(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005021
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】制御装置、半導体遮断システム、半導体スイッチの制御方法、制御プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
H02H 3/093 20060101AFI20240110BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02H3/093
H02H3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104988
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】豊田 玄紀
【テーマコード(参考)】
5G004
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA04
5G004DA01
5G004DC01
5G004EA01
(57)【要約】
【課題】過電流の判定処理において誤判定が発生する可能性を低減することができる制御装置等を提供する。
【解決手段】制御装置(3)は、半導体スイッチ(2)の動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、電流センサ(4)の検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を半導体スイッチ(2)に連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出部(31)と、算出部(31)が算出した通電可能時間を基に、半導体スイッチ(2)の開閉制御を行う開閉制御部(32)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、
前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、
前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、前記電流センサの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出部と、
前記算出部が算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える、制御装置。
【請求項2】
前記半導体遮断システムは、前記半導体スイッチを冷却する冷却器をさらに備え、
前記動作特性情報には、前記冷却器の所定の物理定数と、当該冷却器を使用した場合における前記半導体スイッチの許容可能な温度とが含まれており、
前記算出部は、前記所定の物理定数および前記許容可能な温度を用いて前記通電可能時間を算出するとともに、
前記動作特性情報には、前記半導体スイッチを即座に開けることが求められる電流範囲の下限値が含まれており、
前記開閉制御部は、前記下限値以上の電流が前記半導体スイッチに流れた場合には、前記半導体スイッチを開ける、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記半導体遮断システムは、前記半導体スイッチを冷却する冷却器をさらに備え、
前記動作特性情報には、
(i)前記半導体スイッチのコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性と、
(ii)前記半導体スイッチに流れる電流の電流値と、当該電流値で前記半導体スイッチを連続通電することが可能な時間との関係を示す情報と、
(iii)前記冷却器の所定の物理定数と、
(iV)前記冷却器を使用した場合における前記半導体スイッチの許容可能な温度と、が含まれており、
前記算出部は、前記コレクタ・エミッタ間飽和電圧特性、前記関係を示す情報、前記所定の物理定数、および前記許容可能な温度を用いて前記通電可能時間を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、
前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置と、を含む半導体遮断システム。
【請求項5】
前記半導体スイッチには、バイポーラトランジスタ、MOSFET、またはIGBTが用いられてもよい、請求項4に記載の半導体遮断システム。
【請求項6】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、
前記電流センサにより、前記半導体スイッチを流れる電流を検出する電流検出ステップと、
