(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050157
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】流体フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/01 20060101AFI20240403BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20240403BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240403BHJP
【FI】
B01D29/04 530B
F01M11/03 G
F16H57/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156829
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥後谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 皓太
(72)【発明者】
【氏名】大宅 翼
(72)【発明者】
【氏名】綿芝 良企
【テーマコード(参考)】
3G015
3J063
4D116
【Fターム(参考)】
3G015BG17
3G015BH00
3G015CA07
3G015DA04
3G015DA11
3G015EA05
3J063AA02
3J063AC01
3J063AC03
3J063BA01
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3J063XF21
4D116AA05
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4D116KK04
4D116QB05
4D116QB11
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4D116QB24
4D116QB25
4D116VV04
4D116VV05
4D116ZZ01
(57)【要約】
【課題】フィルタがケースに対する仮止め部で損傷しても、流体フィルタ装置の濾過性能を確保する。
【解決手段】流体フィルタ装置(1)は、上側ケース部材(10)と下側ケース部材(50)とが、シート状のフィルタ(7)の周縁部分を挟み込んだ状態で全周に亘って互いに接合された構造を有する。上側ケース部材(10)と下側ケース部材(50)とが接合される接合部(80)は、上側ケース部材(10)と下側ケース部材(50)とが互いに直接溶着されてケース(3)の内外をシールする第1シール部(81)と、第1シール部(81)の内側でフィルタ(7)が上側ケース部材(10)に対して溶着により仮止めされた仮止め部(85)と、仮止め部(85)と濾過室(5)との間をシールする第2シール部(87)とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過室(5)を内部に有するケース(3)と、
前記ケース(3)に固定されて前記濾過室(5)を仕切るシート状のフィルタ(7)と、を備え、
前記ケース(3)は、流入口(59)が形成された樹脂製の第1ケース部材(50)と、流出口(19)が形成された樹脂製の第2ケース部材(10)と、を組み合わせて構成され、
前記第1ケース部材(50)と前記第2ケース部材(10)とは、前記フィルタ(7)の周縁部分を挟み込んだ状態で全周に亘って互いに接合され、
前記流入口(59)から前記濾過室(5)に流入した流体を前記流出口(19)に向かう過程で前記フィルタ(7)により濾過する流体フィルタ装置であって、
前記第1ケース部材(50)と前記第2ケース部材(10)とが接合される接合部(80)は、
前記第1ケース部材(50)と前記第2ケース部材(10)とが互いに直接溶着されて前記ケース(3)の内外をシールする第1シール部(81)と、
前記第1シール部(81)の内側に位置し、前記フィルタ(7)が前記第1ケース部材(50)および前記第2ケース部材(10)のうちいずれか一方に対して溶着により仮止めされた仮止め部(85)と、
前記仮止め部(85)と前記濾過室(5)との間をシールする第2シール部(87)と、を有する
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体フィルタ装置において、
前記接合部(80)は、前記第1ケース部材(50)と前記第2ケース部材(10)とが前記フィルタ(7)を介して溶着された本止め部(83)を有する、
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体フィルタ装置において、
前記第1ケース部材(50)および前記第2ケース部材(10)のいずれか一方のケース部材の接合面には、他方のケース部材側に突出する突条部(77)が設けられ、
前記突条部(77)は、前記仮止め部(85)と前記濾過室(5)とを仕切るように延び、前記他方のケース部材の接合面(45)に圧接することで、前記第2シール部(87)を構成する
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体フィルタ装置において、
前記第1ケース部材(50)および前記第2ケース部材(10)はそれぞれ、前記濾過室(5)を形成する中空凹部(31,61)を有し、
前記他方のケース部材における前記中空凹部(31,61)の開口の周縁部分には、当該中空凹部(31,61)の内方に張り出した座部(41)が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記仮止め部(85)は、複数の前記座部(41)のそれぞれに設けられ、
前記第2シール部(87)は、前記座部(41)に対する前記突条部(77)の圧接により形成される、
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体フィルタ装置において、
