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特開2024-50085水系のインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
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  • 特開-水系のインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050085
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】水系のインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20240403BHJP
【FI】
C09D11/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156693
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 邦洋
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE04
4J039BC09
4J039BC19
4J039BC33
4J039BC35
4J039BC36
4J039BC50
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE05
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA03
4J039CA06
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】間欠性及び目詰まり回復性に優れるインクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】色材と、ベタインと、アセチレングリコール系界面活性剤と、水溶性ウレタン樹脂と、を含有する、水系のインクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、
ベタインと、
アセチレングリコール系界面活性剤と、
水溶性ウレタン樹脂と、を含有する、
水系のインクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記ベタインの含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、3.0~13質量%である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記水溶性ウレタン樹脂の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、0.1~4.0質量%である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、0.1~5.0質量%である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記水溶性ウレタン樹脂が、酸基を有する水溶性ウレタン樹脂を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記アセチレングリコール系界面活性剤の含有量に対する、前記水溶性ウレタン樹脂の含有量の比が、0.1~2.5である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記色材が、自己分散顔料、及び分散剤樹脂により分散された顔料のいずれか1種以上を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
樹脂分散粒子及び無機酸化物粒子のいずれか1種以上と、
ラクタム類と、をさらに含有し、
前記ラクタム類は、ラクタム環を構成する炭素数が4~6のラクタム類Aを含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記ラクタム類Aの含有量に対する、前記樹脂分散粒子の含有量の比が0.1~0.5である、
請求項8に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記ラクタム類Aが、ε-カプロラクタムを含む、
請求項8に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
有機溶剤をさらに含み、
前記有機溶剤が、標準沸点が280℃超のポリオール類を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
吸収性記録媒体への記録に用いられる、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含む、
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系のインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。一方、インクジェット記録方法においては、インクがノズルで乾燥して増粘して飛行曲がりや不吐出が生じやすいという問題がある。そのため、間欠性や目詰まり回復性等をはじめとするインクの性能を向上させるために種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、顔料と、コロイダルシリカと、アセチレングリコール系界面活性剤と、ベタインであるトリメチルグリシンと、を含む、インクジェット記録用インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-7444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アセチレングリコール系界面活性剤を含むインクに対してベタインを適用すると、間欠性や目詰まり回復性が低下しやすいことがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインクジェットインク組成物は、色材と、ベタインと、アセチレングリコール系界面活性剤と、水溶性ウレタン樹脂と、を含有する、水系のインクジェットインク組成物である。
【0006】
本発明のインクジェット記録方法は、上記インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含む、記録方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態で用いる記録装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0009】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係る水系のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、色材と、ベタインと、アセチレングリコール系界面活性剤と、水溶性ウレタン樹脂と、を含有する、水系のインクジェットインク組成物である。
【0010】
