(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050058
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】コネクタ、コネクタ組立体および接続方法
(51)【国際特許分類】
H01R 12/81 20110101AFI20240403BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01R12/81
H01R4/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156650
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】芦部 健太
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB06
5E223AB41
5E223AC38
5E223BA58
5E223BB12
5E223CA21
5E223CD01
5E223CD02
5E223CD25
5E223DA25
5E223DB33
5E223EA24
5E223EA32
(57)【要約】
【課題】シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を信頼性よく電気的に接続しながらも小型化を図ることができるコネクタを提供する。
【解決手段】被覆電線31の導体部31Aを-Y方向からコネクタ11の導体部配置面S上に配置した後、接続対象物21の開口部21Bがコネクタ11の金属端子13のバネ部13Bの直上に位置するように接続対象物21をコネクタ11の上に配置し、接続対象物21を+Y方向に引っ張ることにより、接続対象物21の裏面に露出している接触部21Cが被覆電線31の導体部31Aに電気的に接続される。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を接続するコネクタであって、
前記電線の前記導体部が配置される導体部配置面の少なくとも一部を形成するインシュレータと、
前記インシュレータに保持され、前記導体部配置面から前記導体部配置面に直交する方向に突出し且つ前記導体部配置面に沿った所定の第1の方向に向かって延びる押し付け部と
を備え、
前記押し付け部は、前記導体部配置面に直交する方向に弾性変形可能であり、
前記第1の方向から前記導体部配置面に沿って延びる前記電線の前記導体部が前記導体部配置面と前記押し付け部の間に配置され、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向から前記導体部配置面に沿って延びる前記接続対象物の開口部に通された前記押し付け部と前記電線の前記導体部との間に前記接続対象物が挟まれることにより、前記接続対象物の前記接触部が前記電線の前記導体部に接触し且つ電気的に接続されるコネクタ。
【請求項2】
前記インシュレータに保持された金属端子を備え、
前記金属端子は、前記導体部配置面に沿って延びる平板部と、前記第2の方向における前記平板部の端部から前記平板部に直交する方向に突出し且つ前記第1の方向に向かって延びる片持ち梁形状のバネ部とを有し、
前記平板部の表面は、前記インシュレータとともに前記導体部配置面を形成し、
前記バネ部により前記押し付け部が形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記バネ部は、前記平板部との接続部分から前記第1の方向に向かって延びるスリットを有し、
前記電線の前記導体部は、前記スリットを貫通した状態で前記導体部配置面と前記押し付け部の間に配置される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記平板部は、前記平板部に直交する方向に突出し且つ前記電線の前記導体部に接触する少なくとも1つの突起を有する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1の方向における前記バネ部の端部は、前記平板部に直交する方向に向かって湾曲している請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記金属端子は、前記インシュレータにインサート成形されている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記押し付け部が前記接続対象物の開口部に通された状態で、前記押し付け部に対して前記第2の方向に向かって変位された前記接続対象物の前記接触部が前記電線の前記導体部に接触する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記インシュレータは、前記押し付け部から前記第2の方向に離間して配置され且つ前記導体部配置面に直交する方向に突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記押し付け部に対して前記第2の方向に向かって変位された前記接続対象物の前記開口部に挿入される請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記インシュレータは、前記第1の方向における前記インシュレータの端部に形成され且つ前記電線が収容される電線収容溝を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記導体部配置面は、前記第1の方向および前記第2の方向に対して直交する第3の方向に延び、