前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、前記電流検出ステップの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む半導体スイッチの制御方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記算出部および前記開閉制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮断動作を行う半導体スイッチの制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源からの電力を負荷に供給する電力系統には、半導体スイッチを備えた半導体遮断システムが用いられている。このような半導体遮断システムは、負荷側での短絡事故の発生時などにおいて、過電流が半導体スイッチに流れたときに、半導体スイッチを動作させることによって高速に遮断する。
【0003】
従来の半導体スイッチの制御装置では、ユーザが電力系統の電源及び負荷に基づいて、半導体スイッチに遮断動作を行わせるための閾値として、負荷の定格電流に基づいて定められる定常過電流閾値と、当該定常過電流閾値よりも大きい短時間過電流閾値とを予め設定する。更に、この従来の半導体スイッチの制御装置には、半導体スイッチに流れる電流を取得するとともに、当該半導体スイッチがジュール熱によって熱破壊が発生しない電流の範囲で、閾値を定常過電流閾値から短時間過電流閾値に変更することが開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の半導体スイッチの制御装置では、ユーザは供給能力などの電源の電気特性及び使用電力などの負荷の電気特性に基づき、半導体スイッチに流れる電流のピーク値を予測して短時間過電流閾値を予め設定していた。このため、従来の半導体スイッチの制御装置では、短時間過電流閾値を適切に設定することができずに、過電流の判定処理において誤判定が発生するという問題が生じることがあった。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、過電流の判定処理において誤判定が発生する可能性を低減することができる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る制御装置は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体遮断システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、前記電流センサの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出部と、前記算出部が算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える。
【0008】
また、本開示の一側面に係る半導体遮断システムは、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、上記制御装置と、を含む。
【0009】
また、本開示の一側面に係る半導体スイッチの制御方法は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、前記電流センサにより、前記半導体スイッチを流れる電流を検出する電流検出ステップと、前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報と、前記電流検出ステップの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む。
【0010】
また、本開示の一側面に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、過電流の判定処理において誤判定が発生する可能性を低減することができる制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置およびこれを備えた半導体遮断システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示した半導体スイッチとこれを冷却する冷却器とを示す斜視図である。
【
図3】上記半導体スイッチのコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性の具体的な波形の一例を示すグラフである。
【
図4】上記制御装置における動作特性曲線の具体例を示すグラフである。
【
図5】上記制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】上記制御装置の動作例を説明する波形図である。
【
図7】上記制御装置の別の動作例を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
(半導体遮断システム1が適用される電力系統の構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る制御装置3およびこれを備えた半導体遮断システム1を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の半導体遮断システム1は、その入力側に電源51が電気的に接続されるとともに、その出力側に負荷52が電気的に接続されている。なお、以下の説明では、本実施形態の半導体遮断システム1が直流電力系統Kに適用された場合を例示して説明する。
