(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050173
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】作業監視装置、作業監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20240403BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240403BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156851
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田村 英地
(72)【発明者】
【氏名】若尾 あすか
(72)【発明者】
【氏名】上田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】宮路 大勇
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】労働災害の発生を抑制することが可能な作業監視装置、作業監視方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得部と、取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析部と、前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出部と、を備える作業監視装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得部と、
取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析部と、
前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出部と、
を備える作業監視装置。
【請求項2】
前記作業者の作業状態には、前記作業者が前記作業のための動作を行っている動作状態と、前記作業を行っている前記作業者の生体状態とを含み、
前記予兆検出部は、前記動作状態又は前記生体状態の少なくともいずれか一方に基づき、前記予兆を検出する、
請求項1に記載の作業監視装置。
【請求項3】
前記予兆検出部は、前記動作状態又は前記生体状態と、前記労働災害が発生する確率との関係を学習した予兆検出モデルを用いて、前記分析部から出力される分析結果を入力として、前記労働災害が発生する確率を出力する、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項4】
前記予兆検出部は、前記分析結果が示す前記動作状態より、前記作業者が前記作業における特定の動作を行っていると推定される場合には前記予兆を検出せず、前記作業者が前記作業における特定の動作を行っていないと推定される場合には前記予兆を検出する、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項5】
前記予兆検出部は、前記分析結果が示す前記動作状態より、前記作業者が前記作業において前記労働災害を起こしやすい動作を行っていると推定される場合には前記予兆を検出し、前記作業者が前記作業において前記労働災害を起こしやすい動作を行っていないと推定される場合には前記予兆を検出しない、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項6】
前記予兆検出部は、前記分析結果が示す前記生体状態より、前記作業における前記作業者の生体状態が正常であると推定される場合には前記予兆を検出せず、前記作業における前記作業者の生体状態が正常でないと推定される場合には前記予兆を検出する、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項7】
前記分析情報取得部は、前記作業者の動作に伴う加速度情報を前記分析情報として取得し、
前記分析部は、前記加速度情報に基づき、前記動作状態を分析する、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項8】
前記分析部は、前記作業における特定の動作と、前記作業者が前記特定の動作を行った際に検出される加速度情報との関係を学習した動作状態分析モデルを用いて、前記分析情報取得部によって取得された前記加速度情報を入力として、前記作業者が前記特定の動作を行っている度合を出力する、
請求項7に記載の作業監視装置。
【請求項9】
前記分析情報取得部は、前記作業者の動作に伴う生体情報を前記分析情報として取得し、
前記分析部は、前記生体情報に基づき、前記生体状態を分析する、
請求項2に記載の作業監視装置。
【請求項10】
前記分析部は、前記作業における特定の動作と、前記作業者が前記特定の動作を行った際に検出される生体情報との関係を学習した生体状態分析モデルを用いて、前記分析情報取得部によって取得された前記生体情報を入力として、前記作業者の前記生体状態が正常である度合を出力する、
請求項9に記載の作業監視装置。
【請求項11】
前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆が検出された場合に、前記作業の監督者が使用する端末へ通知を出力する出力制御部、
をさらに備える請求項1に記載の作業監視装置。
【請求項12】
