(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050141
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 7/16 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F16K7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156803
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
(72)【発明者】
【氏名】藥師神 忠幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Cv値を確保し、変形するおそれの少ないインナーディスクを備えるバルブ装置を提供すること。
【解決手段】インナーディスク20は、内側環状部22、外側環状部21及び接続部23とからなり、接続部23は内側環状部22の一旦側外周面と外側環状部21の内周面とを接続する梁部23aと、梁部23aと内側環状部22の外周面とを接続する支持部23bとを備えるとともに、梁部23aと梁部23aとの間には貫通する孔部24が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路である第1流路及び第2流路並びに当該第1流路及び第2流路と連通する弁室を形成するバルブボディと、
前記第1流路の前記弁室に開口する開口の周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置される内側環状部より短尺の外側環状部及び前記内側環状部の一端側で前記外側環状部を内側環状部に接続する接続部を有するインナーディスクと、
前記内側環状部の外側環状部側となる一端部に配設される環状の上側シートと接触・離間することにより前記第1流路と前記第2流路との遮断・連通を行い、下面周縁部が前記外側環状部の上面と接触し、上面周縁部を上方から下方へ押圧する押さえアダプタにより押圧配置させられるダイヤフラムと、
前記内側環状部の他端部に配設され、前記弁室の底面である弁室底面と密着する環状の下側シートとを備え、
前記接続部は前記内側環状部の一旦側外周面と前記外側環状部の内周面とを接続する複数の梁部と、前記梁部と前記内側環状部の外周面とを接続する支持部とを備えるとともに、梁部と梁部との間には貫通する孔部が設けられているバルブ装置。
【請求項2】
前記支持部は付加積層造形により形成される、請求項1に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程においては、半導体製造装置のチャンバに対して、各種のプロセスガスの供給を制御するバルブ装置が用いられている。特許文献1に記載の発明は、主として半導体製造設備のガス供給系等に於いて使用されるダイレクトタッチ型のメタルダイヤフラム弁に関するものであり、
図3に示すように、メタルダイヤフラム弁100のバルブボディ101には、流体入口110、流体出口111、弁座113、メタルダイヤフラム102を有している。弁座113はバルブボディ101に形成された円環溝に配設されている。流体は、流体入口110から入りメタルダイヤフラム102の下面側から弁室112を通過して流体出口111から出ていく。
【0003】
特許文献2に記載の発明は、特許文献1と同じく、主として半導体製造設備のガス供給系等に於いて使用されるダイヤフラム弁に関するものであり、
図4に示すように、バルブ装置200のバルブボディ202は、第1の流路221、第2流路222、弁室223を備えている。弁室223には、インナーディスク203が配設されており、インナーディスク203は、内側環状部232と外側環状部231を備え、内側環状部232の上端部にはダイヤフラム241と接触・離間するバルブシート248が配設され、内側環状部232の下端部には弁室223の底面と密着するディスクシール249が配設されている。
【0004】
特許文献2に記載のバルブ装置200は、特許文献1に記載のメタルダイヤフラム弁100にはない取り換え交換可能なインナーディスク203を備えているので、特許文献1に記載のメタルダイヤフラム弁100のように、弁座113を配置する溝をバルブボディ202に形成しなくてもよいので加工が容易という利点がある。また、特許文献1に記載のメタルダイヤフラム弁100では、弁座113等が消耗した場合、その取り換え等にバルブボディ101の追加工等を行わなければならないのに比べ、特許文献2に記載のバルブ装置200では、インナーディスク203を取り出して、修理交換ができるのでメンテナンスが容易という利点を有している。
【0005】