前記第3の方向に配列され且つそれぞれ前記インシュレータに保持された複数の前記押し付け部を備え、
複数の前記電線の前記導体部が前記複数の前記押し付け部により前記接続対象物の複数の前記接触部に電気的に接続される請求項1~9のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1に記載のコネクタと、
前記接続対象物と、
前記電線と
を備え、
前記接続対象物は、前記第1の方向における前記接続対象物の端部の裏面に配置された前記接触部と、前記接触部の前記第2の方向側に隣接して配置された前記開口部とを有するコネクタ組立体。
【請求項12】
シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を接続する接続方法であって、
所定の第1の方向から前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に向かって延びる前記電線の前記導体部をコネクタの導体部配置面上に配置し、
前記第2の方向から前記導体部配置面に沿って延びる前記接続対象物の開口部に、前記導体部配置面から前記導体部配置面に直交する方向に突出し且つ前記第1の方向に向かって延びる押し付け部を通し、
前記押し付け部に対して前記接続対象物を前記第2の方向に向かって変位させることにより、前記接続対象物が前記電線の前記導体部と前記押し付け部との間に挟まれ、前記接続対象物の前記接触部が前記電線の前記導体部に接触し且つ電気的に接続される接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を電気的に接続するコネクタおよびコネクタ組立体に関する。
また、この発明は、シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を電気的に接続する接続方法にも関している。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置され且つフレキシブル導体からなる電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えばフレキシブル導体に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
ただし、ウエアラブルデバイスが計測箇所から離れている場合には、計測箇所に配置された電極からコネクタの取付位置まで電路を構成する必要があり、このような電路をフレキシブル導体により形成すると、電気抵抗が高くなり、また、費用が嵩んでしまう。
そこで、フレキシブル導体からなる電極とウエアラブルデバイスとの間を、電気抵抗が低く且つ安価な電線により接続するために、衣服に配置されたフレキシブル導体に電線を接続するような小型のコネクタの開発が望まれている。
【0004】
フレキシブル導体に電線を接続するためのコネクタとして、例えば、特許文献1に、
図19に示されるようなコネクタが開示されている。このコネクタは、基板1の端部に接続された第1コネクタ2と、電線3の先端に取り付けられた第2コネクタ4を有し、第1コネクタ2に第2コネクタ4を嵌合することにより、基板1のフレキシブル導体に電線3を接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板1のフレキシブル導体に電線3を接続するために、基板1の端部と電線3の先端にそれぞれ別個に取り付けられた第1コネクタ2および第2コネクタ4を互いに嵌合させる必要があるため、装置が大型化すると共に、第1コネクタ2と第2コネクタ4との間において切り離し可能な接続箇所が存在することから、電気的接続の信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を信頼性よく電気的に接続しながらも小型化を図ることができるコネクタおよびコネクタ組立体を提供することを目的とする。
また、この発明は、シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を電気的に接続する接続方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタは、
シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を接続するコネクタであって、
電線の導体部が配置される導体部配置面の少なくとも一部を形成するインシュレータと、
インシュレータに保持され、導体部配置面から導体部配置面に直交する方向に突出し且つ導体部配置面に沿った所定の第1の方向に向かって延びる押し付け部と
