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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050163
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20240403BHJP
   F16J 1/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F02F3/00 E
F02F3/00 301Z
F16J1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156838
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永洞 真康
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA20
3J044CA18
3J044CA25
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】燃焼室内のガス流動を強化する。
【解決手段】ピストンは、冠面側に開口する収容凹部が形成される中央本体部と、前記収容凹部の開口部を囲むフランジおよび環状冠面が形成される外周本体部と、を備えるピストン本体を有する。前記ピストンは、前記収容凹部に収容され、前記開口部から露出する中央冠面を備え、前記フランジに接触する第1位置と前記フランジから離れる第2位置とに移動可能である可動部材を有する。前記ピストンは、前記ピストン本体と前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材を前記第1位置に向けて付勢するバネ部材を有する。前記可動部材が前記第1位置に移動した状態のもとで、前記環状冠面と前記中央冠面とは互いに連続している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに組み付けられるピストンであって、
冠面側に開口する収容凹部が形成される中央本体部と、前記収容凹部の開口部を囲むフランジおよび環状冠面が形成される外周本体部と、を備えるピストン本体と、
前記収容凹部に収容され、前記開口部から露出する中央冠面を備え、前記フランジに接触する第1位置と前記フランジから離れる第2位置とに移動可能である可動部材と、
前記ピストン本体と前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材を前記第1位置に向けて付勢するバネ部材と、
を有し、
前記可動部材が前記第1位置に移動した状態のもとで、前記環状冠面と前記中央冠面とは互いに連続している、
ピストン。
【請求項2】
請求項1に記載のピストンにおいて、
前記環状冠面および前記中央冠面は、バルブリセスが形成されていない平面である、
ピストン。
【請求項3】
請求項1に記載のピストンにおいて、
前記環状冠面および前記中央冠面は、バルブリセスが形成されていない曲面である、
ピストン。
【請求項4】
請求項1に記載のピストンにおいて、
前記バネ部材は、圧縮行程の筒内圧力が前記中央冠面に作用しても前記可動部材を前記第1位置に保持する、
ピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに組み付けられるピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダには、燃焼室を区画するピストンが組み付けられている(特許文献1~4参照)。また、燃焼室において混合気を良好に燃焼させるためには、燃焼室内にタンブル流等のガス流動を発生させることが重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-136724号公報
【特許文献2】特開2007-224787号公報
【特許文献3】特開2013-44278号公報
【特許文献4】特開2014-43839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃焼室内にタンブル流等のガス流動を発生させることにより、混合気の燃焼期間を短縮してエンジン熱効率を高めることが可能であるが、このエンジン熱効率については更なる向上が求められている。つまり、エンジン熱効率の更なる向上を達成するため、燃焼室内のガス流動についても更なる強化が求められている。
【0005】
本発明の目的は、燃焼室内のガス流動を強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るピストンは、エンジンに組み付けられるピストンであって、冠面側に開口する収容凹部が形成される中央本体部と、前記収容凹部の開口部を囲むフランジおよび環状冠面が形成される外周本体部と、を備えるピストン本体と、前記収容凹部に収容され、前記開口部から露出する中央冠面を備え、前記フランジに接触する第1位置と前記フランジから離れる第2位置とに移動可能である可動部材と、前記ピストン本体と前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材を前記第1位置に向けて付勢するバネ部材と、を有し、前記可動部材が前記第1位置に移動した状態のもとで、前記環状冠面と前記中央冠面とは互いに連続している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、可動部材が第1位置に移動した状態のもとで、環状冠面と中央冠面とは互いに連続している。これにより、燃焼室内のガス流動を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エンジンが搭載された車両の一例を示す図である。
