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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005007
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】炭酸ガス固定化装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20240110BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C04B18/16
B01D53/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104967
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】坂根 英之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】丹 秀男
(72)【発明者】
【氏名】小柳 裕
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーンケン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐麻
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA05
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA66
4D002DA70
4D002EA06
4D002EA13
4D002FA02
4D002GA02
4D002GB02
4D002GB09
(57)【要約】
【課題】現場からの炭酸ガスの排出量を削減すると共に、未使用の生コンを効率よく処理できる炭酸ガス固定化装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る炭酸ガス固定化装置1は、水Wが収容される収容部2と、収容部2の内部に設けられ、未使用の生コンCが投入される筒状部3と、筒状部3の軸線Lが延びる方向である軸線方向Dに延在する軸部4bを中心として筒状部3を回転させる回転駆動部4と、収容部2の内部に炭酸ガスGを導入する炭酸ガス導入部5と、を備える。筒状部3は、筒状部3の内外を連通する複数の貫通孔3bが形成されたメッシュ状とされており、炭酸ガス導入部5は、生コンCを収容すると共に回転駆動部4によって回転する筒状部3に炭酸ガスGを導入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が収容される収容部と、
前記収容部の内部に設けられ、未使用の生コンが投入される筒状部と、
前記筒状部の軸線が延びる方向である軸線方向に延在する軸部を中心として前記筒状部を回転させる回転駆動部と、
前記収容部の内部に炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入部と、
を備え、
前記筒状部は、前記筒状部の内外を連通する複数の貫通孔が形成されたメッシュ状とされており、
前記炭酸ガス導入部は、前記生コンを収容すると共に前記回転駆動部によって回転する前記筒状部に炭酸ガスを導入する、
炭酸ガス固定化装置。
【請求項2】
前記筒状部は、内管及び外管を含み、
複数の前記貫通孔は、前記内管の内外を連通する複数の第1貫通孔と、前記外管の内外を連通する複数の第2貫通孔と、を含む、
請求項1に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項3】
前記回転駆動部は、前記生コンが投入された前記筒状部を回転させ、前記生コンの骨材を前記筒状部の内部に残すと共に前記生コンのセメントスラッジを前記筒状部から排出することによって、前記生コンを前記セメントスラッジと前記骨材に分離し、
前記炭酸ガス導入部は、前記骨材から分離された前記セメントスラッジに前記炭酸ガスを導入する、
請求項1又は2に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項4】
前記収容部に凝結遅延剤を注入する凝結遅延剤注入手段を備える、
請求項1又は2に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項5】
前記セメントスラッジに前記炭酸ガスが導入されて生成された炭酸カルシウムを含む沈殿物を前記収容部から抜き出す抜き出し部を備える、
請求項3に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項6】
前記収容部の内部のpH、及び前記収容部の内部の炭酸ガスの濃度、の少なくともいずれかから前記生コンに固定化された炭酸ガスの量を測定する測定部を備える、
請求項1又は2に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項7】
前記収容部を傾斜して前記筒状部の内部に残された前記骨材を前記筒状部から排出する傾斜装置を備える、
請求項3に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項8】
前記収容部、前記筒状部、前記回転駆動部、及び前記炭酸ガス導入部を搭載する走行体を備える、
請求項1又は2に記載の炭酸ガス固定化装置。
【請求項9】
前記走行体の駆動によって生じた排気ガスを前記炭酸ガス導入部に供給する管路を備え、
前記炭酸ガス導入部は、前記排気ガスを前記炭酸ガスと共に前記収容部の内部に導入する、
請求項8に記載の炭酸ガス固定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、未使用の生コンに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス固定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-289783号公報には、生コンクリートから骨材を分離して分離した骨材を再利用する骨材分離装置が記載されている。骨材分離装置は、基台と、基台の上に立設されたドラム支持台と、ドラム支持台に回転自在に装着された2個のドラム保持ローラと、各ドラム保持ローラに保持された回転ドラムとを備える。