を備え、
押し付け部は、導体部配置面に直交する方向に弾性変形可能であり、
第1の方向から導体部配置面に沿って延びる電線の導体部が導体部配置面と押し付け部の間に配置され、第1の方向とは反対方向である第2の方向から導体部配置面に沿って延びる接続対象物の開口部に通された押し付け部と電線の導体部との間に接続対象物が挟まれることにより、接続対象物の接触部が電線の導体部に接触し且つ電気的に接続されるものである。
【0009】
インシュレータに保持された金属端子を備え、金属端子は、導体部配置面に沿って延びる平板部と、第2の方向における平板部の端部から平板部に直交する方向に突出し且つ第1の方向に向かって延びる片持ち梁形状のバネ部とを有し、平板部の表面は、インシュレータとともに導体部配置面を形成し、バネ部により押し付け部が形成されていることが好ましい。
また、バネ部は、平板部との接続部分から第1の方向に向かって延びるスリットを有し、電線の導体部は、スリットを貫通した状態で導体部配置面と押し付け部の間に配置されることが好ましい。
【0010】
平板部は、平板部に直交する方向に突出し且つ電線の導体部に接触する少なくとも1つの突起を有することが好ましい。
さらに、第1の方向におけるバネ部の端部は、平板部に直交する方向に向かって湾曲していることが好ましい。
金属端子は、インシュレータにインサート成形されていることが好ましい。
【0011】
押し付け部が接続対象物の開口部に通された状態で、押し付け部に対して第2の方向に向かって変位された接続対象物の接触部が電線の導体部に接触することが好ましい。
インシュレータは、押し付け部から第2の方向に離間して配置され且つ導体部配置面に直交する方向に突出する凸部を有し、凸部は、押し付け部に対して第2の方向に向かって変位された接続対象物の開口部に挿入されることが好ましい。
また、インシュレータは、第1の方向におけるインシュレータの端部に形成され且つ電線が収容される電線収容溝を有することが好ましい。
【0012】
導体部配置面は、第1の方向および第2の方向に対して直交する第3の方向に延び、
第3の方向に配列され且つそれぞれインシュレータに保持された複数の押し付け部を備え、
複数の電線の導体部が複数の押し付け部により接続対象物の複数の接触部に電気的に接続されるように構成することができる。
【0013】
この発明に係るコネクタ組立体は、
上記のコネクタと、
接続対象物と、
電線と
を備え、
接続対象物は、第1の方向における接続対象物の端部の裏面に配置された接触部と、接触部の第2の方向側に隣接して配置された開口部とを有するものである。
【0014】
この発明に係る接続方法は、
シート状の接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を接続する接続方法であって、
所定の第1の方向から第1の方向とは反対方向である第2の方向に向かって延びる電線の導体部をコネクタの導体部配置面上に配置し、
第2の方向から導体部配置面に沿って延びる接続対象物の開口部に、導体部配置面から導体部配置面に直交する方向に突出し且つ第1の方向に向かって延びる押し付け部を通し、
押し付け部に対して接続対象物を第2の方向に向かって変位させることにより、接続対象物が電線の導体部と押し付け部との間に挟まれ、接続対象物の接触部が電線の導体部に接触し且つ電気的に接続される方法である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、第1の方向からインシュレータの導体部配置面に沿った第1の方向に沿って延びる電線の導体部が導体部配置面と押し付け部の間に配置され、第1の方向とは反対方向である第2の方向から導体部配置面に沿って延びる接続対象物の開口部に通された押し付け部と電線の導体部との間に接続対象物が挟まれるので、接続対象物の裏面に露出している接触部に電線の導体部を信頼性よく電気的に接続しながらも小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に係るコネクタ組立体を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に用いられたコネクタを示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に用いられたコネクタを示す平面図である。
【
図4】実施の形態1に用いられたコネクタを示す底面図である。
【
図5】実施の形態1に用いられた金属端子を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1に用いられた金属端子を示す側面図である。
【
図7】実施の形態1に用いられたコネクタを示す部分拡大斜視図である。
【
図9】実施の形態1に用いられたコネクタを示す部分拡大正面図である。
【
図10】実施の形態1に用いられたシート状の接続対象物を示す平面図である。
【
図11】実施の形態1に用いられたシート状の接続対象物を斜め下方から見た斜視図である。
【
図12】コネクタに複数の電線が配置された状態を示す斜視図である。
【
図14】電線の導体部が配置されたコネクタを示す部分拡大正面断面図である。
