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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050119
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】幅調整板、合成スラブ及び構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E04B5/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156756
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(57)【要約】
【課題】コンクリートに作用する水平力を梁材へ伝達することができる幅調整板、合成スラブ及び構造体を提供する。
【解決手段】幅調整板50は、梁材10上に敷設され、波形断面を有するデッキプレート40の幅を調整するために用いられる。幅調整板50は、デッキプレート40の幅方向における端部に形成された被係合部41に連結され、被係合部41と上下方向において重なる係合部51と、係合部51から連続してデッキプレート40の幅方向に延びる延在部52と、延在部52から連続してデッキプレート40の幅方向に延びて、梁材10に固定される固定部54と、を備えている。延在部52の少なくとも一部は、係合部51及び固定部54よりも上方に膨出し、延在部52の膨出部分における上端部は、デッキプレート40の波形断面における上端部よりも低く配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材上に敷設され、波形断面を有するデッキプレートの幅を調整するために用いられる幅調整板であって、
前記デッキプレートの幅方向における端部に形成された被係合部に連結され、前記被係合部と上下方向において重なる係合部と、
前記係合部から連続して前記デッキプレートの幅方向に延びる延在部と、
前記延在部から連続して前記デッキプレートの幅方向に延びて、前記梁材に固定される固定部と、を備え、
前記延在部の少なくとも一部は、前記係合部及び前記固定部よりも上方に膨出し、
前記延在部の膨出部分における上端部は、前記デッキプレートの前記波形断面における上端部よりも低く配置されることを特徴とする幅調整板。
【請求項2】
前記延在部は、
前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って上方に傾斜する第一斜面と、
前記第一斜面よりも前記固定部側に設けられ、前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って斜め下方に傾斜する第二斜面と、を有し、
前記第一斜面及び前記第二斜面の少なくとも一方の上面には、エンボス部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の幅調整板。
【請求項3】
前記第二斜面及び前記固定部は、前記梁材と上下方向において重なることを特徴とする請求項2に記載の幅調整板。
【請求項4】
前記延在部は、
前記デッキプレートの幅方向に延びる平面と、
前記係合部の上面及び前記平面の間に設けられ、前記係合部の上面及び前記平面に対して段差を有するように形成される段差面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の幅調整板。
【請求項5】
前記延在部は、
前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って上方に傾斜する斜面と、
前記斜面よりも前記固定部側に設けられ、下方向に延びる垂下面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の幅調整板。
【請求項6】
請求項1に記載の前記幅調整板と、前記デッキプレートと、前記デッキプレート及び前記幅調整板を型枠として用いて打設されたコンクリートと、を備える合成スラブであって、
前記デッキプレートの前記波形断面における山部分の幅は、前記延在部における前記膨出部分の幅よりも広いことを特徴とする合成スラブ。
【請求項7】
請求項6に記載の前記合成スラブと、前記合成スラブを支持する前記梁材とを備える構造体であって、
前記幅調整板の前記係合部は、前記デッキプレートの前記被係合部に嵌合することで連結され、
前記幅調整板の前記固定部は、前記梁材に焼抜き栓溶接又は発射打込み鋲によって固定され、
前記延在部の前記膨出部分の少なくとも一部が前記梁材と上下方向において重なることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅調整板、合成スラブ及び構造体に係り、梁材上に敷設され波形断面を有するデッキプレートの幅を調整するために用いられる幅調整板、合成スラブ及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート打設時にデッキプレートを型枠として用いることで、コンクリート硬化後はコンクリートと一体化して合成効果を生じる合成スラブを施工することが知られている。
