(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050260
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】簡易寝袋
(51)【国際特許分類】
A47G 9/08 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A47G9/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157009
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522385751
【氏名又は名称】ソレイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】濱田 佳孝
(57)【要約】
【課題】十分に軽量化され、且つ破れ難い簡易寝袋を提供すること。
【解決手段】本発明は、シート10の一部を封止して、開口部4を有する袋状にした簡易寝袋Aにおいて、シート10が、無延伸オレフィン系フィルムからなり、シートの厚さが、10~100μmである簡易寝袋Aであり、シート10のうち、表側に位置する表側シート1には、径が0.5~3.5mmの貫通孔1cが設けられており、表側シート1が、貫通孔1cが設けられた領域の有孔部12と、貫通孔1cが設けられていない領域の無孔部11とを有し、有孔部12における貫通孔1cの開孔率が、0.1~16%であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一部を封止して、開口部を有する袋状にした簡易寝袋において、
前記シートが、無延伸オレフィン系フィルムからなり、
前記シートの厚さが、10~100μmである簡易寝袋。
【請求項2】
前記シートのうち、表側に位置する表側シートには、径が0.5~3.5mmの貫通孔が設けられており、
前記表側シートが、前記貫通孔が設けられた領域の有孔部と、前記貫通孔が設けられていない領域の無孔部とを有し、
前記有孔部における前記貫通孔の開孔率が、0.1~16%である請求項1記載の簡易寝袋。
【請求項3】
前記前側シートは、前記無孔部が中央に位置し、前記有孔部が前記無孔部の両側に設けられている請求項2記載の簡易寝袋。
【請求項4】
前記シートのうち、表側に位置する表側シート、及び、裏側に位置する裏側シートには、何れも、径が0.5~3.5mmの貫通孔が設けられており、
前記表側シート及び前記裏側シートが、それぞれ、前記貫通孔が設けられた領域の有孔部と、前記貫通孔が設けられていない領域の無孔部とを有し、
前記有孔部における前記貫通孔の開孔率が、0.1~16%である請求項1記載の簡易寝袋。
【請求項5】
前記表側シート及び前記裏側シートは、何れも、前記無孔部が中央に位置し、前記有孔部が前記無孔部の両側に設けられている請求項4記載の簡易寝袋。
【請求項6】
前記貫通孔が、熱針方式の有孔加工により形成されたものである請求項1記載の簡易寝袋。
【請求項7】
前記シートのうち、表側に位置する表側シートが、少なくとも、外側の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムであり、
前記シートのうち、裏側に位置する裏側シートが、少なくとも、外側の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムである請求項1記載の簡易寝袋。
【請求項8】
前記シートが帯状であり、
前記シートを縦方向に折り畳み、前記シートが重なり合った両側をヒートシールにより封止したものである請求項1記載の簡易寝袋。
【請求項9】
前記シートがチューブ状であり、
一方側の開口部をヒートシールにより封止したものである請求項1記載の簡易寝袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時やアウトドア等に用いることができる簡易型の寝袋(以下「簡易寝袋」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等の災害に備えて用意しておく、いわゆる防災グッズが知られている。
一般に、防災グッズには、生活必需品が含まれるが、その中でも寝具は、嵩張ることから、省かれることが多い。
【0003】
ところで、災害時においては、止むを得ず避難所等で睡眠をとらなければならない状況が生じ得る。例えば、寒さの厳しい地域においては、寝具がないと、被災者の身体に深刻な問題を引き起こす恐れがある。
