(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050151
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240403BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20240403BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
B65H3/06 350C
G03B27/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156822
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】並木 政樹
【テーマコード(参考)】
2H012
3F343
5C062
【Fターム(参考)】
2H012CC02
3F343FA03
3F343FB03
3F343JA01
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA04
3F343LC19
3F343LC20
3F343LC21
3F343LD24
3F343LD29
3F343MA03
3F343MA13
3F343MA14
3F343MB04
3F343MC08
3F343MC21
5C062AA02
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB31
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB40
5C062AB42
5C062AC15
5C062AC22
5C062AE15
(57)【要約】
【課題】分離給送と非分離給送との切り換えを動力源を用いて行う構成は、著しいコストアップを招く。
【解決手段】画像読取装置は、動力を受けて回転する入力歯車の一定方向の回転によって分離状態と非分離状態との切り換えを行う切換手段と、入力歯車へ駆動力を伝達する第1動力伝達部と、分離ローラーへ駆動力を伝達する第2動力伝達部と、を備え、第1動力伝達部は、給送ローラーを駆動する第1駆動源から入力歯車へと駆動力を伝達し、更に第1動力伝達部は、第1駆動源が媒体給送時の回転方向である第1回転方向に回転した場合に第1駆動源の動力を入力歯車へ伝達せず、第1駆動源が第1回転方向に対し反対の第2回転方向に回転した場合に第1駆動源の動力を入力歯車へ伝達するワンウェイクラッチを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向の下流へ給送する給送ローラーと、
前記給送ローラーとの間で媒体をニップして分離可能なローラーであって、媒体を前記搬送方向の上流に戻す回転方向に駆動される分離状態と、回転の駆動力が伝達されない非分離状態とを切り換え可能な分離ローラーと、
前記搬送方向において前記給送ローラー及び前記分離ローラーの下流に位置し、媒体を読み取る読み取り部と、
動力を受けて回転する入力歯車を備え、前記入力歯車の一定方向の回転によって前記分離状態と前記非分離状態との切り換えを行う切換手段と、
前記入力歯車へ駆動力を伝達する第1動力伝達部と、
前記分離ローラーへ駆動力を伝達する動力伝達部であって、前記切換手段によって前記分離ローラーへ駆動力を伝達する状態と前記分離ローラーへ駆動力を伝達しない状態との切り換えが行われる第2動力伝達部と、を備え、
前記第1動力伝達部は、前記給送ローラーを駆動する第1駆動源から前記入力歯車へと駆動力を伝達し、
更に前記第1動力伝達部は、前記第1駆動源が媒体給送時の回転方向である第1回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達せず、前記第1駆動源が前記第1回転方向に対し反対の第2回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達するワンウェイクラッチを備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第2動力伝達部は、
第1歯車と、
前記第1歯車に対し進退可能な歯車であって、前記第1歯車と噛み合うことで前記分離ローラーへ駆動力を伝達し、前記第1歯車から離間することで前記分離ローラーへ駆動力を伝達しない第2歯車と、
を備え、
前記切換手段は、前記第2歯車を支持するとともに揺動可能な部材であって、揺動することにより前記第2歯車を前記第1歯車に対し進退させる第1揺動部材と、
前記第2歯車が前記第1歯車に噛み合う方向に前記第1揺動部材を押圧する押圧部材と、
前記入力歯車の回転によって回転するカムと、
揺動可能な部材であって、前記カム及び前記第1揺動部材と係わり合いが可能であり、前記カムの回転に応じて回転することで前記第1揺動部材を揺動させる第2揺動部材と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置において、媒体を搬送する搬送経路の下側を構成する下ユニットと、
前記下ユニットに対し開閉可能なユニットであって、閉じた状態で前記搬送経路の上側を構成する上ユニットと、を備え、
前記給送ローラーは、前記下ユニットに設けられ、
前記分離ローラーは、前記上ユニットに設けられ、
前記第1歯車は、前記上ユニットに設けられ、
前記第2歯車は、前記下ユニットに設けられる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置において、前記搬送方向において前記給送ローラーと前記読み取り部との間に位置し、前記読み取り部に向けて媒体を搬送する搬送ローラー対を備え、
前記第2動力伝達部は、前記搬送ローラー対を駆動する第2駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像読取装置において、前記第2動力伝達部は、前記第1駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第1駆動源を制御する制御手段は、
前記非分離状態での媒体の給送を行うに際し前記分離ローラーが前記分離状態であると、前記第1駆動源を制御して前記分離ローラーを前記非分離状態に切り換え、
