IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050225
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ドハティ増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20240403BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20240403BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H03F1/32 141
H03F1/02 188
H03F3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156949
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小松▲崎▼ 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼野 充晴
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC21
5J500AC85
5J500AF17
5J500AF19
5J500AK15
5J500AK16
5J500AK19
5J500AK34
5J500AK68
5J500AM13
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT07
5J500NG03
5J500NG06
(57)【要約】
【課題】調整時間を短縮化できるドハティ増幅装置を提供する。
【解決手段】ドハティ増幅装置は、歪補償部から歪補償後の入力信号を第1の信号及び第2の信号に分配する分配部と、第1の信号を増幅する第1の増幅部と、第2の信号を増幅する第2の増幅部を有する。ドハティ増幅装置は、第1の増幅部からの第1の信号と第2の増幅部からの第2の信号とを合成する合成部と、分配部と第1の増幅部又は第2の増幅部との間に配置され、分配部からの第1の信号又は第2の信号の位相遅延値を調整する調整部を有する。調整部は、合成部から出力する出力信号及び歪補償部に入力する入力信号に基づき、入力信号の参照電力に対する出力信号のゲインの関係を示す特性を算出する。調整部は、算出した特性を参照電力のレベルに応じて複数の領域に分類し、領域毎にゲインの統計値を算出し、領域毎の統計値に基づき、無線特性が最良となる位相遅延値を調整部に設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を歪補償する歪補償部から歪補償後の入力信号を第1の信号及び第2の信号に分配する分配部と、
前記第1の信号を増幅する第1の増幅部と、
前記第2の信号を増幅する第2の増幅部と、
前記第1の増幅部からの前記第1の信号と前記第2の増幅部からの前記第2の信号とを合成する合成部と、
前記分配部と前記第1の増幅部又は前記第2の増幅部との間に配置され、前記分配部からの第1の信号又は第2の信号の位相遅延値を調整する調整部と、
を有し、
前記調整部は、
前記合成部から出力する出力信号及び前記歪補償部に入力する前記入力信号に基づき、前記入力信号の参照電力に対する前記出力信号のゲインの関係を示す特性を算出する第1の算出部と、
算出した前記特性を前記参照電力のレベルに応じて複数の領域に分類する分類部と、
分類された前記領域毎に前記ゲインの統計値を算出する第2の算出部と、
算出した前記領域毎の前記統計値に基づき、無線特性が最良となる位相遅延値を前記調整部に設定する決定部と、
を有することを特徴とするドハティ増幅装置。
【請求項2】
前記第1の算出部は、
前記歪補償部にて歪補償未適用の状態で所定の位相遅延値を調整部に設定した後、前記合成部から出力する出力信号及び前記歪補償部に入力する前記入力信号に基づき、前記特性を算出することを特徴とする請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項3】
前記第1の算出部は、
前記特性としてAM-AM(gain)特性を算出することを特徴とする請求項2に記載のドハティ増幅装置。
【請求項4】
前記調整部は、
前記第1の信号又は前記第2の信号の位相値を調整する位相調整部と、
前記位相調整部と直列に接続し、前記第1の信号又は前記第2の信号の遅延値を調整する遅延調整部と、を有し、
前記分類部は、
前記特性内の参照電力のレベルに応じてLow領域、前記Low領域のレベルよりも高いHigh領域及び、前記High領域のレベルよりも高いPeak領域に分類し、
前記決定部は、
前記Peak領域の統計値であるゲイン平均値が最大となる設定位相値を前記位相調整部に設定すると共に、
前記High領域又は前記Peak領域の統計値であるゲイン平均値が最大となる設定遅延値を前記遅延調整部に設定することを特徴とする請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項5】
前記決定部は、
前記Peak領域のゲインの低下を少なく、かつ、前記High領域及び前記Low領域の前記ゲインのバラツキを小さくして前記無線特性が最良となるように前記位相遅延値を前記調整部に設定することを特徴とする請求項4に記載のドハティ増幅装置。
【請求項6】
前記第1の算出部は、
当該ドハティ増幅装置の製品出荷前の所定タイミングで前記歪補償部にて歪補償未適用の状態で所定の位相遅延値を前記調整部に設定した後、前記合成部から出力する出力信号及び前記歪補償部に入力する前記入力信号に基づき、前記特性を算出することを特徴とする請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項7】
前記調整部は、
前記位相調整部又は前記遅延調整部に直列に接続し、前記第1の信号又は前記第2の信号の振幅パターンを調整する振幅調整部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のドハティ増幅装置。
【請求項8】
前記調整部は、
前記位相調整部又は前記遅延調整部に直列に接続し、前記第1の信号又は前記第2の信号の振幅周波数補正パターンを調整する振幅周波数調整部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のドハティ増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信システムの基地局を始めとする種々の電子装置において、送信電力を増幅する電力増幅器が用いられている。特に近年では、通信の高速化に伴い、消費電力の抑制等の観点から、より高い効率で送信電力を増幅することが期待されている。増幅器の効率は、出力飽和状態(非線形状態)において、最も高いことが知られており、これに対応した増幅器として、ドハティ増幅器が広く普及している。
【0003】
図28Aは、従来のドハティ増幅器100の一例を示す説明図である。図28Aに示すドハティ増幅器100は、キャリア増幅器(CA:Carrier Amplifier)101と、CA101と並列に接続されたピーク増幅器(PA:Peak Amplifier)102と、を有する。更に、ドハティ増幅器100は、第1のλ/4線路103と、第2のλ/4線路104と、第3のλ/4線路105とを有する。CA101は、常時動作するAB級バイアスのアンプである。PA102は、ドハティ増幅器100への入力電力が所定値以上の場合にのみオンとなるC級バイアスのアンプである。第1のλ/4線路103は、CA101の出力段に接続され、CA101の出力側インピーダンスを変換するための線路である。第2のλ/4線路104は、PA102の入力段に接続され、第1のλ/4線路103に起因したCA101とPA102との位相差を補償して同相とするための線路である。第3のλ/4線路105は、ドハティ増幅器100と負荷Zとの整合回路である。
【0004】
図28Bは、入力電力が所定値未満の場合のドハティ増幅器100の動作の一例を示す説明図である。例えば、入力電力が所定値未満の場合、CA101はON状態、PA102は、C級バイアスのため、OFFとなるため、CA101との合成点からPA102側を見た出力インピーダンスは理想的にはオープンとなる。CA101の出力端から見た負荷インピーダンスは、インピーダンスZの第1のλ/4線路103を介してZ/2の負荷を見るため、第1のλ/4線路103がインピーダンス変換回路として動作することで2Zとなる。CA101は負荷インピーダンスが2Zの場合、飽和電力は下がるが高効率に動作するよう設計されている。
【0005】
図28Cは、入力電力が所定値以上の場合のドハティ増幅器100の動作の一例を示す説明図である。例えば、入力電力が所定値以上の場合、CA101及びPA102両方がON状態となる。CA101及びPA102は、出力負荷Z/2が接続された状態でCA101及びPA102が見る負荷インピーダンスはZとなる。CA101の出力段にある第1のλ/4線路103のインピーダンスはZであるためインピーダンス変換は行われず、CA101の出力端から見た負荷インピーダンスもZとなる。CA101の出力端から見た負荷インピーダンスがZの場合、CA101及びPA102では飽和電力が大きくなるよう設計されているため、ドハティ増幅器100として所望の飽和電力を出力することになる。
【0006】
しかしながら、従来のドハティ増幅器100では、高効率であるものの、入力電力に対して出力電力のゲイン及び位相が変化してしまうため、ドハティ増幅器100の線形性が良くない。そこで、線形性を補償する技術としてディジタルプリディストーション(DPD:Digital Predistortion)が知られている。図29は、従来のドハティ増幅装置150の一例を示す説明図である。図29に示すドハティ増幅装置150は、ドハティ増幅部151と、ドハティ増幅部151の前段に配置されたDPD152と、DAC(Digital Analog Convertor)153と、ドライバアンプ154と、ADC(Analog Digital Convertor)155とを有する。
【0007】
ドハティ増幅部151は、CA161と、PA162と、第1のλ/4線路163と、第2のλ/4線路164と、第3のλ/4線路165とを有する。CA161は、常時動作するAB級バイアスのアンプである。PA162は、入力電力が所定値以上の場合にのみオンとなるC級バイアスのアンプである。第1のλ/4線路163は、CA161の出力段に接続され、CA161の出力側インピーダンスを変換するための線路である。第2のλ/4線路164は、PA162の入力段に接続され、第1のλ/4線路に起因したCA161とPA162との位相差を補償するための線路である。第3のλ/4線路165は、CA161とPA162との出力を合成するインピーダンスと後段のインピーダンスとを整合させている線路である。
【0008】
入力電力が所定値未満の場合、CA161の出力端から見た負荷インピーダンスは、インピーダンスZの第1のλ/4線路163を介して出力負荷Z/2を見るため、第1のλ/4線路163がインピーダンス変換回路として動作することで2Zとなる。これに対して、例えば、入力電力が所定値以上の場合、CA161及びPA162は、出力負荷Z/2が接続された状態でCA161及びPA162が見る負荷インピーダンスはZとなる。CA161の出力段にある第1のλ/4線路163のインピーダンスはZであるためインピーダンス変換は行われず、CA161の出力端から見た負荷インピーダンスもZとなる。その結果、ドハティ増幅部151は、CA161で増幅した信号と、PA162で増幅した信号とを合成して出力することになる。
【0009】
DPD152は、第1のキャプチャ部152Aと、第2のキャプチャ部152Bと、演算部152Cと、歪補償部152Dとを有する。第1のキャプチャ部152Aは、入力信号の一部をREF(Reference)信号として抽出する。第2のキャプチャ部152Bは、ドハティ増幅部151の出力段から出力信号の一部をFB(Feedback)信号として抽出する。演算部152Cは、第1のキャプチャ部152Aで抽出したREF信号と、第2のキャプチャ部152Bで抽出したFB信号との差分が無くなるように歪補償係数を算出し、算出した歪補償係数を歪補償部152Dに設定する。歪補償部152Dは、設定された歪補償係数に基づき、REF信号とドハティ増幅部151の出力段のFB信号との差分が無くなるように入力信号の非線形歪を補償する。その結果、ドハティ増幅部151の出力段での出力信号の線形性を確保できる。
【0010】
DAC153は、DPD152内の歪補償部152Dで補償後の入力信号をアナログ変換し、アナログ変換後の入力信号をドライバアンプ154に出力する。ドライバアンプ154は、入力信号を規定レベルまで増幅し、増幅後の入力信号をドハティ増幅部151に出力する。
【0011】
ADC155は、ドハティ増幅部151の出力段からの出力信号の一部であるFB信号をデジタル変換し、デジタル変換後のFB信号を第2のキャプチャ部152Bに出力する。
【0012】
DPD152は、REF信号とドハティ増幅部151の出力段のFB信号との差分が無くなるように入力信号を補償する。この処理を繰り返すことで、ドハティ増幅部151の線形性を改善できる。
【0013】
しかしながら、図29に示すドハティ増幅装置150では、1入力であるため、CA161及びPA162の経路の位相差、遅延差、振幅差がハード設計で固定されてしまう。そこで、CA161とPA162との経路を分けて2入力とし、経路毎に、位相差、遅延差や振幅差を調整する調整部を配置する2入力ドハティ増幅装置が知られている。図30は、2入力ドハティ増幅装置200の一例を示す説明図である。
【0014】