デッキプレートを型枠として合成スラブを施工する場合、敷設したデッキプレートの幅方向の端部と梁材との間に隙間が生じる場合がある。この場合、デッキプレートの幅方向の端部と梁材との間の隙間を埋めるためにデッキプレートの幅を調整する幅調整板(フラッシング)が一般に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような幅調整板は、敷設したデッキプレートの幅方向の端部と結合する結合部(係合部)と、デッキプレート及び梁材の間を埋める延在部と、梁材と固定される固定部と、を備えている。結合部を備えることにより、幅調整板をデッキプレートに結合させるための溶接作業を不要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-016821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような幅調整板は、隙間を埋めるための平板部が単なる平板であるため、幅調整板とコンクリートが一体挙動しない。そのため、コンクリートに作用する水平力を伝達するため、デッキプレートと幅調整板を溶接したり、スタッドによってコンクリートと梁材を接合したりする必要がある。
しかしながら、デッキプレートと幅調整板を溶接する場合には、溶接作業が増えるため工期が長くなり、コストが高くなるおそれがあった。また、スタッドを用いる場合には、安価で工期も短縮可能な焼抜き栓溶接と比較してコストが高くなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、コンクリートに作用する水平力を梁材へ伝達することができる幅調整板、合成スラブ及び構造体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、溶接作業やスタッドを不要として、コストの低減を図ることが可能な幅調整板、合成スラブ及び構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の幅調整板によれば、梁材上に敷設され、波形断面を有するデッキプレートの幅を調整するために用いられる幅調整板であって、前記デッキプレートの幅方向における端部に形成された被係合部に連結され、前記被係合部と上下方向において重なる係合部と、前記係合部から連続して前記デッキプレートの幅方向に延びる延在部と、前記延在部から連続して前記デッキプレートの幅方向に延びて、前記梁材に固定される固定部と、を備え、前記延在部の少なくとも一部は、前記係合部及び前記固定部よりも上方に膨出し、前記延在部の膨出部分における上端部は、前記デッキプレートの前記波形断面における上端部よりも低く配置されること、により解決される。
【0008】
上記構成により、延在部が係合部及び前記固定部よりも上方に膨出するため、延在部がコンクリートと一体化し、デッキプレートと同様に、幅調整板とコンクリートとが合成効果により一体挙動することが可能となる。したがって、コンクリートに作用する水平力を梁材に直接伝達させるために溶接作業やスタッドを用いる必要がなく、コンクリートに作用する水平力を梁材に伝達することが可能になる。
さらに、延在部の膨出部分の上端部は、デッキプレートの波形断面の上端部よりも低いため、効率よくコンクリートに作用する水平力を梁材に向けて伝達することができる。また、延在部が係合部及び固定部よりも膨出しつつ、膨出部分の高さが過度に高い場合よりも低く形成されることで、幅調整板の剛性を高めることができる。
【0009】
このとき、前記延在部は、前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って上方に傾斜する第一斜面と、前記第一斜面よりも前記固定部側に設けられ、前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って斜め下方に傾斜する第二斜面と、を有し、前記第一斜面及び前記第二斜面の少なくとも一方の上面には、エンボス部が形成されると良い。
上記構成により、斜面にエンボスが設けられているため、コンクリートと一体化させて、より合成効果を高めることができる。
【0010】
このとき、前記第二斜面及び前記固定部は、前記梁材と上下方向において重なると良い。
上記構成により、斜面が撓みの影響の少ない梁材上に配置されるため、より合成効果を高めることができる。
【0011】
このとき、前記延在部は、前記デッキプレートの幅方向に延びる平面と、前記係合部の上面及び前記平面の間に設けられ、前記係合部の上面及び前記平面に対して段差を有するように形成される段差面と、を有すると良い。
上記構成により、段差部によってコンクリートと一体化する面積が増加し、より合成効果を高めることができる。
【0012】
このとき、前記延在部は、前記デッキプレートの幅方向に延び、前記デッキプレートから離れるに従って上方に傾斜する斜面と、前記斜面よりも前記固定部側に設けられ、下方向に延びる垂下面と、を有すると良い。
上記構成により、垂下面によって上下方向においてコンクリートと一体化する面積が増加し、より合成効果を高めることができる。
【0013】
前記課題は、本発明の合成スラブによれば、前記幅調整板と、前記デッキプレートと、前記デッキプレート及び前記幅調整板を型枠として用いて打設されたコンクリートと、を備える合成スラブであって、前記デッキプレートの前記波形断面における山部分の幅は、前記延在部における前記膨出部分の幅よりも広いこと、でも解決される。
