(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050093
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電解コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20240403BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20240403BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240403BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20240403BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/15
H01G9/028 E
H01G9/00 290H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156708
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000103220
【氏名又は名称】エルナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】染井 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 一樹
(57)【要約】
【課題】 静電容量を増加することができる低ESRの電解コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電解コンデンサは、導電性高分子を保持したセパレータを介し、エッチング処理された陽極箔と、陰極箔とが巻回された巻回体と、前記陽極箔及び前記陰極箔に接続された一対の引き出し電極とを有するコンデンサ素子を備えた電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する、前記コンデンサ素子内の前記導電性高分子及び液体有機物の重量の比が、2.0~20.1(wt%)であることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子を保持したセパレータを介し、陽極箔と、陰極箔とが巻回された巻回体と、前記陽極箔及び前記陰極箔に接続された一対の引き出し電極とを有するコンデンサ素子を備えた電解コンデンサにおいて、
前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する、前記コンデンサ素子内の前記導電性高分子及び液体有機物の重量の比が、2.0~20.1(wt%)であることを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、9.1(wt%)以下であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、8.6(wt%)以下であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.9(wt%)以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、3.2(wt%)以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記セパレータの厚みは、1~100(μm)であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極箔の厚みは、5~200(μm)であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
陽極箔と、陰極箔とを、セパレータを介して巻回した巻回体と、一対の引き出し電極とを有するコンデンサ素子を生成する工程と、
導電性高分子及び液体有機物を含む分散液または溶液に前記巻回体を浸漬する工程と、
前記巻回体を乾燥させる工程とを有し、
前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.0~20.1(wt%)となるように、前記巻回体を浸漬する工程において、前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、9.1(wt%)以下となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする請求項8に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、8.6(wt%)以下となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする請求項8に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.9(wt%)以上となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする請求項8に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、3.2(wt%)以上となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする請求項8に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記分散液または前記溶液の濃度は、0.1~5.0(wt%)であることを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記セパレータの厚みは、1~100(μm)であることを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記陽極箔の厚みは、5~200(μm)であることを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、陽極箔をエッチング処理により粗面化して誘電体層を形成し、その表面に導電性高分子膜を形成した巻回体を、誘電体層の修復能力を持つ電解液に浸漬することにより製造される電解コンデンサが記載されている。この種の電解コンデンサはハイブリット電解コンデンサなどと呼称され、小型かつ大容量でESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)が低く、例えば車載品用電子部品として広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