ベタインは優れた保湿剤であり、インクがノズルで乾燥して増粘して飛行曲がりや不吐出が発生すること(間欠性の低下)を抑制することができる。一方で、ベタインはインク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含む場合に、アセチレングリコール系界面活性剤と水との相溶性を低下させる傾向があり、特に、インク組成物が乾燥した際にアセチレングリコール系界面活性剤と水が相分離しやすく、これによりノズルからインクが吐出し難くなり、不吐出や吐出しても飛行曲がりが残るなどして、目詰まり回復性が劣ることがわかった。とりわけ、インクジェットヘッドがキャップされずに長期放置された場合等に、アセチレングリコール系界面活性剤の相分離が起こりやすく、目詰まり回復性が劣りやすい。
【0011】
アセチレングリコール系界面活性剤が水と相分離する技術的メカニズムとしては、特に限定されないが、次のように考えられる。ベタインは親水性が強いため、多くの水分子がベタインに水和した状態となっている。インク組成物の乾燥が進み、水分が減少すると、ベタインに水和した水分子の量が相対的に多い状態となる。アセチレングリコール系界面活性剤は水への溶解性が元々高くないが、ベタインに水が水和した相に対してはより溶解し難いことから、アセチレングリコール系界面活性剤が相分離するものと考えられる。
【0012】
そこで、本実施形態においては、インク組成物に水溶性ウレタン樹脂を含有させることにより、インク組成物がベタインとアセチレングリコール系界面活性剤とを含む場合においても、アセチレングリコール系界面活性剤の相分離を抑制でき、間欠性及び目詰まり回復性に優れる。
【0013】
ベタインとアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物に、水溶性ウレタン樹脂を含有させることにより、間欠性及び目詰まり回復性が向上する技術的メカニズムとしては、特に限定されないが、次のように考えられる。インク組成物が水溶性ウレタン樹脂を含むことにより、水溶性ウレタン樹脂によってアセチレングリコール系界面活性剤を吸着することができる。これにより、インク組成物の乾燥が進んだ場合であっても、アセチレングリコール系界面活性剤が相分離し難いものと考えられる。
【0014】
以下、本実施形態のインク組成物の各成分についてそれぞれ詳説する。
【0015】
1.1.色材
色材としては、特に限定されないが、例えば、染料や顔料等を挙げることができ、その中でも、使用可能な記録媒体の幅が広く、光やガス等に対して退色しにくい性質を有していること等の観点から顔料を用いることが好ましい。
【0016】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の有機顔料;カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等)、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等の無機顔料;シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料等が挙げられる。顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、顔料粒子表面に対して化学反応を利用して親水性基を導入した自己分散顔料、及び樹脂分散顔料等があげられる。
樹脂分散顔料は樹脂で分散された顔料である。顔料の分散に用いる樹脂を分散剤樹脂ともいう。分散剤樹脂とは、顔料の水分散性を向上させるために顔料表面に付与されて用いられる樹脂を意味する。樹脂分散顔料は、分散剤樹脂が、顔料に、吸着、付着、被覆などした顔料である。
【0018】
分散剤樹脂は、水溶性樹脂、水不溶性樹脂などを用いることができる。樹脂分散顔料は、例えば、分散剤樹脂と顔料を水中で攪拌して顔料を分散する方法や、分散剤樹脂と顔料を、有機溶剤中などで攪拌した後、水層に転送乳化する方法、などにより、調製することができる。
【0019】
自己分散顔料は、顔料の表面に、顔料の水分散性を向上させるための官能基が化学結合により、直接または間接に導入された顔料である。官能基は、親水性基であり、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などのリン含有基、などがあげられる。
【0020】
顔料は、自己分散顔料、及び分散剤樹脂により分散された顔料のいずれか1種以上を含むことが好ましく、自己分散顔料を含むことがより好ましい。ここで、分散剤樹脂又はその他の分散剤を用いる場合は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
色材の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1.0~14質量%であり、より好ましくは2.0~12質量%であり、さらに好ましくは4.0~10質量%であり、よりさらに好ましくは6.0~8.0質量%である。
【0022】
1.2.ベタイン
ベタインとは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に有しており、正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合しておらず、分子内塩を構成しており分子全体としては電荷を持たない化合物を意味する。本実施形態のベタインは、正電荷部位が第4級アンモニウムカチオンであるものが好ましい。
【0023】
インク組成物がベタインを含むことにより、インク組成物がインクジェットヘッドのノズルで乾燥することに起因するインク組成物の飛行曲がりや不吐出を防止することができ、間欠性が優れる傾向にある。間欠性は、記録中などに、インクの吐出が行なわれなかったノズルのインクの乾燥が進み、インクが増粘するなどして不吐出や飛行曲がりが発生する程度である。
【0024】
ベタインとしては、特に制限されないが、例えば、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリン、及びグルタミン酸ベタイン等が挙げられる。その中でも、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタイン、及びカルニチンのいずれか1種以上を含むことが好ましく、トリメチルグリシン及びγ-ブチロベタインのいずれか1種以上を含むことがより好ましい。それにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。なお、ベタインは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ベタインを構成する炭素数は、好ましくは4~12であり、より好ましくは4~7であり、さらに好ましくは4~6である。ベタインの炭素数が上記範囲内であることにより、帯電性異物の混入等に対する安定性がより向上する傾向にある。
【0026】
ベタインの含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1.0質量%以上である。さらには、好ましくは3.0~13質量%であり、より好ましくは5.0~10質量%であり、さらに好ましくは6.0~9.0質量%であり、よりさらに好ましくは6.0~8.0質量%である。ベタインの含有量が3.0質量%以上であることにより、吐出安定性及び耐カール性に優れる傾向にあり、ベタインの含有量が13質量%以下であることにより、インク組成物中のアセチレングリコール系界面活性剤の相分離を抑制することができ、目詰まり回復性に優れる傾向にある。