上記構成により、効率よくコンクリートに作用する水平力を梁材に向けて伝達することができる。また、延在部が係合部及び固定部よりも膨出しつつ、膨出部分の幅が過度に広い場合よりも狭く形成されることで、幅調整板の剛性を高めることができる。
【0014】
前記課題は、本発明の構造体によれば、前記合成スラブと、前記合成スラブを支持する前記梁材とを備える構造体であって、前記幅調整板の前記係合部は、前記デッキプレートの前記被係合部に嵌合されることで連結され、前記幅調整板の前記固定部は、前記梁材に焼抜き栓溶接又は発射打込み鋲によって固定され、前記延在部の前記膨出部分の少なくとも一部が前記梁材と上下方向において重なる、ことでも解決される。
上記構成により、コンクリートに作用する水平力を梁材に直接伝達させるために溶接作業やスタッドを用いる必要がなく、コンクリートに作用する水平力を梁材に伝達することが可能になる。さらに、幅調整板と梁材とを焼抜き栓溶接することによって、コストを低減できる。
また、膨出部分が撓みの影響の少ない梁材上に配置されるため、より一層合成効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の幅調整板、合成スラブ及び構造体によれば、コンクリートに作用する水平力を梁材へ伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の幅調整板、合成スラブ及び構造体の断面図である。
図2】幅調整板の断面図である。
図3】幅調整板の上面図である。
図4】デッキプレートと梁材に幅調整板を取り付けた状態を示す図である。
図5】幅調整板及びデッキプレートの断面図である。
図6】幅調整板及びデッキプレートにコンクリートを打設した状態を示す図である。
図7A】第2実施形態の幅調整板の断面図である。
図7B】第3実施形態の幅調整板の断面図である。
図8A】変形例1のエンボス形状を示す図である。
図8B】変形例2のエンボス形状を示す図である。
図8C】変形例3のエンボス形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、図1図6に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)の構造体1について説明する。以下の説明中、図1に記載の矢印で示すように、「上下方向」とは、立設した状態の梁材10の上下方向を意味する。「デッキプレートの幅方向」とは、デッキプレート40が梁材10の上面に敷き詰められる方向であって、左右方向を意味する。
なお、「デッキプレートの長さ方向」とは、デッキプレート40が延びる方向であって、「デッキプレートの幅方向(左右方向)」及び「上下方向」と直交する方向を意味する。
【0018】
<構造体>
構造体1は、図1に示すように、床構造部材を構成するものであって、梁材10と、梁材10の上に設けられる合成スラブ20と、を備える。合成スラブ20は、コンクリート30と、デッキプレート40と、幅調整板50と、を有する。合成スラブ20は、デッキプレート40及び幅調整板50を型枠としてコンクリート30を打設することによって、形成される。
【0019】
<梁材>
梁材10は、図1に示すように、合成スラブ20を下方から支持するものであって、デッキプレート40の長さ方向に長尺な上面を有するH形鋼等で構成される。フランジとなる梁材10の幅方向における梁端部11は、基礎に対して平行な方向となるように配置される。梁端部11の上面には、幅調整板50が取り付けられる。
【0020】
<合成スラブ>
合成スラブ20は、図1に示すように、コンクリート30と、デッキプレート40と、幅調整板50と、を備える。合成スラブ20は、打設したコンクリート30が硬化すると、コンクリート30、デッキプレート40及び幅調整板50が一体となって、引張力や圧縮力に耐える力を有する。そのため、鉄筋が不要となり、作業効率の向上やコストの低減を図ることができる。
【0021】
<コンクリート>
コンクリート30は、図1に示すように、デッキプレート40及び幅調整板50の上面側に打設される。コンクリート30は、デッキプレート40及び幅調整板50を型枠として打設される。
【0022】
<デッキプレート>
デッキプレート40は、図1に示すように、複数の梁材10の間に架け渡される床構造部材であって、薄い鋼板から形成されている。なお、デッキプレート40の上面には、エンボスが形成される。デッキプレート40の上面がエンボス加工されることによって、合成効果を向上させることができる。
デッキプレート40は、山部分と谷部分が交互に連なる波形断面を有し、他のデッキプレート40や幅調整板50と係合する被係合部41と、波形断面における山部分となる山部42と、を有する。
【0023】
被係合部41は、図1に示すように、デッキプレート40の幅方向における両方の端部に形成され、梁材10の上面にデッキプレート40の幅方向に並べて敷設するときに、互いに連結可能な断面形状を有している。
【0024】
被係合部41は、図4に示すように、幅調整板50と係合可能に形成される。具体的には、被係合部41は、デッキプレート40の幅方向に水平に延びる被係合下端部41aと、被係合下端部41aから上方に延びて、円弧状に湾曲し、幅調整板50と係合可能な被係合上端部41bと、を有する。