【
図15】コネクタにシート状の接続対象物が配置された状態を示す斜視図である。
【
図17】コネクタにシート状の接続対象物が配置された状態を示す側面断面図である。
【
図18】実施の形態1に係るコネクタ組立体を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係るコネクタ組立体を示す。コネクタ組立体は、コネクタ11を用いてシート状の接続対象物21に複数の被覆電線31の導体部31Aが接続されたものである。
コネクタ11は、絶縁性樹脂材料により形成されたほぼ平板形状のインシュレータ12と、インシュレータ12に保持された複数の金属端子13を備えている。
【0018】
複数の被覆電線31は、所定の配列方向に配列され、それぞれ、コネクタ11のインシュレータ12の表面と平行に、配列方向に対して直交する方向に延びている。それぞれの被覆電線31は、導体部31Aの外周が絶縁被覆部31Bにより覆われた構造を有している。コネクタ11により、複数の被覆電線31の導体部31Aが、接続対象物21の裏面に露出している後述する複数の接触部に電気的に接続される。なお、被覆電線31の導体部31Aは、1本の導体により構成される、いわゆる単線、および、複数本の導体を撚り合わせて構成される、いわゆる撚り線のいずれであってもよい。
【0019】
ここで、便宜上、コネクタ11のインシュレータ12がXY面に沿って延び、複数の被覆電線31の配列方向をX方向、それぞれの被覆電線31がコネクタ11に向かって延びる方向を+Y方向、XY面に直交する方向をZ方向と呼ぶことにする。
【0020】
図2~
図4に示されるように、コネクタ11のインシュレータ12は、XY面に沿って延び且つX方向に細長い矩形形状を有しており、XY面に沿って延び且つ+Z方向を向いた平坦面12Aを有している。
【0021】
インシュレータ12の-X方向端部、+X方向端部および-Y方向端部には、それぞれ、+Z方向に突出する壁部12Bが形成され、インシュレータ12の-Y方向端部には、X方向に配列された複数の電線収容溝12Cが形成されている。複数の電線収容溝12Cは、複数の被覆電線31に対応するもので、それぞれ、壁部12Bを横切ってY方向に延び、平坦面12Aから-Z方向に窪み、被覆電線31の直径に対応するX方向の溝幅を有している。
【0022】
また、インシュレータ12の+Y方向端部の近傍には、X方向に配列され、それぞれ、+Z方向に突出する複数の凸部12Dが形成されている。
インシュレータ12には、X方向に配列されている複数の凸部12Dの-Y方向側に隣接する位置に、インシュレータ12をZ方向に貫通する貫通孔12Eが形成されている。貫通孔12Eは、X方向に配列された複数の凸部12Dの全体にわたるようにX方向に延びている。
【0023】
さらに、貫通孔12Eの-Y方向側に隣接する位置において、平坦面12A上に複数の金属端子13が露出している。
図3に示されるように、複数の電線収容溝12C、複数の凸部12Dおよび複数の金属端子13は、それぞれ配列ピッチP1でX方向に配列されており、Z方向から見た場合に、互いに対応する電線収容溝12Cと凸部12Dと金属端子13は、Y方向に沿って一直線上に配置されている。
【0024】
図5および
図6に示されるように、金属端子13は、屈曲された一枚の金属板からなり、XY面に沿って延びる平板部13Aと、平板部13Aの+Y方向端部に接続されているバネ部13Bと、平板部13Aの-Y方向端部に段差部13Cを介して接続され且つXY面に沿って延びる底板部13Dを有している。
平板部13Aは、+Z方向を向いた表面13Eを有しており、表面13Eから+Z方向に突出する2つの突起13Fが形成されている。2つの突起13Fは、それぞれ、X方向に沿って延び、互いにY方向に間隔を隔てて配置されている。
【0025】
バネ部13Bは、シート状の接続対象物21を被覆電線31から引き出された導体部31Aに対して押し付ける押し付け部を形成するものであり、平板部13Aの+Y方向端部から+Z方向に向かって立ち上がる立ち上がり部13Gと、立ち上がり部13Gの+Z方向端部から屈曲して-Y方向に延びる腕部13Hから形成されている。このような立ち上がり部13Gと腕部13Hにより、バネ部13Bは、平板部13Aから+Z方向に突出し且つ-Y方向(第1の方向)に向かって延びる片持ち梁形状を有している。
【0026】
また、平板部13Aに接続される立ち上がり部13Gの-Z方向端部から腕部13Hの-Y方向端部の近傍まで、バネ部13BのX方向の中央部にスリット13Jが形成されている。
さらに、バネ部13Bの-Y方向端部には、+Z方向に向かって湾曲する湾曲部13Kが形成されている。
また、底板部13Dは、段差部13Cの存在により、平板部13Aよりも-Z方向側にずれた位置に配置されている。
【0027】
図7および
図8に示されるように、金属端子13は、平板部13Aの表面13Eがインシュレータ12の平坦面12Aと同一面を形成して+Z方向に露出するようにインシュレータ12に保持されている。インシュレータ12の平坦面12Aおよび金属端子13の平板部13Aの表面13Eにより、被覆電線31の導体部31Aが配置される導体部配置面Sが形成されている。導体部配置面Sは、インシュレータ12の平坦面12Aに沿ってX方向(第3の方向)に延びている。