【0027】
1.3.アセチレングリコール系界面活性剤
インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含むことにより、ノズルから吐出するインク組成物が液滴化しやすくなり、良好に連続して安定して吐出することができる。つまり吐出が安定する。これにより、ノズルからインクが吐出しなくなったり、飛行曲がりが発生することを防止できる。
【0028】
なお、インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含まないために、吐出が安定しない場合、ノズルのインクの乾燥の有無にかかわらず、初期から吐出が安定しない傾向がある。
【0029】
また、インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含むことにより、特に普通紙等の吸収性記録媒体に対する記録において、インク組成物のぬれ広がり性や浸透性を向上させ、画質や発色性にも優れる傾向にある。
【0030】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール及びそのアルキレンオキサイド付加物が挙げられ、具体的には、下記式(1)で表される。
【化1】
上記式(1)中、R1、R1'、R2、及びR2'は、互いに独立して、直鎖状又は分岐状の、炭素数1~5のアルキル基を表し、-OR3及び-OR3'は、互いに独立して、-OH、又は-O(Cm2mO)nHを表す。ここで、mは1~5の整数を示す。また、nは0.5~25の小数を含む値であり、付加したアルキレンオキサイド(Cm2mO)の平均重合度を表す。
【0031】
式(1)で表される化合物の主鎖の炭素数は、好ましくは8、10、12、及び14のいずれかであり、より好ましくは10又は12であり、さらに好ましくは10である。
【0032】
なお、本明細書における「主鎖」とは、IUPAC命名法に基づいて決定される、アセチレングリコールの主鎖を意味する。また、アセチレングリコール系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
1、及びR1'は、それぞれ、好ましくは直鎖状の炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数2~4のアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のプロピル基である。
【0034】
2、及びR2'は、それぞれ、好ましくは直鎖状の炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0035】
mは、好ましくは1~4であり、より好ましくは2~3であり、さらに好ましくは2である。nは、好ましくは4~20であり、より好ましくは6~16であり、さらに好ましくは8~12である。
【0036】
また、-OR3及び-OR3'は、それぞれ、-OHで表されることも好ましく、-OR3及び-OR3'の両方が-OHで表されることも好ましい。
【0037】
アセチレングリコール系界面活性剤のさらに具体的な構造としては、特に限定されないが、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール又はそのアルキレンオキサイド付加物、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール又はそのアルキレンオキサイド付加物、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール又はそのアルキレンオキサイド付加物、及び4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール又はそのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0038】
アセチレングリコール系界面活性剤の中でも、上記式(1)の-OR3及び-OR3'が-OHである化合物は、特にインク組成物の記録媒体へのぬれ広がり性や浸透性が優れ、画質が特に優れ好ましいが、反面、水への溶解性が特に劣る傾向がある。このため本実施形態のインク組成物が特に有用である。
【0039】
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1~5.0質量%であり、より好ましくは0.1~3.5質量%であり、さらに好ましくは0.2~2.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.3~1.2質量%である。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、吐出安定性が向上する傾向にあり、アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が5.0質量%以下であることにより、インク組成物中のアセチレングリコール系界面活性剤の相分離を防止しやすく、吐出安定性が向上する傾向にある。
【0040】
1.4.水溶性ウレタン樹脂
水溶性ウレタン樹脂は、分子構造中に極性基を有し水溶性のウレタン樹脂を意味する。極性基は塩の状態であってもよい。また、極性基は酸基であることが好ましい。酸基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びリン酸基などのリン含有基などがあげられる。
【0041】
なお、本発明における「水溶性樹脂」とは、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体に溶解し、動的光散乱法で測定した際に粒子径を有しない状態で水又は水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。
【0042】
上述のとおり、インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含む場合、アセチレングリコール系界面活性剤は水等への溶解性が低いため、インク組成物の乾燥が進んだ際に水と相分離し、間欠性や目詰まり回復性が低下しやすい傾向にあるが、本実施形態のインク組成物は、水溶性ウレタン樹脂を含むことにより、上記の相分離を防止することができ、間欠性及び目詰まり回復性に優れる傾向にある。
【0043】
水溶性ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、及びポリオールに由来する繰り返し単位を有するが、その中でも酸基を有するポリオールに由来する繰り返し単位を有するものが好ましく、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、及び酸基を有するポリオールのそれぞれに由来する繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。水溶性ウレタン樹脂は、さらに、ポリアミンに由来する繰り返し単位を有していてもよい。
【0044】
