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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050038
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20240403BHJP
【FI】
H04B10/69 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156612
(22)【出願日】2022-09-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/ポスト5G情報通信システムにおけるテラビット光伝送システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】永沼 友浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔一
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AD01
5K102AH11
5K102AH24
5K102KA01
5K102KA39
5K102MA02
5K102MB17
5K102PB13
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102RD05
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光信号のボーレートに応じた帯域特性を確保する光受信装置を提供する。
【解決手段】複数の光送信装置がいずれも光合波器と光学的に接続され、複数の光受信装置がいずれも光分波器と光学的に接続され、光合波器と光分波器が光伝送路を介して接続されている光伝送システムにおいて、光受信装置80は、光信号である主信号Sf2を電気的なデータ信号に変換するPD(Photodiode)132と、主信号Sf2のボーレートに基づいて、ピーキングの調整値を変更する制御部150と、制御部150が変更した調整値に基づいて、PD132の帯域特性を変化させる増幅器であるTIA(Transimpedance Amplifier)131と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を電気的なデータ信号に変換する変換デバイスと、
前記光信号のボーレートに基づいて、ピーキングの調整値を変更する制御部と、
前記制御部が変更した前記調整値に基づいて、前記変換デバイスの帯域特性を変化させる増幅器と、
を備える光受信装置。
【請求項2】
前記ピーキングは、前記変換デバイスの帯域特性における振幅成分を増幅させる特性である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記増幅器は、前記調整値に基づいて、前記ピーキングを調整することにより、前記変換デバイスの前記帯域特性を変化させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ボーレートと前記調整値との対応関係を定めるテーブルを記憶するメモリを備え、前記テーブルに基づいて、前記ボーレートに応じた前記調整値を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【請求項5】
前記対応関係は、前記ボーレートの低下に応じて、前記調整値が低下する関係である、
ことを特徴とする請求項4に記載の光受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ボーレートと前記調整値との対応関係を定める数式情報を保持し、前記数式情報に基づいて、前記ボーレートに応じた前記調整値を算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記対応関係は、前記ボーレートの低下に応じて、前記調整値が低下する関係である、
ことを特徴とする請求項6に記載の光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタルコヒーレント光送受信装置で使用される光受信器に、トランスインピーダンスアンプを内蔵することが知られている。また、ディジタルコヒーレント伝送方式でないIMDD伝送方式においては、光送受信装置内のプリント基板や電気コネクタからなる内部高周波線路を伝播する高周波信号の損失に対処する技術として、アナログ回路技術を用いて周波数特性にピーキングをかける手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