前記他方のケース部材における前記中空凹部(31,61)の開口の周縁部分は、外周側に凸状をなす複数のコーナー部(11a)を有し、
前記座部(41)は、前記複数のコーナー部(11a)のそれぞれに設けられる
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【請求項6】
請求項1、2、4または5に記載の流体フィルタ装置において、
前記第1ケース部材(50)および前記第2ケース部材(10)のうち前記フィルタ(7)が仮止めされたケース部材には、前記第1シール部(81)の内周に沿って延びる溝(37)が形成される
ことを特徴とする流体フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種流体を濾過する流体フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を濾過する流体フィルタ装置として、フィルタが一対のケース部材の間に挟み込まれた構造を有するものが知られる。
【0003】
この種の流体フィルタ装置は、樹脂製の第1ケース部材と、樹脂製の第2ケース部材と、フィルタとを備える。第1ケース部材と第2ケース部材とは、互いに接合され、両者の間に濾過室を形成する。第1ケース部材には、流体を濾過室に流入させる流入口が形成される。第2ケース部材には、流体を濾過室から排出する排出口が形成される。フィルタは、第1ケース部材の接合面と第2ケース部材の接合面との間に挟み込まれ、濾過室を仕切る。第1ケース部材の接合面と第2ケース部材の接合面とは、フィルタの外側において溶着される。
【0004】
このような流体フィルタ装置の一例は、特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した流体フィルタ装置の製造時には、第1ケース部材および第2ケース部材のいずれか一方のケース部材にフィルタを溶着により仮止めし、その状態で第1ケース部材の接合面と第2ケース部材の接合面とを溶着して一体化することで、濾過室を内部に有するケースを構成することが考えられる。一方のケース部材にフィルタを溶着により仮止めすることは、目が細かく腰のないフィルタであっても容易に行うことができる。しかし、そのような製造手順を採る場合、フィルタが一方のケース部材に仮止めするときの溶着により損傷することがある。
【0007】
フィルタが仮止め部で損傷すると、フィルタが流体の動圧を受けて引っ張られることで損傷部位に破れを生じ、流入口から濾過室を流出口に向かって流れる流体が、不純物を含んだままフィルタの破れを通過するおそれがある。このため、流体フィルタ装置の濾過性能が低下する。
【0008】
本発明の目的は、フィルタがケースに対する仮止め部で損傷しても、流体フィルタ装置の濾過性能を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、フィルタの仮止め部と濾過室との間をシールするようにケースの構成を工夫した。
【0010】
具体的には、第1の発明は、流体フィルタ装置を対象とする。第1の発明の流体フィルタ装置は、濾過室を内部に有するケースと、前記ケースに固定されて前記濾過室を仕切るシート状のフィルタとを備える。前記ケースは、流入口が形成された樹脂製の第1ケース部材と、流出口が形成された樹脂製の第2ケース部材とを組み合わせて構成される。前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とは、前記フィルタの周縁部分を挟み込んだ状態で全周に亘って互いに接合される。当該流体フィルタ装置は、前記流入口から前記濾過室に流入した流体を前記流出口に向かう過程で前記フィルタにより濾過する。前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とが接合される接合部は、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とが互いに直接溶着されて前記ケースの内外をシールする第1シール部と、前記第1シール部の内側に位置し、前記フィルタが前記第1ケース部材および前記第2ケース部材のうちいずれか一方に対して溶着により仮止めされた仮止め部と、前記仮止め部と前記濾過室との間をシールする第2シール部とを有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の流体フィルタ装置において、前記接合部が、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とが前記フィルタを介して溶着された本止め部を有する、流体フィルタ装置である。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明の流体フィルタ装置において、前記第1ケース部材および前記第2ケース部材のいずれか一方のケース部材の接合面には、他方のケース部材側に突出する突条部が設けられる、流体フィルタ装置である。前記突条部は、前記仮止め部と前記濾過室とを仕切るように延び、前記他方のケース部材の接合面に圧接することで、前記第2シール部を構成する。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の流体フィルタ装置において、前記第1ケース部材および前記第2ケース部材がそれぞれ、前記濾過室を形成する中空凹部を有する、流体フィルタ装置である。前記他方のケース部材における前記中空凹部の開口の周縁部分には、当該中空凹部の内方に張り出した座部が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。前記仮止め部は、複数の前記座部のそれぞれに設けられる。前記第2シール部は、前記座部に対する前記突条部の圧接により形成される。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の流体フィルタ装置において、前記他方のケース部材における前記中空凹部の開口の周縁部分が、外周側に凸状をなす複数のコーナー部を有する、流体フィルタ装置。前記座部は、前記複数のコーナー部のそれぞれに設けられる。
