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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050070
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】産業用ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/10 20060101AFI20240403BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 5/435 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16L11/10 A
C08L9/00
C08K5/435
C08K5/44
C08K5/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156666
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517027686
【氏名又は名称】住友理工ホーステックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】野末 絢深
(72)【発明者】
【氏名】神尾 錬
(72)【発明者】
【氏名】川井 皓一朗
(72)【発明者】
【氏名】深津 宏介
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA13
3H111BA29
3H111CB04
3H111CB06
3H111CB14
3H111CB29
3H111CC07
3H111DB03
3H111DB08
3H111DB11
3H111DB15
3H111DB18
3H111DB19
3H111EA04
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BC051
4J002BL011
4J002EV276
4J002EV287
4J002EV326
4J002FD156
4J002FD157
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】ゴム層と、メッキワイヤーからなる補強層との接着性に優れ、耐熱性にも優れる産業用ホースを提供する。
【解決手段】下記(A)~(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が0.5~1.0質量部、(D)成分の含有量が1.0~3.0質量部であり、(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.5~1.0であり、(B)~(D)成分の合計量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が0.3~0.6であるゴム組成物からなるゴム層と、上記ゴム層と接するメッキワイヤーからなる補強層とを有する産業用ホース。
(A)ジエン系ゴム。
(B)スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤の少なくとも一方。
(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド。
(D)硫黄。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が0.5~1.0質量部、(D)成分の含有量が1.0~3.0質量部であり、(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.5~1.0であり、(B)~(D)成分の合計量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が0.3~0.6であるゴム組成物からなるゴム層と、上記ゴム層と接するメッキワイヤーからなる補強層とを有する産業用ホース。
(A)ジエン系ゴム。
(B)スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤の少なくとも一方。
(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド。
(D)硫黄。
【請求項2】
上記ゴム層における、上記補強層との接触面から50μmまでの範囲内の箇所の、エネルギー分散型X線分析法(EDX)で測定される硫黄元素のピーク強度が、上記ゴム層における上記範囲外の箇所で測定される硫黄元素のピーク強度よりも高い、請求項1記載の産業用ホース。
【請求項3】
上記(A)ジエン系ゴムが、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、および天然ゴムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1または2記載の産業用ホース。
【請求項4】
上記ゴム組成物は、コバルト系接着剤、メラミン系接着剤、およびレゾルシン系接着剤からなる群より選ばれる1種以上の接着剤を含有しない、請求項1または2記載の産業用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム層と、メッキワイヤーからなる補強層とを備えた産業用ホースに関する。より具体的には、例えば、建設機械(建機)、鉱山(マイニング)機械等の産業機械向けの高圧油圧ホースや、自動車用の各種ホース等であって、ゴム層と、ゴム層に接するメッキワイヤーからなる補強層と備えた産業用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、鉱山機械等に用いられる産業用ホースは、高圧に耐えうるように、ゴム層と共に、メッキワイヤーからなる補強層が設けられている。かかる補強層とゴム層との接着性が不十分である場合、メッキワイヤーが動いたり緩んだりするため、耐久性に悪影響を与える。そのため、メッキワイヤーからなる補強層と、これに接するゴム層とを強固に接着する必要がある。