その他、周波数ピーキング制御機能を備えたコア回路を有するトランスインピーダンスアンプが知られている(例えば特許文献2参照)。ピーキングに関する種々の技術も知られている(例えば特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-146515号公報
【特許文献2】特開2013-090128号公報
【特許文献3】特開2011-217321号公報
【特許文献4】特開2013-150154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光受信装置においては、ピーキングを活用して、より高いボーレートの光信号を受信する研究が行われている。例えば、64Gbaud(ギガボー)といった低ボーレートから96Gbaudといった中ボーレートの範囲を超えた130Gbaud前後といった高ボーレートの光信号を受信する研究が行われている。
【0006】
しかしながら、ボーレートを増加させると、周波数利用効率が低下する可能性がある。また、ボーレートを増加させると、光伝送路の途中に設けられたROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)内で受ける帯域狭窄の量が増加する可能性もある。
【0007】
このような観点から、光受信装置においては、高ボーレートの光信号を受信できるだけでなく、低ボーレートから中ボーレートの範囲の光信号も受信できる広範なボーレートに対応可能な光受信装置を実現することが好ましい。
【0008】
ここで、光受信装置の帯域特性を例えば低ボーレートの光信号を受信可能な帯域特性に固定的に設定すると、高ボーレートの光信号の帯域特性は設定された帯域特性により歪み、伝送性能が低下するおそれがある。このため、光受信装置の帯域特性を高ボーレートの光信号を受信可能な帯域特性に固定的に設定することが想定される。これにより、低ボーレートから高ボーレートの範囲の光信号を歪ませずに受信することが可能となる。
【0009】
ところが、光受信装置の帯域特性を高ボーレートの光信号を受信可能な帯域特性に固定的に設定した状態で、低ボーレートの光信号を受信する場合、以下の課題が発生する。すなわち、波長多重伝送においては、設定された帯域特性と低ボーレートの光信号との間の領域に、光信号に隣接する別の光信号の信号成分が存在する。この信号成分は光受信装置が備えるTIA(Transimpedance Amplifier)といった増幅器の増幅率を下げるため、光信号の信号品質を低下させるおそれがある。このように、光受信装置の帯域特性を高ボーレートの光信号を受信可能な帯域特性に固定的に設定すると、低ボーレートの光信号を利用した波長多重伝送においては光信号が歪まないが、隣接する光信号の信号成分により伝送性能が低下するおそれがある。
【0010】
そこで、1つの側面では、光信号のボーレートに応じた帯域特性を確保する光受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施態様では、光受信装置は、光信号を電気的なデータ信号に変換する変換デバイスと、前記光信号のボーレートに基づいて、ピーキングの調整値を変更する制御部と、前記制御部が変更した前記調整値に基づいて、前記変換デバイスの帯域特性を変化させる増幅器と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
光信号のボーレートに応じた帯域特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は光伝送システムの一例である。図1(b)はWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の帯域特性と光受信装置の帯域特性の一例を説明する図である。
図2図2は光受信装置の一例を示すブロック図である。
図3図3は光受信装置の帯域特性の一例を説明する図である。
図4図4(a)はTIAの回路図の一例である。図4(b)はVGA(Variable Gain Amplifier)の回路図の一例である。
図5図5はICR(Intradyne Coherent Receivers)の帯域特性の変化の一例を説明する図である。
図6図6は隣接する別の主信号に重畳される雑音成分の一例を説明する図である。
図7図7は第1実施形態に係る制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8(a)は制御テーブルの一例を説明する図である。図8(b)は光送信装置の帯域特性の変化の一例を説明する図である。
図9図9は第2実施形態に係る制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は数式情報の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1(a)に示すように、光伝送システムSTは、複数の光送信装置10,20,30と複数の光受信装置70,80,90とを含んでいる。光送信装置10,20,30はいずれも光合波器(具体的にはマルチプレクサ)40と光学的に接続されている。光受信装置70,80,90はいずれも光分波器(具体的にはデマルチプレクサ)60と光学的に接続されている。光合波器40と光分波器60は光伝送路50を介して接続されている。光伝送路50は例えば光ファイバを含んでいる。
