(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050095
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】自動ドア装置、自動ドア用センサ、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/74 20150101AFI20240403BHJP
【FI】
E05F15/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156713
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】堀本 真生
(72)【発明者】
【氏名】清政 良有
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052BA06
2E052CA06
2E052EA15
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA06
2E052GB02
(57)【要約】
【課題】検知エリア内で複数の検知対象が検知された場合に、検知された複数の検知対象を適切に区別できる自動ドア装置の技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ある態様の自動ドア装置100は、開口部周辺に複数の検知スポットからなる検知エリアを有し人又は物である検知対象を検知する起動センサ4と、検知状態の1つ又は複数の検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成する基準点生成部84と、検知エリア内において複数の検知ブロックが存在するときに検知ブロックのそれぞれの基準点に基づいて各検知ブロックの間を区画する区画線を生成する区画線生成部85と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部周辺に複数の検知スポットからなる検知エリアを有し人又は物である検知対象を検知する起動センサと、
検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成する基準点生成部と、
前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて各検知ブロックの間を区画する区画線を生成する区画線生成部と、
を備える、
自動ドア装置。
【請求項2】
前記基準点生成部は前記検知ブロックのなす図形の重心を前記基準点とする、
請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項3】
前記区画線生成部は前記検知された複数の検知対象についての前記基準点を繋ぐ線分の垂線を前記区画線として前記線分上に生成する、
請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
前記基準点生成部は単位時間毎に前記基準点を再生成し、
前記区画線生成部は前記再生成された基準点に基づいて前記区画線を再生成する、
請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項5】
前記検知エリアは複数の検知領域に区分され、
前記検知ブロックの位置の推移に関する推移情報を記憶する記憶部と、
前記推移情報に基づいて前記検知対象が前記検知エリアに進入した直後に検知状態に変化した前記検知スポットからなる前記検知ブロックの属する前記検知領域である最先検知領域と前記検知対象が前記検知エリアから退出する直前に検知状態であった前記検知スポットからなる前記検知ブロックの属する前記検知領域である最後検知領域とを特定する特定部と、
前記最先検知領域及び前記最後検知領域に基づいて前記検知対象の動線を識別する動線識別部と、
をさらに備え、
前記特定部は、前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在する場合、前記区画線を基準として一方側にある前記検知ブロックの位置の推移と他方側にある前記検知ブロックの位置の推移とを特定し、その特定した各推移に基づいて前記一方側にある検知ブロックと前記他方側にある検知ブロックについての前記最先検知領域及び前記最後検知領域をそれぞれ特定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動ドア装置。
【請求項6】
開口部周辺に複数の検知スポットからなる検知エリアを有し人又は物である検知対象を検知する検知部と、
検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成する基準点生成部と、
前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知スポットの塊のそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成する区画線生成部と、
を備える、
自動ドア用センサ。
【請求項7】
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて人又は物である検知対象を検知するステップと、
検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成するステップと、
前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成するステップと、
を備える、
自動ドア装置に用いられる方法。
【請求項8】
自動ドア装置に用いられるプログラムであって、
コンピュータに、
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて人又は物である検知対象を検知するステップと、
検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成するステップと、