ポリイソシアネートとは、その分子構造中に2以上のイソシアネート基を有する化合物を意味し、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等の鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の環状構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
ポリオールとは、その分子構造中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物である。本実施形態のポリオールとしては、特に限定されないが、酸基を有しないポリオールと、酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0048】
酸基を有しないポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0049】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物、及びグリコール類等が挙げられる。
【0050】
アルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドと付加重合させるポリオール類としては、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4-ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオール等のトリオール;等が挙げられる。
【0051】
グリコール類としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体;等が挙げられる。
【0052】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、酸エステル等が挙げられる。酸エステルを構成する酸成分としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;これらの芳香族ジカルボン酸の水素添加物等の脂環族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;等が挙げられる。これらの無水物、塩、誘導体(アルキルエステル、酸ハライド)等も酸成分として用いることができる。また、酸成分とエステルを形成する成分としては、特に限定されないが、例えば、ジオール、トリオール等のポリオール類;(ポリ)アルキレングリコール等のグリコール類;等が挙げられる。ポリオール類やグリコール類としては、上記のポリエーテルポリオールを構成する成分として例示したもの等が挙げられる。
【0053】
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、公知の方法で製造されるポリカーボネートポリオールを用いることができ、具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のアルカンジオール系ポリカーボネートジオール等が挙げられる。また、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート等のカーボネート成分やホスゲンと、脂肪族ジオール成分と、を反応させて得られるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0054】
酸基を有するポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等の酸基を有するポリオール等が挙げられる。その中でも、カルボキシル基、スルホン酸基、及びリン酸基などのリン含有基のいずれか1種以上であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
【0055】
カルボン酸基を有するポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸等が挙げられる。
【0056】
酸基を有するポリオールの酸基は塩状態であってもよい。そのような塩を形成するカチオンとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオンや有機アミンのカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。有機アミンのカチオンとしては、特に限定されないが、例えば、アンモニウムイオン、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0057】
ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミンなどの複数のヒドロキシ基を有するモノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの2官能ポリアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどの3官能以上のポリアミンなどを挙げることができる。
【0058】
水溶性ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは40~100mgKOH/gであり、より好ましくは40~90mgKOH/gであり、さらに好ましくは45~80mgKOH/gであり、よりさらにより好ましくは50~70mgKOH/gである。水溶性ウレタン樹脂の酸価は、特に限定されないが、例えば、酸基を有するポリオールの使用量によって調整することができる。また、酸価の測定方法としては、後述する実施例の方法を用いることができる。
【0059】
水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000~150000であり、より好ましくは10000~100000であり、さらに好ましくは15000~50000であり、よりさらにより好ましくは20000~30000であり、よりさらにより好ましくは20000~23000である。重量平均分子量が上記範囲内であることによりと吐出信頼性がより向上する傾向にある。水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートとポリオールの反応温度や反応時間等によって調整することができる。また、重量平均分子量の測定方法としては、後述する実施例の方法を用いることができる。
【0060】
水溶性ウレタン樹脂の数平均分子量は、好ましくは2000~7000であり、より好ましくは3500~5000である。数平均分子量が上記範囲内であることによりと吐出信頼性がより向上する傾向にある。水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートとポリオールの反応温度や反応時間等によって調整することができる。また、重量平均分子量の測定方法としては、後述する実施例の方法を用いることができる。
【0061】