【0003】
回転ドラムは、一対の円錐筒体と、一対の円錐筒体を互いに接続する円筒体とを有する。一対の円錐筒体の一方には、生コンクリートを投入するため、及び回転ドラム内に滞留する骨材の混在物を排出するための開口が形成されている。一対の円錐筒体の他方には外部加熱装置が取り付けられている。
【0004】
回転ドラム内には、生コンクリートと同時に複数個の鉄塊が投入される。この鉄塊は、回転ドラム内において回転する生コンクリートが凝塊化することを防止するための凝塊化防止物として機能する。回転ドラムに投入された生コンクリートは、回転すると共に回転ドラムの内部に噴射される高温ガスによって撹拌されて乾燥し、骨材の混在物に変化する。
【0005】
乾燥が終了すると、上記の混在物が回転ドラムから排出されて振動式分離装置に投入される。振動式分離装置は、混在物を振動させながら篩い落とすことにより、当該混在物を粗骨材、細骨材、及び微粒子に分離する。分離された粗骨材、細骨材、及び微粒子のそれぞれは再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-289783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、セメントを製造するとき等には大量の炭酸ガス(CO)が排出されることがあり、当該セメントを使ってコンクリート構造物が構築されると現場からの炭酸ガスの排出量が増大するという問題が起こりうる。また、未使用の生コンをより効率よく低減させることが求められている。よって、炭酸ガスを削減すると共に未使用の生コンを効率よく処理することが求められる。
【0008】
本開示は、現場からの炭酸ガスの排出量を削減すると共に、未使用の生コンを効率よく処理できる炭酸ガス固定化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る炭酸ガス固定化装置は、水が収容される収容部と、収容部の内部に設けられ、未使用の生コンが投入される筒状部と、筒状部の軸線が延びる方向である軸線方向に延在する軸部を中心として筒状部を回転させる回転駆動部と、収容部の内部に炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入部と、を備える。筒状部は、筒状部の内外を連通する複数の貫通孔が形成されたメッシュ状とされており、炭酸ガス導入部は、生コンを収容すると共に回転駆動部によって回転する筒状部に炭酸ガスを導入する。
【0010】
この炭酸ガス固定化装置では、収容部に水が収容されており、収容部の内部に設けられる筒状部に未使用の生コンが投入される。筒状部はメッシュ状とされており、生コンを収容する筒状部は回転駆動部の駆動によって回転する。この回転により、筒状部の内部に生コンの骨材が残されると共に生コンのセメントスラッジが筒状体からふるい落とされるので、骨材とセメントスラッジとを分離することができる。この炭酸ガス固定化装置は収容部の内部に炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入部を備え、炭酸ガス導入部は回転駆動部によって回転する筒状部に炭酸ガスを導入する。よって、回転する筒状部の内部に収容されている生コンに炭酸ガスが供給されることにより、回転する生コンに炭酸ガスを供給して生コンに炭酸ガスを効率よく固定化させることができる。従って、未使用の生コンを効率よく処理することができる。また、炭酸ガスを生コンに効率よく固定化させることにより、現場からの炭酸ガスの排出量を削減することができる。
【0011】
筒状部は、内管及び外管を含み、複数の貫通孔は、内管の内外を連通する複数の第1貫通孔と、外管の内外を連通する複数の第2貫通孔と、を含んでもよい。この場合、内管の内側に粗骨材を残し、内管と外管の間に粗骨材よりも細かい細骨材等の骨材を残し、且つセメントスラッジをふるい落とすことが可能となる。更に、回転駆動部が内管と外管を回転させる場合、生コンにおける骨材の分離をより効率よく行うことができる。
【0012】
回転駆動部は、生コンが投入された筒状部を回転させ、生コンの骨材を筒状部の内部に残すと共に生コンのセメントスラッジを筒状部から排出することによって、生コンをセメントスラッジと骨材に分離してもよい。炭酸ガス導入部は、骨材から分離されたセメントスラッジに炭酸ガスを導入してもよい。この場合、分離されたセメントスラッジに炭酸ガスが導入されるので、炭酸ガスの固定化をより効率よく行うことができる。
【0013】
炭酸ガス固定化装置は、収容部に凝結遅延剤を注入する凝結遅延剤注入手段を備えてもよい。この場合、未使用の生コンに凝結遅延剤が注入されるので、生コンを炭酸ガスと反応しやすくすることができる。その結果、現場における炭酸ガスの排出量をより削減することができる。
【0014】
炭酸ガス固定化装置は、セメントスラッジに炭酸ガスが導入されて生成された炭酸カルシウムを含む沈殿物を収容部から抜き出す抜き出し部を備えてもよい。この場合、セメントスラッジに炭酸ガスが固定化されて得られた沈殿物を抜き出し部から抜き出すことができる。
【0015】
炭酸ガス固定化装置は、収容部の内部のpH、及び収容部の内部の炭酸ガスの濃度、の少なくともいずれかから生コンに固定化された炭酸ガスの量を測定する測定部を備えてもよい。この場合、生コンに固定化された炭酸ガスの量が測定部によって測定されるので、削減された炭酸ガスの量を測定部の測定によって把握することができる。
【0016】
炭酸ガス固定化装置は、収容部を傾斜して筒状部の内部に残された骨材を筒状部から排出する傾斜装置を備えてもよい。この場合、傾斜装置が収容部を傾斜することによって、筒状部の中に残された骨材等を容易に排出することができる。
【0017】
炭酸ガス固定化装置は、収容部、筒状部、回転駆動部、及び炭酸ガス導入部を搭載する走行体を備えてもよい。この場合、収容部、筒状部、回転駆動部、及び炭酸ガス導入部が走行体に搭載されているので、走行体によって現場内又は複数の現場間を移動しながら生コンの処理を行うことができる。従って、生コンの処理、及び生コンへの炭酸ガスの固定化を一層効率よく行うことができる。
【0018】
