS443と同様に、アクセルオン中であるか否かを判定する(ステップS472)。
【0079】
アクセルオン中と判定した場合(ステップS472;Yes)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を2(すなわち各NE更新禁止状態)に設定して(ステップS473)、TWREVSTS#3処理を終了する。
【0080】
一方、アクセルオン中でない(すなわちアクセルオフ中)と判定した場合(ステップS472;No)、制御ユニット50は、TWREVSTSのフラグ値を1(すなわち各NE更新許可状態)に設定して(ステップS474)、TWREVSTS#3処理を終了する。
【0081】
以上に説明したTWREVSTS#0処理からTWREVSTS#3処理までの各処理を含む状態遷移処理によれば、エンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満であるときに、アクセルオフとされたことに応じて、TWREVSTSのフラグ値を1(すなわち各NE更新許可状態)に設定することができる(図9のステップS461、S463、S464、または図10のステップS471、S472、S474を参照)。そして、TWREVSTSのフラグ値を1に設定することで、低水温モードから通常モードへの変更を行うことが可能となる(図5のステップS22、S24を参照)。
【0082】
また、TWREVSTSのフラグ値を1(すなわち各NE更新許可状態)に設定する条件となるアクセルオフは、例えば全閉操作とするが、これに限られない。全閉操作以外の減速操作(例えば、アクセルグリップ15をある程度戻す操作)が行われた場合にも、TWREVSTSのフラグ値を1として、低水温モードから通常モードへの変更を許可するようにしてもよい。
【0083】
<車両100の具体的な挙動の一例>
図11は、車両100の具体的な挙動の一例を示すタイムチャートである。図11中の(a)において、縦軸はエンジン回転速度NEをあらわし、横軸は時期をあらわす。図11中の(b)において、縦軸は水温TWをあらわし、横軸は時期をあらわす。図11中の(c)において、縦軸はアクセル開度APをあらわし、横軸は時期をあらわす。図11中の(d)において、縦軸は目標トルクをあらわし、横軸は時期をあらわす。
【0084】
図11に示す時期t0において、水温TWは機関温度閾値Tth以下であるため、車両100は低水温モードとされている。すなわち、制御介入回転速度はN1aに、目標回転速度はN2aに、上限回転速度はN3aに、それぞれ設定されている。乗員は、このような時期t0からアクセルオンとし、時期t0直後の時期t1からは全開操作を行っている。
【0085】
この場合、アクセル開度APは、時期t0から時期t1にかけて、前述のアクセル開度閾値APth(例えばアクセル開度AP=0)から徐々に増加し、時期t1からは最大値の100となる。これにより、アクセル開度APに基づき導出される目標トルクも、時期t1から徐々に増加し、時期t1からは100のアクセル開度APに対応する値とされる。このようなアクセル開度APおよび目標トルクの増加に伴って、エンジン回転速度NEも時期t0から上昇する。そして、エンジン回転速度NEの上昇に伴って、水温TWも時期t0から上昇する。
【0086】
時期t1後の時期t2において、エンジン回転速度NEが、制御介入回転速度として設定されているN1aに達したとする。この場合、制御ユニット50は、時期t2から過回転抑制制御を開始し、目標回転速度として設定されているN2aにエンジン回転速度NEが収束するように制御する。これにより、過回転抑制制御の開始前(ここでは時期t2前)に比べて、エンジン回転速度NEの上昇が抑制される。
【0087】
本実施形態では、制御ユニット50は、エンジン回転速度NEが制御介入回転速度(ここではN1a)に達すると、過回転抑制制御として、まずは吸気量(エンジン104aに供給される空気量)を抑制する吸気量抑制制御を実行する。例えば、制御ユニット50は、吸気量抑制制御中には、通常時(非吸気量抑制制御中)とは異なる吸気量マップを参照して吸気量を決定し、決定した吸気量に基づきスロットルバルブ121を制御することで、通常時に比べて吸気量を減らすようにする。これにより、通常時、すなわち吸気量抑制制御の実行前に比べて、エンジン回転速度NEの上昇を抑制できる。
【0088】
また、図11に示す例の場合、過回転抑制制御中に、アクセル開度APに基づき導出される目標トルク(換言すると乗員が要求する目標トルク)は、例えば、図11中の(d)における一点鎖線で示すものとなる。しかしながら、過回転抑制制御中に、乗員が要求する目標トルクでエンジン104aを制御すると、エンジン回転速度NEの上昇を抑制できなくなることがある。このような場合、図11中の(d)における実線で示すように、制御ユニット50は、実際のエンジン104aの制御に用いる目標トルクを、乗員が要求する目標トルクよりも低くすることで、エンジン回転速度NEの上昇を抑制する。
