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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050165
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両の音出力装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20240403BHJP
   G10K 11/28 20060101ALI20240403BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20240403BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B60Q5/00 680D
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 670E
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 670Z
G10K11/28
H04R1/34 310
H04R7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156840
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大豊 公志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢己
(72)【発明者】
【氏名】田中 義治
【テーマコード(参考)】
5D016
5D018
【Fターム(参考)】
5D016AA01
5D018AF11
(57)【要約】
【課題】音出力装置から車外側へ放出される音波を多くする。
【解決手段】音出力装置20は、外装部材21、加振器25及び反射部材31を備える。外装部材21は、車両10の外殻部分の一部を構成するとともに、開口部12を有する。加振器25は、外装部材21のうち、開口部12から離間した箇所に対し後側から取り付けられ、かつ外装部材21を振動させて音波を発生させる。反射部材31は、外装部材21よりも後側に配置される。反射部材31は、加振器25及び開口部12を後側から取り囲み、かつ外装部材21で発生されて後側へ放出される音波SW2を反射させて、開口部12に導く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外殻部分の一部を構成するとともに、開口部を有する外装部材と、
前記外装部材のうち、前記開口部から離間した箇所に対し車内側から取り付けられ、かつ前記外装部材を振動させて音波を発生させる加振器とを備え、
さらに、前記外装部材よりも車内側には、前記加振器及び前記開口部を車内側から取り囲み、かつ前記外装部材で発生されて車内側へ放出される音波を反射させて、前記開口部に導く反射部材が配置されている車両の音出力装置。
【請求項2】
前記反射部材のうち、前記車両の外内方向における中間部よりも車外側の部分は、空洞部を有しない反射層により構成されている請求項1に記載の車両の音出力装置。
【請求項3】
前記反射層は、塗膜により形成されている請求項2に記載の車両の音出力装置。
【請求項4】
前記反射部材のうち、前記中間部よりも車内側の部分は、前記空洞部を有する吸音層により構成されている請求項2又は請求項3に記載の車両の音出力装置。
【請求項5】
前記吸音層は、多孔体により構成されている請求項4に記載の車両の音出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、かつ音波を放出して車両の周囲の人に対し、音波で車両の存在を知らせる車両の音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外装部材から音波を放出して、車両の周囲の人に対し、音波で車両の存在を知らせる音出力装置が種々提案されている。例えば、特許文献1には、スピーカーとアンダーカバーとを備えた音出力装置が記載されている。スピーカーは、車両の前端部の外装部材、例えば、フロントグリル、アンダーグリル等に対し、後方となる箇所に配置されている。スピーカーは、下方に向けて音波を発生する。アンダーカバーは、スピーカーの下方に配置されている。アンダーカバーは、前側ほど低くなるように傾斜する傾斜部を有している。
【0003】
この音出力装置では、スピーカーが音波を発生すると、その音波は、アンダーカバーに向けて空気を伝播する。音波は、アンダーカバーの傾斜部に当たって反射されることで、伝播方向を前方へ変えられる。伝播方向を変えられた音波は、空気を伝播し、アンダーグリルの隙間から前方へ放出される。この音波により、車両の存在が車両の前方の人に知らされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-153305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記音出力装置では、スピーカーで発生された音波の中には、アンダーカバーの傾斜部に当たることなく、傾斜部とは異なる方向へ伝播するものがある。この音波の分、アンダーグリルの隙間から前方へ放出される音波が少なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の音出力装置の各態様を記載する。
