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  • 特開-グラビアロールの評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005006
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】グラビアロールの評価方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20240110BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05D1/28
B05C1/08
B05C1/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104963
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000119254
【氏名又は名称】株式会社テクノスマート
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】市川 太空美
(72)【発明者】
【氏名】西野 和秀
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
【Fターム(参考)】
4D075AC25
4D075AC26
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB18
4D075DB31
4D075DB54
4D075EA05
4D075EB43
4D075EC30
4F040AA02
4F040AA22
4F040AB04
4F040BA26
4F040CB06
4F040CB21
(57)【要約】
【課題】
グラビアロールにおいて、膜厚を精度よくコントロールできるロールおよびその評価方法を提供する。
【解決手段】
走行する被塗物Wの表面に回転しながら近接または接触して塗液を塗布する、表面に凹凸4が交互に形成されたロール1の評価方法であって、
前記凹凸4の谷底から一定高さ以上にある凸部分41の断面における表面輪郭線を、これに最も近似させた二次関数と比較し、その決定係数に基づいてロール1を評価する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する被塗物表面に回転しながら近接または接触して塗液を塗布する、表面に凹凸が交互に形成されたロールの評価方法であって、
前記凹凸の谷底から一定高さ以上にある凸部分の断面における表面輪郭線を、これに最も近似させた二次関数と比較し、その決定係数に基づいてロールを評価することを特徴とするロールの評価方法。
【請求項2】
前記決定係数が0.985以上となるロールを適合とする請求項1に記載のロール評価方法。
【請求項3】
走行する被塗物に回転しながら近接または接触して塗液を塗布する、表面に凹凸が交互に形成されたロールにおいて、
前記凹凸の谷底から一定高さ以上にある凸部分の断面における表面輪郭線が、単一の二次関数で近似されるものであることを特徴とするロール。
【請求項4】
前記表面輪郭線が、これに最も近似する二次関数に対し、0.985以上の決定係数となる請求項3に記載のロール。
【請求項5】
請求項3または4記載のロールを備えた塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、グラビアコータ方式の塗布装置におけるロールの評価方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の塗布装置においては、彫刻加工等により表面に凹凸を形成したロールが用いられる。凹凸の形状としては、斜線型、台形型、ピラミッド型、亀甲型などのように種々あり、薄膜塗装では斜線型のロールが適しているといわれている。
【0003】
塗布にあたっては、凹凸の凹部分に塗液を貯めたロールをウェブなどの被塗物の表面に回転させながら近接または接触させる。このことにより、被塗物の表面に塗液が塗布される。なお、凹凸の形状がそのまま被塗物に転写されるわけではなく、塗布時における被塗物とロールとの速度差や乾燥までの塗液の広がり等によって被塗物上の塗液がレベリングされ、一様な塗膜が形成される。
【0004】
このようにして被塗物表面に形成された塗膜には、厚みの均一性が求められる。塗膜厚が均一でないと、例えば光の照射によって虹色に発色するなど、外観上の不具合が発生する。虹色発色を抑制するための許容膜厚差は5~10nm以内である。
【0005】
従来、この許容膜厚差を実現するため、ロールの撓みや回転振れの抑制、ロールと被塗物との間の隙間精度の管理、ロールの凹凸の均一性の向上などはもちろんのこと、塗液の配合や乾燥条件、給液装置の調整などといった種々の管理が行われている。
【特許文献1】特開2004-249186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した管理をしてもなお、塗膜厚の均一性が改善されない場合があり、その原因解明が求められている。
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、その原因の一つがロール表面の凹凸形状にあることを見出し、膜厚を精度よくコントロールできるロールおよびその評価方法を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、走行する被塗物表面に回転しながら接触または近接して塗液を塗布する、表面に凹凸が交互に形成されたロールの評価方法であって、前記凹凸の谷底から一定高さ以上にある凸部分の断面における表面輪郭線を、これに最も近似させた二次関数と比較し、その決定係数に基づいてロールを評価することを特徴とするものである。
【0009】
二次関数に着目したところが従来にない本発明の特徴である。このような簡単な評価方法でロールを管理することにより、表面の凹凸に起因する塗膜のムラを効果的に抑制することができる。
【0010】
前述した外観上の不具合を解消する、すなわち、許容膜厚差を5~10nm以内とするには、前記決定係数が0.985以上、より好ましくは0.995以上となるロールを適合とすればよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ロール表面の凹凸に起因する塗膜厚のムラを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における塗装装置を部分模式図である。