前記分離状態での媒体の給送を行うに際し前記分離ローラーが前記非分離状態であると、前記第1駆動源を制御して前記分離ローラーを前記分離状態に切り換える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置においては、特許文献1に示される様に、媒体を給送する際に分離を行う分離給送と分離を行わない非分離給送とを切り換え可能な構成が提案されている。非分離給送は、複数枚のシートが束になった帳票等に対して有効とされている。特許文献1記載の画像読取装置では、分離給送と非分離給送との切り換えは、電磁クラッチにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分離給送と非分離給送との切り換えを動力源を用いて行う構成はユーザビリティの観点で好ましいが、分離給送と非分離給送との切り換えを行う為の専用の動力源を用いると、動力源のコストに加え、更に制御回路やエンコーダー等のコストが追加で必要となり、全体として著しいコストアップを招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の画像読取装置は、媒体を搬送方向の下流へ給送する給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして分離可能なローラーであって、媒体を前記搬送方向の上流に戻す回転方向に駆動される分離状態と、回転の駆動力が伝達されない非分離状態とを切り換え可能な分離ローラーと、前記搬送方向において前記給送ローラー及び前記分離ローラーの下流に位置し、媒体を読み取る読み取り部と、動力を受けて回転する入力歯車を備え、前記入力歯車の一定方向の回転によって前記分離状態と前記非分離状態との切り換えを行う切換手段と、前記入力歯車へ駆動力を伝達する第1動力伝達部と、前記分離ローラーへ駆動力を伝達する動力伝達部であって、前記切換手段によって前記分離ローラーへ駆動力を伝達する状態と前記分離ローラーへ駆動力を伝達しない状態との切り換えが行われる第2動力伝達部と、を備え、前記第1動力伝達部は、前記給送ローラーを駆動する第1駆動源から前記入力歯車へと駆動力を伝達し、更に前記第1動力伝達部は、前記第1駆動源が媒体給送時の回転方向である第1回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達せず、前記第1駆動源が前記第1回転方向に対し反対の第2回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】スキャナーにおける制御系統を示すブロック図。
【
図4】切換手段、第1動力伝達部、及び第2動力伝達部の正面図であって、上ユニットを閉じた状態の図。
【
図5】切換手段、第1動力伝達部、及び第2動力伝達部の正面図であって、上ユニットを開いた状態の図。
【
図7】切換手段を
図4、
図5とは逆に+X方向から見た図であって、分離ローラーを非分離状態とする場合の図。
【
図8】切換手段を
図4、
図5とは逆に+X方向から見た図であって、分離ローラーを分離状態とする場合の図。
【
図9】(A)、(B)は位相検出部と第2揺動部材との関係を示す図。
【
図10】他の実施形態に係る切換手段の正面図であって、分離ローラーを非分離状態とする場合の図。
【
図11】他の実施形態に係る切換手段の正面図であって、分離ローラーを分離状態とする場合の図。
【
図12】制御部が行う処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る画像読取装置は、媒体を搬送方向の下流へ給送する給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして分離可能なローラーであって、媒体を前記搬送方向の上流に戻す回転方向に駆動される分離状態と、回転の駆動力が伝達されない非分離状態とを切り換え可能な分離ローラーと、前記搬送方向において前記給送ローラー及び前記分離ローラーの下流に位置し、媒体を読み取る読み取り部と、動力を受けて回転する入力歯車を備え、前記入力歯車の一定方向の回転によって前記分離状態と前記非分離状態との切り換えを行う切換手段と、前記入力歯車へ駆動力を伝達する第1動力伝達部と、前記分離ローラーへ駆動力を伝達する動力伝達部であって、前記切換手段によって前記分離ローラーへ駆動力を伝達する状態と前記分離ローラーへ駆動力を伝達しない状態との切り換えが行われる第2動力伝達部と、を備え、前記第1動力伝達部は、前記給送ローラーを駆動する第1駆動源から前記入力歯車へと駆動力を伝達し、更に前記第1動力伝達部は、前記第1駆動源が媒体給送時の回転方向である第1回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達せず、前記第1駆動源が前記第1回転方向に対し反対の第2回転方向に回転した場合に前記第1駆動源の動力を前記入力歯車へ伝達するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記切換手段によって前記分離ローラーの前記分離状態と前記非分離状態との切り換えを行う構成において、前記切換手段へ駆動力を伝達する第1動力伝達部は、前記給送ローラーを駆動する第1駆動源の第2回転方向の回転即ち媒体給送時の回転方向とは反対方向の回転の駆動力を前記切換手段へ伝達し、これにより前記切換手段による前記切り換えが行われる為、前記切換手段の為の専用の動力源が不要となり、装置のコストアップを抑制することができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記第2動力伝達部は、第1歯車と、前記第1歯車に対し進退可能な歯車であって、前記第1歯車と噛み合うことで前記分離ローラーへ駆動力を伝達し、前記第1歯車から離間することで前記分離ローラーへ駆動力を伝達しない第2歯車と、を備え、前記切換手段は、前記第2歯車を支持するとともに揺動可能な部材であって、揺動することにより前記第2歯車を前記第1歯車に対し進退させる第1揺動部材と、前記第2歯車が前記第1歯車に噛み合う方向に前記第1揺動部材を押圧する押圧部材と、前記入力歯車の回転によって回転するカムと、揺動可能な部材であって、前記カム及び前記第1揺動部材と係わり合いが可能であり、前記カムの回転に応じて回転することで前記第1揺動部材を揺動させる第2揺動部材とを備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記切換手段を、簡単な構造で実現できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、媒体を搬送する搬送経路の下側を構成する下ユニットと、前記下ユニットに対し開閉可能なユニットであって、閉じた状態で前記搬送経路の上側を構成する上ユニットと、を備え、前記給送ローラーは、前記下ユニットに設けられ、前記分離ローラーは、前記上ユニットに設けられ、前記第1歯車は、前記上ユニットに設けられ、前記第2歯車は、前記下ユニットに設けられることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記第1歯車は前記上ユニットに設けられ、前記第2歯車は前記下ユニットに設けられる。