一方で、アウトドアアクティビティ(以下単に「アウトドア」という。)においては、寝具は嵩張るため、荷物として負担となっている。そのため、軽量化された簡易寝袋が求められている。
【0004】
これに対し、軽量化されたの寝袋が開発されている。
例えば、外面からアルミニウム蒸着ポリエステル層、ポリエチレン層および吸水性不織布層の順で積層された積層体により形成された袋体からなり、袋体の両側面に袋体内方への折り目を形成したマチ部を備え、マチ部における袋体の開口近傍には、折り目を介して袋体の側面の上部と下部とを開閉自在に接合する止着部材を備える緊急用寝袋が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の緊急用寝袋は、ポリエチレン層及び吸水性不織布層の順で積層された積層体により形成され、且つマチ部を有しているので十分に軽量であるとは言えない。
また、簡易寝袋は避難所やテント内等で使用されることを踏まえると、十分に破れ難いものが求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に軽量化され、且つ破れ難い簡易寝袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、袋状とするシートを無延伸オレフィン系フィルムからなるものとし、これの厚さを所定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、シートの一部を封止して、開口部を有する袋状にした簡易寝袋において、シートが、無延伸オレフィン系フィルムからなり、シートの厚さが、10~100μmである簡易寝袋である。
【0010】
本発明の簡易寝袋においては、シートのうち、表側に位置する表側シートには、径が0.5~3.5mmの貫通孔が設けられており、表側シートが、貫通孔が設けられた領域の有孔部と、貫通孔が設けられていない領域の無孔部とを有し、有孔部における貫通孔の開孔率が、0.1~16%であることが好ましい。
このとき、表側シートは、無孔部が中央に位置し、有孔部が無孔部の両側に設けられていることがより好ましい。
【0011】
また、本発明の簡易寝袋においては、シートのうち、表側に位置する表側シート、及び、裏側に位置する裏側シートには、何れも、径が0.5~3.5mmの貫通孔が設けられており、表側シート及び裏側シートが、それぞれ、貫通孔が設けられた領域の有孔部と、前記貫通孔が設けられていない領域の無孔部とを有し、有孔部における前記貫通孔の開孔率が、0.1~16%であることが好ましい。
このとき、表側シート及び裏側シートは、何れも、無孔部が中央に位置し、有孔部が無孔部の両側に設けられていることがより好ましい。
【0012】
本発明の簡易寝袋においては、貫通孔が、熱針方式の有孔加工により形成されたものであることが好ましい。
【0013】
本発明の簡易寝袋においては、シートのうち、表側に位置する表側シートが、少なくとも、外側の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムであり、シートのうち、裏側に位置する裏側シートが、少なくとも、外側の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムであることが好ましい。
【0014】
本発明の簡易寝袋においては、シートが帯状である場合、シートを縦方向に折り畳み、シートが重なり合った両側をヒートシールにより封止したものであることが好ましい。
また、シートがチューブ状である場合、一方側の開口部をヒートシールにより封止したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の簡易寝袋は、袋状であり、災害時やアウトドアで寝袋として使用できる。
また、袋状とするシートを無延伸オレフィン系フィルムからなるものとし、これの厚さを所定の範囲としているので、軽量でありながら破れ難いという利点を有している。すなわち、無延伸のものを採用しているので、引っ張られたとしても破れ難い。
また、比較的柔らかいオレフィン系を採用しているので、収納のために折り畳むことが可能であり、嵩張らないという利点がある。
【0016】
これらのことから、本発明の簡易寝袋は、所定のスペースに大量に備蓄することができる。
このため、被災地やキャンプ場等に、一度の搬送で大量に送ることも可能である。
また、各家庭においては、防災グッズの一つとして容易にこれに含ませることができる。
また、アウトドアに持っていく荷物としての負担を軽減することができる。
