(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050208
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】排ガスボイラ運転支援システム
(51)【国際特許分類】
B63J 3/02 20060101AFI20240403BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20240403BHJP
B63B 79/00 20200101ALI20240403BHJP
【FI】
B63J3/02 D
B63B49/00 Z
B63B79/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156915
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和洋
(72)【発明者】
【氏名】山内 一生
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁昌
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量の削減のための排ガスボイラ運転支援システムを提供する。
【解決手段】排ガスボイラ運転支援システム1は、船舶3に搭載された排ガスボイラ3aの運転の最適化を支援する運転支援情報を生成する運転支援装置10と、運転支援情報を表示する表示装置20とを備える。運転支援装置10は、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報に基づいて、所定期間における排ガスボイラ3aの蒸気発生量または二酸化炭素の削減量を含む排ガスボイラ3aの出力指標を運転支援情報として算出する出力指標算出部と、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報に基づいて、所定期間における排ガスボイラ3aの運転状態指標の経時変化のデータを運転支援情報として生成する運転状態指標生成部とを備える。表示装置20は、運転支援情報に含まれた排ガスボイラ3aの所定期間の、出力指標と運転状態指標の経時変化のグラフとを同一画面に表示する表示部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載された排ガスボイラの運転の最適化を支援する排ガスボイラ運転支援システムであって、
前記船舶に対して遠隔の地に設けられており、前記排ガスボイラの運転の最適化を支援する運転支援情報を生成する運転支援装置と、
前記運転支援情報を表示する表示装置と、
を備え、
前記運転支援装置は、
前記排ガスボイラの運転状態に関する情報を受信し、前記排ガスボイラの運転の最適化を支援する前記運転支援情報を送信する通信部と、
前記運転状態に関する情報に基づいて、所定期間における前記排ガスボイラの蒸気発生量および二酸化炭素の削減量のうちの少なくとも一方を含む前記排ガスボイラの出力指標を、前記運転支援情報として算出する出力指標算出部と、
前記運転状態に関する情報に基づいて、前記所定期間における前記排ガスボイラの運転状態指標の経時変化のデータを、前記運転支援情報として生成する運転状態指標生成部と、
を備え、
前記表示装置は、
前記排ガスボイラの前記運転支援情報を受信する通信部と、
前記運転支援情報に含まれた、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標と、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する表示部と、
を備える、
排ガスボイラ運転支援システム。
【請求項2】
前記運転支援装置によって生成される前記運転支援情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標と、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する表示データであり、
前記表示装置は、WEBブラウザを用いて、前記表示データを表示する、
請求項1に記載の排ガスボイラ運転支援システム。
【請求項3】
前記運転状態に関する情報は、前記排ガスボイラの排ガス入出口温度差および前記排ガスボイラの排ガス入出口差圧を含む、請求項2に記載の排ガスボイラ運転支援システム。
【請求項4】
前記運転状態に関する情報は、前記船舶の主機の回転数を含み、
前記出力指標算出部は、
前記主機の回転数から前記主機の排ガス量を推定し、推定した前記主機の排ガス量および前記排ガスボイラの入出口温度差から前記排ガスボイラの熱回収量を算出し、算出した前記排ガスボイラの熱回収量および前記排ガスボイラの蒸気圧力から前記排ガスボイラの前記蒸気発生量を算出する、または、
算出した前記排ガスボイラの前記蒸気発生量から、前記排ガスボイラの前記二酸化炭素の削減量を算出する、
請求項3に記載の排ガスボイラ運転支援システム。
【請求項5】
前記表示装置の前記表示部は、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標の積算値、または、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフにおける所定単位期間に対応する前記排ガスボイラの前記所定単位期間の前記出力指標、を表示する、
