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  • 特開-スライムコントロール方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005024
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スライムコントロール方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
D21H21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104995
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】東 俊文
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG07
4L055AH21
4L055BD11
4L055BD12
4L055FA04
(57)【要約】
【課題】 一態様において、抄紙工程において効率的にスライムをコントロール可能な方法を提供する。
【解決手段】 本開示は、一態様において、抄紙工程におけるスライムコントロール方法に関する。本開示のスライムコントロール方法は、抄紙工程における白水回収系又は白水循環系の少なくとも一つの白水貯留部にスライムコントロール剤を供給することを含み、前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の下部から行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙工程におけるスライムコントロール方法であって、
抄紙工程における白水回収系又は白水循環系の少なくとも一つの白水貯留部にスライムコントロール剤を供給することを含み、
前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の下部から行う、方法。
【請求項2】
前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の底部に配置された薬剤注入口から底面に対して水平方向に供給することにより行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スライムコントロール剤を、20L/分以上の流量で供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記スライムコントロール剤の供給は、間欠添加又は連続的に行う、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記スライムコントロール剤は、前記白水貯留部における上流側から下流側に向かって供給する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記スライムコントロール剤は、結合ハロゲン、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、二酸化塩素及び過酸化水素からなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抄紙工程におけるスライムコントロール方法に関する
【背景技術】
【0002】
紙パルプ産業は用水多消費産業であるため、紙パルプ工場においては大量の水が使用され、排出される。排出される水の一つとして、パルプスラリーを抄紙する際に排出される、微細なパルプ繊維を含む白水がある。水資源の有効利用の観点から、製造工程で排出される白水といった水の再生及び再利用が広く行われている。その一例として、回収した白水は、抄紙機のシャワー水等として再利用することが行われている。
【0003】
一方、白水は微生物や細菌の栄養源となる有機物を多く含むことから、微生物や細菌由来のスライムが循環水系や、各設備及びそれらを繋ぐ配管等に発生するという問題がある。また、発生したスライムが、製紙原料に混入することで、紙切れによる生産効率の低下を引き起こしたり、紙製品の品質を低下させたりするという問題がある。
【0004】
スライム発生の問題を解決するために、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1は、製紙工程の上流の原料系に当たる損紙系を、他の原料と混合される直前まで常に菌数を1×107個/mL以下に維持するように、抗菌剤を用いて制御すること等を開示する。特許文献2は、製紙工程水に対する殺菌剤の殺菌率が50%以上90%未満となるように殺菌剤を添加することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-105692号公報
【特許文献2】WO2014/030751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、スライムを十分にコントロールできない場合がある。このため、抄紙工程におけるスライムを効率的にコントロール可能な方法が求められている。
【0007】