【0017】
本発明の簡易寝袋においては、径が上記範囲内の貫通孔を設けることにより、放湿性が向上するので、簡易寝袋内に熱が籠ることを抑制できる。
また、不使用時には、貫通孔から空気が抜けるため、よりコンパクトに折り畳むことが可能となる。
また、シートとして、比較的柔らかいオレフィン系を採用し、且つ、貫通孔を設けているので、フィルムが擦れる音(カサカサ音)が生じることを低減することができる。
【0018】
ここで、簡易寝袋においては、少なくとも、表側シートを、有孔部と、無孔部とからなるものとすることにより、保温性を維持する領域と、放湿性を発揮する領域とを分けることができる。これにより、保湿性を担保しつつ、十分な放湿性を発揮することが可能となる。
なお、裏側シートも同様に、有孔部と無孔部とからなるものとすることにより、使用者が寝返りをうって寝袋が捻じれたり、裏返った場合等であっても、放湿性の効果を担保することが可能となる。
また、有孔部の単位面積当たりの貫通孔の開孔率を上記範囲内とすることにより、保温性を阻害せず、適切な量の放湿が可能となる。
【0019】
本発明の簡易寝袋の表側シートにおいては、無孔部を中央に配置し、有孔部をその両側に設けることにより、使用者が横たわる中央領域の保温性を担保することができ、且つ、余分な湿気のみを両側の領域から放湿させることができる。
また、裏側シートにおいても同様に配置することで、放湿性を調整することができる。すなわち、積極的に、簡易寝袋を幅方向に回転させて、裏側シートの有孔部を表側に露出させることも可能である。
【0020】
本発明の簡易寝袋においては、表側シートが、熱可塑性のオレフィン系であり、且つ、無延伸で製造されたものであるので、貫通孔を、熱針方式の有孔加工により形成することができる。この場合、貫通孔を設ける際に、当該貫通孔の周縁に生じるバリも溶融されるので、バリが残ることを防止することができる。その結果、肌触りにも優れるものとなる。
【0021】
本発明の簡易寝袋は、表側シート及び裏側シートが、外側の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムからなる場合、保温効果がより向上する。
すなわち、寝袋内の温度を速やかに向上させることができる。
一方で、上述したように、貫通孔が設けられているので、放湿性にも優れる。
したがって、簡易寝袋によれば、内部の温度を速やかに上げることができ、且つ、経時的に寝袋内の湿度が高くなった場合に、貫通孔から放湿されることになるので、快適な睡眠を維持することが可能となる。
【0022】
本発明の簡易寝袋においてはシートが帯状である場合、シートを縦方向に折り畳み、シートが重なり合った両側をヒートシールにより封止すればよく、シートがチューブ状である場合、一方側の開口部をヒートシールにより封止すればよい。
これらの場合、簡単に、簡易寝袋を製造することができる。その結果、安価で大量製造が可能となる。
また、無延伸オレフィン系フィルムを採用しているので、封止した部分が、意図せずに開封してしまったとしても、再度、適切な位置でヒートシールを行うことができる。
なお、表側シート及び裏側シートの外側の面に無機物の蒸着を施した場合であっても、互いの内側の面に無延伸オレフィン系フィルムが露出しているので、ヒートシールにより封止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る簡易寝袋のヒートシールにより形成される封止部を説明するための垂直断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本発明に係る簡易寝袋は、いわゆる簡易型の寝袋であり、例えば、地震や台風等の災害時における避難所や、アウトドアにおけるキャンプ場等で用いられる。
また、不使用時においては、簡易寝袋は、軽量であり、且つ、コンパクトに折り畳むことが可能であるため、大量の備蓄や大量の同時搬送が可能となる。
また、各家庭においては、防災グッズとして収納しておくことができる。
また、アウトドアに持っていく荷物としての負担を軽減することができる。
【0026】
なお、本明細書において、「頭側」とは、簡易寝袋Aの開口部側であり、使用者が簡易寝袋A内に侵入した場合に頭が位置する側を意味し、「足側」とは、簡易寝袋Aの底部側であり、使用者が簡易寝袋A内に侵入した場合に足が位置する側を意味する。
また、「内側」とは、簡易寝袋Aの内部側を意味し、「外側」とは、簡易寝袋Aの外部側を意味する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る簡易寝袋Aは、帯状のシート10を重ね合わせ、頭側の開口部4を除く、三方(
