(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050232
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】船舶のプロペラ推進装置
(51)【国際特許分類】
B63H 5/10 20060101AFI20240403BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B63H5/10
B63H20/00 823
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156963
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】福井 崇裕
(57)【要約】
【課題】船舶の船速に拘らず電動機の駆動力を効率良く利用することができる船舶のプロペラ推進装置を提供する。
【解決手段】プロペラ推進装置は、第1のプロペラ、第2のプロペラ、第1の電動機、第2の電動機、制御部、記憶部を備えている。第2のプロペラは、第1のプロペラと同軸に配置されて第1のプロペラと逆向きに回転する。第1のプロペラは第1の電動機によって駆動され、第2のプロペラは第2の電動機によって駆動される。記憶部は、第1の電動機、及び、第2の電動機の合計消費電力が最適値となる船速毎の第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせを記憶する。制御部は、船舶の運航時に、船速毎に合計消費電力が最適値となるように、記記憶部のデータに基づいて第1の電動機と第2の電動機を夫々制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプロペラと、
前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと逆向きに回転する第2のプロペラと、
前記第1のプロペラを駆動する第1の電動機と、
前記第2のプロペラを駆動する第2の電動機と、
前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御する制御部と、
前記第1の電動機、及び、前記第2の電動機の合計消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、船舶の運航時に、船速毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御することを特徴とする船舶のプロペラ推進装置。
【請求項2】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であることを特徴とする請求項1に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項3】
船舶の運航を制御する運航制御装置をさらに備え、
前記運航制御装置は、
前記合計消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを較正して前記記憶部に記憶させるキャリブレーション運航モードと、
船速毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を前記制御部によって夫々制御させる通常運航モードと、を有し、
前記運航制御装置は、船舶の運航状況に応じて、前記通常運航モードと前記キャリブレーション運航モードとに切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項4】
前記運航制御装置は、少なくとも前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの少なくとも一方が交換されたときに、前記通常運航モードから前記キャリブレーション運航モードに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項5】
前記運航制御装置は、定期的に前記通常運航モードから前記キャリブレーション運航モードに切り替えることを特徴とする請求項3または4に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項6】
第1のプロペラと、
前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと逆向きに回転する第2のプロペラと、
前記第1のプロペラを駆動する第1の電動機と、
前記第2のプロペラを駆動する第2の電動機と、
前記第1の電動機と前記第2の電動機に電力を供給するバッテリと、
前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御する制御部と、
前記第1の電動機、及び、前記第2の電動機の合計消費電力が最適値となる船速と前記バッテリの残容量毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、船舶の運航時に、船速と前記バッテリの残容量毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御することを特徴とする船舶のプロペラ推進装置。
【請求項7】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であることを特徴とする請求項6に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項8】
第1のプロペラと、
前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと同方向に同期回転する第2のプロペラと、
前記第1のプロペラと前記第2のプロペラを駆動する電動機と、
前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を調整する位相操作アクチュエータと、
前記電動機と前記位相操作アクチュエータを夫々制御する制御部と、
前記電動機の消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、船舶の運航時に、船速毎に前記消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記位相操作アクチュエータを制御することを特徴とする船舶のプロペラ推進装置。
【請求項9】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であることを特徴とする請求項8に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【請求項10】