さらに、特許文献2に記載のバルブ装置200の弁室223は、特許文献1に記載のメタルダイヤフラム弁100の弁室112と比べて上下方向に深く形成されている。この違いによって、特許文献2に記載のバルブ装置200では大容量の流体を処理できることとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-26577号公報
【特許文献2】国際公開WO2019/193978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4の特許文献2のバルブ装置200において、ボンネット205をねじ穴225にねじ込んで、押さえアダプタ243を上から押圧し、押さえアダプタ243がダイヤフラム241の周縁を上から押圧し、ダイヤフラム241の周縁が外側環状部231を上から押圧し、その力は内側環状部232に伝わり、ディスクシール249が上から弁室223の底面に押しつぶされてインナーディスク203は所定の位置に配置される構造となっている。
【0008】
しかし、特許文献2のバルブ装置200では、ボンネット205を締めこんでもディスクシール249がつぶれ切らずインナーディスク203が設計位置まで下がりきらないという問題があった。インナーディスク203が設計位置まで下がりきらないと、バルブシート248とダイヤフラム241との隙間が小さくなり、Cv値が小さくなるという問題が生じてしまう。ここでCv値とは、開閉弁におけるガス等の流体の流れやすさを示す指標である。
【0009】
また、インナーディスク203を設計位置まで下げるために、ボンネット205の締め込み荷重を大きくしたとしても、内側環状部232と外側環状部231とをつなぐ部分に過大な力がかかり変形が生じ、インナーディスク203の外側環状部231が設計位置にあっても内側環状部232およびバルブシート248の位置が設計位置まで下がらず、Cv値が小さくなってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、変形が生じず、所定のCv値を確保可能なインナーディスクを備えるバルブ装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、
流体通路である第1流路及び第2流路並びに当該第1流路及び第2流路と連通する弁室を形成するバルブボディと、前記第1流路の前記弁室に開口する開口の周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置される外側環状部、及び前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する接続部を有するインナーディスクと、前記内側環状部の上端部に配設される環状の上側シートと接触・離間することにより前記第1流路と前記第2流路との遮断・連通を行い、下面周縁部が前記外側環状部の上面と接触し、上面周縁部を上方から下方へ押圧する押さえアダプタにより押圧配置させられるダイヤフラムと、前記内側環状部の下端部に配設され、前記弁室の底面である弁室底面と密着する環状の下側シートとを備え、前記接続部は前記内側環状部の外周面上部と前記外側環状部の内周面とを接続する梁部と、前記梁部の下面と前記内側環状部の外周面とを接続する支持部とを備え、上下を貫通する孔部が設けられている、バルブ装置である。
【0012】
本発明(1)では、インナーディスクの接続部において支持部が梁部を支持する構造とすることにより、インナーディスクの梁部の変形を防ぐことが可能で、また梁部の変形が無いため上側シートの位置を設定どおりとすることが可能であるため、Cv値を確保することが可能となる。
【0013】
本発明(2)は、前記支持部は付加積層造形により形成される、本発明(1)のバルブ装置である。
【0014】
本発明(2)によると、支持部を付加積層造形により形成したことで、インナーディスクは複雑な工程を経ることなく梁部の変形を防ぐ十分な強度がある支持部を持つことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インナーディスクの変形が生じず、所定のCv値を確保することが可能なバルブ装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバルブ装置の部分断面図である。
【
図3】特許文献1のメタルダイヤフラム弁の部分断面図である。
【
図4】特許文献2のバルブ装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
まず、本発明の実施の形態に係るバルブ装置について