[態様1]車両の外殻部分の一部を構成するとともに、開口部を有する外装部材と、前記外装部材のうち、前記開口部から離間した箇所に対し車内側から取り付けられ、かつ前記外装部材を振動させて音波を発生させる加振器とを備え、さらに、前記外装部材よりも車内側には、前記加振器及び前記開口部を車内側から取り囲み、かつ前記外装部材で発生されて車内側へ放出される音波を反射させて、前記開口部に導く反射部材が配置されている車両の音出力装置。
【0007】
上記の構成によれば、加振器が振動すると、その振動は外装部材に伝達される。外装部材が振動することで音波が発生される。音波の一部は、外装部材から車外側に放出される。この音波が、車両の周囲の人に届くと、その人に対し、音波で車両の存在が知らされる。
【0008】
また、音波の一部は、外装部材から車内側へ放出される。放出された音波が、仮に、さらに車内側に伝播すると、この音波のエネルギーが無駄になるばかりか、同音波が騒音となり、車内側の静音性が損なわれる。
【0009】
これに対し、上記の構成によれば、車内側へ放出された音波は、反射部材に当たって反射される。音波は、反射部材よりも車内側へ伝播することを反射部材によって遮られる。その分、反射部材よりも車内側の静音性が向上する。
【0010】
しかも、上記反射部材により反射された音波は、開口部に導かれ、開口部を通って車外側へ放出される。その放出された音波が、外装部材の振動に伴い発生して車外側へ放出される音波に加わる。その分、音出力装置から車外側へ放出される音波が多くなる。このように、外装部材から車内側へ放出された音波のエネルギーが有効に使われる。
【0011】
[態様2]前記反射部材のうち、前記車両の外内方向における中間部よりも車外側の部分は、空洞部を有しない反射層により構成されている[態様1]に記載の車両の音出力装置。
【0012】
ここで、反射部材のうち、車両の外内方向における中間部よりも車外側の部分が、仮に空洞部を有していると、音波は空洞部内で反射することでエネルギーを失って減衰(吸音)される。
【0013】
この点、上記の構成によれば、反射部材における上記車外側の部分が、空洞部を有しない反射層によって構成されている。そのため、外装部材が振動することで発生した音波のうち、車内側へ放出された音波は、反射層に当たることで反射される。上述した空洞部内での反射が原因で、音波がエネルギーを失う現象が抑制される。
【0014】
[態様3]前記反射層は、塗膜により形成されている[態様2]に記載の車両の音出力装置。
上記の構成によれば、反射部材の製造過程で、塗装が行なわれて塗膜が形成されることで、空洞部を有さず、かつ音波を反射する反射層が、簡単かつ低コストで形成される。
【0015】
[態様4]前記反射部材のうち、前記中間部よりも車内側の部分は、前記空洞部を有する吸音層により構成されている[態様2]又は[態様3]に記載の車両の音出力装置。
上記の構成によれば、反射部材よりも車内側における騒音の一部は、同反射部材のうち、中間部よりも車内側の吸音層により減衰される。すなわち、反射部材よりも車内側の騒音を構成する音波の一部は、吸音層における空洞部内で反射されることでエネルギーを失って減衰(吸音)される。
【0016】
[態様5]前記吸音層は、多孔体により構成されている[態様4]に記載の車両の音出力装置。
上記の構成によれば、多孔体における気孔が空洞部として機能する。反射部材よりも車内側における騒音の一部は、多孔体における気孔内で反射されることでエネルギーを失って減衰(吸音)される。
【発明の効果】
【0017】
上記車両の音出力装置によれば、同音出力装置から車外側へ放出される音波を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態における音出力装置が組み込まれた車両の前端部の概略構成を示す部分縦断面図である。
図2図1における反射部材の一部を拡大して示す部分縦断面図である。
図3】反射部材の変更例を示す図であり、図2に対応する部分縦断面図である。
図4】音出力装置の変更例を示す部分縦断面図である。
図5】同じく、音出力装置の変更例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両の音出力装置の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両10の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両10の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって、車両10の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における車両10としては、電気自動車等、通電により回転動力を発生する電動モータによって走行が可能であり、かつ走行音が静かな車両10を想定している。
