(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050188
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電力需要調整サーバ及び電力需要調整システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/47 20180101AFI20240403BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/58 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20240403BHJP
【FI】
F24F11/47
F24F11/54
F24F11/58
F24F11/70
F24F11/63
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156879
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 計明
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AA08
3L260AA09
3L260AA13
3L260AA16
3L260AB01
3L260BA42
3L260CB01
3L260DA12
3L260FA16
3L260FB01
(57)【要約】
【課題】電力需要調整の要請があったときに、ガス空調機及び電気式空調機の各々の最適な稼働状態の目標値を算出することができるようにする。
【解決手段】電力需要調整サーバは、各需要家について、当該需要家のガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得する取得部と、電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態とに基づいて、電力需要の調整量を満たすように、各需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定する目標値決定部と、各需要家に対して、前記決定した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を出力する出力部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス空調機と電気式空調機を各々有する需要家からなる需要家群の電力需要を調整するための電力需要調整サーバであって、
各需要家について、当該需要家のガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得する取得部と、
電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態とに基づいて、電力需要の調整量を満たすように、各需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定する目標値決定部と、
各需要家に対して、前記決定した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を出力する出力部と、
を含む電力需要調整サーバ。
【請求項2】
前記目標値決定部は、電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態と、各需要家における冷却水の温度と、各需要家の前記ガス空調機についての運転予定負荷率における部分負荷効率と、に基づいて、各需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定する請求項1記載の電力需要調整サーバ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電力需要調整サーバと、
各需要家側に設けられた制御装置と、
を含む電力需要調整システムであって、
前記制御装置は、前記電力需要調整サーバにより決定された前記需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値に基づいて、前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の運転を制御する
電力需要調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に空調機は電力デマンド対策に用いられており、契約電力を瞬間的に超えた場合に30分間の電力デマンド平均が契約電力を超えないように自動的に空調出力を低減させて、デマンドオーバーさせないようにする、空調機によるデマンドコントロール機能が一般的である。
【0003】
太陽光発電の出力低下や、猛暑厳寒の電力ひっ迫時に、電力供給事業者が、電力需要家に対して電力需要の抑制を依頼することをデマンドレスポンスという。生産を一時停止させて電力需要のピークを夜間へシフトさせたり、可能な範囲で空調機を止めるなどの対応をすることで、一定の報酬を得る仕組みである。
【0004】
ところで、需要家において蓄電池を設置しておき、EHP(Electric Heat Pump)稼働中にデマンドレスポンス要請があった時に、蓄電池を用いてEHPを稼働させて、電力需要を抑制することが考えられるが、蓄電池を設定するのにコストがかかり、課題がある。そこで、GHP(Gas engine driven Heat Pump)とEHPの複合パッケージ空調であるスマートマルチエアコンを用い、電力デマンド対策としてGHPを優先運転させることが行われている。
【0005】