陽極箔の表面にはエッチング処理によりピットなどと呼ばれる無数の小孔が形成されている。ピットの内壁には誘電体層が形成されており、誘電体層の微小な欠陥は、ピットに充填された電解液により修復される。
【0005】
しかし、電解コンデンサの製造工程において、巻回体を導電性高分子の分散液または溶液に浸漬した際、巻回体のセパレータ内に過剰に多くの導電性高分子が含浸されると、巻回体の乾燥後、多数の導電性高分子が凝集してピットの入口を塞ぐおそれがある。ピットの入口が塞がると、ピット内に電解液が充填されないため、静電容量が低下する。
【0006】
また、ピット内に電解液が充填されない場合、誘電体層の微小な欠陥の修復能力が低下することにより誘電体層に微小な欠陥が増加することで漏れ電流が発生し、かつESRが増加するおそれもある。これに対し、導電性高分子を減少させることによりピット内への電解液の充填性を改善することができるが、導電性高分子の減少によりESRが増加するおそれがある。また、ピットの入口が拡大するようにエッチング処理を行うことによりピット内への電解液の充填性を改善することができるが、ピット数が減少するため、静電容量が低下するおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、静電容量を増加することができる低ESRの電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電解コンデンサは、導電性高分子を保持したセパレータを介し、陽極箔と、陰極箔とが巻回された巻回体と、前記陽極箔及び前記陰極箔に接続された一対の引き出し電極とを有するコンデンサ素子を備えた電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する、前記コンデンサ素子内の前記導電性高分子及び液体有機物の重量の比が、2.0~20.1(wt%)であることを特徴とする。
【0009】
上記の電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、9.1(wt%)以下であってもよい。
【0010】
上記の電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、8.6(wt%)以下であってもよい。
【0011】
上記の電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.9(wt%)以上であってもよい。
【0012】
上記の電解コンデンサにおいて、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、3.2(wt%)以上であってもよい。
【0013】
上記の電解コンデンサにおいて、前記セパレータの厚みは、1~100(μm)であってもよい。
【0014】
上記の電解コンデンサにおいて、前記陽極箔の厚みは、5~200(μm)であってもよい。
【0015】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、陽極箔と、陰極箔とを、セパレータを介して巻回した巻回体と、一対の引き出し電極とを有するコンデンサ素子を生成する工程と、導電性高分子及び液体有機物を含む分散液または溶液に前記巻回体を浸漬する工程と、前記巻回体を乾燥させる工程とを有し、前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.0~20.1(wt%)となるように、前記巻回体を浸漬する工程において、前記分散液または前記溶液の量を調整することを特徴とする。
【0016】
上記の製造方法において、前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、9.1(wt%)以下となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整してもよい。
【0017】
上記の製造方法において、前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、8.6(wt%)以下となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整してもよい。
【0018】
上記の製造方法において、前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、2.9(wt%)以上となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整してもよい。
【0019】
上記の製造方法において、前記巻回体を乾燥させる工程の後、前記一対の引き出し電極のリード部を除いた前記コンデンサ素子の重量に対する前記導電性高分子及び前記液体有機物の重量の比が、3.2(wt%)以上となるように、前記巻回体を浸漬する工程における前記分散液または前記溶液の量を調整してもよい。
【0020】
