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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050252
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】硬化性組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
C08F265/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157000
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
【テーマコード(参考)】
4J026
【Fターム(参考)】
4J026AA45
4J026BA27
4J026BA30
4J026BA50
4J026BB04
4J026CA03
4J026DB36
4J026FA05
4J026GA06
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】アルカリ現像性に優れる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る硬化性組成物は、(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有し、前記(B)成分と(C)成分とのモル比は、1:10~10:1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有し、
前記(B)成分と(C)成分とのモル比は、1:10~10:1である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の架橋性官能基が、ラジカル架橋性官能基、エポキシ基、および加水分解性シリル基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の主鎖が(メタ)アクリル系重合体である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、フタル酸誘導体、コハク酸誘導体、およびマレイン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基が、水酸基、アミノ基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(C)成分の架橋性官能基が、ラジカル架橋性官能基、加水分解性シリル基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
(E)成分:カルボン酸を含むアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂をさらに含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(C)成分が、以下の一般式(i)または(ii)で表される化合物である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
CH=CHC(=O)O-R-OH (i)
(式中、Rは、炭素数1~10の、2価の炭化水素基である。)
(CHO)Si-R-NH (ii)
(式中、Rは、炭素数1~10の、炭素原子、水素原子および窒素原子を含有する2価の有機基である。)
【請求項9】
前記(C)成分が、以下の化合物群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
CH=CHC(=O)O-(CH-OH、
CH=CHC(=O)O-(CH-OH、
(CHO)Si-(CHNH(CH-NH
【請求項10】
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有する硬化性組成物の製造方法であって、
前記(B)成分と前記(C)成分とを混合する第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた混合物と、前記(A)成分とを混合する第2の混合工程
と、
を有する、硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レジストのフレキソ化、高解像度化、基板のフレキシブル化、レジスト膜の薄膜化において高性能化の要求が出てきている。特許文献1には、レジスト用硬化性組成物に含まれる架橋成分として、架橋性官能基を有するビニル系重合体を使用することによって、良好な耐熱性、耐光性を維持しつつ、柔軟性に基づく基材追従性に優れた硬化物を与えうるレジスト用硬化性組成物が得られることが開示されている。また、特許文献2には、架橋性シリル基を有するビニル系重合体、エポキシ樹脂、および加熱硬化型潜在性硬化剤を含む硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-107511号公報
【特許文献2】国際公開第2006/077886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、アルカリ現像性に優れる硬化性組成物を実現するという観点からさらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、アルカリ現像性に優れる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化性組成物は、
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有し、前記(B)成分と(C)成分とのモル比は、1:10~10:1である。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化性組成物の製造方法は、
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有する硬化性組成物の製造方法であって、
前記(B)成分と前記(C)成分とを混合する第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた混合物と、前記(A)成分とを混合する第2の混合工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、アルカリ現像性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0010】
〔1.本発明の概要〕
上述のように、特許文献1には、レジスト用硬化性組成物に柔軟性を付与するために、架橋性官能基を有するビニル系重合体を、組成物に添加することが開示されている。しかし、架橋性官能基を有するビニル系重合体を組成物に添加することにより、組成物全体に含まれているカルボン酸成分の濃度が低下する。カルボン酸成分は、レジスト用硬化性組成物の重要な性能の一つであるアルカリ現像性に寄与する。そのため、カルボン酸成分の濃度が低下することにより、レジスト用硬化性組成物のアルカリ現像性が低下する場合があり、この点で改善の余地があった。