ここで前記上ユニットは前記下ユニットに対し開閉可能である為、前記上ユニットの開閉に応じて前記第1歯車が前記第2歯車に対し進退する。この為、前記第1歯車と前記第2歯車との間隔がばらつき易く、前記第1歯車と前記第2歯車が正しく噛み合えない虞があるが、前記第2歯車は前記押圧部材によって前記第1歯車に向けて押圧される為、前記第1歯車と前記第2歯車との間隔のばらつきを抑制でき、前記第1歯車と前記第2歯車とが常に正しく噛み合うことができる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、前記搬送方向において前記給送ローラーと前記読み取り部との間に位置し、前記読み取り部に向けて媒体を搬送する搬送ローラー対を備え、前記第2動力伝達部は、前記搬送ローラー対を駆動する第2駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記第2動力伝達部は、前記搬送ローラー対を駆動する第2駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達する構成である為、前記分離ローラーを駆動する為の専用の駆動源が不要となり、装置のコストアップを抑制できる。
尚、本態様は上記第3の態様に限らず、上記第1、第2のいずれかの態様に適用しても良い。
【0014】
第5の態様は、第3の態様において、前記第2動力伝達部は、前記第1駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達することを特徴とする。
本態様によれば、前記第2動力伝達部は、前記第1駆動源から前記分離ローラーへと駆動力を伝達する構成である為、前記分離ローラーを駆動する為の専用の駆動源が不要となり、装置のコストアップを抑制できる。
尚、本態様は上記第3の態様に限らず、上記第1、第2のいずれかの態様に適用しても良い。
【0015】
第6の態様は、第1の態様において、前記第1駆動源を制御する制御手段は、前記非分離状態での媒体の給送を行うに際し前記分離ローラーが前記分離状態であると、前記第1駆動源を制御して前記分離ローラーを前記非分離状態に切り換え、前記分離状態での媒体の給送を行うに際し前記分離ローラーが前記非分離状態であると、前記第1駆動源を制御して前記分離ローラーを前記分離状態に切り換えることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記制御手段は、前記非分離状態で媒体の給送を行うべき場合と前記分離状態で媒体の給送を行うべき場合とで前記分離ローラーの状態を適切に切り換える構成であり、即ちユーザー操作によらず前記分離ローラーの状態が適切に切り換わる構成である為、媒体を適切に給送することができるとともにユーザビリティを向上させることができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2~第5のいずれかの態様に適用しても良い。
【0017】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では画像読取装置の一実施形態について、図面に基づき説明する。本実施形態では画像読取装置の一例として、媒体の一例である原稿の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー(以下、単にスキャナー1と称する)を例に挙げる。以降において原稿は符号Pを付して原稿Pと称する。
【0018】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系はX軸方向が装置幅方向であり原稿幅方向である。装置前面から見て左を+X方向、右を-X方向とする。
またY軸方向は原稿搬送方向である。本実施形態においてY軸方向は水平面に対して交差する方向である。以下では原稿Pが給送されていく方向である+Y方向を「下流」といい、これと反対の方向である-Y方向を「上流」という場合がある。
またZ軸方向はY軸方向と交差する方向であって、概ね搬送される原稿の面と直交する方向である。+Z方向は鉛直上方成分を含む方向であり、-Z方向は鉛直下方成分を含む方向である。
【0019】
図1においてスキャナー1は、原稿Pの画像を読み取る読取部20(
図2参照)を内部に備える装置本体2を備えている。
装置本体2は、下ユニット3及び上ユニット4を備えて構成されている。上ユニット4は下ユニット3に対して原稿搬送方向下流の回動軸4b(
図2参照)を回動支点として回動することで開閉可能に設けられている。
図2において符号4-1は、開いた状態の上ユニット4を示している。下ユニット3は原稿搬送経路の下側を形成し、上ユニット4は原稿搬送経路の上側を形成する。原稿搬送経路は下ユニット3と上ユニット4との間に形成される為、上ユニット4を装置前面方向に回動して開くと、原稿搬送経路を開放することができ、これによりジャム処理を行うことができる。
【0020】
図1において装置本体2の装置背面寄りには、給送される原稿Pを支持する原稿支持部11が設けられている。原稿支持部11は、支持面11aを有する。また原稿支持部11には、原稿Pの幅方向の側縁をガイドする一対のエッジガイド、具体的には第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bが設けられている。第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bは、不図示のラックピニオン機構により互いに接近し或いは離間する方向に変位する。
