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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050231
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】熟成容器、熟成容器の販売・提供方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/72 20060101AFI20240403BHJP
   G06Q 30/06 20230101ALI20240403BHJP
   C12G 3/07 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
B65D85/72 200
G06Q30/06
C12G3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156960
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】322010350
【氏名又は名称】株式会社エイジ
(74)【代理人】
【識別番号】230117846
【弁護士】
【氏名又は名称】長友 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100217032
【弁理士】
【氏名又は名称】常本 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】林 英邦
【テーマコード(参考)】
3E035
4B115
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
3E035AA03
3E035BA06
3E035BC02
3E035BC10
3E035CA02
4B115MA02
5L030BB21
5L049BB21
(57)【要約】
【課題】容器の一部に木質を使用する構成の容器を用いて、樽の熟成とほぼ同一の熟成を可能とする熟成容器を提供する。
【解決手段】アルコール飲料を熟成するための熟成容器であって、アルコール飲料を格納する格納部と、蓋又は底又は側面に1又は2以上の開口部と、を備え、開口部の全部または一部に木質で構成された蓋材が配置され、大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成と同様の熟成過程を担保するために、熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と蓋材の容器内側の面積を、大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、木質で構成された樽の内側の面積及びアルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定することが望ましい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料を熟成するための熟成容器であって、
アルコール飲料を格納する格納部と、
蓋又は底又は側面に1又は2以上の開口部と、を備え、
前記開口部の全部または一部に、木質で構成された蓋材が配置され、
大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成と同様の熟成過程を担保するために、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定すること、
を特徴とする熟成容器。
【請求項2】
アルコール飲料を熟成するための熟成容器であって、
外部から内容物の状態を観察可能な透明な部位を有し、
前記アルコール飲料を充填した場合に、当該アルコール飲料の熟成過程を観察可能とすること、
を特徴とする請求項1に記載の熟成容器。
【請求項3】
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
樽を構成する部位に応じて前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さが異なることを考慮すること、
を特徴とする、請求項1又は2のいずれか一つに記載の熟成容器。
【請求項4】
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
さらに、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さから前記アルコール飲料が木質に浸潤する浸潤体積又は及び浸潤体積に相当する木質部分の浸潤重量を算出することにより、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率、又はアルコール飲料の重量と前記浸潤重量の比率である液比を算出し、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記液比に基づいて決定すること、
を特徴とする、請求項1又は2のいずれか一つに記載の熟成容器。
【請求項5】
前記液比が、前記アルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率である場合において、略14~略18であること、
を特徴とする、請求項4に記載の熟成容器。
【請求項6】
アルコール飲料を格納する格納部と、蓋又は底又は側面に、1又は2以上の開口部を備え、前記開口部の全部または一部に木質で構成された蓋材が配置された、アルコール飲料の熟成容器に、アルコール飲料を充填して販売・提供する方法であって、
前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽に、それぞれを個体識別するための樽識別IDを付与するとともに、
前記アルコール飲料の熟成容器には、
前記の充填したアルコール飲料が貯蔵・熟成される大容量の樽の樽識別IDが紐づけられ、
前記アルコール飲料の熟成容器の構造として、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記紐づけた樽識別IDの大容量の樽における、アルコール飲料の内容量と、木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定することにより、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保して販売・提供すること、
を特徴とするアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法。
【請求項7】
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
さらに、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さから前記アルコール飲料が木質に浸潤する浸潤体積又は及び浸潤体積に相当する木質部分の浸潤重量を算出することにより、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率、又はアルコール飲料の重量と前記浸潤重量の比率である液比を算出し、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記液比に基づいて決定することにより、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保して販売・提供すること、
を特徴とする、請求項6に記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法。
【請求項8】
前記液比が、前記アルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率である場合において、略14~略18であること、
を特徴とする、請求項7に記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法。
【請求項9】
前記の樽識別IDには、少なくとも、アルコール飲料の樽詰め日付、樽を構成する木質の種類、及び、樽の保管場所の情報を含むこと、
を特徴とする、請求項6~8のいずれか1つに記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法。
【請求項10】
前記熟成容器は、外部から内容物の状態を観察可能な透明な部位を有し、
前記アルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供を受けたユーザーに対し、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保すること、及び、
当該容器の透明な部位を通じて内部のアルコール飲料の色を含む熟成状態、を観察可能とすること、及び、前記樽識別IDによって当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽の特定を可能とすることにより、
前記ユーザーが、自己の保有する前記アルコール飲料入りの熟成容器のアルコール飲料の熟成状態に基づき、当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽のアルコール飲料の熟成状態を推定可能とし、
前記ユーザーに対して、当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽のアルコール飲料の購入を喚起すること、
を特徴とする、請求項6~8のいずれか一つに記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイスキーやブランデー、ワインなどのアルコール飲料を熟成するための容器に関する。特に、樽のように全てが木質で覆われた構成ではなく、容器の一部に木質を使用する構成としつつも、樽の熟成と略同一の熟成を可能とする熟成容器、及び、熟成容器の販売方法、提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒の場合、大麦麦芽を原料として複数の種類の酵母と乳酸菌を用いて発酵した発酵モロミを蒸留する。
蒸留中に含硫アミノ酸に由来するジメチルスルフィドなどの硫化物が生成され、特有の臭いが発生し風味を劣化させる要因となるため、硫化物は未熟成分と呼ばれている。蒸溜の際、銅製の蒸留器を用いることで、銅が化学反応によって硫化物やチオール化合物を捕捉するものの、かなりの硫化物が残留してしまう。
また、蒸溜直後のニューポットの各成分は、まだ樽材などの木質成分が分解・溶出する前の状態なので無色透明、香りも単調で、アルコール分子の状態も、水との会合が進んでおらず、角の立つような荒々しさを感じさせる刺激的な味わいとなっている。
【0003】
そこで、木質で構成された樽の中にニューポットを投入し、時間をかけて熟成を行うことが行われている。
熟成のメカニズムは完全には解明されていないが、図2に示すように、概ね、アセトアルデヒドなど未成熟香、及びジメチルスルフィドなどの硫化物等の不要な未熟成分の吸着・蒸散(図2のイ、ロ)、原酒の各成分の木質の樽材への浸潤(図2のハ)、樽材由来成分の分解・溶出(図2のニ)、及び樽材由来成分による反応(図2のホ、ヘ)、原酒由来成分の化学反応(酸化、アセタール化、エステル化反応など)(図2のト)、エタノールと水の会合によるエタノール成分の状態変化((図2のチ)などによるものであるとされている。
【0004】
他方、樽以外の熟成容器としては、i)樽と同じように全周を木質で構成したミニチュア樽、ii)ガラス等の容器の中に木質を投入したもの、iii)ガラス等の容器の蓋に木質を利用したもの、などが考案されている。
【0005】
例えば、i)樽と同じように全周を木質で構成したミニチュア樽を利用する場合、熟成過程に必要な各反応の多くを実現可能であるが、容器内の原酒の量と木質の表面積の比率が大容量の樽とは大きく異なり、熟成の進み具合が両者で大きく異なるため、あくまで、熟成の雰囲気を楽しむという程度に留まっている。