【0021】
車両10の前端部には、同車両10の外殻部分の一部を構成するフロントグリル11が配置されている。フロントグリル11は、上下方向及び左右方向へ延び、かつ前後方向を自身の厚み方向とする板状をなしている。このフロントグリル11の下部には、前後方向に貫通する開口部12が形成されている。開口部12の大きさ、形状及び数は、特に制限されない。フロントグリル11の下部よりも上側の部分には、こうした開口部が設けられていない。
【0022】
車両10の底部の前部には、同車両10の走行中に、ゴミ、埃、水等が進入するのを防ぐとともに、同車両10の下方を通過する空気の抵抗を抑えるためのアンダーカバー13が配置されている。アンダーカバー13もまた車両10の外殻部分の一部を構成する部材である。
【0023】
車両10には、車外へ音波を放出して、車両10の周囲(外側)の人に対し、音波で車両10の存在を知らせる音出力装置20が搭載されている。本実施形態では、音出力装置20が車両10の前端部に搭載されている。音出力装置20は、車両10の前方へ音波を放出することで、車両10の前方の人に対し、音波で車両10の存在を知らせる。本実施形態では、音出力装置20における前後方向が車両10の外内方向に相当する。また、音出力装置20における各部の「前」が車両10の「外」に相当し、同各部の「後」が車両10の「内」に相当する。
【0024】
音出力装置20は、外装部材21、加振器25及び反射部材31を備えている。次に、音出力装置20を構成する各部について説明する。
<外装部材21>
外装部材21は、フロントグリル11の一部又は全部を構成する部材であり、硬質の樹脂等の硬質材料によって形成されている。本実施形態では、外装部材21がフロントグリル11の全部を構成しており、上述した開口部12を自身の下部に有している。
【0025】
<加振器25>
加振器25は、外装部材21よりも後方であり、かつ上記開口部12から上方へ離れた箇所に配置されている。加振器25は、外装部材21に対し、後方から接着、爪嵌合、ねじ締結等によって取り付けられている。
【0026】
加振器25は、外装部材21を前後方向へ振動させて、可聴音領域の周波数の音波を、警報のためのホーン音、車両10が接近したことを通報する接近通報音等として発生させる。ホーン音は、予め定められた単一の周波数で音出力装置20から出力される。接近通報音は、メロディ、音楽等として音出力装置20から出力される。
【0027】
車両10には、制御装置(図示略)が搭載されている。制御装置は、例えば、車両10の走行状態に応じて、又はセンサ(図示略)による歩行者の検出に応じて、作動指示信号を加振器25に出力し、同加振器25を振動させる。
【0028】
<反射部材31>
反射部材31は、前後方向を自身の厚み方向とし、かつ上下方向及び左右方向に延びる板状をなしている。反射部材31は、外装部材21から後方へ離間した箇所であって、同外装部材21に対し接近した箇所に、起立した状態で配置されている。加振器25を基準とすると、反射部材31は、加振器25を挟んで外装部材21とは反対側に位置している。反射部材31は、加振器25及び開口部12を後側から取り囲んでいる。
【0029】
反射部材31は、外装部材21で発生されて後側へ放出された音波SW2を反射させて、開口部12に導く形状に形成されている。この形状として、本実施形態では、反射部材31が、音波SW2を反射する複数の平面部32を有していて、各平面部32が隣の平面部32に対し傾斜(屈曲)させられている。各平面部32が隣の平面部32に対しなす角度は、反射した音波SW2が開口部12に向かう値に設定されている。
【0030】
反射部材31の周縁部31cは、外装部材21から後方へ離間している。
図2に示すように、反射部材31の厚み方向である前後方向における途中(中間)の部分を中間部31mというものとする。上記途中(中間)の部分には、前後方向における中央部が含まれるほか、中央部よりも前側部分も、中央部よりも後側部分も含まれる。反射部材31において、中間部31mよりも前側の部分は、空洞部を有しない硬質の反射層33によって構成されている。本実施形態では、反射層33は塗膜によって形成されている。この塗膜は、反射部材31の製造過程で、例えば、後述する吸音層34の前面に対し、塗料を吹き付ける等して塗装が行なわれることで形成される。
【0031】
また、塗膜は型内塗装によって形成されてもよい。型内塗装には、吸音層34を樹脂賦形する前に金型内に塗料を塗っておく方法と、金型内で樹脂賦形を行なった後に、金型を開いて、あるいは開かずに塗料を注入する方法とがある。
【0032】