【0089】
ところで、吸気量抑制制御が実行されたとしても、エンジン104aにはある程度の空気が供給される。これにより、吸気量抑制制御が実行されたとしても、エンジン104aは、燃焼(すなわち運転)を継続可能である。その一方で、吸気量抑制制御が実行されたとしても、エンジン回転速度NEの上昇を抑えきれず、エンジン回転速度NEが上限回転速度に達してしまうこともある。図11に示す例では、吸気量抑制制御が開始された時期t2後の時期t3において、エンジン回転速度NEが、上限回転速度として設定されているN3aを超えている。
【0090】
本実施形態では、制御ユニット50は、このようにエンジン回転速度NEが上限回転速度(ここではN3a)を超えると、過回転抑制制御として、次に燃料供給停止制御(以下、「FC制御(FC:Fuel Cut)」とも称する)を実行する。制御ユニット50は、FC制御中には、燃料噴射装置122がエンジン104aへの燃料噴射を間引く。これにより、エンジン回転速度NEの上昇を確実に抑えることが可能となる。図11に示す例では、FC制御が開始された時期t3後の時期t4から、エンジン回転速度NEが低下に転じている。
【0091】
そして、制御ユニット50は、FC制御中にエンジン回転速度NEが上限回転速度(ここではN3a)以下となると、FC制御を終了して、再度、吸気量抑制制御のみにより、エンジン回転速度NEが目標回転速度(ここではN2a)に収束するように制御する。図11に示す例では、時期t4後の時期t5において、エンジン回転速度NEがN3a以下となったため、時期t5からは過回転抑制制御として吸気量抑制制御のみが実行されている。
【0092】
ところで、図11に示す例では、時期t3と時期t4との間の時期t31において、水温TWが機関温度閾値Tthを超えている。しかしながら、時期t31においても、乗員は引き続き全開操作を行っている。このような場合、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたとしても、時期t31では通常モードへの切り替えを行わず、低水温モードを維持する。すなわち、制御ユニット50は、時期t31後も、制御介入回転速度をN1aに、目標回転速度をN2aに、上限回転速度をN3aに、それぞれ維持する。
【0093】
そして、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた後の時期t6から、アクセルグリップ15を戻す操作を乗員が開始したとする。その結果、低下したエンジン回転速度NEが、時期t6後の時期t7’において、制御介入回転速度として設定されているN1a未満になったとする。この場合、時期t7’において、制御ユニット50は過回転抑制制御を終了する。
【0094】
そして、時期t7’後の時期t7において、アクセルオフかつエンジン回転速度NEが制御介入回転速度として設定されているN1a未満である状態になったとする。この場合、時期t7において、制御ユニット50は車両100を通常モードに切り替える。すなわち、時期t7において、制御ユニット50は、制御介入回転速度をN1bに、目標回転速度をN2bに、上限回転速度をN3bに、それぞれ変更する。これにより、図11に示すように、時期t7後にアクセルオンとされてエンジン回転速度NEがN1aに再度達したとしても、制御ユニット50は、このときには過回転抑制制御を実行しないで、エンジン回転速度NEを速やかに上昇させていくことができる。
【0095】
以上に説明したように、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた後で、アクセルグリップ15を戻す操作が行われた場合に制御介入回転速度を変更する。これにより、乗員の操作に基づき制御介入回転速度を変更することが可能となるため、乗員の意図によらず使用可能なエンジン回転速度領域が変化してしまうのを抑制することが可能となる。これにより、乗員の意図によらず使用可能なエンジン回転速度領域が変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両100における操作性を向上させることができる。そして、延いては交通の安全性をより一層改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0096】
また、乗員の操作に基づき制御介入回転速度を変更することで、例えば、乗員が意図していないタイミングで制御介入回転速度が自動的に変更され、これに伴ってエンジン回転速度NEが変化してしまうのを抑制することも可能となる。したがって、乗員が意図していないタイミングでエンジン回転速度NEが変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両100における操作性を向上させることができる。
