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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050250
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】放射性物質の臨界管理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/40 20060101AFI20240403BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20240403BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G21C19/40
G21F5/005
G21F9/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156997
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】東坂 淳
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 正輝
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和也
(72)【発明者】
【氏名】原田 康弘
(57)【要約】
【課題】放射性物質の臨界管理方法および装置において、作業性の向上を図ると共に所定量の放射性物質を保管可能とする。
【解決手段】放射性物質を収納容器に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理方法において、放射性物質と水とが均質状態または非均質状態で存在するモデルの外面が最も外側に位置する臨界評価モデルを設定するステップと、臨界評価モデルを用いて放射性物質が未臨界状態で収納容器に収納可能な放射性物質および水の質量の上限値である管理値を設定するステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を収納容器に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理方法において、
前記放射性物質と水とが均質状態または非均質状態で存在するモデルの外面が最も外側に位置する臨界評価モデルを設定するステップと、
前記臨界評価モデルを用いて前記放射性物質が未臨界状態で前記収納容器に収納可能な前記放射性物質および前記水の質量の上限値である管理値を設定するステップと、
を有する放射性物質の臨界管理方法。
【請求項2】
前記臨界評価モデルは、球形状をなす、
請求項1に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項3】
前記管理値を満たす質量の前記放射性物質を前記収納容器に収容する、
請求項1または請求項2に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項4】
前記放射性物質と前記収納容器の内面との間に空間部を設ける、
請求項3に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項5】
前記臨界評価モデルを用いて前記管理値と共に前記収納容器の仕様を設定する、
請求項1に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項6】
前記放射性物質が収容された複数の前記収納容器を集積容器に収容して保管するとき、
前記臨界評価モデルを用いて複数の前記収納容器に収納可能な前記放射性物質の前記管理値を設定する、
請求項1に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項7】
前記臨界評価モデルを用いて前記管理値と共に前記集積容器に収容可能な前記収納容器の個数および配置を設定する、
請求項6に記載の放射性物質の臨界管理方法。
【請求項8】
放射性物質を収納容器に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理装置において、
前記放射性物質と水とが均質状態または非均質状態で存在するモデルの外面が最も外側に位置する臨界評価モデルを設定する評価モデル設定部と、
前記臨界評価モデルを用いて前記放射性物質が未臨界で前記収納容器に収納可能な前記放射性物質および水との質量の上限値である管理値を設定する解析部と、
を備える放射性物質の臨界管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核燃料物質や放射性廃棄物などを収納容器に収容して管理する放射性物質の臨界管理方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物などの放射性物質は、専用の収納容器に収納されて閉じ込め性が確保された状態で、所定の保管設備で保管管理される。この場合、放射性物質は、核燃料物質が含まれていることから、臨界が発生しない収納量に制限して保管する必要がある。そのため、収納容器に収納される放射性物質の放射線量を測定することが考えられる。