反射部材31において、中間部31mよりも後側の部分は、空洞部35を有する吸音層34によって構成されている。吸音層34は反射層33の後側に隣接している。表現を変えると、中間部31mは、反射層33と吸音層34との境界である。空洞部35は、体積がありながらも密度の低い部分である。吸音層34は、多くの気孔を有する多孔体によって構成されている。この場合、気孔が空洞部35に相当する。本実施形態では、多孔体として発泡体が用いられている。発泡体からなる吸音層34は、例えば、発泡成形法によって形成される。この成形方法には、物理発泡させるものと、化学発泡させるものとがある。前者の発泡成形法では、成形機内で樹脂を加熱溶融し、この樹脂に対して、ガスを発泡剤として注入し、成形を行なう。後者の発泡成形法では、熱可塑性樹脂と発泡剤とを成形機に投入して混合し、成形を行なう。
【0033】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
制御装置からの作動指示信号に応じて図1に示す加振器25が振動させられると、その振動は外装部材21に伝達される。外装部材21が前後方向に振動することで音波SW1,SW2が発生される。音波SW1は、外装部材21から前方へ放出される。この音波SW1が車両10の周囲の人、特に前方の人に届くと、その人に対し、車両10の存在が知らされる。
【0034】
また、音波SW2は、外装部材21から後側へ放出される。仮に、反射部材31が設けられず、放出された音波SW2がさらに後側に伝播すると、この音波SW2のエネルギーが無駄になるばかりか、同音波SW2が騒音となり、反射部材31よりも車内側の静音性が損なわれる。
【0035】
この点、本実施形態では、外装部材21よりも後側に反射部材31が配置されている。図2に示すように、反射部材31における反射層33の前面33fは、音波SW2を反射する反射面として機能する。
【0036】
そのため、外装部材21から後側へ放出された音波SW2は、反射部材31の平面部32における反射層33に当たって反射される。音波SW2は、反射部材31よりも後側へ伝播することを反射部材31によって遮られる。その分、反射部材31よりも後側(車内側)の静音性が向上する。
【0037】
図1に示すように、音波SW2は、平面部32での上記反射により伝播方向を変えられる。音波SW2の多くは、複数回の反射で開口部12に導かれるが、1回の反射で開口部12に導かれてもよい。前者の場合、音波SW2は、平面部32で反射される毎に伝播方向を変えられて開口部12に近付けられる。そして、音波SW2は、最終的に、開口部12に向かう方向に伝播方向を変えられる。
【0038】
開口部12に導かれた音波SW2は、開口部12を通って前側へ放出される。その放出された音波SW2が、外装部材21の振動に伴い発生して前側へ放出される上記音波SW1に加わる。その分、音出力装置20から前側へ放出される音波が多くなる。
【0039】
ここで、仮に、反射部材31における中間部31mよりも前側の部分が空洞部を有していると、音波SW2は空洞部内で反射されることでエネルギーを失って減衰(吸音)される。
【0040】
この点、本実施形態では、反射部材31における中間部31mよりも前側の反射層33が、空洞部を有しない。そのため、外装部材21が振動することで発生した音波のうち、後側へ放出された音波SW2は、反射層33に当たることで反射される。上述した空洞部内での反射が原因で、音波がエネルギーを失う現象が抑制される。
【0041】
また、車両10において、反射部材31よりも後方では、車両10の走行音等による騒音(不快で好ましくない音)が発生する。走行音としては例えば、次のようなものがある。
【0042】
・タイヤと路面との摩擦により生ずる音(ロードノイズ)
・タイヤが段差のある部分を通過するときに発する音
・動力源(電動モータ)の作動に伴い生ずる音
・ブレーキをかけるときに生じる音
車内側の上記騒音を構成する音波SW3の一部は、吸音層34により減衰される。すなわち、音波SW3の一部は、吸音層34における空洞部35内で反射されることでエネルギーを失って減衰(吸音)される。吸音層34が多孔体によって構成されている本実施形態では、多孔体における気孔が空洞部35として機能する。反射部材31よりも車内側における音波SW3の一部は、多孔体における気孔内で反射されることでエネルギーを失って減衰(吸音)される。
【0043】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、図1に示すように、外装部材21よりも後側に、加振器25及び開口部12を後側から取り囲み、かつ外装部材21から後側へ放出される音波SW2を反射させる反射部材31を配置している。
【0044】
そのため、反射部材31が設けられない場合に比べ、車両10における音出力装置20よりも後側(車内側)での静音性を高めることができる。
(2)本実施形態では、図1に示すように、反射部材31を板状に形成している。そのため、反射部材31の搭載スペースを小さくすることができる。
【0045】
特に、本実施形態では、反射部材31が起立した状態で配置されている。そのため、反射部材31が前後方向に占める搭載スペースを小さくすることができる。