炭酸ガス固定化装置は、走行体の駆動によって生じた排気ガスを炭酸ガス導入部に供給する管路を備えてもよく、炭酸ガス導入部は、排気ガスを炭酸ガスと共に収容部の内部に導入してもよい。この場合、走行体の駆動によって生じた排気ガスを生コンへの炭酸ガスの固定化のために有効利用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、現場からの炭酸ガスの排出量を削減すると共に、未使用の生コンを効率よく処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は、第1実施形態に係る炭酸ガス固定化装置を示す側面図である。(b)は、第1実施形態に係る炭酸ガス固定化装置の収容部が傾斜装置によって傾斜した状態を示す側面図である。
図2】変形例に係る炭酸ガス固定化装置の投入部を示す斜視図である。
図3】(a)は、実施形態に係る炭酸ガス固定化装置の筒状部及び収容部を模式的に示す断面図である。(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。
図4】第1実施形態に係る炭酸ガス固定化装置の固液分離装置を示す斜視図である。
図5】第2実施形態に係る炭酸ガス固定化装置を模式的に示す側面図である。
図6】(a)は、第2実施形態に係る炭酸ガス固定化装置の筒状部を示す側面図である。(b)は、図6(a)の筒状部から骨材が排出されている状態を模式的に示す側面図である。
図7】第3実施形態に係る炭酸ガス固定化装置を示す斜視図である。
図8】(a)、(b)及び(c)は、変形例に係る筒状部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る炭酸ガス固定化装置の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0022】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係る炭酸ガス固定化装置1を示す側面図である。炭酸ガス固定化装置1は、例えば、建設現場A(現場)に設けられる。炭酸ガス固定化装置1は、例えば、建設現場Aにおいて発生した未使用の生コンCを建設現場Aの内部で処理する。炭酸ガス固定化装置1によって、例えば、建設現場Aからは戻りコン(発注したものの生コン車から荷下ろしせず返品する生コン)は生じない。
【0023】
炭酸ガス固定化装置1は、例えば、泥水又はコンクリートの洗い水を炭酸ガスで中性化(炭酸化)する。炭酸ガス固定化装置1は、水Wが収容される収容部2と、収容部2の内部に位置して生コンCを収容する筒状部3と、筒状部3を回転駆動する回転駆動部4と、収容部2の内部に炭酸ガスGを導入する炭酸ガス導入部5と、収容部2、筒状部3、回転駆動部4及び炭酸ガス導入部5を搭載する走行体10とを備える。
【0024】
炭酸ガス固定化装置1では、筒状部3に生コンCが収容され、水Wが収容された収容部2の内部で筒状部3が回転することによって生コンCから粗骨材C1とセメントスラッジC2とが分離され、炭酸ガス導入部5によって収容部2の内部に炭酸ガスGが導入されることによってセメントスラッジC2への炭酸ガスGの固定化を行う。炭酸ガス固定化装置1は、例えば、一定量の生コンCに対して上記の分離、及び炭酸ガスGの固定化を行うバッチ式の装置である。
【0025】
収容部2は、例えば、開閉可能とされた蓋2bを有する。蓋2bが開いた状態で収容部2の内部に水を注入することが可能である。例えば、炭酸ガス固定化装置1は、収容部2及び回転駆動部4を開閉可能に覆う被覆部材6を有する。例えば、被覆部材6は回転駆動部4が作動しているときに収容部2及び回転駆動部4を被覆する。これにより、収容部2及び回転駆動部4からの騒音を低減できると共に、収容部2の内部に供給された炭酸ガスGが漏れることを抑制できるので生コンCへの炭酸ガスGの固定化を促進できる。
【0026】
収容部2は、一例として、箱状を呈する。収容部2は筒状部3を収容し、筒状部3は収容部2の内部において回転駆動部4の駆動によって回転する。筒状部3は、生コンCを収容した状態で回転することにより、生コンCの粗骨材C1を水Wによって洗浄する。炭酸ガス固定化装置1は、例えば、収容部2の内部に水Wを注入する水注入手段7と、収容部2の内部に凝結遅延剤Kを注入する凝結遅延剤注入手段8を備える。
【0027】
一例として、水注入手段7は、筒状部3の内部に収容された生コンCの量の5倍以上且つ5000倍以下の水Wを注入する。また、水注入手段7は、当該生コンCの量の10倍以上、50倍以上、又は100倍以上の水Wを注入してもよいし、1000倍以下の水Wを注入してもよい。
【0028】
凝結遅延剤注入手段8によって注入される凝結遅延剤Kは、例えば、超遅延剤である。生コンCへの水Wの注入によって生コンCのpHを低下させ、生コンCへの凝結遅延剤Kの注入によって生コンCの凝結速度を調整する(遅くする)。筒状部3に収容された生コンCは、例えば、筒状部3の内部において水W及び凝結遅延剤Kと共に撹拌される。
【0029】
回転駆動部4は、筒状部3の軸線Lが延びる方向である軸線方向Dに沿って延在する軸部4bと、軸部4bの端部であって且つ収容部2の外部に設けられたモータ4cとを有する。回転駆動部4は、モータ4cの駆動力によって軸部4bを中心として筒状部3を回転させる。軸部4bは、例えば、筒状部3の軸線Lに沿って延在している。モータ4cは、走行体10の荷台11における収容部2の外部に設けられる。
【0030】
筒状部3は、走行体10の前後方向に延在する。筒状部3には、未使用の生コンCが投入される。筒状部3は、筒状部3の内外を連通する複数の貫通孔3bを有するメッシュ状とされている。よって、生コンCが投入された筒状部3が回転すると、生コンCの粗骨材C1は筒状部3の内部に残り、生コンCのセメントスラッジC2は筒状部3の外部にふるい落とされる。セメントスラッジC2はスラリー状とされている。
【0031】
例えば、炭酸ガス導入部5の少なくとも一部は、荷台11における収容部2の外部に設けられる。炭酸ガス導入部5は、生コンCに炭酸ガスGを供給して生コンCを中和する。炭酸ガス導入部5が生コンCに供給する炭酸ガスGの一部は、建設現場Aにおいて排出された炭酸ガス(排ガス等)を含んでいる。例えば、炭酸ガス導入部5は、収容部2の内部に通される配管5bを有し、配管5bの一部が収容部2の内部に突出している。炭酸ガス導入部5は、配管5bを介して収容部2の内部に炭酸ガスGを供給する。
