(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050267
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両サスペンション用弾性連結具
(51)【国際特許分類】
B60G 7/02 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B60G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157029
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA06
3D301AA17
3D301AA74
3D301AA76
3D301CA09
3D301CA29
3D301DA87
3D301DB02
3D301DB10
3D301DB13
3D301DB20
(57)【要約】
【課題】車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心を上側に設定することができる、車両サスペンション用弾性連結具を提供する。
【解決手段】車両サスペンション用連結具1Aは、車体側部材およびサスペンション側部材の一方に取付可能な下部パーツ2と、車体側部材およびサスペンション側部材の他方に取付可能な上部パーツ3と、下部パーツ2および上部パーツ3の間で下部パーツ2および上部パーツ3に連結された弾性コア4と、を備える。弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心O1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部材とサスペンション側部材とを連結する車両サスペンション用弾性連結具であって、
前記車体側部材および前記サスペンション側部材の一方に取付可能な下部パーツと、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の他方に取付可能な上部パーツと、前記下部パーツおよび前記上部パーツの間で前記下部パーツおよび前記上部パーツに連結された弾性コアと、を備えており、
前記弾性コアは、当該弾性コアの弾性中心が当該弾性コアよりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している、車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項2】
前記弾性コアは、上下方向に交互に配置された、弾性部材と剛性部材とを備えている、請求項1に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項3】
前記下部パーツは、側壁を備えており、
前記上部パーツは、前記下部パーツの前記側壁よりも幅方向内側に配置されているとともに当該下部パーツの前記側壁と隣り合う側壁を備えており、
前記弾性コアは、前記下部パーツの前記側壁および前記上部パーツの前記側壁の間で前記下部パーツおよび前記上部パーツに連結されており、
前記弾性コアは、平面視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜している、請求項1に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項4】
前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、
前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前記弾性コアの湾曲方向に沿って相対的に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、
前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられている、請求項2に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項5】
前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、
前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前記弾性コアの湾曲中心線に沿って相対的に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、
前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられている、請求項2に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項6】
前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、
前記上部パーツは、当該上部パーツが下側に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、
前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられている、請求項2に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項7】
前記上部パーツは、前記車体側部材に取付可能なパーツであり、かつ、
前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前後方向に沿って相対的に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、
前記サスペンション側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられている、請求項3に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項8】
前記上部パーツは、前記車体側部材に取付可能なパーツであり、かつ、
前記上部パーツは、前記下部パーツが下側に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、
前記サスペンション側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられている、請求項3に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【請求項9】
