(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050145
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複合型不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 5/03 20120101AFI20240403BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240403BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20240403BHJP
【FI】
D04H5/03
D04H1/498
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156812
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AB02
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA02
4L047CA05
(57)【要約】
【課題】エアレイド方式を採用し、湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子を添加する複合型不織布の製造方法において、適度なコシがあって、形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】不織布と、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを少なくとも含む、複合型不織布の製造方法であって、水流交絡工程と、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液をパルプ繊維ウェブに添加する添加工程と、を含み、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロースを含有し、添加工程において、湿潤紙力剤に対するアニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.00以上となるように添加する、複合型不織布の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを少なくとも含む、複合型不織布の製造方法であって、
前記不織布と前記パルプ繊維ウェブを水流交絡処理する水流交絡工程と、
前記水流交絡工程の後に、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加する添加工程と、を含み、
前記湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を、前記アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ含有し、
前記添加工程において、前記湿潤紙力剤の添加量に対する前記アニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.00以上となり、かつ、前記アニオン系水溶性高分子の前記パルプ繊維ウェブの絶乾重量に対する添加率が、0.50%以上3.50%以下となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、複合型不織布の製造方法。
【請求項2】
前記添加工程において、前記アニオン系水溶性高分子の前記パルプ繊維ウェブの絶乾重量に対する添加率が、1.00%以上3.50%以下となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項3】
前記添加工程において、前記湿潤紙力剤の添加量に対する前記アニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.10以上となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項4】
前記添加工程は、複合型不織布を下側に備えられる脱水装置によって脱水処理する添加前脱水工程と、
前記脱水装置の下流に備えられる添加装置によって、前記薬液をスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加する薬液添加工程と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項5】
前記薬液添加工程において、前記薬液は2回に分割して、いずれもスプレー噴霧によって添加するものであり、
前記薬液は、1液目、2液目ともに、いずれも前記脱水装置の下流に備えられる前記添加装置によってそれぞれ前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項4に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項6】
前記薬液添加工程において、前記薬液は前記湿潤紙力剤と前記アニオン系水溶性高分子とを混合したものであり、前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項4に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項7】
前記薬液添加工程において、前記薬液は前記湿潤紙力剤と前記アニオン系水溶性高分子とを混合せずに個別に含む2個の薬液であり、それぞれ別の前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項4に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項8】
前記薬液添加工程において、前記湿潤紙力剤を含む一方の薬液を前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加した後、2秒以内に前記アニオン系水溶性高分子を含む他方の薬液を前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、請求項7に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項9】
前記不織布はスパンボンド不織布であり、
前記水流交絡工程は、前記スパンボンド不織布と、その上に載置した前記エアレイド方式で製造された前記パルプ繊維ウェブとを水流交絡処理することを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を添加する複合型不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルプ繊維のみからなる紙製品(シート)や、合成繊維のみからなる不織布製品とは別に、パルプ繊維シートと合成(長)繊維不織布を水流交絡させることにより得られる複合型不織布の製品が市場で販売されている。
【0003】