図1でいう両側及び下側)の縁部同士を封止したものである。
すなわち、簡易寝袋Aは、表側に位置する表側シート1と、裏側に位置する裏側シート2と、三方の縁部が封止された封止部3と、一方(頭側)の縁部が封止されていない開口部4と、を有する。
なお、表側シート1と裏側シート2とは、同じ大きさとなっており、両者を重ね合わせた場合、その縁部の位置が互いに一致するようになっている。
【0028】
具体的には、簡易寝袋Aは、上面視で矩形状であり、頭側の縁部が開口部4となっており、足側の縁部及び両側の縁部が封止部3となっている。
このため、簡易寝袋Aは、袋状であり、使用者は、開口部4から、簡易寝袋A内に侵入することにより、寝袋として使用できる。
また、簡易寝袋Aは、いわゆるマチ部を有さないため、嵩張らず、容易に折り畳むことが可能となっている。
すなわち、簡易寝袋Aは、不使用時には、折り畳むことを繰り返すことにより、よりコンパクトなサイズにすることができる。
【0029】
簡易寝袋Aにおいて、シート10(表側シート1及び裏側シート2)としては、無延伸オレフィン系フィルムが用いられる。
無延伸オレフィン系フィルムとしては、無延伸で製造された、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のオレフィン系フィルム等が挙げられる。
このように、簡易寝袋Aにおいては、シート10として、オレフィン系のフィルムを採用しているので、軽量であり、リサイクル可能であり、且つ、比較的柔らかいので、使用時に、フィルムが擦れる音(カサカサ音)が生じることを低減することができる。
これに加えて、耐酸性、耐塩基性にも優れるので、酸又は塩基により溶出することも防止できる。
簡易寝袋Aにおいては、シート10として、敢えて、無延伸のフィルムを採用しているので、伸び易く、引っ張られたとしても破れ難い。
また、耐摩耗性に優れると共に、後述するヒートシールを可能としている。
【0030】
シート10においては、無延伸オレフィン系フィルムの一方の面に無機物の蒸着が施されている。具体的には、表側シート1が、少なくとも、外側(裏側シート2とは反対側)の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムとなっており、裏側シート2が、少なくとも、外側(表側シート1とは反対側)の面に無機物の蒸着が施された無延伸オレフィン系フィルムとなっている。
【0031】
ここで、無機物の蒸着は、いわゆる真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法で、無延伸オレフィン系フィルムの一方側の面に施される。
採用される無機物としては、アルミニウム、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
すなわち、無延伸オレフィン系フィルムに対して、いわゆるアルミ蒸着、アルミナ蒸着、シリカ蒸着等が施される。これらの中でも、汎用性の観点から、無機物としてアルミナを採用したアルミナ蒸着を施すことが好ましい。
これにより、簡易寝袋Aは、保温効果が優れるものとなる。
【0032】
シート10の厚さは、10~100μmであることが好ましく、10~40μmであることがより好ましい。
シート10の厚さが、10μm未満であると、破れやすくなる欠点があり、シート10の厚さが、100μmを超えると、重量が大きくなると共に、折り畳み難くなる欠点がある。
【0033】
簡易寝袋Aにおいては、表側シート1及び裏側シート2にそれぞれ複数の貫通孔1cが等間隔で設けられている。
なお、裏側シート2は、表側シート1と同じ構成となっている。すなわち、裏側シート2は、表側シート1と同じ位置に、同じ形状の貫通孔1cを有している。
そのため、裏側シート2の貫通孔に関する詳細な説明は省略する。
これにより、簡易寝袋Aにおいては、放湿性が優れるものとなる。
また、貫通孔1cを設けることにより、使用時に、フィルムの擦れる音が生じることをより低減することができる。
また、貫通孔1cを設けることにより、折り畳む際には、貫通孔1cから内部の空気が抜けるため、畳み易く、よりコンパクトに折り畳むことが可能となる。
また、裏側シート2にも、貫通孔を設けることにより、使用者が寝返りをうって寝袋が捻じれたり、裏返った場合等であっても、放湿性を担保することができる。
【0034】