分析情報取得部が、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得過程と、
分析部が、取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析過程と、
予兆検出部が、前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出過程と、
を含む作業監視方法。
【請求項13】
コンピュータを、
作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得手段と、
取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析手段と、
前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業監視装置、作業監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などの製造ラインでは、機械による作業だけではなく、人(作業者)による作業も多く行われている。例えば複数の作業者が同じ作業を行う場合、各作業者が作業に費やす時間は作業の習熟度によって異なり、作業の習熟度が低い作業者の方が作業に費やす時間が多くなってしまう。このため、作業の習熟度が低い作業者が作業を行う製造ラインでは、作業の習熟度が高い作業者が作業を行う製造ラインよりも製造効率が低下してしまう。そこで、作業の習熟度が低い作業者が作業を行う製造ラインの製造効率の低下を抑制するための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、作業中の作業者から得られる動作に関する情報に基づき、所定の作業時の動作において改善すべき動作を検出する技術が開示されている。動作に関する情報は、例えば、時間の経過に伴う骨格の位置の変化や加速度の変化などを示す情報である。当該技術により、作業の習熟度が低い作業者は、検出された動作を改善することで製造ラインの製造効率の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造現場において作業効率の低下を抑制することは重要な事項であるが、作業者の安全を確保して労働災害(労災)の発生を抑制することも重要な事項である。しかしながら、上記特許文献1の技術は、検出された動作から作業者が安全に作業を行っているか否かを検出することまではできず、労働災害の発生を抑制することまでは考慮されていなかった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、労働災害の発生を抑制することが可能な作業監視装置、作業監視方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る作業監視装置は、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得部と、取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析部と、前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る作業監視方法は、分析情報取得部が、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得過程と、分析部が、取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析過程と、予兆検出部が、前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出過程と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、前記作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得手段と、取得された前記分析情報に基づき、前記作業者の作業状態を分析する分析手段と、前記作業者の作業状態の分析結果に基づき、前記作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、労働災害の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る作業監視システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るウェアラブルデバイスの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る作業監視システムにおける処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図4】本実施形態に係る分析処理における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
<1.作業監視システムの概略構成>
図1を参照して、本実施形態に係る作業監視システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る作業監視システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示す作業監視システム1は、作業者が行う作業を監視するためのシステムである。作業監視システム1は、例えば、作業者による作業が正常に行われているか否かを監視したり、作業者による作業において労働災害(以下、「労災」とも称される)が発生する予兆があるか否かを監視したりする。