より具体的には、大容量の樽の原酒の体積と樽内側の表面積の関係において、小型のミニチュア樽の場合、原酒の体積に対し表面積が大きくなりすぎてしまい、ミニチュア樽における熟成のスピードが元の樽と比較して相当に速く進んでしまうので、ゆっくりと時間をかけて熟成する過程を楽しむのは難しいという課題があった。
【0006】
また、ii)ガラス等の容器の中に木質を投入したものとして、例えば、特許文献1「樽風味酒」には、アルコール飲料とともに所定の木片を容器内に封入することにより、樽を印象づける視覚的効果とともに、木片より醸し出される風味にて、所定の樽風味を有するアルコール飲料を得る技術が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、密閉された容器の内側に木材を入れるので、通気性を確保することができず、その結果、原酒に含まれる酸化化合物や硫化物等の不要な未熟成分を木材が吸着して外部に放出・蒸散することができなくなって、香りや風味が樽熟成とは異なってしまうという不都合があった。
また、内容量に対し、どのくらいの面積の木材を入れれば、樽と同じような熟成を行うことができるかという観点では分析されておらず、十分な熟成ができず未熟な状態になったり、逆に不用意に長期保管すると熟成が進みすぎたりして、香りや風味、色味などが樽熟成とは大きく異なってしまうという不都合もあった。
【0008】
これに対応する技術として、iii)ガラス等の容器の蓋に木質を利用したものに分類される、特許文献2の技術がある。
特許文献2「熟成ボトル」には、アルコールを熟成するための熟成ボトルであって、開口部を持つ容器と、当該開口部を介して容器内に配置されると共に、一端が外部の空気に接している木材とを備え、樽材と同じ広葉樹を含む木材を用いることで、木材に含まれる香気成分と味成分の好ましい溶出と熟成を行う技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2「熟成ボトル」の明細書段落0028には、樽の体積Vと樽内面の表面積Sの比率(V/S)に着目し、熟成ボトルにおける棒材の表面積とニューポットの液量の比率(V/S)は、樽における比率と略同一にすることが好ましいことが記載されている。
【0010】
特許文献2の技術によれば、特許文献1とは異なり、木材(特許文献2の棒材)が外部(外気)と接しているため、不十分とはいえ、ある程度の通気性を確保することができ、アルコール飲料に含まれる酸化化合物や硫化物等の不要な未熟成分を木材が吸着して外部に放出・蒸散することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3131977号公報
【特許文献2】特開2020-22416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献2の技術では、ニューポット(本願の「原酒」に相当)が木材に浸潤する深さを考慮しておらず、単純に、樽の内容積V(ml)と樽内面の表面積S(cm2)の比率(以下「V/S比」と略す)で熟成状態を把握しているため、樽における熟成を正しく評価することができず、熟成ボトルにおける熟成状態を樽における熟成状態と略同一に保つことができないという不都合があった。
【0013】
また、縦長の棒材を利用しているため、外気との間の通気性が乏しく、ニューポットに含まれる酸化化合物や硫化物等の不要な未熟成分を木材が吸着して外部に放出・蒸散する作用が不十分となり、硫化物等の不要な未熟成分がアルコール飲料中に残って、樽と同じような熟成を行うことができないという不都合があった。
【0014】
そこで、本願発明では、単純に、V/S比で熟成状態を把握するのではなく、樽の部位ごとの原酒の浸潤状況と熟成との関係を注意深く観察するとともに、樽における熟成の仕組みを正しく評価する方法・手段を追及することにより、熟成容器における熟成状態を樽における熟成状態と略同一に保つことを目的とする。
【0015】
また、本願発明では、熟成容器における熟成状態を樽における熟成状態と略同一に保つことを可能とする手段を提供することにより、同じ原酒を貯蔵する大容量の樽で進む原酒の熟成を推測可能とし、同じ原酒を貯蔵する大容量の樽で熟成したアルコール飲料の販売を促進するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、
アルコール飲料を熟成するための熟成容器であって、
アルコール飲料を格納する格納部と、
蓋又は底又は側面に1又は2以上の開口部と、を備え、
大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成と同様の熟成過程を担保するために、
前記開口部の全部または一部に、木質で構成された蓋材が配置され、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定すること、
を特徴とする熟成容器である。
【0017】
第2の発明は、
アルコール飲料を熟成するための熟成容器であって、
外部から内容物の状態を観察可能な透明な部位を有し、
前記アルコール飲料を充填した場合に、当該アルコール飲料の熟成過程を観察可能とすること、
を特徴とする第1の発明に記載の熟成容器である。
【0018】
第3の発明は、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
樽を構成する部位に応じて前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さが異なることを考慮すること、
を特徴とする、第1又は第2の発明のいずれか一つに記載の熟成容器である。
【0019】
第4の発明は、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、
前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
さらに、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さから前記アルコール飲料が木質に浸潤する浸潤体積又は及び浸潤体積に相当する木質部分の浸潤重量を算出することにより、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率、又はアルコール飲料の重量と前記浸潤重量の比率である液比を算出し、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記液比に基づいて決定すること、
を特徴とする、第1又は第2の発明のいずれか一つに記載の熟成容器である。
【0020】
第5の発明は、
前記液比が、前記アルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率である場合において、略14~略18であること、
を特徴とする、第4の発明に記載の熟成容器である。
【0021】
第6の発明は、
アルコール飲料を格納する格納部と、蓋又は底又は側面に、1又は2以上の開口部を備え、前記開口部の全部または一部に、木質で構成された蓋材が配置された、アルコール飲料の熟成容器に、アルコール飲料を充填して販売・提供する方法であって、
前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽に、それぞれを個体識別するための樽識別IDを付与するとともに、
前記アルコール飲料の熟成容器には、
前記の充填したアルコール飲料が貯蔵・熟成される大容量の樽の樽識別IDが紐づけられ、
前記アルコール飲料の熟成容器の構造として、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記紐づけた樽識別IDの大容量の樽における、アルコール飲料の内容量と、木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定することにより、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保して販売・提供すること、
を特徴とするアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法である。
【0022】
第7の発明は、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定する際に、
さらに、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記アルコール飲料が木質に浸潤する深さから前記アルコール飲料が木質に浸潤する浸潤体積又は及び浸潤体積に相当する木質部分の浸潤重量を算出することにより、前記大容量の樽におけるアルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率、又はアルコール飲料の重量と前記浸潤重量の比率である液比を算出し、
前記熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記液比に基づいて決定することにより、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保して販売・提供すること、
を特徴とする、第6の発明に記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法である。
【0023】
第8の発明は、
前記液比が、前記アルコール飲料の体積と前記浸潤体積の比率である場合において、略14~略18であること、
を特徴とする、第7の発明に記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法である。
【0024】
第9の発明は、
前記の樽識別IDには、少なくとも、アルコール飲料の樽詰め日付、樽を構成する木質の種類、及び、樽の保管場所の情報を含むこと、
を特徴とする、第6~第8の発明のいずれか1つに記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法である。
【0025】
第10の発明は、
前記熟成容器は、外部から内容物の状態を観察可能な透明な部位を有し、
前記アルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供を受けたユーザーに対し、
前記の大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、前記熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態とを略同一であることを担保すること、及び、
当該容器の透明な部位を通じて内部のアルコール飲料の色を含む熟成状態、を観察可能とすること、及び、前記樽識別IDによって当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽の特定を可能とすることにより、
前記ユーザーが、自己の保有する前記アルコール飲料入りの熟成容器のアルコール飲料の熟成状態に基づき、当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽のアルコール飲料の熟成状態を推定可能とし、
前記ユーザーに対して、当該熟成容器に紐づけられた前記アルコール飲料を貯蔵・熟成する大容量の樽のアルコール飲料の購入を喚起すること、
を特徴とする、第6~第8の発明のいずれか一つに記載のアルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供方法である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】熟成用の大容量の樽の構成の一実施例を示す図である。
図2】樽におけるアルコール飲料の熟成の様子を示す概念図であって、樽を鏡版の方向から見た断面図の一実施例を示す図である。
図3】木質に原酒の成分が浸潤する状態を示す図であって、樽の側板(胴部)や側板(下部)などのように、木質が原酒と直に接している場合の浸潤状態の一実施例を示す図である。
図4】木質に原酒の成分が浸潤する状態を示す図であって、樽の板(上部)や熟成容器の蓋などのように、木質が原酒と直に接していない場合の浸潤状態の一実施例を示す図である。