上記の製造方法において、前記分散液または前記溶液の濃度は、0.1~5.0(wt%)であってもよい。
【0021】
上記の製造方法において、前記セパレータの厚みは、1~100(μm)であってもよい。
【0022】
上記の製造方法において、前記陽極箔の厚みは、5~200(μm)であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、コンデンサ素子のESRを抑えつつ、静電容量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】アルミ電解コンデンサの一例を示す側面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。
【
図4】導電性高分子の量が適切である場合におけるエッチング層及びセパレータの境界の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】導電性高分子が過剰に多い場合におけるエッチング層及びセパレータの境界の一部を模式的に示す断面図である。
【
図7】アルミ電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態]
(アルミ電解コンデンサの構成)
図1は、アルミ電解コンデンサ1の一例を示す側面図である。
図1の紙面において、アルミ電解コンデンサ1の中心線Lを挟んだ右半分には、その内部の断面が示されている。
【0026】
アルミ電解コンデンサ1は、電解コンデンサの一例であり、具体的には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサである。アルミ電解コンデンサ1は、電子回路基板に実装され、例えばカップリング、デカップリング、及び平滑化などに用いられる。
【0027】
アルミ電解コンデンサ1は、コンデンサ素子10、ケース11、封口体12、座板13、一対の丸棒部111、及び一対のリード部110を有する。丸棒部111及びリード部110はコンデンサ素子10の引き出し電極であり、リード部110は丸棒部111の先端から延びている。なお、
図1には一方の丸棒部111のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の丸棒部111が設けられている。
【0028】
ケース11は、アルミニウムにより形成され、上部の開口が塞がった円筒形状を有する。ケース11は、コンデンサ素子10及び封口体12を覆い、アルミ電解コンデンサ1の外装として機能する。なお、ケース11の形状は円筒形状に限定されず、角筒形状であってもよい。
【0029】
封口体12は、例えばブチルゴムなどの弾性部材により形成された略円形状の部材である。封口体12は、コンデンサ素子10に隣接し、ケース11下部の開口を封口する。
【0030】
コンデンサ素子10は、後述するように、陽極箔、陰極箔、及びセパレータ(電解紙)を重ねて巻回した構成を有する。コンデンサ素子10の底部からは一対の丸棒部111が延びている。
【0031】
丸棒部111及びリード部110はアルミニウムなどから形成された棒状部材である。一対の丸棒部111は、陽極箔及び陰極箔に対し、かしめなどの接合手段によりそれぞれ接合されており、アルミ電解コンデンサ1の陽極端子及び陰極端子として機能する。各丸棒部111は、封口体12に形成された一対の貫通孔120にそれぞれ挿通されている。なお、
図1には一方の貫通孔120のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の貫通孔120が設けられている。
【0032】
リード部110は平板形状を有し、L字形状に屈曲し、その先端側の部分は座板13の板面に沿って延びている。リード部110の丸棒部111側の部分は座板13の貫通孔130に挿通されている。リード部110は、電子回路基板のリフロー工程において、電子回路基板上のパッドにはんだ付けされる。
【0033】
座板13は、樹脂などにより形成された板状部材であり、ケース11及び封口体12の下部に設けられている。座板13は、実装対象の電子回路基板に対してケース11及び封口体12を支持する。座板13には、リード部110の貫通孔130、及びリード部110の屈曲した先端部分を収容する溝部131が設けられている。溝部131は座板13の底面に沿って中央近傍から外側へ延びている。座板13の底面は、電子回路基板に対するアルミ電解コンデンサ1の実装面となるため、板状のリード部110を電子回路基板上のパッドにはんだ付けすることが可能となる。なお、本実施形態では表面実装タイプのアルミ電解コンデンサ1を挙げるが、後述する実施例は、座板13がないリードタイプにも適用することができる。
【0034】
(コンデンサ素子の構成)
図2は、コンデンサ素子10の一例を示す斜視図である。
図2において、
図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。コンデンサ素子10は、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ(電解紙)103を巻回した巻回体100と、陽極箔101及び陰極箔102に接続された一対の引き出し電極19とを有する。
【0035】
一対の引き出し電極19は巻回体100の下方に延びる。各引き出し電極19の丸棒部111は陽極箔101及び陰極箔102にそれぞれ接続されている。なお、
図2では、リード部110の屈曲前の状態が示されている。
【0036】
陽極箔101及び陰極箔102は、例えばアルミニウム、タンタル、チタン、及びニオブ等の弁金属およびその合金箔並びに蒸着箔等により形成されている。陽極箔101の表面には、電極面積が増加するようにエッチング処理が施されている。これにより、コンデンサ素子10は所定の静電容量を確保する。さらに陽極箔101の表面には極薄の酸化被膜が形成されている。このため、陽極箔101は、他の部材から絶縁されている。酸化被膜が誘電体として機能することで、コンデンサ素子10がコンデンサとして機能する。陽極箔101の厚みは、例えば5~200(μm)である。この厚み範囲によると、陽極箔101の強度と容量の発現量の間に適切なバランス関係が実現できるため、好ましい。