【0015】
本実施形態の半導体遮断システム1は、電源51側からの直流電力を適宜遮断するシステムであり、半導体遮断システム1は、電源51から負荷52への電流を遮断する半導体遮断器である。なお、電源51は、直流電源に限定されるものではなく、交流電源であってもよい。但し、電源51が交流電源である場合には、半導体遮断システム1との間にAC-DC変換器が設置されて、電源51からの交流電力がAC-DC変換器により直流電力に変換されて半導体遮断システム1に供給される。
【0016】
負荷52は、直流電力によって動作する装置である。負荷52は、その入力側にコンデンサおよびコイルからなるLCフィルタを備えており、入力電力の安定化やノイズ対策等を行うようになっている。また、負荷52は、その入力側にコンデンサ等の蓄電装置が設けられており、前記蓄電装置は、直流電力の供給が瞬断した場合に動作用電圧を補償するように構成されている。なお、上記の説明以外に、交流電力で動作する負荷52を用いことができる。この場合には、例えば、負荷52の内部に半導体遮断システム1からの直流電力を交流電力に変換するDC-AC変換器が設置される。
【0017】
(半導体遮断システム1の構成)
図1に示すように、本実施形態の半導体遮断システム1は、第1線L1、第2線L2、半導体スイッチ2、制御装置3、および電流センサ4を備えている。第1線L1は、電源51の正極(不図示)と負荷52とをつなぐ。第2線L2は、電源51の負極(不図示)と負荷52とをつなぐ。第1線L1および第2線L2は、直流電力系統Kの本線および帰線のそれぞれ一部を構成している。
【0018】
半導体スイッチ2は、第1線11において電源51と負荷52との間に位置しており、一端側が電源51に接続され、他端側が負荷52に接続されている。半導体スイッチ2は、半導体スイッチ本体21と、当該半導体スイッチ本体21に形成された寄生ダイオード22とを備えている。制御装置3は、電流センサ4の検出結果と、当該制御装置3に予め設定されている所定の動作特性情報とを用いて、半導体スイッチ2の制御を行う(詳細は後述。)。
【0019】
また、半導体スイッチ2は、他端側が負荷52に接続されているので、当該半導体スイッチ2を介して電源51から負荷52に直流電力が供給される場合、当該負荷52に突入電流が流れることがある。すなわち、負荷52には、上記のように、蓄電装置が設けられているため、負荷52は、電源51からみると容量成分を有している。このため、直流電力が供給される場合、電源51から半導体遮断システム1を介して負荷52の蓄電装置への過大な充電電流である、突入電流が流れることがある。
【0020】
ここで、
図2も用いて、半導体スイッチ2について具体的に説明する。
図2は、
図1に示した半導体スイッチ2とこれを冷却する冷却器5とを示す斜視図である。半導体スイッチ2には、例えば、バイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられている。
【0021】
図2に示すように、半導体スイッチ2は、半導体スイッチ本体21および寄生ダイオード22を覆うジェル・モールド20と、4つの端子20A、20B、20C、20Dとを備えている。半導体スイッチ本体21が、例えば、NPN型の2in1タイプのバイポーラトランジスタである場合には、例えば、端子20A、20B、20C、および20Dは、バイポーラトランジスタ(半導体スイッチ本体21)のコレクタ、第1エミッタ、ベース、および第2エミッタにそれぞれ電気的に接続されている。また、端子20A、および20Cは、それぞれ電源51、および制御装置3に電気的に接続され、端子20B、および20Dは、負荷52に電気的に接続されている。
【0022】
半導体スイッチ2には、当該半導体スイッチ2を冷却する冷却器5が取り付けられている。冷却器5は、冷却板5aと、複数の冷却フィン5bとを備えている。冷却板5aおよび複数の各冷却フィン5bは、例えば、熱伝導性の高い金属材料を用いて構成されており、矩形状の平板部材である。また、
図2に示すように、冷却板5aの上面には、半導体スイッチ2のジェル・モールド20が一体的に固定されている。一方、冷却板5aの下面には、複数の冷却フィン5bが所定の間隔をおいて取り付けられている。そして、冷却器5では、半導体スイッチ2で生じた熱が、冷却板5aを介して複数の冷却フィン5bに伝達されることにより、半導体スイッチ2は冷却される。
【0023】
また、本実施形態の半導体遮断システム1では、後に詳述するように、冷却器5の所定の物理定数と、当該冷却器5を使用した場合における半導体スイッチ2の許容可能な温度とが上記所定の動作特性情報に含められて予め設定されている。
【0024】
図1に示すように、電流センサ4は、電源51と半導体スイッチ2との間に設けられている。電流センサ4は、公知の変流器などの電流計を用いて構成されており、電源51から半導体スイッチ2に流れる電流を検出する。電流センサ4は、その検出結果を制御装置3に出力する。