【0016】
光送信装置10,20,30は互いに異なる中心周波数の主信号を送信する。本実施形態では、主信号を光信号の一例として説明するが、主信号に代えて、光送信装置10,20,30や光受信装置70,80,90を制御する制御信号を採用してもよい。例えば、光送信装置20は中心周波数f2の主信号Sf2を送信する。光送信装置10,30については基本的に光送信装置20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
光合波器40は光送信装置10,20,30のそれぞれから送信された主信号Sf1,Sf2,Sf3を合波して、WDM信号Sfzを生成する。これにより、光合波器40はWDM信号Sfzを光伝送路50に送信する。なお、光合波器40は主信号Sf1,Sf2,Sf3を合波する際、図1(b)に示すように、隣接する主信号Sf1,Sf2の間隔、及び隣接する主信号Sf2,Sf3の間隔を狭めて配置し、WDM信号Sfzを生成する。これにより、周波数の利用効率を高めることができる。
【0018】
光分波器60は光伝送路50を通過したWDM信号Sfzを受信する。光分波器60はWDM信号Sfzを主信号Sf1,Sf2,Sf3に分波する。光分波器60は例えば主信号Sf2を光受信装置80に送信する。これにより、光受信装置80は主信号Sf2を受信する。光受信装置70,90については基本的に光受信装置80と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
ここで、図1(b)に示すように、光送信装置20から送信される主信号Sf2の帯域特性L1に対して光受信装置80の帯域特性L4は十分に確保されている。これにより、主信号Sf2の帯域特性L1の形状が光受信装置80の帯域特性L4に起因して歪まないで済む。結果的に、主信号Sf2の信号品質の低下を抑制することができる。
【0020】
しかしながら、帯域特性L1に対して帯域特性L4が過剰に広いため、主信号Sf2を受信する際、主信号Sf2の受信と併せて光受信装置80は主信号Sf2に隣接する別の主信号Sf1,Sf3の一部である信号成分A-L,A-Hも受信する。
【0021】
詳細は後述するが、光受信装置80は増幅器としてのTIAを備えており、光受信装置80が信号成分A-L,A-Hを受信すると、信号成分A-L,A-Hに起因してTIAの増幅率が減少する可能性がある。これにより、主信号Sf2の信号品質が低下し、結果的に、光伝送システムSTの伝送性能が低下する可能性がある。
【0022】
このような伝送性能の低下を抑制するためには、光受信装置80の帯域特性L4の形状を主信号Sf2の帯域特性L1の形状に近づけて、信号成分A-Lや信号成分A-Hの受信を抑えることが望ましい。詳細は後述するが、本実施形態では、ピーキングを活用して帯域特性L4の形状を適応的に調整し、帯域特性L1の形状に近づける。これにより、帯域特性L1の形状が主信号Sf2のボーレートに応じて変化しても、帯域特性L1の形状に近い形状の帯域特性L4を確保することができる。
【0023】
図2を参照して、光受信装置80の詳細について説明する。なお、光受信装置70,90については基本的に光受信装置80と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、光受信装置80は、受信側DSP(Digital Signal Processor、以下、RxDSPと記載)110と、ADC(Analogue Digital Converter)120とを有する。また、光受信装置80は、ICR130と、ITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)140と、制御部150とを有する。ICR130は変換デバイスの一例である。ICR130はTIA131と、PD(Photodiode)132とを1つのパッケージ内に格納した集積回路である。
【0025】
PD132には、光送信装置20から送信され、光伝送路50を経由した主信号Sf2が入力される。PD132はITLA140から出力された局発光(すなわちレーザ光)により主信号Sf2を受信し、主信号Sf2を電流信号に変換して、TIA131に出力する。TIA131はPD132から出力された電流信号を電圧信号に変換するとともに、電圧信号をADC120に適した振幅に増幅し、増幅後の電圧信号を電気的なデータ信号としてADC120に出力する。このように、ICR130は、PD132とTIA131とを利用して、入力された主信号Sf2を受信してデータ信号に変換する。ADC120は、データ信号をアナログ形式からデジタル形式に変換してRxDSP110に出力する。