パルプ繊維シートと長繊維不織布を交絡させて得られる複合型不織布の製造において、パルプ繊維シートに湿式シートを用いる場合は、パルプ湿式シートの製造(抄紙)時に紙力剤等の薬液(添加剤)を添加することが行われる。
【0004】
一方で、パルプ繊維ウェブ(シート)の形成に乾式(エアレイド方式)を使用する場合には、パルプ繊維に薬品を均一に添加することは難しいことから、風合い、柔軟性、強度などの機能性を付与する場合は、ウォータージェット(水流交絡)後に薬液等を添加することとなる。
【0005】
ウォータージェットにより、パルプ繊維が長繊維の間に入り込み、両繊維の交絡した構造形成が行われるため、その後に薬液を添加することで、形成された複合繊維の構造に対して薬液を添加することが可能となる。
【0006】
複合型不織布に関する先行技術文献として、例えば、特許文献1には、水圧により交絡されたパルプ含有率の高い不織複合布であって、約30重量パーセント以下の不織連続フィラメント支持体と、パルプからなり、約70重量パーセント以上の繊維部分と、を含むことを特徴とする不織複合布が開示されている。また、不織複合布の製造方法として、パルプ繊維の層を、ボンド密度が約100ピンボンド位置/平方インチで合計ボンド面積が約30パーセント以下の不織連続フィラメント支持体の上に重ね合わせて、各層を水圧によって絡め合わせて複合素材を形成し、この複合素材を乾燥することを特徴とする旨も記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、エアレイド方式で得られたパルプ繊維ウェブがスパンボンド不織布上に積層されて一体化されている複合型不織布であって、パルプ繊維ウェブが紙力剤及び両性樹脂を含有し、パルプ繊維ウェブの固形重量に対して、紙力剤の固形分で換算した添加量が0.04~1.0%、かつ、両性樹脂の固形分で換算した添加量が0.06~1.5%である、ことを特徴とする複合型不織布が開示されている。また、複合型不織布の製造装置として、水流交絡装置の下流側にはパルプ繊維ウェブに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布の製造を完了するためのサクション装置及び乾燥装置が配備され、サクション装置は、例えばバキューム式で水流交絡後の複合型不織布を下側から脱水し、搬送される複合型不織布を間にして、サクション装置の上方には、紙力剤添加装置が配設されている旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2533260号公報
【特許文献2】特開2021-130888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の製造方法によって製造された複合型不織布では、拭き取り時に複合型不織布から紙粉が脱落して、拭き取った場所を却って汚してしまう問題があった。
【0010】
エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを含む複合型不織布においては、添加する薬液に湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用することで、特に湿潤時の拭き取りにおいて、脱落する紙粉の量が抑制できることが分かっている。
しかしながら、両者の添加剤は混合した際に薬液の凝集が発生するため、特に薬品の添加に特化していないエアレイド設備においては、品質管理と連続操業性の点で注意が必要であった。
【0011】
薬液の凝集という問題点に関しては、カルボキシメチルセルロース(CMC)の添加量を抑えつつ、湿潤紙力剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)の添加量の割合を調整することで、柔らかい触感を維持しつつ、濡れた物を拭き取る際の紙粉脱落がなく、装置の汚れも解消できる複合型不織布とすることができる。
しかしながら、柔らかい触感ゆえに、拭き取り時に拭き取りたい面のみを対象物に当てることができず、作業中に丸まってしまったり、凹凸面の拭き取り時に、繊維が凹凸面に引っ掛かり、紙粉が脱落してしまったりするという課題があった。また、カルボキシメチルセルロース(CMC)を添加することで、触感を硬くすることができるが、硬い複合型不織布はその後の折り加工適性を損なうという課題も同時に発生していた。
【0012】
よって、本発明の目的は、エアレイド方式を採用し、薬液に湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース)を併用して添加する複合型不織布の製造方法において、適度なコシがあって、拭き取り時に形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は鋭意検討を行い、不織布と、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを少なくとも含む、複合型不織布の製造方法において、水流交絡工程並びに湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液をパルプ繊維ウェブに添加する添加工程を行い、湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ含有し、添加工程において、湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子の添加量の割合、及びアニオン系水溶性高分子のパルプ繊維ウェブの絶乾重量に対する添加率をいずれも所定の数値範囲内に調整することで、適度なコシがあって、拭き取り時に形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布とすることができる、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0014】
(1)本発明の第1の態様は、不織布と、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを少なくとも含む、複合型不織布の製造方法であって、前記不織布と前記パルプ繊維ウェブを水流交絡処理する水流交絡工程と、前記水流交絡工程の後に、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加する添加工程と、を含み、前記湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を、前記アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ含有し、前記添加工程において、前記湿潤紙力剤の添加量に対する前記アニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.00以上となり、かつ、前記アニオン系水溶性高分子の前記パルプ繊維ウェブの絶乾重量に対する添加率が、0.50%以上3.50%以下となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とする、複合型不織布の製造方法である。