図30に示す2入力ドハティ増幅装置200は、DPD210と、2入力ドハティ増幅部220と、ADC230とを有する。DPD210は、第1のキャプチャ部211と、第2のキャプチャ部212と、演算部213と、歪補償部214とを有する。第1のキャプチャ部211は、入力信号の一部をREF信号として抽出する。第2のキャプチャ部212は、2入力ドハティ増幅部220の出力段から出力信号の一部をFB信号として抽出する。演算部213は、第1のキャプチャ部211で抽出したREF信号と、第2のキャプチャ部212で抽出したFB信号との差分が無くなるように歪補償係数を算出し、算出した歪補償係数を歪補償部214に設定する。歪補償部214は、設定された歪補償係数に基づき、REF信号と2入力ドハティ増幅部220の出力段のFB信号との差分が無くなるように入力信号の非線形歪を補償する。その結果、2入力ドハティ増幅部220の出力段の出力信号の線形性を確保することができる。
【0015】
2入力ドハティ増幅部220は、分配部221と、CA222Dを配置する第1の経路に配置された第1の増幅部222と、PA223Dを配置する第2の経路に配置された第2の増幅部223と、合成部224と、出力λ/4線路225とを有する。
【0016】
第1の増幅部222は、第1の調整部222Aと、第1のDAC222Bと、第1のドライバアンプ222Cと、CA222Dと、λ/4線路222Eと、を有する。第1の調整部222Aは、第1の経路における第2の経路との位相差、遅延差及び振幅差を調整する。第1のDAC222Bは、DPD210内の歪補償部214で補償後の入力信号をアナログ変換し、変換後の入力信号を第1のドライバアンプ222Cに出力する。第1のドライバアンプ222Cは、入力信号を規定レベルに増幅し、増幅後の入力信号をCA222Dに出力する。CA222Dは、常時動作するAB級バイアスのアンプである。λ/4線路222Eは、CA222Dの出力段に接続され、CA222Dの出力側インピーダンスを変換するための線路である。
【0017】
第2の増幅部223は、第2の調整部223Aと、第2のDAC223Bと、第2のドライバアンプ223Cと、PA223Dとを有する。第2の調整部223Aは、第2の経路における第1の経路との位相差、遅延差及び振幅差を調整する。第2のDAC223Bは、DPD210内の歪補償部214で補償後の入力信号をアナログ変換し、変換後の入力信号を第2のドライバアンプ223Cに出力する。第2のドライバアンプ223Cは、入力信号を規定レベルに増幅し、増幅後の入力信号をPA223Dに出力する。PA223Dは、入力電力が所定値以上の場合にのみオンとなるC級バイアスのアンプである。
【0018】
合成部224は、CA222D及びPA223Dで増幅後の入力信号を合成する。出力λ/4線路225は、CA222DとPA223Dとの出力を合成する合成部224のインピーダンスと後段のインピーダンスとを整合させる線路である。
【0019】
第1の調整部222Aは、第1の経路における第2の経路との位相差、遅延差及び振幅差を調整する。その結果、第1の経路における第2の経路との位相差、遅延差や振幅差を調整できる。また、第2の調整部223Aは、第2の経路における第1の経路との位相差、遅延差及び振幅差を調整する。その結果、第2の経路における第1の経路との位相差、遅延差や振幅差を調整できる。
【0020】
2入力ドハティ増幅装置200では、経路毎の調整部を使用して経路間の位相差、遅延差や振幅差を調整する自由度が増し、増幅効率及び歪補償性能の改善、広帯域化の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2021/192204号
【特許文献2】国際公開第2021/220338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、2入力ドハティ増幅装置200では、経路間の位相差や遅延差を調整するための調整部222A、223Aのパラメータは実際の歪を外部測定装置であるスペクトルアナライザ等を接続して確認しながら、各経路の調整部を調整する必要がある。従って、歪特性が最良となるように経路間の位相差や遅延差を調整するために時間を要する。
【0023】
一つの側面では、歪特性が最良となるようにCA及びPAの経路間の位相差及び遅延差を調整する時間を大幅に短縮できるドハティ増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一つの態様のドハティ増幅装置は、入力信号を歪補償する歪補償部から歪補償後の入力信号を第1の信号及び第2の信号に分配する分配部と、第1の信号を増幅する第1の増幅部と、第2の信号を増幅する第2の増幅部と、を有する。更に、ドハティ増幅装置は、第1の増幅部からの第1の信号と第2の増幅部からの第2の信号とを合成する合成部と、分配部と第1の増幅部又は第2の増幅部との間に配置され、分配部からの第1の信号又は第2の信号の位相遅延値を調整する調整部と、を有する。調整部は、合成部から出力する出力信号及び歪補償部に入力する入力信号に基づき、入力信号の参照電力に対する出力信号のゲインの関係を示す特性を算出する第1の算出部と、算出した特性を参照電力のレベルに応じて複数の領域に分類する分類部と、を有する。調整部は、分類された領域毎にゲインの統計値を算出する第2の算出部と、算出した領域毎の統計値に基づき、無線特性が最良となる位相遅延値を調整部に設定する決定部と、を有する。
【発明の効果】
【0025】
一つの側面として、歪特性が最良となるように第1の増幅部(CA)及び第2の増幅部(PA)の経路間の位相差及び遅延差を調整する時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1のドハティ増幅装置の一例を示す説明図である。
図2図2は、実施例1の調整部の一例を示す説明図である。
図3A図3Aは、DPDにて歪補償適用前のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。
図3B図3Bは、DPDにて歪補償適用後のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。
図4A図4Aは、調整部にて位相遅延調整前のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。
図4B図4Bは、調整部にて位相遅延調整後のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。
図5A図5Aは、位相テーブル(位相値対REF電力)の一例を示す説明図である。
図5B図5Bは、遅延テーブル(遅延値対REF電力)の一例を示す説明図である。
図6図6は、第1の最適値決定処理に関わる調整部内の制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、暫定位相値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、暫定遅延値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の位相値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、最大第1位の第2の位相値及び最大第2位の第2の位相値を決定する方法の一例を示す説明図である。
図11図11は、第1の位相値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第1の遅延値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、最大第1位の第1の遅延値及び最大第2位の第1の遅延値を決定する方法の一例を示す説明図である。
図14図14は、第2の遅延値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、実施例2のドハティ増幅装置の一例を示す説明図である。
図16図16は、実施例2の調整部の一例を示す説明図である。
図17図17は、振幅テーブルの一例を示す説明図である。
図18図18は、第2の最適値決定処理に関わる調整部内の制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、振幅パターン決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、実施例3のドハティ増幅装置の一例を示す説明図である。
図21図21は、実施例3の調整部の一例を示す説明図である。
図22図22は、振幅周波数補正パターンの一例を示す説明図である。
図23図23は、第3の最適値決定処理に関わる調整部内の制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図24図24は、振幅周波数補正パターン決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、実施例4の暫定位相値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図26図26は、実施例4の暫定遅延値決定処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図27図27は、ドハティ増幅装置の適用の一例である基地局のハードウェア構成の一例を示す説明図である。
図28A図28Aは、従来のドハティ増幅器の一例を示す説明図である。
図28B図28Bは、入力電力が所定値未満の場合のドハティ増幅器の動作の一例を示す説明図である。
図28C図28Cは、入力電力が所定値以上の場合のドハティ増幅器の動作の一例を示す説明図である。
図29図29は、従来のドハティ増幅装置の一例を示す説明図である。
図30図30は、2入力ドハティ増幅装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本願の開示するドハティ増幅装置の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0028】
図1は、実施例1のドハティ増幅装置1の一例を示す説明図である。図1に示すドハティ増幅装置1は、2入力ドハティ増幅装置である。ドハティ増幅装置1は、DPD(Digital Predistortion)10と、2入力ドハティ増幅部20と、ADC(Analog Digital Convertor)30とを有する。DPD10は、入力信号と2入力ドハティ増幅部20からの出力信号との差分が無くなるように入力信号の非線形歪を補償する。2入力ドハティ増幅部20は、DPD10で歪補償後の入力信号を増幅する。ADC30は、2入力ドハティ増幅部20で増幅後の出力信号の一部であるFB(Feedback)信号をデジタル変換する。
【0029】
DPD10は、第1のキャプチャ部11と、第2のキャプチャ部12と、演算部13と、歪補償部14とを有する。第1のキャプチャ部11は、入力信号の一部をREF(Reference)信号として抽出する。第2のキャプチャ部12は、2入力ドハティ増幅部20の出力段から出力信号の一部をFB信号として抽出する。演算部13は、第1のキャプチャ部11で抽出したREF信号と、第2のキャプチャ部12で抽出したFB信号との差分が無くなるように歪補償係数を算出し、算出した歪補償係数を歪補償部14に設定する。歪補償部14は、設定された歪補償係数に基づき、RFE信号とFB信号との差分が無くなるように入力信号の非線形歪を補償する。
【0030】
ADC30は、2入力ドハティ増幅部20の出力段からの出力信号の一部であるFB信号をデジタル変換し、デジタル変換後のFB信号を第2のキャプチャ部12に出力する。
【0031】
2入力ドハティ増幅部20は、分配部21と、CA(Carrier Amplifier)22Cを配置する第1の経路に配置された第1の増幅部22と、PA(Peak Amplifier)23Cを配置する第2の経路に配置された第2の増幅部23と、を有する。更に、2入力ドハティ増幅部20は、合成部24と、出力λ/4線路25と、調整部26とを有する。
【0032】
第1の増幅部22は、第1のDAC22Aと、第1のドライバアンプ22Bと、CA22Cと、λ/4線路22Dと、を有する。第1のDAC22Aは、DPD10内の歪補償部14で補償後の入力信号である第1の信号をアナログ変換し、変換後の入力信号を第1のドライバアンプ22Bに出力する。第1のドライバアンプ22Bは、入力信号を規定レベルに増幅し、増幅後の入力信号をCA22Cに出力する。CA22Cは、常時動作するAB級バイアスのアンプである。λ/4線路22Dは、CA22Cの出力段に接続され、CA22Cの出力側インピーダンスを変換するための線路である。
【0033】
第2の増幅部23は、第2のDAC23Aと、第2のドライバアンプ23Bと、PA23Cとを有する。第2のDAC23Aは、DPD10内の歪補償部14で補償後の入力信号である第2の信号をアナログ変換し、変換後の入力信号を第2のドライバアンプ23Bに出力する。第2のドライバアンプ23Bは、入力信号を規定レベルに増幅し、増幅後の入力信号をPA23Cに出力する。PA23Cは、入力電力が所定値以上の場合にのみオンとなるC級バイアスのアンプである。
【0034】
合成部24は、CA22C及びPA23Cで増幅後の入力信号を合成する。出力λ/4線路25は、CA22CとPA23Cとの出力を合成する合成部24のインピーダンスと後段のインピーダンスとを整合させている線路である。調整部26は、第2の経路における第1の経路との位相差及び遅延差を自動調整する。
【0035】
図2は、実施例1の調整部26の一例を示す説明図である。図2に示す調整部26は、歪特性が最良となるように第2の経路のPA23Cにおける第1の経路のCA22Cとの位相差及び遅延差を調整すべく、入力信号の参照電力に応じて第2の経路を通過する第2の信号の位相値及び遅延値を調整する。つまり、調整部26は、合成部24のドハティ合成後の飽和電力付近のゲインを最大化し、ゲイン・位相のバラツキを無くすようにPA23Cの遅延値及び位相値を調整する。調整部26は、位相調整部41と、位相調整部41に直列に配置された遅延調整部42と、電力アドレス計算部43と、位相テーブル44と、遅延テーブル45と、制御部46とを有する。
【0036】