【0026】
RxDSP110はADC120から出力されたデータ信号を受信する。RxDSP110は種々のデジタル信号処理を実行する。例えば、RxDSP110はデータ信号に対し、光送信装置20や光受信装置80、光伝送路50で発生した損失を固定的に補償する。具体的には、RxDSP110は、波長分散補償、スキュー補償、及び帯域特性補償などを行う。また、RxDSP110は、データ信号に対し、光伝送路50上で発生する偏波モード分散や偏波依存性損失により生じた主信号Sf2の波形歪みを適応的に補償する。
【0027】
さらに、RxDSP110は、制御部150から設定されたボーレート(Baud Rate)と変調方式(具体的には多値変調方式)に従って、データ信号に対してデジタル復調処理(又はデマッピング処理)を行うことにより、データ信号からシンボルを検出してビットデータに変換し、データ信号からOTU(Optical channel Transport Unit)フレームを復調する。その他、RxDSP110は、OTUフレームからFEC(Forward Error Correction)を取り出してデータ誤り訂正を行う。また、RxDSP110は、OTUフレームをクライアント信号に変換してクライアントネットワークに送信する。なお、クライアント信号は例えばイーサネット(登録商標)信号である。
【0028】
制御部150は、プロセッサとメモリとを含み、図2に示すように、RxDSP110、ICR130(具体的にはTIA131)、及びITLA140の各動作を制御する。プロセッサは例えばCPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリはRAM(Random Access Memory)といった揮発性メモリとROM(Read Only Memory)といった不揮発性メモリとを含んでいる。制御部150はFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0029】
制御部150は、操作端末25からの制御に従い、RxDSP110、及びTIA131に各種の設定を行う。操作端末25はPC(Personal Computer)であってもよいし、スマート端末(例えばタブレット端末等)であってもよい。詳細は後述するが、例えば、操作端末25から制御部150にボーレート、多値変調方式、フレームフォーマットなどを含む信号種が入力されると、制御部150はボーレートに応じたピーキング調整値を決定又は算出し、ピーキング調整値をTIA131に設定する。
【0030】
図3及び図4を参照して、光受信装置80の帯域特性などについて説明する。なお、必要に応じて以下の文献を参照することができる。
(1)Laura Aschei,et al, “A 42-GHz TIA in 28-nm CMOS With Less Than 1.8% THD for Optical Coherent Receivers”, IEEE SOLID-STATE CIRCUITS LETTERS, VOL. 3, p.238-241, JULY 2020
(2)特開2013-090128号公報(特許文献2)
【0031】
光受信装置80の帯域特性(具体的には周波数特性又はゲイン特性)は、光受信装置80が備える様々なデバイスの内、データ信号が透過するデバイスの帯域特性を合成した帯域特性として表現される。本実施形態であれば、上述したように、データ信号はデバイスとしてのADC120及びICR130を透過する。一方で、データ信号はデバイスとしてのITLA140を透過しない。このため、図3に示すように、光受信装置80の帯域特性L4は、ADC120の帯域特性L2とICR130の帯域特性L3を合成した帯域特性として表現される。
【0032】
ここで、主信号Sf2の帯域特性L1の形状を歪ませないためには、光受信装置80の帯域特性L4の形状が主信号Sf2の帯域特性L1の形状よりわずかに大きく、かつ、2つの形状が近似していることが望ましい。これにより、上述したように、光受信装置80の帯域特性L4と主信号Sf2の帯域特性L1との間の領域に存在する信号成分A-Hが減少し、主信号Sf2の信号品質の低下が抑制される。
【0033】
ICR130が備えるTIA131は、ICR130の帯域特性L3における振幅(Magnitude)成分を増幅させて、帯域特性L3を拡張させるピーキングと呼ばれる特性又は機能を有する。本実施形態では、このような特性又は機能をピーキング特性という。したがって、図3に示すように、ADC120の帯域特性L2が主信号Sf2の帯域特性L1に対して不足(又は不十分)であっても、ピーキング特性を活用してICR130の帯域特性L3を拡張させることにより、光受信装置80の帯域特性L4を拡張させることができる。