【0015】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つの流体フィルタ装置において、前記第1ケース部材および前記第2ケース部材のうち前記フィルタが仮止めされたケース部材に、前記第1シール部の内周に沿って延びる溝が形成される、流体フィルタ装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、第1ケース部材と第2ケース部材とが接合される接合部が、第1シール部と、仮止め部と、第2シール部とを有する。第1シール部では、第1ケース部材と第2ケース部材とが互いに直接溶着されるので、ケースの内外をシールすると共に、ケースの接合強度を確保できる。仮止め部では、フィルタが一方のケース部材に対して仮止めされる。フィルタの仮止めは、溶着により行われる。第2シール部では、仮止め部と濾過室との間がシールされる。そのことで、フィルタが仮止め部で損傷して破れを生じても、濾過室を流れる流体がフィルタの破れへ流れることを阻止できる。これにより、不純物を含んだままの流体がフィルタの破れを通過しないようにして、当該流体をフィルタの濾過有効面に通過させることができる。したがって、流体フィルタ装置の濾過性能を確保できる。
【0017】
第2の発明では、接合部が本止め部を有する。本止め部では、第1ケース部材と第2ケース部材とがフィルタを介して溶着される。そのことで、フィルタがケースに堅固に保持される。これにより、フィルタが流体の動圧を受けてずれることを抑制できる。このことは、流体フィルタ装置の濾過性能を確保するのに有利である。
【0018】
第3の発明では、第2シール部が、一方のケース部材の接合面に設けられた突条部の他方のケース部材の接合面に対する圧接により構成される。これによれば、溶着によるシールが難しい部位でも比較的簡単な構造により第2シール部をケースに設けることができる。
【0019】
第4の発明では、仮止め部が、ケース部材の開口の周縁部分における複数の座部のそれぞれに設けられる。複数の座部は、互いに間隔をあけて設けられ、それぞれケース部材の中空凹部の内方に張り出す。それにより、ケースにおける接合部の外周を大きくすることなく、仮止め部を広く設定できる。このことは、流体フィルタ装置を小型化するのに有利である。
【0020】
第5の発明では、座部が、ケース部材の開口の周縁部分における各コーナー部に設けられる。座部には、仮止め部が設けられる。すなわち、フィルタは、ケース部材に対して各コーナー部で溶着される。そのことで、フィルタが要所を押さえて捲れないようにケース部材に仮止めされる。これにより、仮止め部を少なく設定できる。
【0021】
第6の発明では、フィルタが仮止めされたケース部材には溝が形成される。この溝は、第1シール部の内周に沿って延びる。これによれば、ケース部材にフィルタを仮止めし、その状態でフィルタの外周側の余剰部分を、当該溝を利用してカットできる。そうすることで、フィルタをケースの所定位置に好適に保持させることができる。また、第1シール部の溶着で生じるバリを当該溝に収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、流体フィルタ装置を上側ケース部材側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、流体フィルタ装置を下側ケース部材側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線における流体フィルタ装置の要部を例示する断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線における流体フィルタ装置の要部を例示する断面図である。
【
図5】
図5は、流体フィルタ装置の主要な構成部品に係る分解斜視図である。
【
図6】
図6は、上側ケース部材の内部構成を例示する斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のVIIで囲んだ上側ケース部材の要部を例示する斜視図である。
【
図8】
図8は、下側ケース部材の内部構成を例示する斜視図である。
【
図9】
図9は、
図5のIXで囲んだ下側ケース部材の要部を例示する斜視図である。
【
図10】
図10は、流体フィルタ装置の製造における仮止め工程の様子を例示する図である。
【
図11】
図11は、流体フィルタ装置の製造において上側ケース部材にフィルタを仮止めした状態を例示する斜視図である。
【
図12】
図12は、流体フィルタ装置の製造におけるフィルタ素材の切断工程の様子を例示する図である。
【
図13】
図13は、流体フィルタ装置の製造におけるフィルタ素材の余剰部分を除去する工程の様子を例示する図である。
【
図14】
図14は、流体フィルタ装置の製造においてフィルタを整形した状態を例示する斜視図である。
【
図15】
図15は、流体フィルタ装置の製造において上側ケース部材と下側ケース部材とを組み合わせる様子を例示する斜視図である。
【
図16】
図16は、流体フィルタ装置の製造における上側ケース部材と下側ケース部材との溶着工程の様子を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明の理解を容易にするために寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。また、以下に述べる「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【0024】
《実施形態》
この実施形態の流体フィルタ装置1は、オイルストレーナである。オイルストレーナは、自動車においてエンジンオイルを濾過する装置であり、エンジンオイルに混入した異物を除去する役割を担う。本例のオイルストレーナは、パワーステアリング装置の内部を循環するパワーステアリングオイルや、トランスミッションの内部のミッションオイルなどを濾過するのに使用される。