(3)本実施形態では、図1に示すように、それぞれ音波SW2を反射する複数の平面部32を反射部材31に形成し、反射した音波SW2が開口部12に向かうように、平面部32の傾斜角度を設定している。そのため、外装部材21から後側へ放出された音波SW2を、平面部32で反射させることで開口部12に導き、開口部12を通じて前側へ放出させることができる。音出力装置20から前側へ放出される音波を多くすることができる。車両10の前方の人に対し、音波で車両10の存在を知らせる機能を、より的確に、音出力装置20に発揮させることができる。このように、音波SW2のエネルギーを有効に使うことができる。
【0046】
(4)本実施形態では、図2に示すように、反射部材31における中間部31mよりも前側の部分を、空洞部35を有しない反射層33によって構成している。そのため、外装部材21から後側へ放出された音波SW2が反射部材31によって吸音されるのを抑制しつつ、反射層33によって的確に反射させることができる。
【0047】
(5)本実施形態では、反射層33を塗膜によって形成している。そのため、空洞部35を有しない反射層33を、簡単かつ低コストで形成できる。
(6)本実施形態では、図2に示すように、反射部材31における中間部31mよりも後側の部分を、空洞部35を有する吸音層34によって構成している。そのため、反射部材31よりも後側における車内側の騒音を構成する音波SW3の一部を吸音層34によって吸音し、上記騒音を小さくすることができる。
【0048】
この効果は、加振器25が作動しておらず、外装部材21で音波SW1,SW2が発生されていないときにも得られる。
(7)本実施形態では、多孔体によって吸音層34を構成している。そのため、多孔体における気孔を利用して反射部材31よりも後側の騒音を低減できる。
【0049】
(8)本実施形態では、図1に示すように、反射部材31の周縁部31cが外装部材21から後方へ離間している。そのため、外装部材21の振動が反射部材31に伝わるのを抑制できる。
【0050】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
<反射部材31について>
・反射部材31の周縁部31cが、外装部材21に接触していてもよい。
・反射部材31のうち、外装部材21から後方へ離間している周縁部31cと、同外装部材21との間に、柔軟で弾性変形の容易なクッション材が介在されてもよい。このようにすると、反射部材31の周縁部31cと外装部材21との隙間をクッション材によって埋めることができ、隙間から音波SW2が漏れ出るのを抑制できる。
【0052】
・反射層33は、空洞部35を有していなくて密度が高く、硬質であることを条件に、塗膜とは異なる層によって構成されてもよい。反射層33は、例えば、フィルムによって構成されてもよい。
【0053】
・吸音層34が発泡体とは異なる多孔体によって構成されてもよい。例えば、セラミックス多孔体、金属多孔質体等が挙げられる。
・吸音層34が音響メタマテリアルによって構成されてもよい。図3はその一例を示している。音響メタマテリアル36は、空洞部37及び首部38の組み合わせを、互いに離間した複数箇所に有している。組み合わせ毎の空洞部37は、吸音層34の内部であって、音響メタマテリアル36の前面36f及び後面36rから前後方向へ離間した箇所に形成されている。各首部38は、各空洞部37と上記後面36rとを連通させている。空洞部37は、首部38よりも大きな断面積を有している。
【0054】
吸音層34では、首部38がヘルムホルツの共鳴箱における共鳴管として機能し、空洞部37がヘルムホルツの共鳴箱における共鳴室として機能する。そのため、共鳴管及び共鳴室の共鳴作用により、後側から吸音層34に伝播する所定周波数成分の音波SW3を減衰(吸音)することができる。
【0055】
・反射部材31は、反射層33と吸音層34との間に別の層を有していてもよい。
・反射部材31から吸音層34が省略されてもよい。
また、吸音層34が、空洞部35,37を有しない層によって構成されてもよい。このようにすると、反射層33が塗膜によって形成される場合等に有効である。この場合、上記変更後の空洞部35,37を有しない層が、反射部材31の骨格部分を構成する基材とされ、その基材の前面に対し、塗膜からなる反射層33が形成されてもよい。
【0056】
・反射部材31の全体が、空洞部35,37を有さず、外装部材21が後方へ放出した音波SW2を反射する層のみによって構成されてもよい。
<外装部材における開口部について>
・音出力装置20における外装部材21は、開口部12を有する1つの部材(フロントグリル11)によって構成されてもよいが、隣り合う複数の部材によって構成されてもよい。この場合、外装部材21は、隣り合う複数の部材の境界部分に開口部を有する。
【0057】
図4は、フロントグリル11から下方に離間した箇所に別の部品45が配置された変更例を示している。この変更例では、外装部材21は、フロントグリル11及び部品45のそれぞれの少なくとも一部を構成する。外装部材21は、フロントグリル11及び部品45の境界部分に開口部41を有する。
【0058】
なお、図4中、符号48は、ボンネットフードを示している。また、符号44は、ボンネットフード48とフロントグリル11との間に配置され、かつ同フロントグリル11及び部品45とともに車両10の前端部を構成する部品を示している。
【0059】
