(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050069
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法、及び原板情報取得方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20240403BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240403BHJP
G06F 30/15 20200101ALI20240403BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/27
G06F30/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156665
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 知克
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146DA05
5B146DC03
5B146DE11
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146DL02
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】構成部品の材料情報(原板での強度や板厚等)をより簡易に且つ精度良く取得して、材料データベースを構築可能とする。
【解決手段】個別の構成部品に解体された自動車車体の各構成部品の各情報をデータベースに格納して自動車車体構成部品の材料データベースを構築する方法であって、上記分解した構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の板厚とマイクロビッカース硬度を測定する実測工程S5と、上記金属製構成部品についての、上記実測工程で測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、コンピュータを用いて、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、を備える、ことを要旨とする自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の構成部品に解体された自動車車体の各構成部品の各情報をデータベースに格納して自動車車体構成部品の材料データベースを構築する方法であって、
上記解体した構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の板厚とマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
上記金属製構成部品についての、上記実測工程で測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、コンピュータを用いて、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、
を備える、ことを特徴とする自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項2】
上記原板情報取得工程は、
測定したマイクロビッカース硬度から、金属製構成部品の引張強度を算出する強度算出工程と、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が取得した3次元形状データから、金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して、加工ひずみ分布及び板厚分布を推定する分布推定工程と、
上記実測工程で測定した板厚及び上記強度算出工程で求めた引張強度を、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、上記原板での板厚及び引張強度に変換する情報変換工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項3】
上記情報変換工程は、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、測定工程で測定した測定位置での、プレス成形による板厚減少量及び加工硬化量を求め、求めた板厚減少量及び加工硬化量で、上記実測工程で測定した板厚及び上記強度算出工程で求めた引張強度を補正して、原板での板厚及び引張強度に変換する、
ことを特徴とする請求項2に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項4】
上記3次元形状データは、実測工程で測定する測定位置の情報を有する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項5】
上記原板情報取得工程は、