【0025】
図1~
図5に示すように、流体フィルタ装置1は、ケース3と、フィルタ7とを備える。ケース3は、濾過室5を内部に有する。フィルタ7は、ケース3に固定されて濾過室5を仕切る。流体フィルタ装置1は、流入口59から濾過室5に流入したオイルを流出口19に向かう過程でフィルタ7により濾過する。オイルは、流体フィルタ装置1が取り扱う流体の一例である。
【0026】
〈ケース〉
ケース3は、上側ケース部材10と、下側ケース部材50とを組み合わせて構成される。上側ケース部材10は、ケース3の上側部分を構成する分割体である。下側ケース部材50は、ケース3の下側部分を構成する分割体である。上側ケース部材10は、第2ケース部材の一例である。下側ケース部材50は、第1ケース部材の一例である。
【0027】
上側ケース部材10および下側ケース部材50はそれぞれ、射出成形により成形される樹脂製の部材であり、例えばPA6やPA66などのナイロン樹脂からなる。上側ケース部材10および下側ケース部材50の材料は、ナイロン樹脂に限られず、溶着可能な材料であればよい。上側ケース部材10および下側ケース部材50の成形方法についても、射出成形に限られず、別の成形方法で成形されてもよい。
【0028】
〈上側ケース部材〉
図6に示すように、上側ケース部材10は、平面視で矩形状の一辺が部分的に外周側に張り出したような形状を有する。上側ケース部材10の外周部分には、複数のコーナー部11が設けられる。複数のコーナー部11には、外周側に凸状をなす6つの第1コーナー部11aと、内周側に凸状をなす2つの第2コーナー部11bとが含まれる。上側ケース部材10は、上壁部13と、上側周壁部15と、上側接合フランジ17とを備える。
【0029】
上壁部13、上側周壁部15および上側接合フランジ17は一体成形される。上壁部13には、流出口19が形成される。本例の流出口19は、上壁部13の張り出し形状に対応する部分に形成される。流出口19は、ケース3内の濾過室5と連通し、上方に向けて開口する。
図1に示すように、上壁部13における流出口19の周縁部分には、締結フランジ21が設けられる。締結フランジ21は、流出口19の径方向において上側ケース部材10の張り出し形状の両側に対応する部分に延びる。
【0030】
締結フランジ21の上面には、リング溝23が流出口19を囲むように形成される。リング溝23には、Oリング25が嵌入される。締結フランジ21の両端部位にはそれぞれ、取付孔27が形成される。取付孔27には、カラー29が嵌め込まれる。取付孔27には、エンジンのシリンダブロックに締結固定するための締結部材(不図示)がカラー29を介して挿通される。
【0031】
図6に示すように、上側周壁部15は、上壁部13の周縁部分から下方に延び、上側ケース部材10の全周に亘り連続して設けられる。上壁部13と上側周壁部15とは、全体として下方に開放される中空凹部31を形成する。上側ケース部材10は、当該中空凹部31を有する。上側接合フランジ17は、上側周壁部15から外周側へ突出し、上側ケース部材10の全周に亘り連続して延びる。
【0032】
上側接合フランジ17は、上側ケース部材10のうち下側ケース部材50(下側接合フランジ57)と接合される部分である。上側接合フランジ17は、上側ケース部材10における中空凹部31の開口の外周側に位置し、上側ケース部材10の外周部分を構成する。上側接合フランジ17には、第1上側溶着面33(
図6に斜線ハッチングを付して示す)と、第2上側溶着面35(
図6にドットハッチングを付して示す)とが設けられる。
【0033】
第1上側溶着面33および第2上側溶着面35は、それぞれ上側接合フランジ17の全周に亘り連続して延び、互いに間隔をあけて設けられる。第1上側溶着面33は上側接合フランジ17の外周側に位置し、第2上側溶着面35は上側接合フランジ17の内周側に位置する。第1上側溶着面33および第2上側溶着面35は、同一の高さに設けられる。例えば、第1上側溶着面33を通る仮想面を想定したとき、その仮想面上に第2上側溶着面35が位置付けられる。
【0034】
第1上側溶着面33は、フィルタ7が溶着されない面であり、下側ケース部材50(第1下側溶着面64)に直接溶着される面である。第2上側溶着面35は、フィルタ7が溶着される面であると共に、下側ケース部材50(第2下側溶着面66)に溶着される面でもある。第1上側溶着面33の幅は、第2上側溶着面35の幅よりも広い。第1上側溶着面33の幅と第2上側溶着面35の幅とは同じであってもよい。第1上側溶着面33の幅は、第2上側溶着面35の幅よりも狭くてもよい。
【0035】
上側接合フランジ17における第1上側溶着面33と第2上側溶着面35との間には、第1溝37が形成される。第1溝37は、上側接合フランジ17の全周に亘り連続したループ状をなし、下方に開放される。第1溝37は、後述する第1シール部81の内周に沿うと共に本止め部83の外周に沿って延びる。第1溝37は、上側ケース部材10と下側ケース部材50との溶着時に生じたバリが収容されるバリ収容部として機能する。第1溝37は、フィルタ7の余剰部分をレーザーにより切断する際の溶着を回避する部分としても利用される。
【0036】
上側接合フランジ17の周縁部分には、複数の位置決め凹部39が設けられる。複数の位置決め凹部39は、上側接合フランジ17の周方向に互いに間隔をあけて位置する。本例の位置決め凹部39は、上側接合フランジ17の四方の各辺をなす部分に設けられる。各位置決め凹部39は、上下方向に突き抜けて、外周側に開放された切欠き状に形成される。複数の位置決め凹部39はそれぞれ、上側ケース部材10の下側ケース部材50との位置決めに利用される。
【0037】
上側ケース部材10における中空凹部31の開口の周縁部分には、複数の座部41が設けられる。複数の座部41は、それぞれ中空凹部31の内方に張り出し、上側ケース部材10の周方向に互いに間隔をあけて設けられる。座部41は、複数の第1コーナー部11aのそれぞれに設けられる。また、座部41は、上側ケース部材10の張り出し形状とは反対側の辺を構成する部分における中程にも設けられる。
【0038】