前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア装置、自動ドア用センサ、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを用いて自動ドアの入退場者を計数する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ドアを開閉作動させるためのモータを有する自動ドアの入退場者計数装置が記載されている。この装置は、通行体を検出する建物の内外に設置されるセンサと、通行体がドアに挟まれることを防止するための補助センサを備え、センサの信号により駆動装置を制御する。この装置は、これらのセンサにより通行体の移動方向と通行体がドアを通過したこととを検知して、その検知結果から通行体を計数する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、内外センサ、補助センサが時系列的に通行者を検知することによって入退場者を計数可能であるが、検知エリア内で複数の検知対象が検知された場合に各検知対象を適切に区別することが難しい。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、したがって、検知エリア内で複数の検知対象が検知された場合に、検知された複数の検知対象を適切に区別できる自動ドア装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドア装置は、開口部周辺に複数の検知スポットからなる検知エリアを有し人又は物である検知対象を検知する起動センサと、検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成する基準点生成部と、前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて各検知ブロックの間を区画する区画線を生成する区画線生成部と、を備える
。
【0007】
本発明の他の態様の自動ドア用センサは、開口部周辺に複数の検知スポットからなる検知エリアを有し人又は物である検知対象を検知する検知部と、検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成する基準点生成部と、前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知スポットの塊のそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成する区画線生成部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに他の態様の自動ドア装置に用いられる方法は、開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて人又は物である検知対象を検知するステップと、検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成するステップと、前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成するステップと、を備える。
【0009】
本発明のさらに他の態様の自動ドア装置に用いられるプログラムは、コンピュータに、開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて人又は物である検知対象を検知するステップと、検知状態の1つ又は複数の前記検知スポットからなる検知ブロックの形状に基づいて基準点を生成するステップと、前記検知エリア内において複数の前記検知ブロックが存在するときに前記検知ブロックのそれぞれの前記基準点に基づいて前記検知対象の間を区画する区画線を生成するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0010】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検知エリア内で複数の検知対象が検知された場合に、検知された複数の検知対象を適切に区別できる自動ドア装置の技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の自動ドア装置を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1の自動ドア装置を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1の自動ドア装置の検知エリアの一例を示す模式図である。
【
図4】複数の検知対象の移動推移の一例を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す複数の検知対象の移動推移に対応する検知ブロックとその軌跡を示す図である。
【
図6】実施形態の自動ドア装置の処理を例示するフローチャートである。
【
図7】基準点及び区画線の生成手法を例示する図である。
【
図8】基準点及び区画線の再生成手法について説明するための図である。
【
図9】複数の検知対象の移動推移の別の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す複数の検知対象の移動推移に対応する検知ブロックの軌跡を示す図である。
【
図11】複数の検知領域に区分された検知エリアの一例を示す模式図である。
【
図12】動線パターンの第1の例を示す模式図である。
【
図13】動線パターンの第2の例を示す模式図である。
【
図14】動線パターンの第3の例を示す模式図である。
【
図15】動線パターンの第4の例を示す模式図である。
【
図16】
図16(a)は複数の検知対象が接近して横並びの状態で各検知ブロックが合流した状態を例示する図であり、
図16(b)は複数の検知対象が接近して縦並びの状態で各検知ブロックが合流した状態を例示する図である。
【
図17】検知エリア内に3つの検知対象が存在する場合において基準点及び区画線の生成手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0014】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けてもよく、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0015】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。同一または同等の要素であって、アルファベット符号が付された要素が複数ある場合に、これらを区別する場合は符号の末尾に数字1、2、3・・付し、総称するときは数字を省く。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