予め取得した、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、情報取得対象の金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が求める3次元形状データ、上記実測工程が測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力して、コンピュータ処理によって原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項6】
上記学習データは、上記3次元形状データから、上記金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して求めた、加工ひずみ分布及び板厚分布のデータを含む、ことを特徴とする請求項5に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項7】
上記学習データの3次元形状データ、及び上記3次元データ取得工程が取得する3次元形状データは、実測定する測定位置の情報を有する、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項8】
上記原板情報取得工程は、
予め取得した、金属製構成部品を撮影した画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、金属製構成部品についての画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品を撮像した画像データを取得する画像取得工程と、
上記画像取得工程が求める画像データ、上記実測工程が測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力して、コンピュータ処理によって原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項9】
上記学習データの画像データ、及び上記画像取得工程が取得する画像データは、実測定する測定位置の情報が付与されている、
ことを特徴とする請求項8に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項10】
上記材料データベースには、少なくとも、解体する自動車車体の自動車の製造会社、生産国、及び金属製構成部品の原板での引張強度及び板厚を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載した自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【請求項11】
自動車車体を構成する構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度を求める原板情報取得方法であって、
金属製構成部品の板厚、及びマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
上記実測工程で測定した板厚、及びマイクロビッカース硬度を、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、
を備え
上記原板情報取得工程は、
測定したマイクロビッカース硬度から、金属製構成部品の引張強度を算出する強度算出工程と、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が取得した3次元形状データから、上記金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して、加工ひずみ分布及び板厚分布を推定する分布推定工程と、
上記実測工程で測定した板厚、及び上記強度算出工程で求めた引張強度を、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、上記原板での板厚及び引張強度に変換する情報変換工程と、
を備える、
ことを特徴とする自動車車体構成部品の原板情報取得方法。
【請求項12】
自動車車体を構成する構成部品のうち、金属板をプレス加工して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度を求める原板情報取得方法であって、
金属製構成部品の板厚、及びマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
予め取得した、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が求める3次元形状データ、上記実測工程が測定した板厚、及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力し、コンピュータ処理によって、原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える、
ことを特徴とする自動車車体構成部品の原板情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体を構成する各車体構成部品の材料情報を収集して、材料データベースを構築するための技術に関する。特に、金属製の金属製構成部品の加工前の板厚や引張強度を求めて、材料データベースを構築することに有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の鋼板を主体に構成される自動車車体の適用素材は、年代とともに変化を続けており、高強度化と薄肉・軽量化が進んでいる。また、自動車には、衝突安全基準の厳格化、要求性能の向上、燃費及びCO2排出量低減などの要請から、車体骨格強度の増強と質量低減という、相反する性能を達成する必要がある。このため、自動車車体に対し、高強度鋼板の使用は継続的に増加してきた。