これらのことにより、簡易寝袋Aにおいては、表側シート1及び裏側シート2として、上述した無延伸オレフィン系フィルムに無機物の蒸着を施したものを採用し、且つ、表側シート1及び裏側シート2に貫通孔1cを設けることにより、保温性を維持しつつ、経時的に寝袋内の湿度が高くなった場合に、貫通孔から放湿することが可能となる。
その結果、簡易寝袋Aによれば、快適な睡眠を維持することができる。
【0035】
貫通孔1cの形状は、スリット状、丸状、多角形状、長丸状等、特に限定されないが、加工性の観点から、丸状であることが好ましい。
また、貫通孔1cの径は、0.5~3.5mmであることが好ましい。
貫通孔1cの径が0.5mm未満であると、径が上記範囲内にある場合と比較して、放湿性が不十分となる恐れがあり、貫通孔1cの径が3.5mmを超えると、径が上記範囲内にある場合と比較して、保温性が損なわれる恐れがある。
なお、「径」とは、貫通孔1cの断面における最大径を意味する。
ちなみに、貫通孔1c丸状である場合、径は直径を意味する。
【0036】
貫通孔1cは、複数設けられており、これらの配列は特に限定されない。例えば、ランダムに設けられていてもよく、正三角形の各頂点に配置された60°千鳥型、正方形の各頂点に配置された45°千鳥型又は並列型(90°直列)等の規則的な配列で設けられていてもよい。
なお、効率良く放湿性を発揮させる観点から、貫通孔1cは、規則的に配列されていることが好ましい。
また、この場合、貫通孔1cを設ける際に、所定の開孔率となるようにコントロールすることが容易となる。
【0037】
貫通孔1cを形成するための加工方法としては、特に限定されないが、打ち抜き加工、有孔加工、レーザー微細加工等が挙げられる。
これらの中でも、貫通孔1cは、熱針方式の有孔加工により形成されたものであることが好ましい。この場合、低コストで加工することができると共に、貫通孔1cの周縁にバリが生じることを抑制することができる。
その結果、肌触りにも優れるものとなる。
なお、オレフィン系フィルムは、比較的低融点であるため、熱針の温度も比較的低温とすることができる。
【0038】
表側シート1及び裏側シート2は、何れも、貫通孔1cが設けられた領域の有孔部12と、貫通孔1cが設けられていない領域の無孔部11とを有している。すなわち、簡易寝袋Aにおいては、保温性を維持する領域と、放湿性を発揮する領域とが分けられている。
これにより、熱が直ぐに放熱され、十分な保温できない事態が生じることを抑制できる。
【0039】
ここで、有孔部12における貫通孔1cの開孔率は0.1~16%であることが好ましい。
開孔率が0.1%未満であると、開孔率が上記範囲内にある場合と比較して、放湿性が不十分となる恐れがあり、開孔率が16%を超えると、開孔率が上記範囲内にある場合と比較して、保温性が不十分となる恐れがある。
【0040】
なお、開孔率とは、貫通孔1cの径、隣り合う貫通孔1c同士の間の距離(ピッチ)、貫通孔1cの配列等から算出される。
例えば、配列が、正三角形の各頂点に配置された60°千鳥型である場合は、その正三角形の面積に対する、その正三角形に含まれる貫通孔1cの面積の割合が開孔率となる。
また、配列が、正方形の各頂点に配置された並列型である場合は、その正方形の面積に対する、その正方形に含まれる貫通孔1cの面積の割合が開孔率となる。
【0041】
表側シート1及び裏側シート2においては、何れも、無孔部11が中央に位置し、有孔部12が無孔部11の両側に設けられている。
これにより、使用者が横たわる中央領域の保温性を担保することができ、且つ、余分な湿気のみを両側の領域から放湿させることができる。
また、積極的に、簡易寝袋Aを幅方向に回転させて、裏側シート2の有孔部を表側に露出させ、放湿性を調整することもできる。
このとき、有孔部12及び無孔部11の幅の比は、保湿性及び放湿性のバランスの観点から、有孔部12の幅を1とした場合に、両側の無孔部11の幅がそれぞれ、0.25~1であることが好ましい。
【0042】
封止部3は、簡易寝袋Aが袋状となるように、重ね合わせた表側シート1及び裏側シート2の縁部に設けられる。具体的には、封止部3は、上述したように、足側の縁部及び両側の縁部に設けられる。
封止部3の形成方法としては、特に限定されないが、開口部を容易に封止できるという観点から、ヒートシールによる溶着封止が好適に用いられる。
【0043】
図2は、第1実施形態に係る簡易寝袋のヒートシールにより形成される封止部を説明するための垂直断面図である。