位相調整部41は、PA23Cが配置された第2の経路を流れる第2の信号の位相値を調整する。位相テーブル44は、合成部24のドハティ合成後の飽和電力付近のゲインを最大化し、ゲイン・位相のバラツキを小さくなるように位相値を管理するテーブルである。位相テーブル44は、REF電力に応じた位相調整部41の最適位相値をアンプ毎に事前に管理する。
【0037】
図5Aは、位相テーブル44(位相値:REF電力)の一例を示す説明図である。図5Aに示す位相テーブル44内の第1の位相値aは、低レベルのREF電力の領域、例えば、PA23CがOFF状態となる電力レベルの領域での位相値である。図5Aに示す位相テーブル44内の第2の位相値bは、高レベルのREF電力の領域、例えば、PA23CがON状態となる電力レベルの領域での位相値である。第1の位相値aは-50度、第2の位相値bは-30度である。尚、位相値は、変化させることで、出力電力に対して歪特性の改善効果がある。また、位相テーブル44の関数は使用するアンプに応じて変更するものである。
【0038】
遅延調整部42は、PA23Cが配置された第2の経路を流れる第2の信号の遅延値を調整する。遅延テーブル45は、CA22Cが配置された第1の経路に対してPA23Cが配置された第2の経路のREF電力に対する遅延差が小さくなる遅延値を管理するテーブルである。遅延テーブル45は、REF電力に応じた最適遅延値をアンプ毎に事前に管理する。
【0039】
図5Bは、遅延テーブル45(遅延値:REF電力)の一例を示す説明図である。図5Bに示す遅延テーブル45内の第1の遅延値cは、低レベルのREF電力の領域、例えば、PA23CがOFF状態となる電力レベルの領域での遅延値である。図5Bに示す遅延テーブル45内の第2の遅延値dは、高レベルのREF電力の領域、例えば、PA23CがON状態となる電力レベルの領域での遅延値である。第1の遅延値cは230、第2の遅延値dは150となる。尚、説明の便宜上、図5Bに示す遅延値は、遅延時間に一意に紐づくデジタル値(十進数)で表現した。遅延値は、変化させることで、出力電力に対して歪特性の改善効果がある。また、遅延テーブル45の関数は使用するアンプに応じて変更するものである。
【0040】
電力アドレス計算部43は、歪補償部14の入力段からの入力信号からREF電力を算出する。
【0041】
制御部46は、第1の算出部51と、分類部52と、第2の算出部53と、決定部54とを有する。第1の算出部51は、歪補償部14の歪補償未適用の状態で、DPD10内の演算部13で得るREF信号及びFB信号を用いてAM(Amplitude Modulation)-AM(gain)特性を算出する。AM-AM(gain)特性は、2入力ドハティ増幅部20の入力信号の参照電力(REF電力)に対する出力信号のゲインの関係を示す特性である。AM-AM(gain)特性のREF電力及び出力信号のゲインは、2入力ドハティ増幅部20の定格出力送信時の入力電力及び利得で正規化して表記するものとする。第1の算出部51は、(数式1)を用いてAM-AM(gain)特性のゲインを算出する。
【0042】
【数1】
【0043】
更に、第1の算出部51は、(数式2)を用いてAM-AM(gain)特性のREF電力を算出する。
【0044】
【数2】
【0045】
例えば、線形性の良くない2入力ドハティ増幅部20に変調波を入力した場合の歪補償適用前後のAM-AM(gain)特性について説明する。図3Aは、DPD10にて歪補償適用前のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図、図3Bは、DPD10にて歪補償適用後のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。図3A及び図3Bに示すAM-AM(gain)特性は、縦軸がゲイン、横軸がREF電力である。各ドットは、REF電力に対するゲインである。
【0046】
図3Aに示す歪補償適用前のAM-AM(gain)特性は、REF電力が高くなるに連れてゲインが下がり、REF電力が低い領域でゲインのバラツキが大きくなる。これに対して、図3Bに示す歪補償適用後のAM-AM(gain)特性は、線形となるためゲインがREF電力に対し一定となり、REF電力が低い領域でゲインのバラツキを抑制できる。つまり、DPD10の歪補償を実行することで、2入力ドハティ増幅部20の線形性が改善できる。
【0047】
次に、調整部26での位相遅延調整前後のAM-AM(gain)特性について説明する。図4Aは、調整部26にて位相遅延調整前のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図、図4Bは、調整部26にて位相遅延調整後のAM-AM(gain)特性の一例を示す説明図である。AM-AM(gain)特性は、REF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類できる。尚、図4A及び図4Bに示すREF電力の0dBは、装置の平均送信電力送信時のREF電力(I^2 + Q^2)である。Low領域は、2入力ドハティ増幅部20内のCA22CのみがON状態、すなわちPA23CがOFF状態となるREF電力のレベル領域、例えば、5dB未満の領域である。Peak領域は、2入力ドハティ増幅部20内のCA22C及びPA23C双方がON状態となるREF電力のレベル領域、例えば、5dB以上、かつ、7dB未満の領域である。High領域は、Low領域からPeak領域に移行する際のREF電力のレベル領域、例えば、7dB以上の領域である。
【0048】
分類部52は、位相遅延調整前後のAM-AM特性(gain)を、REF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する。
【0049】
第2の算出部53は、DPD10の歪補償未適用の状態の入力信号で算出したAM-AM(gain)特性内の各領域の統計値を算出する。そして、各領域の統計値が第1の条件や第2の条件を満たした場合に歪補償効果が高まる傾向にある。尚、第1の条件は、第2の条件よりも優先する条件である。
【0050】
第1の条件とは、図3Bに示すようにREF電力が高い領域、例えば、Peak領域でゲイン低下が少ない状態である。第1の条件は、例えば、後述する位相値、暫定位相値及び遅延値を決定する際に使用する条件である。第1の条件を満たした場合には線形性が改善された状態となる。
【0051】
第2の条件とは、図3Bに示すようにREF電力が低い領域、例えば、High領域及びLow領域でゲインのバラツキが小さい状態である。第2の条件は、例えば、後述する暫定遅延値を決定する際に使用する条件である。第2の条件を満たした場合にはアンプのメモリ効果が少なくなる。
【0052】
第2の算出部53は、算出したAM-AM(gain)特性内の領域毎の統計値、例えば、ゲイン平均値Gain ave及びゲイン標準偏差値Gain stdを算出する。第2の算出部53は、(数式3)を用いてゲイン平均値Gain aveを算出する。
【0053】
【数3】
【0054】
更に、第2の算出部53は、(数式4)を用いてゲイン標準偏差値Gain stdを算出する。
【0055】
【数4】
【0056】
尚、(数式4)では(数式5)を使用する。
【0057】
【数5】
【0058】
第2の算出部53は、位相調整部41内の位相値をパラメータとして変化させ、各領域の統計値であるゲイン平均値を順次算出する。決定部54は、例えば、Peak領域のゲイン平均値に基づき、暫定位相値を決定する。制御部46は、決定された暫定位相値を位相調整部41に設定する。
【0059】
更に、第2の算出部53は、暫定位相値を位相調整部41に設定したまま、遅延調整部42内の遅延値をパラメータとして変化させ、各領域の統計値であるゲイン標準偏差値を順次算出する。決定部54は、第2の条件を満たす、例えば、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値から最小となる暫定遅延値を決定する。制御部46は、決定された暫定遅延値を遅延調整部42に設定する。
【0060】
第2の算出部53は、暫定遅延値を遅延調整部42内に設定したまま、位相調整部41内の位相値をパラメータとして変化させ、各領域の統計値であるゲイン平均値を順次算出する。決定部54は、第1の条件を満たす、例えば、算出したPeak領域のゲイン平均値から最大となる、例えば、歪とAM-AM(gain)特性の相関性から無線特性が最良となる最適位相値(第1の位相値a及び第2の位相値b)を決定する。制御部46は、決定された最適位相値(第1の位相値及び第2の位相値)を位相調整部41に設定する。
【0061】
第2の算出部53は、最適位相値を位相調整部41に設定したまま、遅延調整部42内の遅延値をパラメータとして変化させ、各領域の統計値であるゲイン平均値を順次算出する。決定部54は、例えば、算出したHigh領域のゲイン平均値から最大となる最適な第1の遅延値cを決定する。制御部46は、決定された最適な第1の遅延値cを遅延調整部42に設定する。
【0062】
更に、第2の算出部53は、最適位相値を位相調整部41に設定したまま、遅延調整部42内の遅延値をパラメータとして変化させ、各領域の統計値であるゲイン平均値を順次算出する。決定部54は、第1の条件を満たす、例えば、算出したPeak領域のゲイン平均値から最大となる最適な第2の遅延値dを決定する。制御部46は、決定された最適な第2の遅延値dを遅延調整部42に設定する。
【0063】
図4Bに示す位相遅延調整後のAM-AM(gain)特性は、図4Aに示す位相遅延調整前のAM-AM(gain)特性に比較して、Peak領域のゲイン低下が低減されていることが確認できる。その結果、歪補償効果が高くなる傾向にある。
【0064】
制御部46内の第1の算出部51は、DPD10の歪補償未適用の状態で、事前に定めた位相値及び遅延値を設定した後、AM-AM(gain)特性を算出する。制御部46内の決定部54は、算出したAM-AM(gain)特性を使用してPeak領域内の最大のゲイン平均値となる最適な第1の位相値a、最適な第2の位相値b、最適な第1の遅延値cを決定する。また、決定部54は、算出したAM-AM(gain)特性を使用してHigh領域内の最大のゲイン平均値となる最適な第2の遅延値dを決定する。
【0065】
制御部46は、歪補償未適用の状態で算出したAM-AM(gain)特性を使用してPeak領域内の最大のゲイン平均値となる最適な第1の位相値a及び最適な第2の位相値bを決定する。そして、制御部46は、設定パラメータとして最適な第1の位相値a及び最適な第2の位相値bを記憶更新する。
【0066】
また、制御部46は、歪補償未適用の状態で算出したAM-AM(gain)特性を使用してHigh領域の最大のゲイン平均値となる第1の遅延値cを決定する。更に、制御部46は、歪補償未適用の状態で算出したAM-AM(gain)特性を使用してPeak領域の最大のゲイン平均値となる第2の遅延値dを決定する。そして、制御部46は、設定パラメータとして最適な第1の遅延値c及び最適な第2の遅延値dを記憶更新する。
【0067】
次に実施例1のドハティ増幅装置1の動作について説明する。図6は、第1の最適値決定処理に関わる調整部26内の制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。第1の最適値決定処理は、例えば、歪補償未適用の状態での2入力ドハティ増幅部20の最適位相値及び最適遅延値を決定する処理である。尚、第1の最適値決定処理は、例えば、製品出荷時に実行される処理である。
【0068】
図6において制御部46は、AM-AM(gain)特性のPeak領域のゲイン平均値が最大となる暫定的な位相値である暫定位相値を決定する、図7に示す暫定位相値決定処理を実行する(ステップS11)。尚、暫定位相値は、暫定的な第1の位相値及び第2の位相値である。制御部46は、暫定位相値を決定した後、AM-AM(gain)特性のHigh領域のゲイン標準偏差値が最小となる暫定的な遅延値である暫定遅延値を決定する、図8に示す暫定遅延値決定処理を実行する(ステップS12)。尚、暫定遅延値は、暫定的な第1の遅延値及び第2の遅延値である。
【0069】
制御部46は、暫定遅延値を決定した後、AM-AM(gain)特性のPeak領域のゲイン平均値が最大となる位相値である最適な第2の位相値bを決定する、図9に示す第2の位相値決定処理を実行する(ステップS13)。更に、制御部46は、第2の位相値bを決定した後、AM-AM(gain)特性のPeak領域のゲイン平均値が最大となる位相値である最適な第1の位相値aを決定する、図11に示す第1の位相値決定処理を実行する(ステップS14)。
【0070】
制御部46は、第1の位相値aを決定した後、AM-AM(gain)特性のHigh領域のゲイン平均値が最大となる遅延値である最適な第1の遅延値cを決定する、図12に示す第1の遅延値決定処理を実行する(ステップS15)。更に、制御部46は、第1の遅延値cを決定した後、AM-AM(gain)特性のPeak領域のゲイン平均値が最大となる遅延値である最適な第2の遅延値dを決定する、図14に示す第2の遅延値決定処理を実行する(ステップS16)。そして、図6に示す処理動作を終了する。
【0071】
図7は、暫定位相値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図7において制御部46は、位相振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS21)、位相テーブル44を参照して初期位相値を設定位相値(a=b)として設定する(ステップS22)。尚、説明の便宜上、最大位相振り試行回数はN=3回としたが、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。制御部46は、設定中の位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS23)。