前記弾性コアは、当該弾性コアの内部に空間を備えている、請求項3に記載された車両サスペンション用弾性連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サスペンション用弾性連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両サスペンション用弾性連結具(以下、単に「弾性連結具」ともいう。)には、例えば、フロントサスペンションのロアアームを車体に連結するロアアームブッシュが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、他の従来の弾性連結具には、例えば、ロアサスペンションを車体に連結するコンプライアンスブッシュが知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、コンプライアンスブッシュとしては、トーコレクト機能を有するトーコレクトブッシュが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-59298号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/175748号明細書
【特許文献3】特開2000-264030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、弾性連結具の弾性中心は、例えば、乗り心地性能の向上を図ることを目的に、より上側の位置に設定することが好ましい。こうした設定によれば、例えば、制動時に生じ得るノーズダイブ(荷重が前側に移動して車両前側に沈み込むような現象)を抑制することでき、或いは、ハーシュネス(路面凹凸の衝撃音及び振動を発生する現象)の発生を抑制することができる。このため、上記従来の弾性連結具には、円筒ブッシュの内部構造を変更することによって、前記弾性中心をより上側の位置に設定させるようにしたものがある。
【0005】
しかしながら、上記従来の弾性連結具はいずれも、円筒形のブッシュである。円筒ブッシュを車内に配置する場合、当該円筒ブッシュは、別途設けれたホルダ(ブラケット)に圧入する構造のため、その占有スペースを大きく確保する必要がある。加えて、車内レイアウトの関係上、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性連結具を乗員の足元の位置に配置しなければならない場合もある。この場合、車内の足元エリアスペースを確保しようとすると、前記弾性中心をより上側の位置に設定することに制限が生じることになる。
【0006】
つまり、上記従来の弾性連結具はいずれも、前記弾性中心をより上側の位置に設定するときに、車両の空間レイアウト上の制約を受けていた。したがって、車内の乗員スペースを確保しつつ、前記弾性中心を上側に設定することができる弾性連結具が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心を上側に設定することができる、車両サスペンション用弾性連結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る、車両サスペンション用弾性連結具は、車体側部材とサスペンション側部材とを連結する車両サスペンション用連結具であって、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の一方に取付可能な下部パーツと、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の他方に取付可能な上部パーツと、前記下部パーツおよび前記上部パーツの間で前記下部パーツおよび前記上部パーツに連結された弾性コアと、を備えており、前記弾性コアは、当該弾性コアの弾性中心が当該弾性コアよりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。本発明に係る、車両サスペンション用連結具によれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心を上側に設定することができる。
【0009】
(2)上記(1)の、車両サスペンション用弾性連結具において、前記弾性コアは、上下方向に交互に配置された、弾性部材と剛性部材とを備えているものとすることができる。この場合、車両サスペンション用弾性連結具は、フロントサスペンションのコンプライアンスブッシュとしての使用に有効である。
【0010】
(3)上記(1)の、車両サスペンション用弾性連結具において、前記下部パーツは、側壁を備えており、前記上部パーツは、前記下部パーツの前記側壁よりも幅方向内側に配置されているとともに当該下部パーツの前記側壁と隣り合う側壁を備えており、前記弾性コアは、前記下部パーツの前記側壁および前記上部パーツの前記側壁の間で前記下部パーツおよび前記上部パーツに連結されており、前記弾性コアは、平面視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜しているものとすることができる。この場合、車両サスペンション用弾性連結具は、リアサスペンションのトーコレクトブッシュとしての使用に有効である。
【0011】
(4)上記(2)の、車両サスペンション用弾性連結具において、前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前記弾性コアの湾曲方向に沿って相対的に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられているものとすることが好ましい。この場合、上部パーツおよび下部パーツが弾性コアの湾曲方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。
【0012】
(5)上記(2)又は(4)の、車両サスペンション用弾性連結具は、前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前記弾性コアの湾曲中心線に沿って相対的に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられているものとすることが好ましい。この場合、上部パーツおよび下部パーツが弾性コアの湾曲中心線に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。
【0013】
(7)上記(2)、(4)又は(5)のいずれかの、車両サスペンション用弾性連結具において、前記上部パーツは、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツであり、かつ、前記上部パーツは、当該上部パーツが下側に変位したとき、車体側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、前記車体側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられているものとすることができる。この場合、上部パーツおよび下部パーツが上下方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。