図2】エンジンの一例を示す図である。
図3】エンジンの燃焼室およびその近傍を示す図である。
図4図3の矢印α方向からピストンを示す図である。
図5】ピストンを示す断面図である。
図6】ピストンを示す断面図である。
図7】ピストンの分解状態を示す断面図である。
図8】圧縮行程および膨張行程における可動ヘッドの位置を示す図である。
図9】燃焼室内における吸入空気の流れ方向の一例を示す図である。
図10】燃焼室内における吸入空気の流れ方向の一例を示す図である。
図11】ピストンに対して吸気バルブや排気バルブが接触する状況の一例を示す図である。
図12】異常燃焼が発生する状況の一例を示す図である。
図13】他の実施形態1として、圧縮行程および膨張行程における可動ヘッドの位置を示す図である。
図14】他の実施形態2であるピストンを示す断面図である。
図15】他の実施形態3であるピストンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[車両]
図1はエンジン10が搭載された車両11の一例を示す図である。図1に示すように、車両11には、エンジン10を備えたパワーユニット12が搭載されている。パワーユニット12の出力軸13には、プロペラ軸14およびデファレンシャル機構15を介して車輪16が連結されている。図示するパワーユニット12は、後輪駆動用のパワーユニットであるが、これに限られることはなく、前輪駆動用や全輪駆動用のパワーユニットであっても良い。また、後述するように、図示するエンジン10は、水平対向エンジンであるが、これに限られることはなく、例えば、直列エンジン、V型エンジン或いは単気筒エンジンであっても良い。
【0011】
[エンジン]
図2はエンジン10の一例を示す図である。図2に示すように、エンジン10は、一方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック20と、他方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック21と、一対のシリンダブロック20,21に支持されるクランク軸22と、を有している。各シリンダブロック20,21には、動弁機構23等を備えたシリンダヘッド24が取り付けられている。これらのシリンダヘッド24には、燃焼室25に連通する吸気ポート26が形成されるとともに、吸気ポート26を開閉する吸気バルブ27が組み付けられている。また、シリンダヘッド24には、燃焼室25に連通する排気ポート28が形成されるとともに、排気ポート28を開閉する排気バルブ29が組み付けられている。なお、シリンダヘッド24には、燃焼室25内の混合気に点火する図示しない点火プラグが設けられており、吸入空気に向けて燃料を噴射する図示しないインジェクタが設けられている。
【0012】
各シリンダブロック20,21にはシリンダボア30が形成されており、各シリンダボア30にはピストン31が収容されている。このように、エンジン10のシリンダブロック20,21には、本発明の一実施形態であるピストン31が組み付けられている。このピストン31にはピストンピン32が取り付けられており、ピストンピン32にはコネクティングロッド33の小端部34が連結されている。また、クランク軸22にはクランクジャーナル35に対して偏心するクランクピン36が設けられており、クランクピン36にはコネクティングロッド33の大端部37が連結されている。このように、クランク軸22とピストン31とは、コネクティングロッド33を介して互いに連結されている。
【0013】
[ピストン]
図3はエンジン10の燃焼室25およびその近傍を示す図であり、図4図3の矢印α方向からピストン31を示す図である。また、図5および図6はピストン31を示す断面図であり、図7はピストン31の分解状態を示す断面図である。図5および図6には、図4のA1-A1線に沿うピストン31の断面と、図4のA2-A2線に沿うピストン31の断面と、が示されている。なお、図5には可動ヘッド42を前進位置に移動させた状態が示されており、図6には可動ヘッド42を後退位置に移動させた状態が示されている。
【0014】
図3に示すように、シリンダボア30、ピストン31およびシリンダヘッド24によって、燃焼室25が区画されている。図4図7に示すように、ピストン31は、収容凹部40が形成されるピストン本体41と、ピストン本体41の収容凹部40に収容される可動ヘッド(可動部材)42と、を有している。また、ピストン本体41の収容凹部40には皿バネ(バネ部材)43が収容されており、この皿バネ43はピストン本体41と可動ヘッド42との間に配置されている。なお、収容凹部40に対して可動ヘッド42および皿バネ43を収容するため、ピストン本体41は所定部位で分割される分割構造を有している。例えば、図5に破線βで示した部位において、ピストン本体41を2つに分割することにより、ピストン本体41の収容凹部40に対して可動ヘッド42および皿バネ43を収容することが可能である。