【0037】
一方、陰極箔102の表面には酸化被膜が形成されていない。なお、陰極箔102の表面にもエッチング処理が施されてもよい。また、陰極箔102の表面には、酸化被膜が形成されてもよいし、無機層またはカーボン層が形成されていてもよい。
【0038】
セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれた状態で巻回される。セパレータ103はセルロース、レーヨン、ガラス繊維などから選択される少なくとも1種類以上を材料とする。陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103を巻回した巻回体100は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において電解液及び導電性高分子の分散液または溶液に浸漬される。セパレータ103の厚みは、例えば1~100(μm)である。この厚み範囲によると、セパレータ103の強度、絶縁性、空隙率、及び導電性物質のバランスが良好に保たれるため、好ましい。
【0039】
電解液は、多価アルコール、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物、多価アルコールのジエーテル化合物、1価のアルコールなどを含むことができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、の少なくとも一つを含むことが望ましい。ポリアルキレングリコールとしては、平均分子量が200~1000のポリエチレングリコール、平均分子量が200~5000のポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0041】
ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどを用いることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどを溶媒として含むことができる。特に、エチレングリコール、ポリアルキレングリコール、γ-ブチロラクトン、スルホランを用いることが望ましい。
電解液は、溶質を含んでいてもよい。溶質として、酸成分、塩基成分、酸成分および塩基成分からなる塩、ニトロ化合物、フェノール化合物等を用いることができる。
【0042】
酸成分は、有機酸、無機酸、有機酸と無機酸との複合化合物を用いることができる。有機酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸などのカルボン酸などを用いることができる。無機酸としては、硼酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸エステル、リン酸ジエステルなどを用いることができる。
【0043】
有機酸と無機酸との複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸等を用いることができる。
【0044】
塩基成分は、1級~3級アミン、4級アンモニウム、4級化アミジニウム等を用いることができる。1級~3級アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリンなどを用いることができる。4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどを用いることができる。4級化アミジニウムとしては、例えば、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。
【0045】
導電性高分子は、導電性を有する高分子であれば特に限定されるものではない。例えば、導電性高分子として、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の高分子を用いる。導電性高分子として、一般的に、p-トルエンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸(PSS)等からなる群より選択される少なくとも1種の酸をドーパントとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が用いられる。
【0046】
図3は、
図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれている。陽極箔101は、両側のセパレータ103に隣接するエッチング層31、及び各エッチング層31の間のアルミニウム層30を有する。なお、本例において陰極箔102は陽極箔101よりも厚みが薄い。
【0047】
セパレータ103は導電性高分子の保持層として機能する。以下に述べるように、アルミ電解コンデンサ1の電気的特性はセパレータ103内の導電性高分子の量により影響を受ける。
【0048】
図4は、導電性高分子の量が適切である場合におけるエッチング層31及びセパレータ103の境界の一部を模式的に示す断面図である。
図4の紙面左側には、アルミ電解コンデンサ1の製造方法において、コンデンサ素子10が導電性高分子の分散液または溶液に浸漬された後、かつ、電解液に浸漬される前の状態が示されている。一方、
図4の紙面右側には、アルミ電解コンデンサ1の製造方法において、コンデンサ素子10が電解液に浸漬された後の状態が示されている。
【0049】
エッチング層31の表面には、エッチング処理により多数のピット33が形成されている。また、ピット33の内壁を含むエッチング層31の表面には、酸化被膜である誘電体層32が形成されている。誘電体層32には、点線の丸印で示されるように製造工程、及び製造後の使用で生じた微小な欠陥が存在する。