船舶の運航を制御する運航制御装置をさらに備え、
前記運航制御装置は、
前記電動機の消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を前記記憶部に記憶させるキャリブレーション運航モードと、
船速毎に前記消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記位相操作アクチュエータを前記制御部によって制御させる通常運航モードと、を有し、
前記運航制御装置は、船舶の運航状況に応じて、前記通常運航モードと前記キャリブレーション運航モードとに切り替えることを特徴とする請求項8または9に記載の船舶のプロペラ推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のプロペラ推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶のプロペラ推進装置として、一方向に回転する前側のプロペラと、前側のプロペラと逆向きに回転する後側のプロペラが同軸に配置された二重反転プロペラが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載の二重反転プロペラは、前側のプロペラと後側のプロペラが同軸に配置されるとともに、これらのプロペラがエンジンの駆動力を受けて夫々逆向きに回転する。このような二重反転プロペラは、前側のプロペラが作り出す旋回流を後側のプロペラが作り出す逆向きの旋回流によって打ち消す。
これにより、二重反転プロペラでは、前側のプロペラが作り出す旋回流を後側のプロペラで回収し、駆動力を効率良く船舶の推進力として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-190673号公報
【特許文献2】特開2015-202853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のプロペラ推進装置(二重反転プロペラ)は、エンジンの駆動力をギヤ機構によって前後のプロペラに振り分けている。このため、前側のプロペラと後側のプロペラは、常に一定の速度、若しくは、一定の速度比で回転駆動される。このことから、船舶の船速によっては、エンジンで発生した駆動力を効率良く利用できない場合がある。
【0006】
近年、プロペラ推進装置の駆動源として、エンジンに代えて電動機が用いられることがある。上述のような二重反転プロペラを利用したプロペラ推進装置においても、駆動源として電動機を用いることを検討している。しかし、この場合、従来のプロペラ推進装置と同様に、前側のプロペラと後側のプロペラを常に一定の速度、若しくは、一定の速度比で回転駆動すると、船舶の船速によっては、電動機の駆動力を効率良く利用できなくなる。そして、電動機の駆動力を効率良く利用できなくなると、バッテリの消費電力が大きくなり、船舶の航行可能な距離が短縮される。
【0007】
また、プロペラ推進装置として、同方向に同期回転する前後二つのプロペラを、回転位相が一定角度ずれるように連結した二重プロペラが知られている。このプロペラ推進装置は、前側のプロペラで発生する旋回流を、前側のプロペラと回転位相のずれた後側のプロペラの回転によって整流する。
【0008】
この種の二重プロペラを用いるプロペラ推進装置の場合も、上記の二重反転プロペラと同様に、船舶の船速によっては駆動力を効率良く利用できなくなることがある。このため、この種のプロペラ推進装置においても、駆動源として電動機を用いる場合には、船舶の船速によってはバッテリの消費電力が大きくなることが懸念される。
【0009】
そこで本発明は、船舶の船速に拘らず電動機の駆動力を効率良く利用することができる船舶のプロペラ推進装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、第1のプロペラ(例えば、実施形態の第1のプロペラ16F)と、前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと逆向きに回転する第2のプロペラ(例えば、実施形態の第2のプロペラ16S)と、前記第1のプロペラを駆動する第1の電動機(例えば、実施形態の第1の電動機11F)と、前記第2のプロペラを駆動する第2の電動機(例えば、実施形態の第2の電動機11S)と、前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御する制御部(例えば、実施形態の制御部14)と、前記第1の電動機、及び、前記第2の電動機の合計消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを記憶する記憶部(例えば、実施形態の記憶部25)と、を備え、前記制御部は、船舶の運航時に、船速毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御することを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、記憶部には、船舶のキャリブレーション運航時のデータ収集等により、第1の電動機と第2の電動機の合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせが記憶される。船舶の通常航行時には、記憶された記憶部のデータに基づいて、船舶の目標速度に適した第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせが選択され、制御装置によって第1の電動機と第2の電動機が制御される。この結果、第1の電動機と第2の電動機の合計消費電力が船舶の航行速度に応じた最適値となるように各プロペラの回転が制御される。
【0012】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であっても良い。
【0013】
上記の船舶のプロペラ推進装置は、船舶の運航を制御する運航制御装置(例えば、実施形態の運航制御装置18)をさらに備え、前記運航制御装置は、前記合計消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを較正して前記記憶部に記憶させるキャリブレーション運航モードと、船速毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を前記制御部によって夫々制御させる通常運航モードと、を有し、前記運航制御装置は、船舶の運航状況に応じて、前記通常運航モードと前記キャリブレーション運航モードとに切り替えるようにしても良い。
【0014】