図5】樽材を構成する木質に原酒の成分が浸潤する状態を示す図であって、原酒の成分が木質に浸潤する深さが、樽材の部位ごとにそれぞれ異なることを示す図である。
図6】木質に原酒の成分が浸潤する深さの実効値を算定する仕組みを説明するための図であって、樽材の部位ごとに浸潤深さの実効値がそれぞれ異なることを示す図である。
図7】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分だけが木質で構成されたパターンにおいて、直径と深さが近い構成の一実施例を示す図である。
図8】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分だけが木質で構成されたパターンにおいて、やや縦長の構成の一実施例を示す図である。
図9】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分だけが木質で構成されたパターンにおいて、縦長の構成の一実施例を示す図である。
図10】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分と底部分が木質で構成されたパターンにおいて、直径と深さが近い構成の一実施例を示す図である。
図11】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分と底部分が木質で構成されたパターンにおいて、やや縦長の構成の一実施例を示す図である。
図12】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、蓋部分と底部分が木質で構成されたパターンにおいて、縦長の構成の一実施例を示す図である。
図13】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、側面の一部が木質で構成されたパターンにおいて、やや縦長の構成の一実施例を示す図である。なお、図示はしないが、蓋材の周囲には、容器との密閉性を高めるためのパッキンなどが適宜配置されている。
図14】本発明の熟成容器の構成を示す図であって、側面の一部が木質で構成されたパターンにおいて、角瓶を使用した場合の構成の一実施例を示す図である。なお、図示はしないが、蓋材の周囲には、容器との密閉性を高めるためのパッキンなどが適宜配置されている。
図15図7の容器にアルコール飲料が充填された状態を示す図であって、熟成容器を縦置きにして保管した場合の様子を示す図である。
図16図8の容器にアルコール飲料が充填された状態を示す図であって、熟成容器を横置きにして保管した場合の様子を示す図である。
図17図10の容器にアルコール飲料が充填された状態を示す図あって、熟成容器を縦置きにして保管した場合の様子を示す図である。
図18】本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、樽における液比の算出過程の一実施例を示す図である。
図19】本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、本発明の熟成容器において、木質が蓋部分だけの場合における熟成容器を縦置きにして保管した場合の液比の算出過程の一実施例を示す図である。
図20】本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、本発明の熟成容器において、木質が蓋部分だけの場合において、熟成容器を横置きにして保管した場合の液比の算出過程の一実施例を示す図である。
図21】本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、本発明の熟成容器において、木質が蓋部分と底部分の場合における熟成容器を縦置きにして保管した場合の液比の算出過程の一実施例を示す図である。
図22】本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、本発明の熟成容器において、木質が側面部分だけの場合における熟成容器を縦置きにして保管した場合の液比の算出過程の一実施例を示す図である。
図23】樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に、所定の成分について、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、アセトアルデヒドなど未成熟香、及びジメチルスルフィドなどの硫化物等の未熟成分の吸着・蒸散、及び酸化等による消失の様子の一実施例を示す図である。様子の一実施例を示す図である。
図24】樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に、所定の成分について、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、バニリン(バニラの香り)など、主に木質系の成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。
図25】樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に、所定の成分について、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、酢酸エチル(フルーティーな香り)など、主にエステル系の成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。
図26】樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に、所定の成分について、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、主にタンニンおよびタンニン由来のフロバフェン等の色味成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。
図27】樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、図24図27の成分ごとに熟成が進む様子を統合した総合的な熟成過程の様子を示す図である。
図28】ウイスキーなどの蒸留酒の製造工程、及び熟成容器への充填の工程の一実施例を示す図である。
図29】樽の情報管理テーブルである。
図30】樽と熟成容器との紐づけテーブルである。
図31】樽及び熟成容器に付すICタグ又はタグ又はシール又はパッケージ印刷の内容を示す図である。
【0027】
<用語の説明>
◇木質とは、その性質が樹木に類するものの総称であり、木材、板などを含む。
◇ニューポットとは、まだ熟成や調整を施す前の、蒸溜したてのウイスキーの原液のことをいう。ニューポットは、まだ琥珀色にはなっておらず、無色透明の原液である。
◇原酒とは、一般的には、ニューポットの熟成を完了し、瓶詰め前の樽に貯蔵されたものをいうが、本明細書では、ニューポットを熟成させる過程の途中経過のものも含めて原酒と呼ぶこととする。
◇原酒又はニューポットの成分には、エステル類、アルコール類、有機酸類が含まれる。エステル類としては、酢酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリン酸エチルなどが含まれる。アルコール類としてはエタノール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコールなどが含まれる。有機酸類としては、酢酸、脂肪酸などが含まれる。
【0028】
◇アルコール飲料とは、ウイスキーやウオッカ、焼酎、泡盛などの蒸留酒のほか、ビールや日本酒、ワインなどの醸造酒など、アルコール(主にエタノール)を含む飲料をいう。また、本発明は熟成容器に関する発明であるので、特に断りがない場合、ウイスキーのニューポットのように「熟成前の状態」から、「熟成中の原酒」ないし「熟成が完了した状態の原酒」も含むものとする。
◇エステル化とは、熟成過程において、水酸基を持つエタノールとカルボキシル基を持つカルボン酸とが共存すると、水分子が抜けること(脱水縮合)によってエステル成分が生成されることをいう。
◇エステル成分とは、エステル類と同義であり、熟成過程において、どの成分がどのような役割(香り、風味、色)を有しているかの文脈で説明する場合に、エステル類をエステル成分と言い換えたものである。
◇酢酸エチルは、炭化水素系のエステル成分の一種であり、熟成過程で酢酸とエタノールが反応して生成され、フルーティーな香りを発する。
【0029】
◇アセタール化とは、熟成過程において、アセトアルデヒドがエタノールと反応してアセタールという香気成分に変化すること等をいう。
◇樽由来の木質成分には、酢酸、コハク酸などの精油成分など、樽材中の木質の成分がほぼそのままの形で溶けだしてくるもの(抽出成分と呼ばれる)と、リグニン、タンニンなど樽材中の木質の分解されにくい高分子成分がエタノールによって長い時間をかけて徐々に分解され溶けだしてくるものがある(エタノリシスと呼ばれる)。
◇樽材の木質による未熟成分の吸着・蒸散とは、アルコール飲料が木質に浸潤する際に、アルコール飲料に含まれる未熟成分が、木質に吸着され、かつ、木質からの蒸散によって外部に放出されて減少することをいう。
◇未熟成分の消失とは、蒸散以外の樽内での化学反応である酸化等によって硫黄臭などを出さない物質に変化することで、未熟成分が減少ないし消失することをいい、樽材の木質による未熟成分の吸着・蒸散とは区別される。
【0030】
◇リグニンは、植物の細胞壁に含まれる高分子(芳香族ポリマー)で、植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であり、木質素とも呼ばれる。リグニンは分解して甘い香りのバニリンに変化する。
◇バニリンは、甘い芳香をもつ芳香族アルデヒドの一つで、発見当初は、バニラ豆に含まれているコニフェリンが発酵により分解してバニリンになり、豆の表面に結晶として析出することで得られた。現在では、安価なリグニンを原料として生産されるものが多い。水には溶けにくいが、エタノール(エチルアルコール)などの有機溶媒にはよく溶ける。樽づくり工程でチャーリングを行うときにもリグニンが分解してバニリンが生成されるので、樽から直接溶け出すバニリンもある。
【0031】
◇タンニンは、木質に含まれる成分の一つであり、樽材の木質に原酒のアルコール成分が浸潤することで分解される共に、木質から原酒に溶出される。タンニンは分解されやすく、加水分解などによって、エラグ酸などを主要成分とするポリフェノールに変化する。また、生成したポリフェノールは貯蔵中に酸化重合反応により、重合して不溶性、褐色のフロバフェン(色素)を生じる。これがウイスキーを褐色に変化させる元となる。
【0032】
◇アセトアルデヒドは、原酒中のエタノールが酸化することで生成される。生臭く生ごみのような臭い、又は刺激的な青くさい臭いを発することから、ウイスキーなどの熟成においては、未熟成分又は未成熟香などと呼ばれる。ただし、希釈すると果実匂と感じられることもあり、熟成によって減少していくことで、複雑な香りを醸成する要素の一つとも考えられている。
◇ジメチルスルフィドは、ニューポットに含まれる硫化物の一種で、微量でも生臭い野菜のような臭いがすることから、ウイスキーなどの熟成においては、未熟成分又は未成熟香などと呼ばれる。酸化によってジメチルスルホキシドになって臭いが弱まることや、木質からの吸着・蒸散によって外部に放出されることから、その量は熟成の状態によって大きく左右されるといえる。
【0033】
◇マチュレーションピークとは、熟成過程において、香りや風味などのバランスが最もよい状態のことをいう。熟成の初期は原酒の成分が前面に出て、香りも刺激的で味も荒いが、熟成が進むにつれ、樽材の木質成分の作用及び成分どうしの化学反応(酸化、エステル化、アセタール化など)によって、フルーティーで華やかな香りとまろやかな味わいを有するに至り、マチュレーションピークに達する。その後、過度な酸化や樽材の木質成分の過度な作用により、香りや風味のバランスが劣化していく傾向がある。
【0034】
◇格納部とは、アルコール飲料を収納するための手段であって、ガラスや樹脂などで構成されている。格納部は、適宜、光を遮る構成であってもよいし、外部から内部を観察可能とするため、全部又は一部が透明な部分で構成されていてもよい。