【0003】
かかる補強層とゴム層とを強固に接着するために、接着剤を使用しない(接着剤レス)手法としては、例えば、補強層を黄銅(銅-亜鉛系合金)メッキがなされたワイヤー等の、銅を含有するワイヤーからなるものとし、ゴム層の材料としてジエン系ゴム組成物を用い、そのゴム層材料中の加硫剤である硫黄と補強層中の銅イオン(Cu)との化学結合によって、補強層との界面付近の部分のゴム層を硫化銅含有層とすることにより、補強層とゴム層の接着性を発現させる手法がある。しかしながら、ジエン系ゴム組成物中の硫黄の配合量が多くなると、銅と硫黄の結合が増えるため接着力が向上するものの、耐熱性が低下してしまう傾向がある。とりわけ、産業機械向けの高圧油圧ホースのように、高温流体(例えば100℃以上の作動油等)が流通するホースにおいては、耐熱性の低下による熱劣化は深刻な問題となる。
【0004】
他方、かかる補強層とゴム層との接着性を向上させるために接着剤を使用する手法として、例えば、硫黄加硫可能な原料ゴムに対して、レゾルシンやヘキサメチレンテトラミン等の接着剤を配合したゴム層を有するホースが提案されており(特許文献1)、また、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴムに対して、接着剤であるコバルト系化合物を配合したゴム層を有するホースが提案されているが(特許文献2)、かかる特許文献1、2のいずれにおいても、接着性および耐熱性を両立させる観点からは未だ不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-84793号公報
【特許文献2】特開2011-1524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
産業用ホースにおける、ゴム層と補強層との接着性(剥離耐久性)に関する近年の高度な要求も相俟って、従来の手法では接着性と耐熱性の両方を高度に満足させることは困難であり、新たな手法の開発が強く望まれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ゴム層と、メッキワイヤーからなる補強層との接着性に優れ、耐熱性にも優れる産業用ホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた。その研究過程において、接着性と耐熱性を高度に両立させる観点から、硫黄加硫系における硫黄の挙動に着目し、加硫後における硫黄の分布を制御する手法を検討した。かかる観点から更に研究を重ねた結果、本発明者らは、ゴム層の構成材料として、特定の加硫促進剤とN-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミドとを用いると共に、当該成分や硫黄等の配合量を特定範囲に制御することによって、メッキワイヤーからなる補強層とゴム層との接着性に優れるのみならず、耐熱性にも優れる産業用ホースが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を、その要旨とする。
[1] 下記(A)~(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が0.5~1.0質量部、(D)成分の含有量が1.0~3.0質量部であり、(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.5~1.0であり、(B)~(D)成分の合計量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が0.3~0.6であるゴム組成物からなるゴム層と、上記ゴム層と接するメッキワイヤーからなる補強層とを有する産業用ホース。
(A)ジエン系ゴム。
(B)スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤の少なくとも一方。
(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド。
(D)硫黄。
[2] 上記ゴム層における、上記補強層との接触面から50μmまでの範囲内の箇所の、エネルギー分散型X線分析法(EDX)で測定される硫黄元素のピーク強度が、上記ゴム層における上記範囲外の箇所で測定される硫黄元素のピーク強度よりも高い、[1]記載の産業用ホース。
[3] 上記(A)ジエン系ゴムが、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、および天然ゴムからなる群より選ばれる1種以上である、[1]または[2]記載の産業用ホース。
[4] 上記ゴム組成物は、コバルト系接着剤、メラミン系接着剤、およびレゾルシン系接着剤からなる群より選ばれる1種以上の接着剤を含有しない、[1]~[3]のいずれかに記載の産業用ホース。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム層とメッキワイヤーからなる補強層との接着性に優れ、耐熱性にも優れる産業用ホースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる産業用ホースの一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態にかかる産業用ホースの一例を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態にかかる産業用ホースの一例を示す模式図である。