この場合、例えば、船舶のキャリブレーション運航を行っても安全上問題のない運航環境のときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替える。これにより、船舶の安全な運航を確保しつつ、第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせの較正データを収集することができる。
【0015】
前記運航制御装置は、少なくとも前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの少なくとも一方が交換されたときに、前記通常運航モードから前記キャリブレーション運航モードに切り替えるようにしても良い。
【0016】
この場合、第1のプロペラと第2のプロペラの少なくとも一方が交換されると、第1の電動機と第2の電動機の合計消費電力が最適値となる第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせが変化する。このため、第1のプロペラと第2のプロペラの少なくとも一方が交換されたタイミングでキャリブレーシュン運航モードに切り替えることにより、第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせの較正データを最新のものに変更して通常運航を行うことができる。
【0017】
前記運航制御装置は、定期的に前記通常運航モードから前記キャリブレーション運航モードに切り替えるようにしても良い。
【0018】
この場合、定期的に通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えることにより、第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせの較正データを常に最新のものに変更して通常運航を行うことができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、第1のプロペラ(例えば、実施形態の第1のプロペラ16F)と、前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと逆向きに回転する第2のプロペラ(例えば、実施形態の第2のプロペラ16S)と、前記第1のプロペラを駆動する第1の電動機(例えば、実施形態の第1の電動機11F)と、前記第2のプロペラを駆動する第2の電動機(例えば、実施形態の第2の電動機11S)と、前記第1の電動機と前記第2の電動機に電力を供給するバッテリ(例えば、実施形態のバッテリ19)と、前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御する制御部(例えば、実施形態の制御部14)と、前記第1の電動機、及び、前記第2の電動機の合計消費電力が最適値となる船速と前記バッテリの残容量毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転数の組み合わせを記憶する記憶部(例えば、実施形態の記憶部25)と、を備え、前記制御部は、船舶の運航時に、船舶の船速と前記バッテリの残容量毎に前記合計消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記第1の電動機と前記第2の電動機を夫々制御することを特徴とする。
【0020】
上記の構成において、記憶部には、船舶のキャリブレーション運航時のデータ収集等により、第1の電動機と第2の電動機の合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速とバッテリの残容量毎の第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせが記憶される。船舶の通常航行時には、記憶された記憶部のデータに基づいて、船舶の目標速度と現在のバッテリ残容量に適した第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせが選択され、制御装置によって第1の電動機と第2の電動機が制御される。この結果、第1の電動機と第2の電動機の合計消費電力が船舶の航行速度と現在のバッテリ残容量に応じた最適値となるように各プロペラの回転が制御される。
【0021】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であっても良い。
【0022】
本発明のさらに他の態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、第1のプロペラ(例えば、実施形態の第1のプロペラ116F)と、前記第1のプロペラと同軸に配置されて前記第1のプロペラと同方向に同期回転する第2のプロペラ(例えば、実施形態の第2のプロペラ116S)と、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラを駆動する電動機(例えば、実施形態の電動機111)と、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を調整する位相操作アクチュエータ(例えば、実施形態の位相操作アクチュエータ40)と、前記電動機と前記位相操作アクチュエータを夫々制御する制御部(例えば、実施形態の制御部114)と、前記電動機の消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を記憶する記憶部(例えば、実施形態の記憶部25)と、を備え、前記制御部は、船舶の運航時に、船速毎に前記消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記位相操作アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0023】
上記の構成において、記憶部には、船舶のキャリブレーション運航時のデータ収集等により、電動機の消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラと第2のプロペラの回転位相差が記憶される。船舶の通常航行時には、記憶された記憶部のデータに基づいて、船舶の目標速度に適した第1のプロペラと第2のプロペラの回転位相差が選択され、制御装置によって位相操作アクチュエータが制御される。この結果、電動機の消費電力が船舶の航行速度に応じた最適値となるように第1のプロペラと第2のプロペラの回転位相差が調整される。
【0024】
前記最適値は、予め設定した閾値以下となる値であっても良い。
【0025】