【0021】
原稿支持部11は、第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9を備えている。第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9は、原稿支持部11の内部に収納可能であり、且つ、
図1に示す様に原稿支持部11から引き出し可能に構成される。
【0022】
装置本体2は、上ユニット4の装置前面に、各種読み取り設定や読み取り実行の操作を行う為のパネルであって、また読み取り設定内容等を示すユーザインタフェース(UI)が実現される操作パネル7を備えている。操作パネル7は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種操作を行う為の操作部と、各種情報を表示する為の表示部とを兼用する。
上ユニット4の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、原稿支持部10に支持される原稿Pは、給送口6から装置本体2内部に設けられる読取部20に向けて送られる。
また、下ユニット3の装置前面側には、排出口18から排出される原稿Pを受ける排紙トレイ5が設けられている。
【0023】
次に、
図2を参照して、スキャナー1における原稿搬送経路について説明する。
図2は本発明に係るスキャナー1における原稿搬送経路を簡略的に示す図である。尚、スキャナー1は、原稿読み取りに係る機能、具体的には後述する読取部20を省いた観点において原稿Pを搬送する原稿搬送装置と捉えることができる。また或いは、読取部20を備えていても、原稿搬送の観点に着目すれば、スキャナー1そのものが原稿搬送装置と捉えることができる。
図2において符号Tで示す実線は、原稿搬送経路、換言すれば原稿Pの通過軌跡を示している。原稿搬送経路Tは、下ユニット3と、上ユニット4とによって挟まれた空間である。
【0024】
原稿搬送経路Tの最も上流側には、原稿支持部11が設けられており、原稿支持部11の下流には、原稿支持部11の支持面11aに支持された原稿Pを読取部20に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿Pをニップして分離する分離ローラー15とが設けられている。
【0025】
給送ローラー14は、原稿支持部11の支持面11aに支持された原稿Pのうち、最下位のものと接する。従って、スキャナー1において複数枚の原稿Pを原稿支持部11にセットした場合には、支持面11a側の原稿Pから順に下流側に向けて給送される。
【0026】
給送ローラー14は、原稿幅方向の中心位置に対して対称となる様に2つ配置されている。
給送ローラー14は、給送モーター105(
図3参照)により回転駆動される。給送モーター105から回転トルクを得て、給送ローラー14は
図2において反時計回り方向に回転する。
給送ローラー14には、ワンウェイクラッチ14aを介して、給送モーター105の駆動力が伝達される。給送ローラー14は、給送モーター105から回転トルクを得て、
図2において反時計回り方向、即ち正回転方向に回転することにより、原稿Pを下流へ給送する。
【0027】
給送ローラー14と給送モーター105との間の動力伝達経路にはワンウェイクラッチ14aが設けられているので、給送モーター105が逆回転しても、給送ローラー14は逆回転しない。また、給送モーター105が停止した状態においては、給送ローラー14は搬送される原稿Pと接して、正回転方向に従動回転することができる。
例えば、原稿Pの先端が搬送ローラー対16の下流に配置された第2原稿検出部32で検出されると、後述する制御部100(
図3参照)は、給送モーター105の駆動を停止し、搬送モーター106のみを駆動する。これにより原稿Pは搬送ローラー対16により搬送され、そして給送ローラー14は搬送される原稿Pに接して正回転方向に従動回転する。
【0028】
次に分離ローラー15は、原稿Pを分離する分離状態と、原稿Pを分離しない非分離状態とを切り換え可能である。分離ローラー15は、分離状態では原稿Pを上流に戻す回転方向に駆動され、非分離状態では回転の駆動力が伝達されない。
分離状態と非分離状態とを切り換える構成については、後に詳しく説明する。
【0029】
分離状態において分離ローラー15には、搬送モーター106(
図3参照)から、トルクリミッタ15aを介して回転トルクが伝達される。原稿Pの給送動作中、搬送モーター106からは、分離ローラー15を逆回転方向(
図2において反時計回り方向)に回転させる様な駆動力が分離ローラー15に伝達されている。
【0030】
給送ローラー14と分離ローラー15との間に原稿Pが介在しない場合、或いは1枚のみ介在する場合、分離ローラー15は、トルクリミッタ15aにおいて滑りが生じることにより、搬送モーター106から受ける回転トルクに拘わらず正回転方向に従動回転する。
これに対し、給送ローラー14と分離ローラー15との間に、給送されるべき原稿Pに加えて更に2枚目以降の原稿Pが入り込むと、原稿間で滑りが生じることにより、分離ローラー15は搬送モーター106から受ける駆動トルクにより、逆回転する。これにより、重送されようとする2枚目以降の原稿Pが上流に戻される。
【0031】
給送ローラー14の下流には、搬送ローラー対16と、画像を読み取る読取部20と、排出ローラー対17とが設けられている。搬送ローラー対16は、搬送モーター106により回転駆動される搬送駆動ローラー16aと、従動回転する搬送従動ローラー16bとを備えて成る。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流側に給送された原稿Pは搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流側に位置する読取部20に搬送される。
【0032】
読取部20は、上ユニット4側に設けられた上部読取センサー20aと、下ユニット3側に設けられた下部読取センサー20bとを備えている。本実施形態において、上部読取センサー20a及び下部読取センサー20bは一例として密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。