【0015】
図7に示すように、ピストン本体41は、ピストン中央に設けられる中央本体部44と、中央本体部44の径方向外側に設けられる外周本体部45と、によって構成されている。ピストン本体41の中央本体部44には、ピストン冠面(冠面)46側に開口する収容凹部40が形成されており、ピストンピン32を挿入するためのピンボス部47が形成されている。また、ピストン本体41の外周本体部45には、収容凹部40の開口部40oを囲む内フランジ(フランジ)48および環状冠面49が形成されている。さらに、ピストン本体41の外周本体部45には、ピストンリング50が取り付けられるランド部51が形成されており、シリンダボア30の内周面に摺動自在に接触するスカート部52が形成されている。なお、外周本体部45の内フランジ48は、ランド部51から径方向内側に延びて形成されている。また、ピストン冠面46は、ピストン頂面、ピストン上面或いはピストンヘッドとも呼ばれている。
【0016】
ピストン31の可動ヘッド42は、中央冠面60が形成される円盤状のヘッド本体61と、ヘッド本体61から径方向外側に拡がる外フランジ62と、を有している。可動ヘッド42はピストン本体41の収容凹部40に収容されており、可動ヘッド42の中央冠面60は収容凹部40の開口部40oから露出している。また、ヘッド本体61の外周面61aには環状シール63が取り付けられており、ヘッド本体61の外周面61aとこれに対向する内フランジ48の内周面48aとの隙間は環状シール63によって密閉されている。さらに、収容凹部40に収容される可動ヘッド42は、ピストン中心線CLに沿って移動可能となっている。つまり、可動ヘッド42は、図5に示すように、外フランジ62が内フランジ48に接触する前進位置(第1位置)と、図6に示すように、外フランジ62が内フランジ48から離れる後退位置(第2位置)と、に移動可能となっている。
【0017】
図5に示すように、ピストン本体41と可動ヘッド42との間に皿バネ43が設けられることから、可動ヘッド42は皿バネ43のバネ力によって前進位置に付勢される。一方、図6に示すように、可動ヘッド42に対して所定値を超えた推力Faが作用すると、可動ヘッド42は皿バネ43のバネ力に抗して後退位置に移動する。ここで、図8は圧縮行程および膨張行程における可動ヘッド42の位置を示す図である。図8に示すように、圧縮行程および膨張行程の双方において、可動ヘッド42が前進位置を保持するように、皿バネ43のバネ力が設定されている。すなわち、圧縮行程の筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合、つまり吸入空気の圧縮によって上昇する筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合であっても、可動ヘッド42は皿バネ43のバネ力によって前進位置に保持されている。また、膨張行程の筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合、つまり混合気の燃焼によって上昇する筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合であっても、可動ヘッド42は皿バネ43のバネ力によって前進位置に保持されている。
【0018】
図4および図5に示すように、ピストン31の可動ヘッド42が前進位置に移動した状態のもとでは、ピストン本体41の環状冠面49と可動ヘッド42の中央冠面60とは互いに連続している。つまり、環状冠面49と中央冠面60との間には段差が無く、環状冠面49と中央冠面60とは滑らかに連なっている。換言すれば、環状冠面49と中央冠面60とは、段差の無い面一になっている。また、環状冠面49および中央冠面60は、バルブリセスが形成されていない平面である。このように、ピストン31の可動ヘッド42が前進位置に移動した状態のもとでは、環状冠面49および中央冠面60からなるピストン冠面46が凹凸の無い滑らかな平面となっている。なお、バルブリセスとは、吸気バルブ27や排気バルブ29との接触を回避するため、ピストン冠面に形成される凹みである。
【0019】
[ガス流動]
続いて、燃焼室25における混合気のガス流動について説明する。図9および図10は燃焼室25内における吸入空気の流れ方向の一例を示す図である。図9に矢印Faで示すように、エンジン10の吸気行程においては、吸入空気の多くが吸気ポート26と吸気バルブ27との隙間Gに流れ込み、シリンダボア30内に縦渦状のガス流動であるタンブル流Ftが生成される。そして、図10に示すように、ピストン31が上死点近傍に到達する圧縮行程の終盤においても、燃焼室25内にはタンブル流Ftが維持されている。
【0020】