図7に示すように、各座部41は、柱状に形成される。各座部41の下面は、下側ケース部材と接合される接合面であり、第2上側溶着面35と面一に形成される。各座部41の下面における中央部分は、フィルタ7が仮止めのために溶着される溶着面部43を構成する。各座部41の下面における周縁部分は、シール面部45を構成する。シール面部45は、溶着面部43を囲むように設定される。
【0039】
〈下側ケース部材〉
図8に示すように、下側ケース部材50は、上側ケース部材10に対応した形状に形成される。下側ケース部材50の外周部分には、複数のコーナー部51が設けられる。複数のコーナー部51には、外周側に凸状をなす第1コーナー部51aと、内周側に凸状をなす第2コーナー部51bとが含まれる。下側ケース部材50は、下壁部53と、下側周壁部55と、下側接合フランジ57とを備える。
【0040】
下壁部53、下側周壁部55および下側接合フランジ57は一体成形される。下壁部53には、流入口59が形成される。本例の流入口59は、下壁部53の張り出し形状とは反対側に偏った位置に形成される。下壁部53における流入口59の周縁部分には、下方に突出した突出片が枠状に設けられる。流入口59は、ケース3内の濾過室5と連通し、下方に向けて開口する。
【0041】
下側周壁部55は、下壁部53の周縁部分から上方に延び、下側ケース部材50の全周に亘り連続して設けられる。下壁部53と下側周壁部55とは、全体として上方に開放される中空凹部61を形成する。下側ケース部材50は、当該中空凹部61を有する。下側接合フランジ57は、下側周壁部55から外周側へ突出し、下側ケース部材50の全周に亘り連続して延びる。
【0042】
下側接合フランジ57は、下側ケース部材50のうち上側ケース部材10(上側接合フランジ17)と接合される部分であり、平面視で上側接合フランジ17に対応する形状とされる。下側接合フランジ57は、下側ケース部材50における中空凹部61の開口の外周側に位置し、下側ケース部材50の外周部分を構成する。下側接合フランジ57には、第1溶着突条部63(
図8に斜線ハッチングを付して示す)と、第2溶着突条部65(
図8にドットハッチングを付して示す)と、カバー片67とが設けられる。
【0043】
第1溶着突条部63および第2溶着突条部65は、それぞれ下側接合フランジ57の全周に亘り連続して延び、互いに間隔をあけて設けられる。第1溶着突条部63は下側接合フランジ57の外周側に位置し、第2溶着突条部65は下側接合フランジ57の内周側に位置する。第1溶着突条部63の上面は、第1下側溶着面64とされる。第2溶着突条部65の上面は、第2下側溶着面66とされる。
【0044】
第1下側溶着面64および第2下側溶着面66もそれぞれ、下側接合フランジ57の周方向に連続したループ状をなし、互いに間隔をあけた位置関係にある。第1下側溶着面64および第2下側溶着面66は、同一の高さに設けられる。例えば、第1下側溶着面64を通る仮想面を想定したとき、その仮想面上に第2下側溶着面66が位置付けられる。
【0045】
第1下側溶着面64は、フィルタ7が溶着されない面であり、上側ケース部材10(第1上側溶着面33)に直接溶着される面である。第2下側溶着面66は、フィルタ7が溶着される面であると共に、上側ケース部材10(第2上側溶着面35)に溶着される面でもある。第1下側溶着面64の幅と第2下側溶着面66の幅との関係は、第1上側溶着面33の幅と第2上側溶着面35の幅との関係と同様に設定される。
【0046】
カバー片67は、下側接合フランジ57の周縁部分から上方に延び、下側接合フランジ57の全周に亘り連続して設けられる。カバー片67は、上側ケース部材10と下側ケース部材50との溶着部分を覆う目隠しとしての役割を担う。下側接合フランジ57におけるカバー片67と第1溶着突条部63との間には、第2溝69が形成される。第2溝69は、上側ケース部材10と下側ケース部材50との溶着時に生じたバリが収容されるバリ収容部として機能する。
【0047】
カバー片67には、複数の位置決め凸部71が設けられる。複数の位置決め凸部71は、下側接合フランジ57の周方向に互いに間隔をあけて位置する。本例の位置決め凸部71は、下側接合フランジ57の四方の各辺をなす部分に、位置決め凹部39に対応するように設けられる。各位置決め凸部71は、上方に突出する板状片によって構成される。複数の位置決め凸部71のそれぞれは、位置決め凹部39に嵌合され、下側ケース部材50の上側ケース部材10との位置決めに利用される。
【0048】
下側ケース部材50における中空凹部61の開口の周縁部分には、複数の張り出し部73が設けられる。複数の張り出し部73は、それぞれ中空凹部の内方に張り出し、下側ケース部材50の周方向に互いに間隔をあけて位置する。張り出し部73は、複数の第1コーナー部51aのそれぞれと、下側ケース部材50の張り出し形状とは反対側の辺を構成する部分における中程とに、各座部41に対応するように設けられる。
【0049】
図9に示すように、各張り出し部73は、柱状に形成される。各張り出し部73の上面は、座部41の下面と対峙する。各張り出し部73の上面における中央部分には、窪み75が形成される。窪み75は、座部41の溶着面部43の下方に対応する。各張り出し部73の上面における周縁部分には、シール突条部77が設けられる。シール突条部77は、上側ケース部材10側に突出し、窪み75を囲むようにC字状に形成され、座部41の溶着面部43(後述の仮止め部85)と濾過室5とを仕切るように延びる。シール突条部77は、座部41の下面(シール面部45)に圧接することで、第2シール部87を構成する。
【0050】
上側ケース部材10と下側ケース部材50とは、上側接合フランジ17と下側接合フランジ57とでフィルタ7の周縁部分を挟み込んだ状態で全周に亘って互いに接合される。上側ケース部材10の中空凹部31と下側ケース部材50の中空凹部61とは、濾過室5を形成する。ケース3は、上側ケース部材10と下側ケース部材50とが接合される接合部80を有する。接合部80は、上側接合フランジ17と下側接合フランジ57とによって構成される。