水溶性ウレタン樹脂の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1~5.0質量%である。さらには、好ましくは0.1~4.0質量%であり、より好ましくは0.2~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.3~2.0質量%であり、よりさらに好ましくは0.3~1.0質量%であり、よりさらにより好ましくは0.4~0.8質量%である。水溶性ウレタン樹脂の含有量が上記範囲以上であることにより、間欠性及び目詰まり回復性により優れる傾向にあり、水溶性ウレタン樹脂の含有量が上記範囲以下であることにより、間欠性により優れる傾向にある。
【0062】
上記アセチレングリコール系界面活性剤の含有量に対する、水溶性ウレタン樹脂の含有量の比(質量比)は、好ましくは0.05~7.0であり、さらに好ましくは0.1~5.0であり、より好ましくは0.1~2.5であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、よりさらに好ましくは0.5~1.0である。上記アセチレングリコール系界面活性剤の含有量に対する、水溶性ウレタン樹脂の含有量の比が上記範囲であることにより、間欠性及び目詰まり回復性に優れる傾向にある。
【0063】
1.5.樹脂分散粒子
本実施形態のインク組成物は樹脂分散粒子を含んでも含まなくても良く、含むことが好ましい。樹脂分散粒子は、水溶性樹脂ではなく、インク中で溶媒中に樹脂粒子が分散している樹脂である。樹脂エマルジョンなどがあげられる。
樹脂分散粒子としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、又はエチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。これらの樹脂粒子は、間欠性及び目詰まり回復性の観点から、エマルジョン形態のものを用いることが好ましい。樹脂分散粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称であり、特に限定されないが、例えば、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、及び主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン系樹脂としては、公知の方法により調製した調製品であってもよく、市販品を用いてもよい。
【0065】
アクリル系樹脂とは、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称である。アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系単量体を重合させたものや、スチレン-アクリル樹脂等、(メタ)アクリル系単量体と他の単量体とを共重合させたものが挙げられる。アクリル系樹脂としては、公知の方法により調製した調製品であってもよく、市販品を用いてもよい。
【0066】
インクが樹脂分散粒子を含む場合、目詰まり回復性が優れる傾向がある。これは、樹脂分散粒子にも、アセチレングリコール系界面活性剤が水と相分離することを抑制する傾向があり、目詰まり回復性が優れると推測する。反面、インクが樹脂分散粒子を含む場合、間欠性が低下する傾向がある。これは、樹脂分散粒子自身が、インクの乾燥により、インクの増粘の原因となる傾向があり、これにより間欠性が低下すると推測する。
【0067】
樹脂分散粒子の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1.5質量%以下である。さらには、好ましくは0.1~1.4質量%であり、より好ましくは0.2~1.2質量%であり、さらに好ましくは0.3~0.8質量%であり、よりさらに好ましくは0.4~0.6質量%である。樹脂分散粒子の含有量が上記範囲以上であることにより、耐擦性や目詰まり回復性により優れる傾向にある。樹脂分散粒子の含有量が上記範囲以下であることにより、インク組成物が乾燥した際にベタインに起因する樹脂分散粒子の凝集を抑制しやすく、間欠性及び目詰まり回復性に優れる傾向にある。
【0068】
1.6.無機酸化物粒子
本実施形態のインク組成物は無機酸化物粒子を含むことが好ましい。無機酸化物粒子とは、無機酸化物の微粒子であって、分散媒に分散した状態を意味する。
【0069】
インク組成物が無機酸化物粒子を含むことにより、耐カール性が優れる傾向にある。また、インク組成物がベタインと無機酸化物粒子の両方を含む場合、耐カール性が特に優れる傾向にある。
【0070】
無機酸化物粒子としては、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化アンチモン、酸化錫、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉛、及び酸化インジウム等の金属酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ等の金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の金属炭化物;硫化亜鉛等の金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の金属のホウ酸塩や、これらの複合化物等が挙げられる。無機酸化物粒子は塩を形成しているものであってもよい。また、無機酸化物粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
その中でも、耐カール性を向上させる観点からは、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアのうちいずれか1種以上を含むことが好ましく、シリカを含むことがより好ましい。
【0072】
無機酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは20~100nmであり、さらに好ましくは30~80nmであり、よりさらに好ましくは40~60nmである。無機酸化物粒子の平均粒子径が、上記範囲であることにより、間欠性に優れる傾向にある。
【0073】
なお、無機酸化物粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。このような粒度分布測定装置としては、特に限定されないが、例えば、周波数解析法としてホモダイン光学系を採用した大塚電子株式会社製の「ゼータ電位・粒径・分子量測定システム ELSZ2000ZS」(商品名)が挙げられる。なお、上記平均粒子径とは、個数基準の平均粒子径のことを意味する。
【0074】
無機酸化物粒子の含有量は、固形分質量として、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1~8.0質量%であり、より好ましくは0.5~6.0質量%であり、さらに好ましくは1.0~5.0質量%であり、特に好ましくは2.0~4.0質量%である。無機酸化物粒子の含有量が0.1質量%以上であることにより、耐カール性が向上する傾向にあり、樹脂分散粒子の含有量が8.0質量%以下であることにより、インク組成物が乾燥した際にベタインに起因する無機酸化物粒子の凝集を抑制しやすく、間欠性及び目詰まり回復性に優れる傾向にある。
【0075】
1.7.ラクタム類