【0050】
また、コンデンサ素子10が導電性高分子の分散液または溶液に浸漬されることで、セパレータ103には導電性高分子の多数のナノ粒子4が保持されている。コンデンサ素子10を導電性高分子の分散液または溶液に浸漬した後、コンデンサ素子10を乾燥させることにより、ナノ粒子4は凝集して導電性高分子層40を形成する。
【0051】
ここで、一部のナノ粒子4はピット33内に入り、ピット33内のエッチング層31などに付着する。また、他の一部のナノ粒子4は、ピット33の入口付近に付着する。
【0052】
コンデンサ素子10が電解液(斜線部分を参照)に浸漬されると、セパレータ103内だけでなくピット33内にも電解液が満たされる。電解液は、アルミ電解コンデンサ1に電圧が印加されたとき、誘電体層32の微小な欠陥を修復する。具体的には、微小な欠陥部分の露出したアルミニウムが電解液に接触し電圧が印加された際に化成が進行し、酸化被膜が再形成される。
【0053】
図5は、導電性高分子が過剰に多い場合におけるエッチング層31及びセパレータ103の境界の一部を模式的に示す断面図である。
図5の紙面左側には、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、コンデンサ素子10が導電性高分子の分散液または溶液に浸漬された後、かつ、電解液に浸漬される前の状態が示されている。一方、
図5の紙面右側には、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、コンデンサ素子10が電解液に浸漬された後の状態が示されている。なお、
図5において
図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
本例において、コンデンサ素子10は、
図4の例より多くの導電性高分子の分散液または溶液に浸漬される。このため、セパレータ103内の導電性高分子のナノ粒子4が増加して、その密度が高くなることによって導電性高分子層40が厚くなり、一部のピット33の入口がナノ粒子4の付着により閉塞されている。このため、コンデンサ素子10を電解液に浸漬しても、電解液が導電性高分子層40を通りにくく、電解液が満たされないピット33が発生する。
【0055】
このピット33では電解液が存在せず、誘電体層32が陰極箔102と電気的に接続されないため、アルミ電解コンデンサ1の静電容量が減少する。また、誘電体層32の微小な欠陥部分に酸化被膜が形成されないために漏れ電流(LC)が発生し、アルミ電解コンデンサ1のLCが増加するおそれもある。また、ピットの入口が拡大するようにエッチング処理を行うことによりピット33内への電解液の充填性を改善することができるが、ピット33の数が減少するため、静電容量が低下するおそれがある。
【0056】
そこで、アルミ電解コンデンサ1は、リード部110を除いたコンデンサ素子10の重量に対する、コンデンサ素子10内の導電性高分子及び液体有機物の重量の比(以下、高分子重量比と表記)が2.0~20.1(wt%)となるように作製されている。ここで、液体有機物は、導電性高分子の分散液または溶液に含まれる高沸点溶媒であり、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液または溶液に浸漬して乾燥させた後にセパレータ103中に残留する高沸点溶媒である。高沸点溶媒としては、220℃以上の沸点をもつ溶媒のうち、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されない。なお、導電性高分子の分散液または溶液には水分も含まれることがあるが、浸漬後の乾燥により水分は蒸散する。
【0057】
高分子重量比は9.1(wt%)以下であることが好ましく、8.6(wt%)以下であることがより好ましい。この範囲によると、導電性高分子を含浸した後の電解液の含浸の効率を高めることができる。また、高分子重量の比は、2.9(wt%)以上であることが好ましく、3.2(wt%)以上であることがより好ましい。この範囲によると、導電性高分子層の形成によるアルミ電解コンデンサ1内の低ESRを維持することができる。
【0058】
また、高分子重量比を、リード部110を除いたコンデンサ素子10の重量により定義する理由は以下のとおりである。
【0059】
図6は、引き出し電極19の一例を示す平面図である。引き出し電極19は、扁平部112、丸棒部111、及びリード部110を有する。
【0060】
扁平部112は、リード部110に対し反対側の丸棒部111の一端に設けられた平板形状の部分であり、例えば丸棒部111の一端をプレス加工することにより形成される。扁平部112は陽極箔101及び陰極箔102に対して、かしめにより接続される部分であって、巻回体100内部に位置するため外部に露出しない。
【0061】
コンデンサ素子10の重量は、切断線Cに従ってリード部110を丸棒部111の端部から切り離した状態の数値として定義される。リード部110は製品の種類などに応じて長さが決定される。このため、リード部110をコンデンサ素子10から切り離すことにより、高分子重量比の算出においてコンデンサ素子10の重量からリード部110の長さの影響を排除することができる。
【0062】
(電解コンデンサの製造工程)
図7は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。アルミ電解コンデンサ1の製造にあたって、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103などを準備する。例えば、陽極箔101の厚みは5~200(μm)であり、セパレータの厚みは1~100(μm)である。陽極箔101及び陰極箔102の各表面には、エッチング処理によりピット33が形成されている。陽極箔101には化成処理が施され、エッチング処理された表面上に酸化被膜の誘電体層32が形成されている。また、陽極箔101及び陰極箔102には、一対の引き出し電極19がそれぞれ接続されている。引き出し電極19を接続手段としては、一例としてかしめが挙げられるが、これに限定されない。