図2】同実施形態のロールの側面図である。
図3】同実施形態の凹凸形状を示す図である。
図4】同実施形態において、表面粗さ計による測定結果から凸部分の形状を算出する方法を示した説明図である。
図5】本実施形態のロールによる塗膜と従来のロールによる塗膜の違いを示す撮像画像である。
図6】本実施形態のロールによる塗膜と従来のロールによる塗膜の違いを示す別の撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態に係る塗布装置は、リバースコータ方式と称されるもので、図1に示すように、連続走行するウェブWに近接または接触しながら回転するロール1と、このロール1の表面に塗液を供給する給液機構2とを備え、ロール表面の塗液をウェブWに塗布して塗膜を形成するものである。
【0015】
ウェブWは、ここではシリコーンフィルムであるが、例えば樹脂フィルム、紙、金属帯などのシート状のものであればよい。図中の符号31、32はWを案内走行させる支持ローラである。
【0016】
ロール1は、図2に示すように、(両端部を除く)側周面の全部に、ミル加工によって凹凸4を交互に一定ピッチで形成した斜線型のものである。
この実施形態での凹凸4による斜線のロール1の中心軸線に対する傾斜角度は60°であるが、これに限られるものではない。例えば、45°~75°の範囲でもかまわない。
また、凹凸4は、ここではメッシュが#180(ピッチが0.141mm)、凸部分41の高さ(凹部分42の深さ)は0.035mmである。もっとも、凹凸4のメッシュや深さはこれに限られるものではない。例えば#120~#250メッシュのものなどが存在する。
【0017】
給液機構2は、ここでは、ロール1に接触するように設けられた貯液構造体であるドクターチャンバ21と、このドクターチャンバ21に塗液を供給するポンプ22とを備えたものである。
【0018】
しかしてこの実施形態では、図3に示すように、前記ロール1の凹凸4を斜線方向(溝の延伸方向)と直角に切った断面で視た場合、凹凸4の谷底から一定高さ以上にある凸部分41(同図中、斜線部分)の表面輪郭線が、これに最も近似する二次関数に対し、0.985以上の決定係数となるものを適合ロールとして用いている。
【0019】
具体的な評価の手順を説明すると、まず、製造されたロール1の凹凸4を表面粗さ計によって測定する。ここでは、ロール1の中心軸に沿って凹凸4の測定をしており、この一次測定では、凸部分41の形状が左右対称にはならず、図4に示すように、左右のいずれかに偏った形状となる。
【0020】
他方、谷底と谷底の位置は正しく計測できていることから、一次測定による凸部分形状とこれを左右に反転させた反転凸部分形状とを、互いの谷底と谷底とが合うように重ね合わせ、その平均となる形状を算出することで、前記凸部分41の表面輪郭線を求める。
【0021】
このようにして特定した凸部分の高さにおいて上30%の部分(図3中、斜線部分)の表面輪郭線が、これに最も近似する二次関数に対し、0.985以上の決定係数となるものを適合ロールとしている。
【0022】
このようなロール1と従来のロールとの塗装の違いを比較した一例を図5および図6に示す。
【0023】
これら図5図6において(a)は、本実施形態のロール1による塗膜の撮像画像、図(b)が従来のロールによる塗膜の撮像画像を示している。
【0024】
図5での塗液は、主剤をシリコーンとし、添加剤としてトルエン、メチルエチルケトンを少なくとも含むものである。図6での塗液は、主剤をシリコーンとし、添加剤としてトルエン、メチルエチルケトン、ヘプタンを少なくとも含むものである。双方透明の塗膜が形成される。
【0025】
この比較例での本実施形態のロール1の決定係数は0.9987である。他方、従来のロールは、凹凸の断面形状が概略台形状であること以外は、本実施形態のロールとピッチや斜線角度が同じ斜線型のものである。ちなみに、この従来型ロールの凸部分の二次関数に対する決定係数は0.9658である。
【0026】
比較にあたっては、当然のことながら、ウェブ走行速度、ロール回転数などの塗装条件はすべて等しくしてある。
【0027】
塗膜の膜厚にムラがあり、光の照射により虹色に発色するなど、外観上の不具合が発生する場合には、この撮像画像において帯状(5mm~50mm幅)の虹模様が発生する。
【0028】
モノトーンに近い画像なのでややわかりにくいが、(a)と(b)とを比較すれば明らかなように、本実施形態のロール1の撮像画像には、虹模様を表す薄い縦筋が入っていないのに対し、従来のロールの撮像画像には、虹模様を表す薄い縦の筋が入っている。このことから本実施形態のロール1によって塗膜厚の均一性が向上していることが明らかにわかる。
【0029】
なお、ピッチ(メッシュ)が異なる他の斜線型ロールでも評価したところ、決定係数が0.9957および0.989でも、膜厚の均一性を担保できることがわかった。
【0030】
したがって、前述したように、高さにおいて上30%の部分の凸部分の表面輪郭線が、これに最も近似する二次関数に対し、0.985以上の決定係数となるロールを適合ロールとしている。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0032】
例えば、決定係数はより好ましくは0.995以上がよい。また、二次関数に対する決定係数を算出する凸部分であるが、上の30%に限られず。15%以上50%以下であればよい。より好ましくは、20%以上40%以下、さらに好ましくは25%以上35%以下であればよい。
【0033】
評価時の凹凸測定方法であるが、斜線と直角方向に表面粗さ計を移動させて測定してもよい。表面粗さ計は、非接触型、触針型など、その種類は問わない。
【0034】
前記実施形態では塗装装置としてリバースコータに本発明を適用したが、ロール回転方向が被塗物の走行方向と同じ順方向タイプの塗装装置に適用してもかまわない。
【0035】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
W・・・被塗物(ウェブ)
1・・・ロール
4・・・凹凸
41・・・凸部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6