【0015】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記添加工程において、前記アニオン系水溶性高分子の前記パルプ繊維ウェブの絶乾重量に対する添加率が、1.00%以上3.50%以下となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記添加工程において、前記湿潤紙力剤の添加量に対する前記アニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.10以上となるように、前記薬液を前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0017】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記添加工程は、複合型不織布を下側に備えられる脱水装置によって脱水処理する添加前脱水工程と、前記脱水装置の下流に備えられる添加装置によって、前記薬液をスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加する薬液添加工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、(4)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記薬液添加工程において、前記薬液は2回に分割して、いずれもスプレー噴霧によって添加するものであり、前記薬液は、1液目、2液目ともに、いずれも前記脱水装置の下流に備えられる前記添加装置によってそれぞれ前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0019】
(6)本発明の第6の態様は、(4)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記薬液添加工程において、前記薬液は前記湿潤紙力剤と前記アニオン系水溶性高分子とを混合したものであり、前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0020】
(7)本発明の第7の態様は、(4)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記薬液添加工程において、前記薬液は前記湿潤紙力剤と前記アニオン系水溶性高分子とを混合せずに個別に含む2個の薬液であり、それぞれ別の前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0021】
(8)本発明の第8の態様は、(7)に前記薬液添加工程において、前記湿潤紙力剤を含む一方の薬液を前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加した後、2秒以内に前記アニオン系水溶性高分子を含む他方の薬液を前記添加装置によってスプレー噴霧で前記パルプ繊維ウェブに添加することを特徴とするものである。
【0022】
(9)本発明の第9の態様は、(1)に記載の複合型不織布の製造方法であって、前記不織布はスパンボンド不織布であり、前記水流交絡工程は、前記スパンボンド不織布と、その上に載置した前記エアレイド方式で製造された前記パルプ繊維ウェブとを水流交絡処理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エアレイド方式を採用し、薬液に湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース)を併用して添加する複合型不織布の製造方法において、適度なコシがあって、拭き取り時に形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る複合型不織布の製造方法を実施するための製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0026】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
また、複合型不織布におけるMD方向とは、複合型不織布の製造時における搬送方向(Machine Direction)であり、CD方向とは、搬送方向に対して垂直な幅方向(Cross Direction)である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る複合型不織布の製造方法は、不織布と、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブを少なくとも含む、複合型不織布の製造方法である。不織布は特に限定されないが、好ましくはスパンボンド不織布である。
図1は、スパンボンド不織布上に、エアレイド装置によって供給されるパルプ繊維ウェブを載置した後、水流交絡装置により水流交絡処理を施して複合型不織布を製造する、製造方法及び製造装置である。
以下、本発明に係る複合型不織布を製造するのに好適な製造装置を用いた複合型不織布の製造方法を、
図1を参照して説明する。
【0028】
<複合型不織布の製造装置>
本実施形態に係る複合型不織布WPの製造装置(以下、単に製造装置とも称する)1は
図1に示すように、上流側にパルプ繊維ウェブPFWを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布SWを供給するスパンボンド不織布供給装置3、そして脱水処理するサクション装置(以下、脱水装置とも称する)4が備えられる。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように備えられる。
ウェブの搬送方向MDで、これらの装置より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータージェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が備えられる。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が備えられる。
【0029】
(積層工程)
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維PFに解繊する解繊機21や、送風機(図示しない)を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0030】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維PFが分散しながら降下し、下面に配置した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウェブPFWが形成されるように設計してある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウェブPFWを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウェブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウェブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
