IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ 図1
  • 特開-コネクタ 図2
  • 特開-コネクタ 図3
  • 特開-コネクタ 図4
  • 特開-コネクタ 図5
  • 特開-コネクタ 図6
  • 特開-コネクタ 図7
  • 特開-コネクタ 図8
  • 特開-コネクタ 図9
  • 特開-コネクタ 図10
  • 特開-コネクタ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050106
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240403BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156736
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷田 邦彰
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FC32
5E021JA05
5E021KA06
5E087GG15
5E087GG24
5E087RR26
(57)【要約】
【課題】端子金具の半挿入検知の信頼性を向上させつつフロントリテーナの組付け時における形状安定性を維持し得るコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、雌端子金具30と第1ハウジング11とフロントリテーナ13を備え、フロントリテーナ13はハウジング本体11Aの前面側に配置される前壁部13Aと、前壁部13Aから後向きに延びハウジング本体11Aの外周面を包囲する周壁部13Bを有し、周壁部13Bの外周面は、フード部12Bによって包囲され、周壁部13Bはフード部12Bの内周面に接する外側接触部13Gと、ハウジング本体11Aの外周面に接する内側接触部13Mと、を有し、フロントリテーナ13は周壁部13Bの内外方向の変位を許容する変位許容部13Fを有し、内側接触部13Mは一つの変位許容部13Fの両端部に配置され、外側接触部13Gは、一対の内側接触部13Mの間に配置される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングに装着され、前記端子金具を係止するフロントリテーナと、
を備え、
前記フロントリテーナは、前記ハウジングの前面側に配置される前壁部と、前記前壁部の外縁から後向きに延びて前記ハウジングの外周面を包囲する周壁部を有し、
前記周壁部の外周面は、相手側ハウジングのフード部によって包囲され、
前記周壁部は、前記フード部の内周面に対し前記周壁部の外周面の一部として接触する外側接触部と、前記ハウジングの外周面に対し内周面の一部として接触する内側接触部と、を有し、
前記フロントリテーナは、前記周壁部の内外方向の弾性変位を許容する変位許容部を有し、
前記周壁部の周方向に関し、前記内側接触部は、前記変位許容部を挟んだ両側に配置され、前記外側接触部は、一対の前記内側接触部の間に配置される、コネクタ。
【請求項2】
一つの前記変位許容部は、一対の前記内側接触部によって前記周方向に挟まれ、
前記外側接触部は、一対の前記内側接触部の前記周方向中央部と対応する位置に配置される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記外側接触部は、前記周壁部の外周面に外向きに突出する形状であり、
前記内側接触部は、前記周壁部の内周面に内向きに突出する形状である、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記変位許容部は、前記前壁部の外縁側における前記周壁部に連なる部位に形成された凹部である、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記周方向に関し、一対の前記内側接触部が前記変位許容部を挟み、