【0032】
炭酸ガス導入部5は、例えば、炭酸ガスボンベ5cを有し、炭酸ガスボンベ5cから配管5bを介して炭酸ガスGを収容部2の内部に導入する。一例として、炭酸ガス導入部5は、加圧によって炭酸ガスGを収容部2の内部に供給する。また、炭酸ガス導入部5は、二酸化炭素回収装置であるDAC装置から炭酸ガスGを収容部2の内部に供給してもよい。この場合、大気から二酸化炭素(炭酸ガス)を直接吸収したDAC装置から炭酸ガス導入部5によって収容部2の内部に炭酸ガスGを供給でき、DAC装置に貯留された二酸化炭素を有効利用できる。
【0033】
炭酸ガス導入部5は、走行体10の駆動によって生じた排気ガスを炭酸ガスGとして収容部2の内部に供給してもよい。この場合、走行体10からの排ガスを生コンCへの炭酸ガスの固定化のために有効利用できる。また、炭酸ガス導入部5は、建設現場Aに配置された生コン車、ポンプ車及び機械設備の少なくともいずれかから排出された炭酸ガスGを収容部2の内部に供給してもよい。建設現場Aに配置された機械設備は、例えば、発電機、建設機械、又は重機である。この場合、建設現場Aに配置された機械設備等からの排気ガスを生コンCへの炭酸ガスの固定化のために有効利用することができる。
【0034】
炭酸ガス導入部5は、例えば、収容部2の内部の水Wに気泡として炭酸ガスGを導入する。この場合、生コンCから分離されたセメントスラッジC2に炭酸ガスGを効率よく供給することが可能となる。一例として、炭酸ガス導入部5は、炭酸ガスGをマイクロバブルとして導入する。
【0035】
走行体10は、例えば、荷台11と、荷台11の下部に設けられる走行装置12とを備える。例えば、収容部2、筒状部3、回転駆動部4、炭酸ガス導入部5、及び被覆部材6は荷台11に搭載されている。走行装置12は、車体12bと、車体12bの下部に位置する複数の車輪12cとを有する。
【0036】
車体12bは、一例として、内燃機関12dと、ラジエータ12fと、内燃機関12dから炭酸ガス導入部5の配管5bまで延びる管路12gとを有する。内燃機関12dからは排気ガスが生じ、例えば、内燃機関12dからの排気ガスは管路12gを介して炭酸ガス導入部5の配管5bに供給される。この場合、炭酸ガス導入部5は、内燃機関12dからの排気ガスと共に炭酸ガスGを収容部2の内部に導入するので、内燃機関12dからの排気ガスを生コンCへの炭酸ガスの固定化のために有効利用できる。また、管路12gは、収容部2の底面に直接接続されていてもよい。この場合、内燃機関12dからの排気ガスを直接収容部2の内部に導入することが可能となる。
【0037】
図1(b)に示されるように、炭酸ガス固定化装置1は、収容部2を傾斜して筒状部3の内部に残された粗骨材C1(骨材)を筒状部3から排出する傾斜装置9を備える。なお、図1(b)では、収容部2等、一部の図示を簡略化して示している。傾斜装置9は、例えば、走行体10のダンプアップ機構を有する。傾斜装置9は、荷台11の後部を支点として荷台11の前部を押し上げることによって荷台11の後側が下を向くように荷台11を傾斜させる。これにより、収容部2の内部に残された粗骨材C1及びセメントスラッジC2を収容部2から排出することができる。
【0038】
走行体10は、収容部2からセメントスラッジC2を排出する抜き出し部13を備える。抜き出し部13は、例えば、収容部2の底面から下方且つ斜め後方に延在する管路である。抜き出し部13によって、分離されたセメントスラッジC2のみを収容部2から排出することが可能となる。
【0039】
図2は、変形例に係る走行体10Aを示す斜視図である。なお、図2では、収容部2等、一部の図示を簡略化して示している。図2に示されるように、走行体10Aは、収容部2と走行体10Aのキャビン10bとの間に位置するクレーン装置14と、クレーン装置14によって吊り下げられるホッパー15とを備える。ホッパー15には、建設現場Aの生コン車から未使用の生コンCが投入される。
【0040】
そして、生コンCが投入されたホッパー15がクレーン装置14によって吊り上げられてホッパー15から収容部2の内部の筒状部3に生コンCが投入される。但し、筒状部3に生コンCを投入する手段は、クレーン装置14及びホッパー15に限られず、適宜変更可能である。例えば、建設現場Aのポンプ車から直接筒状部3に生コンCが投入されてもよい。
【0041】
次に、筒状部3の構造の例についてより詳細に説明する。図3(a)は、収容部2及び筒状部3を模式的に示す側断面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。図3(a)及び図3(b)に示されるように、筒状部3は、例えば、二重管構造を有する。この場合、筒状部3は、メッシュ状の内管3Aと、内管3Aを収容するメッシュ状の外管3Bとを含む。
【0042】
筒状部3の複数の貫通孔3bは、内管3Aに形成された複数の第1貫通孔3cと、外管3Bに形成された複数の第2貫通孔3dとを含む。例えば、第2貫通孔3dは、第1貫通孔3cよりも小さい(目が細かい)。この場合、生コンCのうち、内管3Aと外管3Bとの間に比較的目が粗い粒子(例えば細骨材)を捕捉すると共に、外管3Bの外部に比較的目が細かい粒子(例えば砂)を排出することが可能となる。
【0043】
例えば、回転駆動部4は、2本の軸部4bと、2台のモータ4cとを有する。2本の軸部4bのうちの一方、及び2台のモータ4cのうちの一方は、例えば、内管3Aを回転させる。2本の軸部4bのうちの他方、及び2台のモータ4cのうちの他方は、外管3Bを回転させる。
【0044】
例えば、2台のモータ4cのうちの一方は、収容部2の軸線方向Dの一方側に配置されており、2台のモータ4cのうちの他方は、収容部2の軸線方向Dの他方側に配置されている。一例として、内管3Aの回転方向は、外管3Bの回転方向の反対方向である。この場合、水Wの内部における生コンCの撹拌を一層効率よく行うことができると共に粗骨材C1を洗うことができる。例えば、炭酸ガス導入部5は、収容部2の内部における外管3Bの外側部分の水Wに炭酸ガスGを導入する。これにより、生コンCから分離されたセメントスラッジC2に炭酸ガスGを一層効率よく固定化させることができる。