この場合、加振器25は、例えば、フロントグリル11に対し、後側から取り付けられる。反射部材31は、フロントグリル11及び部品45から後側へ離間した箇所であって、同フロントグリル11及び部品45に対し接近した箇所に、起立した状態で配置される。反射部材31は、上記実施形態と同様、反射層33及び吸音層34からなる2層構造を有しており、加振器25及び開口部41を後側から取り囲む。反射部材31の周縁部31cのうち、下縁部31lは、開口部41の下端に対し、上下方向に接近した箇所に位置する。
【0060】
この変更例では、開口部41が、フロントグリル11及び部品45の間に形成されるものの、それ以外の構成は上記実施形態と同様である。そのため、この変更例によっても、上記実施形態における上記(1)~(8)と同様の効果が得られる。
【0061】
図5は、別の変更例を示している。車両10におけるボンネットフード48の下方であって、左右方向における両側にはヘッドライト49が配置されている。ヘッドライト49の下方には、フロントバンパー46の一部(下部)が配置されている。フロントバンパー46は、自身の下部の一部に、前側ほど高くなるように傾斜した傾斜板部46aを有している。フロントバンパー46の下部の後方には、アンダーカバー13が、同フロントバンパー46から離間した状態で配置されている。外装部材21は、フロントバンパー46とアンダーカバー13のそれぞれの少なくとも一部を構成する。外装部材21は、フロントバンパー46の後縁部46rと、アンダーカバー13の前縁部13fとの間に開口部47を有する。
【0062】
この変更例では、傾斜板部46aの厚み方向が車両10の外内方向に相当する。前下側が車外側に相当し、後上側が車内側に相当する。また、音出力装置20における各部の「前下」が車両10の「外」に相当し、同各部の「後上」が車両10の「内」に相当する。
【0063】
この場合、加振器25は傾斜板部46aに対し後上方から取り付けられる。反射部材31は、傾斜板部46aから後上方へ離間した箇所であって、同傾斜板部46a及びアンダーカバー13に対し接近した箇所に、全体として前側ほど高くなるように傾倒した状態で配置される。反射部材31は、加振器25及び開口部47を上後側から取り囲んでいる。反射部材31の周縁部31cのうち、後縁部31rは、開口部47に対し前後方向に接近した箇所に位置する。
【0064】
上記以外の構成、特に、反射部材31として、反射層33及び吸音層34からなる2層構造を有するものが用いられている構成は、上記実施形態と同様である。
この変更例では、傾斜板部46aが振動させられることで発生した音波の一部は、傾斜板部46aから前下側に放出される。この音波が、車両10の前方の人に届くと、その人に対し、音波で車両10の存在が知らされる。
【0065】
傾斜板部46aで発生した音波の一部は、その傾斜板部46aから後上方へ放出される。この音波SW2は、反射部材31に当たって反射され、開口部47に導かれる。音波SW2は、開口部47を通って下方へ放出される。その放出された音波SW2が、傾斜板部46aの振動に伴い発生されて前下方へ放出される音波に加わる。その分、音出力装置20から前下側へ放出される音波が多くなる。
【0066】
従って、この変更例でも、上記実施形態における上記(1),(3)~(8)と同様の効果が得られる。また、上記(2)の効果に代えて、次の(2′)の効果が得られる。
(2′)反射部材31が板状をなしているため、反射部材31の搭載スペースを小さくすることができる。特に、本実施形態では、反射部材31が傾倒された状態で配置されている。そのため、反射部材31が外内方向に占める搭載スペースを小さくすることができる。
【0067】
・開口部12,41,47としては、外装部材21が元々有しているものであってもよいし、音出力装置20の車両10への搭載に際し、外装部材21に新たに形成されたものであってもよい。
【0068】
<その他>
・音出力装置20における外装部材21は、上述したフロントグリル11、部品45、フロントバンパー46及びアンダーカバー13に代えて、次に記載する外装部材を構成してもよい。
【0069】
例えば、リヤバンパー、フォグカバー、ボンネットフード48、カウルルーバー、フェンダー、フェンダーアーチ(ホイールアーチ)、ロッカーモール、ルーフサイドモール、ピラー、サイドベゼル、リアガーニッシュ、スポイラー等の外装部材である。
【0070】
この場合、外装部材21は、開口部を有する1つの外装部材を対象とし、その対象とした外装部材の一部又は全部を構成してもよい。また、外装部材21は、互いに隣り合い、かつ境界部分に開口部を有する複数の外装部材を対象とし、その対象としたそれぞれの外装部材の少なくとも一部を構成してもよい。
【0071】
・上記音出力装置20は、エンジン等の内燃機関を動力源とする車両10にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…車両
12,41,47…開口部
20…音出力装置
21…外装部材
25…加振器
31…反射部材
31m…中間部
33…反射層
34…吸音層
35,37…空洞部
SW2…音波
図1
図2
図3
図4
図5