【0034】
TIA131は、図4(a)に示すように、入力端子171、リアクタンス172、LNTA(Low-Noise Transimpedance Amplifier)173、複数のVGA174,175,176、出力バッファ177、及び出力端子178を含んでいる。入力端子171及び出力端子178はいずれもパッド(具体的には高周波パッド)及びESD(Electro Static Discharge)保護回路を含んでいる。
【0035】
VGA174,175,176はいずれも制御電圧に基づいてゲイン(利得)を調整する。なお、出力バッファ177のDC(Direct Current)出力電圧を感知し、出力電圧に応じた補正電流をVGA175に投入するDCオフセット除去回路179をTIA131に含めてもよい。
【0036】
PD132から出力されて入力端子171及びリアクタンス172を順に経由した電流信号はLNTA173に入力される。LNTA173は、ゲインの増加に伴う、VGA174,175,176に対するノイズの寄与を低減しつつ、電流信号を電圧信号に変換し、VGA174に出力する。VGA174は制御電圧に基づいてゲインを調整することにより電圧信号の低周波数帯(以下、低周波成分という)の振幅をADC120に適した振幅に増幅し、増幅後の電圧信号をVGA175に出力する。
【0037】
VGA175は、制御電圧に基づいてゲインを調整することによりVGA174から出力された増幅後の電圧信号の低周波成分をさらに増幅し、VGA176に出力する。VGA176は、制御電圧に基づいてゲインを調整することによりVGA176から出力された増幅後の電圧信号の低周波成分をさらに増幅し、出力バッファ177に出力する。出力バッファ177は電圧信号をデータ信号として出力端子178に出力する。出力端子178はデータ信号を出力する。
【0038】
ここで、図4(b)に示すように、VGA175は増幅回路181と可変帰還抵抗Rとを含んでいる。増幅回路181と可変帰還抵抗Rは並列に接続されている。増幅回路181と可変帰還抵抗Rの入力端はVGA174に接続されている。増幅回路181と可変帰還抵抗Rの出力端はVGA176に接続されている。
【0039】
制御部150によって可変帰還抵抗Rに印加する制御電圧VCONT(自動利得制御)の値を調整することで、可変帰還抵抗Rの抵抗値が変化する。可変帰還抵抗Rの抵抗値が変化すると、増幅回路181のゲインが変化する。すなわち、制御部150が可変帰還抵抗Rに印加する制御電圧VCONT(自動利得制御)の値を調整することにより、増幅回路181のゲインを大きくしたり小さくしたりすることができる。このように、制御部150は電圧信号の低周波成分の振幅を増幅する。
【0040】
また、VGA175はピーキング特性を発揮する。より詳しくは、図4(b)に示すように、VGA175はピーキングを調整するピーキング回路182を含んでいる。ピーキング回路182はエミッタ直列帰還抵抗Rとピーキング容量Cとを含んでいる。エミッタ直列帰還抵抗Rとピーキング容量Cは並列に接続されている。エミッタ直列帰還抵抗Rの一端は増幅回路181に接続されている。図示しないが、エミッタ直列帰還抵抗Rの一端は増幅回路181が備えるトランジスタのエミッタに接続される。エミッタ直列帰還抵抗Rの他端は接地される。ピーキング容量CはMIM(Metal-Insulator-Metal)容量、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)容量やバラクタ容量などの可変容量を用いることにより実現することができる。例えば、ピーキング容量Cをバラクタなどの可変容量とすることで、ピーキング量を調整することができ、増幅回路181の帯域を改善することができる。
【0041】
制御部150によってピーキング容量Cに印加する制御電圧VCONT(ピーキング調整値)の値を調整することで、エミッタ直列帰還抵抗Rとピーキング容量Cの合成抵抗値が変化する。合成抵抗値が変化すると、増幅回路181のゲインが変化する。すなわち、制御部150がピーキング容量Cに印加する制御電圧VCONT(ピーキング調整値)の値を調整することにより、増幅回路181のゲインを大きくしたり小さくしたりすることができる。このように、制御部150はピーキング特性によって電圧信号の高周波成分の振幅を増幅する。
【0042】
したがって、制御部150が電圧信号の高周波成分の振幅を増幅する制御を行えば、ICR130の帯域特性L3を拡張させることができる。逆に、制御部150が電圧信号の高周波成分の振幅を経幅する制御を行えば、ICR130の帯域特性L3を縮小させたりすることもできる。
【0043】
このため、主信号Sf2のボーレートと上記電圧の値に対応する定数(以下、ピーキング調整値)とを制御テーブルや数式などで事前に対応づけておけば、ボーレートに応じたピーキング調整値が決定又は算出される。これにより、ピーキング調整値に対応する電圧の値が特定され、ICR130の帯域特性L3が拡張又は縮小する。