前記周壁部は、一対の前記内側接触部を間に挟んで対をなす位置にスリット部を有している、請求項4に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雌側ハウジングの前端部にフロントリテーナを取り付ける構成が開示されている。雌側ハウジングの端子収容部に対し、端子金具が正規位置に至る手前に位置する状態(すなわち、半挿入状態)では、ランスが端子金具によって弾性変位した状態にされる。この状態では、弾性変形したランスがフロントリテーナの本係止位置への移動を妨げる。フロントリテーナが弾性変形したランスに干渉すると、本係止位置に向けてのフロントリテーナの移動抵抗が大きくなり、本係止位置に至る前にフロントリテーナの移動が停止し、これをもって端子金具の半挿入状態を検知することができる。特許文献2におけるフロントホルダも、端子金具の半挿入検知し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-203633号公報
【特許文献2】特開2008-16262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフロントリテーナには、周壁部の内周面に内向きに突出する突起(兼用係止突部40L)が設けられている。例えば、この突起が雌側ハウジングに強く接触すると本係止位置に向けてのフロントリテーナの移動抵抗が大きくなり、フロントリテーナを操作する作業者が、ランスにフロントリテーナが干渉したと認識するが、端子金具が半挿入状態であると誤って判断してしまうおそれがある。さらに、特許文献1のフロントリテーナには、周壁部の外周面に外向きに突出する突起が設けられている。前壁部の外縁側における周壁部に連なる部位には撓みスペースが設けられている。突起がフード部に接触した際、仮に、突起が設けられた部位(以下、外壁部ともいう)が撓みスペースに弾性変形するとしても、周方向において撓みスペースと無関係に突起が配置されているため、外壁部がバランス良く弾性変形することができず、外壁部が歪んで弾性変形する懸念がある
【0005】
そこで、本開示は、端子金具の半挿入状態を検知する信頼性を向上させることが可能で且つフロントリテーナの組付け時における形状安定性を維持することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングに装着され、前記端子金具を係止するフロントリテーナと、
を備え、
前記フロントリテーナは、前記ハウジングの前面側に配置される前壁部と、前記前壁部の外縁から後向きに延びて前記ハウジングの外周面を包囲する周壁部を有し、
前記周壁部の外周面は、相手側ハウジングのフード部によって包囲され、
前記周壁部は、前記フード部の内周面に対し前記周壁部の外周面の一部として接触する外側接触部と、前記ハウジングの外周面に対し内周面の一部として接触する内側接触部と、を有し、
前記フロントリテーナは、前記周壁部の内外方向の弾性変位を許容する変位許容部を有し、
前記周壁部の周方向に関し、前記内側接触部は、前記変位許容部を挟んだ両側に配置され、前記外側接触部は、一対の前記内側接触部の間に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端子金具の半挿入状態を検知する信頼性を向上させることが可能で且つフロントリテーナの組付け時における形状安定性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコネクタの分解斜視図である。
図2図2は、第1ハウジングを前方下側から見た斜視図である。
図3図3は、第2ハウジングを前方から見た正面図である。
図4図4は、フロントリテーナを前方下側から見た斜視図である。
図5図5は、フロントリテーナを後方上側から見た斜視図である。
図6図6は、フロントリテーナの正面図である。
図7図7は、図6におけるA-A断面図である。
図8図8は、嵌合状態にあるコネクタの側断面図である。
図9図9は、フロントリテーナを取り付けた第1ハウジングの要部拡大正面図である。
図10図10は、フード部を嵌合した状態の要部拡大正断面図である。