【0097】
また、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた後で、アクセルグリップ15を戻す操作が行われ、且つエンジン回転速度NEが設定中の制御介入回転速度未満となった場合に、制御介入回転速度を変更する。これにより、エンジン回転速度NEが設定中の制御介入回転速度よりも高いときに制御介入回転速度を変更してしまうのを抑制することが可能となる。したがって、エンジン回転速度NEが高いときに制御介入回転速度が変更され、当該制御介入回転速度の変更に伴うエンジン回転速度NEの急変(より具体的には急上昇)によって乗員に対して違和感を与えてしまうのを抑制できる。
【0098】
また、エンジン回転速度NEは、アクセルグリップ15に対する操作量(すなわちアクセル開度AP)に伴って変化するものであるので、乗員はアクセルグリップ15を操作することによって、制御介入回転速度を変更可能とする条件である「アクセルグリップ15の操作」と「エンジン回転速度NEを設定中の制御介入回転速度未満とすること」との両方を達成することが可能となる。これにより、乗員は少ない動作で制御介入回転速度を変更させることが可能となり、車両100の利便性が向上する。
【0099】
また、制御ユニット50は、エンジン回転速度NEを設定中の制御介入回転速度未満とするような操作があった場合に、制御介入回転速度を変更することができる。換言すると、エンジン回転速度NEを変化させるような操作があったとしても、当該操作が、エンジン回転速度NEを設定中の制御介入回転速度未満とする操作でなければ、制御ユニット50は制御介入回転速度を変更しないようにすることができる。これにより、例えば、エンジン回転速度NEを僅かに低下させるような操作や、エンジン回転速度NEを上昇させるような操作に応じて、制御介入回転速度を変更してしまうのを抑制することが可能となる。したがって、乗員の意図によらず使用可能なエンジン回転速度領域が変化してしまうことや、乗員が意図していないタイミングで制御介入回転速度を変更してしまうことを抑制でき、これらの発生によって乗員に対して違和感を与えてしまうのを抑制できる。
【0100】
ところで、制御介入回転速度をできるだけ速やかに変更したいと望む乗員もいる。そこで、制御ユニット50は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合に、表示装置17を介して、アクセルグリップ15を操作することを促す通知を乗員に対して行うようにしてもよい。一例として、図11に示す例の場合、制御ユニット50は、時期t31から時期t7までの期間において、アクセルグリップ15を操作することを促す通知を行うようにしてもよい。
【0101】
このように、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合に、アクセルグリップ15を操作することを促す通知を行うことで、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。これにより、乗員は、例えば、エンジン回転速度NEとして高い回転速度領域を使用して車両100を運転することが可能となる。
【0102】
さらに、制御ユニット50は、水温TWが上昇して機関温度閾値Tthに近づいた場合に、表示装置17を介して、水温TWが機関温度閾値Tthに近づいたことを乗員に対して通知するようにしてもよい。一例として、図11に示す例の場合、制御ユニット50は、時期t31よりも前の時期t30から時期t31までの期間において、水温TWが機関温度閾値Tthに近づいたことを乗員に対して通知するようにしてもよい。ここで、時期t30は、例えば、水温TWが機関温度閾値Tth-ΔT(ただしΔT>0)に達した時期とすることができる。ΔTとして採用する具体的な値は、車両100の製造者が適宜定めることができる。
【0103】
このように、水温TWが上昇して機関温度閾値Tthに近づいた場合に、水温TWが機関温度閾値Tthに近づいたことを乗員に対して通知することで、乗員は、この通知を参考に、水温TWが機関温度閾値Tthを超える前から、アクセルグリップ15を操作する準備(具体的にはアクセルグリップ15を戻す準備)を行うことが可能となる。これにより、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた際に、乗員は、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0104】
<表示装置の表示例>
以下、図12から図17を参照しながら、表示装置17の具体的な表示例について説明する。ただし、表示装置17の表示態様は図示のものに限定されない。
【0105】