電力デマンド対策に、GHPとEHPの複合パッケージ空調であるスマートマルチエアコンを制御する技術として、特許文献1には、電力需要を減少させるように要求するデマンドレスポンス指令を受信した場合に需要家側が電力需要を減少させるデマンドレスポンスの開始に応じて、デマンドレスポンスの開始前に比べ、EHPユニットの熱出力及び熱処理部の熱出力を減少させ、GHPユニットの熱出力を空調熱負荷に従って導出することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、電力需要を変化させるように要求するデマンドレスポンス指令の受信に基づいて、デマンドレスポンス指令の受信タイミングの前後で合計出力を維持しつつ、EHPユニットとGHPユニットとの運転比率を、デマンドレスポンス指令の受信前に対して変化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-143810号公報
【特許文献2】特開2020-190399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
猛暑、厳寒の際に空調快適性を維持するためには、余裕を持った空調機容量の導入確保が必要であるが、年数日の猛暑厳寒ために、予備空調機を増設することは経済的ではなく、産業、業務、家庭を通じた共通課題である。
【0009】
また、猛暑や厳寒による電力ひっ迫時のデマンドレスポンス要請を受けた電力需要家は可能な範囲での空調出力低減どころか、空調能力不足が発生していることが多く、ほとんど空調を出力低減できないという実態がある。
【0010】
また、太陽光発電の天候不順による出力低下や、発電機の故障や系統事故によるデマンドレスポンス指示の場合は、空調デマンドレスポンス指示に対する需要家の応答は可能であるが、想定以上の需要低減があると、デマンドレスポンス報酬を想定以上に支払う必要性があり、太陽光発電の出力低下分の一定の電力需要低減を確保できる監視制御の実現が課題であった。
【0011】
また、広い工場や大規模商業施設では、デマンドレスポンス要請を受けても、空調機を停止しに現場に到着するまでに時間を要しタイムリーに空調機停止によるデマンドレスポンスを実現できないという課題があった。
【0012】
特許文献1、2では、EHPユニットとGHPユニットとの運転比率を、デマンドレスポンス指令の受信前に対して変化させることが記載されているが、稼働状態に応じて最適な運転比率を算出する方法については言及されていない。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、電力需要調整の要請があったときに、ガス空調機及び電気式空調機の各々の最適な稼働状態の目標値を算出することができる電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る電力需要調整サーバは、ガス空調機と電気式空調機を各々有する需要家からなる需要家群の電力需要を調整するための電力需要調整サーバであって、各需要家について、当該需要家のガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得する取得部と、電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態とに基づいて、電力需要の調整量を満たすように、各需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定する目標値決定部と、各需要家に対して、前記決定した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を出力する出力部と、を含んで構成されている。
【0015】
第1の発明によれば、取得部によって、各需要家について、当該需要家のガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得する。目標値決定部によって、電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態とに基づいて、電力需要の調整量を満たすように、各需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定する。そして、出力部によって、各需要家に対して、前記決定した前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を出力する。
【0016】
このように、各需要家についてガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得し、電力需要の調整量を満たすように、各需要家におけるガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値を決定することにより、電力需要調整の要請があったときに、ガス空調機及び電気式空調機の各々の最適な稼働状態の目標値を算出することができる。
【0017】
また、第2の発明に係る電力需要調整システムは、上記発明の電力需要調整サーバと、各需要家側に設けられた制御装置と、を含む電力需要調整システムであって、前記制御装置は、前記電力需要調整サーバにより決定された前記需要家における前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態の目標値に基づいて、前記ガス空調機及び電気式空調機の各々の運転を制御する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムによれば、電力需要調整の要請があったときに、ガス空調機及び電気式空調機の各々の最適な稼働状態の目標値を算出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電力需要調整システムを示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るサーバを示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るサーバにおける需要調整処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