請求項1または2に記載の排ガスボイラ運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスボイラ運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶では、動力を得るための内燃機関(主機ともいう。)からの排ガスの熱を利用する排ガスボイラを搭載することが知られている(例えば、特許文献1または2参照)。このような排ガスボイラは、排気ガスを用いて予熱された水を蒸気化する。排ガスボイラで生成された蒸気は、燃料油加温、潤滑油加温、生活熱源、荷役加温、発電等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6498433号
【特許文献2】特公昭61-31361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような排ガスボイラでは、排ガスから効率よく熱回収することが求められている。排ガスからの熱回収量の増加により、補助ボイラ(等)で蒸気発生のために燃焼する燃料を削減し、二酸化炭素排出量を抑制することができる。
【0005】
本発明は、船舶からの二酸化炭素の排出量の削減のための排ガスボイラ運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る排ガスボイラ運転支援システムは、船舶に搭載された排ガスボイラの運転の最適化を支援する排ガスボイラ運転支援システムであって、前記船舶に対して遠隔の地に設けられており、前記排ガスボイラの運転の最適化を支援する運転支援情報を生成する運転支援装置と、前記運転支援情報を表示する表示装置と、を備える。前記運転支援装置は、前記排ガスボイラの運転状態に関する情報を受信し、前記排ガスボイラの運転の最適化を支援する前記運転支援情報を送信する通信部と、前記運転状態に関する情報に基づいて、所定期間における前記排ガスボイラの蒸気発生量および二酸化炭素の削減量のうちの少なくとも一方を含む前記排ガスボイラの出力指標を、前記運転支援情報として算出する出力指標算出部と、前記運転状態に関する情報に基づいて、前記所定期間における前記排ガスボイラの運転状態指標の経時変化のデータを、前記運転支援情報として生成する運転状態指標生成部と、を備える。前記表示装置は、前記排ガスボイラの前記運転支援情報を受信する通信部と、前記運転支援情報に含まれた、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標と、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する表示部と、を備える。
【0007】
(2) (1)に記載の排ガスボイラ運転支援システムにおいて、前記運転支援装置によって生成される前記運転支援情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標と、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する表示データであってもよく、前記表示装置は、WEBブラウザを用いて、前記表示データを表示してもよい。
【0008】
(3) (2)に記載の排ガスボイラ運転支援システムにおいて、前記運転状態に関する情報は、前記排ガスボイラの排ガス入出口温度差および前記排ガスボイラの排ガス入出口差圧を含んでいてもよい。
【0009】
(4) (3)に記載の排ガスボイラ運転支援システムにおいて、前記運転状態に関する情報は、前記船舶の主機の回転数を含んでもよく、前記出力指標算出部は、前記主機の回転数から前記主機の排ガス量を推定し、推定した前記主機の排ガス量および前記排ガスボイラの排ガス入出口温度差から前記排ガスボイラの熱回収量を算出し、算出した前記排ガスボイラの熱回収量および前記排ガスボイラの蒸気圧力から前記排ガスボイラの前記蒸気発生量を算出してもよいし、または、算出した前記排ガスボイラの前記蒸気発生量から前記排ガスボイラの前記二酸化炭素の削減量を算出してもよい。
【0010】
(5) (1)または(2)に記載の排ガスボイラ運転支援システムにおいて、前記表示装置の前記表示部は、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記出力指標の積算値、または、前記排ガスボイラの前記所定期間の前記運転状態指標の経時変化のグラフにおける所定単位期間に対応する前記排ガスボイラの前記所定単位期間の前記出力指標、を表示してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排ガスボイラの排ガスからの熱回収量を増加し、船舶からの二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る排ガスボイラ運転支援システムの構成および船舶管理システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す排ガスボイラ運転支援システムにおける運転支援装置の構成を示す図である。
【
図3】
図1に示す排ガスボイラ運転支援システムにおける表示装置の構成を示す図である。
【
図4】表示装置による表示の一例、すなわち運転支援装置による表示データの一例、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0014】