【0045】
生コンCから分離され且つ炭酸ガスGが固定化されたセメントスラッジC2は、例えば、抜き出し部13を介して収容部2の外部に排出されて固液分離装置によって固液分離される。図4は、一例としての固液分離装置20を示す斜視図である。例えば、固液分離装置20は、セメントスラッジC2を収集する収集装置21と、収集装置21によって収集されたセメントスラッジC2を濾過するフィルタ装置22とを備える。
【0046】
例えば、収集装置21は、セメントスラッジC2を吸引する吸引部21bと、吸引部21bから延びる吸引チューブ21cと、吸引チューブ21cの吸引部21bとは反対側に接続された本体部21dと、本体部21dからフィルタ装置22まで延びる排水チューブ21fとを有する。
【0047】
フィルタ装置22は、例えば、排水チューブ21fが接続された本体部22bと、セメントスラッジC2を濾過するフィルタープレス22cと、フィルタープレス22cの濾過によって得られた水を貯留するタンク22dと、タンク22dから収集装置21まで延びる給水チューブ22fとを有する。フィルタープレス22c及びタンク22dは、例えば、本体部22bに内蔵されている。
【0048】
収集装置21の吸引部21bによって吸引されたセメントスラッジC2が、吸引チューブ21c、本体部21d及び排水チューブ21fを通ってフィルタ装置22に供給され、フィルタ装置22のフィルタープレス22cによって濾過される。フィルタープレス22cの濾過によってセメントスラッジC2は凝集物と水に分離され、この凝集物はフィルタープレス22cに凝集された後にフィルタ装置22から取り出される。
【0049】
フィルタ装置22から取り出された凝集物は、例えば、天日干しされる。また、この凝集物は、ポーラスコンクリートに載せられた状態で乾燥されてもよい。このポーラスコンクリートに代えてポーラス板又は軽石が用いられてもよい。乾燥した凝集物は、例えば、残土(一例として一般残土)となり、盛土又はコンクリート資材として用いることが可能である。一方、セメントスラッジC2から分離した水は、タンク22dに貯留されると共に、例えば、給水チューブ22fを介して収集装置21に給水される。
【0050】
次に、本実施形態に係る炭酸ガス固定化装置1から得られる作用効果について詳細に説明する。図1(a)、図3(a)及び図3(b)に示されるように、炭酸ガス固定化装置1では、収容部2に水Wが収容されており、収容部2の内部に設けられる筒状部3に未使用の生コンCが投入される。筒状部3はメッシュ状とされており、生コンCを収容する筒状部3は回転駆動部4の駆動によって回転する。この回転により、筒状部3の内部に生コンCの粗骨材C1等の骨材が残されると共に生コンCのセメントスラッジC2が筒状部3からふるい落とされるので、骨材とセメントスラッジC2とを分離することができる。
【0051】
炭酸ガス固定化装置1は収容部2の内部に炭酸ガスGを導入する炭酸ガス導入部5を備え、炭酸ガス導入部5は回転駆動部4によって回転する筒状部3に炭酸ガスGを導入する。よって、回転する筒状部3の内部に収容されている生コンCに炭酸ガスGが供給されることにより、回転する生コンCに炭酸ガスGを供給して生コンCに炭酸ガスGを効率よく固定化させることができる。従って、未使用の生コンCを効率よく処理することができる。また、炭酸ガスGを生コンCに効率よく固定化させることにより、建設現場Aからの炭酸ガスGの排出量を削減することができる。
【0052】
本実施形態において、筒状部3は、内管3A及び外管3Bを含み、複数の貫通孔3bは、内管3Aの内外を連通する複数の第1貫通孔3cと、外管3Bの内外を連通する複数の第2貫通孔3dと、を含む。この場合、内管3Aの内側に粗骨材C1を残し、内管3Aと外管3Bの間に粗骨材C1よりも細かい細骨材等の骨材を残し、且つセメントスラッジC2をふるい落とすことが可能となる。更に、回転駆動部4が内管3Aと外管3Bを回転させる場合、生コンCにおける骨材の分離をより効率よく行うことができる。
【0053】
本実施形態において、回転駆動部4は、生コンCが投入された筒状部3を回転させ、生コンCの骨材を筒状部3の内部に残すと共に生コンCのセメントスラッジC2を筒状部3から排出することによって、生コンCをセメントスラッジC2と骨材に分離する。炭酸ガス導入部5は、骨材から分離されたセメントスラッジC2に炭酸ガスGを導入する。よって、分離されたセメントスラッジC2に炭酸ガスGが導入されるので、炭酸ガスGの固定化をより効率よく行うことができる。
【0054】
本実施形態において、炭酸ガスGを気泡として導入することによってセメントスラッジC2により効率よく炭酸ガスGを固定化できる。炭酸ガス導入部5は、ナノバブルからマイクロバブルレベルの径を有する気泡として収容部2の内部の水Wに炭酸ガスGを導入してもよい。前述したように、炭酸ガスGを気泡として導入する場合、セメントスラッジC2により効率よく炭酸ガスGを固定化できる。但し、炭酸ガスGの気泡がナノバブルである場合、目詰まりが生じる懸念がある。これに対し、炭酸ガスGがマイクロバブルである場合、目詰まりを抑制できると共に一層効率よく炭酸ガスGを導入できる。
【0055】
本実施形態において、炭酸ガス固定化装置1は、収容部2に凝結遅延剤Kを注入する凝結遅延剤注入手段8を備える。よって、未使用の生コンCに凝結遅延剤Kが注入されるので、生コンCを炭酸ガスGと反応しやすくすることができる。その結果、建設現場Aにおける炭酸ガスGの排出量をより削減することができる。
【0056】
本実施形態において、炭酸ガス固定化装置1は、セメントスラッジC2に炭酸ガスGが導入されて生成された炭酸カルシウムを含む沈殿物を収容部2から抜き出す抜き出し部13を備える。この場合、セメントスラッジC2に炭酸ガスGが固定化されて得られた沈殿物を抜き出し部13から抜き出すことができる。
【0057】
本実施形態において、炭酸ガス固定化装置1は、収容部2を傾斜して筒状部3の内部に残された骨材を筒状部3から排出する傾斜装置9を備える。従って、傾斜装置9が収容部2を傾斜することによって、筒状部3の中に残された骨材等を容易に排出することができる。
【0058】