作業監視システム1は、これらの監視を行うにあたり、作業者の作業状態を分析する。作業者の作業状態には、例えば、作業者が作業のための動作を行っている動作状態と、作業を行っている作業者の生体状態とが含まれる。作業監視システム1は、作業者の作業状態を分析するにあたり、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報を取得する。作業監視システム1は、動作状態の分析のために、例えば作業者の動作に伴う加速度情報を分析情報として取得する。また、作業監視システム1は、生体状態の分析のために、例えば作業者の動作に伴う生体情報を分析情報として取得する。
【0015】
作業者の作業状態を分析した結果、作業者による作業が正常に行われていない(即ち作業状態に異常がある)場合、作業監視システム1は、作業者に対して作業状態に異常があることを示す通知(以下、「異常通知」とも称される)を行う。異常通知には、作業者に対して作業状態を改善させるための指示が含まれてもよい。これにより、作業者は、通知を確認して自身の作業状態を改善することで、労災の発生を防止することができる。
さらに、作業者による作業において労災が発生する予兆が検出された場合、作業監視システム1は、労災が発生する予兆を検出したことを示す通知(以下、「労災発生予兆通知」とも称される)を作業の監督者へ通知する。これにより、監督者は、通知を確認して作業者の作業状態を改善させることで、労災の発生を防止することができる。また、通知を受けた時点で既に労災が発生している場合であっても、通知を確認して現場へ急行することで、労災の発生から時間をおくことなく対応することができ、被害を最小限に抑えることができる。
【0016】
以下では、工場などの製造現場において、製造ラインにて製品の製造のために作業者が繰り返し行う作業を監視する例を一例として、作業監視システム1について説明する。なお、作業監視システム1の適用例は、かかる例に限定されない。例えば、作業者が作業を行っている状況であれば、作業監視システム1を適用する業界、場所、作業内容などは特に限定されない。業界は、例えば、製造業界や建設業界などである。
【0017】
工場などの製造現場において想定される労災の一例として、機械への挟まれや巻き込まれなどがある。例えば、製品が流れるラインの横で作業をしている際に、ローラーの手前にて流れてくる製品に汚れが確認された場合、作業者はラインを停止して清掃を行う必要がある。しかしながら、作業者は、微細な汚れであったために、ラインを停止しなくても清掃できると判断し、流れていく製品に上半身を追随させながら清掃を行ったとする。この清掃のための動作は、普段の作業における動作と異なる動作となる。この時、普段とは異なる体勢での作業のためになかなか汚れが取れず、誤って作業者の指がローラーに挟まってしまったとする。作業者は指を引き抜くことができたものの、激痛により指を抑えてその場にうずくまってしまった。このうずくまることで動かなくなる動作も、普段の作業における動作と異なる動作といえる。
これより、上述した清掃のための動作やうずくまる動作など、普段の作業における動作と異なる動作は、即ち労災につながる動作ともいえる。
【0018】
図1に示すように、作業監視システム1は、ウェアラブルデバイス10と、監督者端末20と、管理DB(Data Base)30とを備える。
【0019】
(1)ウェアラブルデバイス10
ウェアラブルデバイス10は、作業者が装着する端末であり、作業監視装置の一例である。なお、ウェアラブルデバイス10の装着形態は、必要な分析情報を取得可能であれば特に限定されず、グローブ型、リストバンド型、腕時計型、メガネ型、ヘッドマウント型など、いずれの装着形態であってもよい。
【0020】
ウェアラブルデバイス10は、ネットワークNWを介して、監督者端末20と、管理DB30と通信可能に接続されている。監督者端末20との通信において、ウェアラブルデバイス10は、労災発生予兆通知を送信する。管理DB30との通信において、ウェアラブルデバイス10は、作業情報を送信する。作業情報は、作業者が行っている作業に関して取得される情報である。具体的に、作業情報は、例えば作業状態の分析結果を示す情報や過去の作業内容を示す情報などである。
【0021】
(2)監督者端末20
監督者端末20は、監督者が作業者やその作業などを管理するために使用する端末である。監督者端末20は、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末などである。
【0022】
監督者端末20は、ネットワークNWを介して、ウェアラブルデバイス10と、管理DB30と通信可能に接続されている。ウェアラブルデバイス10との通信において、監督者端末20は、労災発生予兆通知を受信する。管理DB30との通信において、監督者端末20は、作業情報の参照要求を送信し、要求した作業情報を受信する。
【0023】
(3)管理DB30
管理DB30は、作業情報を管理するDBサーバである。管理DB30は、例えば、1つ又は複数のサーバ装置(例えば、クラウドサーバ)で構成される。
管理DB30は、ネットワークNWを介して、ウェアラブルデバイス10と、監督者端末20と通信可能に接続されている。ウェアラブルデバイス10との通信において、管理DB30は、作業情報を受信する。監督者端末20との通信において、管理DB30は、作業情報の参照要求を受信し、要求した作業情報を受信する。
【0024】
<2.ウェアラブルデバイスの機能構成>
以上、本実施形態に係る作業監視システム1の概略構成について説明した。続いて、