図12は、表示装置17の表示例を示す図である。図12において、(a)は低水温モード時・過回転抑制制御なしでの表示、(b)は低水温モード時・過回転抑制制御ありでの表示、(c)は通常モード時・過回転抑制制御なしでの表示、(d)は通常モード時・過回転抑制制御ありでの表示である。
【0106】
表示装置17は、タコメータ171、スピードメータ172、低水温モードアイコン173を表示可能に構成される。タコメータ171は、例えば、現在のエンジン回転速度NEをインジケータ175にて表示する。インジケータ175は、現在のエンジン回転速度NEに応じて図12中の左右方向に伸縮し、より具体的には、エンジン回転速度NEが高いほど、図12中の右方向に延びる。
【0107】
また、タコメータ171には、制御介入回転速度表示176、およびレッドゾーン177が設けられる。制御介入回転速度表示176は、設定中の制御介入回転速度をあらわす。例えば、図12(a)、(b)に示すように、制御介入回転速度表示176が「10」の場合、設定中の制御介入回転速度が「10×1000r/min(すなわち10000r/min)」であることをあらわしている。一方、図12(c)、(d)に示すように、制御介入回転速度表示176が「13」の場合、設定中の制御介入回転速度が「13×1000r/min(すなわち13000r/min)」であることをあらわしている。
【0108】
レッドゾーン177は、設定中の制御介入回転速度よりも高い回転速度領域(すなわち過回転抑制制御が実行される回転速度領域)をあらわす。例えば、図12(a)、(b)に示す例の場合、レッドゾーン177は、「10×1000r/min(すなわち10000r/min)」よりも高い回転速度領域をあらわしている。一方、図12(c)、(d)に示す例の場合、レッドゾーン177は、「13×1000r/min(すなわち10000r/min)」よりも高い回転速度領域をあらわしている。
【0109】
スピードメータ172は、車両100の現在の走行速度(すなわち車速)を数値にて表示する。低水温モードアイコン173は、低水温モード時に表示されるアイコンであり、例えば「Low temp mode」といった文字により、車両100が低水温モードであることを示している。なお、低水温モードアイコン173は、後述するように、表示色、表示文字等を変更可能である。
【0110】
図12(a)は、低水温モード時・過回転抑制制御なしでの表示であり、例えば、図11に示した時期t0から時期t2までの期間における表示に相当する。このときには、現在のエンジン回転速度NEが制御介入回転速度(10×1000r/min)に達していないことが、タコメータ171によって乗員に通知される。また、車両100が低水温モードであることが、低水温モードアイコン173の表示によって乗員に通知される。
【0111】
図12(a)が表示されている状態からエンジン回転速度NEが上昇して過回転抑制制御が開始されると、図12(b)の低水温モード時・過回転抑制制御ありの表示になる。本表示は、例えば、図11に示した時期t2から時期t7までの期間における表示に相当する。このときには、現在のエンジン回転速度NEが制御介入回転速度(ここでは10×1000r/min)よりも高いこと、すなわち過回転抑制制御が実行されていることが、タコメータ171(より具体的にはインジケータ175がレッドゾーン177に進入すること)によって乗員に通知される。また、図12(a)と同様に、車両100が低水温モードであることが、低水温モードアイコン173の表示によって乗員に通知される。
【0112】
図12(b)が表示されている状態から水温TWが上昇して機関温度閾値Tthを超え、さらに乗員がアクセルグリップ15を戻す操作を行ってエンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満となると、図12(c)の通常モード時・過回転抑制制御なしの表示になる。本表示は、図11に示した時期t7以降における表示に相当する。このときには、現在のエンジン回転速度NEが制御介入回転速度(ここでは13×1000r/min)に達していないことが、タコメータ171によって乗員に通知される。また、車両100が通常モードであることが、低水温モードアイコン173が非表示とされることによって乗員に通知される。
【0113】
なお、図12(b)が表示されている状態から、水温TWが上昇して機関温度閾値Tthを超える前に、乗員がアクセルグリップ15を戻す操作を行ってエンジン回転速度NEが制御介入回転速度未満となった場合には、図12(a)の表示に戻る。また、過回転抑制制御が実行されなくても、図12(a)が表示されている状態から水温TWが上昇して機関温度閾値Tthを超えた場合には、図12(c)の表示になる。
【0114】