【0044】
例えば、図5に示すように、TIA131は、中ボーレートに応じたICR130の帯域特性L3―Mを、高ボーレートに応じたICR130の帯域特性L3―Hに拡張させることができる。同様に、TIA131は、中ボーレートに応じたICR130の帯域特性L3―Mを、低ボーレートに応じたICR130の帯域特性L3―Lに縮小させることができる。したがって、ADC120の帯域特性L2とICR130の帯域特性L3―Hとを合成すれば、光受信装置80の帯域特性L4は拡張する。逆に、ADC120の帯域特性L2とICR130の帯域特性L3―Lとを合成すれば、光受信装置80の帯域特性L4は縮小する。
【0045】
このため、主信号Sf2の帯域特性L1が、図6に示すように、高ボーレートに対応する帯域特性L1-Hであれば、ピーキング特性を活用することにより、光受信装置80の帯域特性L4が帯域特性L1-Hの形状に近似する。すなわち、光受信装置80の帯域特性L4が帯域特性L1-Hの形状に近似するように、TIA131はICR130の帯域特性L3―H(図5参照)を決定すればよい。
【0046】
一方で、主信号Sf2の帯域特性L1が、低ボーレートに対応する帯域特性L1-Lであっても、ピーキング特性を活用することにより、光受信装置80の帯域特性L4が帯域特性L1-Lの形状に近似する。すなわち、光受信装置80の帯域特性L4が帯域特性L1-Lの形状に近似するように、TIA131はICR130の帯域特性L3―L(図5参照)を決定すればよい。
【0047】
図6に示すように、主信号Sf2の帯域特性L1が低ボーレートに対応する帯域特性L1-Lである場合、帯域特性L1-Hに比べて、周波数の帯域幅が狭くなる。仮に、帯域特性L1-Hの形状に近似する帯域特性L4が固定的に設定されていると、この帯域特性L4は帯域特性L1-Lに対して過剰に広くなる。結果的に、この帯域特性L4と帯域特性L1-Lとの間に主信号Sf2に隣接する別の主信号Sf3の信号成分が存在する領域が現れる。このような場合、この信号成分がTIA131の増幅率を下げるため、主信号Sf2の信号品質が低下する可能性がある。
【0048】
しかしながら、上述したように、本実施形態であれば、主信号Sf2の帯域特性L1が、低ボーレートに対応する帯域特性L1-Lであっても、ピーキング特性を活用することにより、光受信装置80の帯域特性L4が帯域特性L1-Lの形状に近似する。これにより、主信号Sf3の信号成分が存在する領域が現れないか、又は、この領域は非常に小さくなる。結果的に、WDM信号の伝送において、主信号Sf3の信号成分に起因する主信号Sf2の信号品質の低下を抑制することができ、光伝送システムSTにおける伝送性能の低下を回避することができる。
【0049】
なお、本実施形態における低ボーレートは、例えば60Gbaudや64Gbaudなどを採用することができる。本実施形態における中ボーレートは、例えば90Gbaudや96Gbaudなどを採用することができる。本実施形態における高ボーレートは、例えば120Gbaudや130Gbaudなどを採用することができる。
【0050】
次に、図7及び図8を参照して、第1実施形態に係る制御部150の動作について説明する。
【0051】
まず、図7に示すように、制御部150は操作端末25から入力された信号種を受け付ける(ステップS1)。上述したように、信号種は、主信号Sf2のボーレート、変調方式、フレームフォーマットなどを含んでいる。制御部150は信号種を主信号Sf2の設定として受け付ける。
【0052】
信号種を受け付けると、制御部150はピーキング調整値を決定する(ステップS2)。ここで、図8(a)に示すように、制御部150はメモリ151を備えており、メモリ151が制御テーブル152を記憶する。制御テーブル152ではボーレートとピーキング調整値との対応関係が定義されている。このため、制御部150が信号種を受け付けると、制御部150は信号種に含まれるボーレートに対応するピーキング調整値を決定することができる。なお、制御テーブル152では、ボーレートが低下するほど、ピーキング調整値が低下する。すなわち、制御テーブル152では、小さなボーレートほど、小さなピーキング調整値が登録されている。また、第1実施形態に係るピーキング調整値は16進数で示されているが、16進数以外であってもよい。
【0053】
ピーキング調整値を決定すると、制御部150はピーキング調整値をTIA131に設定し(ステップS3)、処理を終了する。これにより、ピーキング調整値に応じた制御電圧VCONT(ピーキング調整値)の値がピーキング容量C図4(b)参照)に印加され、ICR130の帯域特性L3が変化する。
【0054】