前記船舶のプロペラ推進装置は、船舶の運航を制御する運航制御装置をさらに備え、前記運航制御装置は、前記電動機の消費電力が最適値となる船速毎の前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの回転位相差を前記記憶部に記憶させるキャリブレーション運航モードと、船速毎に前記消費電力が最適値となるように、前記記憶部のデータに基づいて前記位相操作アクチュエータを前記制御部によって制御させる通常運航モードと、を有し、前記運航制御装置は、船舶の運航状況に応じて、前記通常運航モードと前記キャリブレーション運航モードとに切り替えるようにしても良い。
【0026】
この場合、例えば、船舶のキャリブレーション運転を行っても安全上問題のない運航環境のときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替える。これにより、船舶の安全な運航を確保しつつ、第1のプロペラと第2のプロペラの回転位相差の較正データを収集することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、船舶の運航時に、制御部が、記憶部に記憶されている船速毎の各プロペラの回転数の組み合わせのデータに基づいて、第1の電動機と第2の電動機を夫々制御する。このため、本態様に係るプロペラ推進装置を採用した場合には、船舶の船速に拘らず電動機の駆動力を効率良く利用することができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、船舶の運航時に、制御部が、記憶部に記憶されている船速とバッテリ残容量毎の各プロペラの回転数の組み合わせのデータに基づいて、第1の電動機と第2の電動機を夫々制御する。このため、本態様に係るプロペラ推進装置を採用した場合には、船舶の船速やバッテリの残容量に拘らず電動機の駆動力を効率良く利用することができる。
【0029】
本発明の他の態様に係る船舶のプロペラ推進装置は、船舶の運航時に、記憶部に記憶されている船速毎の回転位相差のデータに基づい、制御部が位相操作アクチュエータを制御する。このため、本態様に係るプロペラ推進装置を採用した場合には、船舶の船速に拘らず電動機の駆動力を効率良く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、第1実施形態の船舶の模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のプロペラ推進装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、船速毎の第1のプロペラと第2のプロペラの回転数の組み合わせと、消費電力の関係を示すマトリックス図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の船舶の模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のプロペラ推進装置の概略構成図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のプロペラ推進装置の第1のプロペラと第2のプロペラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のプロペラ推進装置10を採用する船舶1の模式的な側面図である。
図2は、本実施形態のプロペラ推進装置10の概略構成図である。
船舶1の船体2の後部には、船外機5が取り付けられている。船外機5は、電動式の船外機であり、駆動源として第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを搭載している。船外機5は、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを含む駆動関連部品を内部に収容する船外機ケース12を備えている。船外機ケース12は図示しない骨格部材に支持されている。骨格部材は、図示しないチルト軸を中心として船体2の後部に上下方向に回動可能に連結されている。
以下の説明において、船外機5についての「前」「後」は、船外機5の推進方向についての前後を意味するものとする。
【0033】
船外機ケース12は、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの駆動を制御するための制御部14等が収容される上部ケース12Uと、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sが内部に収容される下部ケース12Lと、を備えている。下部ケース12Lは、船舶1の航行時に海や河川、湖沼等の水中に没する。
【0034】
第1の電動機11Fと第2の電動機11Sは、下部ケース12Lの内部に同軸に配置されている。第1の電動機11Fは、第2の電動機11Sの後方に配置されている。第1の電動機11Fと第2の電動機11Sには、夫々出力軸15f,15sが設けられている。各出力軸15f,15sは、対応する電動機11F,11Sから後方側に延び、下部ケース12Lの後壁を後方側に貫通している。前方側に配置される第2の電動機11Sの出力軸15sは、後方側に配置される第1の電動機11Fとその出力軸15fを軸方向に貫通している。下部ケース12Lを貫通した出力軸15fの後端部には、第1のプロペラ16Fが連結されている。下部ケース12Lと出力軸15fを貫通した第2の電動機11Sの出力軸15sの後端部には、第2のプロペラ16Sが連結されている。
【0035】
第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sは、夫々第1の電動機11Fと第2の電動機11Sによって逆向きに回転駆動される。第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sは、二重反転プロペラを構成している。即ち、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sは、夫々逆向きに回転することによって前側の第1のプロペラ16Fが作り出す旋回流を後側の第2のプロペラ16Sで回収し、両プロペラ16F,16Sの駆動力を効率良く船舶1の推進力として使用する。
【0036】
第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの回転は制御部14によって制御される。第1の電動機11Fと第2の電動機11Sには、各電動機11F,11Sの回転検出部であるレゾルバ17f,17sが設けられている。レゾルバ17f,17sで検出された検出信号は、船体2側の運航制御装置18(統合制御装置)に入力される。
【0037】
