(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050096
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】計測器付補修弁及びそれを備えた遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
E03B 7/07 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E03B7/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156716
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】505271150
【氏名又は名称】千代田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 昌志
(57)【要約】
【課題】計測器付補修弁において、地下式消火栓、空気弁等に出向かなくても遠隔地で残留塩素等の液体の状態を測定できるようにする。
【解決手段】 上水道配水管1に接続可能な下部フランジ11、上部フランジ12及び弁体13を有する補修弁本体10と、補修弁本体10を介して上水道配水管1からの液体を取り出す取出管17と、取出管17に接続され、上水道配水管1からの液体の状態を測定する計測器32と、送受信機34と、計測器32の測定情報を受信して送受信機34を介して送信するコントローラ33とを設け、送受信機34を介して計測器32による測定値を随時測定可能に構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管に接続可能な下部フランジ、上部フランジ及び弁体を有する補修弁本体と、
前記補修弁本体を介して前記配水管からの液体を取り出す取出管と、
前記取出管に接続され、前記配水管からの液体の状態を測定する計測器と、
送受信機と、
前記計測器の測定情報を受信して前記送受信機を介して送信するコントローラとを備え、
前記送受信機を介して前記計測器による測定値を随時測定可能に構成されている
ことを特徴とする計測器付補修弁。
【請求項2】
前記上部フランジには、別の弁が接続され、
少なくとも前記計測器及び前記コントローラは、前記別の弁と同じ地下ピット内又は前記地下ピットの外の計測器ボックスに収容されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測器付補修弁。
【請求項3】
前記上部フランジには、少なくとも前記計測器が収容された計測器ボックスが接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測器付補修弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の計測器付補修弁において、
前記配水管は、上水道配水管であり、
前記計測器は、前記上水道配水管の内部を流れる水の残留塩素、濁度、流量又は流速を測るように構成されている
ことを特徴とする計測器付補修弁。
【請求項5】
請求項1に記載の計測器付補修弁と、
前記送受信機と通信可能な情報端末と、
前記情報端末にインストールされた前記計測器からの情報をリアルタイムで処理するプログラムとを備えている
ことを特徴とする計測器付補修弁を備えた遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留塩素計、濃度計などの計測器を有する計測器付補修弁及びそれを備えた遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道法第22条には、「水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、水道施設の管理及び運営に関し、消毒その他衛生上必要な措置を講じなければならない」と定められ、水道法施行規則第17条第3号には、「給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/l(結合残留塩素の場合は、0.4mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること」と定められている。
【0003】
一方、上水道配水管に接続可能な下部フランジと、挿入式計測器が接続可能な上部フランジと、地下式消火栓又は空気弁が接続可能な側部フランジとを備え、地下式消火栓又は空気弁が側部フランジに接続されて挿入式計測器の測定部が上水道配水管に挿入された状態で、下部フランジで上水道配水管に接続され、不断水で測定可能に構成されている挿入式計測器付補修弁は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水道事業者は、所定の間隔で水道管内の残留塩素等を図る必要があり、特に山間地域などは、担当者が地下式消火栓、空気弁等に出向いて水道水を取り出して残留塩素等を試薬等により確認しなければならず、大変な作業となっていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地下式消火栓、空気弁等に出向かなくても計測値から離れた遠隔地で残留塩素等の液体の状態を測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、補修弁に遠隔地でも計測可能な計測器を設けるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明の計測器付補修弁は、
配水管に接続可能な下部フランジ、上部フランジ及び弁体を有する補修弁本体と、
前記補修弁本体を介して前記配水管からの液体を取り出す取出管と、
前記取出管に接続され、前記配水管からの液体の状態を測定する計測器と、
送受信機と、
前記計測器の測定情報を受信して前記送受信機を介して送信するコントローラとを備え、