図4】接着性評価における、剥離試験を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について詳しく説明する。但し、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0013】
本発明の一実施形態にかかる産業用ホース(以下、「本ホース」という場合がある)は、下記(A)~(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量0.5~1.0質量部、(D)成分の含有量が1.0~3.0質量部であり、(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.5~1.0であり、(B)~(D)成分の合計含有量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が0.3~0.6であるゴム組成物(以下、「本ゴム組成物」という場合がある)からなるゴム層と、上記ゴム層と接するメッキワイヤーからなる補強層とを有することを特徴とする。
(A)ジエン系ゴム。
(B)スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤の少なくとも一方。
(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド。
(D)硫黄。
【0014】
本ホースは、メッキワイヤーからなる補強層とゴム層との接着性に優れ、耐熱性にも優れるものである。本ホースが接着性および耐熱性を高度に両立できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように推察している。すなわち、本発明者らは、上記(A)~(D)成分の含有量および含有比を特定範囲に制御することにより、(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミドが特定の(B)加硫促進剤および(D)硫黄の相互作用を適度に抑制する一方で所定の加硫促進機能を奏するため、ゴム層に含まれる所定量の(D)硫黄のうち適量を補強層側へ先行的に移行させて接着層を十分に形成する一方、残る適量の(D)硫黄を用いて後発的に加硫を促進させることによって、架橋後のゴム層に存する硫黄が特定分布状態となる結果、接着性および耐熱性の両方を高度に両立できるものと推察している。
【0015】
より具体的な考察の一例としては、例えば、特定含有割合の(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド(下記「化1」の(b)参照)と(B)チアゾール系加硫促進剤である2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)(下記「化1」の(a)参照)との化学反応により、化学反応後の(B)成分の加硫促進機能が適度に抑制されると共に(下記「化2」の(a)参照)、化学反応後の(C)成分は塩基性となり加硫機能を発現するため(下記「化2」の(b)参照)、ゴム層に含まれる(D)硫黄のうち適量が補強層を構成するメッキワイヤーの銅メッキと先行的に反応して硫酸銅等を生成し、接着層を形成する一方、残る適量の(D)硫黄を用いて後発的に加硫を促進させることによってモノスルフィドおよびジスルフィド架橋構造を比較的多く発現させることにより、架橋後のゴム層におけるメッキワイヤー付近の硫黄濃度を高めた結果、接着性および耐熱性の両方を高度に両立できるものと推察している。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
本ホースの詳細について、以下に説明する。
本ホースは、少なくとも、本ゴム組成物からなるゴム層と、メッキワイヤーからなる補強層とを有する。すなわち、本ホースは、メッキワイヤーからなる補強層の外側および/または内側に本ゴム組成物からなるゴム層を形成されている積層構造を有するホースであればよく、その他の層の構成や層数は特に限定されない。
【0019】
<ゴム層>
上記のとおり、本ホースのゴム層は、(A)ジエン系ゴム、(B)スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤の少なくとも一方、(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド、および(D)硫黄を含有し、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量0.5~1.0質量部、(D)成分の含有量が1.0~3.0質量部であり、(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.5~1.0であり、(B)~(D)成分の合計含有量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が0.3~0.6であるゴム組成物からなるゴム層である。
【0020】
《(A)ジエン系ゴム》
(A)ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0021】
(A)ジエン系ゴムは、本ゴム組成物を内面ゴム層として用いる場合、ホース内を流通する作動油等に対する耐油性を向上させる観点からは、NBRを用いることが好ましい。また、本ゴム組成物を内面ゴム層として用いる場合、耐油性と共に、接着性、および耐寒性を両立させる観点からは、NBRのアクリロニトリル量(AN量)は10~33質量%が好ましく、より好ましくは18~28質量%である。
【0022】