<電力需要調整システムのシステム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る電力需要調整システム100は、需要家毎に備えられた、ガス空調機10、電気式空調機12、及び制御装置16と、エネルギーセンター側に設けられたサーバ20とを備えている。需要家毎の制御装置16とサーバ20は、インターネットなどのネットワーク41を介して相互に接続されている。なお、サーバ20が、電力需要調整サーバの一例である。
【0022】
電気式空調機12は、例えば、屋外に設置される。電気式空調機12には、系統電力(商用電力)が供給される。電気式空調機12は、供給された電力を消費して(電気で動作して)熱媒体の冷却及び加熱を行う。電気式空調機12で冷却及び加熱された熱媒体は、空調室内機(図示省略)に供給される。
【0023】
ガス空調機10は、例えば、屋外に設置され、電気式空調機12とは独立して設けられる。ガス空調機10は、主にガスで動作し、熱媒体の冷却及び加熱を行う。ガス空調機10で冷却及び加熱された熱媒体は、空調室内機に供給される。この際、電気式空調機12から送出される熱媒体、及び、ガス空調機10から送出される熱媒体は、共通の配管を通じて空調室内機に供給される。
【0024】
空調室内機は、ガス空調機10及び電気式空調機12から供給される熱媒体と、室内において供給される空気との間で熱交換を行い、室内において供給される空気を冷却または加熱する。空調室内機は、熱交換後の空気を室内に送出し、熱交換後の熱媒体をガス空調機10及び電気式空調機12に送出する。
【0025】
制御装置16は、ガス空調機10及び電気式空調機12の稼働状態を、需要家の識別番号と共にサーバ20へ送信する。また、制御装置16は、サーバ20から受信した、サーバ20により決定された当該需要家におけるガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態の目標値に基づいて、ガス空調機10及び電気式空調機12の各々の運転を制御する。
【0026】
サーバ20は、ガス空調機10と電気式空調機12を各々有する需要家からなる需要家群の電力需要を調整する。
【0027】
図2に示すように、サーバ20は、通信部22と、演算部24とを備えている。演算部24は、稼働状態取得部30と、目標値決定部32と、出力部34とを備えている。
【0028】
通信部22は、制御装置16から、需要家毎のガス空調機10及び電気式空調機12の稼働状態を受信する。
【0029】
稼働状態取得部30は、各需要家から受信した、当該需要家のガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態を取得する。
【0030】
目標値決定部32は、電力需要調整の要請があった場合に、要請された電力需要の調整量と、各需要家について取得したガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態とに基づいて、電力需要の調整量を満たすように、各需要家におけるガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態の目標値を決定する。
【0031】
具体的には、目標値決定部32は、電力需要を調整する際に、電力需要の調整量と、各需要家について取得したガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態と、各需要家における冷却水の温度と、各需要家のガス空調機10についての運転予定負荷率における部分負荷効率と、に基づいて、各需要家におけるガス空調機10及び電気式空調機12の各々の運転予定負荷率の目標値を決定する。
【0032】
出力部34は、各需要家に対して、決定したガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態の目標値を出力する。
【0033】
<電力需要調整システム100の動作>
次に、本実施形態に係る電力需要調整システム100の動作について説明する。
【0034】
電力需要調整の要請があったときに、サーバ20により、
図5に示す需要調整処理ルーチンが実行される。
【0035】
まず、ステップS100において、稼働状態取得部30は、各需要家について、当該需要家のガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得する。
【0036】
具体的には、需要家毎の制御装置16へ、ガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を要求し、需要家毎の制御装置16は、当該需要家のガス空調機10及び電気式空調機12の稼働状態を、需要家の識別番号と共にサーバ20へ送信する。
【0037】
より具体的には、稼働状態取得部30は、各需要家について、ガス空調機10及び電気式空調機12の稼働状態として、ガス空調機10及び電気式空調機12の仕様、及び現在の運転負荷率、並びに冷却水温度を取得する。
【0038】
例えば、複数の需要家として、需要家A~Cを想定し、以下の情報が取得される。
【0039】
需要家Aについて、ガス空調機10の容量が500kWであり、出力が100kWであり、運転負荷率が20%であり、余力が400kW(=500kW×(1-0.2))である。電気式空調機12の容量が500kWであり、出力500kWであり、運転負荷率が100%である。従って、空調出力ベースの電力需要調整として、400kW分の電気式空調機12の出力低減とガス空調機10の出力上昇による下げ電力需要調整が可能である。また、冷却水温度は28度である。