◇容器の体積又は内容量とは、樽又は熟成容器の体積、および格納するアルコール飲料の内容量(体積)をいう。なお、アルコール飲料はそのアルコール度数によって比重が異なり、アルコール飲料ないし原酒の重量を算出する際に、比重を考慮することもできる。
【0035】
◇浸潤体積とは、原酒が樽材などの木質に浸潤した部分の木質の体積のことをいう。
◇浸潤重量とは、浸潤体積に相当する、当該木質の乾燥重量をいう。
◇液比とは、原酒の体積と木質の浸潤体積の比(原酒の体積/木質の浸潤体積)、又は、原酒の重量と木質の浸潤重量の比(原酒の重量/木質の浸潤重量)をいう。
液比が大きい場合は、木質に浸潤した体積(又は重量)に対し原酒の体積(又は重量)が大きいことを意味するので、木質の量が原酒に対して少ないことを意味し、熟成が進みにくいことを示唆する指標となる。逆に、液比が小さい場合は、木質に浸潤した体積(又は重量)に対し原酒の体積(又は重量)が小さいことを意味するので、木質の量が原酒に対し多いことを意味し、熟成が進みやすいことを示唆する指標となる。
【0036】
◇チャ―リングとは、アルコールを熟成する樽材の木質の内面に火を直接あてることで、木質の表面付近を焦がして炭化させる急激かつ強度の熱処理をいう。主に、ウイスキーなどの蒸留酒に用いられている。
チャ―リングのレベルは一般的に0~4の5段階程度とされることが多く、焼き付けの温度にもよるが、レベル1は約20秒間の焼き付け、レベル2は25~30秒、レベル3は35~40秒、レベル4は40秒~1分が目安とされる。チャーリングのレベルは樽工房ごとにそれぞれの基準があるため、標準的なチャーリングのレベルについての基準はない。焼き付けの時間が長いほど、炭化した層が厚くなり、木質の種類にもよるが、レベル1の場合、炭化層の厚みは約2mm、レベル4の場合は約4mmの厚みになるといわれている。
チャーリングによって、木の成分であるセルロース、ヘミセルロース(アラビノースやキシロースなどを含む)などの高分子成分が分解されて、マルトールやフルフラールなどの香り成分となり、それらが熟成中に酸化されて有機酸、さらにはエステル生成へと進むので、香りや風味を決定する重要な要素となる。
また、木質から溶出したリグニンは、熟成過程で分解してバニリンに変化するが、チャーリングによって木質中のリグニンが分解され、バニリンが生成されて、原酒中に溶出する作用も期待できる。
【0037】
◇トースティングとは、火で炙って樽材を曲げる際にも利用され、遠火の遠赤外線で焼き付けるゆっくりとした加熱の熱処理である。主にワインなどの醸造酒用いられるが、ウイスキーなどの蒸溜酒に用いることもできる。ゆっくりと時間をかけて加熱するため、木質の表面から7mmの厚みになることもある。トースティングの程度によって樽板の化学成分が変化するのは、チャ―リングと同様である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。
なお、説明中の構成や数値はあくまで例示であって、他の形状や配置にも適用できる。また、本発明の熟成容器は様々な態様で構成することができる。
また、本発明の熟成容器は、ウイスキーやウオッカ、焼酎、泡盛などの蒸留酒のほか、ビールや日本酒、ワインなどの醸造酒などのアルコール飲料にも適用できるが、主に、ウイスキーなどの蒸留酒を例にして以下説明する。
【0039】
1.ウイスキーづくりの現状と開発目標について
現状、世界各地のウイスキーづくりの現場では、二条大麦やとうもろこしなどの原料、及び、樽の素材となる木材など、ウイスキーの原材料について、その全てに蒸溜所が存在する地域のものを用いているところは皆無の状況である。
例えば、スコットランド地方などでは、大麦などの原材料はウイスキーの製造地域でとれたものを利用しているが、樽に使用する木材は、他の地域の木材を利用しているのが実情である。
【0040】
そこで、本発明のプロジェクトチーム(醸造事業者、蒸溜事業者、各種試験機関、研究機関、原料生産業者、木材製造業者、樽製造業者などによる合同チーム)は、北海道という地域性を生かして、ウイスキーの原料として北海道産の二条大麦やとうもろこしなどを利用すると共に、原料の栽培環境の整備、樽材として用いる木材の生産、および樽造りの工房、および本発明の熟成容器に至るまで、全て北海道産のものを用いて、ウイスキーの製造販売を行うという、世界のどこにもないウイスキーづくりを目指すこととした。
【0041】
より具体的には、例えば、二条大麦やとうもろこしなどの栽培圃場について、北海道内の農家や農業協同組合と連携して、当該作物を植えるまえに同じ場所で育てていた前作の作物の管理、施肥や有機物の活用により、土壌環境の整備を行うとともに、大麦の前処理としての酵素活性を高めるためのモルティング試験、発酵段階の醸造試験、蒸溜試験を踏まえて、品種選定(でんぷんやたんぱく質のバランス)と栽培方法の確立を目指している。
また。北海道の各地域の木材を活用して樽を製造するとともに、樽の製造の際に余った端材を用いて小型の熟成容器を製造することで、木材の有効活用を促進し、北海道の森林組合及び木材業者の発展、および樽づくりの技術の継承などを通じて、地域全体の活性化、及び持続的な社会を構築することを目標としている。
【0042】
さらに、ウイスキーの熟成用の樽の素材についても、意欲的な挑戦として、一般的なミズナラ、ホワイトオークなどに留まらず、各種の道産木材として、エゾヤマサクラ、イタヤカエデ、オニグルミ、カラマツ、アカエゾマツ、トドマツ、シラカンバなどの木材に対し、チャ―リングの工夫、ヤニの除去技術の開発などにより、様々な木材を活用して様々な風味のウイスキーづくりを目指している。
【0043】
また、樽による熟成とほぼ同様の熟成を可能とする熟成容器を利用したビジネスモデル(熟成容器と樽を紐づけて、熟成容器と同じニューポットを熟成した樽から瓶詰めした原酒の購入を促進するビジネス)の確立により、アルコール飲料の新たな市場の創造を目指している。
また、最終的には、以上のようなウイスキーなどの蒸留酒の製造の範疇に留まらず、アルコール飲料とも相性の良い食材関連事業者(飲食店、食肉加工業者など)など他の業種とも連携するほか、モノづくりの現場を包含したエコツーリズムの確立など観光業とも連携し、ウイスキーなどの蒸留酒を核としたヒト・モノ造りの交流の場を創造することを目的としている。
【0044】
2.熟成用の樽の構成について
まず、アルコール飲料の熟成用の樽100の構成について、図1を用いて説明する。アルコール飲料の種類によって多少の差はあるが、樽100は、概ね、図1のような構成を有している。
【0045】
樽100は略円柱状の形状をしており、樽材となる木材(側板)を隙間なく組み合わせて構成されている。
また、強度を保つために、帯鉄150で周囲を締めつけている。
通常、樽を横にして保管、熟成するため、図1の態様に対応して各部位を命名し、上から順に、側板(上部)110、側板(胴部)120,側板(下部)130と呼ぶこととする。
【0046】
各部の寸法は、原酒を保管、熟成する際に、内側の寸法が重要であることから、鏡板140の内径φ1、樽の中央部分の最大内径φ2、内側の奥行dを表記している。
なお、この場合、平均内径φaはφa=(φ1+φ2)/2で表すことができる。また、図示はしないが、樽の内側の平均半径rはr=φa/2で表すことができる。
各部の実際の寸法は、樽の内容量によって変動するが、内径は40~80cm程度、内側の奥行は60~140cm程度のものが用いられることが多い。また、樽材の木質の厚さは、樽の内容量によって、強度等を踏まえて設定されるが、概ね2~4cm程度の厚さのものを用いることが多い。
【0047】
3.アルコール飲料の熟成のメカニズム
次に、アルコール飲料、主にウイスキーの熟成のメカニズムについて、図2を用いて説明する。
図2は、樽におけるアルコール飲料の熟成の様子を示す概念図であって、樽を横から見た断面図の一実施例を示す図である。なお、図2では、主に、ウイスキーなどの蒸留酒の例を挙げたが、ワインなどの醸造酒を含む他のアルコール飲料でもほぼ同様である。
【0048】
3-1.原酒に含まれる成分どうしの様々な化学反応による熟成
ウイスキーの発酵モロミには、原料の大麦麦芽由来の成分、発酵由来の成分など、非常に多くの成分が含まれている。このような多様な成分を含む発酵モロミを蒸留することで、多様な揮発成分が取り出され、これらが原酒の特徴を決定するとされており、原料の選択及び発酵工程及び蒸留工程の工夫などは、蒸留所の個性が生かされる部分である。
【0049】
原酒に含まれる香りに関与する成分としては、エステル類、アルコール類(エタノールなど)、有機酸類(酢酸、脂肪酸)、フェノール類などがある。
原酒を熟成する過程では、エタノールの酸化反応により、エタノールからアセトアルデヒド、酢酸が生成される。また、エタノールのアセタール反応により、アセタールが生成される。また、酢酸とエタノールのエステル反応により酢酸エチルが生成される、といった化学反応が連鎖的に発生する(図2のト)。
【0050】
3-2.色の変化による熟成
蒸留したてのニューポットは無色透明であるが、初めの比較的短い時間で急速に色づき、その後も徐々に、色度を増していく。これは、原酒が樽材の木質に浸潤するとともに(図2のハ)、樽由来成分が原酒に溶け込んでいくこと(図2のニ)、によるものである。
色は、時間経過とともに、淡黄色から黄褐色に、さらに琥珀色になり、赤みを帯びることが知られている(図2のヘ)。この色の変化には、外部の酸素の存在が不可欠である。貯蔵中に酸素の浸潤が充分でないと、原酒は黒みを帯びることが知られており、樽材の木質を介した空気の出入り(樽の呼吸)(図2のリ)、も重要な役割を果たしている。
【0051】
3-3.樽由来の木質成分による熟成
樽由来の木質成分には、酢酸、コハク酸、ラクトンなどの精油成分など樽材中の成分がほぼそのままの形で溶けだしてくるものと、セルロース由来成分、ヘミセルロース由来成分、リグニン由来成分、タンニン由来成分など樽材中の分解されにくい高分子成分がエタノールによって長い時間をかけて徐々に分解され溶けだしてくるものがある(エタノリシス)。
【0052】
また、樽を作る際に、樽材の内側を高温で急激に焼くチャーリングという操作、及び、樽材全体をゆっくり加熱するトースティングという操作がある。チャ―リングによって、樽材中の木質のセルロースやヘミセルロースがマルトールやフルフラールなどに変化し香味を豊かにすると共に、それがさらに酸化されて有機酸、さらにはエステル生成へと進むことが知られている。
【0053】
リグニンは年月とともに分解して甘い香りのバニリンに変化する(図2のホ)。
なお、樽づくり工程でチャーリングを行うときにもリグニンが分解してバニリンが生成されるので、バニリンは、樽から直接溶け出すものもある。
【0054】
3-4.その他の熟成過程
また、水とアルコールの会合により、エタノールの状態変化が起こり、あたりの弱いエタノールへと変化し、まろやかさを醸成していく(図2のチ)。
より詳細には、アルコール飲料(エタノール水溶液)は、水分子とエタノール分子、及び水分子とエタノール分子の集合体のクラスター(集合体)で構成されているが、熟成が進むと、クラスターの比率が高まるとともに、クラスターの規模も大きくなり、かつ、クラスターの規模も比較的均一化するため、味は角が取れて「まろやか」な口当たり、あるいは「あたりの弱い」口当たりという言葉で表現される状態に変化する。
【0055】
また、蒸留中に、原料や含硫アミノ酸に由来するジメチルスルフィドなどの硫化物が生成されるが、これらは、特有の臭いが発生し風味を劣化させる要因となるため、未熟成成分と呼ばれている。これらの硫化物等の不要な未熟成分は、樽材の木質によって効果的に吸着され外気中へと蒸散される(図2のイ、ロ)ことにより効果的に除去されるため、外気とどのくらいの面積で接しているか(木質の面積)は重要なパラメータとなる。
【0056】
ここで、アルコール飲料の量については、投入するニューポットの量を満杯にするのではなく適量を投入することや、ニューポットを投入後、空気の出入り(樽の呼吸)等により、アルコール分などが蒸発して減量することにより、樽の内側の上部に空間ができるので、図2に示すように、側板(上部)110と、側板(胴部)120、側板(下部)130とでは、アルコール飲料の浸り方が異なっていることがわかる。
【0057】