前記送受信機を介して前記計測器による測定値を随時測定可能に構成されている。
【0009】
上記の構成によると、計測器が、補修弁本体を介して取出管から取り出した液体の状態を計測し、コントローラに送信し、コントローラがその情報を、送受信機を介して発信するので、遠隔地から配水管の液体の情報を随時測定できる。このため、従来のように、計測の度に消火栓等のある現場に出向いて計測して記録する必要はなく、計測すべき場所から離れた遠隔地で、自動で配水管の液体の情報を入手して記録することも可能となる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
前記上部フランジには、別の弁が接続され、
少なくとも前記計測器及び前記コントローラは、前記別の弁と同じ地下ピット内又は前記地下ピットの外の計測器ボックスに収容されている。
【0011】
上記の構成によると、補修弁本体に消火栓、空気弁などが接続されることで、地下消火栓、空気弁等が収容される地下ピット内に計測器付補修弁を収容できる。計測器及びコントローラは、計測器ボックスに収容すればよく、送受信機は、計測器ボックスに収容してもよいし、通信しやすい場所に設けてもよい。計測器ボックス自体は、地下ピット内に設けてもよいし、地下ピット外に設けてもよい。
【0012】
第3の発明では、第1の発明において、
前記上部フランジには、少なくとも前記計測器が収容された計測器ボックスが接続されている。
【0013】
上記の構成によると、補修弁本体に計測器ボックスを接続することで、簡易な構成で遠隔監視可能な計測器付補修弁が得られる。また、例えば、補修弁本体に側部フランジがある場合には、側部フランジに消火栓、空気弁等をつないだままでも計測器ボックスを接続できる。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
前記配水管は、上水道配水管であり、
前記計測器は、前記上水道配水管の内部を流れる水の残留塩素、濁度、流量又は流速を測るように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、水道法などにより特に要件の厳しい上水道の品質を計測器付補修弁によって遠隔監視できる。このため、計測現場にわざわざ出向く必要がなくなる。
【0016】
第5の発明の計測器付補修弁を備えた遠隔監視システムは、
第1から第4のいずれか1つの発明の計測器付補修弁と、
前記送受信機と通信可能な情報端末と、
前記情報端末にインストールされた前記計測器からの情報をリアルタイムで処理するプログラムとを備えている。
【0017】
上記の構成によると、情報端末によってリアルタイムに遠隔地から配水管を流れる液体の状態を計測でき、処理できるので、非常に効率的に配水管を流れる液体の監視を行える。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、地下式消火栓、空気弁等に出向かなくても遠隔地で残留塩素等の液体の状態を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る計測器付補修弁を備えた遠隔監視システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る計測器付補修弁を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る計測器付補修弁を備えた遠隔監視システムの概要を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る計測器付補修弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1及び
図2は本発明の実施形態1の計測器付補修弁5を示し、この計測器付補修弁5は、配水管としての上水道配水管1に接続可能な下部フランジ11、上部フランジ12及び弁体13を有する補修弁本体10を備えている。
【0022】
本実施形態では、上水道配水管1の分岐部2の分岐部フランジ2aに相フランジ3を介して補修弁本体10の下部フランジ11が、図示しないボルト等により密閉状に締結されている。補修弁本体10は、地下ピット23の内部に収容されている。補修弁本体10の接続構成はこれに限定されない。
【0023】
上部フランジ12は、本実施形態では、別の弁としての空気弁20の下部フランジ21に密閉状に接続されている。これにより、空気弁20そのものは、通常の機能を果たすことができる。この空気弁20の部分は、消火栓でもよい。
【0024】
空気弁20は、公知のものであり、詳しい説明は省略するが、例えば、内部にフロート22を有し、このフロート22によって弁体25を上下動させて管路内の空気を抜けるようになっている。例えば、空気弁20の上部は、上部カバー22で覆われており、地下ピット23の天板にボルト24等を介して固定されている。
【0025】
補修弁本体10の弁体13は、ボール弁等よりなり、弁体回動軸14をハンドルケース16に設けたハンドル15で操作することで、開閉操作可能となっている。弁体13は、ボール弁に限定されない。
【0026】
そして、計測器付補修弁5は、補修弁本体10を介して上水道配水管1からの液体を取り出す取出管17を備えている。取出管17は、補修弁本体10の内部から下方へ延長して伸び、その先端の採取口18は、上水道配水管1の上流側を向いている。採取口18の位置は、水道配水管1の中心でもよいし、中心からずれていてもよい。
【0027】
取出管17から流れ込んできた水は、連通管19を通って減圧弁31に至る。この減圧弁31で減圧された水が、計測器32に流れ込む。これにより、計測器32に余分な負荷を与えなくてすむ。
【0028】
本実施形態における計測器32は、水質を計測するもので、例えば、残留塩素計である。計測器32は、残留塩素系に限定されず、濁度、pHなどの水質を図るものでもよい。
【0029】