船外機5の制御部14は、運航制御装置18からの指令を受けて第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを制御する。また、船外機5に搭載される第1の電動機11Fと第2の電動機11Sは、船体2に搭載されたバッテリ19に図示しない電力ケーブルによって接続されている。
なお、バッテリ19は、船体2ではなく船外機5に搭載するようにしても良い。また、運航制御装置18の機能の一部は、船外機5に搭載した別の制御装置に担わせるようにしても良い。
また、本実施形態では、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sが共通の制御部14によって制御される構成とされているが、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sは、夫々別の制御部によって制御されるようにしても良い。
【0038】
運航制御装置18は、上述したレゾルバ17f,17sから各電動機11F,11Sの回転信号を受け取る回転検出部20と、船速ログ等の船速検出器21から船速信号を受け取る船速検出部22と、を有する。さらに、運航制御装置18は、バッテリ19からバッテリ19の残容量信号を受け取る残容量検出部23と、船外機5の制御部14から第1の電動機11Fと第2の電動機11Sで消費した電力(供給電力)の情報を受け取る消費電力検出部24と、を有する。また、運航制御装置18は、回転検出部20、船速検出部22、消費電力検出部24等から検出信号を受け取り、両電動機11F,11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶する記憶部25を備えている。記憶部25は、船外機側の第1のプロペラ16F、第2のプロペラ16S、第1の電動機11F,第2の電動機11S、制御部14等とともに、プロペラ推進装置10を構成している。なお、上記の最適値は、予め設定した所定値以下となる値である。
記憶部25は、必ずしも運航制御装置18の内部に配置されていなくても良く、運航制御装置18の外部に配置されていても良い。また、記憶部25は、船外機側に配置することも可能である。
【0039】
図3は、船舶1でキャリブレーション運航を行い、船速が10km/時のときの第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせと、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力の関係を調べたマトリックス図である。この場合、第1のプロペラ16Fの回転数が1000回転/分で第2のプロペラ16Sの回転数が900回転/分のときの両電動機の11F,11Sの合計消費電力が最小の38kwとなっている。したがって、船速が10km/時のときに両電動機11F,11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)になる第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせは、第1のプロペラ16Fが1000回転/分、第2のプロペラ16Sの回転数が900回転/分となる。
船舶1のキャリブレーション運航時には、同様に、船速が20km/時のとき、30km/時のとき、40km/時のとき…の両電動機11F,11Sの合計消費電力が最小値になる第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを調べる。
記憶部25には、上述のようにキャリブレーション運航時に、船速毎に収集した較正データを記憶させておく。
【0040】
ここでは、キャリブレーション運航時に、両電動機11F,11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶部25に記憶させる場合の一例について詳述した。しかし、記憶部25は、バッテリ19の残容量をさらに考慮した較正データを記憶させるようにしても良い。
具体的には、キャリブレーション運航時に、両電動機11F,11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる、船速とバッテリ残容量毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶部25に記憶させるようにしても良い。
【0041】
また、運航制御装置18は、キャリブレーション運航モードと通常運航モードを備え、これらの各モードを適宜切り替えて船舶1の運航を行うことができる。キャリブレーション運航モードは、船舶1の運航中に、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の(若しくは、船速とバッテリ残容量毎の)第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを較正して記憶部25に記憶させる運航モードである。これに対し、通常運航モードは、船速毎に第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となるように、記憶部25のデータに基づいて第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを制御部14によって夫々制御させる運航モードである。
【0042】
運航制御装置18は、船舶1の運航状況に応じて、通常運航モードとキャリブレーション運航モードとを適宜切り替える。運航制御装置18は、例えば、安全上問題のない運航環境のときにのみキャリブレーション運航モードに切り替えて船舶1の運航を行い、安全上問題のある運航環境の場合には、通常運航モードで船舶1の航行を行う。
【0043】
また、運航制御装置18は、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの少なくとも一方が交換されたときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替え、記憶部25の較正データの更新を行う。
なお、運航制御装置18は、定期的に通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えるようにしても良い。例えば、船舶1が一定距離以上を航行したときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えて、記憶部25の較正データの更新を行うようにしても良い。また、船舶1が一定時間(期間)以上を航行したときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えて、記憶部25の較正データの更新を行うようにしても良い。