放射性物質の放射線量を測定する技術として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-12097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射性物質を収納容器に収納する前に、放射性物質の放射線量を測定すること、つまり、放射性物質の未臨界度を計測することは、長時間を要する作業であり、作業性が良くないという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、作業性の向上を図ると共に所定量の放射性物質を保管可能とする放射性物質の臨界管理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の放射性物質の臨界管理方法は、放射性物質を収納容器に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理方法において、前記放射性物質と水とが均質状態または非均質状態で存在するモデルの外面が最も外側に位置する臨界評価モデルを設定するステップと、前記臨界評価モデルを用いて前記放射性物質が未臨界状態で前記収納容器に収納可能な前記放射性物質および前記水の質量の上限値である管理値を設定するステップと、を有する。
【0007】
また、本開示の放射性物質の臨界管理装置は、放射性物質を収納容器に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理装置において、前記放射性物質と水とが均質状態または非均質状態で存在するモデルの外面が最も外側に位置する臨界評価モデルを設定する評価モデル設定部と、前記臨界評価モデルを用いて前記放射性物質が未臨界で前記収納容器に収納可能な前記放射性物質および水との質量の上限値である管理値を設定する解析部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の放射性物質の臨界管理方法および装置によれば、作業性の向上を図ることができると共に、所定量の放射性物質を保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の放射性物質の臨界管理装置を表す概略構成図である。
図2図2は、放射性物質の臨界管理状態を表す概略図である。
図3図3は、放射性物質の収納量を評価する臨界評価モデルを表す概略図である。
図4図4は、放射性物質の移送形態を表す平面図である。
図5図5は、放射性物質の移送形態を表す正面図である。
図6図6は、放射性物質の移送形態の第1変形例を表す平面図である。
図7図7は、放射性物質の移送形態の第1変形例を表す正面図である。
図8図8は、放射性物質の移送形態の第2変形例を表す平面図である。
図9図9は、放射性物質の移送形態の第2変形例を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<放射性物質の臨界管理装置>
図1は、第1実施形態の放射性物質の臨界管理装置を表す概略構成図である。ここで、放射性物質とは、原子力プラントで発生する使用済核燃料、再処理工場で発生する放射性廃棄物、廃炉作業で発生する放射性廃棄物などである。
【0012】
図1に示すように、放射性物質の臨界管理装置10は、放射性物質を収納容器に収納して保管管理するものである。放射性物質の臨界管理装置10は、入力部11と、評価モデル設定部12と、記憶部13と、解析部14と、出力部15とを備える。
【0013】
入力部11は、評価モデル設定部12と解析部14に接続される。入力部11は、作業者が操作することで、評価モデル設定部12や解析部14に各種の信号を入力可能である。具体的に、入力部11は、評価モデル設定部12に対して、臨界評価モデルを設定するための設定条件を入力する。ここで、設定条件は、放射性物質の粒径、放射性物質と水との体積比、均質状態または非均質状態で存在するモデルの球径である。入力部11は、解析部14に臨界評価モデルを用いた解析条件(解析パラメータ)を入力する。ここで、解析条件とは、均質モデルまたは非均質モデルの球径、収容容器の寸法(容積、壁の厚さなど)である。入力部11は、作業者が操作可能である。入力部11は、例えば、キーボードやタッチ式のディスプレイである。
【0014】
評価モデル設定部12は、記憶部13に接続される。評価モデル設定部12は、入力部11から入力された設定条件に基づいて臨界評価モデルを設定する。後述するが、臨界評価モデルは、放射性物質と水とが均質状態で存在する均質モデル、または、放射性物質と水とが非均質状態で存在する非均質モデルである。臨界評価モデルは、均質モデルまたは非均質モデルの外面が最も外側に位置する。但し、以下の説明では、臨界評価モデルは、放射性物質と水とが非均質状態で存在する非均質モデルとして説明する。
【0015】
記憶部13は、評価モデル設定部12が設定した臨界評価モデルを記憶する。記憶部13は、解析部14に接続され、解析部14との間で各種データの送受信が可能である。記憶部13は、解析部14からの指令により記憶している臨界評価モデルを解析部14に出力する。
【0016】