【0051】
〈フィルタ〉
フィルタ7は、シート状の部材である。フィルタ7は、金属製のメッシュ材によって構成される。フィルタ7は、樹脂製のメッシュ材や樹脂繊維の編み物などによって構成されてもよい。本例のフィルタ7は、例えば200メッシュ以上の細かい目合いものである。このような目の細かいフィルタ7は、柔軟でいわゆる腰が弱いため、自重によって容易に変形する。
【0052】
フィルタ7の外形状は、フィルタ7の周端が第1上側溶着面33の外周縁よりも内側に位置し、且つ第2上側溶着面35の外周縁よりも外側に位置する形状とされる。言い換えると、フィルタ7の周端は、第1溝37に対応する位置を延びる。フィルタ7は、各座部41の下面および第2上側溶着面35を覆うように配置されるが、第1上側溶着面33には至らず、当該第1上側溶着面33に溶着されない。
【0053】
フィルタ7の周縁部分は、上側接合フランジ17と下側接合フランジ57とで挟まれ、各座部41の下面と、第2上側溶着面35および第2下側溶着面66とに溶着される。このように、フィルタ7は、ケース3に固定されて、上側ケース部材10の内部空間と下側ケース部材50の内部空間とに濾過室5を仕切る。フィルタ7は、事前に裁断されたものではなく、後述するように、上側ケース部材10にセットされて仮止めされた後に、所定の形状となるように切断されてなる。
【0054】
〈ケースの接合部〉
図3および
図4に示すように、ケース3の接合部80は、第1シール部81と、本止め部83と、複数の仮止め部85と、複数の第2シール部87とを有する。
【0055】
第1シール部81は、ケース3の内外をシールする部分である。第1シール部81は、ケース3の全周に亘りループ状に設けられ、ケース3を密閉する。第1シール部81では、上側ケース部材10と下側ケース部材50とが互いに直接溶着される。第1シール部81は、第1上側溶着面33と第1下側溶着面64との溶着部分で構成される。
図7に一点鎖線で示すように、第1シール部81は、第1上側溶着面33上に設定される。
【0056】
本止め部83は、ケース3においてフィルタ7が本止めされる部分である。本止め部83は、ケース3の全周に亘りループ状に設けられる。本止め部83では、上側ケース部材10と下側ケース部材50とがフィルタ7を介して溶着される。本止め部83は、上側ケース部材10とフィルタ7と下側ケース部材50との溶着部分で構成される。
図7に二点鎖線で示すように、本止め部83は、第2上側溶着面35上に設定される。
【0057】
複数の仮止め部85はそれぞれ、上側ケース部材10においてフィルタ7が仮止めされた部分である。仮止め部85は、複数の座部41のそれぞれに設けられ、第1シール部81の内側に位置する。
図7に格子ハッチングを付して示すように、各仮止め部85は、座部41の溶着面部43に設定される。各仮止め部85では、フィルタ7が溶着により座部41に固定される。
【0058】
複数の第2シール部87はそれぞれ、仮止め部85と濾過室5との間をシールする部分である。各第2シール部87は、仮止め部85の周囲にC状に設けられる。各第2シール部87の両端部は、本止め部83に近接するかまたは繋がる。各第2シール部87では、シール突条部77の上端部がフィルタ7を介して座部41のシール面部45に圧接する。第2シール部87は、座部41のシール面部45に対するシール突条部77の圧接により形成される。
図7に破線で示すように、各第2シール部87は、仮止め部83の濾過室5側を湾曲状に延び、本止め部83との組合せで仮止め部85を囲むように設けられる。
【0059】
-流体フィルタ装置の製造方法-
次に、上記構成の流体フィルタ装置1の製造方法について説明する。まず、上側ケース部材10と、下側ケース部材50と、フィルタ素材90とを用意する。フィルタ素材90は、フィルタ7よりも十分に大きな原反材料である。また、レーザー加工装置100と、超音波溶着装置200とを用意する。レーザー加工装置100は、第1セット治具101と、クランプ103と、押さえ治具107と、レーザー照射機109とを備える(
図10参照)。超音波溶着装置200は、第2セット治具201と、超音波ホーン203とを備える(
図16参照)。
【0060】
第1セット治具101は、上側ケース部材10を保持する治具である。第1セット治具101には、上側ケース部材10の上側接合フランジ17が嵌まる凹部102が上方に開放するように形成される。この凹部102に上側ケース部材10の上側接合フランジ17を上側から嵌めることで、第1セット治具101により上側ケース部材10を所定の位置に位置決めする。
【0061】
クランプ103は、上側クランプ部材104と下側クランプ部材105とを備える。クランプ103は、上側クランプ部材104と下側クランプ部材105とを上下方向に接離可能に構成される。上側クランプ部材104と下側クランプ部材105を上下に離した状態にしてから、上側クランプ部材104と下側クランプ部材105との間にフィルタ素材90を差し込み、その後、上側クランプ部材104と下側クランプ部材105とを接近させることで、フィルタ素材90をクランプ103で挟み込んで保持する。
【0062】
押さえ治具107は、フィルタ素材90を押さえる治具である。押さえ治具107は、図示しない駆動機構によって上下方向に移動可能に構成される。押さえ治具107の位置は、上側ケース部材10の上側接合フランジ17を上方から押圧する位置と、上側接合フランジ17から上方へ離れた位置とに切り替えられる。押さえ治具107の形状は、各座部41の溶着面部43を覆わないように設計される。
【0063】
レーザー照射機109は、レーザー発信器111と、レーザーノズル112と、制御部113とを有する。レーザー発信器111は、レーザー光Lを出力する。レーザーノズル112は、レーザー発信器111から出力されたレーザー光Lを目標位置へ照射する。制御部113は、ユーザによるレーザー光Lの出力、焦点の大きさの入力を受け付け、ユーザが入力したレーザー光Lの出力および焦点の大きさとなるように、レーザー発信器111を制御する。
【0064】