本発明の研究チームは、アルコール飲料の浸り方が樽の部位によって異なることに注目するとともに、図2のイ~チ(特にハとニ)の反応が、樽を構成する部位によって異なることに注目した。具体的には、樽を寝かせて貯蔵するときの位置で見て、上部を構成する側板(上部)110、側面を構成する胴側(胴部)120、底部を構成する側板(下部)130によって、原酒の浸潤ないし浸潤の具合が異なり、この関係を小型の熟成容器に置き換える際の重要なパラメータになっていることに注目して、樽と略同一の熟成が可能な熟成容器の開発を進めた。
【0058】
4.原酒の木質への浸潤状態について
4-1.概要
次に、樽材などの木質に対し、原酒がどの程度浸潤するかについて、図3図4を用いて説明する。
図3は、木質に原酒の成分が浸潤する状態を示す図であって、側板(胴部)120や側板(下部)130などのように、原酒と直に接している場合の浸潤状態の一実施例を示す図である。
図4は、木質に原酒の成分が浸潤する状態を示す図であって、側板(上部)110や熟成容器の蓋などのように、原酒と直に接していない場合の浸潤状態の一実施例を示す図である。図4(A)は木質の厚みが36mmの場合の一例、図4(B)は木質の厚みが15mmの場合の一例を示す図である。図4では、図3と比較して、原酒が木質に浸潤する厚みがやや薄い様子を示している。
なお、鏡板140については、図1の鉛直方向で見て上部は原酒と直に接していないので、図4のケースと同様であるが、それより鉛直方向で見て下方にある部分は、原酒と直に接しているので、図3と同様である。
【0059】
樽材の木質の厚さは、樽の内容量によって、強度等を踏まえて設定され、概ね1.5~4cm程度の厚さのものを用いることが多いが、ここでは3.6cmのものを用いた場合について説明する。
後述のように、原酒の木質に対する浸潤深さは10mm程度なので(図5参照)、それ以上の厚みがあれば、原酒の木質成分への浸透(図2のハ)、及び木質成分の分解・溶出(図2びニ)の機能、および、硫化物等の不要な未熟成分の吸着・蒸散(図2のイ、ロ)、空気の出入り(樽の呼吸)(図2のリ)などの作用は十分に確保できると考えられる。
また、熟成容器の蓋材の厚さは、樽材における熟成のメカニズム(図2のイ~リ)および、原酒の木質への浸潤深さを考慮して、10~20mm程度のものを用いることが多いが、これに限定されない。
【0060】
木質に対しどの程度の深さまで原酒が浸潤するかは、熟成過程において、リグニンやポリフェノール(タンニン)などの木質成分が、浸潤した原酒のアルコール分などによって(図2のハ)、樽内の原酒中に溶出する程度に影響するので(図2のニ)、結果的に、色や香り成分の熟成に影響を与える。
また、原酒が木質への浸潤する際に、酸化化合物、硫化物等の不要な未熟成分が木質に吸着され(図2のイ)、主に、原酒が浸潤した部分の外側の部分で行われる空気との接触を介して、未熟成分が樽の外側に蒸散されるという作用(図2のロ)にも影響を与える。
【0061】
また、原酒が浸潤した体積に応じて、樽の外側との空気の交換(樽の呼吸)(図2のリ)にも影響を与えるとともに、酸化などの成分どうしの様々な化学反応(図2のト)にも影響を与える。
また、原酒中のアルコールが木質に浸潤して、樽の外側に蒸散することで、アルコールの濃度が変化し、水とアルコールの会合によるアルコール成分の状態変化(図2のチ)にも影響を与える。
【0062】
そこで、本発明の研究チームは、「原酒が樽材などの木質に浸潤する深さ」というパラメータに注目し、樽を構成する部位に応じて、浸潤する深さが異なるのではないかという仮説を立てて検証した。
また、樽による熟成と熟成容器における熟成の関係について、従来技術のV/S比とは異なる関係、例えば、「原酒が木質に浸潤する深さも考慮して、所定の量のアルコール飲料の熟成の進行度を定式化すること」ないし「原酒が木質に浸潤する深さが樽の部位ごとに異なることに基づいて、所定の量のアルコール飲料の熟成の進行度を定式化すること」により、「樽における熟成の状態と、熟成容器における熟成の状態を近づけることができるのではないか」という仮説を立てて検証することとした。
【0063】
そして、検証の結果、原酒が樽材の木質に接すると、木質の内部に浸潤するが、浸潤する深さ(以下「浸潤深さ」と略す)は樽の部位によって異なることが判明した。
具体的には、側板(胴部)120や側板(下部)130などのように、原酒と直に接している場合は、かなり奥深くまで浸潤するが(図3参照)、側板(上部)110や熟成容器の蓋などのように原酒と直に接していない場合はあまり奥まで浸潤しないことが判明した(図4参照)(鏡板140についても、原酒と直に接する/接しない部分において同様である)。
なお、この場合において、原酒が木質に浸潤する割合は、木質の表面から内部まで均一ではなく、原酒に接している部分で最大であり、木質の奥に行くに従って低下することに注目できる。
【0064】
そこで、木質の内部への浸潤状態を数値で表すために、木質の乾燥重量に対して原酒が浸潤する木質の割合を示す指標(以下「浸潤率」という)を用いることとした。
原酒が木質に浸潤する割合を浸潤率で表現することにより、木質が原酒に接している部分で、浸潤率が約1.0(木質がひたひたになる程度に浸潤)、奥に行くにしたがって0.9、・・・、0.5、・・・、0.1(わずかに浸潤している状態)などのように低下していくことを示すことができる。
そして、浸潤率が1.0と仮定した場合と等価な浸潤深さの数値として、浸潤深さの実効値という概念を定立することができ、その値をPdev(Penetration depth Effective value)と表現することとする。
【0065】
4-2.木質への浸潤状態の詳細
原酒の浸潤率は、樽材に用いる木質の素材、原酒のアルコール度数、及び温度や湿度などの環境によっても多少変動するが、一定の熟成期間を経た場合、樽を構成する部位によって、原酒の浸潤率が異なることが判明している。
図5は、原酒の成分が樽材を構成する木質に浸潤する状態を示す図であって、原酒の成分が木質に浸潤する深さが、樽材の部位ごとにそれぞれ異なることを示す図である。横軸の樽材の内側からの距離は、原酒が浸潤した深さを示している。
【0066】
図5によれば、側板(胴部)120では、樽材の内側から約3mmまでは浸潤率が約1.0と高く、樽材の内側から約7mmの箇所で浸潤率が0.6程度まで低下し、以降、樽材の木質の奥に行くにしたがって徐々に浸潤率が低下していくことがわかる。
同様に、側板(下部)130では、樽材の内側から約3mmまでは浸潤率が約0.8弱と比較的高く、樽材の内側から約7mmの箇所で浸潤率が0.5程度まで低下し、以降、樽材の木質の奥に行くにしたがって徐々に浸潤率が低下していくことがわかる。
【0067】
また、側板(上部)110は、原酒と直に接しているわけではないが、原酒が気化して浸潤することにより、一定程度の浸潤作用がみられることが判明している。具体的には、樽材の内側から約3mmまでは浸潤率が約0.6弱と比較的高く、樽材の内側から約7mmの箇所で浸潤率が0.3程度まで低下し、以降、樽材の木質の奥に行くにしたがって徐々に浸潤率が低下していくことがわかる。
【0068】
この結果を概観してみると、側板(胴部)120の浸潤率が最も高く、次いで、側板(下部)130、側板(上部)110の順で浸潤率が低下することがわかる。
このような差異が生じる理由について完全に解明できたわけではないが、熟成が進むにつれて、生成された各成分が底に沈殿することにより、同じく原酒に接している側板(胴部)120よりも、側板(下部130)の浸潤率が低くなる傾向を生み出しているものと考えられる。
他方、側板(上部)110については、原酒と直に接していないにも関わらず、相応に浸潤率が高く、原酒が気化していることによる作用、特にアルコールが気化していることによる作用により、原酒と直に接していなくても、相応の浸潤作用が期待できるためと推測される。
このほか、原酒の水圧や、樽内の上部の空間の気圧などの影響も考えられるが、浸潤率の状況さえ把握できれば十分であるので、これ以上の分析はここでは控えることとする。
【0069】
4-3.木質への浸潤深さの実効値の算出
10mm以上の深さの部位では、木質成分の溶出は少ないことが予想されること、および10mmを超える深さの浸潤率は低いことなどから、10mmまでの深さにおける浸潤深さの実効値を見積ることとする。
図6は、原酒の成分が木質に浸潤する深さの実効値を算定する仕組みを説明するための図であって、樽材の部位ごとに浸潤深さの実効値がそれぞれ異なることを示す図である。
【0070】
ここで、浸潤深さの実効値とは、仮に、木質への浸潤率が終始一定で、浸潤率が終始1.0とした場合にどの深さまで浸潤しているかを意味し、後述する液比などの計算処理を簡便に行うために導入した数値である。
図6によれば、側板の胴部、下部、上部など、樽の部位によって浸潤深さの実効値算定の基礎となる面積が異なり、この面積に基づいて、浸潤率が終始1.0とした場合の浸潤深さの実効値を算定すると、胴部で略7.0mm、下部で略5.0mm、上部で略4.0mmと評価できることがわかる。
以降、浸潤深さの実効値を基に、原酒が浸潤した部分の木質の体積及び重量、液比などを算出することとする。
【0071】
5.本発明における熟成容器の構成
5-1.熟成容器の構成
図7図14は、本発明の熟成容器10の構成を示す図である。
熟成容器10は、アルコール飲料を格納する格納部20で構成される容器、及び、木質で構成された、蓋材(蓋)30又は及び蓋材(底)40、又は及び蓋材(側面)50などによって構成されている。
【0072】
図7図9は蓋部分だけが木質で構成された態様の熟成容器の構成を示しており、図10図12は蓋部分と底部分が木質で構成された態様の熟成容器の構成を示しており、図13図14は側面の一部が木質で構成された態様の構成を示すものである。
いずれの態様においても、容器のサイズ、蓋や底部分又は側面部分の木質のサイズは任意のサイズに設定することができ、容器の形状についても、円柱状、角瓶状などのほか多角形状の形状を採用することができる。
例えば、直径の方が深さより大きな態様(図示せず)、直径と深さがほぼ同じ態様(図7図10)、やや縦長の態様(図8図11図13)、縦長の態様(図9図12)など、様々な態様を採用することができる。
【0073】
なお、図7などでは、蓋材(蓋)30の内径と、熟成容器10の格納部20の内径とが略同一であると仮定し、後述の各種パラメータや液比などの指標の計算を簡略化して説明するようにしたが、蓋材(蓋)30の内径と、熟成容器10の格納部20の内径はそれぞれ異なっていてもよく、自由に設定することができる。
熟成容器の実際の寸法は、例えば、蓋材(蓋)30の内側の半径rが2~6cm程度、奥行きが5~20cm程度を用いることが多いが、これに限定されない。
【0074】
格納部20は、アルコール飲料を収納するための手段であって、ガラス、樹脂製など密封性の高い材質であればどのような材質であっても構わない。
ガラスや樹脂は、適宜、光を遮る構成であってもよいし、色の変化など、外部から内部の状態を観察可能とするため、全部又は一部が透明な部分で構成されていてもよい。
【0075】
蓋材30、40、50は、ミズナラなどの木材を利用して加工成型されたもので、樽と同じような熟成を行うことを目的として、後述のような計算過程を経て、厚み、直径、面積などのサイズが決定される。
木質の蓋や底、側面部分は適宜、ねじ込み式の加工が施されていてもよいし、液漏れを防ぐと共に密閉性を高めるために適宜パッキンなどと組み合わせて用いてもよい。
【0076】
なお、本発明のプロジェクトチームは、各種試験場、及び二条大麦やとうもろこしなどの原料を生産する事業者(農家、農業協同組合)と連携することに加え、森林組合、木材業者、木材加工業者、樽製造業者、アルコール類製造業者などからなるチームを構成し、樽を製造する過程で余った端材などを活用して、熟成容器の木質部分を製造することとし、地域全体の活性化及び、持続的に発展可能な社会を目指している。
【0077】
5-2.原酒を充填した状態の熟成容器
図15図17は容器に原酒が充填された状態を示す図である。原酒は、容器の容積のほぼ全部を埋めるように充填してもよいし、上部に空間ができるように容器の容積の8~9割の量を充填するようにしてもよい。