図2を参照して、本実施形態に係るウェアラブルデバイス10の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るウェアラブルデバイス10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、ウェアラブルデバイス10は、通信部110と、入力部120と、加速度情報取得部130と、生体情報取得部140と、記憶部150と、制御部160と、出力部170とを備える。
【0026】
(1)通信部110
通信部110は、各種情報を送受信する機能を有する。例えば、通信部110は、ネットワークNWを介して、監督者端末20と、管理DB30と通信を行い、各種情報を送受信する。
【0027】
(2)入力部120
入力部120は、作業者からの入力を受け付ける機能を有する。入力部120は、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備える入力装置、例えばボタン、タッチパネル、マイクロフォン等によって構成される。
【0028】
(3)加速度情報取得部130
加速度情報取得部130は、加速度情報を取得する機能を有する。加速度情報取得部130は、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備える加速度センサによって実現される。加速度情報取得部130は、ウェアラブルデバイス10を装着した作業者が作業を行うことで生じる加速度を加速度センサによって検出し、当該加速度を示す加速度情報を取得する。
【0029】
(4)生体情報取得部140
生体情報取得部140は、生体情報を取得する機能を有する。生体情報取得部140は、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備える生体センサによって実現される。例えば、生体センサは、心拍センサや脳波センサなどである。心拍センサの場合、生体情報取得部140は、ウェアラブルデバイス10を装着した作業者が作業を行っている際の心拍数を心拍センサによって検出し、当該心拍数を示す生体情報を取得する。脳波センサの場合、生体情報取得部140は、ウェアラブルデバイス10を装着した作業者が作業を行っている際の脳波を脳波センサによって検出し、当該脳波を示す生体情報を取得する。
【0030】
(5)記憶部150
記憶部150は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部150は、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図2に示すように、記憶部150は、動作状態分析モデル151と、生体状態分析モデル152と、予兆検出モデル153とを記憶する。
【0031】
(5-1)動作状態分析モデル151
動作状態分析モデル151は、動作状態を分析するモデルである。例えば、動作状態分析モデル151は、作業における特定の動作と、作業者が特定の動作を行った際に検出される加速度情報との関係を学習したモデル(学習済みモデル)である。このため、動作状態分析モデル151は、分析情報取得部161によって取得された加速度情報を入力として、作業者が特定の動作を行っている度合を出力する。作業者が特定の動作を行っている度合は、例えば、作業における特定の動作と、作業者が実際に行っている特定の動作との乖離度合である。
【0032】
なお、動作状態分析モデル151は、作業者ごとに、かつ作業者が行う作業ごとに用意される。即ち、各作業者の各作業に専用の動作状態分析モデル151が用意される。このため、各作業者は、動作状態分析モデル151の生成のために、事前にウェアラブルデバイス10を装着した状態で自身の各作業での動作を行い、各作業の動作に対応する加速度情報を学習データとして取得する。
【0033】
(5-2)生体状態分析モデル152
生体状態分析モデル152は、生体状態を分析するモデルである。生体状態分析モデル152は、作業における特定の動作と、作業者が特定の動作を行った際に検出される生体情報との関係を学習したモデル(学習済みモデル)である。このため、生体状態分析モデル152は、分析情報取得部161によって取得された生体情報を入力として、作業者の生体状態が正常である度合を出力する。作業者の生体状態が正常である度合は、例えば、作業における特定の動作を行っている際の正常な生体情報と、作業者が実際に特定の動作を行っている際の生体情報との乖離度合である。
【0034】
なお、生体状態分析モデル152は、作業者ごとに、かつ作業者が行う作業ごとに用意される。即ち、各作業者の各作業に専用の生体状態分析モデル152が用意される。このため、各作業者は、生体状態分析モデル152の生成のために、事前にウェアラブルデバイス10を装着した状態で自身の各作業での動作を行い、各作業の動作に対応する生体情報を学習データとして取得する。
【0035】
(5-3)予兆検出モデル153
予兆検出モデル153は、労災が発生する予兆を検出するモデルである。予兆検出モデル153は、動作状態又は生体状態と、労災が発生する確率との関係を学習したモデル(学習済みモデル)である。予兆検出モデル153は、動作状態分析モデル151又は生体状態分析モデル152(後述する分析部162)から出力される情報を入力として、労災が発生する確率(以下、「労災発生確率」とも称される)を出力する。
ここで、予兆検出モデル153に対して入力する動作状態と生体情報の組み合わせに応じて出力される労災発生確率の一例ついて説明する。
【0036】