レーザー照射機109は、レーザーノズル112を、例えばロボットなどからなる駆動装置によって所定の軌跡を描くように移動可能に構成される。レーザーノズル112の移動軌跡および移動速度(レーザー光の走査速度)は、ユーザによって任意に設定される。
【0065】
流体フィルタ装置1の組立て作業を開始するとき、押さえ治具107は上方へ移動させておく。その状態で、上側ケース部材10を第1セット治具101に保持させる。そして、クランプ103で保持したフィルタ素材90を上側ケース部材10の上に配置する(
図10参照)。
【0066】
しかる後、押さえ治具107を下方へ移動させて、
図10に示すように、上側ケース部材10の上側接合フランジ17を上方から押圧させる。上側接合フランジ17の上にはフィルタ素材90が配置されているので、フィルタ素材90が上側接合フランジ17に押さえ付けて固定される。これにより、上側ケース部材10の上側接合フランジ17上にフィルタ素材90を張架し、上側ケース部材10を所定の位置に位置決めする。
【0067】
このようにフィルタ素材90を張架した後、レーザー照射機109を作動させてレーザーノズル112から各座部41下面の溶着面部43に向けてレーザー光Lを出力する。各座部41の溶着面部43上には、フィルタ素材90が配置されるので、フィルタ素材90がレーザー光Lを吸収して発熱する。また、溶着面部43も同様に発熱する。このときの単位時間当たりの発熱量は、レーザー光Lの出力、焦点の大きさ、照射時間によって調整でき、溶着面部43を溶融させてフィルタ素材90を溶着可能な発熱量に設定される。溶着面部43で溶融した樹脂が固化すると、その固化樹脂により仮止め部85が形成され、フィルタ素材90が仮止め部85に仮止めされる。
【0068】
そうした仮止め工程では、レーザー光Lを座部41の溶着面部43の周縁に沿って走査してフィルタ素材90を1つ又は2つ以上の環状に溶着してもよいし、レーザー光Lを溶着面部43に間欠的に照射してフィルタ素材90をスポット状に溶着してもよい。フィルタ素材90を仮止めし終えると、押さえ治具107によるフィルタ素材の押さえを解除する。以上により、
図11に示すような、フィルタ素材90を上側ケース部材10に仮止めした製造過程品が作製される。この段階で、フィルタ素材90は、仮止めのためのレーザー光Lの照射およびそれによる溶着により損傷しているおそれがある。
【0069】
次いで、フィルタ素材90における第1上側溶着面33と第2上側溶着面35との間に対応する部位を切断する。フィルタ素材90を切断する手段としては、仮止め工程で使用したレーザー照射機109を利用する。フィルタ素材90の切断にあたっては、レーザー照射機109において、レーザー光Lのエネルギー密度が仮止め工程に比べて高くなるように、レーザー光Lの出力、焦点の大きさ、走査速度をフィルタ素材90の切断が可能な値に設定する。
【0070】
そして、
図12に示すように、レーザーノズル112を第1溝37に沿って移動させつつ、レーザー光Lを第1溝37内に向けて照射することで、フィルタ素材90を第1溝に沿って切断する。続いて、
図13に示すように、クランプ103を移動させるか、または第1セット治具101を移動させるかして、余剰分のフィルタ素材91を取り除く。そうすることで、
図14に示すように、上側ケース部材10に仮止めされた状態で、所定の形状に整形されたフィルタ7を得ることができる。
【0071】
その後、上側ケース部材10を第2セット治具201に載せ換える。第2セット治具201には、上側ケース部材10の上側接合フランジ17が嵌まる凹部202が上方に開放するように形成される。
図15に示すように、下側ケース部材50を、第2セット治具201にセットされた上側ケース部材10に上方から被せる。そして、位置決め凸部71を位置決め凹部39に嵌合させることで両ケース部材10,50を位置合わせし、第1上側溶着面33と第1下側溶着面64、第2上側溶着面35と第2下側溶着面66とを重ね合わせる(
図16参照)。なお、上側ケース部材10に対する下側ケース部材50の位置決めは、第2セット治具201で行ってもよい。
【0072】
続いて、
図16に示すように、下側ケース部材50の上面、詳しくは下側接合フランジ57の上面に超音波ホーン203を押し当てる。この状態で超音波ホーン203を振動させることにより、第1上側溶着面33と第1下側溶着面64との間、第2上側溶着面35と第2下側溶着面66との間に摩擦熱が発生し、第1上側溶着面33と第1下側溶着面64、第2上側溶着面35と第2下側溶着面66とが溶融する。そして、溶融した樹脂が固化することで、第1上側溶着面33と第1下側溶着面64とが全周に亘って溶着されることで第1シール部が形成される。また、第2上側溶着面35と第2下側溶着面66とがフィルタ7を介して全周に亘って溶着されることで、本止め部83が形成される。
【0073】
このとき、フィルタ7には、第2上側溶着面35と第2下側溶着面66の溶融樹脂が入り込むので、その樹脂の固化後、フィルタ7がケースに堅固に保持される。そうした上側ケース部材10と下側ケース部材50との溶着時に発生したバリは、第1溝37および第2溝69に収容される。また、各シール部87は、下側接合フランジ57よりもケース3の内側に設けられるため、超音波ホーン203を押し当て難い位置にあり超音波溶着を行うことは難しいが、この超音波溶着工程でシール突条部77の上端部がフィルタ7を介して座部のシール面部45に圧接される。
【0074】
しかる後、締結フランジ21のリング溝23にOリング25を嵌入し、締結フランジの各取付孔27にカラー29を嵌め込む。以上のようにして、流体フィルタ装置1を製造することができる。
【0075】
-実施形態の特徴-