【0003】
通常の鋼板部品は、生産効率が高く、大量生産・低コストでの製造が可能なプレス成形法を用いて製造されることが多い。しかし、鋼板素材の高強度化に伴い、鋼板の成形性は低下する。このため、鋼板部品は、成形時のわれ(破断)やしわ発生、形状・寸法精度不良など不具合を生じやすくなっている。このため、自動車の車体設計の段階から、鋼板の成形工法や部品形状・金型形状に技術的な工夫を織り込むことが必要である。
【0004】
しかし、軽量化のために実行される部品板厚の低減は、部品剛性あるいは車体剛性の低下に繋がる。このため、全ての車体構成部品を一律に高強度化・薄肉化することはできない。そして、車体のどの部位を強化し、あるいは薄肉化するか、鋼板強度に応じた最適な部品形状をいかにデザインするかは、車体を設計する技術者の経験と各メーカー(製造会社)が培ってきた技術の蓄積から決定されている。
このため、他社のデザインにみられる工夫や革新的な技術、新しい素材の使用方法・工法などを、市販車体の調査を通じて、学習・吸収することも行われている。そして、調査で取得した各車体の構成部品の材料情報は、材料データベースに格納されて種々の検討に供される。
【0005】
このような市販車体の調査による構成部品の材料情報は、例えば、次のように実行される。
すなわち、対象とする車体について、車体の接合部を解体し、部品単位に分離する。そして各構成部品について、使用素材の一部を試験片としてサンプリングして、その硬度や板厚の測定や、組織の顕微鏡観察により素性を特定し、比較分析が行われる。ここで、測定位置は、平坦部や成型による加工量の少ない部分を選択して実行される。
【0006】
そして、測定した硬度から引張強度を求め、更に、構成部品のプレス成形形状や部品の種類などから、加工前の原板の引張強度規格(TS)の材料規格(例えば、日本国内における自動車用鋼板の共通規格の一つである日本鉄鋼連盟規格。以降、この規格をTS規格と称す)や板厚を、作業員が今までの知見に基づき類推して求める。このように、数値を製造規格に照合して使用素材(原板)の規格を特定する。
車体1台あたりの構成部品点数は、300~500点にも及び、車両モデル毎にデータベース化して材料データベースに格納される。その材料データベースは、様々な分析調査のベースとして使用される。
【0007】
そして、車両モデル毎のデータベース化に関しては、特許文献1には、販売されている車両を分解して、その車両に使用されている部品の寸法、重量、素材の鋼種、外観写真等を車両毎に整理してデータベース化することが記載されている。その際に、製造会社又は車種の異なる複数の車両間における同じ部位で使用される同一機能の部品に対し、統一した基準により、部位、グループ名、部品機能名を付与している。そして、製造会社又は車種の異なる複数の車両間における対比を可能とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
鋼板プレス部品は、プレス成形時に加工ひずみが入り、ひずみ量に応じた加工硬化が発生している。更に、鋼板プレス部品は、素材特性に応じた板厚減少(減肉)を生じる。このため、ひずみ量や加工硬化はともに、同一部品内の位置による分布を生じる。このひずみ分布は、成形工法や部品形状、素材特性により変化する。このため、素材特性調査用のサンプリング位置を選択することは、分析精度を向上させるためのポイントとなる。
従来、サンプリング位置の決定は、作業者の経験を基に、あるいは作業性(採取しやすさ等)により決定されており、これらは、分析データに誤差を生じる要因となっていた。
【0010】
これらの誤差を小さくする目的で、使用素材の明らかな部品、すなわち自動車メーカーでは自社製品の調査、素材メーカーであれば自社の受注部品を調査して、サンプリング調査の結果との照合を行う。これら正答例をフィードバックして、分析値からの規格推定作業の精度向上を図っていた。しかし、これらの調査工程は、いずれも作業者の知識と能力、経験と勘に精度が左右されることを否めなかった。
そして、判定値に疑義が生じた場合は、例えば、超音波板厚計などにより部品全体の板厚分布を計測し、サンプリング部分のひずみ量や加工硬化量を推定し、強度規格の推定値の確認・修正を行う必要があった。
【0011】
一方、素材の引張強さ(TS)等の機械的性質は、製造メーカー毎に独自の規格体系を有している。また、素材となる鋼板の標準厚さの規格体系は生産国により異なっている。このため、車両モデル毎にデータベース化する際に、特許文献1に記載された統一した基準で車両における部位、グループ名、部品機能名を付与してデータベース化するだけでは、製造メーカーや生産国のそれぞれの規格体系に準拠したデータを検索・閲覧することが困難であった。