【0044】
以上のように、本実施形態のプロペラ推進装置10は、船舶1のキャリブレーション運航時に、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶する記憶部25を備えている。そして、船舶1の通常運航時に、制御部14が、船速毎に合計消費電力が最適値となるように記憶部25に記憶されているデータに基づいて第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを夫々制御する。
したがって、本実施形態のプロペラ推進装置10を採用した場合には、船舶1の船速に拘らず第1の電動機11F、及び、第2の電動機11Sの駆動力を効率良く利用することができる。よって、バッテリ19の消費電力を低減し、船舶1の航行距離を延ばすことができる。
【0045】
また、本実施形態のプロペラ推進装置10は、船舶1の運航を制御する運航制御装置18を備え、運航制御装置18がキャリブレーション運航モードと通常運航モードを持つ。キャリブレーション運航モードでは、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを較正して記憶部25に記憶させる。そして、運航制御装置18は、船舶1の運航状況に応じて、通常運航モードとキャリブレーション運航モードとに適宜切り替える。このため、例えば、船舶1のキャリブレーション運転を行っても安全上問題のない運航環境のときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、船舶1の安全な運航を確保しつつ、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせの較正データを収集することができる。
【0046】
さらに、本実施形態のプロペラ推進装置10は、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの少なくとも一方が交換されたときに、運航制御装置18が船舶1の運航モードを通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替える。このため、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの少なくとも一方が交換されたタイミングでキャリブレーシュン運航モードに切り替えることができる。したがって、本構成を採用した場合には、プロペラの交換によって第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最適値となる第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせが変化しても、回転数の組み合わせの較正データを最新のものに変更して通常運航を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態のプロペラ推進装置10は、運航制御装置18が定期的に通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替える。このため、第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせの較正データを常に最新のものに変更して通常運航を行うことができる。
【0048】
さらに、キャリブレーション運航時に、両電動機11F,11Sの合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となる、船速とバッテリ残容量毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶部25に記憶させるようにした実施形態の場合には、以下のような効果を得ることができる。
この実施形態の場合、船舶1の通常運航時に、予め記憶部25に記憶されている船速とバッテリ残容量に応じたデータに基づいて、合計消費電力が最適値(例えば、最小値)となるように第1の電動機11Fと第2の電動機11Sを夫々制御する。したがって、本実施形態のプロペラ推進装置10を採用した場合には、船舶1の船速やバッテリ19の残容量に拘らず第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの駆動力を効率良く利用することができる。特に、バッテリ19の残容量が少ない場合には、船舶1の航行可能な距離をより延長させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図4は、本実施形態のプロペラ推進装置110を採用する船舶1の模式的な側面図である。
図5は、本実施形態のプロペラ推進装置110の概略構成図である。
船体2の後部に取り付けられる船外機105は、電動式の船外機であり、駆動源として電動機111を搭載している。船外機105は、上記の実施形態と同様の船外機ケース12を備えている。船外機ケース12の下部ケース12Lには、電動機111が収容されている。船外機ケース12の上部ケース12Uには、電動機111を制御するための制御部114が収容されている。
【0050】
電動機111には、出力軸115が設けられている。出力軸115は、電動機111から後方側に延び、下部ケース12Lの後壁を後方側に貫通している。下部ケース12Lを貫通した出力軸115の後端部には、第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sが連結されている。第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sは、互いの回転位相が所定角度ずれるように同軸に配置されている。第2のプロペラ116Sは、第1のプロペラ116Fの後方側に配置されている。第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sは、互いの回転位相のずれにより、第1のプロペラ116Fの発生する旋回流を後方側の第2のプロペラ116Sが整流する二重プロペラを構成している。
【0051】
図6は、第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの正面図である。
同図では、第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sは、回転中心軸線cを中心とした回転位相が角度Pだけずれている。
図4,