実施形態
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る自動ドア装置100を説明する。
図1は、実施形態の自動ドア装置100を概略的に示す正面図である。
図1に示す自動ドア装置100は、両引分け戸タイプであり、2枚の扉9が左右に自動的に開閉する。扉9は、左右一対であり、開口部23を挟んで左右に間隔を開けて固定配置されたフィックス22に沿って往復移動可能に構成され、開口部23を開閉する。一例として、自動ドア装置100は、駅、ホテル、デパート、病院、老人保健施設等の各種施設において、空間を仕切る壁等の開口を開閉するための扉を開閉動作させる装置である。
【0018】
以下、自動ドア装置100の開閉方向に沿った方向を左右方向という。
図1のように自動ドア装置100を正面視で、向かって左側を「左」、「左方」といい、向かって右側を「右」、「右方」という。また、自動ドア装置100の見込み方向に沿った方向を前後方向という。自動ドア装置100から手前側を「前」、「前方」といい、前後方向に自動ドア装置100の向こう側を「後」、「後方」という。
図1では、開口部23およびフィックス22の前側から後側にわたって検知エリア70が配置されている。また、左右方向の寸法を「左右幅」と、前後方向の寸法を「前後幅」ということがある。このような方向の表記は自動ドア装置100の姿勢を制限するものではなく、自動ドア装置100は、任意の姿勢で使用され得る。
【0019】
扉9は、左右それぞれの戸先が突き合わされるように接触して開口部23が閉ざされた全閉状態となる。扉9は、両側の戸先が互いに離れるように移動し、戸先がフィックス22の開口部23側の端部付近まで移動して停止し、開口部23が開いた全開状態となる。なお、自動ドア装置100は、両引分け戸タイプのほか、片引き戸タイプ等のものであってもよい。
【0020】
自動ドア装置100は、自動ドア用センサ10と、扉9を開閉駆動する自動ドア駆動装置90とを備える。自動ドア用センサ10は、主に起動センサ4を含む。起動センサ4は、開口部23周辺に検知エリア70を有し人又は物(以下、「検知対象」という)を検知する。
【0021】
起動センサ4は、例えば開口部23の上方の無目16に配置されており、無目16における配置位置から斜め下方に向けて赤外光を投受光し、例えば、扉9へ進入してくる検知対象を検知し、起動信号を出力する。起動センサ4の詳細については後述する。
【0022】
補助光電センサ30は、開口部23において検知対象を検知する開口検知部として機能する。補助光電センサ30は、開口部23の前後にわたる検知対象の移動を検知することにより、検知対象が開口部23を通過したかどうかを検知できる。一例として、補助光電センサ30は、光電方式による検知装置であり、フィックス22の開口部23の近傍に配置された投光器301および受光器302を有している。補助光電センサ30は、投光器301と受光器302の間に通った光線が遮られることを検知しており、扉9の軌道上に人または物体が存在していることを示す検知情報を、通信部88を介してドアコントローラ91へ送信する。尚、補助光電センサ30は、光電方式の他、無目16に取り付けられる光線反射方式または超音波方式による検知装置等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、自動ドア駆動装置90は、ドアコントローラ91と、ドアエンジン92と、を含む。ドアコントローラ91は、自動ドア用センサ10からの制御情報に基づいて扉9を開閉するようにドアエンジン92を制御する。自動ドア用センサ10からの制御情報を伝送する伝送路96に限定はないが、この例の伝送路96は、装置内バス(例えば、CAN:Controller Area Network)を含む。ドアエンジン92は、ドアコントローラ91の制御に基づいて、駆動モータ(不図示)を回転させて扉9を開閉駆動する。
【0024】
ドアコントローラ91は、自動ドア用センサ10から起動信号を受信するとドアエンジン92のモータ(不図示)を作動させて扉9が全開状態となるまで駆動する。ドアコントローラ91は、扉9が全開状態に変化した後、一定時間、全開状態を保持し、ドアエンジン92を反転方向へ作動させて扉9が全閉状態となるまで駆動する。ドアコントローラ91は、補助光電センサ30からの検知情報を扉9の閉駆動中に受信すると、ドアエンジン92による扉9の駆動方向を反転し、扉9を全開状態とする。
【0025】
図2は、本発明に係る自動ドア装置100を概略的に示すブロック図である。
図2に示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
図2に示すように、自動ドア装置100は、自動ドア用センサ10と、扉9を開閉駆動する自動ドア駆動装置90と、を備える。自動ドア用センサ10は、起動センサ4と、補助光電センサ30と、情報処理部80と、を備える。
【0027】
図3も参照して起動センサ4を説明する。
図3は、複数の検知スポット71からなる検知エリア70の一例を示す模式図である。
図3は、床面における検知エリア70を示す。起動センサ4は、複数の検知スポット71を有する検知エリア70において検知対象を検知する。この例の起動センサ4は、赤外線を検知エリア70に投光し、検知対象からの反射光を受光する赤外線反射式センサである。
【0028】
検知エリア70は、床面から起動センサ4が配置される無目16や天井に至る立体的な範囲を有する。検知エリア70は、扉9の移動方向に平行な左右方向に12列並び、扉9の移動方向に直交する前後方向に12行並ぶようにマトリックス状に配列された複数の検知スポット71で構成される。各行は、前側から後側に向かって第1行、第2行、・・・第11行、第12行が割り当てられている。各列は、左側から右側に向かってA列、B列、・・・K列、L列が割り当てられている。実施形態では、第6行と第7行との間に開口部23が設けられており、第6行と第7行との間を扉9が移動する。
【0029】