【0025】
山部42は、デッキプレート40の荷重に対する強度を向上させるものである。山部42の上端部は、被係合下端部41a及び被係合上端部41bよりも上方に配置される。なお、一つのデッキプレート40における山部42の数は特に限定されない。
【0026】
<幅調整板>
幅調整板50は、図1図3に示すように、梁材10上に敷設されるデッキプレート40の幅を調整するために用いられる。具体的には、幅調整板50は、デッキプレート40の幅方向において梁材10及びデッキプレート40に架け渡され、梁材10及びデッキプレート40との隙間を塞ぐように配置される。
【0027】
幅調整板50は、図3に示すように、デッキプレート40の長さ方向に沿って長尺に延びる鋼板により形成される。幅調整板50は、被係合部41に連結される係合部51と、デッキプレート40の幅方向に延びる延在部52と、延在部52の上面に形成されたエンボス部53と、梁材10に固定される固定部54と、を備える。
【0028】
係合部51は、図1図3に示すように、デッキプレート40の幅方向における端部に形成された被係合部41に連結され、被係合部41と上下方向において重なる。係合部51は、被係合部41に沿って円弧状に湾曲して延びるように形成される。
【0029】
係合部51は、図4に示すように、デッキプレート40の被係合部41に嵌合されることで連結される。具体的には、係合部51は、下端部51aが被係合下端部41aに当接し、上端部51bが被係合上端部41bの上面に当接する。
このように、係合部51が被係合部41に嵌合されることで、デッキプレート40と幅調整板50が結合する。こうすることで、溶接作業を不要とすることができる。なお、本実施形態では、幅調整板50は、円弧状に湾曲された係合部51を被係合部41に嵌合させて結合させている。しかしこれに限らず、デッキプレート40の幅方向において、幅調整板50の係合部51をデッキプレート40の被係合部41に単に上下方向に重ねて係合させ、係合部51及び被係合部41を溶接して結合させても良い。
【0030】
延在部52は、図1図3に示すように、係合部51から連続してデッキプレート40の幅方向に延びる。具体的には、延在部52は、係合部51から連続してデッキプレート40の幅方向に延び、デッキプレート40から離れるに従って上方に傾斜する第一斜面52aと、第一斜面52aから連続してデッキプレート40の幅方向に水平に延びる平面52bと、第一斜面52aよりも固定部54側に設けられ、デッキプレート40から離れるに従って斜め下方に傾斜する第二斜面52cと、を有する。
【0031】
第二斜面52cは、図4に示すように、梁材10の梁端部11と上下方向において重なる位置に配置される。こうすることで、第二斜面52cが撓みの影響の少ない梁材10の上方に配置されるため、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に十分に伝達することが可能になる。
【0032】
延在部52の一部は、図4に示すように、係合部51及び固定部54よりも上方に膨出する。具体的には、延在部52の上端部となる平面52bは、係合部51の上端部51bの上面よりも高い位置に配置される。つまり、被係合部41の被係合下端部41aを基準としたとき、延在部52の上端部となる平面52bの高さh1は、係合部51の上端部51bの上面の高さh2よりも高い。
このように、延在部52の少なくとも一部が係合部51及び固定部54よりも上方に膨出することで、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に伝達することが可能になる。
【0033】
ここで、図4に示すように、被係合部41の被係合下端部41aを基準としたとき、延在部52の上端部となる平面52bの高さh1は、デッキプレート40の山部42の上端部の高さh3よりも低く配置される。
このように、延在部52の上端部がデッキプレート40の山部42よりも低い位置に配置されることで、効率よくコンクリート30に作用する水平力を梁材10に向けて伝達することができる。また、幅調整板50の剛性を高めることができる。
【0034】
エンボス部53は、図2図3に示すように、第一斜面52a及び第二斜面52cの上面に設けられる。具体的には、エンボス部53は、第一斜面52a及び第二斜面52cに沿って、幅調整板50の長さ方向(デッキプレート40の長さ方向)に延びるように設けられる。第一斜面52a及び第二斜面52cの上面がエンボス加工されることで、コンクリート30との結合力を高め、合成効果を向上させることができる。
【0035】
エンボス部53は、図3に示すように、上面視で略矩形状の凹凸構造が幅調整板50の長さ方向に沿って複数配置された形状である。
エンボス部53を設けることによって、コンクリート30が打設された際、その周囲にコンクリート30が流れ込んで硬化することで、幅調整板50とコンクリート30とがずれるのを防止し、耐力や変形性能を高めることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、エンボス部53が第一斜面52a及び第二斜面52cの両方に設けられるが、エンボス部53が設けられる位置や大きさはこれに限られない。例えば、エンボス部53が第一斜面52a及び第二斜面52cのいずれか一方に設けられていても良い。また、エンボス部53が平面52bの上面に設けられていても良い。