【0011】
上記の課題を解決するために本発明者は、架橋性官能基を有するビニル系重合体の構造にカルボン酸成分を導入することも検討した。しかし、このようなカルボン酸成分を配合することにより樹脂の粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向があった。そこで、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、酸無水物基を有する化合物と、架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物とを反応させることに着目した。そして、これらの化合物の反応により、アルカリ現像性に優れる硬化性組成物を実現できることを見出した。さらに、前記硬化性組成物は、剥離性および機械物性(引張特性)を維持できていることが確認された。酸無水物基を有する化合物と、架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物との反応生成物は、(i)カルボキシル基と、(ii)硬化性組成物に含まれるビニル系重合体が有する架橋性官能基と反応し得る官能基、との両方を有している。この反応生成物が、架橋性官能基を有するビニル系重合体の架橋ネットワークに組み込まれることが、得られる硬化物の物性を維持しながらアルカリ現像性を改善することに寄与していると推測される。また、本発明者は、前記硬化性組成物において、酸無水物基を有する化合物と、架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物とのモル比を特定の範囲に調整することが好ましいことも見出した。
【0012】
〔2.硬化性組成物〕
<(A)成分>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)成分として、架橋性官能基を有するビニル系重合体を含む。ビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。
【0013】
具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ
)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等を挙げることができる。
【0014】
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を表す。
【0015】
前記ビニル系重合体の主鎖は、生成物の低温での柔軟性、粘度、および/または伸びなどの物性に優れる点から、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましく、アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものであることがさらに好ましい。「(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるもの」としては、(メタ)アクリル系重合体のことを指す。さらに、ここで、「主として」とは、(A)成分の主鎖を構成するビニル系モノマーのうち、50モル%以上が(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0016】
特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-メトキシブチルが挙げられる。これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させて用いても構わない。
【0017】
(A)成分の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、取り扱い易さの観点から、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本願明細書においてGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0018】
(A)成分の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500~1,000,000の範囲が好ましく、1,000~100,000がより好ましく、5,000~80,000がさらに好ましく、8,000~50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、低粘度で取扱いが容易になるが、得られる硬化物の伸びが不十分である、および/または柔軟性に劣る傾向がある。一方、分子量が高くなりすぎると、取扱いが困難になる傾向がある。
【0019】
(ビニル系重合体の合成方法)
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体は、種々の重合法により得ることができる。重合法は特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体の分子量および分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましい。また、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。これら各重合法については、例えば、特開2005-232419公報、および特開2006-291073公報などの記載を参照できる。
【0020】
(架橋性官能基)
(A)成分のビニル系重合体に含まれる架橋性官能基としては特に限定されないが、貯蔵安定性、架橋後の硬化物の特性に優れる点で、ラジカル架橋性官能基、エポキシ基、および加水分解性シリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
(ラジカル架橋性官能基)
一実施形態において、ラジカル架橋性官能基としては特に限定されないが、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。(A)成分の架橋性官能基がラジカル架橋性官能基である場合、(A)成分が分子中に有するラジカル架橋性官能基の数の下限は、1分子当たり平均して1.0個以上であることが好ましく、1.2個以上であることがより好ましく、1.4個以上であることがさらに好ましい。ラジカル架橋性官能基の数の上限は、1分子当たり平均して2個以下であることが好ましい。ラジカル架橋性官能基の数が上記の範囲内であれば、触媒および開始剤により、重合体同士が充分に架橋され、充分な強度の硬化物を得ることができる。
【0022】
((メタ)アクリロイル基)
一実施形態において、(メタ)アクリロイル基とは、下記一般式(1)で表される構造をしている。
-OC(O)C(R)=CH (1)