【0033】
原稿Pは、読取部20において原稿Pの表面及び裏面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、読取部20の下流側に位置する排出ローラー対17にニップされて、下ユニット3の装置前面側に設けられた排出口18から排出される。
排出ローラー対17は、搬送モーター106により回転駆動される排出駆動ローラー17aと、従動回転する排出従動ローラー17bとを備えて成る。
【0034】
続いて、原稿搬送経路Tに設けられた各検出手段について説明する。
原稿支持部11には、原稿支持部11上に原稿Pが存在するか否かを検出する為の原稿有無検出部35が設けられている。原稿有無検出部35は、光源と、光源から発せられる光の反射光成分を受光するセンサーとで構成され、制御部100(
図3参照)は、原稿支持部11上に原稿Pがある場合とない場合とでの反射光強度の違いにより、原稿支持部11上の原稿Pの有無を検知できる。
【0035】
給送ローラー14の下流側には、第1原稿検出部31が設けられている。第1原稿検出部31は、一例として光学式センサーとして構成され、原稿搬送経路Tを挟んで対向配置される発光部31aと、受光部31bとを備えて成り、受光部31bが制御部100に検出光の強度を示す電気信号を送信する。搬送される原稿Pが発光部31aから発せられる検出光を遮ることにより、前記検出光の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部100は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
【0036】
第1原稿検出部31の下流側には、原稿Pの重送を検出する重送検出部30が配置されている。重送検出部30は、
図2に示す様に原稿搬送経路Tを挟んで対向配置される超音波発信部30aと、超音波を受信する超音波受信部30bとを備えて成り、超音波受信部30bが制御部100に検出した超音波の強度に応じた出力値を送信する。原稿Pの重送が生じると、前記超音波の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部100は、原稿Pの重送を検知できる。
【0037】
重送検出部30の下流側には、第2原稿検出部32が設けられている。第2原稿検出部32は、レバーを有する接触式センサーとして構成されており、原稿Pの先端或いは後端の通過に伴いレバーが回動すると、第2原稿検出部32から制御部100に送られる電気信号が変化し、これにより制御部100は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
制御部100は、上述した第1原稿検出部31及び第2原稿検出部32により、原稿送り経路Tにおける原稿Pの位置を把握することができる。
【0038】
続いて
図3を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。
図3において、制御手段としての制御部100は原稿Pの給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1の各種制御を行う。制御部100には操作パネル7からの信号が入力され、また、操作パネル7の表示、特にユーザインタフェース(UI)を実現する為の信号が制御部100から操作パネル7に送信される。
【0039】
制御部100は、給送モーター105と搬送モーター106を制御する。上述したように給送モーター105は、
図2に示した給送ローラー14の駆動源であり、第1駆動源の一例である。また搬送モーター106は、
図2に示した分離ローラー15、搬送ローラー対16、排出ローラー対17、のこれらの駆動源であり、第2駆動源の一例である。給送モーター105と搬送モーター106は、本実施形態ではいずれもDCモーターである。
【0040】
制御部100には、読取部20からの読み取りデータが入力され、また、読取部20を制御する為の信号が制御部100から読取部20に送信される。
制御部100には、上述した原稿有無検出部35、重送検出部30、第1原稿検出部31、第2原稿検出部32、及びその他の検出手段からの信号も入力される。位相検出部36については、後に説明する。
また制御部100には、給送モーター105の回転量を検出するエンコーダー(不図示)や、搬送モーター106の回転量を検出するエンコーダー(不図示)の検出値も入力され、これにより制御部100は各モーターの駆動対象の駆動量を検出できる。
【0041】
制御部100は、CPU101、フラッシュROM102を備えている。CPU101はフラッシュROM102に格納されたプログラム104に従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。各種制御に必要なデータやプログラムは全てフラッシュROM102に記憶され、また、必要に応じてその値が制御部100によって更新されるものとする。また操作パネル7を介してユーザーが入力した各種設定情報も、フラッシュROM102に記憶される。
【0042】
またスキャナー1は外部コンピュータ110と接続可能に構成されており、制御部100には、外部コンピュータ110から情報が入力される。外部コンピュータ110は、不図示の表示部を備えている。この表示部には、外部コンピュータ110が備える不図示の記憶手段に格納された制御プログラムによりユーザインタフェース(UI)が実現される。
【0043】
続いて
図4以降を参照して分離ローラー15の分離状態と非分離状態との切り換えを行う構成について説明する。尚、
図4以降において部材の回転方向を方向Kaと方向Kbとを用いて説明する。
図4において符号3aは下ユニット3を構成する下ユニットフレームであり、符号4aは上ユニット4を構成する上ユニットフレームである。
分離ローラー15の分離状態と非分離状態との切り換えを行う切換手段89は、動力を受けて回転する入力歯車67を備え、入力歯車67の一定方向(方向Ka)の回転によって分離状態と非分離状態との切り換えを行う。尚、本実施形態において切換手段89は、入力歯車67と後述するカム68が方向Kaに回転することで分離ローラー15の分離状態と非分離状態との切り換えを行うが、方向Kbに回転することで分離ローラー15の分離状態と非分離状態との切り換えを行う構成であっても良い。