【0037】
固定部54は、図1図3に示すように、延在部52から連続してデッキプレート40の幅方向に延びて、梁材10に固定される。具体的には、固定部54は、第二斜面52cから連続してデッキプレート40の幅方向に延び、梁材10の梁端部11に焼抜き栓溶接(焼抜き栓溶接部54a)によって固定される。なお、固定部54は、梁端部11に発射打込み鋲によって固定されても良い。
【0038】
固定部54は、図4に示すように、梁材10の梁端部11と上下方向において重なる位置に配置される。こうすることで、固定部54が撓みの影響の少ない梁材10の上方に配置されるため、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に十分に伝達することが可能になる。
【0039】
<合成スラブの形成方法>
図5に示すように、梁材10の上面に、デッキプレート40の幅方向に並べて複数のデッキプレート40を敷設する場合、梁材10とデッキプレート40との間に、1枚のデッキプレート40の幅方向における寸法よりも小さい隙間が生じることがある。
この隙間を塞ぐように、梁材10とデッキプレート40との間に、幅調整板50が架け渡される。架け渡された幅調整板50の固定部54は、焼抜き栓溶接によって梁端部11に固定される。
【0040】
そして、図6に示すように、硬化前の流動状態のコンクリート30が流し込まれ、デッキプレート40及び幅調整板50を型枠としてコンクリート30が打設される。コンクリート30が硬化すると、デッキプレート40及び幅調整板50は、コンクリート30と一体結合する。
このように、デッキプレート40及び幅調整板50がコンクリート30と一体結合することで、合成スラブ20が形成される。
【0041】
また、図6に示すように、デッキプレート40の波形断面における山部42の幅W1は、延在部52における膨出部分の幅W2よりも広い。
このように、延在部52の幅W2をデッキプレート40の山部42の幅W1よりも狭くすることで、効率よくコンクリート30に作用する水平力を梁材10に向けて伝達することができる。また、幅調整板50の剛性を高めることができる。
【0042】
構造体1は、図6に示すように、デッキプレート40及び幅調整板50がコンクリート30と一体結合した合成スラブ20と、合成スラブ20を支持する梁材10と、を備えている。
幅調整板50の係合部51は、デッキプレート40の被係合部41に嵌合することで連結され、幅調整板50の固定部54は、梁材10に焼抜き栓溶接によって固定される。したがって、溶接作業やスタッドを用いる必要がなく、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に伝達することができる。
ここで、延在部52の膨出部分の少なくとも一部(具体的には、第二斜面52cの幅方向における端部)が梁材10と上下方向において重なる状態で、幅調整板50は、梁材10に固定される。膨出部分が撓みの影響の少ない梁材上に配置されるため、より一層合成効果を高めることができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の幅調整板150について図7Aに基づいて説明する。
なお、上述した幅調整板50と重複する内容は説明を省略する。
第2実施形態の幅調整板150では、幅調整板50と比較して延在部152の構成が主に異なっている。
【0044】
幅調整板150は、図7Aに示すように、デッキプレート40に連結される係合部151(下端部151a、上端部151b)と、係合部151及び固定部154よりも上方に突出する延在部152と、梁材10に固定される固定部154(焼抜き栓溶接部154a)と、を備える。
【0045】
延在部152は、図7Aに示すように、係合部151から連続してデッキプレート40の幅方向に延びる。具体的には、延在部152は、係合部151から連続して延びる段差面152aと、段差面152aから連続してデッキプレート40の幅方向に延びる平面152bと、平面152bから連続してデッキプレート40に近づくに従って斜め下方に傾斜する斜面152cと、を有する。
【0046】
段差面152aは、係合部151の上面及び平面152bの間に設けられ、係合部151の上面及び平面152bに対して上方に突出する段差を有するように形成される。平面152bは、係合部151の上面と同じ高さに配置される。なお、係合部151の上面と平面152bは、異なる高さ位置であっても良い。
固定部154は、斜面152cから連続して、デッキプレート40の幅方向に延びる。
【0047】
延在部152の一部は、図7Aに示すように、係合部151及び固定部154よりも上方に膨出する。具体的には、延在部152の上端部となる段差面152aは、係合部151の上端部151bの上面よりも高い位置に配置される。
このように、延在部152の少なくとも一部が係合部151及び固定部154よりも上方に膨出することで、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に伝達することが可能になる。