本実施形態のインク組成物はラクタム類を含むことが好ましい。また、1)本実施形態のインク組成物は、樹脂分散粒子及び無機酸化物粒子のいずれか1種以上と、ラクタム類と、を含有することがより好ましく、2)樹脂分散粒子及び無機酸化物粒子のいずれか1種以上と、ラクタム類と、を含有し、該ラクタム類が、ラクタム環を構成する炭素数が4~6のラクタム類Aを含むことがさらに好ましい。
【0076】
ラクタム類とは、分子内のカルボキシ基とアミノ基が脱水縮合することにより環を形成した構造を有する化合物を意味する。
【0077】
上述のとおり、インク組成物が無機酸化物粒子含む場合、耐カール性に優れる傾向にあるが、その一方で、インク組成物が乾燥した際に、無機酸化物粒子が凝集して吐出安定が劣る傾向がある。本実施形態のインク組成物は無機酸化物粒子に加えてラクタム類を含むことで、無機酸化物粒子の凝集を解すことができ、間欠性及び目詰まり回復性が優れる傾向にある。
【0078】
ラクタム類としては、特に限定されないが、例えば、ラクタム環を構成する炭素数が3~8である化合物が挙げられる。その中でも、ラクタム環を構成する炭素数が4~6のラクタム類Aを含むことが好ましい。ラクタム類は、ラクタム環に置換基を有していてもいなくてもよい。例えば、ラクタム環に置換基を有する誘導体などでもよい。
【0079】
ラクタム環を構成する炭素数が3の化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-アセチジノン及びその誘導体等が挙げられ、ラクタム環を構成する炭素数が4の化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-ピロリドン及びその誘導体等が挙げられ、ラクタム環を構成する炭素数が5の化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-ピペリドン及びその誘導体等が挙げられ、ラクタム環を構成する炭素数が6の化合物としては、特に限定されないが、例えば、ε-カプロラクタム及びその誘導体等が挙げられる。その中でも、吐出安定性を向上させる観点からは、ε-カプロラクタム及びその誘導体を含むことが好ましく、ε-カプロラクタムを含むことがより好ましい。
【0080】
ラクタム類は、上述の樹脂分散粒子により間欠性や目詰まり回復性が低下することを抑制する傾向がある。これはインクが乾燥して樹脂分散粒子が凝集した凝集物を、ラクタム類により解すためと推測する。
【0081】
ラクタム類Aの含有量に対する、樹脂分散粒子の含有量の比は、好ましくは0.01~1.2であり、好ましくは0.03~0.9であり、好ましくは0.05~0.6であり、好ましくは0.1~0.5である。ラクタム類Aの含有量に対する、樹脂分散粒子の含有量の比が0.01以上であることにより、間欠性が向上する傾向にあり、ラクタム類Aの含有量に対する、樹脂分散粒子の含有量の比が1.2以下であることにより、間欠性や目詰まり回復性が向上する傾向にある。
【0082】
1.8.有機溶剤
本実施形態のインク組成物は有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、一価アルコール類、ポリオール類、及びグリコールエーテル類等が挙げられる。その中でも、ポリオール類を含むことがより好ましく、標準沸点が280℃超のポリオール類を含むことがさらに好ましい。有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
一価アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、及び2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。
【0084】
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0085】
ポリアルコール類のうち、標準沸点が280℃超のポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。標準沸点が280℃以下のポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0086】
有機溶剤の含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは6.0~28質量%であり、より好ましくは8.0~24質量%であり、さらに好ましくは10~20質量%であり、よりさらに好ましくは12~16質量%である。
【0087】
1.9.アルカリ
本実施形態のインク組成物はアルカリを含んでいてもよい。アルカリとしては、特に限定されないが、例えば、有機塩基及び無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0088】
アルカリの含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.01~1.0質量%であり、より好ましくは0.01~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.03~0.3質量%であり、よりさらに好ましくは0.05~0.1質量%である。
【0089】
1.10.水
本実施形態のインク組成物に含まれる水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等が挙げられる。
【0090】
本実施形態のインクは水系のインク組成物であるが、水系のインク組成物は、インクに含む溶媒成分が、水を少なくとも主要なものとするインク組成物である。
【0091】
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは50.0質量%以上であり、より好ましくは50.0~98.0質量%である。さらには、好ましくは52.5~72.5質量%であり、より好ましくは55~70質量%であり、さらに好ましくは57.5~67.5質量%であり、よりさらに好ましくは60~65質量%である。
【0092】
1.11.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、上記の各成分の他に、従来のインク組成物に用いられ得る公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える所定の金属イオンを捕獲するためのキレート化剤その他の添加剤、及び上記以外の有機溶剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
2.記録媒体
本実施形態のインク組成物の記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性記録媒体、及び非吸収性記録媒体が挙げられ、その中でも、吸収性記録媒体が好ましい。
【0094】
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)が挙げられる。布帛もあげられる。
【0095】
低吸収性記録媒体は、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0096】
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した記録媒体等が挙げられる。
【0097】