ここで、前述したように、圧縮行程の終盤においても、ピストン31の可動ヘッド42は前進位置に保持され、ピストン冠面46は凹凸の無い滑らかな平面となっている。これにより、図9および図10に符号X1,X2で示すように、タンブル流Ftがピストン冠面46に接触する場合であっても、ピストン冠面46がバルブリセスの無い平面であることから、タンブル流Ftの勢いを維持することができる。これにより、圧縮行程の終盤においても、燃焼室25内に強力なタンブル流Ftを生成することができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン10の熱効率を高めることができる。
【0021】
[フェイルセーフ]
前述したように、環状冠面49および中央冠面60からなるピストン冠面46は、バルブリセスが形成されていない平面であることから、タンブル流等のガス流動を強化することが可能である。しかしながら、ピストン冠面46からバルブリセスを削減することは、吸気バルブ27や排気バルブ29に対してピストン31を接近させる要因である。このため、万一、可変動弁機構の誤動作によってバルブタイミングにズレが生じた場合には、ピストン31に対して吸気バルブ27や排気バルブ29が接触する虞がある。しかしながら、ピストン31には可動ヘッド42が移動可能に設けられることから、ピストン31に対して吸気バルブ27や排気バルブ29が接触した場合であっても、エンジン10の過度な損傷を防止することが可能である。
【0022】
図11はピストン31に対して吸気バルブ27や排気バルブ29が接触する状況の一例を示す図である。図11に符号X3で示すように、ピストン31の可動ヘッド42に対して吸気バルブ27が接触した場合であっても、吸気バルブ27によって可動ヘッド42が押し込まれることから、吸気バルブ27やピストン31の過度な損傷を防止することができる。また、図11に符号X4で示すように、ピストン31の可動ヘッド42に対して排気バルブ29が接触した場合であっても、排気バルブ29によって可動ヘッド42が押し込まれることから、排気バルブ29やピストン31の過度な損傷を防止することができる。
【0023】
[異常燃焼]
また、ピストン31には可動ヘッド42が移動可能に設けられるため、ノッキングやプレイグニッション等の異常燃焼が発生したとしても、これらの異常燃焼によるエンジン部品の損傷を回避することができる。ここで、図12は異常燃焼が発生する状況の一例を示す図である。図12に符号X5で示すように、ノッキング等の異常燃焼によって筒内圧力が急激に上昇した場合には、上昇した筒内圧力によって可動ヘッド42が後退位置に押し込まれる。これにより、燃焼室25の容積を拡大して筒内圧力を下げることができるため、ノッキング等の異常燃焼によるエンジン部品の損傷を回避することができる。
【0024】
[他の実施形態1]
前述の説明では、圧縮行程および膨張行程の双方において可動ヘッド42を前進位置に保持しているが、これに限られることはなく、膨張行程において可動ヘッド42を後退位置に移動させても良い。ここで、図13は、他の実施形態1として、圧縮行程および膨張行程における可動ヘッド42の位置を示す図である。なお、図13において、図8に示した部位や部材と同様の部位や部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図13に示すように、圧縮行程において可動ヘッド42を前進位置に保持し、膨張行程において可動ヘッド42を後退位置に移動させるように、バネ部材である皿バネ70のバネ力を設定しても良い。すなわち、圧縮行程の筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合、つまり吸入空気の圧縮によって上昇する筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合に、可動ヘッド42は皿バネ70のバネ力によって前進位置に保持される。また、膨張行程の筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合、つまり混合気の燃焼によって上昇する筒内圧力が可動ヘッド42に作用する場合に、可動ヘッド42は皿バネ70のバネ力に抗して前進位置から後退位置に移動する。
【0026】
このように、膨張行程で可動ヘッド42を後退位置に移動させる場合であっても、圧縮行程で可動ヘッド42は前進位置に保持されることから、燃焼室25内のタンブル流を強化することができる。つまり、図9および図10に示すように、圧縮行程の終盤においても燃焼室25内に強力なタンブル流Ftを維持することができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン10の熱効率を高めることができる。
【0027】
[他の実施形態2,3]