なお、原酒を充填した熟成容器は、後述のように、同じニューポットないし原酒を貯蔵した樽との紐づけが行われており、紐づけした樽のサイズや材質と同じ熟成過程を経るように内容量と蓋などの木質のサイズを調整している。
原酒を充填した熟成容器は、図15図17のように立てた状態で保管するほか、図16のように横に寝かせた状態で保管することもできるが、樽と同じ熟成過程を経るように、販売時の取扱説明書又はウェブページのアナウンスによって、立てた状態または寝かせた状態のいずれかで保管することが推奨されるようにしてもよい。
【0078】
6.樽と熟成容器における熟成過程を略同一にするための仕組み
6-1. 樽における熟成に関するパラメータ及び指標の算出
前述のように、原酒が木質に浸潤する深さと熟成とは密接な関係を有しており、両者の関係をよく表現するために、樽に貯蔵した原酒の体積と原酒が浸潤する木質の体積との関係、又は及び、樽に貯蔵した原酒の重量と原酒が浸潤した木質の重量(木質自体の乾燥重量)との関係にもとづいて、樽や熟成容器の構成を決定するための指標として、液比という概念を導入することとした。
【0079】
ここで、液比は「樽に貯蔵した原酒の体積/原酒が浸潤する木質の体積」又は、「樽に貯蔵した原酒の重量/原酒が浸潤した木質の重量(木質自体の乾燥重量)」で定義される。
前者の場合は、体積比で表現するため、原酒が木質に浸潤して木質成分が分解・溶出する際の「原酒が木質に浸潤する側面」に重きを置いた指標となる。
他方、後者の場合は、重量比で表現するため、原酒が木質に浸潤して木質成分が分解・溶出する際の「木質成分が分解・溶出する側面」に着目した指標となり、原酒の比重や木質の材質(木の種類や比重)も考慮することにつながる。
【0080】
なお、液比を重量比で表現する場合は、木質の比重によって液比の数値が変動するので、木質の比重の影響を受けて液比の数値が変動することを避けたい場合には、体積比で表現した液比を用いるとよい。
いずれにしても、これら2つの指標は、体積比で把握するか、重量比で把握するという差異が生じるが、いずれも、原酒の量と浸潤する深さを考慮するものであり、原酒が浸潤する深さと熟成との密接な関係をよく反映する定式化といえる。
【0081】
なお、後述のように、本発明の液比という指標に基づいて構成した熟成容器10の場合、熟成期間の経過に応じて、容器内部の原酒の熟成過程が樽の熟成過程における原酒中の成分の推移とほぼ同様の推移をたどることが確認できており(図23図27参照)、液比という指標に基づくことにより、従来の指標であるV/S比よりも適切に熟成容器の構成を決定することができることが判明したので、以下、本発明における液比等の指標の算出過程の一例について説明する。
【0082】
まず、図18を用いて、樽における熟成に関するパラメータ及び指標(樽に貯蔵した原酒の体積、原酒が浸潤する木質の体積、樽に貯蔵した原酒の重量、原酒が浸潤した木質の重量(木質自体の乾燥重量))の算出過程の一実施例について説明する。
図18のリストには、容器(図18では樽)の大きさや、樽材として用いる木質の厚みや比重、及び貯蔵する原酒の量(体積)に関する情報などが記載されている。
樽材の木質の厚さは、樽の内容量によって、強度等を踏まえて設定されるが、50リットルを超える大容量の樽の場合、概ね1.5~4cm程度の厚さのものを用いることが多い。
【0083】
ここで、リスト中の(樽全体の)浸潤深さの実効値は、原酒の内容量が内容積の9割程度の場合、面積比で側板全体の約2割が空間を介して原酒と接している状態となり、側板全体の約6割が胴部で原酒と直に接している状態となり、約2割が下部で原酒と直に接している状態になることを基礎として、それぞれの部位で浸潤する深さが異なることを、面積比で重みづけして加重平均した結果を用いることとしている。なお、鏡板の部分については、側板と同様の比率で、原酒と直に接する部分と直に接しない部分が分布すると仮定した。
この場合、例えば、(樽全体の)浸潤深さの実効値Pdev(Penetration depth Effective value)=0.7(側板(胴部)の浸潤深さの実効値)×0.6+0.5(側板(下部)の浸潤深さの実効値)×0.2+0.40(側板(上部)の浸潤深さの実効値)×0.2=0.6cmと算出できる。
【0084】
そのうえで、原酒の液比について、体積比を用いる場合には、浸潤した部分の木質の体積Pv(Penetration volume)を算出すると共に、原酒の体積Rv(Raw volume)を算出して、最終的に、Rv(原酒の体積)/Pv(浸潤した部分の木質の体積)を算出している。
あるいは、原酒の液比について、重量比を用いる場合には、浸潤した部分の木質の(乾燥)重量Pdw(Penetration dry weight)を算出すると共に、原酒の重量Rw(Raw weight)を算出して、最終的に、液比Rw(原酒の重量)/Pdw(浸潤した部分の木質の重量)を算出している。
図18によれば、一般的なウイスキー用の貯蔵用の樽の液比は、樽のサイズや樽材の材質によっても多少変動するが、体積比を用いる場合には、略16となり、十数%程度のばらつきを考慮して、略14~18程度を想定することが望ましい。
あるいは、重量比を用いる場合には、(木質の比重が0.5の場合)略28となり、十数%程度のばらつきを考慮して、略25~30程度を想定することが望ましい。
なお、従来技術におけるV/S比を算出すると略9になることがわかる。
【0085】
以下、樽における液比の計算結果、及び従来技術のV/S比の計算結果を基礎として、所定のサイズの熟成容器における液比とV/S比をそれぞれ算出し、略同一の熟成過程を経ると想定される熟成容器のサイズについて検討することとする。
【0086】
6-2.熟成容器における熟成に関するパラメータの算出
次に、図19図22を用いて、熟成容器における熟成に関するパラメータ及び熟成容器の構成を決定するための指標(熟成容器に充填する原酒の体積、原酒が浸潤する木質の体積、熟成容器に充填した原酒の重量、原酒が浸潤した木質の重量(木質自体の乾燥重量)、及びこれらのパラメータに基づいて導出する液比など)の算出について説明する。
なお、樽の中で熟成中に水分やアルコール分が蒸発し、毎年約2%の原酒が減少することを、天使が熟成に貢献した褒美にたとえて、天使の分け前と呼んでいるが、原酒の体積や重量の算定に際しては、樽詰めした時点、及び容器に充填した時点の体積や重量を基準としている。
【0087】
6-2-1.木質が蓋部分だけの場合であって、熟成容器10を縦置きした場合における熟成に関するパラメータ及び指標の算出
木質が蓋部分だけの場合におけるパラメータ及び指標の算出について、図19を用いて説明する。
図19は、本発明で定立した液比の算出過程を示す図であって、本発明の熟成容器10において、木質が蓋部分だけの場合における液比の算出過程の一実施例を示す図である。
なお、図19では、図7図9に示す態様の熟成容器10について、蓋材(蓋)30を鉛直方向上側に向けた状態の縦置きで保管した場合の算出結果を示すものである。
【0088】
図19の算出過程も図18における算出過程と同様であるため、詳細な説明は省略するが、熟成容器において、蓋材(蓋)30の部分だけが木質で構成されているので、原酒の浸潤深さの実効値Pdev=0.4(樽の側板(上部)に相当)で計算すると、図19のように、熟成容器10の態様を決定するための指標(熟成容器に充填する原酒の体積、原酒が浸潤する木質の体積、熟成容器に充填した原酒の重量、原酒が浸潤した木質の重量(木質自体の乾燥重量)など)を算出することができる。
【0089】
図19では、説明の簡便のため、蓋材(蓋)30及び熟成容器10の内側の半径rが3.5cmと一定で、熟成容器の内側の奥行dを6cm~10cmまで順次変化させた場合の計算結果を記載した。
なお、図19に示した容器のサイズ(内側の半径rや奥行d、木質のサイズ)は一例であって、様々な数値を採用することができ、図19の例に限定されない。
【0090】
図19によれば、前述のように、樽の場合、液比という指標として、体積比を用いる場合には略16、重量比を用いる場合には略28(木質の比重が0.5の場合)という数値になることを示したが、この数値とほぼ同一となる熟成容器10のサイズ(液比で判断する場合の適合値)は、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが7cmの態様(図19のA2タイプ)であることがわかる。
ここで、液比の数値については、体積比を用いる場合と、重量比を用いる場合のいずれを採用した場合でも、樽の熟成と同様の熟成過程を経ると推定される熟成容器のサイズ(液比で判断する場合の適合値)は同じであることがわかる。
なお、熟成容器の蓋材の厚さは、熟成容器のサイズ(内側の半径r、奥行dなど)とのバランス、及び樽材における熟成のメカニズム(図2のイ~リ)および、原酒の木質への浸潤深さを考慮して、10~25mm程度のものを用いることが多いが、これに限定されない。
【0091】
他方、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽の場合が略9であったので、この数値とほぼ同一となる熟成容器のサイズは、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが10cmの態様(図19のA5タイプ)であることがわかる。
【0092】
本発明の研究チームの各種実験によれば、従来技術の指標であるV/S比でみた場合の最適値(図19のA5タイプの熟成容器)の場合、内容量に対して、木質の量が少なすぎるために、樽の熟成よりもかなりゆっくりとした熟成になってしまうという不都合が生じることが分かった。
これは、縦置きで保管した場合、木質が蓋部分だけであるため原酒と木質とが直接に接触する状態ではないので、樽の側板(胴部)や側板(下部)と同じように熟成が進むわけではなく、原酒が浸潤する深さを考慮すべきところ、これを考慮せず、(原酒の量と)木質の面積だけで判断したことによる不都合であると評価することができる。
【0093】
6-2-2.木質が蓋部分だけの場合であって、熟成容器を横置きした場合における熟成に関するパラメータ及び指標の算出
次に、熟成容器において、蓋材(蓋)30の部分だけが木質で構成されている場合であって、容器を横置きにした場合におけるパラメータ及び指標の算出について、図20を用いて説明する。
図20では、図7図9に示す態様の熟成容器10について、蓋材(蓋)30を水平方向に向けた状態の横置きで保管した場合の算出結果の一実施例を示すものである。
【0094】
図19との比較では、原酒60と蓋材(蓋)30との位置関係が異なるため、この位置関係の相違をどのように考慮するかについて説明する。
熟成容器10を横置きにした場合、原酒と蓋材との位置関係については、樽の場合と比較した場合、側板(上部)110が約2割、側板(胴部)120が約8割という位置関係になっているとみることができる。
この場合、原酒の浸潤深さの実効値Pdev=0.4(容器の蓋部:樽の側板(上部)に相当)×0.2+0.7(樽の側板(胴部)に相当)×0.8=0.64と算出することができる。
以下、図19における算出過程と同様の計算を行うと、図20に示すような指標が得られる。
【0095】
ここで、樽の場合は、液比という指標として、体積比を用いる場合には略16、重量比を用いる場合には略28(木質の比重が0.5の場合)という数値になることを示したが、この数値とほぼ同一となる熟成容器10のサイズ(液比で判断する場合の適合値)は、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが11cmの態様(図20のA6タイプ)であることがわかる。
他方、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽の場合が略9であったので、この数値とほぼ同一となる熟成容器のサイズは、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが10cmの態様(図20のA5タイプ)であることがわかる。
【0096】
以上のように、このケースでも、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽における熟成とは異なる時間的推移をたどることが予想されるのに対し、本発明の指標によれば、樽における熟成とほぼ同じ時間的推移をたどることが期待できることがわかる。