【0040】
需要家Bについて、ガス空調機10の容量が200kWであり、出力が0kWであり、運転負荷率が0%であり、余力が200kWである。電気式空調機12の容量が200kWであり、出力が200kWであり、運転負荷率が100%である。従って、空調出力ベースの電力需要調整として、200kW分の電気式空調機12の出力低減とガス空調機10の出力上昇による下げ電力需要調整が可能である。また、冷却水温度は28度である。
【0041】
需要家Cについて、ガス空調機10の容量が250kWであり、出力が50kWであり、運転負荷率が20%であり、余力が200kWである。電気式空調機12の容量が250kWであり、出力が250kWであり、運転負荷率100%である。従って、空調出力ベースの電力需要調整として、200kW分の電気式空調機12の出力低減とガス空調機10の出力上昇による下げ電力需要調整が可能である。また、冷却水温度は24度である。
【0042】
ステップS104において、目標値決定部32は、優先度の高い需要家を決定する。
【0043】
具体的には、ガス燃焼式の吸収式冷凍機は起動するまでに数分かかる特徴があるため、ガス空調機10が停止している需要家への電力需要調整要請に関する優先度を低く設定する。一方、運転中のガス空調機10は、数秒から数十秒内に出力調整応答が可能である。従って、上記の例では、需要家AとCが、電力需要調整指令先候補の1位となり、需要家Bは、電力需要調整指令先候補の2位となる。
【0044】
ステップS106において、目標値決定部32は、各需要家の運転パターンを決定する。
【0045】
具体的には、各需要家についてのガス空調機10及び電気式空調機12の稼働状態に基づいて、電力需要調整の必要量を満たすように、電力需要調整指令先候補の順位が高い需要家A、Cについてのガス空調機10の運転負荷率を増加させることにより、電力需要調整指令先候補の順位が高い需要家A、Cの運転パターンを決定する。
【0046】
例えば、消費電力ベースで、電力需要調整の必要量として、100kW×1時間を要請する場合を考える。消費電力ベースで、100kW×1時間の空調電力を下げるためには、電気式空調機12のCOPを3.0とすると、空調出力ベースで300kW分×1時間の冷房をガス空調機10で代替する必要がある。この電力需要調整の必要量を満たす運転パターンとして、以下の運転パターン1、2を決定する。
【0047】
運転パターン1では、現在の需要家Aのガス空調機10の運転負荷率20%を、運転予定負荷率60%に増加させて、空調出力ベースで、200kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。また、現在の需要家Cのガス空調機10の運転負荷率20%を、運転予定負荷率60%に増加させて、空調出力ベースで、100kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。これにより、空調出力ベースで、合計、300kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。
【0048】
運転パターン2では、現在の需要家Aのガス空調機10の運転負荷率20%を、運転予定負荷率40%に増加させて、空調出力ベースで、100kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。また、現在の需要家Cのガス空調機10の運転負荷率20%を、運転予定負荷率100%に増加させて、空調出力ベースで、200kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。これにより、空調出力ベースで、合計、300kW×1時間の下げ電力需要調整を行う。
【0049】
ステップS108において、目標値決定部32は、各需要家の各運転パターンのCOPを推定する。
【0050】
具体的には、各運転パターンについて、各需要家毎に、運転予定負荷率に応じた部分負荷効率と、冷却水温度に対応した効率補正係数とから、COPを推定する。
COP=(運転予定負荷率に応じた部分負荷効率)×(冷却水温度に対応した効率補正係数)
【0051】
例えば、運転パターン1について、需要家Aでは、需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率60%に応じた部分負荷効率が1.72であり、冷却水温度28度に対応した効率補正係数が1であり、COPは1.72(=1.72×1)である。需要家Cでは、需要家Cのガス空調機10の運転予定負荷率60%に応じた部分負荷効率が1.72であり、冷却水温度24度に対応した効率補正係数が1.1であり、COPは1.89(=1.72×1.1)である。
【0052】
運転パターン2について、需要家Aでは、需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率40%に応じた部分負荷効率が1.81であり、冷却水温度28度に対応した効率補正係数が1であり、COPは1.81(=1.81×1)である。需要家Cでは、需要家Cのガス空調機10の運転予定負荷率100%に応じた部分負荷効率が1.51であり、冷却水温度24度に対応した効率補正係数が1.1であり、COPは1.66(=1.51×1.1)である。
【0053】
ステップS110において、目標値決定部32は、各需要家について各運転パターンの消費エネルギーを推定する。
【0054】
具体的には、各運転パターンについて、各需要家毎に、運転予定負荷率に応じたガス空調機10の出力(kW)と、推定したCOPとから、消費エネルギーを推定する。