【0012】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、構成部品の材料情報(原板での強度や板厚等)をより簡易に且つ精度良く取得して、材料データベースをより簡易に構築可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題解決のために、本発明の一態様は、個別の構成部品に解体された自動車車体の各構成部品の各情報をデータベースに格納して自動車車体構成部品の材料データベースを構築する方法であって、上記分解した構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の板厚とマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、上記金属製構成部品についての、上記実測工程で測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、コンピュータを用いて、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、を備える、ことを要旨とする自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法である。
【0014】
ここで、マイクロビッカース硬度は、例えば、SAE J 417に規定さているビッカース硬度から強度への換算表や、経験的に得られた換算式を用いて引張強度(TS)に変換することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、構成部品の材料情報(強度や板厚等)を、より簡易に且つ精度良く取得して、自動車車体の部品についての材料データベースをより簡易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における処理手順例を示す図である。
【
図2】応力-ひずみ曲線(SSカーブ)の例を示す図である。
【
図3】SSカーブと加工硬化の概念を説明する図である。
【
図4】ビッカース硬度への加工硬化の影響を説明する図である。
【
図5】材料データと加工硬化量推定との関係を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態における処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
個別の構成部品に解体された自動車車体の各構成部品の各情報をデータベースに格納して自動車車体構成部品の材料データベースを構築する。
その材料情報として、本実施形態では、鋼板などの金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品についての材料情報を取得して、材料データベースに格納する。ただし、他の情報も別途取得して材料データベースに順次格納する。
その材料情報として、金属製構成部品についての、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度を求める場合とする。
【0018】
「第1実施形態」
本発明の第1の態様は、自動車車体構成部品の実測板厚及びマイクロビッカース硬度(MVH)情報を実測する。更に、部品全体の3次元形状データから、成形FEM逆解析(成形CAEシミュレーション逆解析)により算出された実測位置での加工ひずみ量及び板厚減少量を求める。その求めた加工ひずみ量及び板厚減少量によって、部品での板厚及び強度を補正して、原板(鋼板)の引張強度(TS)の材料規格(TS規格と称す)及び加工前の元板厚を決定する。そして、正確な部品加工前の原板のTS規格の推定を可能とする。その求めた原板での板厚及びTS規格を材料データベースに、部品自体の情報と共に格納して、自動車車体用の材料データベースを構築する。
【0019】
次に、本実施形態の具体例について、
図1を参照して説明する。
まず、ステップS1では、公知の方法にて、調査用の自動車車体について、車体の接合部を解体して、部品単位に分離する。そして、各部品について、所属モジュール・レイアウト情報・型式やOEM情報などの車両情報をデータベースに格納する。
次に、ステップS2(採取位置決定工程)では、情報取得対象である各金属製構成部品(以下、単に、部品とも呼ぶ)について、実測位置(測定位置)の特定を行う。そして、金属製構成部品の表面に対し測定位置のマーキングを行う。マーキングは、例えば、星印や二重丸など公知の符号を採用すればよい。
測定位置は、測定しやすく、且つ加工硬度や板厚減少率が相対的に小さい平坦な箇所を選定する。
【0020】
<3次元データ取得工程S3>
ステップS3(3次元データ取得工程)では、測定位置にマーキングを付した部品について、3次元形状測定を行って、3次元形状データを取得する。3次元形状データには、マーキング位置情報も含まれる。また、マーキング位置(測定位置)は、実測用の試験片採取位置を特定する情報にもなっている。
形状測定方法には、ステレオカメラによる画像解析、レーザー光によるスキャンシステムなど公知の技術を用いることができる。ただし、ペイントマーカーなどによるサンプリング位置情報を同時に記録しやすい画像解析システムが好ましい。
ステップS4では、3次元形状情報を取得した部品から、マーキング位置を含む試験片を採取する。
【0021】
<実測工程S5>
ステップS5では、試験片(部品)の板厚とマイクロビッカース硬度を測定する。
実測(計測)は、試験片を樹脂モールド材に埋め込んだ後に、その断面を鏡面研磨した後に、断面板厚とマイクロビッカース法によるビッカース硬度との測定を行う。
【0022】