そして、図12(c)が表示されている状態からエンジン回転速度NEが上昇して過回転抑制制御が開始されると、図12(d)の通常モード時・過回転抑制制御ありの表示になる。このときには、現在のエンジン回転速度NEが制御介入回転速度(ここでは13×1000r/min)よりも高いこと、すなわち過回転抑制制御が実行されていることが、タコメータ171(より具体的にはインジケータ175がレッドゾーン177に進入すること)によって乗員に通知される。また、図12(c)と同様に、車両100が通常モードであることが、低水温モードアイコン173が非表示とされることによって乗員に通知される。そして、図12(d)が表示されている状態からエンジン回転速度NEが低下して制御介入回転速度未満となった場合には、図12(c)の表示に戻る。
【0115】
また、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合に、乗員に対してアクセルグリップ15を操作することを促す通知を行ってもよい。図13は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第1例を示す図である。図13において、(a)は水温TW≦機関温度閾値Tthである場合の表示であり、(b)は水温TW>機関温度閾値Tthである場合の表示である。
【0116】
図13(a)に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tth以下である場合、表示装置17は、低水温モードアイコン173を、例えば青色の表示色で表示するようにしてもよい。一方、図13(b)に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えると、表示装置17は、低水温モードアイコン173を、例えば緑色の表示色で表示するようにしてもよい。
【0117】
すなわち、図11に示した時期t31のように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えた際に、表示装置17は、低水温モードアイコン173の表示色を変更するようにしてもよい。これにより、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、低水温モードアイコン173の表示色によって乗員に対し通知することができる。これにより、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0118】
なお、図13では、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えた際に低水温モードアイコン173の表示色を変更するようにしたが、これに限られない。
【0119】
図14は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第2例を示す図である。図14において、(a)は水温TW≦機関温度閾値Tthである場合の表示であり、(b)は水温TW>機関温度閾値Tthである場合の表示である。
【0120】
図14(a)に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tth以下である場合、表示装置17は、例えば「Low temp mode」といった文字が付された低水温モードアイコン173を表示するようにしてもよい。一方、図14(b)に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えると、表示装置17は、例えば「Low temp mode Turn off the accelerator」といった文字が付された低水温モードアイコン173を表示するようにしてもよい。
【0121】
このようにした場合、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、低水温モードアイコン173の文字によって乗員に対し通知することができる。これにより、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0122】
図15は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第3例を示す図である。例えば、表示装置17は、図14(a)等に示したように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tth以下である場合、表示装置17は、例えば「Low temp mode」といった文字が付された低水温モードアイコン173を表示するようにしてもよい。そして、図15に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えると、表示装置17は、低水温モードアイコン173を点滅表示するようにしてもよい。
【0123】