例えば、予兆検出モデル153に入力される動作状態が示す乖離度合が大きく、生体情報が示す乖離度合が大きいとする。この場合、動作状態から作業者が普段とは異なる動作をしていると推定され、かつ生体情報から作業者の心拍や脳波が乱れていると推定される。普段とは異なる動作は、例えば、不測の事態に対応する場合、事故を回避する場合、既に事故が発生した場合などに行われることがある。心拍や脳波の乱れは、作業者が焦って作業をしている場合や、既に事故が発生して怪我をしている場合などに生じることがある。このため、作業者が普段とは異なる動作をしており、かつ作業者の心拍や脳波が乱れていると推定される場合、作業者は労災が非常に発生しやすい状態にあると推定される。よって、予兆検出モデル153は、例えば労災発生確率を高めに出力する。
【0037】
また、予兆検出モデル153に入力される動作状態が示す乖離度合が大きく、生体情報が示す乖離度合が小さいとする。この場合、動作状態から作業者が普段とは異なる動作をしていると推定され、かつ生体情報から作業者の心拍や脳波は落ち着いていると推定される。これより、作業者が普段とは異なる動作をしているが冷静に対応していると推定されるため、作業者は労災が発生しやすい状態にあると推定される。よって、予兆検出モデル153は、例えば労災発生確率を少し高めに出力する。
【0038】
また、予兆検出モデル153に入力される動作状態が示す乖離度合が小さく、生体情報が示す乖離度合が大きいとする。この場合、動作状態から作業者が普段と同様の動作をしていると推定され、かつ生体情報から作業者の心拍や脳波が乱れていると推定される。これより、作業者が普段と同様の動作を焦って行っていると推定されるため、作業者は労災が少し発生しやすい状態にあると推定される。よって、予兆検出モデル153は、例えば労災発生確率を少し低めに出力する。
【0039】
また、予兆検出モデル153に入力される動作状態が示す乖離度合が小さく、生体情報が示す乖離度合が小さいとする。この場合、動作状態から作業者が普段と同様の動作をしていると推定され、かつ生体情報から作業者の心拍や脳波は落ち着いていると推定される。これより、作業者が普段と同様の動作を冷静に行っていると推定されるため、作業者は労災が発生しにくい状態にあると推定される。よって、予兆検出モデル153は、例えば労災発生確率を低めに出力する。
【0040】
なお、動作状態分析モデル151、生体状態分析モデル152、及び予兆検出モデル153における学習済みモデルは、深層学習モデルを用いて学習されたモデルであっても良い。また、各モデルにおける学習済みモデルは、非深層学習型で非線形の時系列データに対して予測可能なアルゴリズムを使用して学習することで得られるモデルであってもよい。この場合、学習時間を短縮させ、システムの応答のたびに、その時点での最新の情報を使い、AIモデルを作成できる。これにより、リアルタイムで精度の高い予測が可能となる。
【0041】
(6)制御部160
制御部160は、ウェアラブルデバイス10の動作全般を制御する機能を有する。制御部160は、例えば、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部160は、分析情報取得部161と、分析部162と、予兆検出部163と、出力制御部164とを備える。
【0042】
(6-1)分析情報取得部161
分析情報取得部161は、分析情報を取得する機能を有する。分析情報取得部161は、分析情報として、作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する。例えば、分析情報取得部161は、作業者の動作に伴い加速度情報取得部130によって検出かつ取得された加速度情報を、分析情報として取得する。また、分析情報取得部161は、作業者の動作に伴い生体情報取得部140によって検出かつ取得された生体情報を、分析情報として取得する。
【0043】
(6-2)分析部162
分析部162は、分析情報取得部161によって取得された分析情報に基づき、作業者の作業状態を分析する機能を有する。例えば、分析部162は、加速度情報に基づき、動作状態分析モデル151を用いて、作業者の動作状態を分析する。より具体的に、分析部162は、記憶部150に記憶されている動作状態分析モデル151に対して、分析情報取得部161によって取得された加速度情報を入力し、作業者が特定の動作を行っている度合を出力(分析結果)として得る。
【0044】
また、分析部162は、生体情報に基づき、生体状態分析モデル152を用いて、作業者の生体状態を分析する。より具体的に、分析部162は、記憶部150に記憶されている生体状態分析モデル152に対して、分析情報取得部161によって取得された生体情報を入力し、作業者の生体状態が正常である度合を出力(分析結果)として得る。
【0045】
なお、分析部162は、動作状態の分析より、作業者が正常に動作を行っている場合には、加速度情報から動作の速度を算出することで、作業者による作業の実施速度を分析してもよい。実施速度の分析より、実施速度が遅い場合には、作業の進捗に遅れが生じると推定され得る。
【0046】
(6-3)予兆検出部163
予兆検出部163は、分析部162による作業者の作業状態の分析結果に基づき、作業者の作業において労災が発生する予兆を検出する機能を有する。例えば、予兆検出部163は、動作状態又は生体状態の少なくともいずれか一方に基づき、予兆検出モデル153を用いて予兆を検出する。より具体的に、予兆検出部163は、記憶部150に記憶されている予兆検出モデル153に対して、分析部162から出力される分析結果を入力し、労働災害が発生する確率を出力として得る。
【0047】