(A)ジエン系ゴムの含有量は、本ゴム組成物全量(100質量%)に対して、例えば、30質量%以上であり、30~80質量%が好ましく、より好ましくは32~70質量%、更により好ましくは35~55質量%である。
【0023】
《(B)スルフェンアミド系加硫促進剤またはチアゾール系加硫促進剤》
本ゴム組成物は加硫促進剤として、スルフェンアミド系加硫促進剤(b1)およびチアゾール系加硫促進剤(b2)の少なくとも一方を含有する。すなわち、本ゴム組成物は、スルフェンアミド系加硫促進剤(b1)を含有するか、チアゾール系加硫促進剤(b2)を含有するか、または、これら両方を含有するものである。
【0024】
スルフェンアミド系加硫促進剤(b1)としては、例えば、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好適に用いられる。
【0025】
チアゾール系加硫促進剤(b2)としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
【0026】
(B)成分の含有量は、本発明の効果を向上させる観点から、例えば、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、0.8~3.0質量部が好ましく、より好ましくは1.0~2.5質量部、更により好ましくは1.0~2.0質量部である。
【0027】
《(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド》
(C)成分の含有量は、本発明の効果を奏する観点から、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5~1.0質量部の特定範囲に制御されることが重要である。(C)成分の含有量が上記範囲外である場合は、ゴム層とメッキワイヤーからなる補強層との接着性および耐熱性を両立させることが困難となる。すなわち、当該(C)成分の含有量が多すぎると接着性が低下する傾向があり、当該(C)成分の含有量が少なすぎると耐熱性および/または接着性が低下する傾向がある。
当該(C)成分の含有量は、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5~1.0質量部の特定範囲内において適宜設定することができ、例えば、0.6~1.0質量部、0.7~0.9質量部等であってもよい。
【0028】
(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]は、0.5~1.0の範囲であることが重要である。当該質量比[(C)/(B)]が上記範囲外である場合は、ゴム層とメッキワイヤーからなる補強層との接着性および耐熱性を両立させることが困難となる。すなわち、当該質量比[(C)/(B)]が小さすぎると接着性が低下する傾向がある。
当該質量比[(C)/(B)]は、0.5~1.0の特定範囲内において適宜設定することができ、例えば、0.5~0.9、0.5~0.8等であってもよい。
【0029】
《(D)硫黄》
(D)硫黄の含有量は、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、1.0~3.0質量部の特定範囲に制御されることが重要である。(D)成分の含有量が上記範囲外である場合は、ゴム層とメッキワイヤーからなる補強層との接着性および耐熱性を両立させることが困難となる。すなわち、当該(D)成分の含有量が少なすぎると接着性が低下する傾向があり、硫黄の含有量が多すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
当該(D)成分の含有量は、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、1.0~3.0質量部の特定範囲内において適宜設定することができ、例えば、1.0~2.5質量部、1.2~2.0質量部等であってもよい。
【0030】
(D)硫黄としては、不溶性硫黄、可溶性硫黄を用いることができる。不溶性硫黄としては、例えば、μ硫黄、π硫黄、ω硫黄等の、ポリマー状の硫黄が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。市販品としては、サンフェル(三新化学社製)、サンフェルEX(三新化学社製)等が挙げられる。
また、可溶性硫黄としては、例えば、α硫黄、β硫黄、γ硫黄、λ硫黄等の、環状構造を有する硫黄が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。市販品としては、金華印微粉硫黄(鶴見化学工業社製)、粉末硫黄S(細井化学工業社製)等が挙げられる。
【0031】
なお、不溶性硫黄とは、二硫化炭素に対して90質量%以上の不溶性を示す硫黄である。また、可溶性硫黄とは、二硫化炭素に対して99.5質量%以上の可溶性を示す硫黄である。
【0032】
(D)成分の合計量に対する(D)成分の質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]は、0.3~0.6の範囲であることが重要である。当該質量比[(D)/{(B)+(C)+(D)}]が上記範囲外である場合は、ゴム層とメッキワイヤーからなる補強層との接着性および耐熱性を両立させることが困難となる。
【0033】
《その他の成分》
本ゴム組成物には、上記(A)~(D)成分以外に、充填剤、可塑剤、老化防止剤、加硫助剤等の任意材料を必要に応じて配合してもよい。
【0034】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、耐久性向上の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0035】