本実施形態において、炭酸ガス固定化装置1は収容部2、筒状部3、回転駆動部4、及び炭酸ガス導入部5を搭載する走行体10を備える。よって、収容部2、筒状部3、回転駆動部4、及び炭酸ガス導入部5が走行体10に搭載されているので、走行体10によって建設現場A内又は複数の建設現場間を移動しながら生コンCの処理を行うことができる。従って、生コンCの処理、及び生コンCへの炭酸ガスGの固定化を一層効率よく行うことができる。
【0059】
本実施形態において、炭酸ガス固定化装置1は、走行体10の駆動によって生じた排気ガスを炭酸ガス導入部5に供給する管路12gを備えてもよく、炭酸ガス導入部5は、この排気ガスを炭酸ガスGと共に収容部2の内部に導入する。この場合、走行体10の駆動によって生じた排気ガスを生コンCへの炭酸ガスGの固定化のために有効利用することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る炭酸ガス固定化装置31について、図5図6(a)及び図6(b)を参照しながら説明する。炭酸ガス固定化装置31の一部の構成は、前述した炭酸ガス固定化装置1の一部の構成と同一である。よって、炭酸ガス固定化装置31の構成のうち炭酸ガス固定化装置1の構成と重複する説明については同一の符号を付して適宜省略する。
【0061】
図5図6(a)及び図6(b)に示されるように、炭酸ガス固定化装置31は、走行体を有しない定置型の炭酸ガス固定化装置である。炭酸ガス固定化装置31は、水Wを収容する収容部32と、収容部32の内部に収容される筒状部33と、収容部32の内部に炭酸ガスGを導入する炭酸ガス導入部35とを有する。
【0062】
炭酸ガス導入部35が収容部32の内部に導入する炭酸ガスGの少なくとも一部は、建設現場Aにおいて排出された炭酸ガスG(排ガス等)を含む。更に、炭酸ガス固定化装置31は水注入手段7から収容部2の内部に水を供給するパイプ31bを有し、例えば、パイプ31bは収容部32の壁部を貫通している。
【0063】
収容部32の水Wの水面W1の高さは、例えば、筒状部33の下端より高く且つ軸部4bの下端よりも低い。この場合、筒状部33の内部で粗骨材C1を水Wによって洗浄できると共に、軸部4bに水が浸入することを抑制できる。しかしながら、収容部32の内部における水面W1の高さは、特に限定されない。
【0064】
炭酸ガス固定化装置31は、収容部32の内部の水Wを撹拌する撹拌機36を備える。例えば、収容部32の内部に複数の撹拌機36が配置されている。これにより、生コンC、炭酸ガスG及び水Wの撹拌が促進される。一例として、平面視における収容部32の形状は矩形状であり、複数の撹拌機36は平面視における収容部32の対角線上に並ぶように配置されている。
【0065】
収容部32は、蓋32bを有し、蓋32bによって開閉可能とされている。蓋32bが閉塞することによって収容部32からの炭酸ガスGの漏れが抑制される。筒状部33は、筒状部3と同様、複数の貫通孔3bを有するメッシュ状を呈する。貫通孔3bの大きさ(貫通孔3bが正方形状の場合は一辺の長さ)は、一例として、5mmである。筒状部33は、蓋32bが開放された状態で収容部32から吊り上げられる。
【0066】
例えば、筒状部33は、筒状部33の軸線方向Dの一端部及び他端部のそれぞれから延びる一対のワイヤ33bを有する。この場合、筒状部33は、一対のワイヤ33bがクレーン車等の揚重機によって吊り上げられることにより、収容部32に対して出し入れ可能とされている。更に、筒状部33は、筒状部33を転動しないように設置可能とする複数の支持部33fを有する。
【0067】
例えば、筒状部33は、筒状部33の側面33cを開閉する開閉部33dを有する。開閉部33dは、例えば、側面33cの一部において軸線方向Dの一端部から他端部まで延在している。開閉部33dが閉塞した状態で筒状部33の内部に生コンCが収容され、開閉部33dが開放した状態で筒状部33の内部から生コンC(粗骨材C1等)が排出される。
【0068】
例えば、炭酸ガス導入部35は、炭酸ガスボンベ35bと、炭酸ガスボンベ35bから収容部2の内部まで延びる配管35cと、配管35cの途中部分に設けられた気化器35dとを有する。炭酸ガスボンベ35bは収容部32の外部に設置されており、配管35cは収容部32の壁部を貫通している。炭酸ガスGは、炭酸ガスボンベ35b、気化器35d及び配管35cを介して収容部32の内部の水Wに導入される。
【0069】
例えば、炭酸ガス固定化装置31は、生コンCに固定化された炭酸ガスGの量を測定する測定部37を備える。測定部37は、生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定し、測定の結果得られた値を定量的に評価してもよい。測定部37は、例えば、収容部32において生コンCに固定化された炭酸ガスの量を数値化して表示する表示部を有する。
【0070】
なお、測定部37は、溶存炭酸ガスセンサによって固定化された炭酸ガスGの濃度を測定してもよい。また、測定部37は、X線をセメントスラッジC2に照射してセメントスラッジC2に含まれる炭酸カルシウムの量を測定することによって固定化された炭酸ガスGの濃度を測定してもよい。測定部37は、生コンC中のセメント水和物の炭酸化度、すなわち、炭酸化によってセメント水和物中に含まれるCaO(酸化カルシウム)のどの程度の割合が炭酸カルシウムになるかの指標を用いてもよい。一例として、測定部37は、以下の式(1)によってコンクリートの中性化領域1mあたりにおけるセメントのCO吸収量Aupを算出してもよい。
【数1】
【0071】
式(1)において、γは炭酸化度、Cはコンクリートの単位セメント量(kg/m)、CaOはセメントのCaO量(%)、MCOはCOのモル質量(=44.0g/mol)、MCaOはCaOのモル質量(=56.1g/mol)である。炭酸化度は、例えば、生コンCにおけるセメント水和物の種類、又は炭酸化のときの環境条件によって定めることが可能である。例えば、炭酸化度は、0.5、0.75又は0.8であってもよいし、コンクリート硬化体中の炭素及び水素(CH)のみがCOの固定に寄与するものとして0.35~0.37とされてもよい。但し、測定部37による生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定する方法は、上記の例に限られず、適宜変更可能である。