図11図11は、他の実施形態のフロントリテーナを後方下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)端子金具と、端子金具を収容するハウジングと、ハウジングに装着され、端子金具を係止するフロントリテーナと、を備えている。フロントリテーナは、ハウジングの前面側に配置される前壁部と、前壁部の外縁から後向きに延びてハウジングの外周面を包囲する周壁部を有している。周壁部の外周面は、相手側ハウジングのフード部によって包囲される。周壁部は、フード部の内周面に対し周壁部の外周面の一部として接触する外側接触部と、前記ハウジングの外周面に対し内周面の一部として接触する内側接触部と、を有している。フロントリテーナは、周壁部の内外方向の弾性変位を許容する変位許容部を有している。周壁部の周方向に関し、内側接触部は、変位許容部を挟んだ両側に配置され、外側接触部は、一対の内側接触部の間に配置される。この構成によれば、周壁部における外側接触部及び内側接触部の形成部位に対応する周壁部が変位許容部を介して内外方向に弾性変位できるので、フロントリテーナをハウジングに装着する際に、ハウジングに対して内側接触部が強く接触しないようにすることができる。また、変位許容部があることで移動抵抗を減らすことができ、誤ってフロントリテーナを移動途中で停止させることを防止できる。
【0010】
(2)本開示のコネクタにおいて、一つの変位許容部は、一対の内側接触部によって周方向に挟まれ、外側接触部は、一対の内側接触部の周方向中央部と対応する位置に配置されることが好ましい。この構成によれば、周壁部における外側接触部及び内側接触部の形成部位に対応する周壁部において、周方向に偏りなく撓ませることができる。
【0011】
(3)本開示のコネクタにおいて、外側接触部は、周壁部の外周面に外向きに突出する形状であり、内側接触部は、周壁部の内周面に内向きに突出する形状であることが好ましい。この構成によれば、相手側(ハウジングやフード部)に接触する位置を明確にできる。
【0012】
(4)本開示のコネクタにおいて、変位許容部は、前壁部の外縁側における周壁部に連なる部位に形成された凹部であることが好ましい。この構成によれば、周壁部の一部を内外方向に弾性変形し易くすることができる。
【0013】
(5)本開示のコネクタにおいて、周方向に関し、一対の内側接触部が変位許容部を挟み、周壁部は、一対の内側接触部を間に挟んで対をなす位置に形成されたスリット部を有していることが好ましい。この構成によれば、外側接触部及び内側接触部が配置された部位の周壁部の一部の形状を片持ち状とすることができるので、周壁部を内外方向に、より弾性変形し易くすることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
【0015】
<実施形態1>
本開示を具体化したコネクタ10を、図1から図10を参照して説明する。図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。本実施形態1では、左右方向は、幅方向に相当する。図1に示すように、実施形態1のコネクタ10は、互いに嵌合可能なハウジングである第1ハウジング11、及び相手側ハウジングである第2ハウジング12と、フロントリテーナ13と、端子金具である雌端子金具30と、を備えている。前側は、第1ハウジング11に対して第2ハウジング12が嵌合する側である。また、第2ハウジング12における前側は、第1ハウジングが嵌合する側である。
【0016】
[第1ハウジングの構成]
第1ハウジング11は、合成樹脂製である。第1ハウジング11は、後方から雌端子金具30を収容可能な雌ハウジングとして構成される。図2に示すように、第1ハウジング11は、左右方向(幅方向)に扁平なハウジング本体11Aと、ハウジング本体11Aの外周を包囲する筒状の包囲壁部11Bと、を有している。ハウジング本体11A内には、複数のキャビティ11Cが左右方向に並んで形成されている。各キャビティ11Cの内面には、前向きに片持ち状に延びるランス11Eが設けられている(図8参照)。
【0017】
ハウジング本体11Aの前端部において、隣合うキャビティ11Cの間には溝部11Fが形成されている。これら溝部11Fには、後述するフロントリテーナ13の仕切り壁13Jが前方から挿入される。
【0018】
包囲壁部11Bは、前方(第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の嵌合側)から見ると上下左右に上壁、下壁、左壁、及び右壁を有した角筒状をなしている。包囲壁部11Bの上壁の左右方向中央部には、ロックアーム11Kが設けられている。包囲壁部11Bの後端部には、内向きに延びる繋ぎ部11Gが設けられている。繋ぎ部11Gは、ハウジング本体11Aの外周面に連結されている。包囲壁部11Bとハウジング本体11Aとの間には、後述する第2ハウジング12を嵌合可能な嵌合空間11Dが形成されている。