【0025】
(制御装置3の構成)
制御装置3は、算出部31と、開閉制御部32と、ドライバ33と、記憶部34とを備えている。制御装置3は、上記半導体スイッチ本体21に指示信号を出力することにより、半導体スイッチ2を制御する。具体的には、制御装置3は、半導体スイッチ2の動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、電流センサ4の検出結果から得られる電流値とを用いて、半導体スイッチ2の上記ベースに出力される指示信号を生成する。そして、制御装置3は、生成した指示信号をドライバ33からベースに出力することにより、半導体スイッチ2を制御する。
【0026】
記憶部34は、例えば、書き換え可能な不揮発性メモリを用いて構成されており、上記所定の動作特性情報が予め記憶される。この動作特性情報には、半導体スイッチ2の動作特性に関する特性情報として、半導体スイッチ2を即座に開けることが求められる電流範囲の下限値I%setが含まれている。また、動作特性情報には、(i)半導体スイッチ2のコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性と、(ii)半導体スイッチ2に流れる電流の電流値と、当該電流値で半導体スイッチ2を連続通電することが可能な時間との関係を示す情報と、(iii)冷却器5の所定の物理定数と、(iV)冷却器5を使用した場合における半導体スイッチ2の許容可能な温度と、が含まれている。
【0027】
開閉制御部32は、半導体スイッチ2の遮断特性(静特性)を表す、上記下限値I%setに基づき、半導体スイッチ2の開閉制御を行う。つまり、開閉制御部32は、下限値I%set以上の電流が半導体スイッチ2に流れた場合には、当該半導体スイッチ2を開ける。
【0028】
算出部31は、記憶部34に記憶されている上記動作特性情報と、電流センサ4の検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を半導体スイッチ2に連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する(詳細は後述)。
【0029】
開閉制御部32は、算出部31が算出した通電可能時間を基に、過電流の判定処理を行う。更に、開閉制御部32は、上記判定処理の判定結果を基に、半導体スイッチ2の開閉制御を行う。すなわち、開閉制御部32は、判定処理の判定結果が半導体スイッチ2を流れる電流が過電流ではないことを示す場合には、半導体スイッチ2を開く必要がないと判断する。そして、開閉制御部32は、半導体スイッチ2をオン状態(閉じた状態)で維持する。
【0030】
一方、開閉制御部32は、判定処理の判定結果が半導体スイッチ2を流れる電流が過電流であることを示す場合には、半導体スイッチ2を即座に開く必要があると判断する。そして、開閉制御部32は、半導体スイッチ2をオフ状態とする指示信号を生成して、ドライバ33を介して当該指示信号をベースに出力する。
【0031】
(制御装置3の動作)
次に、
図3~
図5も参照して、本実施形態の制御装置3の動作例について具体的に説明する。
図3は、上記半導体スイッチ2のコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性の具体的な波形の一例を示すグラフである。
図4は、上記制御装置3における動作特性曲線の具体例を示すグラフである。
図5は、上記制御装置3の動作例を示すフローチャートである。
【0032】
(コレクタ・エミッタ間飽和電圧特性)
まず
図3を参照して、半導体スイッチ2のコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性について具体的に説明する。コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vは、半導体スイッチ2がオン状態のときの半導体スイッチ本体21のコレクタおよびエミッタ間の電圧であり、
図3の曲線60にて示すように、半導体スイッチ2を流れる電流Iに応じて変化する。すなわち、曲線60は、V=f(I)の関数で表される。また、このコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vは、曲線60に示すように、電流Iが0(A)のときも完全に0Vにはならずに、半導体スイッチ本体21の製品ごとに異なる微小な値となる。
【0033】
本実施形態の制御装置3では、半導体スイッチ2の半導体スイッチ本体21が定められると、当該半導体スイッチ2のコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性のデータシートが、動作特性情報として、記憶部34に予め記憶される。また、本実施形態の制御装置3では、算出部31が、後に詳述するように、コレクタ・エミッタ間飽和電圧特性のデータシートを参照することにより、半導体スイッチ2の耐性(静特性)に応じて、上記判定処理での閾値としての通電可能時間を算出するようになっている。