図1は、本実施形態に係る排ガスボイラ運転支援システムを示す概略図である。
図1には、本実施形態の排ガスボイラ運転支援システム1とともに、船舶管理システム100が示されている。船舶管理システム100は、例えば船舶管理事業者が船舶の全体管理を行うためのシステムである。一方、排ガスボイラ運転支援システム1は、船舶に搭載された排ガスボイラのメーカが船舶管理事業者または船舶乗員による排ガスボイラの運転の最適化を支援するためのシステムである。
【0015】
船舶管理システム100は、船舶3と、船上サーバ4と、陸上サーバ5とを備える。船舶3には、排ガスボイラ3aが搭載されている。船上サーバ4は、船舶3に搭載されており、船舶乗員によって管理され、船舶の運航情報等の種々の情報、および排ガスボイラの出力および運転状態等の種々の情報を、船内LANを介して収集する。船上サーバ4は、船内LANを経由して衛星通信の船舶局に接続し、種々の情報を陸上サーバ5に送信する。陸上サーバ5は、舶用通信プラットフォームベンダーによって管理され、船上サーバ4から送信されたデータ(船舶の運航情報等の種々の情報、および排ガスボイラの出力および運転状態等の種々の情報を含む)を受信し保存する。陸上サーバ5は、インターネット回線を経由して衛星通信の地上局、または携帯基地局(図示せず)に接続し、船上サーバ4から種々の情報を取得する。
【0016】
図5は、排ガスボイラの構成を示す概略図である。
図5に示すように、排ガスボイラ3aは、船舶3を推進させるための動力を得るための主機(ディーゼルエンジン等の内燃機関)40からの排ガスの熱を利用して、供給される水を加熱し、蒸気を生成する。生成された蒸気は、燃料油加温、潤滑油加温、生活熱源、荷役加温、発電等に用いられる。
【0017】
本実施例では、排ガスボイラ3aは、排ガスエコノマイザー32と補助ボイラ34とを備える。排ガスエコノマイザー32は補助ボイラ34と接続し、補助ボイラ34の下部管寄せを経由して給水される。また、排ガスエコノマイザー32は補助ボイラ34と上部連結管により接続し、排ガスの熱を回収した加熱水(水および蒸気)は補助ボイラ34の上部管寄せ内で気液分離され、蒸気が需要部に供給される。上部連結管には蒸気圧力計(図示せず)が設けられ、加熱水の圧力を検出する。補助ボイラ34は、バーナを備えており、排ガスからの熱回収量が不足する場合、燃料を燃焼することにより熱回収量の不足を補う。
【0018】
なお、
図5の例では、主機(ディーゼルエンジン等の内燃機関)40からの排ガスは、過給機42に供給される。過給機42は、排気タービン式のターボチャージャーであり、排ガスによって回転する排気タービンにより、空気を取り込み、圧縮し、主機40に供給する。その際、空気熱回収部44によって、圧縮された空気の熱の一部が回収されてもよい。回収された熱は、上述したように、ボイラ給水の加熱、燃料油加温、潤滑油加温、生活熱源、荷役加温、発電等に用いられる。
【0019】
主機40に供給された過給空気は、インタークーラ46によって冷却される。インタークーラ46は、水冷式であってもよいし、空冷式であってもよい。水冷式の場合、インタークーラ46は、冷却水として海水を用いてもよい。
【0020】
再び
図1を参照し、排ガスボイラ運転支援システム1は、船舶3に搭載された排ガスボイラ3aの運転の最適化の支援を遠隔で行うシステムである。排ガスボイラ運転支援システム1は、インターネットを経由して、陸上サーバ5から排ガスボイラの出力および運転状態等の種々の情報を取得する。なお、排ガスボイラ運転支援システム1は、インターネット回線を経由して衛星通信の地上局、または携帯基地局(図示せず)に接続し、船上サーバ4から排ガスボイラの出力および運転状態等の種々の情報を取得してもよい。排ガスボイラ運転支援システム1は、運転支援装置10と表示装置20(船舶表示装置20a)とを備える。また、排ガスボイラ運転支援システム1は、複数台の陸上表示装置20bを備えてもよい。例えば、陸上表示装置20bは船舶を管理する管理会社に備えられ、船舶に搭載された排ガスボイラ3aの管理に利用される。或いは、陸上表示装置20bは船舶に搭載された排ガスボイラ3aのメーカに備えられ、排ガスボイラ3aの運転の最適化の支援に利用される。
【0021】
図2は、
図1に示す排ガスボイラ運転支援システムにおける運転支援装置の構成を示す図である。
図2に示す運転支援装置10は、船舶3に対して遠隔の地に設けられており、船上の排ガスボイラ3aの運転の最適化を支援する運転支援情報を生成する。運転支援装置10は、通信部11と、制御部14と、記憶部15と、出力指標算出部16と、運転状態指標生成部17とを備える。
【0022】
通信部11は、船舶管理システム100における陸上サーバ5または船上サーバ4と通信を行い、船上の排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報を受信する。また、通信部11は、表示装置20(船舶表示装置20a)と通信を行い、後述のように生成される、排ガスボイラ3aの運転の最適化を支援する運転支援情報を表示装置20(船舶表示装置20a)に送信する。また、通信部11は、表示装置20(船舶表示装置20a)からの各種情報を受信する。
【0023】