<強度算出工程S6>
次に、ステップS6にて、実測した部品のビッカース硬度から、部品の引張強度を算出する処理を行う。例えば、SAE J 417に規定さているビッカース硬度から強度への換算表や、経験的に得られた換算式を用いて引張強度(TS)に変換する。
簡易的には、マイクロビッカース硬度の三倍を部品の引張強度とする。
ステップS7では、求めた部品の板厚と引張強度とから、原板の引張強度の材料規格(TS規格)を仮決定する。仮決定は、作業者の経験などから決定する。
【0023】
<分布推定工程S8>
ステップS8では、ステップS3で求めた3次元形状データ(記録された形状情報)をFEM解析用のメッシュモデルに変換し、コンピュータを用いた成形FEM逆解析を実行する。そして、加工ひずみ分布、板厚分布を求める。
通常のプレス成形FEM解析では、加工用の成形金型をモデル化して、シート・メッシュモデルとした素材を逐次的に成形し、加工ひずみの分布や板厚減少量の分布を求める。これに対して、成形FEM逆解析は、成形後の部品形状をシートブランク(加工前の原板)に戻るまで変形させて、部品加工に必要な素材の外形形状を求める解析方法である。これは、ワンプッシュ法と呼ばれるソルバー(プログラム)で実行される。
そして、解析で得られる加工ひずみや板厚減少量を使用して、成形部品上の加工ひずみと板厚減少量の分布を推定することができる。
【0024】
上記の成形FEM逆解析の入力パラメータとしては、次の(1)と(2)の2つのパラメータが用いられる。
(1)部品形状の3次元形状データ(3D-CADデータ:CATIA形式やAUTO-CAD形式、あるいはIGESデータなど)
(2)部品に用いられている材料(原板)のTS規格とTS規格に対応する材料データ、原板板厚
【0025】
(1)のパラメータは、ステップS3で取得した部品形状の3D-CADデータを用いる。
(2)のパラメータは、ステップS7で設定(推定)した、TS規格を用いる。また、原板の板厚としては、ステップS4で測定した部品の実測板厚を仮に原板の板厚値として設定する。また、そのステップS6で仮決定し原板の情報(TS規格)に応じた材料データ(SSカーブ)を参照する。
【0026】
材料データ10とは、JISに定められた引張試験により求められる応力-ひずみ曲線(SSカーブ、
図2参照)のことを指す。
材料データ10のデータは、曲線を構成する応力とひずみが1対となったデータ群で定義する。又は該データ群を近似した近似式で定義し、その近似式を構成する係数を、材料データ10のデータとして使用してもよい。
ここで、塑性領域における応力とひずみの関係の近似式としては、下記のような、n乗硬化則(式1)やSWIFT式(式2)などがよく知られている。
(n乗硬化則:) δ=c・(ε)
n・・・式(1)
(Swift式:) δ=c・(a +ε)
n ・・・式(2)
なお、δ:真応力、ε:真ひずみ、n:加工硬化指数(n値)、c、a:定数、である。
【0027】
<情報変換工程S9>
ステップS9では、ステップS8で求めた加工ひずみ分布、板厚分布から、測定位置(マーキング位置)での、部品の板厚減少量と加工硬化量を求める。そして、部品の板厚減少量と加工硬化量で、実測したビッカース硬度より算出された引張強度(TS)および板厚の測定値を補正して、原板の板厚及び引張強度を求める。
すなわち、加工ひずみ及び板厚減少量の分布から、実測位置での加工硬化量及び板厚減少量を求め、ステップ5で測定した部品の板厚とステップ6で算出した部品の引張強度(TS)を補正する。
【0028】
ここで、加工硬化量の定義について補足説明する。
加工硬化とは、
図2に示す応力ひずみ曲線(SSカーブ)の例で説明すると、弾性変形域(真ひずみε≦0.2%)を超えて応力が負荷されて塑性変形(残留変形)を生じた場合に材料強度が上昇する現象である。そして、n乗硬化則(式1)やSwift式(式2)の加工硬化指数(n値)として規定される。
【0029】
図3は、SSカーブと加工硬化の概念の説明図である。
例えば、加工Aを加えて、弾性変形域(真ひずみε≦0.2%)を超え、降伏応力A以上の応力を付加した試験片は、除荷した状態において変形(ひずみ)が発生する。その後、再度引張試験を行うと、見かけ上の降伏点(降伏応力B)は上昇した曲線を与える(再加工B)。加工Aにおける加工硬化量とは、降伏応力Aと降伏応力Bの差のことである。
【0030】
次に、ビッカース硬度より算出された引張強度(TS)値に対して、加工硬化量に対応した補正の必要性について補足説明する。
ビッカース硬度は、規定形状の尖った圧子を試験片に押し込み、荷重と試験片に形成された圧痕の形状・寸法により塑性変形量を推定し、試験片の硬度やTS規格を求める手法である。したがって、
図4に示すように、加工硬化した試験片により試験を行った場合(
図4の加工硬化・有)の圧痕サイズ(ε1)と加工を施されていない試験片により試験を行った場合(
図4の加工なし)の圧痕サイズ(ε2)は異なる。このため、加工硬化した試験片より求めたビッカース硬度は、加工前の原板の本来のビッカース硬度とは異なる。
【0031】
そこで本実施形態では、FEM成形逆解析(ワンステップ法)で求められた成形ひずみ(真ひずみε)と応力-ひずみ曲線(SSカーブ)により加工硬化量を推定し、塑性変形後の試験片(部品)のビッカース硬度から求めた引張強度(TS)を補正して、塑性変形前の本来の引張強度(TS)とTS規格を決定する。