【0072】
制御部46は、位相振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS23:No)、位相振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS23A)。制御部46は、位相振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS23A:No)、位相を振るべく、現在の設定位相値±調整値を加算した設定位相値を位相調整部41に設定する(ステップS24)。尚、位相振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を20°、位相振り試行回数がi=1の場合、例えば、調整値を10°とする。つまり、位相振りは、i=0の場合、20°と大きく振り、i=1の場合、10°と小さく振ることで、徐々に最適な位相値を絞り込む。
【0073】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS24にて位相調整部41に設定位相値を設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS25)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0074】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性を、REF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS26)。更に、制御部46内の第2の算出部53は、AM-AM(gain)特性からPeak領域のゲイン平均値を算出する(ステップS27)。
【0075】
制御部46内の決定部54は、算出したPeak領域のゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超えるか否かを判定する(ステップS28)。尚、最大第1位の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が最大となる位相値である。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超える場合(ステップS28:Yes)、第1位の設定パラメータとして最大第1位の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS29)。更新処理は、最大第1位の位相値を最大第2位の位相値に更新、最大第1位の位相値のゲイン平均値を最大第2位の位相値のゲイン平均値に更新、最大第1位の位相値の設定値を現在設定値に更新、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値として記憶する。尚、最大第2位の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が上から第2位の位相値である。
【0076】
制御部46は、最大第1位の位相値及び最大第2位の位相値を更新する更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS30)、位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS23に移行する。
【0077】
決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超えない場合(ステップS28:No)、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の位相値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS31)。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の位相値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS31:Yes)、第2位の設定パラメータとして最大第2位の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS32)。ステップS32の更新処理は、最大第2位の位相値を現在設定値に更新し、ゲイン平均値を最大第2位のゲイン平均値として記憶する。制御部46は、ステップS32の更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS30の処理に移行する。また、決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の位相値のゲイン平均値を超えたのでない場合(ステップS31:No)、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS30の処理に移行する。
【0078】
決定部54は、位相振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS23A:Yes)、(最大第1位の位相値+最大第2位の位相値)÷2で算出した位相値を位相調整部41に設定し(ステップS33)、ステップS25の処理に移行する。尚、例えば、最大第1位の位相値が30°、Peak領域のゲイン平均値を-2dB、最大第2位の位相値が50°、Peak領域のゲイン平均値を-3dB、現在の設定位相値が40°、Peak領域のゲイン平均値を-1.5dBとする。この場合、最大第1位の位相値は40°、最大第2位の位相値は30°となる。そして、次の設定位相値は、(40+30)÷2で35°となる。
【0079】
決定部54は、位相振り試行回数がi=Nである場合(ステップS23:Yes)、最大第1位の位相値を暫定位相値として決定する(ステップS34)。更に、決定部54は、暫定位相値を位相調整部41に設定し(ステップS35)、図7に示す処理動作を終了する。
【0080】
図7に示す暫定位相値決定処理では、Peak領域でのゲイン平均値が大きい最大第1位の位相値及び最大第2位の位相値から暫定位相値を決定できる。
【0081】
図8は、暫定遅延値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図8において制御部46は、遅延振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS41)、遅延テーブル45を参照して初期遅延値を設定遅延値(c、d=c+α)として設定する(ステップS42)。尚、説明の便宜上、最大遅延振り試行回数はN=5回としたが、5回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。αは10とする。制御部46は、設定中の遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS43)。
【0082】
制御部46は、遅延振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS43:No)、遅延振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS43A)。制御部46は、遅延振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS43A:No)、遅延を振るべく、現在の設定遅延値±調整値を加算した設定遅延値を遅延調整部42に設定する(ステップS44)。尚、遅延振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を32として設定遅延値を±32とする。遅延振り試行回数がi=1の場合、例えば、現在の設定遅延値である最小第1位の遅延値が32の場合、設定遅延値cとして64,96,128、現在の設定遅延値が-32の場合、設定遅延値を-128、-96、-64とする。更に、遅延振り試行回数がi=2の場合、現在の設定遅延値である最小第1位の遅延値、調整値を±16、遅延振り試行回数がi=3の場合、現在の設定遅延値である最小第1位の遅延値、調整値を±8とする。遅延調整部42は、1/N・サンプル単位で遅延調整を実行する(Nは整数)。1サンプル遅延は、サンプリングレート(fs)単位の遅延量である(1/fs)。尚、fs=122.88MHz,N=64とした場合、1サンプル遅延は、1/122.88MHz=8.14n秒、1/Nサンプル遅延は、8.14n秒/64=0.13n秒である。
【0083】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS44にて遅延調整部42に設定遅延値を設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS45)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0084】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS46)。更に、制御部46内の第2の算出部は、AM-AM(gain)特性からHigh領域のゲイン標準偏差値を算出する(ステップS47)。
【0085】
制御部46内の決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さいか否かを判定する(ステップS48)。尚、最小第1位の遅延値とはHigh領域のゲイン標準偏差値が最小となる遅延値である。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さい場合(ステップS48:Yes)、第1位の設定パラメータとして最小第1位の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS49)。更新処理は、最小第1位の遅延値を最小第2位の遅延値に、最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値を最小第2位の遅延値のゲイン標準偏差値に、最小第1位の遅延値の設定値を現在設定値に、ゲイン標準偏差値を最小第1位のゲイン標準偏差値に記憶更新する。尚、最小第2位の遅延値とはHigh領域のゲイン標準偏差値が下から第2位の遅延値である。
【0086】
制御部46は、最小第1位の遅延値及び最小第2位の遅延値を更新する更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS50)、遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS43に移行する。
【0087】
決定部54は、High領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さくない場合(ステップS48:No)、High領域のゲイン標準偏差値が最小第2位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さいか否かを判定する(ステップS51)。決定部54は、High領域のゲイン標準偏差値が最小第2位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さい場合(ステップS51:Yes)、第2位の設定パラメータとして最小第2位の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS52)。ステップS52の更新処理は、最小第2位の遅延値を現在設定値に更新し、ゲイン標準偏差値を最小第2位のゲイン標準偏差値として記憶する。制御部46は、ステップS52の更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS50の処理に移行する。また、決定部54は、High領域のゲイン標準偏差値が最小第2位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さくない場合(ステップS51:No)、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS50の処理に移行する。
【0088】
決定部54は、遅延振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS43A:Yes)、(最小第1位の遅延値+最小第2位の遅延値)÷2で算出した遅延値を遅延調整部42に設定し(ステップS53)、ステップS45の処理に移行する。
【0089】
決定部54は、遅延振り試行回数がi=Nである場合(ステップS43:Yes)最小第1位の遅延値を暫定遅延値として決定する(ステップS54)。決定部54は、暫定遅延値を遅延調整部42に設定し(ステップS55)、図8に示す処理動作を終了する。
【0090】
図8に示す暫定遅延値決定処理では、High領域でのゲイン標準偏差値が小さい最小第1位の遅延値及び及び最小第2位の遅延値から暫定遅延値を決定できる。
【0091】
図9は、第2の位相値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図9において制御部46は、位相振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS61)、暫定位相値を第2の位相値bとして設定する(ステップS62)。尚、説明の便宜上、最大位相振り試行回数はN=3回としたが、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。制御部46は、設定中の位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS63)。
【0092】