【0031】
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4はサクション装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウェブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、
図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウェブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウェブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0032】
また、サクション装置4の周囲にはウェブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウェブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウェブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては後述する。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0033】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、あらかじめ準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように、設計されたスパンボンド不織布SWが製造に伴って巻き取られてロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
【0034】
このようにして、積層位置24に位置したスパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウェブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SW及びパルプ繊維ウェブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウェブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウェブ)が下流側へと搬送される。
【0035】
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウェブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布WPに含まれるパルプ繊維ウェブPFWの坪量を制御することができる。複合型不織布WPに含まれるパルプ繊維ウェブPFWの坪量は、従来の一般的な複合型不織布よりもパルプ繊維ウェブPFWの比率が高くなるように設計するのが好ましく、例えば30g/m2以上130g/m2以下であることが好ましく、54g/m2以上73g/m2以下であることがより好ましい。パルプ繊維ウェブPFWの坪量を上記の数値範囲内とすることにより、強度を発現する複合型不織布WPとすることができる。
そして、スパンボンド不織布SWの坪量は、例えば8.0g/m2以上40.0g/m2以下であることが好ましく、製造される複合型不織布WP(スパンボンド不織布SW+パルプ繊維ウェブPFW)の坪量は、例えば38.0g/m2以上170.0g/m2以下であることが好ましい。なお、各坪量はいずれもJIS P 8124に従い測定する。
また、パルプ繊維ウェブPFWの搬送速度やパルプ繊維ウェブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布WPのパルプ繊維ウェブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウェブPFWの搬送速度は、例えば後述する薬液を添加する際の搬送速度と同じ100m/min以上300m/min以下であることが好ましい。
【0036】
(水流交絡工程)
そして、水流交絡装置5では、スパンボンド不織布SWと、その上に載置したエアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウェブPFWとを水流交絡処理する、水流交絡工程が行われる。
具体的には、前処理部となるエアレイド装置2の処理を受けた予備的積層体PWebに、高圧のウォータージェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進し、かつ、上側に位置するパルプ繊維ウェブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向MDに沿って多段(
図1では4段)にウォータージェットヘッド51が配置されている。
【0037】
なお、
図1では、搬送方向MDに対して直角な方向(ウェブの幅方向CD)において延在しているウォータージェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向CDにおいて複数のウォータージェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータージェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06mm以上0.15mm以下である。また、ウォータージェットノズルの間隔は0.4mm以上1.0mm以下とするのが好ましい。
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウェブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましく、例えば、1MPa以上30MPa以下の範囲において選択するのが好ましい。
【0038】
そして、上記ウォータージェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータージェットヘッド51から出る高圧のウォータージェットを上側に位置しているパルプ繊維ウェブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。
ウォータージェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウェブPFW側のパルプ繊維PFが下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により、2つの層の一体化が促進される。
【0039】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55はエアレイド装置2の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータージェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向MDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウェブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