【0097】
6-2-3.木質が蓋部分と底部分の場合であって、熟成容器を縦置きした場合における熟成に関するパラメータ及び指標の算出
次に、熟成容器において、蓋材(蓋)30の部分と蓋材(底)40の部分が木質で構成されている場合におけるパラメータ及び指標の算出について、図21を用いて説明する。
図21は、図10図12に示す態様の熟成容器10について、縦置きで保管した場合の算出結果の一実施例を示している。
この場合、原酒の浸潤深さの実効値Pdev=0.4(容器の蓋部:樽の側板(上部)に相当)×0.5+0.5(容器の底部:樽の側板(下部)に相当)×0.5=0.45と算出することができる。
以下、図19における算出過程と同様の計算を行うと、図21に示すような指標が得られる。
【0098】
ここで、樽の場合は、液比という指標として、体積比を用いる場合には略16、重量比を用いる場合には略28(木質の比重が0.5の場合)という数値になることを示したが、この数値とほぼ同一となる熟成容器10のサイズ(液比で判断する場合の適合値)は、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが16cmの態様(図21のB2タイプ)であることがわかる。
他方、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽の場合が略9であったので、この数値とほぼ同一となる熟成容器のサイズは、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが20cmの態様(図21のB4タイプ)であることがわかる。
【0099】
以上のように、このケースでも、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽における熟成とは異なる時間的推移をたどることが予想されるのに対し、本発明の指標によれば、樽における熟成とほぼ同じ時間的推移をたどることが期待できることがわかる。
【0100】
6-2-4.木質が側面部分の場合であって、熟成容器を縦置きした場合における熟成に関するパラメータ及び指標の算出
次に、木質が側面部分の場合におけるパラメータ及び指標の算出について、図22を用いて説明する。
図22は、図13図14に示す態様の熟成容器10について、縦置きで保管した場合に、側面に配置された蓋材(側面)50のサイズを変更した場合における算出結果の一実施例を示している。
この場合、蓋材が側面にあることから、樽の側板(胴部)に相当し、原酒の浸潤深さの実効値Pdev=0.7(容器の蓋部:樽の側板(胴部)に相当)を採用することが望ましい。
以下、図19における算出過程と同様の計算を行うと、図22に示すような指標が得られる。
【0101】
ここで、樽の場合は、液比という指標として、体積比を用いる場合には略16、重量比を用いる場合には略28(木質の比重が0.5の場合)という数値になることを示したが、この数値とほぼ同一となる熟成容器10のサイズ(液比で判断する場合の適合値)は、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが8cmの態様において、蓋材のサイズが、長さ5cm、幅5cmの態様(図22のC2タイプ)であることがわかる。
他方、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽の場合が略9であったので、この数値とほぼ同一となる熟成容器のサイズは、例えば、蓋及び容器の内側の半径rが3.5cmで内側の奥行dが20cmの態様において、蓋材のサイズが、長さ6cm、幅5cmの態様(図21のC3タイプ)であることがわかる。
【0102】
以上のように、このケースでも、従来技術の指標であるV/S比でみた場合は、樽における熟成とは異なる時間的推移をたどることが予想されるのに対し、本発明の指標によれば、樽における熟成とほぼ同じ時間的推移をたどることが期待できることがわかる。
【0103】
6-2-5.熟成に関するパラメータ及び指標の算出についての小括
以上のように、原酒が木質に浸潤する深さが、樽の部位ごとに異なることに基づいて、熟成容器における熟成に関するパラメータ及び熟成容器の態様を決定するための指標(熟成容器に充填する原酒の体積、原酒が浸潤する木質の体積、熟成容器に充填した原酒の重量、原酒が浸潤した木質の重量、及びこれらのパラメータに基づいて導出する液比など)を算出して、熟成容器の構成を決定すれば、樽における熟成とほぼ同じ時間的推移をたどることが期待できる。
【0104】
なお、図19図22を用いて、様々な態様の熟成容器の熟成に関するパラメータ及び指標の算出について説明したが、蓋材の配置は任意に変更することができ、縦置きや横置きのいずれを採用するかについても任意に変更することができる。要するに、木質に浸潤する深さを考慮して各パラメータ及び指標を算出すればよく、他の実施例についても同様に適用することができる。
【0105】
7.樽及び熟成容器における熟成について
次に、液比によって決定した熟成容器の構成について、熟成期間に応じて、樽における熟成とほぼ同様の熟成をたどることを確認した実験結果について、図23図27を用いて説明する。
実験は、各種の質量解析(クロマトグラフ)を用いた。
例えば、バニリンなどの低沸点成分については、ガスクロマトグラフ質量分析、エチルエステルや醋酸エステルなどが熱分解ガスクロマトグラフ質量分析、アルデヒド成分については液体クロマトグラフ、酢酸などの有機酸についてはイオンクロマトグラフなどである。
【0106】
なお、アルコール飲料の熟成は、アルコール濃度、温度や湿度などの環境によっても変化するため、樽と熟成容器の保管環境は、できる限り同じ状態になるようにして行った。使用した木材の素材はミズナラを中心に、いくつかの樹木を使用した。
また、原酒には膨大な種類の成分が含まれており、全ての成分の検出量をグラフ化するのは煩雑であるため、検出量が多い成分又は香りや風味を決定づけるとされる成分についてグラフ化することとした。
【0107】
7-1.個別成分の熟成について
7-1-1.未成熟成分の吸着・蒸散、及び消失による熟成について
まず、硫化物等の未熟成分の吸着・蒸散、及び酸化等による消失の状況についてみていくこととする。
図23は、樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に成分ごとに、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、アセトアルデヒドなど未成熟香、及びジメチルスルフィドなどの硫化物等の未熟成分の吸着・蒸散、及び酸化等による消失の様子の一実施例を示す図である。
図23によれば、発酵ないし蒸溜によって発生する未熟成分は、熟成の比較的初期に吸着・蒸散が進み、その後ゆっくりと下降する傾向にあることがわかる。
【0108】
そして、液比が樽とほぼ同じ数値の場合、熟成容器中の原酒の未熟成分がほぼ同じ経過をたどって蒸散、及び消失していくことがわかる。
他方、液比が樽よりも大きい場合は、樽材の木質の体積や重量に対し、原酒の体積や重量が大きい場面なので、未熟成分の木質からの吸着・蒸散、及び酸化等による消失が少なく、十分な蒸散、及び消失効果を奏しない様子を読み取ることができる。
また、液比が樽よりも小さい場合は、樽材の木質の体積や重量に対し、原酒の体積や重量が小さい場面なので、未熟成分の木質からの吸着・蒸散、及び酸化等による消失が多く、蒸散、及び消失効果が大きい様子を読み取ることができる。
【0109】
未熟成分が減少する原因は、図2で説明したように、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類が酸化(図2のト)によって酢酸に変化したり、エタノールと反応してアセタールに変化したりすること(図2のト)、等により未成熟香が薄れるほか、樽材の木質による吸着・蒸散(図2のイ、ロ)によって減少していくことによるものと考えられる。また、ジメチルスルフィドなどの硫化物等の未熟成分については、樽材の木質による吸着・蒸散等(図2のイ、ロ)によって減少していくことによるものと考えられる。
【0110】
この場合において、未熟成分について、完全に消滅することが理想的なのではなく、複雑な香りや風味を醸し出すためには、一定程度、残留していてもよく、熟成容器においても、樽における熟成と同様の経過をたどることが重要である。
従って、熟成容器の液比を樽と同程度に設定することで、樽における熟成と同様の経過をたどるようにすることが望ましい。
【0111】
7-1-2.木質系成分による熟成について
次に、木質系の成分の熟成の様子についてみていくこととする。
樽材の木質から溶出する木質系成分は、チャ―リングなどのレベルによっても変動し、各種の成分があるが、一例としてリグニンを例として説明する。
樽材の木質から溶出したリグニンなどの成分は、熟成によって、各種の成分リグニン由来の成分(化合物)に変化し、複雑な香りと風味を増していくことに貢献する。
【0112】
より具体的には、リグニン由来の化合物は、木質からウイスキーに溶け出した後、その共通構造を基本にして、原酒中に含まれている各種の成分、及び木質から原酒中に溶出した各種の成分との間で、成分どうしの様々な化学反応(酸化、エステル化、アセタール化)によって(図2のト)、アルコール型、アルデヒド型、カルボン酸型などに変化し、複雑な香りと風味を生み出していく。
リグニン由来の成分(化合物)としては、例えば、バニリンやバニリン酸などがあり、バニラのような香りを有している。
【0113】
ここで、図24は、樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に、成分ごとに、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、バニリン(バニラの香り)など、主に木質系の成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。
図24によれば、液比が樽とほぼ同じ数値の場合、熟成容器中の原酒の木質系成分が、樽とほぼ同じ経過をたどって増加し、一定のレベルに達した後、徐々に減少していくことがわかる。
【0114】
他方、液比が樽よりも大きい場合は、樽材の木質の体積や重量に対し、原酒の体積や重量が大きい場面なので、木質から溶出が少なく、熟成が十分に進行しない様子を読み取ることができる。
また、液比が樽よりも小さい場合は、樽材の木質の体積や重量に対し、原酒の体積や重量が小さい場面なので、木質からの溶出が多く、必要以上に熟成が進み、樽における熟成と乖離する様子を読み取ることができる。
従って、熟成容器の液比を樽と同程度に設定することで、樽における熟成と同様の経過をたどるようにすることが望ましい。
【0115】
7-1-3.エステル成分の熟成
次に、エステル成分の熟成の様子についてみていくこととする。
空気の出入り(樽の呼吸)(図2のリ)によって原酒中のアルコール類、アルデヒド類などが酸化され、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類などの成分どうしの間で、アルデヒド類とアルコール類の間のアセタール化反応、アルコール類とカルボン酸類の間のエステル化反応が進行し(図2のト)、複雑な香りと風味を増していくことに貢献する。
【0116】
より詳細には、まず、原酒の主成分であるエタノールが酸化し、アセトアルデヒドや酢酸が生成される。アセトアルデヒドはさらにエタノールと反応してアセタールという香気成分に変化する(アセタール化反応)。
そして、水酸基を持つエタノールとカルボキシル基を持つカルボン酸とが共存すると、水分子が抜けること(脱水縮合)によってエステル成分が生成される(エステル化反応)。ウイスキーの原酒の場合、原酒中のエステル成分としてはエタノールと酢酸の縮合でできる酢酸エチルが多い傾向にある。
【0117】
ここで、図25は、樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に成分ごとに、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、酢酸エチル(フルーティーな香り)など、主にエステル系の成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。