制御部14は、運転支援装置10の全体制御を行う。制御部14(および、後述する出力指標算出部16および運転状態指標生成部17)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。制御部14(および、後述する出力指標算出部16および運転状態指標生成部17)の各種機能は、例えば記憶部15に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。制御部14(および、後述する出力指標算出部16および運転状態指標生成部17)の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0024】
記憶部15は、制御部14(および、後述する出力指標算出部16および運転状態指標生成部17)により実行される所定のソフトウェア(プログラム)を記憶する。また、記憶部15は、後述するように出力指標算出部16および運転状態指標生成部17によって生成される排ガスボイラの運転支援情報を記憶する。後述するように運転支援情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、記憶部15はWEBサーバとして機能する。この場合、運転支援装置10は、クラウドサーバ等の仮想サーバに構築されてもよい。また、記憶部15は、通信部11から入力される情報を記憶してもよい。記憶部15は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なメモリで構成される。
【0025】
出力指標算出部16は、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報に基づいて、所定期間(例えば、1年、1か月、1週間、1日)における排ガスボイラ3aの蒸気発生量(換言すれば、熱回収量)および二酸化炭素の削減量のうちの少なくとも一方を含む排ガスボイラ3aの出力指標(例えば、所定期間の積算値)を、運転支援情報として算出する。
【0026】
具体的には、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報は、排ガスボイラ3aの蒸気圧力、排ガスボイラ3aの排ガス入出口温度差、および、船舶3の主機の回転数を含む。出力指標算出部16は、主機の回転数から主機の排ガス量を推定し、推定した主機の排ガス量および排ガスボイラ3aの排ガス入出口温度差(主機の排ガス温度の測定値)から排ガスボイラ3aの熱回収量を算出する。出力指標算出部16は、算出した排ガスボイラ3aの熱回収量および排ガスボイラ3aの蒸気圧力から排ガスボイラ3aの蒸気発生量(出力指標)を算出する。或いは、出力指標算出部16は、算出した排ガスボイラ3aの蒸気発生量から排ガスボイラ3aの二酸化炭素の削減量(出力指標)を算出してもよい。
【0027】
ここで、実際の排ガスボイラ3aの蒸気発生量を算出するためには、排ガスボイラ3aへの給水流量のアナログデータが必要である。本実施形態では、排ガスボイラ3aへの給水流量のアナログデータを用いることなく、主機の回転数から主機の排ガス量を推定し、推定した主機の排ガス量から排ガスボイラ3aの蒸気発生量を算出する。主機の排ガス量の推定においては、例えば、船舶における主機の回転数ごと(例えば10rpmごと)の主機の排ガス量の設計値データが予め記憶されており、この設計値データに基づいて、主機の回転数に対応する主機の排ガス量が推定される。
【0028】
運転状態指標生成部17は、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報(換言すれば、熱回収量に関係するパラメータ)に基づいて、所定期間(例えば、1年、1か月、1週間、1日)における排ガスボイラ3aの運転状態指標の経時変化のデータを、運転支援情報として生成する。
【0029】
具体的には、排ガスボイラ3aの運転状態に関する情報は、排ガスボイラ3aの蒸気圧力、排ガス入口出口温度、または、排ガスボイラ3aの排ガス入出口差圧を含む。
また、運転支援情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、排ガスボイラ3aの所定期間の出力指標と排ガスボイラ3aの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフとを同一画面に表示する表示データである。
【0030】
図3は、
図1に示す排ガスボイラ運転支援システムにおける表示装置の構成を示す図である。
図3に示す表示装置20(船舶表示装置20a)は、例えば船上の排ガスボイラ3aの運転を行う作業者(例えば、船舶乗員)のための表示装置であり、運転支援装置10によって生成された運転支援情報を表示する。運転支援情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(船舶表示装置20a)としては、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。表示装置20(船舶表示装置20a)は、通信部21と、操作部22と、制御部24と、記憶部25と、表示部28とを備える。
【0031】
通信部21は、運転支援装置10と通信を行い、排ガスボイラ3aの運転支援情報を受信する。また、通信部21は、運転支援装置10と通信を行い、作業者によって入力される各種情報を、運転支援装置10に送信する。通信部21は、例えば、船内LAN等の無線通信規格に準拠した通信インタフェースデバイスで構成される。
【0032】