各検知スポット71には、行列の位置に対応してアドレス1A、1B、・・・、12K、12Lが割り当てられている。割り当てられた各アドレスは、各検知スポット71の位置情報に相当している。尚、各検知スポット71の形状および検知エリア70全体の形状は、円形、楕円、長方形、矩形以外の多角形であってもよい。検知スポット71は、上述のように様々な形状であってもよく、センサ方式等によっても形状が変わり、検知エリア70を複数の部分に分割した個々の領域を意味する。逆に、複数の検知スポット71によって全体として検知エリア70が形成されると考えてもよい。
【0030】
自動ドア用センサ10は、検知エリア70の各検知スポット71が検知対象を検知したときに扉9を開閉するための起動信号を生成する。
【0031】
起動センサ4は、単一の検知部(例えば、赤外線反射式センサ)によって検知エリア70全体を検知するようにしてもよいが、実施形態の起動センサ4は、第1及び第2検知部41及び42と、統合部43と、を備える。第1検知部41は、第1行~第6行に属する検知スポット71において検知対象を検知するように、無目16の前側に配置される。第2検知部42は、第7行~第12行に属する検知スポット71において検知対象を検知するように、無目16の後側に配置される。統合部43は、第1検知部41および第2検知部42の検知信号を統合し、検知エリア70全体の検知信号として情報処理部80に出力する。例えば、第1検知部41及び統合部43は室内側に設けられ、第2検知部42は室外側に設けられる。
【0032】
図2に示すように、情報処理部80は、入力部81と、開閉処理部82と、特定部83と、基準点生成部84と、区画線生成部85と、動線識別部86と、記憶部87と、通信部88と、を備える。
【0033】
入力部81は、起動センサ4から、後述する複数の検知スポット71の各検知スポット71における検知レベルを順次取得する。この例では、入力部81は、統合部43で統合された検知エリア70全体の検知信号を順次取得する。また、入力部81は、補助光電センサ30の検知結果を取得する。
【0034】
開閉処理部82は、入力部81の取得結果に基づいて、検知スポット71における検知レベルが所定の範囲以内にある場合に、検知対象が存在していると判定し、起動信号を生成する。各検知スポット71で検知対象が存在すると判定された状態を検知状態といい、検知状態でない状態を非検知状態という。
【0035】
特定部83は、検知対象が検知エリア70に進入した直後に検知状態に変化した検知スポット71からなる検知ブロック72の属する検知領域である最先検知領域と、検知対象が検知エリア70から退出する直前に検知状態であった検知スポット71からなる検知ブロック72の属する検知領域である最後検知領域と、を特定する。特定部83は、検知ブロック72の軌跡を特定する。検知ブロック72及び検知領域については後述する。
【0036】
基準点生成部84は、検知ブロック72の形状に基づいて基準点を生成する。区画線生成部85は、検知エリア70内において複数の検知ブロック72が存在するときに検知ブロック72のそれぞれの基準点に基づいて検知対象の間を区画する区画線を生成する。基準点生成部84及び区画線生成部85における処理の詳細については後述する。
【0037】
動線識別部86は、検知エリア70内での検知対象の動線を識別する。
【0038】
記憶部87は、入力情報や中間処理情報を時系列的に記憶する。特に、記憶部87は、検知ブロック72の位置の推移を示す推移情報を記憶する。推移情報は、時間の経過につれて変化する検知ブロック72の位置に関する情報であり、時系列的な検知ブロック72の位置情報等を含む。記憶部87は、本発明の各種処理を実行するためのプログラムや後述する各動線のパターンを個別に累積的にカウントしたカウント数(以下、「判断回数」という)を記憶する。通信部88は、開閉処理部82の起動信号を自動ドア駆動装置90のドアコントローラ91に送信する。
【0039】
図3は、単一の検知対象Xによって単一の検知スポット71が検知状態になる場合を示している。符号X-1は、検知対象Xが検知エリア70に進入した直後の状態を示す。特に、符号X-1は、検知対象Xが検知エリア70で最先に検知された状態ともいえる。符号X-2は、検知対象Xが検知エリア70から退出する直前の状態を示す。特に、符号X-2は、検知対象Xが検知エリア70で最後に検知された状態ともいえる。なお、
図3の斜線のハッチング部は、検知ブロック72を示している。以下の図でも同様である。
【0040】
検知エリア70の複数の検知スポット71のうち検知状態の1以上の検知スポット71からなるブロックを検知ブロック72という。検知エリア70内で検知対象が移動することにより、検知ブロック72は、仮想的に、検知エリア70に移動の軌跡を形成する。
【0041】
単一の検知対象Xであっても複数の検知スポット71が検知状態になることがあり、この場合、検知対象Xは、検知状態の複数の検知スポット71からなる検知ブロック72をなす。2以上の検知スポット71からなる検知ブロック72は、互いに所定の距離(以下「閾値」という)よりも接近して位置する検知スポット71の集合である。この例の検知ブロック72は、互いに隣接している2以上の検知スポット71で構成される。ここでの閾値は単一の検知スポット71の幅に相当する距離である。
【0042】
図4は、複数の検知対象X及びYの移動推移の一例を示す模式図である。
図4において、符号X-1、Y-1は、検知対象X及びYが検知エリア70に進入した直後の状態を示す。特に、符号X-1、Y-1は、検知対象X及びYが検知エリア70で最先に検知された状態ともいえる。符号X-2、Y-2は、検知対象X及びYが開口部23の前側近傍に進んだ状態を示し、符号X-3、Y-3は、検知対象X及びYが開口部23の後側近傍に進んだ状態を示す。符号X-4、Y-4は、検知対象X及びYが検知エリア70から退出する直前の状態を示す。特に、符号X-4、Y-4は、検知対象X及びYが検知エリア70で最後に検知された状態ともいえる。
【0043】
図5は、
図4に示す複数の検知対象X及びYの移動推移に対応する検知ブロック72とその軌跡73、74を示す図である。
【0044】