ここで、ビッカース硬度から強度への換算は、上述した通り、SAE J 417に規定される換算表を参照して求めることが一般的であり、強度は引張に相当するとされている。加工硬化量を降伏応力から成形ひずみ相当の応力との差分として、ビッカース硬度より算出されたTS値に対して補正を行う。
【0032】
図5に、ステップS9にて、形状測定時のサンプリング位置情報と加工ひずみ及び板厚減少量の分布から、部品のビッカース硬度から求めた引張強度(TS)および部品の板厚の測定値を補正して、原板のTS規格を推定する処理の一例を示す。
まず、(a)SAE J 417に規定される換算表を参照し、ビッカース硬度に基づいて引張強度(TS)を算出したところ630MPaであったとする。そして、加工硬化分を想定して、原板の仮のTS規格(A)は日本鉄鋼連盟規格の強度レベル590MPa級の材料規格であるJSC590と仮決めした。
そして、(b)JSC590の材料データを用いて、成形FEM逆解析を行い、サンプリング部の成形による加工ひずみ量推定を推定したところ、加工ひずみ量は0.15(15%)と推定された。
【0033】
また、(c)JSC590の応力-ひずみ曲線(SSカーブ)により、降伏応力(ε=0.2%)と加工ひずみ量(ε=15%)相当応力の差分より加工硬化量を175MPaと推定した。
(d)ビッカース硬度に基づく引張強度(TS)である630MPaから、加工硬化量175MPaを差し引いて引張強度の補正(硬度判定補正)を行い、補正後の引張強度(TS’)は455MPaと算出された。
(e)硬度判定補正後の引張強度(TS’)455MPaより、原板の材料規格を日本鉄鋼連盟規格の強度レベル440MPa級のJSC440と推定した。
【0034】
<評価工程S10>
ステップS10では、仮決定した原板のTS規格(ステップS7)と、補正後の原板のTS規定(ステップS9)とを比較する。評価工程S10の処理は無くても良い。
部品の実測値から推定した原板のTS規格(S7)と補正後のTS規格(S9)とが、所定以上異なる場合は、ステップS9で求めた原板のTS規格に応じた材料データ(SSカーブ)を参照して、ステップS8、ステップS9およびステップS10の処理を再実行し、原板でのTS規格を決定する。
【0035】
以上求めた、これら一連のデータ(部品情報、3次元形状データ、加工ひずみ/板厚分布、TS規格)は、相互に紐づいたデータとして材料データベースに保存する(S11)。この一連の工程が、基本データの収集、及び材料データベースへの蓄積段階に相当する。
ここで、3次元データ取得工程S3、強度算出工程S6、分布推定工程S8、情報変換工程S9は、原板の情報に変換する原板情報取得工程を構成する。
【0036】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態では、コンピュータを用いた成形FEM逆解析を行うことで、原板の情報に変換する方法を例示した。
これに対し、第2実施形態では、
図6に示すように、予め部品の情報を原板の情報に変換するための変換モデル11を有する。その変換モデル11を用いて、部品の情報を原板の情報に変換する例である。これによって、毎回FEM逆解析を行う必要がなくなる。
【0037】
<変換モデル11>
変換モデル11は、予め取得した、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、情報取得対象の金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求めるモデルである。
【0038】
各学習データは、3次元形状データから、上記金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形FEM逆解析を施して求めた、加工ひずみ分布及び板厚分布のデータを含んでいてもよい。
また、学習データは、部品の種別情報を含んでいても良い。この場合、入力データに種別情報を含めると良い。
この学習データは、例えば第1実施形態で取得したデータ群から構成すればよい。すなわち、第1実施形態を実行することで、学習データの蓄積を行うと良い。学習に元いる学習データは、例えば10000件以上とする。
【0039】
3次元形状データには、板厚等を実測する測定位置であるマーキング位置情報も含まれていることが好ましい。
そして、蓄積部(不図示)から上記の学習データを順次入力してCNNその他の公知の機械学習を行って、情報取得対象の金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を出力データとする、変換モデル11を生成しておく。
【0040】
次に、本実施形態の処理について、
図6を参照して説明する。
図6中、ステップS1~S5の処理を、第1実施形態と同様である。
これらの処理によって、変換処理工程S20での入力データとなる、情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データ、測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を取得する。
【0041】
<変換処理工程S20>