一般式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基である。炭化水素基は、任意で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される1種類以上のヘテロ原子により置換されていてもよい。Rの具体例としては、H、CH、CHCH、(CHCH(nは2~19の整数)、C、CHOH、CN等が挙げられる。(A)成分の反応性の観点からは、Rは、HまたはCHが好ましい。
【0023】
重合体に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、例えば、特許第5536383号公報の段落[0081]~[0090]に記載の方法が挙げられる。
【0024】
(エポキシ基)
一実施形態において、エポキシ基としては特に限定されないが、グリシジル基、グリシジルエーテル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、オキセタン基、アミノグリシジル基、フェノキシグリシジル基等が挙げられる。(A)成分の架橋性官能基がエポキシ基である場合、(A)成分が分子中に有するエポキシ基の数の下限は、1分子当たり平均して1.0個以上であることが好ましく、1.4個以上であることがより好ましく、2.0個以上であることがさらに好ましい。エポキシ基の数の上限は、1分子当たり平均して4.0個以下であることが好ましい。
【0025】
(加水分解性シリル基)
一実施形態において、加水分解性シリル基としては、一般式(2);
-[Si(R2-b(Y)O]-Si(R3-a(Y) (2)
(式中、R、Rは、いずれも炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または(R’)SiO-(R’は炭素数1~20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2、または3を、また、bは0、1、または2を示す。mは0~19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
で表される基があげられる。
【0026】
加水分解性基としては、例えば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基が挙げられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましく、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない方が反応性は高い。すなわち、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基・・・の順に反応性が低くなり、これらは目的および用途に応じて選択できる。
【0027】
加水分解性基または水酸基は、1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1~5個の範囲が好ましい。加水分解性基または水酸基が加水分解性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。加水分解性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。とくに、一般式(3)
-Si(R3-a(Y) (3)
(式中、RおよびYは前記と同じ、aは1~3の整数)で表される加水分解性シリル基が、入手が容易である点で好ましい。
【0028】
なお、特に限定はされないが、硬化性および硬化物の物性が良好であることからaは2以上が好ましい。
【0029】
このような加水分解性シリル基を有するビニル系重合体は、ケイ素原子1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性シリル基を有する重合体が用いられることが多い。しかし、低温で使用する場合等、特に非常に速い硬化速度を必要とする場合、その硬化速度は充分ではなく、また硬化後の柔軟性を出したい場合には、架橋密度を低下させる必要があり、そのため架橋密度が充分でないためにべたつき(表面タック)が生じる場合がある。その際には、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)を用いることが好ましい。
【0030】
また、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)は2のもの(例えばジメトキシ官能基)よりも硬化が速いが、貯蔵安定性および力学物性(伸び等)に関しては2のものの方が優れている場合がある。硬化性と物性バランスをとるために、2のもの(例えばジメトキシ官能基)と3のもの(例えばトリメトキシ官能基)を併用してもよい。
【0031】
例えば、Yが同一の場合、aが多いほどYの反応性が高くなるため、Yとaを種々選択することにより硬化性および硬化物の機械物性等を制御することが可能であり、目的および用途に応じて選択できる。また、aが1のものは鎖延長剤として加水分解性シリル基を有する重合体、具体的にはポリシロキサン系、ポリオキシプロピレン系、ポリイソブチレン系からなる少なくとも1種の重合体と混合して使用できる。硬化前に低粘度、硬化後に高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性を有する組成物とすることが可能である。
【0032】
(A)成分のビニル系重合体の加水分解性シリル基の数は、特に限定されないが、組成物の硬化性、および硬化物の物性の観点から、分子中に平均して1個以上有することが好ましく、より好ましくは1.1個以上4.0以下、さらに好ましくは1.2個以上3.5個以下である。
【0033】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性官能基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性官能基を分子鎖末端に有するものである。
【0034】
上記加水分解性シリル基を分子鎖末端に有するビニル系重合体、中でも(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3-14068号公報、特公平4-55444号公報、特開平6-211922号公報等に開示されている。しかしながらこれらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、加水分解性シリル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、同一架橋点間分子量における粘度が増大し、取り扱いが困難になるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するビニル系重合体を得る場合には、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。ただし、分子量分布の狭い重合体に特定するものではない。
【0035】