消費エネルギー=(運転予定負荷率に応じたガス空調機10の出力)/(推定したCOP)
【0055】
例えば、運転パターン1について、需要家Aでは、需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率60%に応じたガス空調機10の出力が300であり、推定したCOPが1.72であり、消費エネルギーは174.4(=300/1.72)である。需要家Cでは、需要家Cのガス空調機10の運転予定負荷率60%に応じたガス空調機10の出力が150であり、推定したCOPが1.89であり、消費エネルギーは79.3(=150/1.89)である。従って、合計消費エネルギーは253.7(=174.4+79.3)[kW]である。
【0056】
運転パターン2について、需要家Aでは、需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率40%に応じたガス空調機10の出力が200であり、推定したCOPが1.81であり、消費エネルギーは110.5(=200/1.81)である。需要家Cでは、需要家Cのガス空調機10の運転予定負荷率100%に応じたガス空調機10の出力が250であり、推定したCOPが1.66であり、消費エネルギーは150.5(=250/1.66)である。従って、合計消費エネルギーは261.0(=110.5+150.5)[kW]である。
【0057】
ステップS112において、目標値決定部32は、各需要家について最適な運転パターンを決定する。
【0058】
具体的には、合計消費エネルギーが最小となる運転パターンを最適な運転パターンとして決定する。
【0059】
例えば、運転パターン1の方が、運転パターン2より、合計消費エネルギーが小さいため、運転パターン1を、最適な運転パターンとして決定する。
【0060】
ステップS114において、出力部34は、各需要家に対して、決定したガス空調機10及び電気式空調機12の各々の稼働状態の目標値を出力する。そして、需要調整処理ルーチンを終了する。
【0061】
具体的には、最適な運転パターンにおけるガス空調機10及び電気式空調機12の各々の運転予定負荷率の目標値を含む運転指令を、各需要家の制御装置16へ出力する。
【0062】
例えば、運転パターン1における需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率の目標値60%、及び電気式空調機12の運転予定負荷率の目標値60%(=(500-200)/500)を含む運転指令を、需要家Aの制御装置16へ出力する。また、運転パターン1における需要家Aのガス空調機10の運転予定負荷率の目標値60%、及び電気式空調機12の運転予定負荷率の目標値60%(=(250-100)/250)を含む運転指令を、需要家Bの制御装置16へ出力する。
【0063】
そして、需要家毎の制御装置16は、受信した当該需要家のガス空調機10及び電気式空調機12の各々の運転予定負荷率の目標値を含む運転指令に基づいて、ガス空調機10及び電気式空調機12の運転を制御する。
【0064】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る電力需要調整システムによれば、各需要家についてガス空調機及び電気式空調機の各々の稼働状態を取得し、電力需要の調整量を満たすように、各需要家におけるガス空調機及び電気式空調機の各々の運転予定負荷率の目標値を決定することにより、電力需要調整の要請があったときに、ガス空調機及び電気式空調機の各々の最適な運転予定負荷率の目標値を算出することができる。
【0065】
また、ガス空調機の優先運転と電気式空調機の停止あるいは出力低減とによる電力需要の低下は、蓄電池の放電による電力需要の低減と同じ効果がある。太陽光発電等の事業者が同時同量需給を確保するために蓄電池システムを設置するよりも、ガス空調機を増設したほうが経済的に安価に電力需要低減を実現することができるため、蓄電池の設置コストと、ガス空調機の容量アップとの差額を、エネルギーサービス事業者が費用負担することで、下記の効果が得られる。第一に、需要家は通常よりも安く空調予備力を確保できる。太陽光発電等の事業者はガス空調機を仮想的な蓄電池システムとし、通常の需給調整力としての蓄電池システムよりも安く確保することができる。第二に、猛暑や厳寒による電力ひっ迫時においても、電気式空調機の出力相当の余裕度を持ったガス空調機を導入しているため、電気式空調機を停止あるいは出力低減し、電力需要調整による報酬を得ることができる。第三に、電力需要調整サーバにより、必要な電力需要調整量を満たすように、ガス空調機及び電気式空調機の各々の運転予定負荷率の目標値を瞬時に決定できるため、必要な時に必要な電力を必要な時間だけ確保することができる。第四に、自動的な電力需要調整制御を行うことで、需要家は空調機を手動停止させる手間が省ける。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0067】
例えば、電力需要の調整量を満たす運転パターンが2つである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。電力需要の調整量を満たす運転パターンを3つ以上決定し、消費エネルギーが最小となる運転パターンを決定するようにしてもよい。
【0068】
また、通常時の省エネ性向上を図るための運用だけではなく、各インフラ途絶時や設備故障時等の非常時の運用に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 ガス空調機
12 電気式空調機
16 制御装置
20 サーバ
22 通信部
24 演算部
30 稼働状態取得部
32 目標値決定部
34 出力部
100 電力需要調整システム