そして、本実施形態では、ステップS20にて、求めた3次元形状データ、測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、変換モデル11に入力し、コンピュータ処理によって原板での板厚及び引張強度を求める。
ここで、3次元データ取得工程S3、変換処理工程S20、変換モデル11は、原板の情報に変換する原板情報取得工程を構成する。
【0042】
(変形例)
(1)上記実施形態では、変換モデル11の入力データを3次元形状データ、測定した板厚及びマイクロビッカース硬度としているが、これに限定されない。マイクロビッカース硬度の代わりに、
図1のステップS6で処理後の部品の引張強度を使用しても良い。
(2)また、変換モデル11の出力データを、原板での板厚及び引張強度(TS規格)としているが、出力データを、測定位置での板厚減少量及び加工硬化量としても良い。
この場合、ステップS20の処理後に、実測値から板厚減少量及び加工硬化量をそれぞれ引き算するコンピュータ処理を行って、原板の板厚及び引張強度を求めれば良い。
(3)また、変換モデル11について、3次元形状データの代わりに、部品全体を撮像した画像データを用いても良い。なお、撮像する部品には、マーキングが施され、そのマーキングが撮像するように部品全体の3次元形状が分かる画像を撮像する。画像データは、1枚の画像でもよいし、複数方向から撮像する複数枚の画像データ群でも良い。
【0043】
すなわち、この変形例の変換モデル11は、予め取得した、金属製構成部品についての画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、情報取得対象の金属製構成部品についての画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求めるモデルである。
【0044】
<画像取得工程S31>
そして、この変形例では、
図7に示すように、ステップS3で3次元データを取得する代わりに、ステップS31として、部品の画像データを撮像する処理を実行する。
変換処理工程(ステップS20)では、3次元形状データの代わりに、ステップS31で取得して画像データを入力データとして、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める。
【0045】
(動作その他)
本実施形態では、構成部品の材料情報(強度や板厚等)を、より簡易に且つ精度良く取得して材料データベースを構築することができるようになった。
特に第2実施形態では、従来、サンプリング試験片の断面のマイクロビッカース硬度及び板厚から、熟練技能者による判定で決定していた部品の原板での板厚およびTS規格が変換モデルによって自動的に判定可能となった。一定の確率で発生していた誤判定は減少し、データベースの精度は向上する。熟練技能者の判定ロジックは、本発明のデータベースや予測式決定プロセスに内包されて伝承され、技能継承者の育成にかかる時間やコストを低減することができる。
【0046】
そして、上述のように構築した材料データベースには、調査した自動車の製造メーカー(OEM)及び生産国、原板のTS規格及び板厚を相互に紐づけしたデータの情報を構築する。
メーカーや生産国によって、使用する規格が異なるが、構築した材料データベースでは、引張強度については、例えばTS規格で統一してデータベースを構築しておく。そして、OEMや生産国ごとの受注及び設計規格・範囲を同様にデータベース化しておくことで、原板TS規格を、受注及び設計規格に変換して、受注検討や鋼板新製品開発時のOEMとのコミュニケーションをスムーズとすることが可能となる。
【0047】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)個別の構成部品に解体された自動車車体の各構成部品の各情報をデータベースに格納して自動車車体構成部品の材料データベースを構築する方法であって、
上記解体した構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の板厚とマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
上記金属製構成部品についての、上記実測工程で測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、コンピュータを用いて、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、
を備える、自動車車体構成部品の材料データベースの構築方法。
【0048】
(2)上記原板情報取得工程は、
測定したマイクロビッカース硬度から、金属製構成部品の引張強度を算出する強度算出工程と、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が取得した3次元形状データから、金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して、加工ひずみ分布及び板厚分布を推定する分布推定工程と、
上記実測工程で測定した板厚及び上記強度算出工程で求めた引張強度を、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、上記原板での板厚及び引張強度に変換する情報変換工程と、
を備える。
【0049】