カーボンブラックとしては、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
カーボンブラックのBET比表面積は、10~150m2/gが好ましく、より好ましくは15~100m2/g、更により好ましくは20~80m2/gである。
なお、カーボンブラックのBET比表面積は、例えば、試料を200℃で15分間脱気した後、吸着気体として混合ガス(N2:70%、He:30%)を用いて、BET比表面積測定装置(マイクロデータ社製、4232-II)により測定することができる。
【0037】
カーボンブラックのヨウ素吸着量は、10~150mg/gが好ましく、より好ましくは10~75mg/g、更により好ましくは20~65mg/gである。また、カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量は、20~180mL/100gが好ましく、より好ましくは20~150mL/100gである。
なお、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K 6217-1(A法)に準拠して測定された値であり、カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K6217-4に準拠して測定された値である。
【0038】
充填剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、40~150質量部が好ましく、より好ましくは50~140質量部、更により好ましくは60~130質量部である。
【0039】
なお、カーボンブラックおよび炭酸カルシウムを併用する場合、カーボンブラックと炭酸カルシウムの含有比(炭酸カルシウム/カーボンブラック)は、例えば、1/99~20/80が好ましく、より好ましくは5/95~15/85である。
【0040】
(可塑剤)
可塑剤としては、ジエン系ゴムの種別等に応じて適宜選択できるが、例えば、アロマ系オイル、エーテルエステル系可塑剤、プロセスオイル等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
アロマ系オイルとしては、例えば、ダイアナプロセスAC-12、ダイアナプロセスAC-460、ダイアナプロセスAH-16(以上、出光昭和シェル社製)、JSOアロマ790(日本サン石油社製)、アロマックス1、アロマックス3(以上、富士興産社製)等が挙げられる。また、エーテルエステル系可塑剤としては、一分子中にエーテル結合とエステル結合の双方を有する可塑剤が挙げられる。具体的には、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]等のアジピン酸エーテルエステル系可塑剤等が挙げられる。また、プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル等が挙げられる。
【0041】
可塑剤の含有量は、特に制限されないが、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、例えば、5~20質量部であり、好ましくは5~18質量部であり、より好ましくは8~15質量部である。
【0042】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニルアミン系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
老化防止剤の含有量は、特に制限されないが、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、例えば、0.5~10質量部であり、好ましくは1~8質量部であり、より好ましくは1.5~6質量部である。
【0044】
(加硫助剤)
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
加硫助剤の含有量は、特に制限されないが、(A)ジエン系ゴム100質量部に対して、例えば、1~12質量部であり、好ましくは2~10質量部であり、より好ましくは3~8質量部である。
【0045】
(接着剤)
本ゴム組成物は、接着剤を含む場合、接着性は向上するものの、耐熱性が低下する傾向があるため、接着剤を含有しないことが好ましい。また、接着剤を含む場合、ホースの製造工程においてマンドレル(鉄芯等)にゴム組成物が付着して押出成形が阻害される傾向がある等の様々な製造上の問題も懸念されるため、接着剤を含有しないことが好ましい。ここで「接着剤を含有しない」とは、本ゴム組成物全量(100質量%)に含まれる接着剤の合計含有量が0.5質量%未満であることを意味する。より好ましくは、かかる接着剤の合計含有量は0.3質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満であり、更により好ましくは0.05質量%未満であり、特に好ましくは0質量%である。
【0046】
具体的には、本ゴム組成物は、コバルト系接着剤、メラミン系接着剤、およびレゾルシン系接着剤からなる群より選ばれる1種以上の接着剤を含有しないことが好ましい。すなわち、本ゴム組成物全量(100質量%)に含まれるコバルト系接着剤、メラミン系接着剤、およびレゾルシン系接着剤の合計含有量は0.5質量%未満が好ましく、より好ましくは当該合計含有量が0.3質量%未満であり、更により好ましくは当該合計含有量が0.1質量%未満であり、特に好ましくは当該合計含有量が0質量%である。