なお、予兆検出部163は、分析結果が示す動作状態より、作業者が作業における特定の動作を行っていると推定される場合には予兆を検出せず、作業者が作業における特定の動作を行っていないと推定される場合には予兆を検出するようにしてもよい。
また、予兆検出部163は、分析結果が示す生体状態より、作業における作業者の生体状態が正常であると推定される場合には予兆を検出せず、作業における作業者の生体状態が正常でないと推定される場合には予兆を検出するようにしてもよい。
【0048】
(6-4)出力制御部164
出力制御部164は、各種情報の出力を制御する機能を有する。例えば、出力制御部164は、作業者の作業において作業状態に異常があった場合に、出力部170に異常通知を出力させる。これにより、出力制御部164は、作業者に対して作業状態に異常があることを知らせることができる。
また、出力制御部164は、作業者の作業において労災が発生する予兆が検出された場合に、監督者端末20へ労災発生予兆通知を送信し、出力させる。これにより、出力制御部164は、監督者に対して作業者の作業において労災が発生する予兆があることを知らせることができる。
【0049】
なお、出力制御部164は、分析部162による作業者の作業の実施速度の監視結果から作業の進捗に遅れが生じると推定された場合、出力部170に作業の実施速度を改善させる指示を出力させてもよい。
【0050】
(7)出力部170
出力部170は、各種情報を出力する機能を有する。出力部170は、ウェアラブルデバイス10がハードウェアとして備える出力装置、例えばディスプレイ装置やタッチスクリーン(タッチパネル)などの表示装置やスピーカなどの音声出力装置によって構成される。
【0051】
出力部170は、例えば、作業者の作業において作業状態に異常があった場合に、出力制御部164から入力される異常通知を出力する。なお、出力部170は、異常通知を表示装置に表示させてもよいし、音声出力装置から音声で出力してもよい。
【0052】
<3.処理の流れ>
以上、本実施形態に係るウェアラブルデバイス10の機能構成について説明した。続いて、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図3は、本実施形態に係る作業監視システム1における処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図4は、本実施形態に係る分析処理における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0053】
図3に示すように、まず、作業者は、ウェアラブルデバイス10を装着した上で、作業を開始する(ステップS101)。
次いで、ウェアラブルデバイス10の分析情報取得部161は、ウェアラブルデバイス10の加速度情報取得部130によって取得される加速度情報や生体情報取得部140によって取得される生体情報を、分析情報として取得する(ステップS102)。
次いで、ウェアラブルデバイス10の分析部162は、分析情報取得部161によって取得された分析情報に基づき、分析処理を行う(ステップS103)。
【0054】
ここで、
図4を参照して、ステップS103の分析処理における処理の流れについて説明する。
図4に示すように、まず、分析部162は、分析情報として取得された加速度情報と動作状態分析モデル151を用いて、作業者の動作状態を分析する(ステップS201)。
次いで、分析部162は、動作状態の分析結果から、作業者が正常な動作を行っているか否かを判定する(ステップS202)。作業者が正常な動作を行っている場合(ステップS202/YES)、処理はステップS203へ進む。一方、作業者が正常な動作を行っていない場合(ステップS202/NO)、処理はステップS204へ進む。
【0055】
処理がステップS203へ進んだ場合、分析部162は、作業者による作業の実施速度を分析する(ステップS203)。分析後、処理はステップS203へ進む。
処理がステップS204へ進んだ場合、分析部162は、分析情報として取得された生体情報と生体状態分析モデル152を用いて、作業者の生体状態を分析する(ステップS204)。
次いで、ウェアラブルデバイス10の予兆検出部163は、分析部162によって分析された動作状態及び生体状態と、予兆検出モデル153とを用いて、作業者の作業において労災が発生する予兆を検出する(ステップS205)。
【0056】
図3に戻り、作業者の作業状態に異常があった場合(ステップS104/YES)、処理はステップS105へ進む。一方、作業者の作業状態に異常がなかった場合(ステップS104/NO)、処理はステップS102から繰り返す。
処理がステップS105へ進んだ場合、ウェアラブルデバイス10の出力制御部164は、出力部170に異常通知を出力させる(ステップS105)。
作業者は、出力部170によって出力された異常通知を確認し、異常通知に対する対応を行う(ステップS106)。
【0057】
次いで、労災が発生する予兆が検出された場合(ステップS107/YES)、処理はステップS108へ進む。一方、労災が発生する予兆が検出されなかった場合(ステップS107/NO)、処理はステップS110へ進む。
【0058】
処理がステップS108へ進んだ場合、出力制御部164は、監督者端末20へ労災発生予兆通知を送信し、出力させる(ステップS108)。
監督者は、監督者端末20に通知された労災発生予兆通知を確認し、対応する(ステップS109)。
【0059】