図5に示した例では、環状冠面49および中央冠面60を平面に形成しているが、これに限られることはなく、環状冠面49および中央冠面60を曲面に形成しても良い。ここで、図14は他の実施形態2であるピストン80を示す断面図であり、図15は他の実施形態3であるピストン90を示す断面図である。なお、図14および図15には、図5と同様の部位で切断した断面が示されている。また、図14および図15において、図5に示した部位や部材と同様の部位や部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図14に示すように、ピストン80は、収容凹部40が形成されるピストン本体81と、ピストン本体41の収容凹部40に収容される可動ヘッド(可動部材)82と、を有している。また、ピストン本体81の環状冠面83と可動ヘッド82の中央冠面84とは、バルブリセスを備えていない凸状の曲面に形成されている。図示するように、ピストン80の可動ヘッド82が前進位置に移動した状態のもとでは、ピストン本体81の環状冠面83と可動ヘッド82の中央冠面84とは互いに連続している。つまり、環状冠面83と中央冠面84との間には段差が無く、環状冠面83と中央冠面84とは滑らかに連なっている。換言すれば、環状冠面83と中央冠面84とは、段差の無い面一になっている。このように、ピストン80の可動ヘッド82が前進位置に移動した状態のもとでは、環状冠面83および中央冠面84からなるピストン冠面(冠面)85が凹凸の無い滑らかな曲面となっている。
【0029】
このように、環状冠面83および中央冠面84からなるピストン冠面85が、バルブリセスの形成されていない曲面であっても、燃焼室25内のタンブル流を強化することができる。つまり、タンブル流がピストン冠面85に接触する場合であっても、ピストン冠面85がバルブリセスの無い曲面であることから、タンブル流の勢いを維持することができる。これにより、圧縮行程の終盤においても燃焼室25内に強力なタンブル流を生成することができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン10の熱効率を高めることができる。
【0030】
図15に示すように、ピストン90は、収容凹部40が形成されるピストン本体91と、ピストン本体41の収容凹部40に収容される可動ヘッド(可動部材)92と、を有している。また、ピストン本体91の環状冠面93と可動ヘッド92の中央冠面94とは、バルブリセスを備えていない凹状の曲面に形成されている。図示するように、ピストン90の可動ヘッド92が前進位置に移動した状態のもとでは、ピストン本体91の環状冠面93と可動ヘッド92の中央冠面94とは互いに連続している。つまり、環状冠面93と中央冠面94との間には段差が無く、環状冠面93と中央冠面94とは滑らかに連なっている。換言すれば、環状冠面93と中央冠面94とは、段差の無い面一になっている。このように、ピストン90の可動ヘッド92が前進位置に移動した状態のもとでは、環状冠面93および中央冠面94からなるピストン冠面(冠面)95が凹凸の無い滑らかな曲面となっている。
【0031】
このように、環状冠面93および中央冠面94からなるピストン冠面95が、バルブリセスの形成されていない曲面であっても、燃焼室25内のタンブル流を強化することができる。つまり、タンブル流がピストン冠面95に接触する場合であっても、ピストン冠面95がバルブリセスの無い曲面であることから、タンブル流の勢いを維持することができる。これにより、圧縮行程の終盤においても燃焼室25内に強力なタンブル流を生成することができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン10の熱効率を高めることができる。
【0032】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。図示するエンジン10は、車両11に搭載されるエンジンであるが、これに限られることはなく、他の装置等に動力源として用いられるエンジンに対し、本発明の実施形態であるピストン31,80,90を適用しても良い。また、図示するエンジン10は、燃料としてガソリンを用いたガソリンエンジンであるが、これに限られることなく、燃料として軽油や水素等を用いたエンジンに対し、本発明の実施形態であるピストン31,80,90を適用しても良い。また、燃焼室25内におけるタンブル流を更に強化するため、吸入空気の流れ方向を制御するタンブルバルブをシリンダヘッド24に取り付けても良い。
【0033】
前述の説明では、ガス流動として、シリンダボア中心軸に直交する軸まわりの旋回流であるタンブル流を強化しているが、これに限られることはなく、シリンダボア中心軸まわりの旋回流であるスワール流を強化しても良い。また、図示する例では、2つの皿バネ43を用いているが、これに限られることはなく、1つの皿バネを用いても良く、3つ以上の皿バネを用いても良い。また、前述の説明では、バネ部材として皿バネ43を用いているが、これに限られることはなく、バネ部材として圧縮コイルバネを用いても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 エンジン
31 ピストン
40 収容凹部
40o 開口部
41 ピストン本体
42 可動ヘッド(可動部材)
43 皿バネ(バネ部材)
44 中央本体部
45 外周本体部
46 ピストン冠面(冠面)
48 内フランジ(フランジ)
49 環状冠面
60 中央冠面
70 皿バネ(バネ部材)
80 ピストン
81 ピストン本体
82 可動ヘッド(可動部材)
83 環状冠面
84 中央冠面
85 ピストン冠面(冠面)
90 ピストン
91 ピストン本体
92 可動ヘッド(可動部材)
93 環状冠面
94 中央冠面
95 ピストン冠面(冠面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15