前記コバルト系接着剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ホウ酸コバルト、オレイン酸コバルト、マレイン酸コバルト等が挙げられる。レゾルシン系接着剤としては、レゾルシン、レゾルシンとホルムアルデヒドとを縮合したレゾルシン・ホルムアルデヒド等のレゾルシン誘導体等が挙げられる。メラミン系接着剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0047】
(ゴム組成物の調製)
本ゴム組成物は、例えば、上記(A)~(D)成分、および、必要に応じて上記のような各種の任意材料を適宜に配合し、これらをニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。上記のように調製して得たゴム組成物は、メッキワイヤーからなる補強層に接するゴム層の構成材料となる。
【0048】
<補強層>
本ホースは、ホース全体の強度を補強するため、メッキワイヤーからなる補強層を有する。具体的には、補強層は、メッキワイヤーをブレード状やスパイラル状等に編み組してなる層である。
【0049】
メッキが施されるワイヤー(素線)としては、金属製ワイヤー、とりわけスチールワイヤー等が好適に用いられる。また、メッキ処理としては、例えば、銅メッキ、亜鉛メッキ、黄銅(銅-亜鉛系合金)メッキ、ニッケルメッキ、錫メッキ、コバルトメッキ等が挙げられる。これらのなかでも、黄銅(銅-亜鉛系合金)メッキが好ましい。かかる黄銅(銅-亜鉛系合金)メッキにおける銅と亜鉛の含有比(Cu/Zn)は、特に制限されないが、例えば、70/30~55/45であり、好ましくは70/30~60/40である。
【0050】
上記メッキワイヤーの直径は、通常0.15~1.00mm、好ましくは0.20~0.80mmである。
【0051】
<層構造>
本ホースは、少なくとも、本ゴム組成物からなるゴム層と、メッキワイヤーからなる補強層とを有する。メッキワイヤーからなる補強層の外側および/または内側に本ゴム組成物からなるゴム層を有する積層構造を有する産業用ホースであればよく、その他の層の構成や層数は特に限定されない。
【0052】
本ホースにおける層構造の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、「内面ゴム層/補強層/外面ゴム層」の三層構造を有する産業用ホースにおいて、内面ゴム層を本ゴム組成物からなるゴム層とする産業用ホースが挙げられる。また、例えば、「内面ゴム層/中間ゴム層/補強層/外面ゴム層」の四層構造を有する産業用ホースにおいて、中間ゴム層を本ゴム組成物からなるゴム層とする産業用ホースが挙げられる。また、例えば、「内面ゴム層/補強層1/中間ゴム層/補強層2/外面ゴム層」の五層構造を有する産業用ホースにおいて、内面ゴム層および中間ゴム層の一方または両方を本ゴム組成物からなるゴム層とする産業用ホースが挙げられる。また、例えば、「内面ゴム層/補強層1/中間ゴム層1/補強層2/中間ゴム層2/補強層3/外面ゴム層」の七層構造を有する産業用ホースにおいて、内面ゴム層、中間ゴム層1、および中間ゴム層2のうち一部の層(1層または2層)または全層を本ゴム組成物からなるゴム層とする産業用ホースが挙げられる。
【0053】
本ホースの内径は、特に制限されないが、通常5~85mmであり、好ましくは6~80mmである。また、本ホースの外径は、通常9~100mmであり、好ましくは10~85mmである。
【0054】
また、各層の厚みとしては、特に制限されないが、内面ゴム層の厚みは、例えば0.7~4.0mmであり、好ましくは1.0~3.0mmである。中間ゴム層全体の厚みは、例えば0.1~0.5mmであり、好ましくは0.2~0.4mmである。外面ゴム層の厚みは、例えば0.5~2.5mmであり、好ましくは0.8~2.0mmである。
【0055】
(硫黄元素のピーク強度)
本ゴム組成物からなるゴム層における、補強層との接触面から50μmまでの範囲内の箇所の、エネルギー分散型X線分析法(EDX)で測定される硫黄元素のピーク強度が、ゴム層における上記範囲外の箇所で測定される硫黄元素のピーク強度よりも高くなっていることが好ましい。上記のようになっていると、補強層のメッキとの接触反応により、ゴム層内に接着層が良好に形成され、接着性が良好に発現するようになる。
なお、上記エネルギー分散型X線分析法(EDX)の測定条件は、例えば、以下の条件により行うことができる。
[エネルギー分散型X線分析法(EDX)測定条件]
・断面加工:イオンミリング法
・分析測定条件
装置名:走査型電子顕微鏡 S-4800(日立ハイテク社製)
エネルギー分散型X線マイクロアナライザ X-Max(堀場製作所社製)
像種:反射電子像
加速電圧:15kV
導電化処理:C蒸着
倍率:×100k
元素種:硫黄
【0056】
また、本ゴム組成物からなるゴム層は、耐久性および柔軟性の観点から、25℃雰囲気下における引張応力(M100)が2.0MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.0~12.0MPaである。より具体的には、本ゴム組成物からなるゴム層を内面ゴム層とする場合は、上記引張応力(M100)は7.0~10.0MPaが好ましい。また、本ゴム組成物からなるゴム層を中間ゴム層とする場合には、上記引張応力(M100)は3.0~5.0MPaが好ましい。
なお、上記引張応力(M100)は、例えば、JIS K 6251に準拠して測定することができる。
【0057】
更に、図を参照して本ホースの一実施形態について説明するが、本発明は図の構造に限定されるものではない。図1に示す高圧ホースは、内面ゴム層1の外周面に中間ゴム層2aが形成され、中間ゴム層2aの外周面にメッキワイヤーからなる補強層3が形成され、補強層3の外周面に中間ゴム層2bが形成され、中間ゴム層2bの外周面に外面ゴム層4が形成された五層構造を有するホースである。当該ホースにおいては、中間ゴム層2aおよび中間ゴム層2bの一方または両方を本ゴム組成物からなるゴム層とする。