本開示は、抄紙工程においてスライムを効率的にコントロール可能な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、抄紙工程におけるスライムコントロール方法であって、抄紙工程における白水回収系又は白水循環系の少なくとも一つの白水貯留部にスライムコントロール剤を供給することを含み、前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の下部から行う方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、抄紙工程において効率的にスライムをコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係る抄紙工程の一例を説明するための図である。
図2図2は、本開示にスライムコントロール方法の一実施形態を説明するための図である。
図3図3は、本開示にスライムコントロール方法の一実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示における「抄紙工程におけるスライムコントロール」とは、抄紙工程において、微生物由来の堆積物及び/又は付着物を制御又は抑制することをいう。本開示においてスライムコントロールとしては、一又は複数の実施形態において、白水貯留部に発生又は堆積する堆積物の量を低減すること、堆積物の発生を抑制すること、付着物の発生又は形成を抑制すること、及び微生物の増殖を抑制すること等が挙げられる。本開示における「微生物由来の堆積物及び/又は付着物」は、一態様において、スライムを含み、かつスライム判定に用いるニンヒドリン判定で陽性を示すものを含みうる。
【0012】
本開示における「白水貯留部」は、抄紙工程における白水回収系又は白水循環系内に存在する白水を貯留するための一又は複数の貯留槽を含みうる。白水貯留部は、一又は複数の実施形態において、一時的に白水が滞留する箇所を含みうる。白水貯留部としては、一又は複数の実施形態において、抄紙機(例えば、ワイヤーパート等)から排出される白水を回収し貯留するための槽(白水サイロ/白水ピット)、余剰白水ピット、及びシールピット等が挙げられる。本開示のスライムコントロール方法は、一又は複数の実施形態において、抄紙機(ワイヤーパート)に原料パルプスラリーを供給するインレットに白水を導入する貯留槽(例えば、余剰白水ピット及び白水ピット等)において行うことにより、抄紙工程におけるスライムコントロールをより効率的に行うことができる。
本開示のスライムコントロール方法は、一又は複数の実施形態において、インレットのパルプ濃度を局部的に調整するCP装置を導入している抄紙工程で好適に行うことができる。
【0013】
本開示における「抄紙工程」とは、パルプスラリー(原料パルプ)を抄紙機によって抄紙することのみならず、抄紙により多量排出される白水を回収する白水回収系及び回収した白水を再利用する白水循環系(以下、これらを併せて「循環水系」とも云う。)を包含する工程をいう。本開示における「白水」とは、抄紙機においてワイヤーパートやプレスパート等から排出される水溶液のことをいう。白水は、一又は複数の実施形態において、抄紙時に使用する原料パルプに由来する微細繊維、及びその他の製紙用薬剤等を含んでいてもよい。
【0014】
本開示における「製紙工程水」としては、一又は複数の実施形態において、パルプスラリー及び白水をはじめ、原質系、原料調成系、白水循環系及び白水回収系といった循環水系の工程水、及び水循環工程水系に供給される工業用水や再利用水を含みうる。本開示におけるパルプとしては、一又は複数の実施形態において、晒化学パルプ、未晒化学パルプ、晒機械パルプ、未晒機械パルプ、古紙パルプ(DIP)及びブロークパルプ等が挙げられる。晒化学パルプ及び未晒化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)及びサルファイトパルプ(SP)等が挙げられる。晒機械パルプ及び未晒機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)及びサーモメカニカルパルプ(TMP)等が挙げられる。
【0015】
図1に、本開示における抄紙工程の一例を説明するための模式図を示す。原料調製工程で調製された原料パルプスラリーは、種箱1に保管される。種箱1に保管された原料パルプスラリーは、1次ファンポンプ11によりクリーナー2に送られ、デキュレーター3を経由して槽4で炭酸カルシウム等の薬剤が添加された後、2次ファンポンプ12により1次スクリーン5を経由してインレット6に送られる。インレット6に送られた原料パルプスラリーは、ワイヤーパート(脱水部)7に供給され、そこで脱水される。脱水された湿潤シートは、プレスパート(圧搾・搾水部、図示せず)からドライヤーパート(乾燥部、図示せず)に送られる。ワイヤーパート7での脱水により排出される白水は、回収されて白水サイロ8に貯留される。白水サイロ8からあふれた白水(余剰の白水)は、余剰白水ピット9に導入され、そこからMJスクリーン13を経由してインレット6に導入されて再利用されるか、及び/又は2次スクリーン14及び1次ファンポンプ11を経由してクリーナー2に導入されて再利用される。
【0016】
図1では、白水サイロ8とインレット6との間に余剰白水ピット9が配置されている形態を例にとり説明したが、本開示の方法はこの形態に限定されず、例えば、白水サイロ8の白水が余剰白水ピット9を介さずにスクリーン13を経由してインレット6に導入される形態であってもよい。
【0017】
図1では、ワイヤーパート7から排出される白水を白水サイロ8に回収して貯留する形態を例にとり説明したが、白水サイロ8に貯留される白水はワイヤーパート7から排出される白水に限られず、一又は複数の実施形態において、抄紙機におけるプレスパート等のワイヤーパート以外のウエットパートから排出される白水を白水サイロ8に回収してもよい。