得られたビニル系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2007-302749号公報の段落[0083]~[0117]に記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下で付加させる方法が好ましい。
【0036】
(その他の樹脂)
(A)成分は単独または複数のいずれでも使用可能であるが、他の樹脂を併用しても差し支えない。
【0037】
<(B)成分>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(B)成分として、酸無水物基を有する化合物を含む。(B)成分が(C)成分と反応すると、前記酸無水物基に由来するカルボキシル基を有する反応生成物が得られるため、アルカリ現像性を制御できる。このような化合物としては特に限定されないが、フタル酸誘導体、コハク酸誘導体、およびマレイン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
(B)成分の化合物の具体例としては、無水酢酸、無水酪酸、無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、テトラプロペニル無水コハク酸(3-ドデセニル無水コハク酸)、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボ
ン酸二無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸およ
びこれらの誘導体、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、グリセリンビスア
ンヒドロトリメリテートモノアセテート、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、グリセロールトリストリメリット酸無水物、酸無水物基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物、およびこれらの誘導体が挙げられる。酸無水物基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸が挙げられる。これらのうち、硬
化性組成物に配合し、次いで当該組成物を硬化させる場合、(A)成分へのカルボン酸残基の導入(共架橋)が確実に可能となる点で、酸無水物基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物が好ましい。また、下記で説明する(E)成分との相溶性および混合性等の点で、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、およびこれらの誘導体、ならびに無水コハク酸誘導体が好ましい。
【0039】
<(C)成分>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(C)成分として、架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物を含む。(C)成分は、酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有するため、(B)成分の酸無水物基と反応できる。また(C)成分は架橋性官能基を有するため、(B)成分と反応後、(A)成分の架橋ネットワークに取り込まれることができる。(C)成分により(B)成分に架橋性が付与されるとも言える。
【0040】
(C)成分の化合物に含まれる架橋性官能基としては、ラジカル架橋性官能基、加水分解性シリル基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基等が挙げられる。これらのうち、反応性および貯蔵安定性等の観点から、ラジカル架橋性官能基、加水分解性シリル基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。ラジカル架橋性官能基、加水分解性シリル基、およびエポキシ基の詳細については、(A)成分に含まれる架橋性官能基と同じであるため、ここでは省略する。
【0041】
(C)成分の、酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基は、水酸基、アミノ基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。ただし(C)成分は(B)成分と異なる化合物であることが好ましい。
【0042】
酸無水物基と反応してエステル結合を形成することが可能な官能基としては、水酸基が挙げられる。水酸基は、アルコール性水酸基であってもよい。アルコール性水酸基を含む化合物としては、一般式(i)で示される化合物が挙げられる。
CH=CHC(=O)O-R-OH (i)
(式中、Rは、炭素数1~10の、2価の炭化水素基である。)
上記一般式(i)で示される化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ト
リメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、2-ヒドロキシエチルアクリレート(CH=CHC(=O)O-(CH-OH)または4-ヒドロキシブチルアクリレート(CH=CHC(=O)O-(CH-OH)が好ましい。
【0043】
酸無水物基と反応してアミド結合を形成することが可能な官能基としては、アミノ基が挙げられる。アミノ基を含む化合物としては、アミン系のシランカプリング剤(アミノシラン類)が挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、以下の一般式(ii)で示される化合物が挙げられる。
(CHO)Si-R-NH (ii)
(式中、Rは、炭素数1~10の、炭素原子、水素原子および窒素原子を含有する2価の有機基である。)
上記一般式(ii)で示される化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン((CHO)Si-(CHNH(CH-NH)が好ましい。
【0044】
(C)成分の化合物が、エポキシ基を含む場合、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート、エポキシシラン、脂環式エポキシ基含有シラン化合物等を(C)成分として使用することができる。
【0045】
ここで、(A)成分に含まれる架橋性官能基がラジカル架橋性官能基である場合、(C)成分として水酸基を有する化合物を使用することができる。(A)成分に含まれる架橋性官能基が加水分解性シリル基である場合、(C)成分としてアミノ基を有する化合物を使用することができる。(A)成分に含まれる架橋性官能基がエポキシ基である場合、(C)成分として水酸基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、および/またはエポキシ基を含む化合物を使用することができる。
【0046】