【0028】
金属端子13のバネ部13Bは、導体部配置面Sから+Z方向に突出し、バネ部13Bの+Y方向端部が、インシュレータ12をZ方向に貫通する貫通孔12Eの上に位置している。
金属端子13の段差部13Cは、インシュレータ12に埋設され、底板部13Dの-Z方向側の下面は、インシュレータ12の下面と同一面を形成し、インシュレータ12から-Z方向に露出している。インシュレータ12の電線収容溝12Cの底部は、金属端子13の底板部13Dにより形成されている。
【0029】
図9に示されるように、インシュレータ12の電線収容溝12Cの底部を形成する金属端子13の底板部13Dの+Z方向側の表面から導体部配置面SまでのZ方向の高さH1は、被覆電線31の導体部31Aの外周を覆う絶縁被覆部31Bの厚さにほぼ等しくなるように設定されている。このため、被覆電線31の先端から導体部31Aが引き出された状態で、被覆電線31が電線収容溝12Cに収容されると、絶縁被覆部31Bが金属端子13の底板部13Dの上に配置され、絶縁被覆部31Bから引き出された導体部31Aが導体部配置面Sの上に配置されるように構成されている。
【0030】
例えばインサート成形により、このような構成を有する複数の金属端子13とインシュレータ12が一体となったコネクタ11を作製することができる。
【0031】
シート状の接続対象物21を
図10に示す。接続対象物21は、例えば、導体から形成された少なくとも1つの配線層と、複数の絶縁層とが積層された多層構造を有している。
接続対象物21は、XY面に沿って延び、+Z方向を向いた表面が絶縁層21Aにより覆われている。
また、接続対象物21の-Y方向端部の近傍に、X方向に配列され且つそれぞれ接続対象物21をZ方向に貫通する複数の開口部21Bが形成されている。開口部21Bは、コネクタ11の導体部配置面Sから+Z方向に突出する金属端子13のバネ部13BをZ方向に通すことができるサイズを有している。
【0032】
図11に示されるように、-Z方向を向いた接続対象物21の裏面には、接続対象物21の-Y方向端部に沿ってX方向に配列された複数の接触部21Cが露出している。複数の接触部21Cは、複数の開口部21Bに対応しており、複数の接触部21Cの+Y方向側に隣接して複数の開口部21Bが配置されている。すなわち、開口部21Bと同じX方向位置において、開口部21Bの-Y方向側に対応する接触部21Cが隣接して配置されている。
複数の開口部21Bおよび複数の接触部21Cは、コネクタ11の複数の電線収容溝12C、複数の凸部12Dおよび複数の金属端子13と同様に、配列ピッチP1でX方向に配列されている。
また、複数の接触部21Cは、接続対象物21の1つの配線層の一部から形成されており、絶縁層21Dにより覆われる図示しない複数の配線部に接続されている。
【0033】
コネクタ組立体を組み立てる際には、まず、
図12に示されるように、複数の被覆電線31がX方向に配列され、それぞれの被覆電線31の絶縁被覆部31Bがコネクタ11のインシュレータ12の対応する電線収容溝12Cに収容され、絶縁被覆部31Bから引き出された導体部31Aが、-Y方向からコネクタ11の導体部配置面Sの上に配置される。
【0034】
このとき、
図13に示されるように、導体部31Aは、インシュレータ12の平坦面12Aおよび金属端子13の平板部13Aの表面13Eにより形成されている導体部配置面S上を+Y方向に向かって延び、金属端子13の2つの突起13Fの上に配置される。
また、
図14に示されるように、導体部31Aは、金属端子13のバネ部13Bに形成されているスリット13JをY方向に貫通した状態で導体部配置面Sとバネ部13Bの間に配置される。
【0035】
次に、
図15に示されるように、+Y方向(第2の方向)からコネクタ11の導体部配置面Sに向かって延びるシート状の接続対象物21の裏面を導体部配置面Sに対向させた状態で、接続対象物21がコネクタ11の上に配置される。接続対象物21は、
図16に示されるように、複数の開口部21Bがコネクタ11の複数の金属端子13のバネ部13Bの直上に位置するように、コネクタ11に対して位置合わせされる。
【0036】
このとき、
図17に示されるように、接続対象物21は、開口部21Bよりも+Y方向側の部分がコネクタ11のインシュレータ12の凸部12Dの上に接触し、開口部21Bよりも-Y方向側の部分が導体部配置面Sの上に配置されている導体部31Aの上に位置する。
また、コネクタ11の金属端子13のバネ部13Bの-Y方向端部に形成され且つ+Z方向に向かって湾曲する湾曲部13Kが、接続対象物21の開口部21Bを通して接続対象物21の+Z方向側に位置している。
【0037】
この状態で、
図18に示されるように、接続対象物21を+Y方向に引っ張ることにより、接続対象物21をコネクタ11に対して相対的に+Y方向に変位させる。ここで、コネクタ11の金属端子13のバネ部13Bの湾曲部13Kが、開口部21Bを通して接続対象物21の+Z方向側に位置しているため、バネ部13Bに対して+Y方向に変位する接続対象物21の開口部21Bの-Y方向側に隣接する部分が、バネ部13Bを押し広げつつバネ部13Bの-Z方向側に入り込む。