制御部46は、位相振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS63:No)、位相振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS63A)。制御部46は、位相振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS63A:No)、位相を振るべく、現在の第2の位相値b±調整値を加算した第2の位相値bを位相調整部41に設定する(ステップS64)。尚、位相振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を20°、位相振り試行回数がi=1の場合、例えば、調整値を10°とする。つまり、位相振りは、i=0の場合、20°と大きく振り、i=1の場合、10°と小さく振ることで、徐々に最適な第2の位相値bを絞り込む。
【0093】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS64にて位相調整部41に第2の位相値bを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS65)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0094】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS66)。更に、制御部46内の第2の算出部53は、AM-AM(gain)特性からPeak領域のゲイン平均値を算出する(ステップS67)。
【0095】
制御部46内の決定部54は、算出したPeak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の位相値のゲイン平均値を超えるか否かを判定する(ステップS68)。尚、最大第1位の第2の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が最大となる第2の位相値である。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の位相値のゲイン平均値を超える場合(ステップS68:Yes)、第1位の設定パラメータとして最大第1位の第2の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS69)。更新処理は、最大第1位の第2の位相値を最大第2位の第2の位相値に、最大第1位の第2の位相値のゲイン平均値を最大第2位の第2の位相値のゲイン平均値に、最大第1位の第2の位相値の設定値を現在設定値に、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値に更新する。尚、最大第2位の第2の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が上から第2位の第2の位相値である。
【0096】
図10は、最大第1位の第2の位相値及び最大第2位の第2の位相値を決定する方法の一例を示す説明図である。図10に示す暫定位相値90°のPeak領域のゲイン平均値は「A0」とする。i=0の場合、第2の位相値70°のPeak領域のゲイン平均値は「A1」、第2の位相値110°のPeak領域のゲイン平均値は「A2」とする。この結果、i=0では、最大第1位の第2の位相値はPeak領域のゲイン平均値「A0」に対応する90°、最大第2位の第2の位相値はPeak領域のゲイン平均値「A1」に対応する70°である。更に、i=1の場合、第2の位相値80°のPeak領域のゲイン平均値は「A3」、第2の位相値100°のPeak領域のゲイン平均値は「A4」とする。この結果、i=1では、最大第1位の第2の位相値はPeak領域のゲイン平均値「A0」に対応する90°、最大第2位の第2の位相値はPeak領域のゲイン平均値「A3」に対応する80°である。
【0097】
そして、制御部46は、最大第1位の第2の位相値及び最大第2位の第2の位相値を更新する更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS70)、位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS63に移行する。
【0098】
決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の位相値のゲイン平均値を超えない場合(ステップS68:No)、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の位相値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS71)。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の位相値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS71:Yes)、第2位の設定パラメータとして最大第2位の第2の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS72)。ステップS72の更新処理は、最大第2位の第2の位相値を現在設定値に更新し、ゲイン平均値を最大第2位のゲイン平均値として記憶する。制御部46は、ステップS72の更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS70の処理に移行する。また、決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の位相値のゲイン平均値を超えたのでない場合(ステップS71:No)、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS70の処理に移行する。
【0099】
制御部46は、位相振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS63A:Yes)、(最大第1位の第2の位相値+最大第2位の第2の位相値)÷2で算出した第2の位相値を位相調整部41に設定し(ステップS73)、ステップS65の処理に移行する。尚、i=2では、図10に示すように第2の位相値bが、(最大第1位の第2の位相値+最大第2位の第2の位相値)÷2、すなわち、(90+80)÷2=85°となる。
【0100】
決定部54は、位相振り試行回数がi=Nである場合(ステップS63:Yes)、最大第1位の第2の位相値を最適な第2の位相値bとして決定する(ステップS74)。つまり、決定部54は、図10に示すように、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の位相値90°を最適な第2の位相値bとして決定する。
【0101】
そして、決定部54は、最適な第2の位相値bを位相調整部41に設定し(ステップS75)、図9に示す処理動作を終了する。
【0102】
図9に示す第2の位相値決定処理では、Peak領域でのゲイン平均値が大きい最大第1位の第2の位相値及び最大第2位の第2の位相値から最適な第2の位相値bを決定できる。
【0103】
図11は、第1の位相値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図11において制御部46は、位相振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS81)、暫定位相値を第1の位相値aとし設定する(ステップS82)。尚、説明の便宜上、最大位相振り試行回数はN=3回としたが、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。制御部46は、設定中の位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS83)。
【0104】
制御部46は、位相振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS83:No)、位相振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS83A)。制御部46は、位相振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS83A:No)位相を振るべく、現在の第1の位相値a±調整値を加算した第1の位相値aを位相調整部41に設定する(ステップS84)。尚、位相振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を20°、位相振り試行回数がi=1の場合、例えば、調整値を10°とする。つまり、位相振りは、i=0の場合、20°と大きく振り、i=1の場合、10°と小さく振ることで、徐々に最適な第1の位相値aを絞り込む。
【0105】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS84にて位相調整部41に第1の位相値aを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS85)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0106】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS86)。更に、制御部46内の第2の算出部は、AM-AM(gain)特性からPeak領域のゲイン平均値を算出する(ステップS87)。
【0107】
制御部46内の決定部54は、算出したPeak領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の位相値のゲイン平均値を超えるか否かを判定する(ステップS88)。尚、最大第1位の第1の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が最大となる第1の位相値である。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の位相値のゲイン平均値を超える場合(ステップS88:Yes)、第1位の設定パラメータとして最大第1位の第1の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS89)。更新処理は、最大第1位の第1の位相値を最大第2位の第1の位相値に、最大第1位の第1の位相値のゲイン平均値を最大第2位の第1の位相値のゲイン平均値に、最大第1位の第1の位相値の設定値を現在設定値に、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値に記憶更新する。尚、最大第2位の第1の位相値とはPeak領域のゲイン平均値が上から第2位の第1の位相値である。
【0108】
制御部46は、最大第1位の第1の位相値及び最大第2位の第1の位相値を更新する更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS90)、位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS83に移行する。
【0109】
決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の位相値のゲイン平均値を超えていない場合(ステップS88:No)、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の位相値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS91)。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の位相値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS91:Yes)、第2位の設定パラメータとして最大第2位の第1の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS92)。ステップS92の更新処理は、最大第2位の第1の位相値を現在設定値に更新し、ゲイン平均値を最大第2位のゲイン平均値として記憶する。制御部46は、ステップS92の更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS90の処理に移行する。また、決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の位相値のゲイン平均値を超えたのでない場合(ステップS91:No)、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS90の処理に移行する。
【0110】
制御部46は、位相振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS83A:Yes)、(最大第1位の第1の位相値+最大第2位の第1の位相値)÷2で算出した第1の位相値を位相調整部41に設定し(ステップS93)、ステップS85の処理に移行する。そして、決定部54は、位相振り試行回数がi=Nである場合(ステップS83:Yes)、最大第1位の第1の位相値を最適な第1の位相値aとして決定する(ステップS94)。そして、決定部54は、最適な第1の位相値aを位相調整部41に設定し(ステップS95)、図11に示す処理動作を終了する。
【0111】
図11に示す第1の位相値決定処理では、Peak領域でのゲイン平均値が大きい最大第1位の第1の位相値及び最大第2位の第1の位相値から最適な第1の位相値aを決定できる。
【0112】