したがって、例えば、信号種に高ボーレートを含めれば、図8(b)に示すように、光受信装置80の帯域特性L4の形状は高ボーレートの主信号Sf2の帯域特性L1-Hの形状に近似する。信号種に低ボーレートを含めれば、図8(b)に示すように、光受信装置80の帯域特性L4の形状は低ボーレートの主信号Sf2の帯域特性L1-Lの形状に近似する。このように、第1実施形態に係る光受信装置80よれば、主信号Sf2のボーレートに応じた帯域特性L4を確保することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、図9及び図10を参照して、第2実施形態に係る制御部150の動作について説明する。
【0056】
まず、図9に示すように、制御部150は操作端末25から出力された信号種を受け付ける(ステップS11)。ステップS11の処理は基本的にステップS1の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
信号種を受け付けると、制御部150はピーキング調整値を算出する(ステップS12)。ここで、図10に示すように、制御部150は設定数式情報153を保持している。すなわち、制御部150には事前に数式情報が設定されている。数式情報は、ピーキング調整値(16進数)=1B(16進数)×ボーレート+D5(16進数)を含む情報である。1B(16進数)及びD5(16進数)といった定数は設計や実験等に応じて適宜決定することができる。
【0058】
このように、制御部150ではボーレートとピーキング調整値との対応関係が定義されている。このため、制御部150が信号種を受け付けると、制御部150は信号種に含まれるボーレートに対応するピーキング調整値を算出することができる。なお、この数式情報では、ボーレートが低下するほど、ピーキング調整値が低下する。すなわち、この数式情報では、小さなボーレートほど、小さなピーキング調整値が算出される。また、第2実施形態に係るピーキング調整値は16進数で示されているが、16進数以外であってもよい。
【0059】
ピーキング調整値を算出すると、制御部150はピーキング調整値をTIA131に設定し(ステップS13)、処理を終了する。これにより、ピーキング調整値に応じた制御電圧VCONT(ピーキング調整値)の値がピーキング容量C図4(b)参照)に印加され、ICR130の帯域特性L3が変化する。
【0060】
したがって、例えば、信号種に高ボーレートを含めれば、光受信装置80の帯域特性L4の形状は高ボーレートの主信号Sf2の帯域特性L1-Hの形状に近似する。信号種に低ボーレートを含めれば、光受信装置80の帯域特性L4の形状は低ボーレートの主信号Sf2の帯域特性L1-Lの形状に近似する。このように、第2実施形態に係る光受信装置80であっても、主信号Sf2のボーレートに応じた帯域特性L4を確保することができる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0062】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)光信号を電気的なデータ信号に変換する変換デバイスと、前記光信号のボーレートに基づいて、ピーキングの調整値を変更する制御部と、前記制御部が変更した前記調整値に基づいて、前記変換デバイスの帯域特性を変化させる増幅器と、を備える光受信装置。
(付記2)前記ピーキングは、前記変換デバイスの帯域特性における振幅成分を増幅させる特性である、ことを特徴とする付記1に記載の光受信装置。
(付記3)前記増幅器は、前記調整値に基づいて、前記ピーキングを調整することにより、前記変換デバイスの前記帯域特性を変化させる、ことを特徴とする付記1又は2に記載の光受信装置。
(付記4)前記制御部は、前記ボーレートと前記調整値との対応関係を定めるテーブルを記憶するメモリを備え、前記テーブルに基づいて、前記ボーレートに応じた前記調整値を決定する、ことを特徴とする付記1又は2に記載の光受信装置。
(付記5)前記対応関係は、前記ボーレートの低下に応じて、前記調整値が低下する関係である、ことを特徴とする付記4に記載の光受信装置。
(付記6)前記制御部は、前記ボーレートと前記調整値との対応関係を定める数式情報を保持し、前記数式情報に基づいて、前記ボーレートに応じた前記調整値を算出する、ことを特徴とする付記1又は2に記載の光受信装置。
(付記7)前記対応関係は、前記ボーレートの低下に応じて、前記調整値が低下する関係である、ことを特徴とする付記6に記載の光受信装置。
【符号の説明】
【0063】
ST 光伝送システム
70,80,90 光受信装置
110 RxDSP
120 ADC
130 ICR
131 TIA
132 PD
140 ITLA
150 制御部
151 メモリ
152 制御テーブル
153 設定数式情報
175 VGA
182 ピーキング回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10