【0040】
(添加工程)
水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布WPにあっては、湿潤状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
そこで、
図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはパルプ繊維ウェブPFWに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6及び乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6及び乾燥装置7による脱水処理、乾燥処理を行うと効率よく複合型不織布WPを製造でき、また、製造される水流交絡後の複合型不織布WPに大きな外圧を掛けることなく乾燥した複合型不織布WPを製造できる。
【0041】
しかしながら、先に指摘したように、複合型不織布WP上のパルプ繊維ウェブPFWから離脱するパルプ繊維PFを確実に抑止できる複合型不織布WPとする必要がある。そのため、本製造装置1には、パルプ繊維PF(紙粉)の脱落を抑止するために、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液を添加するための添加装置9が配置されている。
【0042】
複合型不織布WPの製造方法における工程としては、水流交絡装置5による水流交絡工程の後に、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液を添加装置9によって、パルプ繊維ウェブPFWに添加する添加工程を含む。
なお、添加工程は、上述した複合型不織布WP(パルプ繊維ウェブPFW)を下側に備えられる脱水装置(サクション装置6)によって脱水処理する添加前脱水工程と、脱水装置(サクション装置6)の下流に備えられる薬液添加装置9(以下、添加装置9とも称する)によって、薬液をスプレー噴霧でパルプ繊維ウェブPFWに添加する薬液添加工程と、を含むことが好ましい。
【0043】
具体的には、サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の複合型不織布WPを下側から脱水することが好ましく、そして、サクション装置6の更に下流には、添加装置9が備えられることが好ましい。なお、製造の効率化のために、水流交絡装置5が備えられる場所とサクション装置6及び添加装置9が備えられる場所とがそれぞれ独立していることが好ましい。
このように、サクション装置6の下流に添加装置9が備えられる。すなわち、水流交絡処理の後に、脱水処理を行って複合型不織布WPの水分量を調整した後、複合型不織布WPに薬液を添加することにより、湿潤紙力剤やアニオン系水溶性高分子の定着を均一化し、複合型不織布WPの歩留まりを確保することができる。また、効率よく、強度を発現する複合型不織布WPとすることもできる。なお、サクション装置6は2つ備えられていてもよく、又はそれ以上の多段であってもよい。
【0044】
このとき、添加する薬液は、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含み、また、湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ含有する。薬液が湿潤紙力剤、特にポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)とアニオン系水溶性高分子、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)を含有することで、複合型不織布WPを用いた、特に湿潤時の拭き取りにおいて、紙粉の発生(脱落)を効果的に抑制することができる。
湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン系(PAE)以外に、ポリアクリルアミド系(PAM)、ポリアミドエポキシ系及びポリアミドポリアミン系等を含有してもよく、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)以外にポリアクリルアミド系(PAM)等を含有していてもよい。ポリアミドエピクロロヒドリン系の湿潤紙力剤としては、例えば星光PMC社製の紙力剤WS4030、WS4038、WS4027等を用いることができ、カルボキシメチルセルロース(CMC)としては、日本製紙社製のサンローズ等を用いることができる。
【0045】
また、湿潤紙力剤を含む薬液は、
図1に示すように、添加装置9のスプレー噴霧によってパルプ繊維ウェブPFWに添加される(噴霧される)ことが好ましい。湿潤紙力剤を含む薬液をスプレー噴霧でパルプ繊維ウェブPFWに添加することにより、製造する複合型不織布WPの紙粉の発生を効果的に抑制して、かつ、柔らかい触感も保持することができる。
なお、薬液を添加する際のパルプ繊維ウェブPFWの搬送速度は、100m/min以上300m/min以下であることが好ましい。
【0046】
さらに、薬液添加工程において、湿潤紙力剤の添加量に対するアニオン系水溶性高分子の添加量の割合が、1.00以上であり、1.10以上であることが好ましい。
薬液が後述する2個の薬液である場合、第一添加装置91と第二添加装置92を経て2種類の薬液が接触する結果、サクション装置6の中や乾燥装置7において汚れの堆積が発生する場合があるが、割合が上記の数値範囲内であることにより、操業中に薬液同士が接触し、凝集することにより発生する沈澱物がなく、かつ、複合型不織布WPの触感を損なうことなく、柔らかい複合型不織布WPを製造することができる。なお、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子のそれぞれの添加量は、いずれもパルプ繊維ウェブPFWの絶乾重量に対する添加量である。
【0047】
そして、薬液添加工程において、アニオン系水溶性高分子のパルプ繊維ウェブPFWの絶乾重量に対する添加率が、0.50%以上3.50%以下となるように、薬液をパルプ繊維ウェブPFWに添加する。添加率が0.50%未満であると、製造した複合型不織布が柔らかすぎて、凹凸面の拭き取り時において、繊維が凹凸面に引っ掛かり、紙粉が脱落しやすくなる。添加率が3.50%を超えると、製造した複合型不織布のコシがありすぎて、折り加工等に適さない。
なお、アニオン系水溶性高分子のパルプ繊維ウェブPFWの絶乾重量に対する添加率は1.00%以上3.50%以下であることが好ましい。
【0048】
また、湿潤紙力剤のパルプ繊維ウェブPFWの絶乾重量に対する添加率は2.50%以下であることが好ましい。添加率が2.50%を超えると、薬液添加工程においてノズルが詰まりやすくなる。
なお、湿潤紙力剤のパルプ繊維ウェブPFWの絶乾重量に対する添加率は、0.45%以上2.40%以下であることがより好ましい。
【0049】
また、薬液添加工程においては、
図1に示すように、薬液を2回に分割して噴霧することが好ましい。