【0018】
[スライムコントロール方法]
本開示は、一態様において、抄紙工程におけるスライムコントロール方法に関する。本開示のスライムコントロール方法は、抄紙工程における白水回収系又は白水循環系の少なくとも一つの白水貯留部において、その下部からスライムコントロール剤を供給することを含む。本開示のスライムコントロール方法によれば、一又は複数の実施形態において、白水貯留物における微生物由来の堆積物を減量又は低減することができる。
【0019】
本開示のスライムコントロール方法によれば、さらには、一又は複数の実施形態において、抄紙工程における各設備及びそれらを繋ぐ配管等における微生物由来の堆積物を減量又は低減することができうる。また、本開示のスライムコントロール方法によれば、一又は複数の実施形態において、抄紙工程における各配管の閉塞の発生を抑制することができる。本開示のスライムコントロール方法によれば、一又は複数の実施形態において、紙製品への欠点の発生を抑制することもできうる。本開示のスライムコントロール方法によれば、一又は複数の実施形態において、通常紙の生産を停止して行われている計画的清掃を行う間隔を長くすることができる。
【0020】
本開示のスライムコントロール方法は、スライムコントロール剤を白水貯留部の下部から供給することを含む。本開示において「白水貯留部の下部から供給する」こととしては、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の底面付近から供給することが挙げられる。より効率的にスライムコントロールを行う点からは、スライムコントロール剤は、白水貯留部の底面により近い位置から供給することが好ましいく、さらに効率的にスライムコントロールを行う点からは、白水貯留部の底面に配置された注入口(ノズル)より供給することがより好ましい。
【0021】
スライムコントロール剤の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、10L/分以上である。スライムコントロール剤の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、20L/分以上、30L/分以上、40L/分以上、又は50L/分以上である。スライムコントロール剤の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、100L/分以下、80L/分以下、又は70L/分以下である。
【0022】
本開示においてスライムコントロール剤は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の下部から、白水貯留部の底面と略水平方向に供給することが好ましい。本開示においてスライムコントロール剤は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の底部に配置された薬剤注入口から底面に対して水平方向に供給することが好ましい。
【0023】
スライムコントロール剤は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の水の流れの上流側から下流側に向かって供給することが好ましい。スライムコントロール剤は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水を外部に排出するための排出口側に向かって供給してもよい。
【0024】
スライムコントロール剤の供給は、一又は複数の実施形態において、白水貯留部内に配置された一カ所の薬剤注入口から行ってもよいし、白水貯留部内に配置された2カ所以上の薬剤注入口から行ってもよい。より効率的にスライムコントロールを行う点からは、白水貯留部の底部に配置された複数の薬剤注入口から行うことが好ましい。
【0025】
スライムコントロール剤の供給は、一又は複数の実施形態において、連続的であってもよいし、間欠的であってもよく、より効率的にスライムコントロールを行う点から、間欠的に行うことが挙げられる。
【0026】
スライムコントロール剤を間欠的に供給する場合は、一又は複数の実施形態において、スライムコントロール剤の供給を所定の時間、間隔をあけて行う。1回あたりの供給時間は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、1分以上、2分以上、3分以上、4分以上又は5分以上である。1回あたりの供給時間は、同様の点から、一又は複数の実施形態において、60分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下又は10分以下である。1日当たりの供給頻度(回数)は、一又は複数の実施形態において、1回以上、2回以上、3回以上、4回以上又は5回以上である。1日当たりの供給頻度(回数)は、一又は複数の実施形態において、20回以下、15回以下、14回以下、13回以下、12回以下、11回以下又は10回以下である。
【0027】
スライムコントロール剤としては、一又は複数の実施形態において、結合ハロゲン、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、二酸化塩素及び過酸化水素等が挙げられる。
【0028】