【0034】
次に
図4も参照して、本実施形態の制御装置3での基本的な動作例を説明する。
図4に“B”にて示す領域は、上記下限値I%setで規定される瞬時遮断領域である。また、算出部31は、電流センサ4で検出された電流値が
図4に直線71で示す下限値I%setを超える電流値であることを検出すると、開閉制御部32は、即座に半導体スイッチ2をオフ状態とする。
【0035】
また、
図4に“A”にて示す領域は、電流センサ4で検出された電流値で半導体スイッチ2を連続通電可能な連続通電可能領域である。この連続通電可能領域は、電流センサ4で検出された電流値(I)に対して、その電流値(I)で連続通電することが可能な時間を考慮した遮断動作の閾値となる遮断電流値I%contで規定されている。すなわち、遮断電流値I%contは、上記電流値(I)が異なると、当該電流値(I)で半導体スイッチ2に生じるジュール熱の大きさも異なり、このため半導体スイッチ2の耐性に応じた、連続通電することが可能な上記時間も異なる。具体的には、遮断電流値I%contは、
図4に曲線72にて示すように、電流値(I)の値が大きくなるにしたがって、半導体スイッチ2で許容される動作時間も小さくなる。
【0036】
また、本実施形態の制御装置3では、半導体スイッチ2に流れる電流の電流値(I)と、当該電流値(I)で半導体スイッチ2を連続通電することが可能な時間との関係を示す情報、例えば、電流値(I)と、当該電流値(I)に対応した時間から定まる遮断電流値I%contとの関係を示すテーブルが記憶部34に予め記憶されている。
【0037】
次に
図5も参照して、本実施形態の制御装置3の動作例を説明する。尚、以下の説明では、開閉制御部32がドライバ33を介して半導体スイッチ2をオン状態とする指示信号を出力して、当該半導体スイッチ2を閉じて電源51から負荷52への電力供給を許容している場合について主に説明する。
【0038】
図5のステップS1に示すように、制御装置3は、電流センサ4からの検出結果を入力して、半導体スイッチ2を流れる電流を計測する。すなわち、制御装置3では、電流センサ4により、半導体スイッチ2を流れる電流を検出する電流検出ステップが行われる。そして、制御装置3では、算出部31が計測した結果の電流値I1を取得する。
【0039】
続いて、制御装置3では、算出部31が電流値I1を取得すると、その電流値I1が流れる時間をカウントするタイマ(図示せず)をリセット、つまりタイマカウント値を0秒とする(ステップS2)。次に、算出部31は、記憶部34を参照することにより、取得した電流値I1がその電流値I1に応じた遮断電流値I%cont以下であるか否かについて判別する(ステップS3)。算出部31は、取得した電流値I1が遮断電流値I%cont以下であることを判別すると(ステップS3でYES)、算出部31は、ステップS2に進む。
【0040】
尚、上記タイマは、例えば、制御装置3の内部に設けたハードウェアを用いて構成してもよいし、算出部31に入力されるクロック信号の数をカウントすることにより、当該算出部31がタイマの機能を実行してもよい。
【0041】
一方、算出部31は、取得した電流値I1が遮断電流値I%cont以下でないことを判別すると(ステップS3でNO)、算出部31は、取得した電流値I1が下限値I%set以上であるか否かについて判別する(ステップS4)。算出部31は、取得した電流値I1が下限値I%set以上であることを判別すると(ステップS4でYES)、開閉制御部32は、ドライバ33を介して指示信号を半導体スイッチ2に出力することにより、当該半導体スイッチ2に即座に遮断動作を行わせる(ステップS9)。
【0042】
一方、算出部31は、取得した電流値I1が下限値I%set以上でないことを判別すると(ステップS4でNO)、算出部31は、上記タイマを動作させてタイマカウントを開始させる(ステップS5)。すなわち、算出部31は、半導体スイッチ2において、取得した電流値I1が流れる通電時間のカウントを開始する。
【0043】
次に、算出部31は、半導体スイッチ2のコレクタ・エミッタ間電圧V1を算出する(ステップS6)。具体的にいえば、算出部31は、
図3に曲線60にて示した、コレクタ・エミッタ間飽和電圧特性を表すV=f(I)の式に対して、ステップS1で取得した電流値I1を代入することにより、コレクタ・エミッタ間電圧V1を求める。
【0044】
続いて、算出部31は、取得した電流値I1を半導体スイッチ2に連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間t1を算出する(ステップS7)。具体的には、算出部31は、下記の(1)式を用いて、通電可能時間t1を算出する。
【0045】
【0046】
但し、(1)式において、cおよびmは、それぞれ冷却器5の所定の物理定数としての冷却板5aの比熱および質量である。また、ΔTは、冷却器5を使用した場合における半導体スイッチ2の許容可能な温度である。
【0047】