図25によれば、成分どうしの化学反応によってエステル化が進むので熟成の初期は検出量が少ないものの、ある時点から急速に化学反応が進み、一定レベルに達した後、ほぼ一定になり、徐々に減少する傾向があることがわかる。
【0118】
そして、液比が樽とほぼ同じ数値の場合、熟成容器中の原酒の木質系成分が、樽とほぼ同じ経過をたどって増加し、一定のレベルに達した後、徐々に減少していくことがわかる。
この場合も、液比の調整によって、熟成の進行度の調整が可能であり、液比が大きいと熟成がゆっくりと進み、液比が小さいと熟成が早く進む傾向になり、熟成容器の液比を樽と同程度に設定することで、樽における熟成と同様の経過をたどることが期待できる。
【0119】
7-1-4.色合いの変化による熟成
次に、色の熟成の様子についてみていくこととする。
タンニンは、木質に含まれる成分の一つで、チャ―リングのレベルによってもその量が変動するが、原酒の色を決定づける要素の一つであり、樽材の木質に原酒のアルコール成分が浸潤することで、木質から原酒に、分解・溶出される(図2のハ、ニ)。
【0120】
タンニンは、色合いに影響を及ぼすと同時に、渋みや深みなどの風味にも影響するが、ここでは、色あいに対する影響について説明する。
タンニンは分解されやすく、加水分解などによって、エラグ酸、タンニン酸などを主要成分とするポリフェノールに変化する。また、生成したポリフェノールは貯蔵中に酸化重合反応により、重合して不溶性、褐色のフロバフェン(色素)を生じる。
【0121】
図26は、樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、時系列でみた場合に成分ごとに、どのくらいの分量が検出されるかを示す図であって、主に色味成分の熟成の様子の一実施例を示す図である。図26によれば、タンニンおよびタンニン由来のフロバフェン等の色味の成分は、比較的短時間で立ち上がることがわかる。
この場合も、液比の調整によって、熟成の進行度の調整が可能であり、液比が大きいと熟成がゆっくりと進み、液比が小さいと熟成が早く進む傾向になり、熟成容器の液比を樽と同程度に設定することで、樽における熟成と同様の経過をたどることが期待できる点は同様である。
【0122】
7-2.熟成の全体について
これまで、熟成について、未熟成分の吸着・蒸散及び酸化等による消失、木質系成分による熟成、エステル系成分の熟成、色合いの変化などによって個別に確認したが、熟成の様子を概念的に表すと、図27のように説明できる。
図27は、樽及び熟成容器における原酒の熟成過程において、図24図27の成分ごとに熟成が進む様子を統合した総合的な熟成過程の様子を示す図である。
【0123】
図27によれば、熟成が進むにつれ、特徴や個性となる各種の熟成成分が立ち上がるものの、一定期間経過後に、一定のレベル(マチュレーションピーク)に達した後、徐々に減少していくことがわかる。
以上の考察により、必ずしも、全ての成分の熟成が同じように進むわけではないが、液比の調整により、樽と同様の熟成過程をたどる熟成容器の製造が可能であることがわかった。
【0124】
8.蒸留酒の製造工程、及び熟成容器への充填の工程について
次に、本発明の液比の概念を活用した熟成容器に原酒を充填するまでの工程について、図28を用いて説明する。
図28は、ウイスキーなどの蒸留酒の製造工程、及び熟成容器への充填の工程の一実施例を示す図である。
【0125】
まず、原料の大麦に糖化の役目を担う酵素を大麦自身の中につくらせる為、発芽した麦を乾燥させて麦芽を作ると共に、水を用意する(ステップS1)。
仕込み工程では、麦芽を粉砕し、温度調整した仕込み水と呼ばれる水と混ぜて、麦芽中の酵素が働いて、でんぷんを糖分に変えたのち、これをろ過して麦汁をつくる(ステップS2)。
発酵工程では、発酵中の麦汁に酵母を加え、酵母によって麦汁中の糖分を分解させることによって、麦汁をアルコールと炭酸ガスに変えると共に、ウイスキー特有の香味成分を生成する(ステップS3)。
【0126】
蒸留工程では、発酵の終わったもろみを銅製のポットスチルと呼ばれる蒸溜器に入れて、複数回蒸溜し、アルコール濃度を60~70%に高める(ステップS4)。
この段階で生成されたウイスキーをニューポットという(ステップS5)。
次に、ニューポットは、所定の素材で製造した樽に樽詰めされると共に(ステップS6)、その樽と紐づけしたうえで(ステップR1)、熟成容器に充填される(ステップP1)。
樽詰めされたニューポットは熟成され(ステップS7)、熟成が完了すると(ステップS8)、瓶などに詰められて出荷される(ステップS9)。
【0127】
ニューポットが充填された熟成容器は、別途、需要者に販売、提供される(ステップP1)。
熟成容器においても充填後に熟成が進むが(ステップP2)、熟成容器の液比は、紐づけた樽と略同一に調整されているため、所定の温度管理等を行えば、紐づけた樽とほぼ同じ熟成過程をたどり、熟成が完了後(ステップP3)、熟成容器のアルコール飲料の熟成状態は、紐づけした樽と略同一となっていることが担保されている(ステップR2)。
このため、熟成容器を保有する需要者は、自己が保有する熟成容器の熟成状態を確認したうえで、当該熟成容器と同じ原酒を貯蔵する樽を特定するとともに、樽から瓶詰めした製品を購入するインセンティブが生まれ、当該製品の購入を喚起することにつながる(ステップP4)。
【0128】
9.樽と熟成容器との紐づけについて
次に、樽の情報管理と、熟成容器の情報管理による両者の紐づけについて、図29図31を用いて説明する。
【0129】
9-1.樽の情報管理
まず、樽については、樽識別IDを付したうえで、樽に貯蔵する原酒の情報、樽に関する情報を管理している。
情報管理の一例としては、図29に示すように、樽に貯蔵する原酒の情報(原料の種類や生産地などの情報、蒸溜場所、蒸溜年月日、樽詰めの年月日、アルコール濃度など)、樽に関する情報(樽の素材、形状、寸法、チャ―リングのレベルなど)、液比等を構成要素とする情報管理を行うことができる。
【0130】
9-2.熟成容器の情報管理
熟成容器についても、容器IDを付したうえで、同じ原酒を貯蔵した樽の情報を紐づけており(図28のステップR1)、図30に示すような樽と熟成容器との紐づけテーブルで情報管理している。
情報管理の一例としては、図30に示すように、ニューポットの充填場所、容器への充填年月日、同じニューポットを樽詰めした樽の樽識別ID、当該樽に用いられたものと同じ木質の素材、蓋材のサイズ、容器の寸法、容器の容量、液比などの情報管理を行うことができる。
【0131】
なお、樽の樽材の木質と、熟成容器の蓋などの木質は、同一の原材料(同じ木から切り出した木材)であることまで担保されているのが望ましいが、同じ地域で産出された同じ種類の木材というレベルでの同一性が担保されている程度でも構わない。
【0132】
以上の樽と熟成容器とを紐づけ管理するための情報管理は、紙媒体の管理帳を設けて人手で記録管理してもよいし、コンピュータ装置を用いてソフトウェアで記録管理してもよい。
あるいは、熟成容器を販売・提供した需要者(ユーザー)に対し、手持ちの熟成容器に紐づけた樽の情報を、サーバーなどで管理したうえで、需要者(ユーザー)が樽の情報を閲覧できるようにしてもよい。
【0133】
この場合において、樽が貯蔵されている環境の情報(温度や湿度)を確認可能として、需要者(ユーザー)が保有する熟成容器の保管環境を、紐づけた樽の保管環境にできるだけ近づけて管理するようにしてもよい。
なお、熟成容器の保管環境を樽の保管環境に近づけるために、例えば、温度を一定に保つワインセラーのような装置を利用してもよいし、冷蔵庫の野菜室、地下室、あるいは半地下に設けられた室などを利用してもよい。
【0134】
9-3.樽及び熟成容器に対する物理的な情報管理の手段
次に、樽及び熟成容器に対する物理的な情報管理の手段について説明する。
図31(A)は、樽に付すICタグ又はタグ又はシールの一例を示す図である。
図31(B)は、熟成容器に付すICタグ又はタグ又はシール又はパッケージへの印刷の一例を示す図である。
図31に示すように、適宜、ICタグ又はタグ又はシール又はパッケージへの印刷を行うことで、原酒を充填した熟成容器の需要者(ユーザー)及び蒸溜所等の製造販売業者は、樽と熟成容器との関連性を特定することができる。
タグ、又はシールやパッケージの印刷の内容としては、文字列のほか、2次元又は3次元のバーコードなどを利用してもよい。また、ICタグの場合は、図31に示すような情報を電子データとして格納することができる。
【0135】
9-4.本発明の熟成容器の特徴に基づく販売促進について
以上のように、熟成容器に格納するアルコール飲料の内容量と蓋材の容器内側の面積を、大容量の樽におけるアルコール飲料の内容量と、木質で構成された樽の内側の面積及びアルコール飲料が木質に浸潤する深さとの関係に基づいて決定することとしたので、大容量の樽におけるアルコール飲料の熟成状態と、熟成容器に充填したアルコール飲料の熟成状態が略同一であることを担保することができる(図28のステップR2)。
また、樽と熟成容器の情報管理と紐づけにより、アルコール飲料入りの熟成容器の販売・提供を受けた需要者(ユーザー)は、熟成容器と同じ原酒を貯蔵する大容量の樽を特定することができる(図28のステップR1、図29図30参照)。
【0136】
そして、需要者(ユーザー)は、現在手持ちの熟成容器に貯蔵された原酒の熟成状態(色合いや沈殿物の状態)を目視したり、一時的に蓋を開けたりして香りや風味などの熟成状態を確認できるので、当該熟成容器に紐づけられた同じ原酒を貯蔵・熟成する大容量の樽を特定するとともに、樽における原酒の熟成状態を推定して、「この色合い、香り、ないし風味は自分の好みなので、大元の樽で熟成されたものをぜひ飲んでみたい」などと誘引し、当該熟成容器に紐づけられた原酒を貯蔵・熟成する大容量の樽の原酒(瓶詰めした製品)の購入を喚起することにつながる(図28のステップP4)。
【0137】
このことは、樽及び熟成容器における熟成に関するパラメータ及び熟成容器の態様を決定するための指標(充填する原酒の体積、原酒が浸潤する木質の体積、充填した原酒の重量、原酒が浸潤した木質の重量、及びこれらのパラメータに基づいて導出する液比など)の算出により、初めて可能となったものであり、従来技術ではなしえなかったことである。
【0138】
すなわち、大容量の樽における原酒の重量と前記浸潤重量の比率である液比を算出し、熟成容器の体積又は及び内容量と蓋などの木質の容器内側の面積を、液比に基づいて決定することにより、大容量の樽における原酒の熟成状態と、熟成容器に充填した原酒の熟成状態とを略同一であることを担保して販売・提供すること、及び、樽と熟成容器の紐づけ管理によって、初めて可能としたものである。
【0139】
10.総括
以上のように、本発明によれば、熟成容器に格納する原酒の内容量と前記蓋材の容器内側の面積を、前記大容量の樽における原酒の内容量と、前記木質で構成された樽の内側の面積及び前記原酒が木質に浸潤する深さとの関係、に基づいて決定することにより、大容量の樽における原酒の熟成状態と、熟成容器に充填した原酒の熟成状態とを略同一に保つことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
アルコール飲料の樽による熟成は、熟成対象となる成分が一部異なるものの、樽材の木質への浸透、木質成分の分解・溶出、成分どうしの様々な化学反応、樽材の木質による未熟成分の吸着・蒸散、樽材の木質を介して外部の空気との間の空気の出入り(樽の呼吸)など、熟成のメカニズムはほぼ共通していることから、本発明の熟成容器は、ウイスキーなどの蒸留酒のほか、ワインなどの醸造酒にも適用することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 熟成容器
20 格納部
30 蓋材(蓋)
40 蓋材(底)
50 蓋材(側面)
60 蓋(木質以外)
70 アルコール飲料

100 樽
110 側板(上部)
120 側板(胴部)
130 側板(下部)
140 鏡板
150 帯鉄
160 樽内部のライン


図1
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