結合ハロゲンとしては、一又は複数の実施形態において、結合塩素及び結合臭素等が挙げられる。より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンが好ましい。
モノクロラミン及びモノブロラミンは、OCl-(Br-)+NH4 +→NH2Cl(Br)+H2Oのような反応で生成される。一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸塩とアンモニウム化合物とを混合することによりモノクロラミンを生成できる。アンモニウム化合物としては、一又は複数の実施形態において、硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、及びスルファミン酸アンモニウムが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0029】
モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを含むスライムコントロール剤としては、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム又は次亜塩素酸カルシウムの次亜塩素酸塩の水溶液と、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム若しくは硝酸アンモニウムの水溶性の無機アンモニウム塩の水溶液又はアンモニア水とを混合することにより生成した薬剤等が挙げられる。
次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とのモル比は、一又は複数の実施形態において、全残留塩素量と窒素とのモル比として、1:1~1:2、1:1.1~1:2、1:1.2~1:2、又は1:1.2~1:1.6である。
本開示において「全残留塩素」とは、遊離残留塩素(HOCl,OCl-)と結合残留塩素(クロラミン)とを合わせたものであり、本開示において「全残留塩素量」とは、遊離残留塩素と結合残留塩素との合計量であり、本開示において「全残留塩素濃度」とは、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度との合計を意味する。全残留塩素濃度は、実施例に記載の方法より測定できる。
【0030】
次亜塩素酸塩としては、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム及び次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0031】
亜塩素酸塩としては、一又は複数の実施形態において、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム及び亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0032】
二酸化塩素は、極めて不安定な化学物質であるため、その貯蔵や輸送は非常に困難である。その場で公知の方法により二酸化塩素を製造(生成)し、添加濃度に調整して用いることが好ましい。
二酸化塩素は、一又は複数の実施形態において、以下の反応により製造することができる。また、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いて製造してもよい。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2→2ClO2+3NaCl+H2
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl→4ClO2+5NaCl+2H2
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素及び硫酸との反応
2NaClO3+H22+H2SO4→2ClO2+Na2SO4+O2+2H2
【0033】
スライムコントロール剤は、白水貯留部に貯留される液体(白水)中の全残留塩素濃度(モノブロラミンの場合は全残留塩素濃度換算値として)が、一又は複数の実施形態において、0.5mg/L~30mg/Lとなるように供給することができる。スライムコントロール剤の供給量(濃度)は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、1mg/L以上、1.5mg/L以上、又は2mg/L以上が挙げられる。スライムコントロール剤の供給量(全残留塩素濃度)は、同様の点から、一又は複数の実施形態において、20mg/L以下、15mg/L以下、10mg/L以下、7.5mg/L以下又は5mg/L以下が挙げられる。
【0034】
スライムコントロール剤の供給は、一又は複数の実施形態において、白水回収系又は白水循環系内に存在する1つの白水貯留部であってもよいし、系内に存在する複数の白水貯留部であってもよい。
【0035】
本開示のスライムコントロール方法は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、スライムコントロール剤の供給が行われる白水貯留部に、該白水貯留部の底面に沿って製紙工程水を供給することを含んでいてもよい。本開示において「底面に沿って供給する」こととしては、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の底面に沿って移動するように製紙工程水を供給すること、白水貯留部の底面に対して略水平方向となるように製紙工程水を供給すること、白水貯留部の底部に配置された注入口(ノズル)から底面に対して略水平方向に製紙工程水を供給すること等が挙げられる。より効率的にスライムコントロールを行う点からは、製紙工程水の供給は、白水貯留部の底面により近い位置から行うことが好ましく、さらに効率的にスライムコントロールを行う点からは、白水貯留部の底面に配置された注入口(ノズル)より行うことが好ましい。