詳細にいえば、算出部31は、半導体スイッチ2に電流値I1を通電したときに当該半導体スイッチ2に生じる損失P1は、I1×V1=I1×f(I1)で表される。このため、電流値I1を通電可能時間t1で連続通電したときでの半導体スイッチ2に発生するジュール熱Q1は、P1×t1=I1×f(I1)×t1で表される。このジュール熱Q1による半導体スイッチ2の熱破損を冷却器5によって防ぐためには、(1)式の分子で表される当該冷却器5の冷却性能がジュール熱Q1と等しければよい。すなわち、I1×f(I1)×t1=m×c×ΔTが成立する。従って、算出部31は、上記(1)式を用いて、電流値I1を連続通電したときの通電可能時間t1を求めることができる。
【0048】
以上のステップS5~S7により、制御装置3では、半導体スイッチ2の動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、上記電流検出ステップの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を半導体スイッチ2に連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出ステップが実行される。
【0049】
次に、算出部31は、ステップS5でカウントを開始した時間のカウント時間がステップS7で算出した通電可能時間t1を経過したか否かについて判別する(ステップS8)。算出部31は、カウント時間が通電可能時間t1を経過していることを判別すると(ステップS8でYES)、ステップS9に進む。これにより、開閉制御部32は、ドライバ33を介して半導体スイッチ2をオフ状態とする指示信号を出力して、当該半導体スイッチ2に遮断動作を行わせる。
【0050】
一方、算出部31は、カウント時間が通電可能時間t1を経過していないことを判別すると(ステップS8でNO)、ステップS8の前に戻る。すなわち、開閉制御部32は、半導体スイッチ2をオフ状態とすることなく、オン状態で維持して電源51から負荷52への電力供給を許容する。また、算出部31は、タイマカウントを継続して実行する。すなわち、算出部31は、電流値I1が半導体スイッチ2に流れた累積の通電時間をカウントする。
【0051】
更に、制御装置3では、算出部31によって上記累積の通電時間をカウントしている間に、電流センサ4からの検出結果が遮断電流値I%cont以下になったことを検出すると、当該累積の通電時間のカウントを停止して、ステップS1に戻る。また、制御装置3では、上記累積の通電時間をカウントしている間に、電流センサ4からの検出結果が下限値I%set以上になったことを検出すると、開閉制御部32は、半導体スイッチ2に遮断動作を即座に行わせる。
【0052】
以上のステップS8~S9により、制御装置3では、算出ステップで算出した通電可能時間を基に、半導体スイッチ2の開閉制御を行う開閉制御ステップが実行される。
【0053】
以上のように構成された本実施形態の制御装置3では、半導体スイッチ2の動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、電流センサ4の検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を半導体スイッチ2に連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出部31を備えている。また、本実施形態の制御装置3は、算出部31が算出した通電可能時間を基に、半導体スイッチ2の開閉制御を行う開閉制御部32を備えている。これにより、本実施形態の制御装置3では、開閉制御部32は算出部31が算出した通電可能時間を閾値として過電流の判定処理を行って半導体スイッチ2の開閉制御を行うことができる。この結果、本実施形態の制御装置3では、通電時間及び半導体スイッチの動作特性に応じて、当該判定処理での閾値を適宜変更することが可能となり、誤判定が発生する可能性を低減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の制御装置3は、半導体スイッチ2の動作特性情報を用いて、判定処理を行うことから、当該半導体スイッチ2に応じて閾値(通電可能時間)を標準化することが可能となる。この結果、本実施形態の制御装置3では、半導体スイッチ2に電気的に接続される電源51の電気特性および負荷52の電気特性に関わらず、閾値を適切に設定して、上記判定処理において誤判定が発生する可能性を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態の制御装置3では、算出部31が冷却器5の冷却性能を用いて、通電可能時間を算出するので、開閉制御部32は、高精度な判定処理をより確実に行うことができる。つまり、開閉制御部32は、半導体スイッチ2の熱破損を抑制しつつ、当該半導体スイッチ2に遮断動作を適切に行わせることができる。
【0056】
また、本実施形態の制御装置3では、算出部31は