このようにした場合、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、低水温モードアイコン173の点滅表示によって乗員に対し通知することができる。これにより、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0124】
図16は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第4例を示す図である。図16において、(a)は水温TW≦機関温度閾値Tthである場合の表示であり、(b)は水温TW>機関温度閾値Tthである場合の表示である。
【0125】
図16(a)、(b)に示すように、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、タコメータ171の表示によって乗員に対し通知するようにしてもよい。
【0126】
例えば、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超え、制御介入回転速度をN1aとしての10×1000r/minから、N1bとしての13×1000r/minに変更可能な状態になったとする。この場合、表示装置17は、図16(b)に示すように、タコメータ171における10×1000r/minから13×1000r/minまでの回転速度領域に対応する部分の表示色を他の部分とは変える等して、制御介入回転速度を変更した場合の上昇分を乗員に対し通知するようにしてもよい。
【0127】
また、このようにした場合も、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、タコメータ171の表示態様によって乗員に対し通知することができるため、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0128】
図17は、低水温モードにおける過回転抑制制御中に水温TWが機関温度閾値Tthを超えた場合の、表示装置17よる表示の第5例を示す図である。例えば、表示装置17は、図16(a)等に示したように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tth以下である場合、表示装置17は、タコメータ171におけるレッドゾーン177を非点滅状態で表示するようにしてもよい。そして、図17に示すように、低水温モードにおいて水温TWが機関温度閾値Tthを超えると、表示装置17は、タコメータ171におけるレッドゾーン177を点滅表示するようにしてもよい。
【0129】
このようにした場合、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthを超えたこと、すなわちアクセルグリップ15を戻す操作に応じて制御介入回転速度を変更可能なことを、レッドゾーン177の点滅表示によって乗員に対し通知することができる。これにより、乗員は、この通知を参考に、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0130】
さらに、表示装置17は、過回転抑制制御中に水温TWが上昇して機関温度閾値Tthに近づいた場合には、低水温モードアイコン173の表示色や文字を変更したり、低水温モードアイコン173を点滅表示させたり、タコメータ171の表示態様を変更したりするようにしてもよい。
【0131】
このようにすれば、表示装置17は、水温TWが機関温度閾値Tthに近づいたことを乗員に対し通知することが可能になる。よって、乗員は、この通知を参考に、水温TWが機関温度閾値Tthを超える前から、アクセルグリップ15を操作する準備(具体的にはアクセルグリップ15を戻す準備)を行うことが可能となる。これにより、水温TWが機関温度閾値Tthを超えると、乗員は、アクセルグリップ15を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0132】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0133】
例えば、前述した実施形態では、車両100を駆動する機関がエンジン104aを含むものとしたが、これに限られない。車両100を駆動する機関は、モータによって構成されてもよい。また、車両100を駆動する機関をモータとした場合、機関温度としては、モータ自体の温度を、前述した水温TWの代わりに用いるようにしてもよい。
【0134】
また、前述した実施形態では、アクセルグリップ15が操作されることを条件に制御介入回転速度が変更されるようにしたが、これに限られない。例えば、制御介入回転速度の変更操作を受け付けるための所定の操作ボタンが操作されることを条件に制御介入回転速度が変更されるようにしてもよい。
【0135】
また、前述した実施形態では、乗員に対する通知を行う通知部を表示装置17としたが、これに限られない。例えば、乗員に対する通知を行う通知部として、表示装置17に代えて、または加えて、ランプ表示器やスピーカ等を採用してもよい。