なお、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物において、(B)成分と(C)成分とのモル比は1:10~10:1であり、2:8~8:2であることが好ましく、3:7~7:3であることがより好ましく、4:6~6:4であることがさらに好ましく、アルカリ現像性付与の観点から1:1であることが最も好ましい。(B)成分と(C)成分とのモル比が上記の範囲であることにより、アルカリ現像性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0047】
さらに、硬化性組成物中、(B)成分は(A)成分100重量部に対して0.1~50重量部であることが好ましく、0.3~30重量部であることがより好ましく、0.5~20重量部であることがさらに好ましい。また、硬化性組成物中、(C)成分は(A)成分100重量部に対して。0.1~50重量部であることが好ましく、0.3~30重量
部であることがより好ましく、0.5~20重量部であることがさらに好ましい。
【0048】
<(D)成分>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(D)成分として、開始剤あるいは硬化触媒を含む。具体的には、(A)成分が(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体の場合、開始剤として光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤は、光照射(UV照射など)により、硬化性組成物を硬化させる役割を果たす。
【0049】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-メトキシアセトフェン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントーン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1が挙げられる。
【0050】
また、光ラジカル重合開始剤のさらなる例としては、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤も挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、UV照射時の深部硬化性に優れるため好ましい。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらの中では、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0051】
上述した光ラジカル重合開始剤の中でも、反応性が高いことから、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。一実施形態において、硬化性組成物は、アシルホスフィンオキサイドおよびフェニルケトン系化合物の両方を含有している。
【0052】
(D)成分の開始剤としては、熱により分解、重合を開始するラジカル開始剤も使用することが可能である。該ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物等一般にラジカル重合に用いられる開始剤を使用することができる。具体的には、アゾビスイソブチ
ロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイドであるパーブチルD(日本油脂(株)製の商品名)、パーブチルO(日本油脂(株)製の商品名)、パーテトラA(日本油脂(株)製の商品名)の有機過酸化物が挙げられる。
【0053】
(A)成分が加水分解性シリル基を有するビニル系重合体の場合、硬化触媒を用いて本組成物を硬化させることができる。硬化触媒としては、例えばシラノール縮合触媒を使用することができる。
【0054】
(シラノール縮合触媒)
シラノール縮合触媒としては、例えば、後述する縮合触媒(i)~(iii)が挙げられる。以下、縮合触媒(i)~(iii)の各々の具体例について説明する。
【0055】
縮合触媒(i):アミン化合物
アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピリジン、2-アミノピリジン、2-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-(ジメチルアミノピリジン)、2-ヒドロキシピリジン、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、2-ピペリジンメタノール、2-(2-ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、6-(ジブチルアミノ)-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBA-DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、アジリジン等の含窒素複素環式化合物;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、2-(1-ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミン等のその他のアミン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等のビグアニド類等が挙げられる。
【0056】
縮合触媒(ii):酸(プロトン酸およびルイス酸)、アミン化合物とスルホン酸類との塩、リン化合物とスルホン酸類との塩
縮合触媒(ii)としては、例えば、塩酸、臭酸、ヨウ酸、リン酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2-ヘキサデセン酸、6-ヘキサデセン酸、7-ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10-ウンデセン酸等のモノエン不飽和脂肪酸類;リノエライジン酸、リノール酸、10,12-オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリ
ン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14-エイコサトリエン酸、7,10,13-ドコサトリエン酸、4,8,11,14-ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19-ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18-エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸等のポリエン不飽和脂肪酸類;2-メチル酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、ピバル酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2-フェニル酪酸、イソ吉草酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、バーサチック酸、ネオデカン酸、ツベルクロステアリン酸等の枝分れ脂肪酸類;プロピオール酸、タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、7-ヘキサデシン酸等の三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルプス酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸等の脂環式カルボン酸類;アセト酢酸、エトキシ酢酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルコン酸、サビニン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2-ヒドロキシオクタデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸等の含酸素脂肪酸類;クロロ酢酸、2-クロロアクリル酸、クロロ安息香酸等のモノカルボン酸のハロゲン置換体;アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルこはく酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸等の鎖状ジカルボン酸;1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、オキシ二酢酸等の飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸等の鎖状トリカルボン酸;安息香酸、9-アントラセンカルボン酸、アトロラクチン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等のアミノ酸;トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;ジメシチルアミンとペンタフルオロベンゼンスルホン酸との塩、ジフェニルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩、トリフェニルホスフィンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩等が挙げられる。
【0057】
縮合触媒(iii):チタン化合物、錫化合物、ジルコニウム化合物
縮合触媒(iii)のうち、チタン化合物としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセテート)等を挙げることができる。縮合触媒(iii)のうち、錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキ
サイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等を挙げることができる。縮合触媒(iii)のうち、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)等を挙げることができる。
【0058】
上記シラノール縮合触媒の中でも、入手容易性、省資源等の観点で、錫化合物が好ましい。錫化合物の量は、薄膜硬化性により優れ、耐熱性(例えば、耐熱着色安定性に優れ、加熱減量をより抑制することができること)により優れ、熱硬化性に優れるという観点から、(D)成分1モルに対し、0.01~10モルであるのが好ましく、0.1~5モルであるのがより好ましい。
【0059】
(A)成分がエポキシ基を有するビニル系重合体の場合、単官能性アミン、多官能性アミン、酸無水物、光酸発生剤、熱酸発生剤、光塩基発生剤、熱塩基発生剤を使用することができる。
【0060】
<(E)成分>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(E)成分として、カルボン酸を含むアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂をさらに含んでいてもよい。これらの樹脂は特に限定されないが、カルボン酸を含むアクリル樹脂としては、例えばサイクロマーP(ACA)Z320(ダイセル・オルネックス製)を使用することができる。なお、(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含む組成物を改質剤と捉えた場合、(E)成分は、前記改質剤を添加する対象となるレジスト材料であるとも言える。
【0061】
<その他の成分>
前記硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分以外に、その他の成分を含有してもよい。その他の成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下、その他の成分の例について説明する。
【0062】
(レベリング剤)
硬化性組成物は、硬化した際の表面凹凸の調整のためにレベリング剤を含有していてもよい。あるいは、硬化性組成物は、パターン印刷用レジスト組成物を被着体にコートする際に、塗膜の平滑性を確保し、折損を防止するためにレベリング剤を含有していてもよい。レベリング剤としては、例えば、フッ素系、シリコーン系、アクリル系、エーテル系、またはエステル系のレベリング剤を使用することができる。
【0063】
(消泡剤)
硬化性組成物は、スクリーン印刷等の印刷で発生する気泡の発生を防止する目的で、消泡剤を含有してもよい。消泡剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、またはフッ素系の消泡剤を使用することができる。
【0064】
(希釈剤)
硬化性組成物は、希釈剤を含有していてもよい。希釈剤としては、非反応性希釈剤および反応性希釈剤が挙げられる。これらのうち、(B)成分と(C)成分との反応を十分に促進させ、かつ、硬化性組成物中の成分と希釈剤との反応を効果的に抑制する観点からは、非反応性希釈剤が好ましい。さらに、希釈剤としては、200℃以下で乾燥できるものが好ましく、例えば、セルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、ピロリドン、ビニルピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、フェノキシエチルアクリレー
ト、またはポリエチレングリコール-モノアクリレート等が挙げられる。
【0065】
(接着付与剤)
硬化性組成物は、基材への接着性を向上させるために、接着性付与剤を含有していてもよい。接着性付与剤としては、架橋性シリル基含有化合物、極性基を有するビニル系単量体、シランカップリング剤、酸性基含有ビニル系単量体が好ましく、更にはシランカップリング剤、酸性基含有ビニル系単量体が好ましい。