【0044】
第1動力伝達部50は、入力歯車67へ駆動力を伝達する。
第2動力伝達部80は、分離ローラー15へ駆動力を伝達する動力伝達部であって、切換手段89によって分離ローラー15へ駆動力を伝達する状態と分離ローラー15へ駆動力を伝達しない状態との切り換えが行われる。
切換手段89、第1動力伝達部50、及び第2動力伝達部80は、装置本体2において-X方向の端部に設けられている。
【0045】
先ず、第1動力伝達部50について説明する。
給送モーター105のモーター軸には駆動プーリー51が設けられ、駆動プーリー51と従動プーリー54とに駆動ベルト52が掛け渡されている。従動プーリー54には
図6に示す様に歯車部54aが一体に設けられ、歯車部54aには二段歯車57の大径歯車が噛み合っている。尚、本実施形態において二段歯車とは大径歯車と小径歯車とが一体に構成された歯車である。図の煩雑化を避ける為、二段歯車を構成する大径歯車と小径歯車とのそれぞれには符号を付していない。
従動プーリー54は、回転軸53を中心に回転する。従動プーリー54は、回転軸53に対して相対的に回転する。
【0046】
尚、以下において給送モーター105のモーター軸に設けられた駆動プーリー51が図の方向Kaに回転する場合の給送モーター105の回転を、給送モーター105の正転と称する場合があり、駆動プーリー51が図の方向Kbに回転する場合の給送モーター105の回転を、給送モーター105の逆転と称する場合がある。給送モーター105が正転する場合、給送ローラー14は正転して原稿Pを下流へ給送する。
【0047】
二段歯車57は、回転軸56を中心に回転可能である。回転軸56は、給送ローラー14の回転軸でもあり、給送ローラー14と一体に回転する。二段歯車57は、回転軸56に対して相対的に回転する。二段歯車57と回転軸56との間には上述したワンウェイクラッチ14aが設けられている。二段歯車57が方向Kbに回転する場合、上述したワンウェイクラッチ14aは回転軸56即ち給送ローラー14に駆動力を伝達し、二段歯車57が方向Kaに回転する場合、上述したワンウェイクラッチ14aは回転軸56即ち給送ローラー14に駆動力を伝達しない。
【0048】
図6に示す様に二段歯車57の小径歯車は歯車58と噛み合い、歯車58に駆動力を伝達する。歯車58は回転軸53を中心に回転する。歯車58は、回転軸53に対して相対的に回転する。また回転軸53には歯車59が回転可能に設けられている。歯車59は、回転軸53に対して相対的に回転する。歯車58と歯車59との間には
図4に示す様にワンウェイクラッチ60が設けられており、給送モーター105が正転する場合、歯車58は歯車59に動力を伝達せず、給送モーター105が逆転する場合、歯車58は歯車59に動力を伝達する。これにより歯車59は、方向Kbにのみ回転する。
【0049】
歯車59には、二段歯車63の大径歯車が噛み合っている。二段歯車63の小径歯車は二段歯車64の大径歯車と噛み合っている。二段歯車64の小径歯車は二段歯車65の大径歯車と噛み合っている。二段歯車65の小径歯車は歯車66と噛み合っている。そして歯車66が切換手段89の入力歯車67と噛み合っている。
歯車59の方向Kbの回転により、入力歯車67は方向Kaに回転する。
【0050】
以上により第1動力伝達部50は、駆動プーリー51、駆動ベルト52、従動プーリー54、歯車部54a、二段歯車57、歯車58、ワンウェイクラッチ60、歯車59、二段歯車63、64、65、及び歯車66を備える。
第1動力伝達部50は、下ユニットフレーム3aに設けられる。
【0051】
次に、第2動力伝達部80について説明する。
図4において搬送駆動ローラー16aの回転軸81には、歯車82が固定されている。歯車82には二段歯車83の大径歯車が噛み合い、二段歯車83の小径歯車には二段歯車84の大径歯車が噛み合っている。二段歯車84の小径歯車には歯車85が噛み合っている。符号88は、歯車85の回転軸である。
【0052】
歯車85には歯車86が噛み合っている。上述した歯車82、二段歯車83、84、歯車85、及び歯車86は、下ユニットフレーム3aに設けられている。
そして歯車86には、歯車87が噛み合い可能である。歯車87は、上ユニットフレーム4aに設けられる。搬送駆動ローラー16aが方向Kbに回転し、原稿Pを下流に搬送する場合、回転軸81は方向Kbに回転し、歯車86は方向Kbに回転し、歯車86と噛み合う歯車87は方向Kaに回転する。歯車87は、分離ローラー15の回転軸に設けられた不図示の歯車と噛み合い、歯車87が方向Kaに回転すると、分離ローラー15に対して媒体Pを上流に戻す方向の回転トルクが伝達される。
歯車87は、第1歯車の一例である。歯車86は、歯車87に対し進退可能な歯車であって、歯車87と噛み合うことで分離ローラー15へ駆動力を伝達し、歯車87から離間することで分離ローラー15へ駆動力を伝達しない第2歯車の一例である。
【0053】
以上により第2動力伝達部80は、歯車82、二段歯車83、84、歯車85、86、87を備える。
【0054】
次に、切換手段89について説明する。
切換手段89は、歯車86を支持するとともに揺動可能な部材であって、揺動することにより歯車86を歯車87に対し進退させる第1揺動部材90と、歯車86が歯車87に噛み合う方向に第1揺動部材90を押圧する押圧部材の一例である圧縮ばね91と、を備える。また切換手段89は、入力歯車67の回転によって回転するカム68と、揺動可能な部材であって、カム68及び第1揺動部材90と係わり合いが可能であり、カム68の回転に応じて回転することで第1揺動部材90を揺動させる第2揺動部材73と、を備える。
【0055】
以下、
図7、
図8を参照して更に説明する。
図7は歯車86が歯車87から離間した状態であり、分離ローラー15が非分離状態となる場合の切換手段89の状態である。
図8は歯車86が歯車87と噛み合った状態であり、分離ローラー15が分離状態となる場合の切換手段89の状態である。
カム68は入力歯車67と一体に構成され、方向Kaに回転する。カム68には、第1凹部68aと第2凹部68bとが形成されている。
【0056】