【0072】
測定部37は、収容部32の水WのpH、及び収容部32の内部の炭酸ガスGの濃度、の少なくともいずれかから生コンCに固定化された炭酸ガスGの量を測定してもよい。例えば、炭酸ガス固定化装置31は、収容部32の内部に設けられるpHセンサ38b及び炭酸ガス濃度測定センサ38cを備える。
【0073】
測定部37は、例えば、収容部32の内部の水WのpH、及び炭酸ガスの濃度を監視する監視盤であってもよい。この場合、例えば、pHセンサ38bによって測定されたpH、及び炭酸ガス濃度測定センサ38cによって測定された炭酸ガスGの濃度が測定部37に出力され、測定部37によって収容部32の内部のpH、及び炭酸ガスの濃度を監視することが可能となる。
【0074】
測定部37は、炭酸ガス導入部35による収容部32の内部への炭酸ガスGの導入を制御する監視制御盤であってもよい。この場合、測定部37は、収容部32の内部における炭酸ガスの濃度に応じて炭酸ガス導入部35による炭酸ガスGの導入量を制御する。このように、測定部37によって測定された炭酸ガスGの濃度に応じて炭酸ガス導入部35による炭酸ガスGの導入量を制御することにより、収容部32の内部への炭酸ガスGの導入をフィードバック制御することが可能である。なお、収容部32からは、配管39b及びスラリー引き抜きポンプ39cを介してセメントスラッジC2等が排出される。
【0075】
以上、第2実施形態に係る炭酸ガス固定化装置31は、定置型の装置であり、収容部32から筒状部33を吊り上げ可能とされている。従って、炭酸ガス固定化装置31の構成をコンパクトにすると共に筒状部33の内部への生コンCの出し入れを容易に行うことができる。
【0076】
更に、炭酸ガス固定化装置31は、収容部32の内部のpH、及び収容部32の内部の炭酸ガスGの濃度、の少なくともいずれかから生コンCに固定化された炭酸ガスGの量を測定する測定部37を備える。従って、生コンCに固定化された炭酸ガスGの量が測定部37によって測定されるので、削減された炭酸ガスGの量を測定部37の測定によって把握することができる。
【0077】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る炭酸ガス固定化装置41について図7を参照しながら説明する。炭酸ガス固定化装置41は、水Wを収容する収容部42と、収容部42の外部に設けられた炭酸ガス導入部45とを有する。収容部42は、例えば、鋼製であり、蓋32bと同様の蓋によって開閉可能とされている。収容部42は、底面42fと、底面42fから下方に延びる引き抜きドレーン42gとを有する。
【0078】
収容部42の内部において、例えば、水Wの水面W1の高さは、筒状部3の上端よりも高い。すなわち、第3実施形態では、筒状部3の全体が水Wに浸されている。炭酸ガス導入部45は、収容部42からセメントスラッジC2及び水Wが流出する流出管路45bと、流出管路45bから流出したセメントスラッジC2及び水Wを炭酸ガスGと共に撹拌する撹拌装置45cと、撹拌装置45cによって炭酸ガスGと共に撹拌されたセメントスラッジC2及び水Wを収容部42に流入させる流入管路45dとを有する。
【0079】
更に、炭酸ガス導入部45は、流出管路45bの途中部分に設けられたポンプ45fと、炭酸ガスボンベ45gと、炭酸ガスボンベ45gから流出管路45bの途中部分まで延びるガス供給管路45hとを有する。ポンプ45fによって収容部42からセメントスラッジC2が流出管路45bに流出し、流出管路45bには炭酸ガスボンベ45gからガス供給管路45hを介して炭酸ガスGが供給される。
【0080】
撹拌装置45cは、例えば、密閉された流出管路45b及び流入管路45dの内部に配置されたラインミキサーである。撹拌装置45cは、流出管路45bに対するガス供給管路45hの合流部よりも流出管路45bの流路の下流側に配置されており、流出管路45bを通るセメントスラッジC2と炭酸ガスGとを混合撹拌する。これにより、セメントスラッジC2への炭酸ガスGの固定を促進することが可能である。
【0081】
撹拌装置45cにおいて炭酸ガスGが固定化されたセメントスラッジC2は、流入管路45dを介して収容部42に流入する。収容部42から撹拌装置45cへのセメントスラッジC2の流出、及び撹拌装置45cから収容部42へのセメントスラッジC2の流入は繰り返されるので、セメントスラッジC2への炭酸ガスGの固定化が一層促進される。炭酸ガスGが固定化されたセメントスラッジC2は、収容部42の底面42fから延びる引き抜きドレーン42gを介して収容部42の外部に引き抜かれる。以上のように、第3実施形態に係る炭酸ガス固定化装置41では、生コンC(セメントスラッジC2)に対する炭酸ガスGの固定化を一層促進させることが可能である。
【0082】
以上、本開示に係る炭酸ガス固定化装置の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において更に変形されたものであってもよい。すなわち、炭酸ガス固定化装置の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した実施形態に限定されず適宜変更可能である。また、前述では、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態について説明したが、第1実施形態の少なくとも一部、第2実施形態の少なくとも一部、及び第3実施形態の少なくとも一部が組み合わされた炭酸ガス固定化装置であってもよい。
【0083】
例えば、前述の実施形態では、メッシュ状の筒状部3を備える炭酸ガス固定化装置1について説明した。本開示において、収容部に収容される筒状部の態様は適宜変更可能である。図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、変形例に係る筒状部53、筒状部63、及び筒状部73を示している。筒状部53、筒状部63及び筒状部73は、いずれも、前述した収容部2、収容部32及び収容部42に収容することが可能である。
【0084】
図8(a)に示されるように、筒状部53は、内部の粗骨材C1を滑りやすくする滑り部53bを有する。筒状部53は、例えば、貫通孔3bが形成されたメッシュ部53cと、貫通孔3bを有しない滑り部53bとを有する。筒状部53が滑り部53bを有することにより、例えば、傾斜装置9によって筒状部53を傾けたときに筒状部53から粗骨材C1を排出しやすくすることができる。