図5に示すように、検知対象X及びYがほぼ同時期に開口部23を通過する場合、開口部23の近傍で検知対象X及びYが上記閾値よりも接近してしまう場合がある。その結果、検知対象X及びYによってそれぞれ検知状態になった検知スポット71からなる2つの検知ブロック72X及び72Yが互いに隣接して2つの検知ブロック72X及び72Yの境界を判別することが難しくなる。つまり、この範囲では、2つの検知ブロック72X及び72Yは互いに結合されて一体化される。このように、複数の検知ブロック72が閾値よりも接近して一体化されることを、複数の検知ブロック72が合流するといい、複数の検知ブロック72が合流した状態を合流状態という。
【0045】
一方、複数の検知ブロック72が合流した後、検知ブロック72X及び72Yが閾値以上に離れると、境界を判別可能になる。このように、合流状態の複数の検知ブロック72が閾値以上に離れることを複数の検知ブロック72が分岐するという。
【0046】
複数の検知ブロック72が合流した後に分岐した場合、分岐後の複数の検知ブロック72と、検知対象X及びYとの対応関係を判別することが困難である。換言すると、合流及び分岐があると、合流前の複数の検知ブロック72と、分岐後の複数の検知ブロック72とが断絶して、これらの対応関係が不明となり、これらを連続的に扱うことが難しくなる。
【0047】
上記を踏まえて、
図6を参照して、本実施形態の自動ドア装置100の処理S100を説明する。
図6は、本実施形態の自動ドア装置100の処理S100を示すフローチャートである。以下の各ステップS101~S109では、起動センサ4は検知データを情報処理部80に順次出力し続けているものとする。
【0048】
ステップS101で、特定部83は、検知スポット71が非検知状態から検知状態に変化したかどうかを判定する。検知スポット71が非検知状態のまま変化しない場合(ステップS101のN)、処理S100はステップS101の先頭に戻り、ステップS101を繰り返す。検知スポット71が検知状態に変化した場合(ステップS101のY)、処理S100はステップS102に進む。
【0049】
ステップS102で、特定部83は、検知エリア70において検知ブロック72が複数存在するかどうかを判定する。このステップで、例えば、特定部83は、検知エリア70において閾値以上に離れた複数の検知スポット71が存在する場合に、複数の検知ブロック72が存在すると判断できる。この場合の閾値は単一の検知スポット71の幅に相当する距離である。つまり、特定部83は、複数の検知ブロック72の間に非検知状態の検知スポット71が介在する場合に、複数の検知ブロック72が存在すると判断できる。複数の検知ブロック72が存在する場合(ステップS102のY)、処理S100はステップS103に進む。複数の検知ブロック72が存在しない場合(ステップS102のN)、処理S100はステップS105に進む。
【0050】
ステップS103で、基準点生成部84は、各検知ブロック72X及び72Yについて各基準点PX及びPYを生成する。
図7は、基準点Pの生成手法を例示する図である。
図7に示すように、本実施形態の基準点生成部84は、各検知ブロック72X及び72Yのなす図形(
図7の例では長方形)の重心を各検知ブロック72X及び72Yについての基準点PX及びPYとする。その後、処理S100はステップS104に進む。
【0051】
ステップS104で、区画線生成部85は、各基準点に基づいて検知対象X及びYの間を区画する区画線Tを生成する。
図7は、区画線Tの生成方法も例示する。
図7に示すように、本実施形態の区画線生成部85は、検知された検知対象X及びYについての各基準点PX及びPYを繋ぐ線分Sの垂線を区画線Tとして線分S上に生成する。
図7の例では、垂線Tは線分Sの垂直二等分線である。その後、処理S100はステップS105に進む。
【0052】
ステップS105で、記憶部87は、推移情報を記憶する。例えば、記憶部87は、そのときの各検知ブロック72X及び72Yの位置を推移情報として記憶する。記憶部87は、ステップS104を経由して区画線Tが生成された場合には、各検知ブロック72X及び72Yの位置とともに区画線Tの位置も記憶する。
【0053】
ステップS106で、特定部83は、全ての検知スポット71が非検知状態に変化したかどうかを判定する。検知状態の検知スポット71がある場合(ステップS106のN)、処理S100はステップS102の先頭に戻り、全ての検知スポット71が検知状態に変化するまでステップS102~S105を繰り返す。したがって、基準点生成部84は単位時間毎(例えば、数ms毎)に基準点を再生成し、区画線生成部85は再生成された基準点に基づいて区画線を再生成することになる。
【0054】
ステップS106で検知状態の検知スポット71がある場合(ステップS106のN)に繰り返されるステップS102~S105における基準点P及び区画線Tの再生成手法について説明する。
図8は、基準点P及び区画線Tの再生成手法について説明するための図である。ステップS102で、特定部83は、区画線Tが既に生成されている場合には、複数の検知ブロック72が存在すると判断できる。複数の検知ブロック72が存在する場合(ステップS102のY)、ステップS103で、基準点生成部84は、ステップS102~S105についての1つ前の処理ループで生成された区画線T1に基づいて各検知ブロック72X及び72Yについての新たな基準点PX2及びPY2を再生成する。例えば、基準点生成部84は、区画線T1を基準として一方側にある検知ブロック72によって検知ブロック72Xについての新たな基準点PX2を再生成し、区画線T1を基準として他方側にある検知ブロック72によって検知ブロック72Yについての基準点PY2を再生成する。その後、ステップS104で、区画線生成部85は、再生成した基準点PX2及びPY2に基づいて、新たな区画線T2を再生成する。全ての検知スポット71が非検知状態に変化するまで区画線Tの再生成を繰り返して、推移情報として検知ブロック72の位置とともにその対応する区画線Tの位置を記憶することにより、検知対象X及びYが検知エリア70に進入してから退出するまでの間、検知対象X及びYを適切に区別することが可能となる。
【0055】
全ての検知スポット71が非検知状態に変化した場合(ステップS106のY)、処理S100はステップS107に進む。
【0056】
ステップS107で、特定部83は、推移情報に基づいて検知ブロック72の軌跡を特定する。このステップS107での検知ブロック72の軌跡の特定手法について、