図1に開示されたバルブ装置1の部分断面図を用いて説明する。バルブボディ10には第1流路11、第2流路12及び弁室13が形成され、弁室13の底面に形成された底面開口15により弁室13と第1流路11が、弁室13の側面に形成された側面開口により弁室と第2流路が連通している。上部にはボンネット部16が内部に凹所を備えて形成されている。弁室13には、インナーディスク20が配置させられている。インナーディスク20は、外側環状部21と、内側環状部22と、外側環状部21と内側環状部22とを接続する接続部23と、接続部23と内側環状部22を備えている。内側環状部22の上端部には、上側シート用溝22aが形成され、上側シート26が配設される。内側環状部22の下端部には、下側シート用溝22bが形成され、下側シート25が配設されており、下側シート25が弁室底面14と密着している。接続部23は内側環状部22の外周面上部と外側環状部21の内周面との間を接続する梁部23aと梁部23aを支持するように梁部23aと内側環状部22の外周面を接続する支持部23bからなる。本形態において、梁部23aは4つ形成されており、各梁部23aの間には上下を貫通する孔部24が4つ開けられている。流体を流れやすくするために孔部24は長穴形状とされており、梁部23aの上面は内側環状部22および外側環状部21の上面と比較して凹んだ形状となっている。支持部23bは梁部23aの下面から内側環状部22の外周面にかけて略三角形状に4つ設けられて梁部23aを支持し、梁部23aの変形を防いでいる。梁部23aは切削加工を用いて形成されたインナーディスクにAM装置(3D造形装置)を用いた付加積層造形を行うことにより形成されている。上側シート26の上には押さえアダプタ30で押圧されるダイヤフラム33が配設されている。インナーディスク20が配置された状態において、第1流路11に流入した流体は底面開口15を通過し、下端部から内側環状部22の内部に入り上端部から出る。そして、上側シート26とダイヤフラム33の間隙および孔部24を経由し第2流路12から流出する。
【0019】
ボンネット16の上方には、下側ケーシング50と上側ケーシング60を筐体とするアクチュエータが配置されている。アクチュエータは、スプリングコイル61、第1ピストン65、バルクヘッド72,第2ピストン69、ステム38から構成され、操作ガス供給口62から導入された操作ガスが操作ガス通路64を通ってステム38を上下動させる。上側ケーシング60と下側ケーシング50とは、上側ケーシング下部雌ねじ71と下側ケーシング雄ねじ51との螺合で接続している。気密性を保つために多くのOリング63,66,67,68,70,52が配設させられている。
【0020】
下側ケーシング50の下部凹所には、蓋40、テーパリング39、ボール37で構成される推力増大機構が備えられている。バルブボディ10とアクチュエータとはナット34によってつながれている。ナット下部雌ねじ35とボンネット部上部雄ねじ17が螺合している。ナット上部雄ねじ43と下側ケーシング雌ねじ53とは螺合しており、ナット34を捻じ込むことで押えアダプタ30がダイヤフラム33周縁を押圧し、外側環状部21との間でダイヤフラム33を固定している。蓋雄ねじ41とナット上部雌ねじ42とは螺合している。
【0021】
ステム38の先端テーパー部がディスク36を下方に押圧し、ディスク36がダイヤフラム押さえ32を下方に押圧し、ダイヤフラム33を押圧して変形させて上側シート26に接触させて流体の流れを遮断する。ステム38が上方に移動すると開となり流体が流れる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明したように、本発明はCv値を確保し、変形するおそれの少ないインナーディスクを備えるバルブ装置等を提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 バルブ装置
10 バルブボディ
11 第1流路
12 第2流路
13 弁室
14 弁室底面
15 第1開口
16 ボンネット部
17 ボンネット部上部雄ねじ
20 インナーディスク
21 外側環状部
22 内側環状部
22a 上側シート用溝
22b 下側シート用溝
23 接続部
23a 梁部
23b 支持部
24 孔部
25 下側シート
26 上側シート
30 押さえアダプタ
32 ダイヤフラム押さえ
33 ダイヤフラム
34 ナット
35 ナット下部雌ねじ
36 ディスク
37 ボール
38 ステム
39 テーパリング
40 蓋
41 蓋雄ねじ
42 ナット上部雌ねじ
43 ナット上部雄ねじ
50 下側ケーシング
51 下側ケーシング雄ねじ
52 Oリング
53 下側ケーシング雌ねじ
60 上側ケーシング
61 スプリングコイル
62 操作ガス供給口
63 Oリング
64 操作ガス通路
65 第1ピストン
66、67、68 Oリング
69 第2ピストン
70 Oリング
71 上側ケーシング下部雌ねじ
72 バルクヘッド