【0038】
これにより、接続対象物21は、開口部21Bに通されたバネ部13Bと導体部配置面Sの上に配置されている導体部31Aの間に挟まれ、バネ部13Bの弾性力により、接続対象物21の裏面に露出している接触部21Cが導体部31Aに所定の接触圧で接触し、導体部31Aに電気的に接続される。
【0039】
接続対象物21が+Y方向に変位することで、接続対象物21の開口部21Bがコネクタ11のインシュレータ12の凸部12Dの位置まで移動し、凸部12Dは開口部21Bに挿入された状態となる。
このようにして、コネクタ組立体の組み立てが完了する。
【0040】
コネクタ11は、ほぼ平板形状のインシュレータ12に複数の金属端子13が保持された簡単な構成を有しており、薄型のコネクタ11および薄型のコネクタ組立体を実現することが可能となる。
【0041】
なお、被覆電線31から引き出された導体部31Aは、金属端子13のバネ部13Bに形成されているスリット13Jを貫通した状態で導体部配置面Sとバネ部13Bの間に配置されるので、金属端子13に対する導体部31Aの位置ずれを防止することができ、さらに、導体部31Aが隣接する金属端子13に接触して短絡することが防止される。
また、金属端子13は、バネ部13Bの+Y方向端部がインシュレータ12の貫通孔12Eの上に位置するようにインシュレータ12に保持されているため、
図17および
図18に示されるように、被覆電線31の導体部31Aの+Y方向端部が金属端子13のバネ部13Bのスリット13Jを貫通していることを、コネクタ11の-Z方向側から貫通孔12Eを通して目視により確認することが可能となる。これにより、接続対象物21に対する複数の被覆電線31の接続の信頼性を向上させることができる。
【0042】
なお、上記の実施の形態においては、インサート成形により複数の金属端子13がインシュレータ12に保持されているが、これに限るものではなく、例えば圧入により複数の金属端子13をインシュレータ12に保持させることもできる。
【0043】
また、上記の実施の形態では、インシュレータ12に保持された金属端子13のバネ部13Bが、シート状の接続対象物21を被覆電線31の導体部31Aに対して押し付ける押し付け部を形成しているが、これに限るものではなく、インシュレータ12を構成する絶縁性樹脂材料によりインシュレータ12と一体に形成された片持ち梁形状の押し付け部を用いて、接続対象物21を被覆電線31の導体部31Aに押し付ける構成とすることもできる。
【0044】
シート状の接続対象物21としては、フレキシブル基板およびリジッド(硬質)基板のいずれを用いることもできる。
上記の実施の形態では、複数の被覆電線31の導体部31Aを-Y方向からコネクタ11の導体部配置面S上に配置した後、接続対象物21の複数の開口部21Bがコネクタ11の複数の金属端子13のバネ部13Bの直上に位置するように接続対象物21をコネクタ11の上に配置し、接続対象物21を+Y方向に引っ張ることにより、接続対象物21の裏面に露出している複数の接触部21Cが複数の被覆電線31の導体部31Aに電気的に接続される。このため、接続対象物21としてフレキシブル基板を用いても、フレキシブル基板を補強板等により補強する必要もなく、フレキシブル基板の複数の接触部を複数の被覆電線31の導体部31Aに信頼性よく電気的に接続することが可能となる。
【0045】
また、コネクタ11のインシュレータ12をゴム材等の柔軟性を有する材料から形成し、接続対象物21としてフレキシブル基板を用いることにより、例えば複数の被覆電線31の配列方向に沿って変形可能なコネクタ組立体を構成することもできる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、複数の被覆電線31の導体部31Aを接続対象物21の複数の接触部21Cに接続しているが、これに限るものではなく、同様にして1本の被覆電線31の導体部31Aを接続対象物21の接触部21Cに接続するコネクタ組立体を構成することもできる。
また、接続対象物21に接続される電線として、被覆電線31が用いられているが、外周が絶縁被覆部31Bにより覆われていない導体部31Aのみの電線を接続対象物21に接続することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 基板、2 第1コネクタ、3 電線、4 第2コネクタ、11 コネクタ、12 インシュレータ、12A 平坦面、12B 壁部、12C 電線収容溝、12D 凸部、12E 貫通孔、13 金属端子、13A 平板部、13B バネ部、13C 段差部、13D 底板部、13E 表面、13F 突起、13G 立ち上がり部、13H 腕部、13J スリット、13K 湾曲部、21 接続対象物、21A,21D 絶縁層、21B 開口部、21C 接触部、31 被覆電線、31A 導体部、31B 絶縁被覆部、P1 配列ピッチ、S 導体部配置面、H1 高さ。