【0036】
製紙工程水の供給は、一又は複数の実施形態において、白水貯留部内に配置された一カ所の薬剤注入口から行ってもよいし、2カ所以上の薬剤注入口から行ってもよい。より効率的にスライムコントロールを行う点からは、白水貯留部の底部に配置された複数の薬剤注入口から行うことが好ましい。
【0037】
製紙工程水の供給は、一又は複数の実施形態において、連続的であってもよいし、間欠であってもよい。
【0038】
製紙工程水は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水貯留部の水の流れの上流側から下流側に向かって供給することが好ましい。製紙工程水は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、白水貯留部内に白水を導入するための導入口側から、白水を外部に排出するための排出口側に向かって供給してもよい。
【0039】
製紙工程水は、一又は複数の実施形態において、スライムコントロール剤の供給位置の近傍から供給を行ってもよい。本開示のスライムコントロール方法は、一又は複数の実施形態において、スライムコントロール剤を供給する薬剤注入口の近傍に配置された注入口から、製紙工程水を供給することを含む。
【0040】
製紙工程水の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、20L/分以上である。製紙工程水の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、30L/分以上、40L/分以上、又は50L/分以上である。製紙工程水の流量は、より効率的にスライムコントロールを行う点から、一又は複数の実施形態において、500L/分以下、400L/分以下、又は300L/分以下である。
【0041】
本開示のスライムコントロール方法は、一又は複数の実施形態において、スライムコントロール剤が供給された白水貯留部において堆積物の量を低減させるための攪拌を行うことを含まない。本開示における攪拌としては、一又は複数の実施形態において、水中攪拌機等によって、横向き、下向き、又は斜め下向きの水流を噴射させることによる攪拌が挙げられる。本開示のスライムコントロール方法は、一又は複数の実施形態において、白水貯留部において、噴射式の水中攪拌装置を用いて攪拌することを含まない。
【0042】
<実施形態1>
本開示の特に限定されない一実施形態を、図面を用いて説明する。
本実施形態1では、白水貯留部が余剰白水ピット9であり、スライムコントロール剤が結合ハロゲン(モノクロラミン)であり、モノクロラミンを余剰白水ピット9の下部から供給する場合を例にとり説明する。余剰白水ピット9は、白水サイロ8からあふれた余剰の白水が導入される槽である。本開示のスライムコントロール方法の一実施形態は、モノクロラミンを余剰白水ピット9の下部から供給することにより、スライムコントロールを行う。
【0043】
余剰白水ピット9等に貯留される白水は、微生物や細菌の栄養源となる有機物を多く含む。この有機物(固形分や懸濁物質)が余剰白水ピット9等の底部に堆積し、そこで製品の欠点の原因となりうるスライムを発生する場合がある。通常は、月に2回程度、計画的に製造ラインを止めて生産を中止して洗浄が行われている。また、通常の運転時において、スライムコントロール剤等の薬剤を添加することにより、スライムの発生を抑制するための対策が行われている。
特に、インレット6に供給される白水は、インレットにおけるパルプスラリーの濃度調整に使用される。このため、余剰白水ピット9等のインレット6に接続する(インレット6の上流に位置する)白水貯留部におけるスライム(堆積物)の発生は、製品(紙)の品質低下や生産効率低下に直結するため、これらにおけるスライムコントロールが極めて重要である。
【0044】
図2A及びBに、本実施形態における余剰白水ピット9の構成の一例を示す模式図を示す。図2Aは模式断面図であり、図2Bは模式上面図である。余剰白水ピット9の底部には、モノクロラミンを供給するための薬剤注入口(ノズル)23が配置されている。注入口23は、垂直方向に延びた配管24と接続し、配管24の他端はポンプ25等に接続している。余剰白水ピット9には、その上面から白水サイロ(図示せず)からあふれた余剰の白水が導入される(図示せず)。余剰白水ピット9の一方の壁面にはピット内の白水を排出するための排出口21,22が形成され、排出口22はMJスクリーンを経てインレット6に接続し、排出口23は2次スクリーン14を経て種箱1と1次ファンポンプ11の間に接続している。
【0045】
モノクロラミンを供給するための注入口23は、余剰白水ピット9の上流側の壁面(白水の排出口22,23が形成された壁面に対向する壁面)近傍であって、余剰白水ピット9の底面に沿って水平方向に、排出口22,23に向かってモノクロラミンを供給可能なように、その先端が余剰白水ピット9の底面に接した状態で配置されている。図2に示すように、注入口23は、余剰白水ピット9の一つの壁面に沿って等分になるように複数設置されている。