操作部22は、船上の排ガスボイラ3aの作業者によって操作されることにより、情報を入力する操作部である。操作部22は、例えば、物理的な操作ボタンを有するキーボードまたはマウス等、或いは仮想的な操作ボタンを有するタッチパネル等、で構成される。
【0033】
制御部24は、表示装置20(船舶表示装置20a)の全体制御を行う。制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。制御部24の各種機能は、例えば記憶部25に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。制御部24の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0034】
記憶部25は、制御部24により実行される所定のソフトウェア(プログラム)を記憶する。また、記憶部25は、受信された運転支援情報を記憶してもよい。また、記憶部25は、通信部21または操作部22から入力される情報を記憶してもよい。記憶部25は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なメモリで構成される。
【0035】
表示部28は、各種情報を表示する表示部である。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイで構成される。表示部28は、受信された運転支援情報に含まれた、排ガスボイラ3aの所定期間の出力指標と、排ガスボイラの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する。例えば、表示装置20(船舶表示装置20a)は、WEBブラウザを用いて、表示データを表示する。
【0036】
また、表示装置20(陸上表示装置20b)は、例えば船上の排ガスボイラ3aの管理を行う管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)のための表示装置であり、運転支援装置10によって生成された運転支援情報、例えば上述した排ガスボイラ3aの所定期間の出力指標と排ガスボイラ3aの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフとを同一画面に表示する表示データ、を表示してもよい。運転支援情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(陸上表示装置20b)としては、上述した表示装置20(船舶表示装置20a)と同様の構成であればよく、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。
【0037】
これによれば、陸上表示装置20bにより、陸上の管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)は、船舶表示装置20aの排ガスボイラの運転状態と同じ画面(内容)を見ることができ、運転支援情報を共有できる。
これにより、陸上の管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)は、排ガスボイラの運転状態を船舶での作業者と同様に把握したうえで、作業者からの管理対象機器の運転に関する問い合わせ、例えば船舶管理会社担当者が排ガスエコのマイザーの排ガス入出口差圧が上昇した場合のスートブロア―運転条件およびスートブロー周期の設定について問い合わせを受けた場合、共有された情報に基づいて船舶管理会社の監督者は機器メーカメンテナンス担当者と対応方策を検討し、乗組員に回答することができる。共有された情報から現状把握して作られた対応方策であるので、的確かつ効果的なものとなる。
【0038】
或いは、表示装置20(陸上表示装置20b)は、例えば船上の排ガスボイラ3aの管理を行う管理者(例えば、機器メーカの管理者)のための表示装置であり、運転支援装置10によって生成された運転支援情報、例えば上述した排ガスボイラ3aの所定期間の出力指標と排ガスボイラ3aの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフとを同一画面に表示する表示データ、を表示してもよい。運転支援情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(陸上表示装置20b)としては、上述した表示装置20(船舶表示装置20a)と同様の構成であればよく、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。
【0039】
これによれば、陸上表示装置20bにより、陸上の管理者(例えば、機器メーカの管理者)は、船舶表示装置20aの排ガスボイラの運転状態と同じ画面(内容)を見ることができ、運転支援情報を共有できる。
これにより、陸上の管理者(例えば、機器メーカの管理者)は、排ガスボイラの運転状態を船舶での作業者と同様に把握したうえで、作業者からの管理対象機器の運転に関する問い合わせ、例えば機器メーカ担当者が排ガスエコのマイザーの排ガス入出口差圧が上昇した場合のスートブロア―運転条件およびスートブロー周期の設定について問い合わせを受けた場合、共有された情報に基づいて機器メーカ担当者は対応方策を検討し、乗組員に回答することができる。共有された情報から現状把握して作られた対応方策であるので、的確かつ効果的なものとなる。
【0040】
以下では、