【0058】
また、例えば、図2に示す高圧ホースは、メッキワイヤーからなる補強層13aの外周面に中間ゴム層2が形成され、中間ゴム層2の外周面にメッキワイヤーからなる補強層13bが形成されたものである。当該ホースにおいては、中間ゴム層2を本ゴム組成物からなるゴム層とする。
【0059】
また、例えば、図3に示す高圧ホースは、内面ゴム層1の外周面にメッキワイヤーからなる補強層3が形成され、補強層3の外周面に外面ゴム層4が形成された三層構造を有するホースである。当該ホースにおいては、内面ゴム層1を本ゴム組成物からなるゴム層とする。
【0060】
なお、図1に示す高圧ホースのように、本ゴム組成物以外の組成物からなる内面ゴム層1を形成する場合、その材料としては、耐油性に優れたゴムが好ましく、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐油性、強度、コストの点から、NBRが好ましい。
また、NBR等のゴム以外に、充填剤、可塑剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫剤、加硫促進剤、加工助剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0061】
また、図1図3に示す高圧ホースのように、本ゴム組成物以外の組成物からなる外面ゴム層4を形成する場合、その材料としては、耐候性に優れたゴムが好ましく、例えば、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエン系ゴム(EPDM)、SBRとEPDMのブレンドゴム、NBRとEPDMのブレンドゴム、NBRと塩化ビニル(PVC)のブレンドゴム、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐候性、コスト、耐油性の点から、CRが好ましい。
なお、CR等のゴム以外に、充填剤、可塑剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫剤、加硫促進剤、加工助剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0062】
<製造方法>
本ホースの製造方法を、図1に示す本発明の一実施形態を例にして説明する。まず、押出成形機を用いて、内面ゴム層形成用のゴム組成物をマンドレル上に押し出して内面ゴム層1を成形する。次に、内面ゴム層1の外周面に、中間ゴム層形成用のゴム組成物(本ゴム組成物)を押し出して中間ゴム層2aを形成する。続いて、中間ゴム層2aの外周面に、黄銅メッキワイヤー等のメッキワイヤーをスパイラル状に編み組して補強層3を形成する。その後、補強層3の外周面に、中間ゴム層形成用のゴム組成物(本ゴム組成物)を押し出して中間ゴム層2bを形成する。更に、中間ゴム層2bの外周面に、外面ゴム層形成用のゴム組成物を押し出して外面ゴム層4を形成する。最後に、この積層体を、所定の条件(例えば、140~170℃×10~60分間)で加硫(スチーム加硫等)することにより、図1に示した層構造の高圧ホースを作製することができる。
【0063】
また、例えば、図3に示すように、「内面ゴム層/補強層/外面ゴム層」の三層構造を有するホースを製造する場合においても、上記と同様に、押出成形機を用いて、本ゴム組成物をマンドレル上に押し出して内面ゴム層1を成形し、次に、内面ゴム層1の外周面に、黄銅メッキワイヤー等のメッキワイヤーをスパイラル状に編み組して補強層3を形成し、その後、補強層3の外周面に、外面ゴム層形成用のゴム組成物を押し出して外面ゴム層4を形成する。最後に、この積層体を、所定の条件(例えば、140~170℃×10~60分間)で加硫(スチーム加硫等)することにより、三層構造の高圧ホースを作製することができる。
【0064】
<用途>
本ホースは、建設機械(建機)向け等の高圧油圧ホースや、自動車用の各種ホース(例えば、オイルホース、燃料用ホース、エアホース、水系ホース等)等の産業用ホースとして用いられる。とりわけ、建設機械、土木機械、産業機械、車両・船舶等にて、高圧の流体を流通させるために使用される高圧ホースにおいて好適に使用される。
【実施例0065】
次に、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0066】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0067】
<(A)ジエン系ゴム>
・NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム、ニポールDN302、日本ゼオン社製、AN量:28質量%)
・SBR(スチレンブタジエンゴム、SBR♯1500、住友化学社製、スチレン量:23.5質量%)
・NR(天然ゴム、RSS#3)
【0068】
<(B)加硫促進剤>
・スルフェンアミド系加硫促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、サンセラーCM、三新化学社製)
・チアゾール系加硫促進剤(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、ノクセラーDM、大内新興化学株式会社)
【0069】
<(C)N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド>
ブルカレントE/C、ランクセス社製
【0070】
<(D)硫黄>
・不溶性硫黄(サンフェル、三新化学社製)
・可溶性硫黄(金華印微粉硫黄、鶴見化学工業社製)
【0071】
<充填剤>
・カーボンブラック(シーストS、東海カーボン社製、窒素吸着比表面積:27m2/g、ヨウ素吸着量:26mg/g、DBP吸収量:68mL/100g)