計測器32で得られたデータは、コントローラ33に送信される。コントローラ33は、例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)よりなり、MODBUS RTU通信を介して送受信機34に送信される。なお、MODBUS RTU通信に限定されず、他の無線通信を用いてもよいし、有線通信を用いてもよい。計測器32からのデータ収集周期は、例えば、最短で1分間隔とすることができる。
【0030】
送受信機34で送信した情報は、さらにインターネット回線等を通じて遠隔地のPC、スマートフォン等よりなる情報端末41に送信される。
【0031】
情報端末41は、計測器32からの情報をリアルタイムで処理するプログラム42を有するアプリケーションがインストールされている。例えば、このアプリケーションを介して収集したデータは、クラウドに保存され、期間を指定して過去のデータを確認でき、CSVファイルでダウンロードすることもできる。また、収集したデータは、ダッシュボードでリアルタイムに確認することができる。例えば、送受信機34がGPSを内蔵していれば、地図上で正確な位置も確認できる。
【0032】
特定周期で計測するのではなく、必要なときに情報端末41から送受信機34を介して計測器32による測定値を測定できるように構成してもよい。
【0033】
本実施形態では、計測器32、コントローラ33及び送受信機34は、計測器ボックス30に収容されている。計測器ボックス30は、地下ピット23の内部に設けてもよいし、地上に設けてもよい。地下ピット23に設ける場合には、送受信機34のみを送受信しやすい地上に設けてもよい。
【0034】
取出管17を介して採取されて計測器32を通過した水は、排出管35から排出するとよい。排出管35からの水は、地中に排出してもよいし、上水道配水管1に戻してもよい。上水道配水管1に戻す場合には、増圧処理などを行うとよい。
【0035】
このように、計測器付補修弁5を備えた遠隔監視システム40は、計測器付補修弁5と、送受信機34と通信可能な情報端末41と、情報端末41にインストールされた計測器32からの情報をリアルタイムで処理するプログラム42とを備えている。
【0036】
本実施形態では、計測器32が、補修弁本体10を介して取出管17から取り出した液体の状態を計測し、コントローラ33に送信し、コントローラ33がその情報を、送受信機34を介して発信するので、遠隔地から上水道配水管1を流れる液体の情報を測定できる。このため、従来のように、計測の度に消火栓等のある現場に出向いて計測して記録する必要はなく、事務所などの遠隔地で、自動で上水道配水管1の液体の情報を入手して記録することも可能となる。
【0037】
本実施形態では、補修弁本体10に消火栓、空気弁20などが接続されることで、地下消火栓、空気弁等が収容される地下ピット23内に計測器付補修弁5を収容できる。
【0038】
本実施形態では、情報端末41によってリアルタイムに遠隔地から上水道配水管1を流れる液体の状態を計測でき、処理できるので、非常に効率的に上水道配水管1を流れる液体の監視を行える。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、地下式消火栓、空気弁等に出向かなくても遠隔地で残留塩素等の液体の状態を測定できる。
【0040】
(実施形態2)
図3及び
図4は、本発明の実施形態2を示し、計測器ボックス120の構成が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、本実施形態では、
図1及び
図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施形態の遠隔監視システム140では、補修弁本体110の上部フランジ12に、計測器32及び減圧弁31が収容された計測器ボックス120が接続されている。
【0042】
コントローラ33及び送受信機34は、別のコントローラボックス130に設けられ、例えば、このコントローラボックス130は、地上に設けられている。
【0043】
水道配水管1から採取された水は、取出管17を介して補修弁本体110の側方の連通管119に流れ、計測器ボックス120内の減圧弁31を介して計測器32に至る。
【0044】
このような構成にすると、補修弁本体110の上部に計測器ボックス120を接続することで、簡易な構成で遠隔監視可能な計測器付補修弁105が得られる。
【0045】
また、図示しないが、補修弁本体110に側部フランジがある場合には、側部フランジに消火栓、空気弁20等をつないだままで計測器ボックス30を接続できる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0047】
すなわち、上記実施形態では、計測器32は、上水道配水管1の内部を流れる水の残留塩素を図るようにしたが、水の濁度だけでなく、水量又は流速も測るように構成してもよい。そうすれば、水道法などにより特に要件の厳しい上水道の品質を色々な観点で計測器付補修弁5によって遠隔監視できる。
【0048】
配水管は、上記各実施形態のような上水道配水管1に限定されず、配水管が液体として下水、工場排水などを通すものであれば、濁色度など他の項目を計測してもよい。
【0049】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 水道配水管(配水管)
2 分岐部
2a 分岐部フランジ
3 相フランジ
5 計測器付補修弁
10 補修弁本体
11 下部フランジ
12 上部フランジ
13 弁体
14 弁体回動軸
15 ハンドル
16 ハンドルケース
17 取出管
18 採取口
19 連通管
20 空気弁(別の弁)
21 下部フランジ
22 フロート
22 上部カバー
23 地下ピット
24 ボルト
25 弁体
30 計測器ボックス
31 減圧弁
32 計測器
33 コントローラ
34 送受信機
35 排出管
40 遠隔監視システム
41 情報端末
42 プログラム
105 計測器付補修弁
110 補修弁本体
119 連通管
120 計測器ボックス
130 コントローラボックス
140 遠隔監視システム