【0136】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0137】
(1) 機関(エンジン104a)の機関回転速度を検出する回転速度検出部(クランクパルサ131)と、
乗員が操作する操作部(アクセルグリップ15)と、
前記機関の温度である機関温度を測定する機関温度測定部(水温センサ132)と、
前記機関回転速度が、前記機関温度に応じて設定される制御介入回転速度以上となった場合に、前記機関回転速度の上昇を抑制する過回転抑制制御を実行する制御部(制御ユニット50)と、
を備える車両(車両100)において、
前記制御部は、前記機関温度が機関温度閾値を超えた後で、前記操作部が操作されることを条件に前記制御介入回転速度を変更可能にする、車両。
【0138】
(1)によれば、乗員の操作に基づき制御介入回転速度を変更することが可能となるため、乗員の意図によらず使用可能な機関回転速度領域が変化してしまうのを抑制することが可能となる。これにより、乗員の意図によらず使用可能な機関回転速度領域が変化することによる違和感を乗員に与えてしまうのを抑制して、車両における操作性を向上させることができる。そして、延いては交通の安全性をより一層改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0139】
(2) (1)に記載の車両であって、
前記制御部は、前記機関温度が前記機関温度閾を超えた後で、前記操作部が操作されることと、前記機関回転速度が前記制御介入回転速度未満となることと、を条件に前記制御介入回転速度を変更可能にする、車両。
【0140】
(2)によれば、機関回転速度が制御介入回転速度よりも高いときに制御介入回転速度を変更してしまうのを抑制することが可能となる。したがって、機関回転速度が高いときに制御介入回転速度が変更され、当該制御介入回転速度の変更に伴う機関回転速度の急変(より具体的には急上昇)によって乗員に対して違和感を与えてしまうのを抑制できる。
【0141】
(3) (2)に記載の車両であって、
前記機関回転速度は、前記操作部に対する操作量に伴って変化する、車両。
【0142】
(3)によれば、乗員は操作部を操作することによって、制御介入回転速度を変更可能とする条件である「操作部の操作」と「機関回転速度を制御介入回転速度未満とすること」との両方を達成することが可能となる。これにより、乗員は少ない動作で制御介入回転速度を変更させることが可能となり、車両の利便性が向上する。
【0143】
また、(3)によれば、機関回転速度を制御介入回転速度未満とする操作があった場合に、制御介入回転速度を変更することが可能となる。換言すると、機関回転速度を変化させる操作があったとしても、当該操作が、機関回転速度を制御介入回転速度未満とする操作でなければ、制御介入回転速度を変更しないようにすることができる。これにより、例えば、機関回転速度を僅かに低下させるような操作や、機関回転速度を上昇させるような操作に応じて、制御介入回転速度を変更してしまうのを抑制することが可能となる。したがって、乗員が意図していないタイミングで制御介入回転速度を変更してしまうのを抑制でき、当該制御介入回転速度の変更に伴う機関回転速度の変化によって乗員に対して違和感を与えてしまうのを回避できる。
【0144】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両であって、
前記機関温度が前記機関温度閾値を超えた場合に、乗員に対して前記操作部を操作することを促す通知を行う通知部(表示装置17)をさらに備える、車両。
【0145】
(4)によれば、機関温度が機関温度閾値を超えた場合に、操作部を操作することを促す通知を行うことで、乗員は、この通知を参考に、操作部を速やかに操作して制御介入回転速度を変更させることが可能となる。
【0146】
(5) (4)に記載の車両であって、
前記通知部は、前記機関温度が上昇して前記機関温度閾値に近づいた場合に、前記機関温度が前記機関温度閾値に近づいたことを乗員に対してさらに通知する、車両。
【0147】
(5)によれば、機関温度が上昇して機関温度閾値に近づいた場合に、機関温度が機関温度閾値に近づいたことを乗員に対して通知することで、乗員は、この通知を参考に、機関温度が機関温度閾値を超える前から、操作部を操作する準備を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0148】
15 アクセルグリップ(操作部)
17 表示装置(通知部)
50 制御ユニット(制御部)
100 車両
104a エンジン(機関)
131 クランクパルサ(回転速度検出部)
132 水温センサ(機関温度測定部)
図1
図2
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