図5に示すように、第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの間には、電動モータや油圧アクチュエータ等から成る位相操作アクチュエータ40が配置されている。位相操作アクチュエータ40は、同アクチュエータの作動によって第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差Pを任意の角度に調整可能とされている。
【0052】
電動機111の回転と位相操作アクチュエータ40の作動は制御部114によって制御される。電動機111には、レゾルバ117が設けられている。また、位相操作アクチュエータ40には、図示しない作動検出センサが設けられている。レゾルバ117と作動検出センサによって検出された信号は、船体2側の運航制御装置18(統合制御装置)に入力される。
【0053】
船外機105の制御部114は、運航制御装置18からの指令を受けて電動機111と位相操作アクチュエータ40を制御する。船外機105側の電動機111は、船体2に搭載されたバッテリ19に図示しない電力ケーブルによって接続されている。
本実施形態の場合も、バッテリ19は、船体2ではなく船外機5に搭載するようにしても良い。また、運航制御装置18の機能の一部は、船外機5に搭載した別の制御装置に担わせるようにしても良い。
【0054】
運航制御装置18は、電動機111のレゾルバ117から回転信号を受け取る取る回転検出部120と、位相操作アクチュエータ40の作動検出センサから検出信号を受け取る位相差検出部126と、を有する。さらに、運航制御装置18は、船速ログ等の船速検出器21から船速信号を受け取る船速検出部22と、バッテリ19からバッテリ19の残容量信号を受け取る残容量検出部23と、船外機5の制御部14から電動機111で消費した電力(供給電力)の情報を受け取る消費電力検出部24と、を有する。
【0055】
運航制御装置18は、回転検出部120、位相差検出部126、船速検出部22、消費電力検出部24等から検出信号を受け取り、電動機111の消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差を記憶する記憶部25を備えている。
記憶部25は、船外機側の第1のプロペラ116F、第2のプロペラ116S、電動機111,位相操作アクチュエータ40、制御部114等とともに、プロペラ推進装置110を構成している。本実施形態の場合も、記憶部25は、運航制御装置18の外部に配置しても良い。
【0056】
本実施形態では、船舶1のキャリブレーション運航時に、電動機111Sの消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差を記憶部25に記憶させる。しかし、記憶部25は、バッテリ19の残容量をさらに考慮した較正データを記憶させるようにしても良い。
具体的には、キャリブレーション運航時に、電動機111の消費電力が最適値(例えば、最小値)となる、船速とバッテリ残容量毎の第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差を記憶部25に記憶させるようにしても良い。
【0057】
本実施形態の運航制御装置18の場合も、上記の実施形態と同様に、通常運航モードとキャリブレーション運航モードを備えている。そして、通常運航モードとキャリブレーション運航モードは、上記の実施形態と同様の条件やタイミングで切り換えられる。
【0058】
以上のように、本実施形態のプロペラ推進装置110は、船舶の通常運航時に、記憶部25に記憶されている船速毎の回転位相差のデータに基づい、制御部114が位相操作アクチュエータ40を制御する。
したがって、本実施形態のプロペラ推進装置110を採用した場合には、船舶1の船速に拘らず電動機111の駆動力を効率良く利用することができる。よって、バッテリ19の消費電力を低減し、船舶1の航行距離を延ばすことができる。
【0059】
また、本実施形態のプロペラ推進装置110は、運航制御装置18がキャリブレーション運航モードと通常運航モードを持つ。キャリブレーション運航モードでは、電動機111の消費電力が最適値(例えば、最小値)となる船速毎の第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差を較正して記憶部25に記憶させる。そして、運航制御装置18は、船舶1の運航状況に応じて、通常運航モードとキャリブレーション運航モードとに適宜切り替える。このため、本実施形態の場合も、例えば、船舶1のキャリブレーション運転を行っても安全上問題のない運航環境のときに、通常運航モードからキャリブレーション運航モードに切り替えることができる。したがって、船舶1の安全な運航を確保しつつ、第1のプロペラ116Fと第2のプロペラ116Sの回転位相差の較正データを収集することができる。
【0060】
また、キャリブレーション運航時に、電動機111の消費電力が最適値(例えば、最小値)となる、船速とバッテリ残容量毎のプロペラ16F,16Sの回転位相差を記憶部25に記憶させるようにした場合には、船舶1の船速やバッテリ19の残容量に拘らず電動機111の駆動力を効率良く利用することができる。
【0061】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、第1実施形態では、第1の電動機11Fと第2の電動機11Sの合計消費電力が最小値となる船速毎の第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを記憶部25に記憶させる例を例示しているが、合計消費電力の最適値は、必ずしも最小値でなくても良い。例えば、合計消費電力が充分に小さければ、さらに別の好適な条件を満たす第1のプロペラ16Fと第2のプロペラ16Sの回転数の組み合わせを最適値として記憶部25に記憶させるようにしても良い。
同様に、第2実施形態の場合も、電動機111の消費電力の最適値は必ずしも最小値でなくても良い。
【0062】
また、上記の各実施形態では、プロペラ推進装置として船外機タイプのものを例示しているが、プロペラ推進装置の推進方式はこれに限定されない。プロペラ推進装置の推進方式は、例えば、船内外機タイプやポッドドライブタイプであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1…船舶
10…プロペラ推進装置
11F…第1の電動機
11S…第2の電動機
14…制御部
16F…第1のプロペラ
16S…第2のプロペラ
18…運航制御装置
19…バッテリ
23…残容量検出部
25…記憶部
40…位相操作アクチュエータ
110…プロペラ推進装置
111…電動機
114…制御部
116F…第1のプロペラ
116S…第2のプロペラ