すなわち、薬液は、1液目、2液目ともに、いずれもサクション装置6の下流に備えられる添加装置9(第一添加装置91及び第二添加装置92)によって、スプレー噴霧でそれぞれパルプ繊維ウェブPFWに添加されることが好ましい。薬液のスプレー噴霧は、1段(1液)であっても、2段(2液)以上の多段であってもよいが、特に(2回に分割する)2液での添加の場合には、定着せずに流出する薬液が多い代わりに、薬液が分散されるためにノズル詰まりが緩和され、効率的に複合型不織布WPを製造することができる。
【0050】
そして、添加装置9によってスプレー噴霧でパルプ繊維ウェブPFWに添加する薬液添加工程において、噴霧する薬液は、湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子とを混合したものであってもよく、湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子とを混合せずに個別に含む2個の薬液であってもよい。
なお、2個の薬液である場合は、上記の2回に分割するスプレー噴霧において、湿潤紙力剤を含む一方の薬液を第一添加装置91によってスプレー噴霧でパルプ繊維ウェブPFWに添加した後、2秒以内にアニオン系水溶性高分子を含む他方の薬液をより下流の第二添加装置92によってスプレー噴霧でパルプ繊維ウェブPFWに添加することが好ましい。添加する間隔を2秒以内とすることにより、効果的に不織布内に2種類の薬液を留めることができる。
【0051】
(乾燥及び巻取工程)
そして、上記サクション装置6及び添加装置9の下流には、更に乾燥装置7が設置されており、湿潤紙力剤が添加されたパルプ繊維ウェブPFWを備える複合型不織布WPが乾燥処理される。ここでの乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にはエアスルードライヤを採用することが好ましい。
図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体71の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このようにして、連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
【0052】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、エアレイド方式を採用し、薬液に湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース)を併用して添加する複合型不織布の製造方法において、適度なコシがあって、拭き取り時に形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布の製造方法を提供することができる。
【実施例0053】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0054】
表1及び表2に示す各条件において、実施例1~6及び比較例1~6のそれぞれの複合型不織布を製造し、以下の評価を行った。
【0055】
なお、以下の評価とは別に、噴霧する薬液同士を混合した際に発生するゲル状沈澱物の割合を測定した。ゲル状沈澱物の発生割合は、表1及び2に示す「スプレー薬品添加濃度」に調整した(1)(2)の薬液を用意して、それぞれ100gずつ混合し、スターラーで攪拌後、5分間静置後に発生するゲル物質の割合として数値化した。
ゲル状沈澱物の割合(%)
=発生したゲル状沈澱物の重量(g)÷
(スプレー薬品添加濃度に調整した(1)溶液100g+スプレー薬品添加濃度に調整した(2)溶液100g)×100
【0056】
(1)操業性(混合時のゲル発生)
複合型不織布の製造時において、薬液として湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子を併用した際の、混合時のゲル発生の側面で(連続)操業性を評価した。
優(◎):ゲル状沈澱物が発生せず、連続操業性が良好である。
可(○):ゲル状沈澱物の発生が、軽微ではあるが見られる。
不可(×):ゲル状沈澱物が発生し、清掃負担が増大する。
【0057】
(2)ノズル詰まり
複合型不織布の製造時において、薬品添加時のスプレーノズルの詰まりの側面で操業性を評価した。
優(○):ノズル詰まりがなく、連続操業性が良好である。
不可(×):ノズル詰まりが発生しやすく、解消のために停機が必要である。
【0058】
(3)加工適性
製造した複合型不織布における、折り加工の加工適性を評価した。
優(○):コシが適度であり、問題なく折り加工ができる。
不可(×):コシがありすぎて、折り加工ができない。
【0059】
(4)拭き取り時の適度な硬さ
製造した複合型不織布をワイパーとして使用して、対物を拭き取った際の作業性を(官能)評価した。
優(◎):コシがあり、対象面での対物の拭き取りに優れる複合型不織布である。
可(○):コシがややあり、対物の拭き取り時に丸まりにくい複合型不織布である。
不可(×):コシが弱く、丸まってしまい、対物の拭き取りに適さない複合型不織布である。
【0060】
(5)湿潤時拭き取り後の紙粉量
製造した複合型不織布における、湿潤状態での拭き取り後の紙粉の発生を目視で評価した。
優(◎):残留紙粉量が少なく良好である。
可(○):残留紙粉量は優の状態よりも劣り、使用不可と判断するユーザーが現れるレベルである。
不可(×):残留紙粉量が目立つレベルであり、使用するのに適さない。
【0061】
(6)凹凸面拭き取り後の紙粉量
製造した複合型不織布における、凹凸面の拭き取り後の紙粉の発生を目視で評価した。
優(◎):残留紙粉量が少なく良好である。
可(○):残留紙粉量は優の状態よりも劣り、使用不可と判断するユーザーが現れるレベルである。
不可(×):残留紙粉量が目立つレベルであり、使用するのに適さない。
【0062】
(7)総合評価
全ての評価項目に対し、下記の項目に基づいて各実施例及び各比較例の製造方法を4段階でスコアリングした。総合評価が3以上で、良好な歩留まりである複合型不織布を提供できる製造方法となるため合格ラインとした。
1点:連続操業性が不可となる製造方法
2点:連続操業性は良好だが、その他評価項目に不可がある不織布の製造方法
3点:連続操業性は可である不織布の製造方法
4点:連続操業性が優であり、凹凸面拭き取りにやや劣る不織布の製造方法
5点:連続操業性が優であり、その他すべての評価が優である不織布の製造方法
【0063】
以上の各評価の結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【0064】
【0065】
以上より、本実施例に係る製造方法によれば、エアレイド方式を採用し、薬液に湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース)を併用して添加しても、適度なコシがあって、拭き取り時に形状を保ったまま拭き取ることができ、凹凸のある面を拭き取る際に、繊維の引っ掛かりが著しく少なく、湿潤時における拭き取り後の紙粉発生を効果的に抑制することができ、かつ、加工適性に優れる複合型不織布が得られることが確認された。