【0085】
図8(b)に示されるように、筒状部63は、水撹拌部63bを有していてもよい。水撹拌部63bは、例えば、回転に伴って水Wを撹拌する螺旋状の撹拌羽根である。この場合、収容部の内部において生コンC及び炭酸ガスGと共に水Wが水撹拌部63bによって撹拌されるので、生コンCに対する炭酸ガスGの固定化を一層促進させることができる。
【0086】
図8(c)に示されるように、筒状部73は、内面73bと、内面73bから突出する骨材排出部73cとを有する。骨材排出部73cは、例えば、内面73bに形成された螺旋羽根である。回転駆動部4等の回転駆動部が粗骨材C1が残された筒状部73を回転することにより、螺旋羽根である骨材排出部73cによって粗骨材C1が軸線方向の一方側に搬送される。この粗骨材C1の軸線方向の一方側への搬送によって筒状部73から粗骨材C1を排出することができる。従って、傾斜装置9等によって傾斜させなくても、筒状部73の回転によって筒状部73から粗骨材C1を排出することができる。
【0087】
また、前述した実施形態では、バッチ式の炭酸ガス固定化装置1について説明した。しかしながら、本開示に係る炭酸ガス固定化装置は、連続的に筒状部に生コンが投入され、分離され且つ炭酸ガスが固定化されたセメントスラッジが連続的に排出される連続式の炭酸ガス固定化装置であってもよい。このように、筒状部への生コンの投入のタイミング、及び収容部(筒状部)からの生コンの排出のタイミングは特に限定されない。
【0088】
前述した実施形態では、気泡として収容部2の内部の水Wに炭酸ガスGを導入する炭酸ガス導入部5について説明した。しかしながら、収容部の内部には、気体としての炭酸ガス、液体としての炭酸ガス、又は固体としての炭酸ガス(例えばドライアイス)が導入さてもよく、収容部に導入される炭酸ガスの態様は特に限定されない。ドライアイスとして炭酸ガスが導入される場合には、例えば、工業由来によって発生した炭酸ガス(二酸化炭素)が固化されて得られたドライアイスが収容された袋材が収容部2の内部に導入される。この袋材としては、水溶性袋材が用いられる。この場合、ドライアイスが収容された袋材が収容部2の内部において溶解する。水溶性袋材は、例えば、水溶性フィルム又は水溶紙によって構成されている。水溶性フィルムは、一例として、ポリビニルアルコールによって構成されている。水溶紙は、例えば、木材パルプ、多糖類、ポバール、セルロース、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロース、及びでんぷんの少なくともいずれかによって構成されている。
【0089】
上記の袋材に収容されるドライアイスは粒状を呈する。粒状のドライアイスは、例えば、凍結粉砕装置によって作製される。ドライアイスの粒の大きさは、50mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが一層好ましい。このように、粒状のドライアイスが収容部2の内部に導入される場合、当該ドライアイスを収容部2の内部において短時間で昇華させることができる。
【0090】
ドライアイスを収容する水溶性袋材の重量は、例えば、数kg程度である。ドライアイスを収容する水溶性袋材の寸法、形状及び重量は収容部2に応じて適宜設定される。ドライアイスを収容する水溶性袋材は、例えば、収容部2の周囲(一例として炭酸ガス導入部5の隣接位置)に設けられた保管容器の内部に保管されてもよい。この保管容器は保冷性が高い容器である。ドライアイスを収容する水溶性袋材は、当該保管容器の開口部に接続されるシュートから回転ドラム内に転がるように収容部2に導入されてもよい。このように、収容部2へのドライアイスの導入手段は適宜変更可能である。
【0091】
前述した実施形態では、二重管構造を有する筒状部3について説明した。しかしながら、筒状部は、三重管等であってもよく、筒状部を構成する管の数は特に限定されない。また、前述した実施形態では、回転駆動部4が内管3A及び外管3Bの双方を回転させる例について説明した。しかしながら、回転駆動部は内管のみを回転させてもよく、筒状部の回転の態様は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…炭酸ガス固定化装置、2…収容部、2b…蓋、3…筒状部、3A…内管、3b…貫通孔、3B…外管、3c…第1貫通孔、3d…第2貫通孔、4…回転駆動部、4b…軸部、4c…モータ、5…炭酸ガス導入部、5b…配管、5c…炭酸ガスボンベ、6…被覆部材、7…水注入手段、8…凝結遅延剤注入手段、9…傾斜装置、10,10A…走行体、10b…キャビン、11…荷台、12…走行装置、12b…車体、12c…車輪、12d…内燃機関、12f…ラジエータ、12g…管路、13…抜き出し部、14…クレーン装置、15…ホッパー、20…固液分離装置、21…収集装置、21b…吸引部、21c…吸引チューブ、21d…本体部、21f…排水チューブ、22…フィルタ装置、22b…本体部、22c…フィルタープレス、22d…タンク、22f…給水チューブ、31…炭酸ガス固定化装置、31b…パイプ、32…収容部、32b…蓋、33…筒状部、33b…ワイヤ、33c…側面、33d…開閉部、33f…支持部、35…炭酸ガス導入部、35b…炭酸ガスボンベ、35c…配管、35d…気化器、36…撹拌機、37…測定部、38b…pHセンサ、38c…炭酸ガス濃度測定センサ、39b…配管、39c…スラリー引き抜きポンプ、41…炭酸ガス固定化装置、42…収容部、42f…底面、42g…引き抜きドレーン、45…炭酸ガス導入部、45b…流出管路、45c…撹拌装置、45d…流入管路、45f…ポンプ、45g…炭酸ガスボンベ、45h…ガス供給管路、53…筒状部、53b…滑り部、53c…メッシュ部、63…筒状部、63b…水撹拌部、73…筒状部、73b…内面、73c…骨材排出部、A…建設現場(現場)、C…生コン、C1…粗骨材(骨材)、C2…セメントスラッジ、D…軸線方向、G…炭酸ガス、K…凝結遅延剤、L…軸線、W…水、W1…水面。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8