図12は、第1の遅延値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図12において制御部46は、遅延振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS101)、暫定遅延値を第1の遅延値cとして設定する(ステップS102)。尚、説明の便宜上、最大遅延振り試行回数はN=5回としたが、5回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。αは10とする。制御部46は、設定中の遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS103)。
【0113】
制御部46は、遅延振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS103:No)、遅延振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS103A)。制御部46は、遅延振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS103A:No)、遅延を振るべく、現在の第1の遅延値±調整値を加算した第1の遅延値cを遅延調整部42に設定する(ステップS104)。尚、遅延振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を32として設定の第1の遅延値cを±32とする。遅延振り試行回数がi=1の場合、例えば、現在の第1の遅延値である最小第1位の遅延値c1が32の場合、設定の第1の遅延値cとして64,96,128、現在の第1の遅延値cが-32の場合、設定の第1の遅延値を-128、-96、-64とする。更に、遅延振り試行回数がi=2の場合、現在の設定の第1の遅延値である最小第1位の第1の遅延値c1、調整値を±16、遅延振り試行回数がi=3の場合、現在の設定の第1の遅延値である最小第1位の第1の遅延値c1、調整値を±8とする。遅延調整部42は、1/N・サンプル単位で遅延調整を実行する(Nは整数)。1サンプル遅延は、サンプリングレート(fs)単位の遅延量である(1/fs)。尚、fs=122.88MHz,N=64とした場合、1サンプル遅延は、1/122.88MHz=8.14n秒、1/Nサンプル遅延は、8.14n秒/64=0.13n秒である。
【0114】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS104にて遅延調整部42に第1の遅延値cを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS105)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0115】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS106)。更に、制御部46内の第2の算出部53は、AM-AM(gain)特性からHigh領域のゲイン平均値を算出する(ステップS107)。
【0116】
図13は、最大第1位の第1の遅延値及び最大第2位の第1の遅延値を決定する方法の一例を示す説明図である。図13に示す暫定遅延値「11」のHigh領域のゲイン平均値は「A0」とする。i=0の場合、第1の遅延値「-32」のHigh領域のゲイン平均値は「A1」、第1の遅延値「32」のHigh領域のゲイン平均値は「A2」とする。この結果、i=0では、最大第1位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A1」に対応する「-32」、最大第2位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A0」に対応する「11」である。
【0117】
更に、i=1の場合、第1の遅延値「-128」のHigh領域のゲイン平均値は「A3」、第1の遅延値「-96」のHigh領域のゲイン平均値は「A4」、第1の遅延値「-64」のHigh領域のゲイン平均値は「A5」とする。この結果、i=1では、最大第1位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A1」に対応する「-32」、最大第2位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A0」に対応する「11」である。
【0118】
更に、i=2の場合、第1の遅延値「-48」のHigh領域のゲイン平均値は「A6」、第1の遅延値「-16」のHigh領域のゲイン平均値は「A7」とする。この結果、i=2では、最大第1位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A7」に対応する「-16」、最大第2位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A1」に対応する「-32」である。
【0119】
更に、i=3の場合、第1の遅延値「-24」のHigh領域のゲイン平均値は「A8」、第1の遅延値「-8」のHigh領域のゲイン平均値は「A9」とする。この結果、i=3では、最大第1位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A7」に対応する「-16」、最大第2位の第1の遅延値はHigh領域のゲイン平均値「A1」に対応する「-32」である。
【0120】
制御部46内の決定部54は、算出したHigh領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の遅延値のゲイン平均値を超えるか否かを判定する(ステップS108)。尚、最大第1位の第1の遅延値とはHigh領域のゲイン平均値が最大となる第1の遅延値である。決定部54は、High領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の遅延値のゲイン平均値を超える場合(ステップS108:Yes)、第1位の設定パラメータとして最大第1位の第1の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS109)。更新処理は、最大第1位の第1の遅延値を最大第2位の第1の遅延値に、最大第1位の第1の遅延値のゲイン平均値を最大第2位の第1の遅延値のゲイン平均値に、最大第1位の第1の遅延値の設定値を現在設定値に、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値に更新する。尚、最大第2位の第1の遅延値とはHigh領域のゲイン平均値が上から第2位の第1の遅延値である。
【0121】
制御部46は、最大第1位の第1の遅延値及び最大第2位の第1の遅延値を更新する更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS110)、遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS103に移行する。
【0122】
決定部54は、High領域のゲイン平均値が最大第1位の第1の遅延値のゲイン平均値を超えていない場合(ステップS108:No)、High領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の遅延値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS111)。決定部54は、High領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の遅延値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS111:Yes)、第2位の設定パラメータとして最大第2位の第1の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS112)。ステップS112の更新処理は、最大第2位の第1の遅延値を現在設定値に更新し、ゲイン平均値を最大第2位のゲイン平均値として記憶する。制御部46は、ステップS112の更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS110の処理に移行する。また、決定部54は、High領域のゲイン平均値が最大第2位の第1の遅延値のゲイン平均値を超えたのでない場合(ステップS111:No)、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS110の処理に移行する。
【0123】
制御部46は、遅延振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS103A:Yes)、(最大第1位の第1の遅延値+最大第2位の第1の遅延値)÷2で算出した第1の遅延値を遅延調整部42に設定し(ステップS113)、ステップS105の処理に移行する。例えば、i=4の場合、暫定の第1の遅延値は、図13に示すように、(最大第1位の第1の遅延値+最大第2位の第1の遅延値)÷2、すなわち(-16-32)÷2=-24となる。
【0124】
決定部54は、遅延振り試行回数がi=Nである場合(ステップS103:Yes)、最大第1位の第1の遅延値を最適な第1の遅延値cとして決定する(ステップS114)。この結果、i=4では、ゲイン平均値「A7」が最大第1位の第1の遅延値「-16」をA7」を最適な第1の遅延値cとして決定する。決定部54は、最適な第1の遅延値cを遅延調整部42に設定し(ステップS115)、図12に示す処理動作を終了する。
【0125】
図12に示す第1の遅延値決定処理では、High領域でのゲイン平均値が大きい最大第1位の第1の遅延値及び最大第2位の第1の遅延値から最適な第1の遅延値cを決定できる。
【0126】
図14は、第2の遅延値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図14において制御部46は、遅延振り試行回数iを「0」に設定し(ステップS121)、暫定遅延値を第2の遅延値(d=c+α)として設定する(ステップS122)。尚、説明の便宜上、最大遅延振り試行回数はN=5回としたが、5回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。αは10とする。制御部46は、設定中の遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS123)。
【0127】
制御部46は、遅延振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS123:No)、遅延振り試行回数がi=N-1であるか否かを判定する(ステップS123A)。制御部46は、遅延振り試行回数がi=N-1でない場合(ステップS123A:No)、遅延を振るべく、現在の第2の遅延値±調整値を加算した第2の遅延値dを遅延調整部42に設定する(ステップS124)。尚、遅延振り試行回数がi=0の場合、例えば、調整値を32として設定の第2の遅延値dを±32とする。遅延振り試行回数がi=1の場合、例えば、現在の第2の遅延値である最小第1位の第2の遅延値d1が32の場合、設定の第2の遅延値dとして64,96,128、現在の第2の遅延値dが-32の場合、設定の第2の遅延値を-128、-96、-64とする。更に、遅延振り試行回数がi=2の場合、現在の設定の第2の遅延値である最小第1位の第2の遅延値d1、調整値を±16、遅延振り試行回数がi=3の場合、現在の設定の第2の遅延値である最小第1位の第2の遅延値d1、調整値を±8とする。
【0128】
制御部46内の第1の算出部51は、ステップS124にて遅延調整部42に第2の遅延値dを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS125)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0129】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS126)。更に、制御部46内の第2の算出部53は、AM-AM(gain)特性からPeak領域のゲイン平均値を算出する(ステップS127)。
【0130】
制御部46内の決定部54は、算出したPeak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の遅延値のゲイン平均値を超えるか否かを判定する(ステップS128)。尚、最大第1位の第2の遅延値とはPeak領域のゲイン平均値が最大となる第2の遅延値である。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の遅延値のゲイン平均値を超える場合(ステップS128:Yes)、第1位の設定パラメータとして最大第1位の第2の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS129)。更新処理は、最大第1位の第2の遅延値を最大第2位の第2の遅延値に、最大第1位の第2の遅延値のゲイン平均値を最大第2位の第2の遅延値のゲイン平均値に、最大第1位の第2の遅延値の設定値を現在設定値に、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値に更新する。尚、最大第2位の第2の遅延値とはPeak領域のゲイン平均値が上から第2位の第2の遅延値である。
【0131】
制御部46は、最大第1位の第2の遅延値及び最大第2位の第2の遅延値を更新する更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントし(ステップS130)、遅延振り試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS123に移行する。
【0132】