【0046】
モノクロラミンの供給を余剰白水ピット9の下部(底面付近)で行うことにより、余剰白水ピットの底面への微生物由来の堆積物の量を抑制又は低減することができ、かつ堆積に伴う微生物による代謝産物の生成の抑制等を行うことができうる。
【0047】
モノクロラミンの供給は、限定されるものではないが、供給時間5~20分間で、1日あたり6回又は12回の頻度で間欠的に行えばよい。モノクロラミンの流量は、限定されるものではないが、20L/分~70L/分が挙げられる。
【0048】
モノクロラミンに加えて、回収白水(製紙工程水)を、注入口23から供給してもよい。回収白水の供給は、モノクロラミンの供給と同時に行ってもよいし、モノクロラミンの供給を行わないタイミングで行ってもよい。注入口23からの回収白水の供給は、限定されるものではないが、20L/分~250L/分の流量で、連続的又は間欠的に行うことができる。
【0049】
<実施形態2>
その他の実施形態として、余剰白水ピット9の底部にモノクロラミン供給のための薬剤注入口に加えて、回収白水(製紙工程水)供給のための薬剤注入口が配置された形態を例にとり説明する。本実施形態は、回収白水供給のための薬剤注入口がさらに余剰白水ピット9に配置され、そこから回収白水を供給する以外は、実施形態1と同様である。
【0050】
図3A及びBに、本実施形態における余剰白水ピットの構成の一例を示す模式図を示す。図3Aは模式断面図であり、図3Bは模式上面図である。図3A及びBに示すように、本実施形態では余剰白水ピットの底部には、モノクロラミンを供給するための注入口23と、回収白水を供給するための注入口31とが配置されている。注入口23は垂直方向に延びた配管24を介してポンプ25に接続し、注入口31は垂直方向に延びた配管32を介してポンプ33に接続している。
【0051】
モノクロラミンを供給するための注入口23と回収白水を供給するための注入口31とは、余剰白水ピット9の上流側の壁面(白水の排出口22,23が形成された壁面に対向する壁面)近傍に、隣接して配置されている。また、注入口23、31の先端は、モノクロラミンが余剰白水ピット9の底面に沿って水平方向に供給可能なように余剰白水ピット9の底面に接した状態で配置されている。
図3に示すように、注入口23及び注入口31は、余剰白水ピット9の一つの壁面に沿って等分になるように複数設置されている。
【0052】
モノクロラミン及び回収白水の供給を余剰白水ピットの下部(底面付近)で行うことにより、余剰白水ピットの底面への微生物由来の堆積物の量を抑制又は低減することができ、かつ堆積に伴う微生物による代謝産物の生成の抑制等を行うことができうる。
【0053】
モノクロラミンの供給は、限定されるものではないが、供給時間5~20分間で、1日あたり6回又は12回の頻度で間欠的に行えばよい。モノクロラミンの流量は、限定されるものではないが、20L/分~70L/分が挙げられる。
【0054】
回収白水の供給は、限定されるものではないが、20L/分~250L/分の流量で、連続的又は間欠的に行うことができる。
【0055】
[紙の製造方法]
本開示は、その他の態様として、本開示のスライムコントロール方法により抄紙工程におけるスライムコントロールを行うことを含む紙の製造方法に関する。本開示の紙の製造方法におけるスライムコントロールは、上述する本開示のスライムコントロール方法と同様に行うことができる。
【0056】
製造される紙の種類は、特に限定されず、一又は複数の実施形態において、新聞用紙、印刷用紙、情報用紙、包装用紙、衛生用紙、雑種紙、段ボール原紙、紙器用板紙、及び雑板紙等が挙げられる。印刷用紙としては上質紙やコート紙等が例示でき、情報用紙としてはPPC用紙や感熱紙原紙等が例示でき、包装用紙としては純白ロール紙や晒クラフト紙等が例示でき、衛生用紙としてはティッシュペーパーやトイレットペーパー等が例示でき、雑種紙としては食品容器原紙や塗工印刷用原紙などが例示でき、段ボール原紙としてはライナーや中しん原紙などが例示でき、紙器用板紙としては白板紙や色板紙などが例示でき、雑板紙としては石膏ボードや紙管原紙などが例示できる。
【0057】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
[1] 抄紙工程におけるスライムコントロール方法であって、
抄紙工程における白水回収系又は白水循環系の少なくとも一つの白水貯留部にスライムコントロール剤を供給することを含み、
前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の下部から行う、方法。
[2] 前記スライムコントロール剤の供給は、前記白水貯留部の底部に配置された薬剤注入口から底面に対して水平方向に供給することにより行う[1]記載の方法。
[3] 前記スライムコントロール剤を、20L/分以上の流量で供給することを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記スライムコントロール剤の供給は、間欠添加又は連続的に行う、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記スライムコントロール剤は、前記白水貯留部における上流側から下流側に向かって供給する、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記スライムコントロール剤は、結合ハロゲン、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、二酸化塩素及び過酸化水素からなる群から選択される、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