【0063】
まず、陽極箔101、セパレータ103、陰極箔102、及びセパレータ103をこの順に積層して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体100を生成する(ステップSt1)。ステップSt1は、コンデンサ素子10を生成する工程の一例である。次に巻回体100を例えばリン酸アンモニウム水溶液に浸漬させて陽極箔101に対して所定電圧を印加しながら再化成処理を施して、酸化被膜を修復し、陽極箔101の切り口に表面に誘電体層を形成する(ステップSt2)。
【0064】
次に減圧雰囲気中で、導電性高分子の分散液に巻回体100を浸漬し、巻回体100に分散液を含浸させる(ステップSt3)。なお、導電性高分子の分散液に代えて、導電性高分子を含む溶液に巻回体100を浸漬してもよい。次に巻回体100を乾燥させる(ステップSt4)。このとき、コンデンサ素子10には、分散液または溶液に含まれていた液体有機物が残留物として保持されている。
【0065】
本工程の終了後に計測する高分子重量比が2.0~20.1(wt%)となるように、予めステップSt4の工程において導電性高分子の分散液または溶液の量は調整されている。このため、アルミ電解コンデンサ1のESRの増加を抑えつつ、静電容量を増加することができる。ここで、上記の高分子重量の比は9.1(wt%)以下であることが好ましく、8.6(wt%)以下であることがより好ましい。さらに、高分子重量比は、2.9(wt%)以上であることが好ましく、3.2(wt%)以上であることがより好ましい。また、導電性高分子の分散液または溶液の濃度は、0.1~5.0(wt%)である。
【0066】
次に減圧雰囲気中で電解液をコンデンサ素子10に含浸させる(ステップSt5)。次にコンデンサ素子10をケース11に収容して封口体12によって封口する(ステップSt6)。このとき、コンデンサ素子10から延びる引き出し電極19は封口体12の貫通孔120に挿通される。その後、アルミ電解コンデンサ1に定格電圧を印加しながらエージング処理を行なってもよい。このようにしてアルミ電解コンデンサ1の製造工程は行われる。
【実施例0067】
上記の製造方法に従ってアルミ電解コンデンサ1のサンプルNo.1~38を作製した。サンプルNo.1~19は、定格電圧及び定格静電容量がそれぞれ25V及び470μFであるアルミ電解コンデンサ1であり、サンプルNo.20~38は、定格電圧及び定格静電容量がそれぞれ63V及び56μFであるアルミ電解コンデンサ1である。サンプルNo.1~38のケースのサイズは直径10(mm)×長さ10(mm)とした。また、コンデンサ素子10の再化成処理で印加する電圧は、サンプルNo.1~19の場合、56(V)とし、サンプルNo.20~38の場合、143(V)とした。
【0068】
コンデンサ素子10を導電性高分子の分散液に浸漬する際、高分子重量比が1.7~21.5(wt%)となるように分散液の使用量を調整した。高分子重量比はサンプルNo.1~No.38ごとに異ならせた。また、コンデンサ素子10に減圧雰囲気中で所定量の電解液を含浸させた。
【0069】
(評価)
アルミ電解コンデンサ1のサンプルNo.1~38の各々の静電容量およびESRを測定した。4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数が120Hzであるときの静電容量(初期静電容量)(μF)、及び、電解コンデンサの周波数が100kHzであるときのESR(初期ESR)(mΩ)を測定した。
【0070】
【0071】
表1は、アルミ電解コンデンサ1の定格電圧及び定格静電容量がそれぞれ25V及び470μFであるサンプルNo.1~15の評価結果を示す。表1には、サンプルNo.1~15の高分子重量比(wt%)、静電容量(μF)、ESR(Ω)、及び判定結果が示されている。高分子重量比は、一対の引き出し電極19のリード部110を除いたコンデンサ素子10内の導電性高分子および有機物の重量を使用して計算した。また、判定基準について、例えば静電容量が430(μF)以上であり、かつ、ESRが0.020(Ω)以下であるサンプルをOKとし、これらの条件を満たさないサンプルはNGとした。これらの基準値は、所定の規格により決定される。
【0072】
サンプルNo.19の高分子重量比は、他のサンプルNo.2~18と比べると大きい。このため、セパレータに保持される導電性高分子の量が過剰に多く、
図5を参照して述べたように、多くのピット33が導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれることで電解液がピット33に十分に充填されず、他のサンプルNo.2~18より静電容量が低下したと考えられる。したがって、サンプルNo.19の判定結果はNGとなった。
【0073】
また、サンプルNo.1の高分子重量比は、他のサンプルNo.2~19と比べると小さい。このため、セパレータに保持される導電性高分子の量が少ないため、導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれるピット33が少なく、ピット33に十分な量の電解液が充填されることで、十分な静電容量が確保されている。しかし、導電性高分子の量が少なすぎるため、ESRが増加している。したがって、サンプルNo.1の判定結果はNGとなった。
【0074】