図3の曲線60にて示したコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性を用いて、閾値としての通電可能時間を算出しているので、算出部31は電流値とその通電時間との関係性を鑑みて閾値を求めることができる。この結果、本実施形態の制御装置3では、当該閾値を、半導体スイッチ2のジュール熱による熱破損を防ぐ設定値としても用いることができ、当該熱破損の発生を確実に抑えることができる。
【0057】
ここで、
図6および
図7も参照して、本実施形態の制御装置3の効果について具体的に説明する。
図6は、上記制御装置3の動作例を説明する波形図である。
図7は、上記制御装置3の別の動作例を説明する波形図である。尚、
図6および
図7では、開閉制御部32が即座に遮断動作させる、下限値I%setの図示は省略している。
【0058】
半導体スイッチ2に流れる電流が、例えば、
図6の実線81に示すように、時点T1から急峻に立ち上がって、時点T2で遮断電流値I%cont以上となる。さらに、当該電流が時点T3で遮断電流値I%cont以下となると、算出部31が時点T1から時点T3までのタイマカウントの値が当該電流で定まる通電可能時間を超えていないことを判別する。この結果、本実施形態の制御装置3では、開閉制御部32は半導体スイッチ2に遮断動作を行わせることなく、時点T3以降も当該半導体スイッチ2を通じた通電を継続させる。
【0059】
一方、半導体スイッチ2に流れる電流が、例えば、
図7の実線82に示すように、時点T11から急峻に立ち上がって、時点T12で遮断電流値I%contを超える。さらに、算出部31が時点T11からの累積のタイムカウントの値が時点T13で通電可能時間を経過したことを判別すると、開閉制御部32は即座に半導体スイッチ2に遮断動作を行わせて、時点T13で当該半導体スイッチ2を通じた通電を停止させる。
【0060】
また、本実施形態の制御装置3では、
図6の実線81から明らかなように、電力系統の起電時での突入電流、および電流センサ4へのノイズの混入による過電流などが短時間、半導体スイッチ2に流れる場合、不要な過電流検出による半導体スイッチ2の開放動作を行わなくなることができる。また、本実施形態の制御装置3では、通電可能時間を上記閾値として用いているので、上記のような短時間の過電流などの発生だけでなく、急峻なピークのない過電流が流れるときでも、上記判定処理での誤判定を抑えることができるとともに、半導体スイッチ2の熱破損の発生を抑制することができる。
【0061】
尚、上記の説明では、所定の動作特性情報を記憶部34に設定して予め記憶させる構成について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、半導体遮断システム1に設けた通信インターフェース等を介在させてサーバ等の外部装置から動作特性情報を適宜設定する構成でもよい。
【0062】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の制御ブロック(特に、算出部31および開閉制御部32)としてコンピュータを機能させるための制御プログラムにより実現することができる。
【0063】
この場合、上記装置は、上記制御プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記制御プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0064】
上記制御プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0065】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0066】
上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0067】
また、上記実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0068】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係る制御装置は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、前記電流センサの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出部と、前記算出部が算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える。
【0069】
上記構成によれば、開閉制御部は、算出部が算出した通電可能時間を閾値として過電流の判定処理を行って半導体スイッチの開閉制御を行うことができる。この結果、制御装置では、通電時間及び半導体スイッチの動作特性に応じて、当該判定処理での閾値を適宜変更することが可能となり、誤判定が発生する可能性を低減することができる。さらに、制御装置は、半導体スイッチの動作特性情報を用いて、判定処理を行うことから、当該半導体スイッチに応じて閾値を標準化することが可能となり、半導体スイッチに電気的に接続される電源の電気特性および負荷の電気特性に関わらず、閾値を適切に設定して、上記判定処理において誤判定が発生する可能性を低減することができる。