【0066】
シランカップリング剤としては、例えば、分子中に、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲノ基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子および水素原子以外の原子を有する官能基と、架橋性シリル基と、を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。
【0067】
(充填剤)
硬化性組成物は、一定の強度を担保するために、充填剤を含有していてもよい。充填剤としては、充填剤としては、特に限定されず、フュームドシリカ以外のシリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、含水ケイ酸)、ドロマイト、カーボンブラック、酸化チタン、または活性亜鉛華等が、少量で充填率を改善できる観点から、好ましい。特に、これら充填剤で強度の高い硬化物を得たい場合には、主に、結晶性シリカ、溶融シリカ、含水ケイ酸、カーボンブラック、または活性亜鉛華等から選ばれる少なくとも1種の充填剤を用いることが好ましい。
【0068】
(可塑剤)
硬化性組成物は、粘度、スランプ性、または硬化した場合の硬度、引張り強度、もしくは伸び等の機械特性の調整のために、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(例えば、EASTMAN168(EASTMAN CHEMICAL製))等のテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(例えば、Hexamoll DINCH(BASF製))等の非フタル酸エステル化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル(Mesamoll(LANXESS製));トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;が挙げられる。
【0069】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物の製造方法は、(B)成分と(C)成分とを混合する第1の混合工程と、前記第1の混合工程で得られた混合物と、前記(A)成分とを混合する第2の混合工程と、を有する。製造方法について以下に説明する。
【0070】
第1の混合工程において、(B)成分と(C)成分とを混合および攪拌することで瞬時に反応させて反応生成物を得ることができる。第2の混合工程において、第1の混合工程で得られた反応生成物と(A)成分とを混合する。その後、(D)成分を添加し、攪拌および混練を行う。(B)成分と(C)成分との反応生成物を予め調製し、その後(A)成分と混合することにより、(A)成分に対する可塑化効果および(A)成分への酸価付与
効果が高くなる。なお、(E)成分およびその他の成分はどの段階で添加してもよい。
【0071】
前記製造方法における混練に使用する装置としては、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、遊星式攪拌装置等の攪拌脱泡装置が挙げられる。上記装置は、単独でまたは複数種を組み合わせて使用することが出来る。
【0072】
なお、混練する場合、混練時の発熱により、本硬化性組成物の安定性が損なわれることがないよう、混練時の温度は、0℃以上80℃以下であることが好ましく、5℃以上60℃以下であることがより好ましく、10℃以上50℃以下であることが更により好ましい。
【0073】
〔3.用途〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、例えばレジスト用途に使用される。レジストの種類として、半導体レジスト、液状ソルダーレジスト、電着レジスト、ドライフィルムレジスト、液晶用フォトレジスト等が挙げられる。前記硬化性組成物は、IT家電用回路形成材料等にも使用することができる。使用部位としては、半導体レジストでは半導体回路、液状ソルダーレジストではプリント配線基板、電着レジストでは、プリント基板、ビルドアップ基板、立体回路基板、ドライフィルムレジストでは片面・両面・多層基板の回路形成用に、液晶用フォトレジストは、TFT配線用、カラーフィルター用等に使用可能である。
【0074】
例えば、前記硬化性組成物をドライフィルムレジスト用途に使用した場合、UV硬化によって得られたフィルム状の硬化物は優れた柔軟性およびアルカリ現像性を有する。したがって、得られたフィルム状の硬化物を用いて銅張積層板の回路パターンを形成した場合、回路として残存させたい部分を十分に保護できる。また、回路形成後の保護部分のレジストをアルカリにより簡単に剥離できる。
【0075】
また、前記硬化性組成物により柔軟性が付与されたドライフィルムレジストを用いて形成されたフレキシブル回路基板は、ファインパターン化(微細化)が可能となる。
【0076】
<まとめ>
本発明の一実施形態には、以下の態様が含まれる。
<1>
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有し、
前記(B)成分と(C)成分とのモル比は、1:10~10:1である、硬化性組成物。
<2>
前記(A)成分の架橋性官能基が、ラジカル架橋性官能基、エポキシ基、および加水分解性シリル基からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>
前記(A)成分の主鎖が(メタ)アクリル系重合体である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4>
前記(B)成分が、フタル酸誘導体、コハク酸誘導体、およびマレイン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5>
前記(C)成分の酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基が、水酸基、アミノ基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6>
前記(C)成分の架橋性官能基が、ラジカル架橋性官能基、加水分解性シリル基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7>
(E)成分:カルボン酸を含むアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂をさらに含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8>
前記(C)成分が、以下の一般式(i)または(ii)で表される化合物である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
CH=CHC(=O)O-R-OH (i)
(式中、Rは、炭素数1~10の、2価の炭化水素基である。)