処理がステップS110へ進んだ場合、出力制御部164は、管理DB30へ作業情報を送信する(ステップS110)。管理DB30は、ウェアラブルデバイス10から受信した作業情報を記憶する(ステップS111)。
監督者端末20は、管理DB30へ作業情報の参照要求を送信し、作業情報を参照可能な状態にする(ステップS112)。監督者は、監督者端末20から作業情報を確認する(ステップS113)。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るウェアラブルデバイス10(作業監視装置)は、作業者の作業状態を分析するための情報を示す分析情報として、作業者の動作に伴い検出されるデータを取得する分析情報取得部161と、取得された分析情報に基づき、作業者の作業状態を分析する分析部162と、作業者の作業状態の分析結果に基づき、作業者の作業において労働災害が発生する予兆を検出する予兆検出部163と、を備える。
【0061】
かかる構成により、作業者の作業状態から、作業者の作業において労災が発生する予兆を検出することができる。これにより、作業者や監督者に対して、労災が発生する予兆が検出されたことを知らせることで、労災の発生前に作業状態を改善することができる。
よって、本実施形態に係るウェアラブルデバイス10は、労働災害の発生を抑制することを可能とする。
【0062】
<4.変形例>
以上、実施形態について説明した。続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、作業監視装置の機能がウェアラブルデバイス10によって実現される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、作業監視装置の機能の一部又は全部を1つ又は複数のサーバ装置(例えば、クラウドサーバ)で実現するようにしてもよい。また、作業監視装置の機能の一部又は全部を量子コンピュータによって実現するようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、加速度情報取得部130の機能が加速度センサによって実現され、当該加速度センサによって検出された加速度情報を取得する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、加速度情報取得部130は、作業者の近傍に設けられたカメラによって撮像される、作業者が作業している様子を示す画像(動画像又は複数の静止画像)を取得し、当該画像に基づき加速度を算出することで、加速度情報を取得してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、動作状態分析モデル151及び生体状態分析モデル152が、作業者ごとかつ作業ごとに用意される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、動作状態分析モデル151及び生体状態分析モデル152は、複数の作業者に単一のモデルが用意されてもよい。即ち、複数の作業者が同じモデルを利用可能であってもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、予兆検出部163が予兆検出において、動作状態又は生体状態と、労災が発生する確率との関係を学習した予兆検出モデル153を用いる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、予兆検出部163は、労災を起こしやすい動作と労災が発生する確率との関係を学習したモデルを用いて、予兆検出を行ってもよい。この場合、予兆検出部163は、分析結果が示す動作状態より、作業者が作業において労災を起こしやすい動作を行っていると推定される場合には予兆を検出し、作業者が作業において労災を起こしやすい動作を行っていないと推定される場合には予兆を検出しないようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、分析部162が動作状態の分析と、生体状態の分析と、予兆検出において学習済みモデルを用いる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、分析部162は、取得された加速度情報や生体情報と、予め設定される閾値との比較に基づき、動作状態の分析と生体状態の分析を行ってもよい。また、分析部162には、動作状態の分析結果と生体状態の分析結果と、予め設定される閾値との比較に基づき、予兆検出を行ってもよい。
【0068】
また、上述した実施形態において、作業者の作業状態の判断理由となる情報をExplainable AI(説明可能なAI)に分類される技術や手法を用いて算出し、ウェアラブルデバイス10や監督者端末20などに表示させるようにしてもよい。
【0069】
以上、実施形態の変形例について説明した。
なお、上述した実施形態における作業監視システム1及びウェアラブルデバイス10(作業監視装置)の機能の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0070】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…作業監視システム、10…ウェアラブルデバイス、20…監督者端末、30…管理DB、110…通信部、120…入力部、130…加速度情報取得部、140…生体情報取得部、150…記憶部、151…動作状態分析モデル、152…生体状態分析モデル、153…予兆検出モデル、160…制御部、161…分析情報取得部、162…分析部、163…予兆検出部、164…出力制御部、170…出力部、NW…ネットワーク