(3)上記情報変換工程は、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、測定工程で測定した測定位置での、プレス成形による板厚減少量及び加工硬化量を求め、求めた板厚減少量及び加工硬化量で、上記実測工程で測定した板厚及び上記強度算出工程で求めた引張強度を補正して、原板での板厚及び引張強度に変換する。
(4)上記3次元形状データは、実測工程で測定する測定位置の情報を有する。
【0050】
(5)上記原板情報取得工程は、
予め取得した、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、情報取得対象の金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が求める3次元形状データ、上記実測工程が測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力して、コンピュータ処理によって原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える。
【0051】
(6)上記学習データは、上記3次元形状データから、上記金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して求めた、加工ひずみ分布及び板厚分布のデータを含む。
(7)上記学習データの3次元形状データ、及び上記3次元データ取得工程が取得する3次元形状データは、実測定する測定位置の情報を有する。
【0052】
(8)上記原板情報取得工程は、
予め取得した、金属製構成部品を撮影した画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、金属製構成部品についての画像データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品を撮像した画像データを取得する画像取得工程と、
上記画像取得工程が求める画像データ、上記実測工程が測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力して、コンピュータ処理によって原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える。
【0053】
(9)上記学習データの画像データ、及び上記画像取得工程が取得する画像データは、実測定する測定位置の情報が付与されている。
(10)上記材料データベースには、少なくとも、解体する自動車車体の自動車の製造会社、生産国、及び金属製構成部品の原板での引張強度及び板厚を含む。
【0054】
(11)自動車車体を構成する構成部品のうち、金属板をプレス成形して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度を求める原板情報取得方法であって、
金属製構成部品の板厚、及びマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
上記実測工程で測定した板厚、及びマイクロビッカース硬度を、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度に変換する原板情報取得工程と、
を備え
上記原板情報取得工程は、
測定したマイクロビッカース硬度から、金属製構成部品の引張強度を算出する強度算出工程と、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が取得した3次元形状データから、上記金属製構成部品を原板に戻すコンピュータによる成形CAEシミュレーション逆解析を施して、加工ひずみ分布及び板厚分布を推定する分布推定工程と、
上記実測工程で測定した板厚、及び上記強度算出工程で求めた引張強度を、上記分布推定工程で求めた加工ひずみ分布及び板厚分布に基づき、上記原板での板厚及び引張強度に変換する情報変換工程と、
を備える。
【0055】
(12)自動車車体を構成する構成部品のうち、金属板をプレス加工して製造されたと推定される構成部品である金属製構成部品の、当該金属製構成部品に加工する前の原板での板厚及び引張強度を求める原板情報取得方法であって、
金属製構成部品の板厚、及びマイクロビッカース硬度を測定する実測工程と、
予め取得した、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度と、上記金属製構成部品の加工前の原板での板厚及び引張強度とを含む学習データで機械学習した学習済みモデルであって、金属製構成部品についての3次元形状データ、実測定した板厚及びマイクロビッカース硬度を入力データとし、入力データに対応する原板での板厚及び引張強度を求める変換モデルと、
情報取得対象の金属製構成部品の3次元形状データを取得する3次元データ取得工程と、
上記3次元データ取得工程が求める3次元形状データ、上記実測工程が測定した板厚、及びマイクロビッカース硬度を、上記変換モデルに入力し、コンピュータ処理によって、原板での板厚及び引張強度を求める変換処理工程と、
を備える。
【符号の説明】
【0056】
10 材料データ
11 変換モデル
S3 3次元データ取得工程
S5 実測工程
S6 強度算出工程
S8 分布推定工程
S9 情報変換工程
S20 変換処理工程
S31 画像取得工程