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、複数の検知対象X及びYの移動推移の別の一例を示す図である。
図10は、
図9に示す複数の検知対象X及びYの移動推移に対応する検知ブロック72の軌跡73、74を示す図である。
【0057】
図9、
図10の例では、検知エリア70に進入した当初は互いに離れていた複数の検知対象X及びYが接近した状態で開口部23を通過した後、別々の方向に進んでいる。そのため、各検知ブロック72は、開口部23を通過する前に合流して一体化し、開口部23を通過後に分岐している。この場合、合流前の複数の検知ブロック72と、分岐後の複数の検知ブロック72との対応関係の判別が難しい。
【0058】
本実施形態の特定部83は、検知エリア70において複数の検知対象X及びYが存在する場合、推移情報において得られた検知ブロック72について、区画線Tを基準として一方側にある検知ブロック72を検知対象Xについての検知ブロック72Xとして設定し、他方側にある検知ブロック72を検知対象Yについての検知ブロック72Yとして設定する。特定部83は、この処理を単位時間毎に実行することにより、検知ブロック72X及び72Yを区別しながら検知ブロック72X及び72Yの位置の推移を適切に求め、それぞれの位置の推移に基づいて検知ブロック72X及び72Yの軌跡を特定する。なお、
図9の例では、簡略化のため、検知対象X及びYについて、それぞれ4つの状態X-1~X-4及びY-1~Y-4で区画線Tによって検知ブロック72X及び72Yを区画する処理を実行しているが、実際にはより多くの状態でこの区画処理を実行することが好ましい。なお、特定部83は、検知エリア70において複数の検知対象X及びYが存在しない場合には、得られた検知ブロック72の位置の推移に基づいて検知ブロック72の軌跡を特定する。その後、処理S100はステップS108に進む。
【0059】
ステップS108で、特定部83は、検知ブロック72の軌跡73、74に基づいて検知ブロック72の最先検知領域及び最後検知領域を特定する。検知エリア70内に複数の検知対象が存在する場合、特定部83は、軌跡73、74毎に最先検知領域及び最後検知領域を特定する。検知エリア70内に単数の検知対象が存在する場合、特定部83は、その単数の検知対象についての軌跡に基づいて最先検知領域及び最後検知領域を特定する。
【0060】
図11を用いて、検知領域について説明する。
図11は、検知エリア70内の複数の検知領域の一例を示す。
図11に示すように、検知エリア70は複数の検知領域に区分される。以下の説明では、自動ドア装置100の前側を室内側とし、自動ドア装置100の後側を室外側とする。
図11の例では、検知エリア70は、前側(室内側)の第1行から第6行までが、検知領域Din、検知領域Pin、検知領域Ain、検知領域Linおよび検知領域Rinに区分され、後側(室外側)の第7行から第12行までが、検知領域Dout、検知領域Pout、検知領域Aout、検知領域Loutおよび検知領域Routに区分されている。検知領域の数は、2以上であればよい。
【0061】
検知領域Dinは、アドレス6A~6Lの検知スポット71およびアドレス5D~5Iの検知スポット71からなる。検知領域Pinは、アドレス3D~4Iの検知スポット71からなる。検知領域Ainは、アドレス1D~2Iの検知スポット71からなる。検知領域Linは、アドレス1C~5Aの検知スポット71からなる。検知領域Rinは、アドレス1L~5Jの検知スポット71からなる。
【0062】
検知領域Doutは、アドレス7A~7Lの検知スポット71およびアドレス8D~8Iの検知スポット71からなる。検知領域Poutは、アドレス9D~10Iの検知スポット71からなる。検知領域Aoutは、アドレス11D~12Iの検知スポット71からなる。検知領域Loutは、アドレス8A~12Cの検知スポット71からなる。検知領域Routは、アドレス8J~12Lの検知スポット71からなる。
【0063】
図10及び
図11を用いて、最先検知領域及び最後検知領域について説明する。
図10の例では、軌跡73によると、検知対象Xの検知ブロック72Xの始点はアドレス1D及び1Eの検知ブロック72であるため、検知ブロック72Xの最先検知領域は検知領域Ainである。検知対象Xの検知ブロック72Xの終点はアドレス12D及び12Eの検知ブロック72であるため、検知ブロック72Xの最後検知領域は検知領域Aoutである。軌跡74によると、検知対象Yの検知ブロック72Yの始点はアドレス1J及び1Kの検知ブロック72であるため、検知ブロック72Xの最先検知領域は検知領域Rinである。検知対象Yの検知ブロック72Yの終点はアドレス12H及び12Iの検知ブロック72であるため、検知ブロック72Yの最後検知領域は検知領域Aoutである。
【0064】
なお、
図10の例では、検知ブロック72X及び72Yの始点及び終点のそれぞれが、複数の検知スポット71からなる検知ブロック72である。このような場合に、特定部83は、所定の条件に基づいて、始点および終点の少なくとも一方を単一の検知スポット71からなる検知ブロック72と決定してもよい。例えば、特定部83は、アドレス1D及び1Eからなる検知ブロック72を分割して、分割した複数の検知ブロック72のうち他の検知ブロック72(アドレス1J及び1K)から遠い方の検知ブロック72を始点と決定し、アドレス1J及び1Kからなる検知ブロック72を分割して、分割した複数の検知ブロック72のうち他の検知ブロック72(アドレス1D及び1E)から遠い方の検知ブロック72を始点と決定してもよい。このプロセスは、複数の検知スポット71からなる終点を単一の検知スポット71からなる検知ブロック72と決定する場合にも適用できる。
【0065】
ステップS108の後、処理S100はステップS109に進む。
【0066】
ステップS109で、動線識別部86は、各検知対象についての最先検知領域と最後検知領域とに基づいて検知対象の動線のパターンを識別する。以下、
図12~
図15を参照して、ステップS109における動線のパターンの識別手法について説明する。
【0067】