この実施形態の流体フィルタ装置1では、上側ケース部材10と下側ケース部材50とが接合される接合部80が、第1シール部81と、仮止め部85と、第2シール部87とを有する。第1シール部81では、上側ケース部材10と下側ケース部材50とが互いに直接溶着されるので、ケース3の内外をシールすると共に、ケース3の接合強度を確保できる。仮止め部85では、フィルタ7が上側ケース部材10に対して仮止めされる。フィルタ7の仮止めは、溶着により行われる。第2シール部87では、仮止め部85と濾過室5との間がシールされる。そのことで、フィルタ7が仮止め部85で損傷して破れを生じても、濾過室5を流れるオイルがフィルタ7の破れへ流れることを阻止できる。これにより、不純物を含んだままのオイルがフィルタ7の破れを通過しないようにして、当該オイルをフィルタ7の濾過有効面に通過させることができる。したがって、流体フィルタ装置1の濾過性能を確保できる。
【0076】
この実施形態の流体フィルタ装置1では、ケースの接合部80が本止め部83を有する。本止め部83では、上側ケース部材10と下側ケース部材50とがフィルタ7を介して溶着される。そのことで、フィルタ7がケース3に堅固に保持される。これにより、フィルタ7がオイルの動圧を受けてずれることを抑制できる。このことは、流体フィルタ装置1の濾過性能を確保するのに有利である。
【0077】
この実施形態の流体フィルタ装置1では、第2シール部87が、下側ケース部材50の接合面に設けられたシール突条部77の上側ケース部材10の座部41下面(シール面部45)に対する圧接により構成される。これによれば、溶着によるシールが難しい部位でも比較的簡単な構造により第2シール部87をケース3に設けることができる。
【0078】
この実施形態の流体フィルタ装置1では、仮止め部85が、上側ケース部材10の開口の周縁部分における複数の座部41のそれぞれに設けられる。複数の座部41は、互いに間隔をあけて設けられ、それぞれ上側ケース部材10の中空凹部31の内方に張り出す。それにより、ケース3における接合部80の外周を大きくすることなく、仮止め部85を広く設定できる。このことは、流体フィルタ装置1を小型化するのに有利である。
【0079】
この実施形態の流体フィルタ装置1では、座部41が、上側ケース部材10の開口の周縁部分において外周側に凸状をなす各第1コーナー部11aに設けられる。座部41には、仮止め部85が設けられる。すなわち、フィルタ7は、上側ケース部材10に対して各第1コーナー部11aで溶着される。そのことで、フィルタ7が要所を押さえて捲れないように上側ケース部材10に仮止めされる。これにより、仮止め部85を少なく設定できる。
【0080】
この実施形態の流体フィルタ装置1では、フィルタ7が仮止めされた上側ケース部材10には第1溝37が形成される。この第1溝37は、第1シール部81の内周に沿って延びる。これによれば、上側ケース部材10にフィルタ7を仮止めし、その状態でフィルタ7の外周側の余剰部分を、当該第1溝37を利用してカットできる。そうすることで、フィルタ7をケース3の所定位置に好適に保持させることができる。また、第1シール部81の溶着で生じるバリを当該第1溝37に収容できる。
【0081】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、仮止め部85が上側ケース部材10に設けられるとしたが、これに限らない。仮止め部85は、下側ケース部材50に設けられてもよい。例えば、下側ケース部材50の各張り出し部73と、上側ケース部材10の各座部41とを交換した構成を採ることができる。つまり、下側ケース部材50には、各張り出し部73に代えて、上側ケース部材10の座部41に相当する部分が設けられ、上側ケース部材10には、各座部41に代えて、下側ケース部材50の張り出し部73(シール突条部77を含む部分)に相当する部分が設けられてもよい。
【0082】
上記実施形態では、第2シール部87が、座部41に対するシール突条部77の圧接により形成されるとしたが、これに限られない。シール突条部77は、座部41の下面(シール面部45)に溶着されてもよい。第2シール部87は、座部41に対するシール突条部77の溶着部分によって構成されてもよい。
【0083】
上記実施形態では、流体フィルタ装置1がオイルストレーナである場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。本発明に係る流体フィルタ装置1は、パワーステアリングオイルやミッションオイル以外のオイル、水や気体などの各種流体を濾過する装置としても使用することが可能であり、その用途は特に限定されない。
【0084】
上記実施形態では、本発明に係る流体フィルタ装置1について、第1ケース部材がケースの下側部分を構成し、第2ケース部材がケースの上側部分を構成する態様、つまりケース3の分割方向が上下方向に対応する場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流体フィルタ装置1は、第1ケース部材がケース3の水平方向における一側部分を構成し、第2ケース部材がケース3の水平方向における他側部分を構成する態様であってもよい。本発明は、ケース3の分割方向が水平方向や水平方向に対して傾斜した斜め方向に向くなど、任意の姿勢で使用される流体フィルタ装置に適用可能である。
【0085】
以上のように、本発明の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態が例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに、さらに色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲に属することは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、各種流体を濾過する流体フィルタ装置について有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 流体フィルタ装置
3 ケース
5 濾過室
7 フィルタ
10 上側ケース部材(第2ケース部材)
19 流出口
31 中空凹部
37 第1溝(溝)
41 座部
45 シール面部(接合面)
50 下側ケース部材(第1ケース部材)
59 流入口
61 中空凹部
77 シール突条部(突条部)
80 接合部
81 第1シール部
83 本止め部
85 仮止め部
87 第2シール部