図2に示すように、簡易寝袋Aにおいては、アルミナ蒸着面1aが外側、オレフィン系無延伸フィルムの露出面1bが内側となるように貫通孔1cが設けられた表側シート1が配置され、アルミナ蒸着面2aが外側、オレフィン系無延伸フィルムの露出面2bが内側となるように裏側シート2が配置される。
そして、表側シート1及び裏側シート2の縁部で、表側シート1のオレフィン系無延伸フィルムの露出面1bと、裏側シート部2のオレフィン系無延伸フィルムの露出面2bとがヒートシールにより溶着され、封止部3を形成している。
【0044】
このように、簡易寝袋Aにおいては、封止部3がヒートシールによる溶着封止で形成されているので、簡易寝袋Aの製造が極めて容易となり、安価で大量生産が可能となる。
また、仮に封止部3が、意図せずに開封してしまったとしても、無延伸オレフィン系フィルムを採用しているので、再度、適切な位置でヒートシールを行うことができる。
ちなみに、「ヒートシール」とは、フィルム同士を熱や電流、超音波、高周波等で溶着させ封止する技術である。
【0045】
図1に戻り、開口部4は、簡易寝袋Aが袋状となるように、重ね合わせた表側シート1及び裏側シート2の頭側の縁部に設けられる。すなわち、開口部4は、表側シート1及び裏側シート2の縁部が単に重なり合っており、封止されていない部分である。
【0046】
簡易寝袋Aにおいて、使用者が、開口部4から侵入し、開口部4から首を出す場合、首を出す部分以外の開口部4を閉じるため、開口部4側の表側シート1及び裏側シート2には、ボタン、フック、線ファスナー、面ファスナー等が設けられていてもよい。
【0047】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
第2実施形態に係る簡易寝袋Bは、チューブ状のシート20の頭側及び足側にある開口部の内の足側の縁部同士をヒートシールにより封止したものである。
図3に示すように、簡易寝袋Bは、表側に位置する表側シート1と、裏側に位置する裏側シート2と、足側の縁部が封止された封止部3と、頭側の縁部が封止されていない開口部4と、を有する。
すなわち、第2実施形態に係る簡易寝袋Bは、両側に封止部3を有していないこと以外は、第1実施形態に係る簡易寝袋Aと同じである。
【0048】
簡易寝袋Bは、上面視で矩形状であり、頭側の縁部が開口部4となっており、足側の縁部が封止部3となっている。
また、両側は、単に折り畳まれた状態となる。
このため、簡易寝袋Bは、袋状であり、使用者は、開口部4から、簡易寝袋B内に侵入することにより、寝袋として使用できる。
【0049】
簡易寝袋Bにおいては、チューブ状のシート20の一方側の開口部をヒートシールにより封止するだけという、極めて簡単に製造することができる。
その結果、安価で大量製造が可能となる。
また、簡易寝袋Bは、いわゆるマチ部を有さないため、嵩張らず、容易に折り畳むことが可能となっている。
すなわち、簡易寝袋Bは、不使用時には、折り畳むことを繰り返すことにより、よりコンパクトなサイズにすることができる。
【0050】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
第3実施形態に係る簡易寝袋Cは、帯状のシート30を縦方向に折り畳み、シート30が重なり合った両側の縁部同士をヒートシールにより封止したものである。
図4に示すように、簡易寝袋Cは、表側に位置する表側シート1と、裏側に位置する裏側シート22と、両側の縁部が封止された封止部3と、表側シート1の頭側の縁部が封止されていない開口部4と、を有する。
また、簡易寝袋Cは、表側シート1及び裏側シート22の長手方向の大きさが異なっており、両者を重ね合わせた場合、裏側シート22が頭側に延出するようになっている。換言すると、裏側シート22は、表側シート1より、頭側に延出した頭配置部25を有している分だけ大きくなっている。
すなわち、第2実施形態に係る簡易寝袋Bは、足側が封止部を有さず折り畳まれた状態であり、裏側シート22が、頭配置部25を有すること以外は、第1実施形態に係る簡易寝袋Aと同じである。
【0051】
簡易寝袋Cは、上面視で矩形状であり、表側シート1の頭側の縁部が開口部4となっており、両側が封止部3となっている。
また、足側は、単に折り畳まれた状態となる。
このため、簡易寝袋Cは、袋状であり、使用者は、開口部4から、簡易寝袋C内に侵入することにより、寝袋として使用できる。
【0052】
簡易寝袋Cにおいては、帯状のシート30を縦方向に折り畳み、両側をヒートシールにより封止するだけという、極めて簡単に製造することができる。
その結果、安価で大量製造が可能となる。
また、簡易寝袋Cは、いわゆるマチ部を有さないため、嵩張らず、容易に折り畳むことが可能となっている。