・炭酸カルシウム(白艶華CC、白石カルシウム社製)
【0072】
<可塑剤>
・エーテルエステル系オイル(アデカサイザーRS-107、ADEKA社製)
・アロマ系オイル(ダイアナプロセスAC-12、出光昭和シェル社製)
・パラフィンオイル(ダイアナプロセスNM-280、出光興産社製)
【0073】
<老化防止剤>
・フェニルアミン系老化防止剤(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ノンフレックスRD、精工化学社製)
【0074】
<加工助剤>
・ステアリン酸(ルーナックS-70V、花王社製)
・酸化亜鉛(酸化亜鉛二種、堺化学社製)
【0075】
〔実施例1~12、比較例1~5〕
後記の表1に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、ニーダーを用いて混練りして、未加硫のゴム組成物を調製した。得られた実施例および比較例のゴム組成物を用いて、以下の特性を評価した。その結果を、後記の表1に併せて示す。
【0076】
≪耐熱性(耐老化性)≫
上記ゴム組成物を用いて、150℃×30分間の条件でプレス加硫し、円柱状の加硫ゴム試料を作製した(直径29.0mm、高さ12.5mm)。この加硫ゴム試料を用い、JIS K 6262に準拠して、温度120℃、試験時間72時間、圧縮率25%の条件下、圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みが50%未満であるものを「○」と評価し、圧縮永久歪みが50%以上であるものを「×」と評価した。
【0077】
≪接着性≫
上記ゴム組成物を用いて、未加硫状態のゴムシート(100mm×100mm、厚み2mm)を作製した。このゴムシートの上に、1本の黄銅メッキワイヤー(線径0.4mm、長さ300mm)を置いた。これを、面圧2MPaで、150℃で30分間プレス加硫することにより、加硫接着試料を作製した(図4参照)。この加硫接着試料のゴム11と、黄銅メッキワイヤー12をチャックし、JIS K 6256のT型剥離試験に準拠して、黄銅メッキワイヤー12を矢視X方向に剥離し、黄銅メッキワイヤー12表面におけるゴム11の被覆率を測定した。被覆率が高いほど、ゴムと黄銅メッキワイヤーとの接着性が良好であることを示す。なお、上記黄銅メッキワイヤーとしては、トクセン社製の黄銅メッキされたワイヤー(電気メッキ、メッキ組成:Cu/Zn=65/35質量%、メッキ付着量:4g/kg)を使用した。
そして、ワイヤー表面のゴムの被覆率が80%以上であったものを「○」、ワイヤー表面のゴムの被覆率が80%未満であったものを「×」と評価した。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表1の結果から、本発明の実施例にかかるゴム組成物は、耐熱性に優れるものであると共に、メッキワイヤー表面のゴムの被覆率が高く、ゴムとメッキワイヤーとの接着性にも優れるものであった。
【0080】
これに対し、比較例1および2のゴム組成物は、(C)成分の含有量が本発明の規定範囲から外れている等により、メッキワイヤーとの接着性および耐熱性の少なくとも一方が劣る結果となった。具体的には、(C)成分の含有量が本発明の規定範囲よりも少ない比較例1では、メッキワイヤー表面のゴムの被覆率が低く、ゴムとメッキワイヤーとの接着性に劣ると共に、耐熱性においても劣る結果となり、(C)成分の含有量が本発明の規定範囲よりも多い比較例2では、ゴムとメッキワイヤーとの接着性が劣る結果となった。
比較例3および4のゴム組成物は、(D)成分の含有量が本発明の規定範囲から外れている等により、接着性および耐熱性の少なくとも一方が劣る結果となった。具体的には、(D)成分の含有量が本発明の規定範囲よりも少ない比較例3では、ゴムとメッキワイヤーとの接着性が劣る結果となり、(D)成分の含有量が本発明の規定範囲よりも多い比較例4では、耐熱性が劣る結果となった。
比較例5のゴム組成物は、(C)成分と(B)成分の含有比等が本発明の規定範囲から外れている等により、ゴムとメッキワイヤーとの接着性が劣る結果となった。
【0081】
≪エネルギー分散型X線分析法(EDX)で測定される硫黄元素のピーク強度≫
上記接着性評価において使用したサンプルにおいて、上記黄銅メッキワイヤーとの接触面から50μmまでの範囲内の箇所の、エネルギー分散型X線分析法(EDX)で測定される硫黄元素のピーク強度と、上記ゴムにおける上記範囲外の箇所で測定される硫黄元素のピーク強度とを、以下の条件により測定した。その結果、実施例1~12のサンプルでは、上記黄銅メッキワイヤーとの接触面から50μmまでの範囲内の箇所の硫黄元素ピーク強度のほうが高くなっていることが確認された。
[エネルギー分散型X線分析法(EDX)測定条件]
・断面加工:イオンミリング法
・分析測定条件
装置名:走査型電子顕微鏡 S-4800(日立ハイテク社製)
エネルギー分散型X線マイクロアナライザ X-Max(堀場製作所社製)
像種:反射電子像
加速電圧:15kV
導電化処理:C蒸着
倍率:×100k
元素種:硫黄
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の産業用ホースは、建設機械(建機)、鉱山(マイニング)機械、産業車両(フォークリフト、無人搬送車等)向けの高圧油圧ホースや、自動車用のエンジンオイルホース等の、メッキワイヤーからなる補強層を備えた産業用ホースとして有用である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・内面ゴム層
2,2a,2b ・・・中間ゴム層
3,13a,13b・・・補強層
4・・・外面ゴム層
図1
図2
図3
図4