また、サンプルNo.2~18の高分子重量比は2.0~20.1(wt%)であり、サンプルNo.1の高分子重量比1.8(wt%)より大きく、サンプルNo.19の高分子重量比21.5(wt%)より小さい。このため、サンプルNo.19と比較すると、セパレータに保持される導電性高分子が少なくなることにより導電性高分子層40が適切な厚みとなる。これにより、導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれるピット33が少なく、ピット33に十分な量の電解液が充填されることで、十分な静電容量が確保されている。一方、サンプルNo.1と比較すると、導電性高分子の量が多いため、低ESR化が図られている。したがって、サンプルNo.2~18の判定結果はOKとなった。
【0075】
【0076】
表2は、アルミ電解コンデンサ1の定格電圧及び定格静電容量がそれぞれ63V及び56μFであるサンプルNo.20~38の評価結果を示す。表2には、サンプルNo.20~38の高分子重量比(wt%)、静電容量(μF)、ESR(Ω)、及び判定結果が示されている。高分子重量比は、一対の引き出し電極19のリード部110を除いたコンデンサ素子10内の導電性高分子および有機物の重量を使用して計算した。また、判定基準について、例えば静電容量が50(μF)以上であり、かつ、ESRが0.02(Ω)以下であるサンプルをOKとし、これらの条件を満たさないサンプルはNGとした。これらの基準値は、所定の規格により決定される。
【0077】
サンプルNo.38の高分子重量比は、他のサンプルNo.20~37と比べると大きい。このため、セパレータに保持される導電性高分子の量が過剰に多く、
図5を参照して述べたように、多くのピット33が導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれることで電解液がピット33に十分に充填されず、他のサンプルNo.20~37より静電容量が低下したと考えられる。したがって、サンプルNo.38の判定結果はNGとなった。
【0078】
また、サンプルNo.20の高分子重量比は、他のサンプルNo.21~38と比べると小さい。このため、セパレータに保持される導電性高分子の量が少ないため、導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれるピット33が少なく、ピット33に十分な量の電解液が充填されることで、十分な静電容量が確保されている。しかし、導電性高分子の量が少なすぎるため、ESRが増加している。したがって、サンプルNo.20の判定結果はNGとなった。
【0079】
また、サンプルNo.21~37の高分子重量比は2.1~19.9(wt%)であり、サンプルNo.20の高分子重量比1.7(wt%)より大きく、サンプルNo.38の高分子重量比20.7(wt%)より小さい。このため、サンプルNo.38と比較すると、セパレータに保持される導電性高分子が少なくなることにより導電性高分子層40が適切な厚みとなる。これにより、導電性高分子のナノ粒子4に入口を塞がれるピット33が少なく、ピット33に十分な量の電解液が充填されることで、十分な静電容量が確保されている。一方、サンプルNo.20と比較すると、導電性高分子の量が多いため、低ESR化が図られている。したがって、サンプルNo.21~37の判定結果はOKとなった。
【0080】
このように、実施例によると、一対の引き出し電極19のリード部110を除いたコンデンサ素子10の重量に対する高分子重量比を2.0~20.1(wt%)とすることにより、アルミ電解コンデンサ1のESRの増加を抑えつつ、静電容量を増加することができる。ESRをさらに低減するには高分子重量比は9.1(wt%)以下であることが好ましく、8.6(wt%)以下であることがより好ましい。また、高分子重量比は2.9(wt%)以上であることが好ましく、3.2(wt%)以下であることがより好ましい。なお、本実施例では導電性高分子の分散液を用いたが、導電性高分子の溶液を用いた場合も上記と同様の結果が得られた。
【0081】
(高分子重量比の算出方法)
次に高分子重量比の算出方法を述べる。アルミ電解コンデンサ1からケースを取り外してコンデンサ素子10を取り出す。コンデンサ素子10の一対の引き出し電極19のリード部110を丸棒部の根元からニッパー等で切断する。なお、切断は、
図7に示された切断線Cに従う。
【0082】
コンデンサ素子10を40℃の蒸留水に浸し、1時間放置する。このようにしてコンデンサ素子10中の電解液を蒸留水に抽出することで、電解液を取り除く。電解液を取り除いたコンデンサ素子10を100℃で1時間乾燥させることで蒸留水を蒸散させ、このときのコンデンサ素子10の全体の重量を測定する。
【0083】
乾燥後のコンデンサ素子10を分解し、陽極箔、陰極箔、2枚のセパレータ、リード部110を切断した陽極及び陰極の各引き出し電極、及び素子止めテープのそれぞれの部位に分けておく。陽極箔、陰極箔、2枚のセパレータ、陽極及び陰極の各引き出し電極、及び素子止めテープのそれぞれを熱分析装置(Tg-DTA: Thermogravimetry Differential Thermal Analysis)を用いて酸素雰囲気で熱分析を行う。このとき、導電性高分子は特定の温度でSO2等のガスとなって熱分解し、重量減少するため、コンデンサ素子10に含まれていた導電性高分子の重量を測定することができる。
【0084】
また、導電性高分子の分散液の高沸点溶媒についても特定の温度で蒸散することにより重量減少が生じるため、コンデンサ素子10に含まれていた高沸点溶媒の重量も測定することができる。このようにして得られたコンデンサ素子10の部位ごとの導電性高分子及び高沸点溶媒の各重量の合計の減少量が導電性高分子の分散液の重量となる。この導電性高分子の分散液の重量と、電解液洗浄後に乾燥したコンデンサ素子10の全体の重量との比が、高分子重量比として算出される。
【0085】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。