決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第1位の第2の遅延値のゲイン平均値を超えていない場合(ステップS128:No)、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の遅延値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS131)。決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の遅延値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS131:Yes)、第2位の設定パラメータとして最大第2位の第2の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS132)。ステップS132の更新処理は、最大第2位の第2の遅延値を現在設定値に更新し、ゲイン平均値を最大第2位のゲイン平均値として記憶する。制御部46は、ステップS132の更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS130の処理に移行する。また、決定部54は、Peak領域のゲイン平均値が最大第2位の第2の遅延値のゲイン平均値を超えていない場合(ステップS131:No)、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS130の処理に移行する。
【0133】
制御部46は、遅延振り試行回数がi=N-1の場合(ステップS123A:Yes)、(最大第1位の第2の遅延値+最大第2位の第2の遅延値)÷2で算出した第2の遅延値を遅延調整部42に設定し(ステップS133)、ステップS125の処理に移行する。そして、決定部54は、遅延振り試行回数がi=Nである場合(ステップS123:Yes)、最大第1位の第2の遅延値を最適な第2の遅延値dとして決定する(ステップS134)。決定部54は、最適な第2の遅延値dを遅延調整部42に設定し(ステップS135)、図14に示す処理動作を終了する。
【0134】
図14に示す第2の遅延値決定処理では、Peak領域でのゲイン平均値が大きい最大第1位の第2の遅延値及び最大第2位の第2の遅延値から最適な第2の遅延値dを決定できる。
【0135】
実施例1のドハティ増幅装置1では、分配部21とPA23Cとの間に配置され、分配部21からの第2の信号の位相値及び遅延値を調整する調整部26を有する。調整部26は、FB信号及びREF信号に基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。調整部26は、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じて複数の領域に分類する。調整部26は、分類された領域毎にゲインの統計値を算出し、算出した領域毎の統計値に基づき、無線特性が最良となる位相値及び遅延値を調整部26に設定する。その結果、歪特性が最良となるように2入力ドハティ増幅部20でのCA22C及びPA23Cの経路間の位相差及び遅延差を調整する時間を大幅に短縮できる。例えば、従来のような手動で調整する時間が約1時間を要したのに対し、本実施例では自動調整のため、約2分で調整できる。
【0136】
更に、ドハティ増幅装置1では、自装置内のFB信号及びREF信号を使用して調整するため、従来のような外部測定装置が不要となる。例えば、外部測定装置では、パワーアンプの出力の平均電力をモニタすることになるが、ドハティ増幅装置1では、FB信号及びREF信号をサンプル単位でモニタするため、高精度の補正が可能となる。しかも、ドハティ増幅装置1では、調整に位相値及び遅延値を使用するため、高精度の補正が可能となる。
【0137】
第1の算出部51は、歪補償未適用の状態で所定の位相値及び遅延値を調整部26に設定した後、FB信号及びREF信号に基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。その結果、DPD10の歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を得ることができる。
【0138】
調整部26は、第2の信号の位相値を調整する位相調整部41と、位相値と直列に接続し、第2の信号の遅延値を調整する遅延調整部42と、を有する。調整部26は、Peak領域のゲイン平均値が最大となる設定位相値を位相調整部41に設定すると共に、High領域のゲイン平均値が最大となる設定遅延値を遅延調整部42に設定する。Peak領域のゲインの低下を少なくなることで線形性を改善できる。更に、High領域及びLow領域のゲインのバラツキを小さくすることでアンプのメモリ効果が少なくなる。その結果、無線特性が改善されることになる。つまり、調整部26は、ドハティ合成後の飽和電力付近のゲインを最大化し、ゲイン・位相バラツキを無くすようにPA23Cの位相値及び遅延値を調整する。その結果、無線特性を最適化することができる。
【0139】
尚、Peak領域のゲイン平均値で暫定位相値、最適な第1の位相値、最適な第2の位相値、最適な第2の遅延値を決定、High領域のゲイン平均値で最適な第1の遅延値を決定、High領域のゲイン標準偏差値で暫定遅延値を決定する場合を例示した。しかしながら、使用するアンプ特性に応じて対象領域及び統計値を変更するものであり、これに限定されるものではない。
【0140】
尚、実施例1のドハティ増幅装置1内の調整部26では、PA23Cを配置する第2の経路に位相調整部41及び遅延調整部42を直列配置する場合を例示した。しかしながら、位相調整部41及び遅延調整部42の他に、振幅調整部47を直列配置しても良く、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
【実施例0141】
図15は、実施例2のドハティ増幅装置1Aの一例を示す説明図である。尚、実施例1のドハティ増幅装置1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図15に示すドハティ増幅装置1Aと図1に示すドハティ増幅装置1とが異なるところは、調整部26Aの構成にある。
【0142】
図16は、実施例2の調整部26Aの一例を示す説明図である。図16に示す調整部26Aは、位相調整部41、遅延調整部42、位相テーブル44、遅延テーブル45、電力アドレス計算部43及び制御部46を有する。更に、調整部26Aは、PA23Cを配置する第2の経路の遅延調整部42の後段に配置された振幅調整部47と、複数の振幅パターンを記憶する振幅テーブル48とを有する。
【0143】
図17は、振幅テーブル48の一例を示す説明図である。図17に示す振幅テーブル48は、無線特性が最良となる、REF電力に応じた振幅調整部47の振幅パターンを事前に管理する。振幅調整部47は、振幅テーブル48内の複数の振幅パターンを順次設定する。振幅パターンは、無線特性が良好となる、REF電力に応じた振幅の特性パターンである。尚、説明の便宜上、図17に示す振幅テーブル48は、3種類の振幅パターンが管理されているものとする。決定部54は、High領域の設定振幅パターン毎の統計値であるゲイン標準偏差値が最小となる設定振幅パターンを振幅調整部47に設定する。
【0144】
図18は、第2の最適値決定処理に関わる調整部26A内の制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図18において制御部46は、ステップS12にて暫定遅延値を決定する暫定遅延決定処理を実行した後、最適な振幅パターンを決定する、図19に示す振幅パターン決定処理を実行する(ステップS140)。更に、制御部46は、ステップS140にて最適な振幅パターンを決定した後、ステップS13にて第2の位相値決定処理を実行する。
【0145】
第2の最適値決定処理では、最適な振幅パターンを決定した後、最適な第2の位相値b、最適な第1の位相値a、最適な第1の遅延値c及び最適な第2の遅延値dを順次決定することになる。
【0146】
図19は、振幅パターン決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図19において制御部46は、振幅パターン選択試行回数iを「0」に設定し(ステップS141)、暫定位相値を位相調整部41に設定する(ステップS142)。更に、制御部46は、暫定遅延値を遅延調整部42に設定する(ステップS143)。制御部46は、振幅パターン選択試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS144)。尚、説明の便宜上、振幅テーブル48内で選択できる最大振幅パターン選択試行回数はN=3回としたが、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0147】
制御部46は、振幅パターン選択試行回数がi=Nでない場合(ステップS144:No)、振幅テーブル48内の未選択の振幅パターンを振幅調整部47に設定する(ステップS145)。制御部46内の第1の算出部51は、ステップS145にて振幅調整部47に未選択の振幅パターンを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS146)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0148】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力のレベルに応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS147)。更に、制御部46内の第2の算出部53は、AM-AM(gain)特性からHigh領域のゲイン標準偏差値を算出する(ステップS148)。
【0149】
制御部46内の決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅パターンのゲイン標準偏差値よりも小さいか否かを判定する(ステップS149)。尚、最小第1位の振幅パターンとはHigh領域のゲイン標準偏差値が最小となる振幅パターンである。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅パターンのゲイン標準偏差値よりも小さい場合(ステップS149:Yes)、第1位の設定パターンとして最小第1位の振幅パターンを更新する更新処理を実行する(ステップS150)。ステップS150の更新処理は、最小第1位の振幅パターンの設定値を現在設定値に更新、ゲイン標準偏差値を最小第1位のゲイン標準偏差値として記憶する。
【0150】
制御部46は、ステップS150の更新処理を実行した後、振幅パターン選択試行回数を+1インクリメントし(ステップS151)、振幅パターン選択試行回数回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS144に移行する。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅パターンのゲイン標準偏差値よりも小さくない場合(ステップS149:No)、振幅パターン選択試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS151の処理に移行する。
【0151】
制御部46は、振幅パターン選択試行回数がi=Nである場合(ステップS144:Yes)、最小第1位の振幅パターンを最適な振幅パターンとして決定する(ステップS152)。更に、決定部54は、決定された最適な振幅パターンを振幅調整部47に設定し(ステップS153)、図19に示す処理動作を終了する。
【0152】
図19に示す振幅パターン決定処理では、High領域でのゲイン標準偏差値が最小となる最適な振幅パターンを決定できる。
【0153】
実施例2のドハティ増幅装置1Aは、位相調整部41又は遅延調整部42に直列に接続し、第2の信号の振幅パターンを調整する振幅調整部47をさらに有する。ドハティ増幅装置1Aは、High領域のゲイン標準偏差値が最小となる設定振幅パターンを振幅調整部47に設定する。その結果、調整するに際し、位相値及び遅延値に加えて振幅パターンを使用するため、振幅パターンを考慮した高精度の調整が可能となる。なお、振幅パターンの調整も、アンプ特性に応じて対象領域及び統計値を変更するものであり、これに限定されるものではない。
【0154】
尚、実施例1のドハティ増幅装置1内の調整部26では、PA23Cを配置する第2の経路に位相調整部41及び遅延調整部42を直列配置する場合を例示した。しかしながら、位相調整部41及び遅延調整部42の他に、振幅周波数調整部47Aを直列配置しても良く、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。
【実施例0155】
図20は、実施例3のドハティ増幅装置1Bの一例を示す説明図である。尚、実施例1のドハティ増幅装置1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図20に示すドハティ増幅装置1Bと図1に示すドハティ増幅装置1とが異なるところは、調整部26Bの構成にある。
【0156】
図21は、実施例3の調整部26Bの一例を示す説明図である。図21に示す調整部26Bは、位相調整部41、遅延調整部42、位相テーブル44、遅延テーブル45、電力アドレス計算部43及び制御部46を有する。更に、調整部26Bは、PA23Cを配置する第2の経路の遅延調整部42の後段に配置された振幅周波数調整部47Aを有する。
【0157】
図22は、振幅周波数補正パターンの一例を示す説明図である。図22に示す振幅周波数補正パターンは、無線特性が最良となる、REF電力に応じた振幅周波数調整部47Aの振幅周波数補正パターンである。振幅周波数補正パターンの縦軸は振幅、横軸は、正規化された周波数(周波数と中心周波数(fc)との差分をfcで正規化)である。尚、説明の便宜上、図22に示す振幅周波数補正パターンは、3種類の振幅周波数補正パターンである。振幅周波数調整部47Aは、複数の振幅周波数補正パターンを順次設定する。決定部54は、High領域のゲイン標準偏差値が最小となる設定振幅周波数補正パターンを振幅周波数調整部47Aに設定する。