第2揺動部材73は、揺動軸73aを中心に揺動可能であり、揺動軸73aからカム68に向かって延びるカム係合部73bと、揺動軸73aから第1揺動部材90に向かって延びる押圧部73cとを有している。第2揺動部材73は、押圧部材の一例であるねじりばね74によって方向Kaに押圧されている。
【0057】
第1揺動部材90は、回転軸88を中心に揺動可能である。第1揺動部材90は、歯車86が歯車85と噛み合った状態を維持する様に歯車86を支持する。第1揺動部材90の揺動により、歯車86は歯車85の周囲を遊星運動しつつ歯車87に対して進退する。
第1揺動部材90には被押圧部90aが形成されており、被押圧部90aが押圧部73cによって押圧される。
【0058】
第2揺動部材73のカム係合部73bは、ねじりばね74の押圧力によってカム68に押し当たる。
図7に示す様にカム係合部73bがカム68の第1凹部68aに入り込んだ状態では、第2揺動部材73の押圧部73cが第1揺動部材90の被押圧部90aを押圧し、第1揺動部材90は方向Kaへの回転が規制されている。これにより、歯車86が歯車87から離間し、分離ローラー15は非分離状態を維持する。
【0059】
図8に示す様にカム係合部73bがカム68の第1凹部68aから抜け出て、カム係合部73bがカム68の円弧部に押し当たっている状態では、第2揺動部材73の押圧部73cが第1揺動部材90の被押圧部90aから外れ、第1揺動部材90は方向Kaへの回転が許容される。これにより、圧縮ばね91のばね力によって歯車86が歯車87に押圧され、即ち歯車86と歯車87とが噛み合い、分離ローラー15は分離状態となる。
【0060】
尚、カム68に形成された第2凹部68bは、以下の様に機能する。
図9(A)、(B)に示す様に第2揺動部材73のカム係合部73bに臨む位置には位相検出部36が設けられている。第2揺動部材73のカム係合部73bがカム68の円弧部に当接している状態では、
図9(A)に示す様に第2揺動部材73のカム係合部73bが位相検出部36と係わり合い、これにより制御部100(
図3参照)は第2揺動部材73のカム係合部73bがカム68の円弧部に当接していることを検知できる。
【0061】
そして第2揺動部材73のカム係合部73bが
図9(B)に示す様に第2凹部68bに入り込むと、僅かな時間だけ、カム係合部73bが位相検出部36から外れる。従って第2凹部68bは、第1凹部68aよりも小さく形成されている。制御部100(
図3参照)はこの様にカム係合部73bが位相検出部36から外れる僅かな時間を検知することで、カム68の位相を検知することができる。
そして制御部100は、カム68の位相を検知した以降は、位相検出部36の検出情報をもとに、分離ローラー15が分離状態にあるか非分離状態にあるかを検知することができる。具体的には、位相検出部36がカム係合部73bを検出する場合、分離ローラー15が分離状態にあると判断でき、また位相検出部36がカム係合部73bを検出しない場合であってカム係合部73bが第1凹部68aに入り込んでいると判断できる場合は、分離ローラー15が非分離状態にあると判断できる。
【0062】
次に、上述した様に歯車86は下ユニットフレーム3aに設けられ、歯車87は上ユニットフレーム4aに設けられる為、上ユニット4が開放されると、
図5に示す様に切換手段89の状態に係わらず歯車87が歯車86から離間する。
【0063】
以上説明した様に第1動力伝達部50は、第1駆動源の一例である給送モーター105から入力歯車67へと駆動力を伝達する。更に第1動力伝達部50は、ワンウェイクラッチ60を備える。ワンウェイクラッチ60は、給送モーター105が第1回転方向(方向Ka)に回転した場合即ち正転した場合に給送モーター105の動力を入力歯車67へ伝達せず、給送モーター105が第2回転方向(方向Kb)に回転した場合即ち逆転した場合に給送モーター105の動力を入力歯車67へ伝達する。
この様に切換手段89によって分離ローラー15の分離状態と非分離状態との切り換えを行う構成において、切換手段89へ駆動力を伝達する第1動力伝達部50は、給送ローラー14を駆動する給送モーター105の逆転の駆動力を切換手段89へ伝達し、これにより切換手段89による上記切り換えが行われる為、切換手段89の為の専用の動力源が不要となり、装置のコストアップを抑制することができる。
また本実施形態の様な切換手段89の構成によれば、切換手段89を簡単な構成で実現できる。
【0064】
また本実施形態において歯車87は上ユニット4に設けられ、歯車86は下ユニット3に設けられる。ここで上ユニット4は下ユニット3に対し開閉可能である為、上ユニット4の開閉に応じて歯車87が歯車86に対し進退する。この為、歯車87と歯車86との間隔がばらつき易く、歯車87と歯車86が正しく噛み合えない虞があるが、歯車86は押圧部材である圧縮ばね91によって歯車87に向けて押圧される為、歯車87と歯車86との間隔のばらつきを抑制でき、歯車87と歯車86とが常に正しく噛み合うことができる。
【0065】
また本実施形態において第2動力伝達部80は、搬送ローラー対16を駆動する第2駆動源である搬送モーター106から分離ローラー15へと駆動力を伝達する構成である為、分離ローラー15を駆動する為の専用の駆動源が不要となり、装置のコストアップを抑制できる。
【0066】
但し例えば
図4において第2動力伝達部80を構成する二段歯車83が二段歯車57と噛み合う様にして、第2動力伝達部80が給送モーター105から分離ローラー15へと駆動力を伝達する様に構成しても良い。この場合でも、分離ローラー15を駆動する為の専用の駆動源が不要となり、装置のコストアップを抑制できる。
【0067】
また本実施形態では歯車86が歯車87に対して進退するとともに、切換手段89が下ユニット3に設けられる構成であるが、歯車87が歯車86に対して進退するとともに、切換手段89が上ユニット4に設けられていても良い。この場合切換手段89は、上ユニット4に設けられたモーターによって駆動されても良い。上ユニット4に設けられたモーターは、一例として分離ローラー15を駆動する為のモーターが挙げられる。
【0068】
また切換手段89は、上記実施形態に限られず種々の形態をとり得る。
図10、
図11はその一例を示すものである。尚、
図10、
図11において既に説明した構成と同一構成には同一符号を付しており、以下ではその説明は省略する。