図4を参照して、運転支援装置10および表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b)について詳細に説明する。
図4は、表示装置による表示の一例、すなわち運転支援装置による表示データの一例、を示す図である。
【0041】
図4に示すように、運転支援装置10における出力指標算出部16は、WEBブラウザに対応する表示データであって、所定期間(例えば、1年、1か月、1週間、1日)における排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の蒸気発生量(換言すれば、熱回収量)および二酸化炭素の削減量のうちの少なくとも一方を含む排ガスエコノマイザー32の出力指標(例えば、所定期間の積算値)を表示する表示データ(運転支援情報)を生成する。また、運転支援装置10における運転状態指標生成部17は、WEBブラウザに対応する表示データであって、所定期間における排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の運転状態指標の経時変化を表示する表示データ(運転支援情報)を生成する。また、表示装置20は、WEBブラウザを用いて、表示データ(運転支援情報)を表示する。すなわち、表示装置20における表示部28は、受信された運転支援情報に含まれた、排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の所定期間の出力指標と、排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する。
【0042】
図4の例では、2022年3月22日の時点で、表示範囲を1ケ月、開始日付を2022-03-01とした場合の運転グラフを示す。解析日付は2022-03-01~2022-03-31となるが、22日以降のデータはまだ蓄積されていないため、3月1日から21日の3週間期間における排ガスボイラ3aの出力指標(運転支援情報)A1として、
・補助ボイラ34(排ガスボイラ3a)の蒸気発生量の積算値(ボイラ蒸発量)
・排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の蒸気発生量の積算値(エコ蒸発量)
・二酸化炭素の削減量の積算値(CO2削減量)
が表示されている。
【0043】
排ガスエコノマイザー32の蒸気発生量の積算値(エコ蒸発量)は、所定期間(1ケ月、1週間、1日など)の排ガスエコノマイザー32が発生した蒸気量の積算値を示し、排ガスエコノマイザー32において排ガスから回収した熱による蒸気発生量の計算方法としては、以下の一例が挙げられる。
【0044】
(1)測定した蒸気圧力P(
図5の蒸気供給管)に基づく下記式(1)より、飽和温度ts[℃]を計算する。
【数1】
・・・(1)
【0045】
(2)測定した蒸気圧力Pおよび計算した飽和温度tsに基づく下記式(2)より、飽和水の比エンタルピーh’[kJ/kg]を計算する。
【数2】
・・・(2)
【0046】
(3)計算した飽和温度tsに基づく下記式(3)より、蒸発潜熱r[kJ/kg]を計算する。
【数3】
・・・(3)
【0047】
(4)計算した飽和水の比エンタルピーh’と蒸発潜熱rとの和により、全熱を算出する。
【0048】
排ガスエコノマイザー32で回収された回収熱量Aは、下記式より計算される。
排ガス入出口温度差(℃)×排ガス量(kg/h)×ガス比熱(kcal/kg℃)
【0049】
排ガスエコノマイザー32の蒸気発生量(kg/h)は、下記式より計算される。
(排ガス入出口温度差(℃)×排ガス量(kg/h)×ガス比熱(kcal/kg℃))/(全熱(kcal/kg)-給水温度(kcal/kg))
【0050】
このように、排ガスエコノマイザー32の蒸気発生量は、全熱の増分(全熱-給水温度)と排ガス入出口温度に基づいて算出された熱回収量から算出できる。また、二酸化炭素削減量は、エコ蒸発量から算出できる。
【0051】
補助ボイラ34の蒸気発生量の積算値(ボイラ蒸発量)は、所定期間(1ケ月、1週間、1日など)に補助ボイラが発生した蒸気量の積算値を示し、補助ボイラ34での燃焼による蒸気発生量の計算方法としては、以下の一例が挙げられる。
【0052】
(1)下記式により、単位時間ごとの燃料消費量Aを算出する。
A=燃料率(%)×最大燃焼量(L/h)
燃焼率:最大燃焼量を100%としたときの燃焼量の割合(%)
【0053】
(2)下記式により、単位時間ごとの発熱量Bを算出する。
B=A×低位発熱量(kcal/kg)×比重(kg/L)× ボイラ効率(%)
低位発熱量(kcal/kg)、比重(kg/L):燃料種(A重油、C重油)により決まる
ボイラ効率:例えば85%
なお、全熱量は、上述した蒸気供給管の蒸気圧から排ガスエコノマイザーの熱計算と同様な方法で算出される。
【0054】
(3)下記式により、算出した発熱量Bから単位時間ごとの蒸気発生量へ換算する。
蒸気発生量(kg/h)=B/{全熱(kcal/kg)-給水温度(kcal/kg)}
【0055】
単位時間(例えば1分)ごとの蒸気発生量を積算して、所定期間の蒸気発生量を算出する。このように、補助ボイラ34の蒸気発生量(ボイラ蒸発量)は、燃料消費量と全熱から算出できる。また、