解析部14は、記憶部13に記憶された臨界評価モデルを用いて収納容器に収納可能な放射性物質上限値である管理値を設定する。管理値は、放射性物質が臨界に到達しない未臨界での放射性物質の質量である。管理値は、最小臨界質量であり、例えば、実効増倍率が0.95となる最小質量である。この場合、臨界評価モデルで規定されている放射性物質の質量と水の質量との合計質量を基準として、収納容器に収納可能な放射性物質の質量上限値である管理値を設定する。また、解析部14は、臨界評価モデルを用いて管理値と共に収納容器の仕様を設定する。収納容器の仕様とは、収納容器の寸法(縦、横、高さ、容積、壁の厚さなど)である。解析部14は、出力部15に接続される。解析部14は、解析結果としての管理値と容器仕様を出力部15に出力する。
【0017】
なお、評価モデル設定部12および解析部14は、制御装置であり、制御装置は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、解析部14は、例えば、数値解析手法としての有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いて解析を行う。
【0018】
出力部15は、解析部14から解析結果が入力する。出力部15は、表示部であり、解析部14の解析結果としての管理値と容器仕様を表示する。出力部15は、例えば、モニタやプリンタなどである。
【0019】
放射性物質の臨界管理装置10により放射性物質の臨界管理値と収納容器の仕様が設定されると、特定の仕様の収納容器に管理値を満たす質量の放射性物質を収納して保管管理する。
【0020】
<収納容器>
図2は、放射性物質の臨界管理状態を表す概略図である。
【0021】
図2に示すように、収納容器21は、例えば、立方体(または、直方体)をなす容器である。収納容器は、図示しないが、例えば、開口部を有する本体と、開口部を閉止するように本体に固定される蓋を有することが好ましいが、この構成に限定されない。収納容器21は、例えば、中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したレジンから構成される中性子遮蔽体を有する遮蔽容器である。
【0022】
放射性物質22は、前述したように、使用済核燃料や放射性廃棄物である。放射性物質22は、球体であるが、形状は限定されない。放射性物質22は、収納容器21の内部に収納される。放射性物質22の外面と収納容器21の内面との間に空間部(空気層)が設けられる。
【0023】
<臨界評価モデル>
図3は、放射性物質の収納量を評価する臨界評価モデルを表す概略図である。
【0024】
放射性物質(放射性廃棄物)を収納容器に収納して保管する場合、収納容器の内部が全て放射性物質で満たされたとしても、未臨界を確保可能な「形状管理」という考え方が提唱されている。例えば、未臨界を確保可能な形状を有する収納容器に対して、放射性物質が収納される。しかし、処理された放射性物質が大量にある場合、大量の収納容器が必要になると共に、放射性物質を収納容器に収納可能な大きさに破砕したり、細断したりする必要があり、膨大な作業負荷が発生する。また、収納容器は、高価であって空間利用率が低いことから、収納容器の製造コストが増加する。
【0025】
そして、従来、放射性物質の質量管理による未臨界確保の考え方は、保守的な臨界評価モデルに基づいて質量管理値を設定しており、質量管理値が過小に設定されている。従来の保守的な臨界評価モデルに基づいた質量管理値の設定方法に対して、本実施形態は、現実的な臨界評価モデルに基づいた質量管理値の設定方法を提案する。現実的な臨界評価モデルに基づいた質量管理値の設定方法としては、実効増倍率の設定に放射性物質(核燃料物質)の現実的な燃焼度を想定する方法がある。ここで、現実的な燃焼度とは、原子炉が停止した時点で最も燃焼度が高い燃料の燃焼度である。
【0026】
本実施形態では、現実的な質量管理として、実効増倍率の設定に核燃料物質の現実的な燃焼度を想定することではなく、放射性物質の周囲に過剰な中性子反射体を想定しないで現実的な臨界評価モデルを着想し、現実的な臨界評価モデルに基づいて放射性物質を収納する収納容器の仕様および質量管理値を設定する。この方法により、放射性物質の切断寸法を大きくすることができると共に、収納容器への放射性物質の収納質量を増やすことが可能となる。
【0027】
すなわち、図3に示すように、現実的な臨界評価モデル30は、球形状をなす。臨界評価モデル30は、放射性物質31a(図3の黒い部分)と水31b(図3の白い部分)とが非均質状態で存在する非均質モデル31の外面が最も外側に位置するものである。臨界評価モデル30(非均質モデル31)は、設定条件としての放射性物質31aの粒径、放射性物質31aと水31bとの体積比、非均質モデルの球径R1により設定される。ここで、水31bは、減速材であり、放射性物質31aと水31bとが非均質状態で存在する状態とは、最も臨界が発生しやすい条件である。
【0028】
一方、従来の保守的な臨界評価モデルは、非均質モデル31の外側に球径方向に沿った厚さR2の中性子反射体(例えば、水)32が位置するものである。中性子反射体32の厚さR2は、例えば、30cmである。本実施形態の現実的な臨界評価モデル30は、中性子反射体32の厚さR2は、0cm、つまり、中性子反射体32の設定がない。例えば、核燃料物質を含む放射性廃棄物は、水中に保管されており、水中から取り出されて収納容器に収容される。このとき、放射性廃棄物は、外面に水がほとんどない状態で収納容器に収容される。このような収納容器への放射性廃棄物の収納状態を前提として、本実施形態の臨界評価モデル30は、球形状をなし、放射性物質31aと水31bとが非均質状態で存在する非均質モデル31の外面が最も外側に位置するものとする。