図12は、動線パターンの第1の例を示す模式図である。動線Mの始点Sを含む最先検知領域が検知領域Lin、Lout、Ain、Aout、Rin、Routのいずれかであり、動線Mの終点Qを含む最後検知領域が最先検知領域と同じ検知領域である場合、動線識別部86は、動線パターンをUターンと判断する。
図14は、Uターンと判断される動線パターンの一例を示す。
【0068】
図13は、動線パターンの第2の例を示す模式図である。動線Mの始点Sを含む最先検知領域が検知領域Linで動線Mの終点Qを含む最後検知領域が検知領域Rinの場合、最先検知領域が検知領域Rinで最後検知領域が検知領域Linである場合、最先検知領域が検知領域Loutで最後検知領域が検知領域Routの場合および最先検知領域が検知領域Routで最後検知領域が検知領域Loutである場合、動線識別部86は、動線パターンを横切りと判断する。
図13は、横切りと判断される動線パターンの一例を示す。
【0069】
図14は、動線パターンの第3の例を示す模式図である。動線Mの始点Sを含む最先検知領域が検知領域Lin、Lout、Rin、Routのいずれかであり、動線Mの終点Qを含む最後検知領域が検知領域Ain、Aoutのいずれかである場合、動線識別部86は、動線パターンを90°ターンと判断する。最先検知領域が検知領域Ain、Aoutのいずれかであり、最後検知領域が検知領域Lin、Lout、Rin、Routのいずれかである場合も、動線識別部86は、動線パターンを90°ターンと判断する。
図14は、90°ターンと判断される動線パターンの一例を示す。
【0070】
図15は、動線パターンの第4の例を示す模式図である。動線Mの始点Sを含む最先検知領域が検知領域Lin、Ain、Rinのいずれかであり、動線Mの終点Qを含む最後検知領域が検知領域Lout、Aout、Routのいずれかである場合、動線識別部86は、動線パターンを退室と判断する。最先検知領域が検知領域Lout、Aout、Routのいずれかであり、最後検知領域が検知領域Lin、Ain、Rinのいずれかである場合、動線識別部86は、動線パターンを入室と判断する。
図15は、退室または入室と判断される動線パターンの一例を示す。
【0071】
次に、入室および退室の動線形態を説明する。退室の場合であって、最先検知領域が検知領域Linである場合は左方から退室、最先検知領域が検知領域Rinである場合は右方から退室、最先検知領域が検知領域Ainである場合は正面から退室と、退室の動線形態を区分けできる。また、入室の場合であって、最後検知領域が検知領域Linである場合は入室後左方へ進む、最後検知領域が検知領域Rinである場合は入室後右方へ進む、最後検知領域が検知領域Ainである場合は入室後正面へ進むなど、入室の動線形態を区分けできる。
【0072】
また、入室の場合であって、最先検知領域が検知領域Loutである場合は左方から入室、最先検知領域が検知領域Routである場合は右方から入室、最先検知領域が検知領域Aoutである場合は正面から入室と、入室の動線形態を区分けできる。また、退室の場合であって、最後検知領域が検知領域Loutである場合は、退室後左方へ進む、最後検知領域が検知領域Routである場合は退室後右方へ進む、最後検知領域が検知領域Aoutである場合は退室後正面へ進むなど、退室の動線形態を区分けできる。
【0073】
このように、最先検知領域と最後検知領域との組合せにより、入室および退室の詳細な動線形態を把握することが可能になる。
【0074】
ステップS109の後、処理S100はステップS110に進む。
【0075】
ステップS110で、記憶部87は、各動線パターンを累積的にカウントした判断回数を記憶する。自動ドア装置100の管理者は、記憶部87から各動線パターンに関する累積判断回数を任意に取得できる。記憶部87は、所定のタイミングに達したとき、または自動ドア装置100の管理者が所定の操作を行ったとき、各累積判断回数をリセットすることができる。ステップS110の後、処理S100はステップS101の先頭に戻り、ステップS101~S110のループを繰り返す。上述の各ステップはあくまでも一例であって、各種の変形が可能である。
【0076】
以上のように、実施形態では、基準点生成部84は検知ブロック72の形状に基づいて基準点を生成し、区画線生成部85は検知エリア70内において複数の検知ブロック72が存在するときに検知ブロック72のそれぞれの基準点に基づいて各検知ブロック72の間を区画する区画線を生成する。本構成によると、区画線を用いることにより、検知エリア70内において複数の検知ブロック72が存在する場合であっても複数の検知対象を適切に区別することが可能となる。特に、複数の検知対象X及びYが接近して横並びの状態で各検知ブロック72が合流した場合や(
図16(a)参照)、複数の検知対象X及びYが接近して縦並びの状態で各検知ブロック72が合流した場合であっても(
図16(b)参照)、各検知対象に対応する検知ブロック72間に適切に区画線が配置されるため、複数の検知対象を適切に区別することができる。
【0077】
実施形態では、基準点生成部84は、検知ブロック72のなす図形の重心を基準点Pとする。本構成によると、区画線Tをより適切に生成することができるため、複数の検知対象をより適切に区別することが可能となる。
【0078】
実施形態では、区画線生成部85は、検知された複数の検知対象についての基準点Pを繋ぐ線分Sの垂直二等分線を区画線Tとして線分S上に生成する。本構成によると、区画線Tをより適切に生成することができるため、複数の検知対象をより適切に区別することが可能となる。
【0079】
実施形態では、基準点生成部84は単位時間毎に基準点を再生成し、区画線生成部85は再生成された基準点に基づいて区画線を再生成する。本構成によると、複数の検知対象が移動したとしても、その位置毎に区画線Tを適切に生成して複数の検知対象を適切に区別することが可能となる。
【0080】
実施形態では、特定部83は、推移情報に基づいて最先検知領域と最後検知領域とを特定し、動線識別部86は最先検知領域及び最後検知領域に基づいて検知対象の動線を識別する。特定部83は、検知エリア70内において複数の検知ブロック72が存在する場合、区画線を基準として一方側にある検知ブロック72の位置の推移と他方側にある検知ブロック72の位置の推移とを特定し、その特定した各推移に基づいて一方側にある検知ブロック72と他方側にある検知ブロック72についての最先検知領域及び最後検知領域をそれぞれ特定する。本構成によると、複数の検知対象を適切に区別できるため、複数の検知対象の動線を適切に識別することが可能となる。