3.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録方法は、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含み、また、必要に応じて、記録媒体を搬送する搬送工程等のその他の工程を含んでいてもよい。
【0098】
3.1.インク付着工程
インク付着工程では、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。より具体的には、インクジェットヘッド内に設けられた圧力発生手段を駆動させて、インクジェットヘッドの圧力発生室内に充填されたインク組成物をノズルから吐出させる。
【0099】
インク付着工程において用いるインクジェットヘッドとしては、ライン方式により記録を行うラインヘッドと、シリアル方式により記録を行うシリアルヘッドが挙げられる。
【0100】
ラインヘッドを用いたライン方式では、例えば、記録媒体の記録幅以上の幅を有するインクジェットヘッドを記録装置に固定する。そして、記録媒体を副走査方向(記録媒体の搬送方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0101】
シリアルヘッドを用いたシリアル方式では、例えば、記録媒体の幅方向に移動可能なキャリッジにインクジェットヘッドを搭載する。そして、キャリッジを主走査方向(記録媒体の幅方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0102】
3.2.搬送工程
本実施形態のインクジェット記録方法は搬送工程を含んでいてもよい。搬送工程では、記録装置内で所定の方向に記録媒体を搬送する。より具体的には、記録装置内に設けられた搬送ローラーや搬送ベルトを用いて、記録装置の給紙部から排紙部へと記録媒体を搬送する。その搬送過程において、インクジェットヘッドから吐出されたインク組成物が記録媒体に付着し、記録物が形成される。インク付着工程と搬送工程は同時に行ってもよいし、交互に行ってもよい。
【0103】
4.記録装置
インクジェット装置の一例として、図1に、シリアルプリンタの斜視図を示す。図1に示すように、シリアルプリンタ20は、搬送部220と、記録部230とを備えている。搬送部220は、シリアルプリンタに給送された記録媒体Fを記録部230へと搬送し、記録後の記録媒体をシリアルプリンタの外に排出する。具体的には、搬送部220は、各送りローラを有し、送られた記録媒体Fを副走査方向T1へ搬送する。
【0104】
また、記録部230は、搬送部220から送られた記録媒体Fに対してインク組成物を吐出するノズルを有するインクジェットヘッド231を搭載するキャリッジ234と、キャリッジ234を記録媒体Fの主走査方向S1、S2に移動させるキャリッジ移動機構235を備える。
【0105】
シリアルプリンタの場合には、インクジェットヘッド231として記録媒体の幅より小さい長さであるヘッドを備え、ヘッドが移動し、複数パス(マルチパス)で記録が行われる。また、シリアルプリンタでは、所定の方向に移動するキャリッジ234にヘッド231が搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体F上にインク組成物を吐出する。これにより、2パス以上(マルチパス)で記録が行われる。なお、パスを主走査ともいう。パスとパスの間には記録媒体を搬送する副走査を行う。つまり主走査と副走査を交互に行う。
【0106】
また、本実施形態のインクジェット装置は、上記シリアル方式のプリンタに限定されず、上述したライン方式のプリンタであってもよい。ライン方式のプリンタは、記録媒体の記録幅以上の長さを有するインクジェットヘッドであるラインヘッドを用いて、記録媒体に、1回の走査で記録を行うプリンタである。
【実施例0107】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0108】
1.インクジェットインク組成物の調製
表1~3に記載の組成となるように、混合物用タンクに各成分を入れ、混合攪拌し、さらにメンブランフィルターでろ過することにより実施例及び比較例のインクジェットインク組成物を得た。なお、表中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。また、表1~3における顔料、樹脂分散粒子、水溶性ウレタン樹脂、その他樹脂、及び無機酸化物粒子の含有量(質量%)については、固形分濃度を表す。
【0109】
表中の溶解性樹脂/界面活性剤の比率は、水溶性ウレタン樹脂/アセチレングリコール系界面活性剤の質量比である。樹脂分散粒子/環状アミドの比率は、樹脂分散粒子/ラクタム類の質量比である。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
表1~3に示す材料は以下の通りである。
<顔料>
・CAB-O-JET300(キャボット社製、固形分15%)
<樹脂分散粒子>
・樹脂分散粒子1:「ビニブラン2586」(信越化学工業社製、アクリル系樹脂エマルジョン)
・樹脂分散粒子2:「スーパーフレックス420」(第一工業製薬社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)
<水溶性ウレタン樹脂>
・水溶性ウレタン樹脂1:
水溶性ウレタン樹脂1は次の方法により調製した。
まず、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意した。この4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを41.7重量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)を40.1重量部、ジメチロールプロピオン酸を13.2重量部、及びメチルエチルケトン200.0重量部を入れ、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた(一次反応)。次いで、エチレンジアミンを0.6重量部、メタノールを2.0重量部、ジメチロールプロピオン酸を2.4重量部、及びメチルエチルケトン100.0重量部を添加した。FT-IRによりイソシアネート基の残存率を確認し、所望の残存率になるまで80℃で反応させて(二次反応)反応液を得た。得られた反応液を40℃まで冷却した後、イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加した。得られた液体からメチルエチルケトンを加熱減圧して留去し、水溶性ウレタン樹脂1を含む液体を得た。
得られた水溶性ウレタン樹脂1について、該水溶性ウレタン樹脂1を含む液体に塩酸を添加して水溶性ウレタン樹脂を析出させた後、40℃で1晩真空乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解して試料を調製し、水酸化カリウム-メタノール滴定液を用いた電位差滴定により、水溶性ウレタン樹脂1の酸価を測定したところ、酸価は65mgKOH/gであった。
また、得られた水溶性ウレタン樹脂1について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるウレタン樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は約21000であった。