【0019】
各キャビティ11Cには、後方から雌端子金具30が挿入される。雌端子金具30は、導電性を有した金属製である。図1に示すように、雌端子金具30は、電線31の端末部に接続され、前部に角筒状の箱部30Aが設けられている。箱部30Aには、後述する雄端子金具32のタブ32Aが挿入されて接続される(図8参照)。雌端子金具30は、箱部30Aの後端にランス11Eが係止されることによって、キャビティ11C内に抜け止めされる(図8参照)。電線31には、ゴム栓33が嵌着される。ゴム栓33は、雌端子金具30のバレル部30Bに保持された状態で、キャビティ11Cの後部の内面に密着し、キャビティ11C内を液密にシールする(図8参照)。
【0020】
[第2ハウジングの構成]
第2ハウジング12は、合成樹脂製である。第2ハウジング12は、雄端子金具32を装着可能な雄ハウジングとして構成される。図3に示すように、第2ハウジング12は、雄端子金具32を保持する端子保持部12Aと、端子保持部12Aの外周縁から前向きに角筒状をなして延びるフード部12Bと、を有している。フード部12B内には、端子保持部12Aを前後方向に貫通した雄端子金具32のタブ32Aが複数突出して配置されている。フード部12Bの上壁の左右方向中央部には、上向きに突出するロック部12Cが設けられている。
【0021】
[フロントリテーナの構成]
フロントリテーナ13は、合成樹脂製である。フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aに対して前方から取り付けられる(図8参照)。フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aに装着されることによって、雌端子金具30を係止し、且つ雌端子金具30の半挿入状態を検知する機能を発揮する。
【0022】
図4から図7に示すように、フロントリテーナ13は、前壁部13Aと、前壁部13Aの外縁から後向きに筒状をなして延びる周壁部13Bと、を有している。フロントリテーナ13がハウジング本体11Aに装着された状態において、前壁部13Aは、ハウジング本体11Aの前面側に配置され、ハウジング本体11Aの前面(前方を向く面)の下部を前方から覆うように配置される(図8参照)。そして、周壁部13Bは、ハウジング本体11Aの前面の外周面を包囲するように配置される(図8参照)。
【0023】
前壁部13Aには、各キャビティ11Cに対応して複数の窓孔13Cが貫通して形成されている。この窓孔13Cにハウジング本体11Aの前端部が挿入されることによって、ハウジング本体11Aの前面と、前壁部13Aの前面とが、面一に配置される(図8参照)。
【0024】
図5に示すように、フロントリテーナ13には、複数の検知部13Hが設けられている。これら検知部13Hは、左右方向に並んでおり、前壁部13Aの後面から後向きに延びている。検知部13Hは、フロントリテーナ13がハウジング本体11Aに正規に取付けされた状態において、ランス11Eの前端部の下面に沿うように配置される(図8参照)。これによって、検知部13Hは、ランス11Eが下向きに撓むのを規制して、キャビティ11C内に配置された雌端子金具30をハウジング本体11Aから抜け止めする。検知部13Hは、各ランス11Eに個別に対応して設けられている。フロントリテーナ13には、複数の仕切り壁13Jが設けられている。仕切り壁13Jは、平板状をなし、板厚方向を左右方向に向けて、隣合う窓孔13Cを仕切るように配置されている。
【0025】
図4に示すように、フロントリテーナ13の前壁部13Aの前面には、二つの凹部13Dが設けられている。これら凹部13Dは、前壁部13Aの外縁側における周壁部13Bに連なる部位であって、左右方向の両側に位置する仕切り壁13Jの上端に配置されている。これら凹部13Dは、周壁部13Bの前端部と、仕切り壁13Jの前端部とを上下に分断し、且つ周壁部13Bの前端部と、前壁部13Aとを上下に分断している(図7参照)。これによって、周壁部13Bにおける凹部13Dの配設位置に対応する部位(以下、変位部13Kともいう)は、上下方向(内外方向)に弾性変形が許容される。ここで、内外方向とは、前後方向に対して交差する方向であって、周壁部13Bの内側と外側とを結ぶ方向すなわち、周壁部13Bの板厚方向に相当する。つまり、凹部13Dは、周壁部13Bの変位部13Kの内外方向の弾性変位を許容する変位許容部13Fである。