【0058】
以下、実施例及び比較例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例0059】
下記調製例1~4にしたがいモノクロラミン水溶液及びモノブロラミン水溶液を調製した。
【0060】
[調製例1]次亜塩素酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの混合液によるモノクロラミン水溶液の調製
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(全残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で全残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、30%硫酸アンモニウム水溶液(硫酸アンモニウム(キシダ化学(株)製)30gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、全残留塩素量と窒素とのモル比が1:1.2となるようにモノクロラミン水溶液を調製した。
【0061】
[調製例2]次亜塩素酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの混合液によるモノクロラミン水溶液の調製
全残留塩素量と窒素とのモル比を1:1.6とした以外は、調製例1と同様に調製した。
【0062】
[調製例3]次亜塩素酸ナトリウムと塩化アンモニウムとの混合液によるモノクロラミン水溶液の調製
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(全残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で全残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、20%塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(キシダ化学(株)製)20gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、全残留塩素量と窒素とのモル比が1:1.2となるようにモノクロラミン水溶液を調製した。
【0063】
[調製例4]次亜塩素酸ナトリウムと臭化アンモニウムとの混合液によるモノブロラミン水溶液の調製
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(全残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で全残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、1%水酸化ナトリウム水溶液を30ml/L加え、30%臭化アンモニウム水溶液(臭化アンモニウム(キシダ化学(株)製)30gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、全残留塩素量と窒素とのモル比が1:1.2となるようにモノブロラミン水溶液を調製した。
【0064】
[試験方法]
某製紙工場(印刷用上質紙抄造)において余剰白水ピット(縦:10m×横:4~5m、高さ:3~4m、喫水面:深さ2~3m)に、調製例1において製造した薬剤を、添加時の全残留塩素濃度(mg/L)が下記表1に記載の数値になるように添加した。また、1回あたりの添加時間、1日あたりの添加回数、添加箇所、白水ピット底部水流の条件及び稼働日数は、下記表1に示すとおりとした。
表1に示す一定日数稼働後の余剰白水ピット底面の堆積物量を目視で確認した。なお、稼働日数が異なるのは、トラブルによる緊急停止或いは紙替えによる稼働停止のためである。
各実施例及び比較例につき、以下に具体的に説明する。
【0065】
[実施例1]
実施例1では、図3に示すように、薬剤を供給するための注入口23及び回収白水を供給するための注入口31を、余剰白水ピット9の底面に接するように配置した。これらの注入口23,31は、排出口21,22とは反対側の壁面(余剰白水ピットの上流側)に並行に敷設した。薬剤及び回収白水は、これらの注入口23,31から余剰白水ピットの底面に対して水平方向に上流側から下流側に向かって供給した。
薬剤(調製例1)の供給は、流量が50~60L/分で、添加時の全残留塩素濃度の値が3.8mg/Lになるように、1回あたりの添加時間が10分、添加の間隔が4時間おきに1日6回とした。回収白水の供給は、200L/分で24時間、連続して行った。
【0066】
11日間稼働後の余剰白水ピット底面の堆積物量を目視観察し、下記表1に示す評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。なお、余剰白水ピット底面の堆積物は、スライム判定に用いるニンヒドリン判定で陽性を示した。