・水溶性ウレタン樹脂2:
上記 水溶性ウレタン樹脂1の調製において、ポリプロピレングリコールの添加量を減らしたことと、上記一次反応及び二次反応におけるジメチロールプロピオン酸の添加量を増やしたこと以外は、水溶性ウレタン樹脂1と同様の調整方法により、水溶性ウレタン樹脂2を調製した。また、水溶性ウレタン樹脂1と同様の測定方法により酸価及び重量平均分子量を測定したところ、水溶性ウレタン樹脂2の酸価は75mgKOH/gであり、重量平均分子量は約21000であった。
<その他樹脂>
・水溶性アクリル系樹脂
水溶性アクリル系樹脂は次の方法により調製した。
撹拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコを用意した。この4つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル200.0重量部を入れ、窒素ガス雰囲気下で撹拌して130℃に昇温した。スチレンモノマー62.0重量部、ブチルアクリレート22.0重量部、アクリル酸16.0重量部、及び重合開始剤(t-ブチルパーオキサイド)4.0部を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で留去して水溶性アクリル系樹脂を得た。
<無機酸化物粒子>
・「カタロイド SI-45P」(日揮触媒化成株式会社製、シリカ粒子分散ゾル、平均粒子径45nm)
<ラクタム類>
・2-ピロリドン
・2-ピペリドン
・ε-カプロラクタム(CPL)
<ベタイン>
・トリメチルグリシン
・γブチロベタイン
<有機溶剤>
・グリセリン
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
・1,2-ヘキサンジオール
<アセチレングリコール系界面活性剤>
・「オルフィンE1010」:日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤。上記式(1)において、-OR3及び-OR3'が、アルキレンオキサオイド基である化合物。
・「サーフィノール104PG50」:エアプロダクツ社(Air Products Japan,Inc.)製、アセチレングリコール系界面活性剤。上記式(1)において、-OR3及び-OR3'が、-OHである化合物。
<その他界面活性剤>
・「BYK348」:ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系界面活性剤
<アルカリ>
・トリエタノールアミン
<水>
・イオン交換水
【0114】
2.評価
2.1.吐出信頼性(間欠性)
セイコーエプソン社製のインクジェット記録装置LX-10050MF(セイコーエプソン製)改造機に対して、実施例及び比較例の各インク組成物を充填した状態で、記録媒体(A4サイズのXerox P紙、富士ゼロックス社製コピー用紙、坪量64g/m2、紙厚88μm)に対して、インク付着量4mg/inch2でテストパターンを記録した。その後、インクジェットヘッドにインク組成物を充填した状態で10分間空走させた後に、上記同様の条件にてテストパターンを記録した。上記により得られた2つのテストパターンを比較して、空走前後のインク組成物の記録媒体に対する着弾位置のずれを計測し、以下の評価基準に従って評価した。その評価結果を表1~3に示す。
[評価基準]
A:着弾位置ズレが0μm以上50μm未満である。
B:着弾位置ズレが50μm以上100μm未満である。
C:着弾位置ズレが100μm以上200μm未満である。
D:着弾位置ズレが200μm以上である。
【0115】
2.2.吐出信頼性(目詰まり回復性)
セイコーエプソン社製のインクジェット記録装置LX-10050MF(セイコーエプソン製)改造機に対して、実施例及び比較例の各インク組成物を充填した状態で、全ノズルよりインクが吐出できることを確認した後、インクジェットヘッドがプリンタに備えられたキャップの位置からずれており、インクジェットヘッドにキャップがされていない状態で、40℃、相対湿度20℃の環境下で7日間放置した。
放置後、インクジェットヘッドのクリーニングとしてノズル内のインクの吸引動作を繰り返しつつ上記同様の記録を行い、全てのノズルが回復した時のクリーニング回数に基づき、以下の評価基準により、不吐出及び着弾位置ズレの発生を評価した。その評価結果を表1~3に示す。
[評価基準]
A:クリーニング3回以内で全ノズル吐出し、着弾位置ズレも発生しなかった。
B:クリーニング4~6回で全ノズル吐出し、着弾位置ズレも発生しなかった。
C:クリーニング4~6回で全ノズル吐出したが、着弾位置ズレが発生した。
D:クリーニング4~6回で吐出しないノズルがあった。
【0116】
2.3.耐擦性(耐ラインマーカー性)
上記同様の装置と記録媒体を用いて、20mm×20mmのベタパターンを記録媒体に記録した。記録直後に、記録媒体を水平に設置された平らな面に固定し、記録5分後に、文字部分をラインマーカー「OPTEX CARE」(ゼブラ株式会社)で擦った後、インクの滲み具合に基づき、耐擦性を以下の評価基準により評価した。その評価結果を表1~3に示す。
[評価基準]
A:2回擦っても色滲みが発生しない。
B:1回擦っても色滲みが発生しないが、2回擦った際に色滲みが発生する。
C:1回擦った際に色滲みが発生する。
【0117】
2.4.耐カール性
上記同様の装置と記録媒体を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下において、印刷Duty:100%でベタパターンを記録した。そして、得られた用紙の一次カール、及び二次カールに基づいて、耐カール性を以下の評価基準により評価した。その評価結果を表1~3に示す。ここで、一次カール及び二次カールの定義については以下のとおりである。
<一次カール>
印刷後フェイスダウンで放置した際の、用紙と床面が設置している地点と、用紙端の角度を測定し、最大カール角度90°以上を一次カールありとした。
<二次カール>
印刷後フェイスアップで2週間放置した際の、用紙端の床面からの浮き上がり量を測定し、浮き上がり量10mm以上二次カールありとした。
[評価基準]
A:一次カール及び二次カールのいずれも確認されない。
B:一次カール又は二次カールのいずれかが確認される。
C:一次カール及び二次カールの両方が確認される。
【0118】
3.評価結果
表1~3の評価結果から、実施例1~22はいずれも、アセチレングリコール系界面活性剤を含まない比較例1及び7、水溶性ウレタン樹脂を含まない比較例2、3、5、6、及び9、並びにベタインを含まない比較例4及び8と比較して、間欠性及び目詰まり回復性に優れることがわかった。
【0119】
なお表中には記載しなかったが、実施例1において、サーフィノール104PG50を0.7質量%とし、オルフィンE1010を0.1質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして試験したところ、目詰まり回復性がCとなったが、インクが記録媒体で浸透性が優れ、発色性がより優れ、より有用であった。
【符号の説明】
【0120】
20…シリアルプリンタ、220…搬送部、230…記録部、231…インクジェットヘッド、234…キャリッジ、235…キャリッジ移動機構、F…記録媒体、S1,S2…主走査方向、T1…副走査方向
図1