(CHO)Si-R-NH (ii)
(式中、Rは、炭素数1~10の、炭素原子、水素原子および窒素原子を含有する2価の有機基である。)
<9>
前記(C)成分が、以下の化合物群より選択される少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
CH=CHC(=O)O-(CH-OH、
CH=CHC(=O)O-(CH-OH、
(CHO)Si-(CHNH(CH-NH
<10>
(A)成分:架橋性官能基を有するビニル系重合体、(B)成分:酸無水物基を有する化合物、(C)成分:架橋性官能基および酸無水物基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成することが可能な官能基を有する化合物、ならびに(D)成分:開始剤あるいは硬化触媒、を含有する硬化性組成物の製造方法であって、
前記(B)成分と前記(C)成分とを混合する第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた混合物と、前記(A)成分とを混合する第2の混合工程と、
を有する、硬化性組成物の製造方法。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断らない限り、「%」は「質量%」を指すものとする。
【0079】
<ドライフィルムレジスト硬化性組成物の性能評価>
以下の方法によって、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物の性能を評価した。
【0080】
(アルカリ現像性の評価)
以下に説明する実施例または比較例のドライフィルムレジスト硬化性組成物を基材に塗布し、乾燥させた後、2%炭酸水素カリウムに浸漬し、浸漬から30分後に現像性を評価
した。浸漬から30分後に現像残渣が確認されない場合、アルカリ現像性に優れていると言える。
〇:浸漬から30分後に現像残渣無し
×:浸漬から30分後に現像残渣有
(剥離性の評価)
以下に説明する実施例または比較例のドライフィルムレジスト硬化性組成物を基材に塗布し、乾燥させた。次に、実施例1~4、および比較例1~2は、UV照射により露光(エネルギー=200mW/cm、積算光量=2000mJ/cm)して硬化物を得た。実施例5および比較例3は、室温(23℃)、湿度55%の条件下で、7日間養生を行い、硬化物を得た。その後、得られた硬化物を1%水酸化ナトリウムに浸漬した。浸漬後、ドライフィルムレジスト硬化性組成物が基材から剥離するまでの時間に基づいて剥離性を評価した。なお、剥離するまでの時間が短い程、剥離性に優れていると言える。
〇:30分~1時間程度で剥離
(硬化物の物性)
以下に説明する実施例または比較例のドライフィルムレジスト硬化性組成物を加熱乾燥させて、1mm厚に調整した。次に、実施例1~4、および比較例1~2は、UV照射により露光(エネルギー=200mW/cm、積算光量=2000mJ/cm)して硬化物を得た。実施例5および比較例3は、室温(23℃)、湿度55%の条件下で、7日間養生を行い、硬化物を得た。その後、JIS K 6251の方法に従って、得られた硬化物の引張特性を評価した。
【0081】
<ドライフィルムレジスト硬化性組成物の調製>
[実施例および比較例で使用した材料]
●(A)成分:
・RC-200C(ラジカル架橋性を有する:ラジカル硬化型テレケリックポリアクリレート、(株)カネカ製、数平均分子量16,000、分子量分布1.1)
・SA-100S(加水分解性シリル基を有する:加水分縮合型テレケリックポリアクリレート、(株)カネカ製、数平均分子量22,000、分子量分布1.1)
●(B)成分:
・テトラプロペニル無水コハク酸(3-ドデセニル無水コハク酸)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
●(C)成分:
・4-ヒドロキシブチルアクリレート(和光純薬(株)製)
・N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(和光純薬(株)製)
●(D)成分:
(光ラジカル開始剤)
・2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad1173;IGM Resins B.V.製)
・ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad819;IGM Resins B.V.製)
(硬化触媒)
・ジブチル錫ジアセチルアセトナート(ネオスタンU220H、日東化成(株)製)
●(E)成分:カルボン酸を含むアクリル樹脂(サイクロマーP(ACA)Z320;ダイセル・オルネックス製)
●その他成分(反応性希釈剤):
・フェノキシエチルアクリレート
・ポリエチレングリコール-モノアクリレート(ブレンマーAE-200;日油(株)製)
[実施例1~5]
表1に記載の配合量の(B)成分および(C)成分を混合および攪拌することで瞬時に反応させ、(B)成分と(C)成分との反応生成物を得た。その後、ブレンド専用の容器(φ89×φ98×94mm、内容量470cc、ポリプロピレン製)に、(B)成分と(C)成分との反応生成物、および表1に記載の配合量の(A)成分を加え混合し、混合物を得た。得られた混合物に表1に記載の配合量の(D)成分を加え、薬匙にて手攪拌した。次に、専用の攪拌脱泡装置(泡取り錬太郎ARV-310、シンキー(株)製)を用いて、手攪拌によって得られた混合物にせん断を掛けて攪拌・混練し、その後、脱泡を行って、硬化性組成物を得た。次に、表1に記載の配合量の(E)成分およびその他の成分(反応性希釈剤)を加え、前記と同じ条件で攪拌、脱泡を行い、ドライフィルム硬化性組成物を得た。
【0082】
[比較例1~3]
(B)成分および(C)成分を添加しないこと以外は、表1に記載の配合量の各成分を使用して、実施例1~5と同様の方法でドライフィルム硬化性組成物を得た。
【0083】
【表1】
【0084】
(アルカリ現像性、剥離性評価)
全ての実施例および比較例において、剥離性に差は無かった。一方で、実施例1~5は比較例1~3と比較して、アルカリ現像性に優れることが確認できた。すなわち、(B)成分および(C)成分を含有することにより、得られる硬化性組成物のアルカリ現像性が改善されることが確認された。
【0085】
(引張特性)
フィルム形状維持に必要な機械物性(引張特性)として、破断点応力が0.5Mpa以
上、または破断点ひずみが5.0%以上であることが挙げられる。全ての実施例および比較例において、フィルム形状維持に必要な機械物性(引張特性)を有することが確認された。
【0086】
(総評)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含有する硬化性組成物は、剥離性および機械物性(引張特性)を維持したまま、アルカリ現像性が格段に改善していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、レジスト用硬化性組成物等に利用することができる。