【0026】
図4図5に示すように、フロントリテーナ13の周壁部13Bの上壁には、前端から後向きに凹んで形成されたスリット部13Eが複数設けられている。これらスリット部13Eは、各窓孔13Cに対応して配置されている。複数のスリット部13Eのうち、隣合い左端に位置する2つのスリット部13Eと、隣合い右端に位置する2つのスリット部13Eは、凹部13D(変位許容部13F)を周方向において間に挟んで対をなしている(図4参照)。
【0027】
図4図6に示すように、周壁部13Bは、複数の外側接触部13G,13Lと、複数の内側接触部13Mと、を有している。複数の外側接触部13G,13Lは、周壁部13Bの外周面に外向きに突出して設けられている。これら外側接触部13G,13Lは、フード部12Bの内周面に対し周壁部13Bの外周面の一部として接触する(図10参照)。周壁部13Bの上壁には2つの外側接触部13Gが設けられ、周壁部13Bの下壁には2つの外側接触部13Lが設けられ、周壁部13Bの左壁及び右壁には1つずつ外側接触部13Lが設けられている。これら外側接触部13G,13Lは、前後方向に延びて形成されている(図7参照)。周壁部13Bの上壁に設けられた各外側接触部13Gは、仕切り壁13Jの上方であって、凹部13Dの上方に配置されている。言い換えると、周壁部13Bの上壁における周方向に関し、外側接触部13Gは、一つの凹部13D(変位許容部13F)の形成範囲内に配置されている。
【0028】
四つの内側接触部13Mは、周壁部13Bの上壁の内周面に配置されており、周壁部13Bの内周面から下向き(内向き)に突出している。これら内側接触部13Mは、前後方向に延びて形成されている(図7参照)。内側接触部13Mの下端は、周壁部13Bの内周面に対して平行な平面で形成されている。内側接触部13Mのうち、左側の2つの内側接触部13Mは、左端の仕切り壁13J及び凹部13Dを左右方向から挟むように配置されている。内側接触部13Mのうち、右側の2つの内側接触部13Mは、右端の仕切り壁13J及び凹部13Dを左右方向から挟むように配置されている。言い換えると、周壁部13Bの周方向に関し、内側接触部13Mは、凹部13D(変位許容部13F)を挟んだ両側に配置されている。
【0029】
図6に示すように、周壁部13Bの上壁に設けられた外側接触部13Gは、凹部13D(変位許容部13F)を周壁部13Bの周方向に挟む一対の内側接触部13Mの周壁部13Bの周方向中央部と対応する位置に配置されている。言い換えると、周壁部13Bの上壁に設けられた外側接触部13Gは、凹部13D(変位許容部13F)を周壁部13Bの周方向に挟む一対の内側接触部13Mの間に配置されている。周壁部13Bの周方向に関し、左右方向中央のスリット部13Eを除いたスリット部13Eは、凹部13D(変位許容部13F)を周壁部13Bの周方向に挟む一対の内側接触部13Mを間に挟んで対をなしている。
【0030】
[コネクタにおける各部材の組付け形態]
図8に示すように、キャビティ11Cに後方から雌端子金具30を挿入し、雌端子金具30をキャビティ11Cの正規位置に配置すると、ランス11Eの前端が雌端子金具30の箱部30Aの後端に後方から対向する。
【0031】
そして、ハウジング本体11Aに対して前方からフロントリテーナ13を取り付ける。このとき、検知部13Hをランス11Eに対向させ、且つ検知部13Hの後端部がランス11Eの前端部よりも下方になるようにフロントリテーナ13の姿勢を整える。フロントリテーナ13をハウジング本体11Aに取り付けると、図9に示すように、各内側接触部13Mは、ハウジング本体11Aの上端面(外周面)に対し周壁部13Bの内周面の一部として接触するとともに、ハウジング本体11Aによって上向きに押圧される。これによって、内側接触部13Mが配置された部位の周壁部13B(変位部13K)は、内外方向の外向き(上下方向の上向き)に弾性変形する。これにより、内側接触部13Mがハウジング本体11Aの上端面(外周面)に過剰に強く接触しないようにできる。
【0032】