【0029】
<放射性物質の臨界管理方法>
本実施形態の放射性物質の臨界管理方法は、図1から図3に示すように、解析部14は、臨界評価モデル30を用いて放射性物質22が未臨界状態で収納容器21に収納可能な放射性物質31aおよび水31bの質量の上限値である管理値を設定する。また、解析部14は、臨界評価モデル30を用いて管理値と共に収納容器21の仕様を設定する。
【0030】
本実施形態の放射性物質の臨界管理方法は、放射性物質31aと水31bとが非均質状態で存在する非均質モデル31の外面が最も外側に位置する臨界評価モデル30を設定するステップと、臨界評価モデル30を用いて放射性物質22が未臨界状態で収納容器21に収納可能な放射性物質31aおよび水31bの質量の上限値である管理値を設定するステップとを有する。
【0031】
その後、本実施形態の放射性物質の臨界管理方法は、管理値を満たす質量の放射性物質22を収納容器に収容する。このとき、放射性物質22は、収納容器21の内面との間に空間部(空気層)を設ける。
【0032】
本実施形態の放射性物質の臨界管理方法では、上述した臨界評価モデル30を用いて管理値を設定することから、周囲に反射体が位置する従来の臨界管理モデルを用いた管理値による臨界管理方法に比べて、収納容器21に収納できる放射性物質の質量を、例えば、1.7倍に増加することができる。
【0033】
そのため、処理する放射性物質が大量にある場合であっても、1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の質量が増加することから、必要となる収納容器21の数を減少することができ、収納容器21の製造コストが低減される。また、1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の大きさが大きくなることから、放射性物質22の破砕作業が軽減されて作業負荷が低下する。
【0034】
<放射性物質の移送方法>
図4は、放射性物質の移送形態を表す平面図、図5は、放射性物質の移送形態を表す正面図である。
【0035】
また、図4および図5に示すように、本実施形態の放射性物質の臨界管理方法は、放射性物質22が収容された収納容器21を移送するとき、放射性物質22が収容された複数の収納容器21を大型の移送容器(集積容器)41に収容して移送し、所定の保管場所で保管管理する。移送容器41は、立方体(または、直方体)形状をなす。但し、収納容器21や移送容器41の形状は限定されない。移送容器41は、上段に4個の収納容器21を隣接して配置し、下段に4個の収納容器21を隣接して配置する。
【0036】
このとき、解析部14(図1参照)は、臨界評価モデル30(図3参照)を用いて複数の収納容器21に収納可能な放射性物質22の管理値を設定すると共に、移送容器41に収容可能な収納容器21の個数および配置を設定する。この場合、複数の収納容器21が移送容器41に収容されたとき、1個の収納容器21に対する管理値は減少する。
【0037】
この場合、移送容器41に収容する収納容器21の数に応じて1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の質量(管理値)が増減する。本実施形態の臨界評価モデル30を用いた解析にて、移送容器41に2個の収納容器21の場合、4個の収納容器21の場合、8個の収納容器21の場合における1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の収納質量、具体的に、水31bを含まない放射性物質31aの収納質量は、1個の収納容器21に収納可能な質量に対してそれぞれ約78%、約48%、約29%に減少する。一方、移送容器41に収容される収納容器21に収納できる放射性物質22の合計収納質量は、収納容器21の数が多いほど増加する。但し、1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の収納質量は、移送容器41に収容される収納容器21の数が少ないほど増加し、放射性物質22の破砕作業が軽減される。
【0038】
<放射性物質の移送方法の第1変形例>
図6は、放射性物質の移送形態の第1変形例を表す平面図、図7は、放射性物質の移送形態の第1変形例を表す正面図である。
【0039】
図6および図7に示すように、移送容器41は、2個の収納容器21を隣接して配置する。この場合、隣接して配置する2個の収納容器21は、移送容器41の内部で、対角線上に配置する。つまり、収納容器21を配置しない空間を設定する。この配置により、隣接する収納容器21の距離が長くなり、収納容器21の内部に収納できる放射性物質22の質量を増加できる。
【0040】
<放射性物質の移送方法の第2変形例>
図8は、放射性物質の移送形態の第2変形例を表す平面図、図9は、放射性物質の移送形態の第2変形例を表す正面図である。
【0041】
図8および図9に示すように、移送容器41は、2個の収納容器21を隣接して配置する。この場合、隣接して配置する2個の収納容器21は、移送容器41の内部で、対角線上に配置する。つまり、収納容器21を配置しない空間を設定する。そして、移送容器41は、収納容器21が配置されていない空間部に中性子吸収体42を配置する。この配置により、隣接する収納容器21の距離が長くなり、収納容器21の内部に収納できる放射性物質22の質量を増加できる。また、隣接する収納容器21の間の空間部に中性子吸収体42を配置することで、収納容器21の内部に収納できる放射性物質22の質量をさらに増加できる。