【0070】
また、本開示の態様2に係る制御装置は、態様1において、前記半導体システムは、前記半導体スイッチを冷却する冷却器をさらに備え、前記動作特性情報には、前記冷却器の所定の物理定数と、当該冷却器を使用した場合における前記半導体スイッチの許容可能な温度とが含まれており、前記算出部は、前記所定の物理定数および前記許容可能な温度を用いて前記通電可能時間を算出するとともに、前記動作特性情報には、前記半導体スイッチを即座に開けることが求められる電流範囲の下限値が含まれており、前記開閉制御部は、前記下限値以上の電流が前記半導体スイッチに流れた場合には、前記半導体スイッチを開けてもよい。
【0071】
上記構成によれば、算出部が、冷却器の冷却性能を用いて、通電可能時間を算出するので、開閉制御部は、高精度な判定処理をより確実に行うことができる。また、動作特性情報には、半導体スイッチを即座に開けることが求められる電流範囲の下限値で示される、半導体スイッチの遮断特性(静特性)が含まれている。このため、開閉制御部は、半導体スイッチに電気的に接続される電源の電気特性および負荷の電気特性に関わらず、閾値をより適切に設定することができ、高精度な判定処理を容易に行うことができる。
【0072】
また、本開示の態様3に係る制御装置は、態様1または態様2において、前記半導体システムは、前記半導体スイッチを冷却する冷却器をさらに備え、前記動作特性情報には、(i)前記半導体スイッチのコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性と、(ii)前記半導体スイッチに流れる電流の電流値と、当該電流値で前記半導体スイッチを連続通電することが可能な時間との関係を示す情報と、(iii)前記冷却器の所定の物理定数と、(iV)前記冷却器を使用した場合における前記半導体スイッチの許容可能な温度と、が含まれており、前記算出部は、前記コレクタ・エミッタ間飽和電圧特性、前記関係を示す情報、前記所定の物理定数、および前記許容可能な温度を用いて前記通電可能時間を算出してもよい。
【0073】
上記構成によれば、算出部が、冷却器の冷却性能を鑑みて、通電可能時間を算出するので、開閉制御部は、高精度な判定処理をより確実に行うことができる。また、動作特性情報には、導体スイッチのコレクタ・エミッタ間飽和電圧特性と、半導体スイッチに流れる電流の電流値と、当該電流値で半導体スイッチを連続通電することが可能な時間との関係を示す情報とが含まれている。これにより、算出部は、半導体スイッチの耐性(静特性)に応じて、上記判定処理での閾値としての通電可能時間を算出することができる。このため、開閉制御部は、半導体スイッチに電気的に接続される電源の電気特性および負荷の電気特性に関わらず、閾値をより適切に設定することができ、高精度な判定処理を容易に行うことができる。
【0074】
また、本開示の態様4に係る半導体遮断システムは、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、態様1から態様3のいずれかの制御装置と、を含む。
【0075】
また、本開示の態様5に係る半導体遮断システムは、態様4において、前記半導体スイッチには、バイポーラトランジスタ、MOSFET、またはIGBTが用いられてもよい。
【0076】
また、本開示の態様6に係る半導体スイッチの制御方法は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、前記電流センサにより、前記半導体スイッチを流れる電流を検出する電流検出ステップと、前記半導体スイッチの動作特性に関する特性情報を少なくとも含んだ、所定の動作特性情報と、前記電流検出ステップの検出結果から得られる電流値とに基づいて、当該電流値を有する電流を前記半導体スイッチに連続通電したときに通電可能な時間である通電可能時間を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出した通電可能時間を基に、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む。
【0077】
また、本開示の態様7に係る制御プログラムは、態様1から態様3のいずれかの制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記算出部および前記開閉制御部としてコンピュータを機能させる。
【0078】
また、本開示の態様8に係る記録媒体は、態様7の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0079】
態様4~8の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0080】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 半導体遮断システム
2 半導体スイッチ
3 制御装置
31 算出部
32 開閉制御部
4 電流センサ
5 冷却器
51 電源
52 負荷