図8に示すように、ハウジング本体11Aに対してフロントリテーナ13を装着した状態では、フロントリテーナ13の検知部13Hは、ランス11Eの前端部の下面に沿うように配置される。これによって、検知部13Hは、ランス11Eが下向きに撓むのを規制して、キャビティ11C内に配置された雌端子金具30を抜け止め状態に保持する。また、ハウジング本体11Aに対してフロントリテーナ13を装着した状態において、ハウジング本体11Aの各溝部11Fには、前方から仕切り壁13Jが挿入される(図示せず)。
【0033】
雌端子金具30及びフロントリテーナ13が取り付けられた第1ハウジング11に対して第2ハウジング12を前方から取り付ける。このとき、フード部12Bをハウジング本体11Aに対向させるとともに、ロック部12Cをロックアーム11Kに対向させるように第2ハウジング12の姿勢を整える。この姿勢で第2ハウジング12を第1ハウジング11に取り付けると、各外側接触部13G,13Lは、フード部12Bの内周面に対し周壁部13Bの一部として接触する。
【0034】
このとき、周壁部13Bの上壁に設けられた外側接触部13Gは、図10に示すように、フード部12Bの上壁によって下向きに押圧されて、僅かに潰れる。このとき、内側接触部13Mも僅かに潰れる。そして、周壁部13Bの上壁に設けられた外側接触部13Gが配置された部位の周壁部13Bは、内外方向の内向き(上下方向の下向き)に弾性変形する。このため、凹部13Dを挟む2つのスリット部13Eの間の周壁部13B(変位部13K)は、周方向の両側が上向きに撓み、周方向の中央部が下向きに撓む。これによって、フロントリテーナ13は、ハウジング本体11Aの外周面に対して内側接触部13Mが過剰に強く接触しないようにしつつ、フード部12Bの内周面に対して外側接触部13Gが過剰に強く接触しないようにすることができる。
【0035】
雌端子金具30及びフロントリテーナ13が取り付けられた第1ハウジング11に対して第2ハウジング12を嵌合させた状態において、図8に示すように、フード部12Bは、第1ハウジング11の前方から第1ハウジング11の嵌合空間11Dに挿入される。そして、ロック部12Cが第1ハウジング11のロックアーム11Kに係止する。これとともに、雄端子金具32のタブ32Aが雌端子金具30の前方から箱部30Aに挿入される。第2ハウジング12のフード部12Bは、フロントリテーナ13の周壁部13Bの外周面を包囲するように嵌合される。第2ハウジング12のフード部12B内には、ハウジング本体11A及びフロントリテーナ13が収容される。
【0036】
次に、実施形態1の作用を説明する。
本開示のコネクタ10は、雌端子金具30と、雌端子金具30を収容する第1ハウジング11と、第1ハウジング11のハウジング本体11Aに装着され、雌端子金具30を係止するフロントリテーナ13と、を備えている。フロントリテーナ13は、第1ハウジング11のハウジング本体11Aの前面側に配置される前壁部13Aと、前壁部13Aの外縁から後向きに延びてハウジング本体11Aの外周面を包囲する周壁部13Bを有している。周壁部13Bの外周面は、第2ハウジング12のフード部12Bによって包囲される。周壁部13Bは、フード部12Bの内周面に対し周壁部13Bの外周面の一部として接触する外側接触部13Gと、ハウジング本体11Aの外周面に対し内周面の一部として接触する内側接触部13Mと、を有している。フロントリテーナ13は、周壁部13Bの内外方向の弾性変位を許容する変位許容部13Fを有している。周壁部13Bの周方向に関し、内側接触部13Mは、一つの変位許容部13Fを挟んだ両側に配置され、外側接触部13Gは、一対の内側接触部13Mの間(一つの変位許容部13Fの周方向の形成範囲内)の外側に配置される。
【0037】
この構成によれば、周壁部13Bにおける外側接触部13G及び内側接触部13Mの形成部位に対応する周壁部13Bが変位許容部13Fを介して上下方向(内外方向)に弾性変位できるので、フロントリテーナ13を第1ハウジング11に装着する際に、ハウジング本体11Aに対して内側接触部13Mが過剰に強く接触しないようにすることができる。また、変位許容部13Fがあることで移動抵抗を減らすことができ、誤ってフロントリテーナ13を移動途中で停止させることを防止できる。
【0038】