なお、合成効果をさらに向上させるために、延在部152の上面がエンボス加工されていても良い。
【0048】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の幅調整板250について図7Bに基づいて説明する。
なお、上述した幅調整板50、150と重複する内容は説明を省略する。
第3実施形態の幅調整板250では、幅調整板50、150と比較して延在部252の構成が主に異なっている。
【0049】
幅調整板250は、図7Bに示すように、デッキプレート40に連結される係合部251(下端部251a、上端部251b)と、係合部251及び固定部254よりも上方に突出する延在部252と、梁材10に固定される固定部254(焼抜き栓溶接部254a)と、を備える。
【0050】
延在部252は、図7Bに示すように、係合部251から連続してデッキプレート40の幅方向に延びる。具体的には、延在部252は、係合部251から連続してデッキプレート40の幅方向に延び、係合部251から連続してデッキプレート40の幅方向に延び、デッキプレート40から離れるに従って上方に傾斜する斜面252aと、斜面252aから連続してデッキプレート40の幅方向に水平に延びる平面252bと、斜面252aよりも固定部254側に設けられ、平面252bから連続して屈曲し、下方向に延びる垂下面252cと、を有する。
固定部254は、垂下面252cから連続して屈曲し、デッキプレート40の幅方向に延びる。
【0051】
延在部252の一部は、図7Bに示すように、係合部251及び固定部254よりも上方に膨出する。具体的には、延在部252の上端部となる平面252bは、係合部251の上端部251bの上面よりも高い位置に配置される。
このように、延在部252の少なくとも一部が係合部251及び固定部254よりも上方に膨出することで、コンクリート30に作用する水平力を梁材10に伝達することが可能になる。
なお、合成効果をさらに向上させるために、延在部252の上面がエンボス加工されていても良い。
【0052】
<変形例>
次に、エンボス加工のバリエーションについて図8A図8Cに基づいて説明する。
なお、上述したエンボス部53と重複する内容は説明を省略する。
変形例のエンボス部153A~153Cでは、エンボス部53と比較してエンボス加工の形状が主に異なっている。
【0053】
変形例1のエンボス部153Aは、図8Aに示すように、上面視で斜めに延びる長孔形状の凹凸構造が幅調整板50の長さ方向に沿って複数配置された形状である。エンボス部153Aを設けることによって、コンクリート30が打設された際、その周囲にコンクリート30が流れ込んで硬化することで、幅調整板50とコンクリート30とがずれるのを防止し、耐力や変形性能を高めることができる。
【0054】
変形例2のエンボス部153Bは、図8Bに示すように、上面視で円形状の凹凸構造が幅調整板50の長さ方向に沿って複数配置された形状である。エンボス部153Bを設けることによって、コンクリート30が打設された際、その周囲にコンクリート30が流れ込んで硬化することで、幅調整板50とコンクリート30とがずれるのを防止し、耐力や変形性能を高めることができる。
【0055】
変形例3のエンボス部153Cは、図8Cに示すように、上面視でX形状の凹凸構造が幅調整板50の長さ方向に沿って複数配置された形状である。エンボス部153Cを設けることによって、コンクリート30が打設された際、その周囲にコンクリート30が流れ込んで硬化することで、幅調整板50とコンクリート30とがずれるのを防止し、耐力や変形性能を高めることができる。
【0056】
<その他の実施形態>
本発明の構造体1は、上記の実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、構造体1は、床構造部材であるデッキプレート40の場合を例示して説明を行った。しかしこれに限らず、例えば、天井構造部材として、天井の梁を連結するデッキプレートの場合にも好適である。
また、本実施形態では、幅調整板50及び梁材10を焼抜き栓溶接又発射打ち込み鋲によって接合する場合について説明したが、スタッドによって接合しても良い。なお、幅調整板50の素材として、アルミやステンレスを用いることも可能であり、また、溶接によらない場合は、プラスチックを用いることもできる。
【0057】
上記実施形態では、主として本発明に係る幅調整板、合成スラブ及び構造体に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 構造体
10 梁材
11 梁端部
20 合成スラブ
30 コンクリート
40 デッキプレート
41 被係合部
41a 被係合下端部
41b 被係合上端部
42 デッキプレート山部
50、150、250 幅調整板
51、151、251 係合部
51a、151a、251a 下端部
51b、151b、251b 上端部
52、152、252 延在部
52a 第一斜面
52b、152b、252b 平面
52c 第二斜面
152a 段差面
152c、252a 斜面
252c 垂下面
53、153A、153B、153C エンボス部
54、154、254 固定部
54a、154a、254a 焼抜き栓溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C