図4に示されるボイラ蒸発量は、所定期間(1日、1週間、1ケ月など)の補助ボイラの蒸気発生量の積算値を表示する。また、エコ蒸発量とボイラ蒸発量の合計となる排ガスボイラ3aの蒸発量(排ガスエコノマイザーと補助ボイラの合計)を表示装置に表示しても良い。
【0056】
また、
図4の例では、3週間における排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の運転状態指標(運転支援情報)の経時変化のグラフB1として、
・排ガスエコノマイザー32の排ガス入出口差圧の経時変化の棒グラフ
・排ガスエコノマイザー32の排ガス入出口温度差の経時変化の折れ線グラフ
・排ガスボイラ3aの排ガス流量(主機の回転数から算出された排ガス流量)
が表示されている。
なお、
図4には、運転支援装置10が生成する運転支援情報ではないが、すなわち、表示装置20(船舶表示装置20a)が表示する運転支援情報ではないが、排ガスボイラ3aの運転支援の考え方の理解のために、排ガス流量と排ガス入出口差圧から推定される情報として:
・排ガスボイラ3aの閉塞状態
が、経時変化の折れ線グラフとして示されている。
【0057】
図4の例において、1日~3日の運転状態としては、排ガス流量が少なく、熱交換器の閉塞・汚れが小さい。このような運転状態では、運転状態指標(運転支援情報)として、排ガス入出口差圧が低く、排ガス入出口温度差が大きい。
次に、4日~9日の運転状態としては、排ガス流量が増加し、熱交換器の閉塞・汚れが進行する。このような運転状態では、運転状態指標(運転支援情報)として、排ガス入出口差圧は増加し、排ガス入出口温度差は低下する(熱交換効率低下)。
次に、10日~13日の運転状態としては、排ガス流量が大きく、熱交換器の閉塞・汚れが大きい。このような運転状態では、運転状態指標(運転支援情報)として、排ガス入出口差圧が高く、排ガス入出口温度差が小さい(熱交換効率低下)。
【0058】
次に、熱交換器の閉塞・汚れの除去が行われ、14日~17日の運転状態としては、排ガス流量が大きく、熱交換器の閉塞・汚れが小さい。このような運転状態では、運転状態指標(運転支援情報)として、排ガス入出口差圧は低下し、排ガス入出口温度差は大きくなる。排ガス入出口差圧と排ガス入出口温度差は、ほぼ閉塞前の状態に戻る。
次に、18日~20日の運転状態としては、再び熱交換器の閉塞・汚れが進行し、運転状態指標(運転支援情報)としては、上述同様に、排ガス入出口差圧は大きくなり、排ガス入出口温度差は小さくなる(熱交換効率低下)。
【0059】
これにより、運転状態指標(運転支援情報)において排ガス入出口差圧が増加すると、運転状態としては、排ガス流路の閉塞が生じ、熱交換効率が低下していることが予測できる。これにより、例えばスートブロアの実施のように、排ガスボイラの運転の最適化を支援することができる。スートブロアの実施としては、毎日或いは所定時間ごとに使う場合は、スートブロアの間隔を制御して差圧上昇を抑えてもよいし、数日毎の使用の場合は、排ガス入出口差圧上昇時にスートブロアを使用してもよい。
【0060】
また、運転状態指標(運転支援情報)において排ガス入出口温度差が低下すると、運転状態としては、熱交換器に煤付着が生じ、熱交換効率が低下していることが予測できる。これにより、例えばスートブロアの実施のように、排ガスボイラの運転の最適化を支援することができる。スートブロアの実施としては、毎日或いは所定時間ごとに使う場合は、スートブロアの間隔を制御して差圧上昇を抑えてもよいし、数日毎の使用の場合は、排ガス入出口温度差が低下時にスートブロアを使用してもよい。
【0061】
排ガス入出口差圧は排ガス流路の閉塞、排ガス入出口温度差は熱交換能力(熱交表面の汚れ)の指標となる。この2つの指標を組合せて、運転状態指標の変化とスートブローの効果のデータを蓄積し排ガスエコノマイザーの汚れ状況を推定・把握することで、スートブローの方法や実施サイクルを最適化できる。また、排ガスエコノマイザーの開放点検での熱交洗浄などの必要性を予測する情報とすることもできる。
【0062】
また、運転状態指標(運転支援情報)として、排ガスボイラの蒸気圧力が用いられる場合、運転状態指標(運転支援情報)において蒸気圧が低下すると、運転状態としては、熱交換器の効率低下、蒸気負荷の増大等が予測できる。例えば、蒸気需要が変わらないにも関わらず蒸気圧が低下する場合は、排ガスエコノマイザーの熱交換能力低下が予想され、スートブローの実施など熱交換能力を回復させる作業が行われる。一方、蒸気負荷の急激な増加が有る場合は、蒸気圧低下を引き起こさない程度に蒸気負荷を制御(蒸気使用機器の使用時間を調整する等)する。蒸気負荷を制御し蒸気圧の低下を抑制することで、補助ボイラの燃焼時間或いは発停頻度が低減すれば直接的に省エネルギーに繋がる。
【0063】
なお、
図4の例では、管理者(表示装置から情報を取得し、また操作する者)によって、表示範囲(所定期間)および表示開始日を指定可能である。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の排ガスボイラ運転支援システム1によれば、所定期間における排ガスエコノマイザー32(排ガスボイラ3a)の出力指標、具体的には蒸気発生量(換言すれば、熱回収量)または二酸化炭素の削減量を表示する。また、補助ボイラ34(排ガスボイラ3a)の出力指標、具体的には補助ボイラ34の蒸気発生量(換言すれば、燃料消費量)または二酸化炭素の発生量を表示する。これにより、管理者は、排ガスボイラ3aの所定期間の運転が、二酸化炭素の排出量が少ない運転であったか、或いは、二酸化炭素の排出量が多い運転であったかを判断することができる。