切換手段89Aは、歯車66と噛み合う入力歯車92を備えている。入力歯車92は回転軸93を中心に回転する。入力歯車92は二段歯車であり、大径歯車92aが歯車66と噛み合う。小径歯車92bは周方向における歯車形成範囲が一部のみに限定されており、一例として入力歯車92は二つの小径歯車92bを備えている。
【0069】
歯車86は、第1揺動部材94に支持されている。第1揺動部材94は回転軸88を中心に揺動する。第1揺動部材94は歯車部94aを有し、歯車部94aが入力歯車92の小径歯車92bと噛み合いが可能である。
図10は歯車86が歯車87から離間し、分離ローラー15が非分離状態の場合の切換手段89Aの状態である。この状態では、歯車部94aが入力歯車92の小径歯車92bと噛み合い、第1揺動部材94は方向Kaへの回転が規制され、歯車86が歯車87から離間した状態が維持されている。
【0070】
この状態から入力歯車92が方向Kaに回転すると、歯車部94aが入力歯車92の小径歯車92bから外れ、第1揺動部材94は圧縮ばね91のばね力によって方向Kaへ回転し、
図11に示す様に歯車86が歯車87と噛み合い、分離ローラー15が分離状態へと切り換わる。
この状態から再び入力歯車92が方向Kaに回転すると、歯車部94aが次の小径歯車92bと噛み合い、第1揺動部材94は圧縮ばね91のばね力に抗して方向Kbへ回転し、歯車86が歯車87から離間して、分離ローラー15が非分離状態へと切り換わる。
【0071】
尚、本実施形態においても上述した位相検出部36(
図3参照)に相当する位相検出部(不図示)を備えており、制御部100(
図3参照)はこの位相検出部の検出情報に基づき入力歯車92の位相を検知でき、これにより分離ローラー15が分離状態にあるか非分離状態にあるかを検知できる。
【0072】
また上記各実施形態において給送モーター105を制御する制御部100は、非分離状態での原稿Pの給送を行うに際し分離ローラー15が分離状態であると、給送モーター105を制御して分離ローラー15を非分離状態に切り換え、また分離状態での原稿Pの給送を行うに際し分離ローラー15が非分離状態であると、給送モーター105を制御して分離ローラー15を分離状態に切り換える。
以下、
図12を参照して更に説明する。制御部100は、操作パネル7を介して、または外部コンピュータ110から読み取り実行の指示を受けると(ステップS101においてYes)、設定情報を取得する(ステップS102)。ここでの設定情報とは、操作パネル7において、または外部コンピュータ110で動作するスキャナドライバ上において設定された内容に関する情報であり、読み取り解像度、原稿サイズ、原稿種類を含む情報である。原稿種類には、少なくともシート(通常原稿)と冊子とが含まれる。原稿種類としてシート(通常原稿)が設定された場合、分離ローラー15は分離状態とされ、冊子が設定された場合、分離ローラー15は非分離状態とされる。
【0073】
次に制御部100は、位相検出部36(
図3参照)の情報をもとに、分離ローラー15が分離状態にあるか非分離状態にあるかを検知する(ステップS103)。そして現在の分離ローラー15の状態が取得した原稿種類に適した状態と一致するか否かを判断し(ステップS104)、その結果一致した場合は(ステップS104においてYes)、読み取りを実行する(ステップS105)。分離ローラー15の状態が取得した原稿種類に適した状態と一致しない場合は(ステップS104においてNo)、分離状態を切り換え(ステップS106)、その後に読み取りを実行する(ステップS105)。
【0074】
この様に制御部100は、非分離状態での原稿Pの給送を行うに際し分離ローラー15が分離状態であると、給送モーター105を制御して分離ローラー15を非分離状態に切り換え、また分離状態での原稿Pの給送を行うに際し分離ローラー15が非分離状態であると、給送モーター105を制御して分離ローラー15を分離状態に切り換える為、原稿Pを適切に給送することができるとともにユーザビリティを向上させることができる。
【0075】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
特に上記実施形態においてスキャナー1は媒体搬送装置の一態様であり、媒体搬送装置は媒体に記録を行う記録部、一例としてインクジェットヘッドを備えた記録装置において媒体を搬送する媒体搬送装置であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
1…スキャナー、2…装置本体、3…下ユニット、3a…下ユニットフレーム、4…上ユニット、4a…上ユニットフレーム、4b…回動軸、5…排紙トレイ、6…給送口、7…操作パネル、8…第1ペーパーサポート、9…第2ペーパーサポート、11…原稿支持部、11a…支持面、12A…第1エッジガイド、12B…第2エッジガイド、14…給送ローラー、14a…ワンウェイクラッチ、15…分離ローラー、15a…トルクリミッタ、16…搬送ローラー対、16a…搬送駆動ローラー、16b…搬送従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出駆動ローラー、17b…排出従動ローラー、18…排出口、20…読取部、20a…上部読取センサー、20b…下部読取センサー、30…重送検出部、30a…超音波発信部、30b…超音波受信部、31…第1原稿検出部、31a…発光部、31b…受光部、32…第2原稿検出部、35…原稿有無検出部、36…位相検出部、
50…第1動力伝達部、51…駆動プーリー、52…駆動ベルト、53…回転軸、54…従動プーリー、54a…歯車部、56…回転軸、57…二段歯車、58…歯車、59…歯車、60…ワンウェイクラッチ、63、64、65…二段歯車、66…歯車、67…入力歯車、68…カム、68a…第1凹部、73…第2揺動部材、73a…揺動軸、73b…カム係合部、73c…押圧部、74…ねじりばね、
80…第2動力伝達部、81…回転軸、82…歯車、83、84…二段歯車、85、86、87…歯車、88…回転軸、
89…切換手段、90…第1揺動部材、90a…被押圧部、91…圧縮ばね、
92…入力歯車、92a…大径歯車、92b…小径歯車、93…回転軸、94…第1揺動部材、94a…歯車部、95…回転軸、
100…制御部、101…CPU、102…フラッシュROM、104…プログラム、105…給送モーター、106…搬送モーター、110…外部コンピュータ、
P…原稿