Day1、4、7及び11において複数回薬剤を供給した後の薬剤添加前後における全残留塩素濃度を下記の方法により測定した。その結果の一例を下記表2に示す。また、全残留塩素濃度と合わせて、薬剤の添加前後における生菌数を下記の方法により測定した。その結果を下記表3に示す。薬剤添加前とは、薬剤添加開始前の30分前であり、薬剤添加後とは、薬剤添加を停止する直前である。なお、全残留塩素濃度及び生菌数を測定するためのサンプルは、MJスクリーン13の直前配管から採取した。
【0067】
[全残留塩素濃度の測定方法]
全残留塩素濃度の測定は、JIS K0101「工業用水試験方法」に記載されているジエチル-p―フェニレンジアミン(DPD)比色法で測定した。
[生菌数の測定方法]
生菌数は、採取したサンプルを必要に応じて段階的に希釈して一般生菌数用標準寒天平板培地にて48時間培養し、形成されたコロニー数をカウントした。
【0068】
[比較例1]
比較例1では、薬剤を供給するための注入口を余剰白水ピットの喫水面下(目安としてピット深さの上辺から1/3部)に敷設し、そこから薬剤(調製例1)を供給した。薬剤(調製例1)の供給は、流量が50~60L/分で、添加時の全残留塩素濃度の値が2.4mg/Lになるように、1回あたりの添加時間5分、添加の間隔が4時間おきに1日6回とした。比較例1では、回収白水の供給は行わなかった。
3日間稼働後の余剰白水ピット底面の堆積物量を目視観察し、下記表1に示す評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。なお、稼働が3日間であることは、余剰白水ピット底面の堆積物に起因するトラブルにより緊急停止したためである。
【0069】
[比較例2]
比較例2では、回収白水を200L/分で24時間、回収白水を連続して供給した以外は、比較例1と同様に行った。なお、回収白水を供給するための注入口は、余剰白水ピットの底面に敷設した。
4日間稼働後の余剰白水ピット底面の堆積物量を目視観察し、下記表1に示す評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。稼働が4日間であることは、余剰白水ピット底面の堆積物に起因するトラブルにより緊急停止したためである。
【0070】
[比較例3]
比較例3では、薬剤の供給を余剰白水ピットの喫水面下(目安としてピット深さの上辺から1/3部)に敷設した注入口から行った以外は、実施例1と同様に行った。
5日間稼働後の余剰白水ピット底面の堆積物量を目視観察し、下記表1に示す評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。稼働が5日間であることは、余剰白水ピット底面の堆積物に起因するトラブルにより緊急停止したためである。
また、実施例1と同様に、Day1、2、4及び5において複数回薬剤を供給した後の薬剤添加前後における全残留塩素濃度及び生菌数を測定した。それらの結果を下記表2及び3に示す。
【0071】
【表1】
目視評価基準
5:ピット底面一面を覆う堆積物がみられる。
4:ピット底面の3/4程度が堆積物で覆われている。
3:ピット底面の半分程度が堆積物で覆われている。
2:ピット底面の1/3が堆積物に覆われている。
1:ピット底面を覆う堆積物がわずかにみられる。
0:ピット底面の堆積物が全くみられない。
【0072】
【表2】
【表3】
【0073】
実施例1では、薬剤を余剰白水ピット底面に配置した注入口から供給し、かつ、回収白水を該ピット底面に配置した注入口から連続して供給した。その結果、表1に示すように、実施例1では、11日間稼働させたところ、余剰白水ピット底面には堆積物量が全く確認できないか又は確認されたとしてもわずかであった。
一方、薬剤を余剰白水ピット上部から添加した比較例1~3では、余剰白水ピット底面の一面又は半分程度が堆積物で覆われていたため、稼働日数が3~5日間と実施例の半分以下であった。また、比較例3では薬剤の添加時間を比較例2の2倍としたが、比較例2と同様に、余剰白水ピットの底面の半分程度が堆積物で覆われていた。
実施例1では、各配管の閉塞が抑制され、紙製品への欠点の減少も確認できた。これに対し、比較例1~3では、各配管の閉塞の抑制、及び紙製品への欠点の減少は確認できなかった。
上述のような効果の結果、実施例1によれば、操業日数を伸ばすことにより、それにより紙の生産性を向上するとともに、紙替えによる稼働停止時における設備の洗浄時間の短縮化を図ることができた。
【0074】
表2及び3に示す添加前測定結果は、薬剤を間欠添加して以降、系内雰囲気がどのように変わっていったかを示す。表2及び3に示すように、実施例1と比較例3とをそれぞれ比較すると、実施例1では全残留塩素濃度及び生菌数ともに改善がみられた。なお、表3において、実施例1のDay1の添加前の生菌数が300と低い値であるのは、Day1のモノクロラミンの供給を複数回行ったあとの測定結果であるからである。
【0075】
[実施例2]
某製紙工場(印刷用上質紙抄造)において余剰白水ピット(縦:10m×横:4~5m、高さ:3~4m、喫水面:深さ2~3m)に、図2に示すように、薬剤を供給するための注入口23を、余剰白水ピットの底面に接するように、排出口21,22とは反対側の壁面(余剰白水ピットの上流側)に配置した。
薬剤(調製例1)の供給は、流量が50~60L/分で、添加時の全残留塩素濃度の値が3.8mg/Lになるように、1回あたりの添加時間が15分、添加の間隔が2時間おきに1日12回とした。実施例2では、回収白水の供給は行わなかった。
実施例1と同様に稼働させた結果、実施例1と同様に、余剰白水ピット底面に堆積物量が全く確認できないか又は確認されたとしてもわずかであった。
図1
図2
図3