例えば、排ガスエコノマイザー32の蒸気発生量(熱回収量)が多いほど、排ガス熱回収量が大きく、その結果、補助ボイラの燃料消費を削減でき、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0065】
また、所定期間における排ガスボイラ3aの運転状態指標の経時変化のグラフ、例えば排ガス流量および排ガスエコノマイザーの排ガス入出口温度差の経時変化の折れ線グラフ、または、排ガスエコノマイザーの排ガス入出口差圧の経時変化の棒グラフを、同一画面に表示する。これにより、管理者は、二酸化炭素の排出量が少ない運転に帰結する排ガスボイラの運転状態、或いは、二酸化炭素の排出量が多い運転に帰結する排ガスボイラの運転状態を分析し、二酸化炭素の排出量を削減するように排ガスボイラの運転の最適化を行うことができる。
【0066】
例えば、排ガスエコノマイザーの入口出口温度差が大きいほど排ガス熱回収効率が高く、その結果、補助ボイラの燃料消費を削減でき、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
一方、排ガス入出口差圧が高いほど、ボイラ詰まりが発生していることが予想され、排ガス熱回収効率が低く、その結果、補助ボイラの燃料消費を削減できず、二酸化炭素の排出量を削減できない。
【0067】
例えば、今月の二酸化炭素削減量が169t(蒸気発生量823t)であって先月に比べて-10%であった場合、運転状態指標として同じ画面に表示される排ガス入出口差圧と排ガス入出口温度差を確認する。
図4によれば、排ガス入出口差圧が上昇し排ガス入出口温度差が低下する状況が見て取れる。この変化は約10日間(
図4の4日から13日)で起こっており、この期間のスートブローが6時間間隔である場合は、設定間隔を短く(例えば4時間)にすることで熱交換器のスス付着を抑制し、熱交換効率の低下を防ぐことで二酸化炭素削減量を維持できる。また、運転状態指標としての蒸気圧力(図示せず)は、排ガス入出口温度差と同様に熱交換器の熱交換効率を反映するが、船内の蒸気需要が変動する場合には蒸気需要の影響を受け、蒸気需要が大きい場合には低下し、少ない場合には上昇する。このため、排ガスボイラが正常に運転している状態での蒸気圧低下は蒸気需要の過剰が原因となることがある。この場合、時間変更可能な蒸気需要は、蒸気使用の時間を変更することで排ガスボイラで発生する蒸気を有効に活用できる。また、必要のない蒸気需要が見つかった場合は、その蒸気需要を停止することで補助ボイラの無駄な燃料消費を削減できる。
【0068】
このように、本実施形態の排ガスボイラ運転支援システム1によれば、二酸化炭素の排出量の削減のための排ガスボイラの運転の最適化を支援することができる。
【0069】
なお、表示装置20の表示部28は、
図4に示すように排ガスボイラ3aの所定期間(例えば1ケ月)の出力指標の積算値A1を表示してもよい。或いは、表示装置20の表示部28は、排ガスボイラ3aの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフB1における任意の単位期間(例えば1日目)に対応する排ガスボイラ3aの所定単位期間(例えば1日)の出力指標を表示してもよい。例えば、作業者(または陸上の管理者)が、排ガスボイラ3aの所定期間の運転状態指標の経時変化のグラフB1における任意の単位期間(例えば1日目)をクリックすることに応答して、表示装置20の表示部28は、
図4に示す排ガスボイラ3aの所定期間(例えば1ケ月)の出力指標の積算値A1の表示を、クリックされた任意の単位期間(例えば1日目)に対応する排ガスボイラ3aの所定単位期間(例えば1日)の出力指標の表示に変更してもよい。
【0070】
これによれば、所定期間(例えば1か月)の積算値である排ガスボイラ3aの出力指標と、所定期間(例えば1か月)における所定単位期間(例えば1日単位)の排ガスボイラ3aの運転状態指標の経時変化のグラフとを、同一画面に表示する。これにより、管理者は、二酸化炭素の排出量が少ない運転に帰結する排ガスボイラの運転状態、或いは、二酸化炭素の排出量が多い運転に帰結する排ガスボイラの運転状態を所定単位期間(例えば1日単位)ごとに分析し、より排ガスボイラの運転の最適化を行うことができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、運転支援装置10は、運転支援情報として、WEBブラウザに対応する表示データを生成する形態を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、運転支援装置10は種々の運転支援情報を生成し、表示装置20が運転支援情報に基づいて種々の表示を行う種々の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 排ガスボイラ運転支援システム
3 船舶
3a 排ガスボイラ
4 船上サーバ
5 陸上サーバ
10 運転支援装置
11 通信部
14 制御部
15 記憶部
16 出力指標算出部
17 運転状態指標生成部
20,20a 表示装置(船舶表示装置)
20,20b 表示装置(陸上表示装置)
21 通信部
22 操作部
24 制御部
25 記憶部
28 表示部
32 排ガスエコノマイザー
34 補助ボイラ
100 船舶管理システム