本開示のコネクタ10において、一つの変位許容部13Fは、凹部13Dの両端部に位置する一対の内側接触部13Mによって周方向に挟まれ、外側接触部13Gは、一対の内側接触部13Mの周方向中央部と対応する位置に配置される。この構成によれば、周壁部13Bにおける外側接触部13G及び内側接触部13Mの形成部位に対応する周壁部13B(変位部13K)において、周方向に偏りなく撓ませることができる。
【0039】
本開示のコネクタ10において、外側接触部13Gは、周壁部13Bの外周面に外向きに突出する形状であり、内側接触部13Mは、周壁部13Bの内周面に内向きに突出する形状である。この構成によれば、相手側(ハウジング本体11Aやフード部12B)に接触する位置を明確にできる。
【0040】
本開示のコネクタ10において、変位許容部13Fは、前壁部13Aの外縁側における周壁部13Bに連なる部位に後向きに凹んで形成された凹部13Dである。この構成によれば、周壁部13Bの前端部(一部)が上下方向(内外方向)に弾性変形し易くすることができる。これによって、周壁部13Bの前端部とともに、外側接触部13G及び内側接触部13Mも上下方向(内外方向)に弾性変形し易くなる。
【0041】
本開示のコネクタ10において、周方向に関し、一対の内側接触部13Mが変位許容部13Fを挟み、周壁部13Bは、この一対の内側接触部13Mを間に挟んで対をなす位置に形成されたスリット部13Eを有している。この構成によれば、外側接触部13G及び内側接触部13Mが配置された部位の周壁部13B(変位部13K)の一部の形状を前向きに延びる片持ち状とすることができるので、周壁部13Bの前端部(変位部13K)を上下方向(内外方向)に、より弾性変形し易くすることができる。
【0042】
[本開示の他の実施形態]
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではない。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
【0043】
図11に示すように、仕切り壁113Jのうち、凹部13Dが配置された仕切り壁113Jの後側を切り欠いた形態としてもよい。この構成によって、凹部13Dが配置された部位の周壁部13Bを撓み易くすることができる。
【0044】
実施形態1とは異なり、フロントリテーナの外側接触部及び内側接触部を周壁部の外周面及び内周面と面一に形成し、フード部の内周面から内向きに突出する凸部が外側接触部に接触し、ハウジング本体の外種面から外向きに突出する突部が内側接触部に接触する構成としてもよい。
【0045】
実施形態1とは異なり、スリット部を周壁部の左壁、右壁、及び下壁に設け、凹部を前壁部における左壁、右壁、及び下壁に連なる部位に設けてもよい。
【0046】
実施形態1とは異なり、第1ハウジングに雄端子金具を取り付ける構成であってもよい。
【0047】
実施形態1とは異なり、外側接触部が一対の内側接触部の間に複数設けられていてもよい。
【0048】
実施形態1とは異なり、外側接触部は、一対の内側接触部の間の形成範囲内であれば、周方向の中央部から外れた位置に形成されていてもよい。
【0049】
実施形態1とは異なり、内側接触部は、1つの凹部に対して複数組設けられていてもよい。
【0050】
実施形態1とは異なり、凹部は前壁部の後面に前向きに凹むように凹設されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…コネクタ
11…第1ハウジング
11A…ハウジング本体(ハウジング)
11B…包囲壁部
11C…キャビティ
11D…嵌合空間
11E…ランス
11F…溝部
11G…繋ぎ部
11K…ロックアーム
12…第2ハウジング(相手側ハウジング)
12A…端子保持部
12B…フード部
12C…ロック部
13…フロントリテーナ
13A…前壁部
13B…周壁部
13C…窓孔
13D…凹部(13F…変位許容部)
13E…スリット部
13G,13L…外側接触部
13H…検知部
13J,113J…仕切り壁
13K…変位部
13M…内側接触部
30…雌端子金具(端子金具)
30A…箱部
30B…バレル部
31…電線
32…雄端子金具
32A…タブ
33…ゴム栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11