【0158】
図23は、第3の最適値決定処理に関わる調整部内の制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図23において制御部46は、ステップS12にて暫定遅延値を決定する暫定遅延決定処理を実行した後、最適な振幅周波数補正パターンを決定する、図24に示す振幅周波数補正パターン決定処理を実行する(ステップS160)。更に、制御部46は、ステップS160にて最適な振幅周波数補正パターンを決定した後、ステップS13にて第2の位相値決定処理を実行する。
【0159】
第3の最適値決定処理では、最適な振幅周波数補正パターンを決定した後、最適な第2の位相値b、最適な第1の位相値a、最適な第1の遅延値c及び最適な第2の遅延値dを順次決定することになる。
【0160】
図24は、振幅周波数補正パターン決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図24において制御部46は、振幅周波数補正パターン選択試行回数iを「0」に設定し(ステップS161)、暫定位相値を位相調整部41に設定する(ステップS162)。更に、制御部46は、暫定遅延値を遅延調整部42に設定する(ステップS163)。制御部46は、振幅周波数補正パターン選択試行回数がi=Nであるか否かを判定する(ステップS164)。尚、説明の便宜上、選択できる最大振幅周波数補正パターン選択試行回数は3回としたが、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0161】
制御部46は、振幅周波数補正パターン選択試行回数がi=2でない場合(ステップS164:No)、未選択の振幅周波数補正パターンを振幅周波数調整部47Aに設定する(ステップS165)。制御部46内の第1の算出部51は、ステップS165にて振幅周波数調整部47Aに未選択の振幅周波数補正パターンを設定後、歪補償未適用の状態でのAM-AM(gain)特性を算出する(ステップS166)。尚、第1の算出部51は、DPD10による歪補償未適用の状態のFB信号とREF信号とに基づき、AM-AM(gain)特性を算出する。
【0162】
制御部46内の分類部52は、AM-AM(gain)特性を算出した後、算出したAM-AM(gain)特性をREF電力に応じてLow領域、High領域及びPeak領域に分類する(ステップS167)。更に、制御部46内の第2の算出部は、AM-AM(gain)特性からHigh領域のゲイン標準偏差値を算出する(ステップS168)。
【0163】
制御部46内の決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅周波数補正パターンのゲイン標準偏差値よりも小さいか否かを判定する(ステップS169)。尚、最小第1位の振幅周波数補正パターンとはHigh領域のゲイン標準偏差値が最小となる振幅周波数補正パターンである。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅周波数補正パターンのゲイン標準偏差値よりも小さい場合(ステップS169:Yes)、第1位の設定パターンとして最小第1位の振幅周波数補正パターンを更新する更新処理を実行する(ステップS170)。ステップS170の更新処理は、最小第1位の振幅周波数補正パターンの設定値を現在設定値に更新、ゲイン標準偏差値を最小第1位のゲイン標準偏差値として記憶する。
【0164】
制御部46は、ステップS170の更新処理を実行した後、振幅周波数補正パターン選択試行回数を+1インクリメンし(ステップS171)、振幅周波数補正パターン選択試行回数がi=Nであるか否かを判定すべく、ステップS164に移行する。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の振幅周波数補正パターンのゲイン標準偏差値よりも小さくない場合(ステップS169:No)、振幅周波数補正パターン選択試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS171の処理に移行する。
【0165】
制御部46は、振幅周波数補正パターン選択試行回数がi=Nである場合(ステップS164:Yes)、最小第1位の振幅周波数補正パターンを最適な振幅周波数補正パターンとして決定する(ステップS172)。決定部54は、決定された振幅周波数補正パターンを振幅周波数調整部47Aに設定し(ステップS173)、図24に示す処理動作を終了する。
【0166】
図24に示す振幅周波数補正パターン決定処理では、High領域でのゲイン標準偏差値が最小となる最適な振幅周波数補正パターンを決定できる。
【0167】
実施例3のドハティ増幅装置1Bは、位相調整部41又は遅延調整部42に直列に接続し、第2の信号の振幅周波数補正パターンを調整する振幅周波数調整部47Aをさらに有する。ドハティ増幅装置1Bは、High領域のゲイン標準偏差値が最小となる設定振幅周波数補正パターンを振幅周波数調整部47Aに設定する。その結果、調整するに際し、位相値及び遅延値に加えて振幅周波数補正パターンを使用するため、振幅周波数補正パターンを考慮した高精度の調整が可能となる。なお、振幅周波数補正パターンの調整も、アンプ特性に応じて対象領域及び統計値を変更するものであり、これに限定されるものではない。
【0168】
尚、実施例1のドハティ増幅装置1では、暫定位相値、第1の位相値及び第2の位相値を決定する際に、ゲイン平均値が最大第1位の位相値及び最大第2位の位相値を使用して決定する場合を例示した。更に、ドハティ増幅装置1では、第1の遅延値及び第2の遅延値を決定する際に、ゲイン平均値が最大第1位の遅延値及び最大第2位の遅延値を使用して決定する場合を例示した。更に、ドハティ増幅装置1は、暫定遅延値を決定する際に、ゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値及び最小第2位の遅延値を使用して決定する場合を例示した。しかしながら、第2位の位相値や第2位の遅延値を使用しなくても良く、その実施の形態につき、実施例4として以下に説明する。尚、実施例1のドハティ増幅装置1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【実施例0169】
決定部54は、図7の代わりに図25に示す暫定位相値決定処理を実行すると共に、図8の代わりに図26に示す暫定遅延値決定処理を実行する。
【0170】
図25は、実施例4の暫定位相値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図25において制御部46は、ステップS23にて設定中の位相振り試行回数がi=Nであるか否かを判定する。
【0171】
制御部46は、位相振り試行回数がi=Nでない場合(ステップS23:No)、位相を振るべく、現在の第1の位相値a±調整値を加算した第1の位相値aを位相調整部41に設定するステップS24の処理を実行する。
【0172】
更に、制御部46内の第2の算出部は、ステップS27にてAM-AM(gain)特性からPeak領域のゲイン平均値を算出した後、ゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超えたか否かを判定する(ステップS28A)。決定部54は、ゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超えた場合(ステップS28A:Yes)、設定パラメータとして最大第1位の位相値を更新する更新処理を実行する(ステップS29A)。ステップS29Aの更新処理は、最大第1位の位相値の設定値を現在設定値に更新、ゲイン平均値を最大第1位のゲイン平均値として記憶する。
【0173】
制御部46は、最大第1位の位相値を更新する更新処理を実行した後、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS30の処理に移行する。また、決定部54は、ゲイン平均値が最大第1位の位相値のゲイン平均値を超えていない場合(ステップS28A:No)、位相振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS30の処理に移行する。
【0174】
制御部46は、位相振り試行回数がi=Nである場合(ステップS23:Yes)、(最大第1位の第1の位相値を暫定位相値として決定すべく、ステップS34の処理に移行する。
【0175】
図25に示す暫定位相値決定処理では、Peak領域でのゲイン平均値が最大となる最大第1位の位相値を用いて暫定位相値を決定できる。尚、第1の位相値決定処理及び第2の位相値決定処理においても、最大第1位の位相値のみを使用して最適な第1の位相値や最適な第2の位相値を決定しても良い。
【0176】
図26は、実施例4の暫定遅延値決定処理に関わる制御部46の処理動作の一例を示すフローチャートである。図26において制御部46は、ステップS43にて遅延振り試行回数がi=Nでない場合、ステップS44にて現在の設定遅延値±調整値を加算した設定遅延値を遅延調整部42に設定する。
【0177】
第2の算出部53は、ステップS47にてAM-AM(gain)特性からHigh領域のゲイン標準偏差値を算出した後、ゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さいか否かを判定する(ステップS48A)。決定部54は、算出したHigh領域のゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン標準偏差値よりも小さい場合(ステップS48A:Yes)、設定パラメータとして最小第1位の遅延値を更新する更新処理を実行する(ステップS49A)。ステップS49Aの更新処理は、最小第1位の遅延値の設定値を現在設定値に更新、ゲイン標準偏差値を最小第1位のゲイン標準偏差値として記憶する。
【0178】
制御部46は、最小第1位の遅延値を更新する更新処理を実行した後、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS50の処理に移行する。また、決定部54は、ゲイン標準偏差値が最小第1位の遅延値のゲイン平均値よりも小さくない場合(ステップS48A:No)、遅延振り試行回数を+1インクリメントすべく、ステップS50の処理に移行する。
【0179】
制御部46は、ステップS43にて遅延振り試行回数がi=Nである場合、最小第1位の遅延値を暫定遅延値として決定すべく、ステップS54の処理に移行する。
【0180】
図26に示す暫定遅延値決定処理では、High領域でのゲイン標準偏差値が最小となる最小第1位の遅延値を用いて暫定遅延値を決定できる。尚、第1の遅延値決定処理及び第2の遅延値決定処理においても、第1位の遅延値のみを使用して最適な第1の遅延値や最適な第2の遅延値を決定しても良い。
【0181】
尚、実施例1のドハティ増幅装置1では、2入力ドハティ増幅部20を採用しているため、PA23Cが配置された第2の経路に調整部26を配置する場合を例示した。しかしながら、2入力ドハティ増幅部20の代わりに2入力逆ドハティ増幅部を配置した場合にはCA22Cが配置された第1の経路に調整部26を配置しても良い。また、実施例1のドハティ増幅装置1では、PA23Cが配置された第1の経路に調整部26を配置する場合を例示したが、CA22C及びPA23Cが配置された両方の経路に調整部26を配置しても良く、適宜変更可能である。
【0182】
また、実施例2のドハティ増幅装置1A内の調整部26Aは、位相調整部41、遅延調整部42及び振幅調整部47を有する場合を例示したが、位相調整部41、遅延調整部42及び振幅調整部47に加えて振幅周波数調整部47Aを直列に接続しても良い。その結果、調整するに際し、位相値、遅延値及び振幅パターンに加えて振幅周波数補正パターンを使用するため、振幅パターン及び振幅周波数パターンを考慮した高精度の調整が可能となる。
【0183】
図27は、ドハティ増幅装置1の適用の一例である基地局60のハードウェア構成の一例を示す説明図である。図27に示す基地局60は、通信インタフェース61と、無線通信回路62と、記憶装置63と、プロセッサ64とを有する。通信インタフェース61は、上位装置と接続し、送信信号等の情報を取得するインタフェースである。無線通信回路62は、RF信号を増幅するドハティ増幅装置1を内蔵している。記憶装置63は、ドハティ増幅装置1内の位相テーブル44、遅延テーブル45等の各種テーブルを記憶する。プロセッサ64は、ドハティ増幅装置1内の調整部26内の制御部46である。
【0184】
尚、調整部26(26A、26B)及びDPD10は、ハードウェアとして、例えばプロセッサにより実現される。プロセッサ64の一例としては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。また、記憶装置63は、ハードウェアとして、例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はフラッシュメモリにより実現される。また、分配部21、第1のDAC22A、第2のDAC23A、第1のドライバアンプ22B、第2のドライバアンプ23B、CA22C及びPA23C、合成部24及びADC30は、例えば、アナログ回路により実現される。
【符号の説明】
【0185】
1、1A、1B ドハティ増幅装置
10 DPD
14 歪補償部
21 分配部
22C CA
23C PA
24 合成部
26、26A、26B 調整部
41 位相調整部
42 遅延調整部
44 位相テーブル
45 遅延テーブル
46 制御部
47 振幅調整部
47A 振幅周波数調整部
48 振幅テーブル
51 第1の算出部
52 分類部
53 第2の算出部
54 決定部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29
図30