すなわち、簡易寝袋Cは、不使用時には、折り畳むことを繰り返すことにより、よりコンパクトなサイズにすることができる。
また、簡易寝袋Cは、頭配置部25を有するので、使用者が頭を頭配置部25に配置することで、頭が地面に直接触れることを防止することができる。
また、簡易寝袋Cは、表裏を認識し易いという利点もある。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0054】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cは、上面視で矩形状であるが、これに限定されない。丸状、楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0055】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、シート10として、無延伸オレフィン系フィルムの一方の面に無機物の蒸着が施されたものを採用しているが、蒸着は必須ではない。
また、表側シート1及び裏側シート2のいずれか一方のみに蒸着が施されていてもよい。
【0056】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、表側シート1及び裏側シート2の互いに同じ位置に、同じ形状の複数の貫通孔1cが設けられているが、表側シート1及び裏側シート2で互いに異なる位置に貫通孔が設けられていてもよい。
【0057】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、表側シート1及び裏側シート2に貫通孔1cが設けられているが、少なくとも、表側シート1に貫通孔1cが設けられていれば一定の効果を発揮することができ、裏側シート2への貫通孔1cの形成は必須ではない。
すなわち、この場合、裏側シート2は、貫通孔1cを有しない単なる無延伸オレフィン系フィルムからなるものであってもよい。
【0058】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、表側シート1及び裏側シート2に複数の貫通孔1cが等間隔で設けられているが、貫通孔がランダムに設けられていてもよい。
【0059】
第1~3本実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、無孔部11が表側シート1(及び裏側シート)の中央に位置し、有孔部12が無孔部11の両側に設けられているが、これに限定されない。
図5及び
図6は、他の実施形態に係る簡易寝袋を模式的に示す正面図である。
図5に示すように、例えば、簡易寝袋Dは、無孔部31が表側シート13(及び裏側シート)の開口部4側に位置し、有孔部32が無孔部31の開口部4とは反対側に設けられている。
この場合、簡易寝袋Dは、使用者の上半身を主に保温し、下半身側から放湿することになる。
【0060】
また、
図6に示すように、例えば、簡易寝袋Eは、無孔部41が表側シート14(及び裏側シート)の開口部4側の中央に位置し、有孔部42が無孔部41の開口部4とは反対側、及び、無孔部41の両側に設けられている。
この場合、簡易寝袋40は、使用者の上半身を主に保温し、上半身の両側及び下半身側から放湿することになる。
【0061】
第1~3実施形態に係る簡易寝袋A~Cにおいては、封止部3における封止をヒートシールにより行っているが、これに限定されず、粘着テープ等の別の封止部材を用いて封止してもよい。
また、ヒートシールを行った後、強度を更に向上させるために、粘着テープやホッチキス等で補強してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の簡易寝袋は、災害時やアウトドアにおいて、寝袋として利用することができる。
また、折り畳むことが可能であることから、被災地やキャンプ場等に、一度の搬送で大量に送ることも可能である。
また、各家庭においては、防災グッズの一つとして容易にこれに含ませることができる。
また、アウトドアに持っていく荷物としての負担を軽減することができる。
本発明の簡易寝袋は、十分に軽量化され、且つ破れ難いという利点を有する。
【符号の説明】
【0063】
1,13,14・・・表側シート
10,20,30・・・シート
11,31,41・・・無孔部
12,32,42・・・有孔部
1c・・・貫通孔
2,22・・・裏側シート
25・・・頭配置部
3・・・封止部
4・・・開口部
A,B,C,D,E・・・簡易寝袋