【0081】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0082】
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0083】
実施形態の説明では、検知エリア70が、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を有する例を示したが、検知エリア70は、開口部23の一方側に設定された検知スポット71のみを有してもよい。
【0084】
実施形態の説明では、複数の検知部41、42が両方とも無目16に設けられる例を示したが、複数の検知部の41、42の一部または全部は、壁や天井など無目16以外に設けられてもよい。
【0085】
実施形態の説明では、起動センサ4が、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を複数の検知部41、42で検知する例を示したが、起動センサ4は、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を単一の検知部によって検知する構成であってもよい。
【0086】
実施形態の説明では、検知エリア70が単一の開口部23に対して設けられる例を示したが、検知エリア70は、複数の開口部23に対して設けられてもよい。例えば、検知エリア70の一部または全部は、それぞれ自動ドアが設置された複数の開口部23の間に設けられてもよい。
【0087】
実施形態の説明では、統合部43が起動センサ4に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、統合部43は、情報処理部80に設けられてもよい。
【0088】
実施形態の説明では、自動ドア用センサが本発明の処理を実行したが、これに限定されず、自動ドア装置に含まれる装置(自動ドア駆動装置など)において本発明の処理が実行されてもよい。
【0089】
実施形態の説明では、検知エリア70内に2つの検知対象が存在する場合を示したが、検知エリア70内に3つ以上の検知対象が存在する場合であっても本発明の原理を適用可能である。例えば、
図17を参照して、検知エリア70内に3つの検知対象X、Y、Zが存在する場合について説明する。
図17に示すように、基準点生成部84は検知対象X、Y、Zの検知ブロック72X、72Y、72Zのそれぞれについて基準点PX、PY、PZを生成し、区画線生成部85は検知対象X及びY、検知対象Y及びZ、検知対象Z及びXの間で区画線Tをそれぞれ生成する。これにより、検知対象X、Y、Zを適切に区別することが可能となる。
【0090】
実施形態の説明では、軌跡に基づいて最先検知領域及び最後検知領域が特定されたが、これに限定されず、検知対象が検知エリア70に進入した直後の検知ブロック72と検知対象が検知エリア70から退出する直前の検知ブロック72に少なくとも基づいて、最先検知領域及び最後検知領域が特定されてもよい。
【0091】
実施形態の説明では、基準点生成部84は、各検知ブロック72X及び72Yのなす図形の重心を基準点Pとしたが、これに限定されず、例えば国際公開第2012/073821号に記載の手法を用いて特定された重心を基準点としてもよい。また、基準点生成部84は、各検知ブロック72X及び72Yのなす図形の任意の点を基準点Pとしてもよい。
【0092】
実施形態の説明では、垂線Tは、線分Sの垂直二等分線であるが、これに限定されず、例えば、線分S上のいずれの位置に区画線Tとして生成されてもよい。また、区画線Tは、線分Sの垂線に限定されず、線分Sに対して少なくとも傾斜してればよい。
【0093】
実施形態の説明では、検知エリア70内に複数の検知ブロック72が存在すると判断された場合に基準点P及び区画線Tを生成したが、これに限定されず、例えば、複数の検知ブロック72間の距離が所定値以下になることに応答して基準点P及び区画線Tが生成されてもよい。
【0094】
実施形態の説明では、検知エリア70の検知領域の一例を
図11に示したが、検知エリア70の検知領域は、これに限定されず、種々の変形が可能である。
【0095】
実施形態の説明では、起動センサ4が赤外線反射式センサである例を示したが、これに限定されない。例えば、起動センサは、電波式センサや、超音波式センサ、レーザスキャン式センサ、画像式センサであってもよい。
【0096】
実施形態の説明では、検知エリア70の全ての検知スポット71が検知対象を検知したときに扉9を開閉するための起動信号を生成する起動スポットである例を示したが、これに限定されない。検知エリア70の検知スポット71の一部は、起動信号を生成しない無効スポットに設定されてもよい。
【0097】
実施形態の説明では、動線識別部86が判断する動線パターンの一例を
図12~
図15に示したが、動線識別部86は、
図12~
図15の動線パターンとは異なる動線パターンを判断可能に構成されてもよい。
【0098】
実施形態の説明では、伝送路96が装置内バスを含む例を示したが、これに限定されない。伝送路として、有線または無線による公知の情報伝達手段を採用できる。
【0099】
実施形態の説明では、補助光電センサ30の検知情報が情報処理部80を介してドアコントローラ91へ送信される例を示したが、これに限定されない。補助光電センサの検知情報は直接ドアコントローラ91へ送信されてもよいし、他の経路によってドアコントローラ91へ送信されてもよい。
【0100】
上述の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0101】
上述した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0102】
4 起動センサ、 10 自動ドア用センサ、 23 開口部、 41 第1検知部、 42 第2検知部、 50 動線識別装置、 71 検知スポット、 72 検知ブロック、 80 情報処理部、 81 入力部、 82 開閉処理部、 83 特定部、 84 基準点生成部、 85 区画線生成部、 86 動線識別部、 87 記憶部、 88 通信部、 100 自動ドア装置。