【0042】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、放射性物質22を収納容器21に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理方法において、放射性物質31aと水31bとが非均質状態(または、均質状態)で存在する非均質モデル(または、均質モデル)31の外面が最も外側に位置する臨界評価モデル30を設定するステップと、臨界評価モデル30を用いて放射性物質22が未臨界状態で収納容器21に収納可能な放射性物質31aおよび水31bの質量の上限値である管理値を設定するステップとを有する。
【0043】
第1の態様に係る放射性物質の臨界管理方法によれば、非均質モデル31の外側に反射体のない臨界評価モデル30を用いて管理値を設定することから、従来に比べて管理値を大きくして1個の収納容器21に収納できる放射性物質22の質量を増加することができる。そのため、処理する放射性物質に対して必要となる収納容器21の数を減少することができ、収納容器21の製造コストを低減することができる。また、1個の収納容器21に収納する放射性物質22の大きさを大きくすることができ、放射性物質22の破砕作業が軽減されて作業負荷を低下することができる。その結果、作業性の向上を図ることができると共に、所定量の放射性物質を保管することができる。
【0044】
第2の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第1の態様に係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、臨界評価モデル30は、球形状をなす。これにより、保守性を有し、かつ、現実的または合理的な解析を可能とすることができる。
【0045】
第3の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第1の態様または第2の態様に係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、管理値を満たす質量の放射性物質22を収納容器21に収容する。これにより、放射性物質22を収納容器21により安全に保管することができる。
【0046】
第4の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、放射性物質22と収納容器21の内面との間に空間部を設ける。これにより、放射性物質22を収納容器21により安全に保管することができる。
【0047】
第5の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、臨界評価モデル30を用いて管理値と共に収納容器21の仕様を設定する。これにより、放射性物質22を安全に保管することのできる収納容器21を製造することができる。
【0048】
第6の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、放射性物質22が収容された複数の収納容器21を移送容器(集積容器)41に収容して保管するとき、臨界評価モデル30を用いて複数の収納容器21に収納可能な放射性物質22の管理値を設定する。これにより、放射性物質22が収納された複数の収納容器21を移送容器41により安全な保管状態で移送して管理することができる。
【0049】
第7の態様に係る放射性物質の臨界管理方法は、第6の態様に係る放射性物質の臨界管理方法であって、さらに、臨界評価モデル30を用いて管理値と共に移送容器41に収容可能な収納容器21の個数および配置を設定する。これにより、収納容器21を安全に保管することのできる移送容器41を製造することができる。
【0050】
第8の態様に係る放射性物質の臨界管理装置は、放射性物質22を収納容器21に収納して保管管理する放射性物質の臨界管理装置において、放射性物質31aと水31bとが非均質状態(または、均質状態)で存在する非均質モデル(または、均質モデル)31の外面が最も外側に位置する臨界評価モデル30を設定する評価モデル設定部12と、臨界評価モデル30を用いて放射性物質22が未臨界で収納容器21に収納可能な放射性物質31aおよび水31bとの質量の上限値である管理値を設定する解析部14とを備える。これにより、処理する放射性物質に対して必要となる収納容器21の数を減少することができ、収納容器21の製造コストを低減することができる。また、1個の収納容器21に収納する放射性物質22の大きさを大きくすることができ、放射性物質22の破砕作業が軽減されて作業負荷を低下することができる。その結果、作業性の向上を図ることができると共に、所定量の放射性物質を保管することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 放射性物質の臨界管理装置
11 入力部
12 評価モデル設定部
13 記憶部
14 解析部
15 出力部
21 収納容器
22 放射性物質
30 臨界評価モデル
31 非均質モデル
31a 放射性物質
31b 水
32 中性子反射体
41 移送容器(集積容器)
42 中性子吸収体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9