【0014】
(8)上記(3)の、車両サスペンション用弾性連結具において、前記上部パーツは、前記車体側部材に取付可能なパーツであり、かつ、前記上部パーツは、前記下部パーツおよび前記上部パーツが前後方向に相対的に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、前記サスペンション側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられているものとすることができる。この場合、上部パーツおよび下部パーツが弾性コアの湾曲方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。
【0015】
(9)上記(3)又は(7)のいずれかの、車両サスペンション用弾性連結具において、前記上部パーツは、前記車体側部材に取付可能なパーツであり、かつ、前記上部パーツは、前記下部パーツが下側に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部と接触可能な接触部を備えており、さらに、前記サスペンション側に設けられた前記接触部は、前記下部パーツに設けられているものとすることが好ましい。この場合、上部パーツおよび下部パーツが上下方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。
【0016】
(10)上記(3)、(7)又は(8)のいずれかの、車両サスペンション用弾性連結具において、前記弾性コアは、当該弾性コアの内部に空間を備えているものとすることができる。この場合、弾性コアの剛性を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心を上側に設定することができる、車両サスペンション用弾性連結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1の車両サスペンション用弾性連結具の平面図である。
【
図3】
図1の車両サスペンション用弾性連結具の背面図である。
【
図4】
図1の車両サスペンション用弾性連結具の上部パーツおよび下部パーツが、弾性コアの湾曲方向に沿って互いに接近するように過度に変位した状態を、
図2のX1-X1断面で概略的に示す断面図である。
【
図5】
図1の車両サスペンション用弾性連結具の上部パーツおよび下部パーツが、弾性コアの湾曲方向に沿って互いに遠ざかるように過度に変位した状態を、
図2のX1-X1断面で概略的に示す正面図である。
【
図6】
図1の車両サスペンション用弾性連結具を採用可能な、フロントサスペンションのロアアームの一例を概略的に示す平面図である。
【
図7】制動時における車両の沈み込み状態を概略的に示す側面図である。
【
図8】
図1の車両サスペンション用弾性連結具を
図7のフロントサスペンションに採用したときの、弾性中心を概略的に示すスケルトン図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具を概略的に示す平面図である。
【
図10】
図9の車両サスペンション用弾性連結具の側面図である。
【
図11】
図9の車両サスペンション用弾性連結具をX2-X2断面で示す断面図である。
【
図12】
図11の車両サスペンション用弾性連結具の下部パーツが上部パーツに対して弾性コアの湾曲方向に沿って後方下側に変位した状態を概略的に実線で示し、さらに、下部パーツが上部パーツに対して弾性コアの湾曲方向に沿って後方上側に変位した状態を概略的に破線で示す断面図である。
【
図13】
図10の車両サスペンション用弾性連結具をX3-X3断面で概略的に示す横断面図である。
【
図14A】
図13の車両サスペンション用弾性連結具によって車体に取り付けられた左後タイヤに幅方向外側の向きの力が加えられたときの当該下部パーツの変位状態を概略的に示す断面図である。
【
図14B】
図13の車両サスペンション用弾性連結具によって車体に取り付けられた左後タイヤに幅方向内側の向きの力が加わったときの当該下部パーツの変位状態を概略的に示す断面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具を採用可能な、リアサスペンションのトレーリングアームメンバの一例を概略的に示す平面図である。
【
図16】
図15のトレーリングアームメンバを構成しているトレーリングアームの前端部を概略的に拡大して示す斜視図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具の変形例を、
図9のX2-X2断面相当で示す断面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具の、他の変形例を、
図9のX2-X2断面相当で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具について説明をする。以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」および「下」とはそれぞれ、車両に取り付けられた状態での、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」および「下」を意味するものとする。
【0020】
図1には、本発明の第1実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具1A(以下、単に「弾性連結具1A」ともいう。)が正面(前側)から示されている。弾性連結具1Aは、車体側部材(図示省略。)とサスペンション側部材(図示省略。)と、を連結することができる。ここで、前記車体側部材は、車体の全部又は一部を構成する部材である。前記サスペンション側部材は、サスペンションの一部を構成する部材である。
【0021】
本実施形態において、弾性連結具1Aは、フロントサスペンションのロアアームを車体に取り付ける。本実施形態において、弾性連結具1Aは、当該弾性連結具1Aの右側面側が車幅方向内側(以下、「幅方向内側」ともいう。)に位置するとともに当該弾性連結具1Aの左側面側が車幅方向外側(以下、「幅方向外側」ともいう。)に位置するように、前記ロアアームを車体に取り付けるものとする。本実施形態において、弾性連結具1Aは、左前タイヤのフロントサスペンションのロアアームの後端部に取り付けられるコンプライアンスブッシュとして機能する。
【0022】
弾性連結具1Aは、前記車体側部材に取付可能な下部パーツ2と、前記サスペンション側部材に取付可能な上部パーツ3と、下部パーツ2および上部パーツ3の間で下部パーツ2および上部パーツ3に連結された弾性コア4と、を備えている。弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。
【0023】
本実施形態において、下部パーツ2は、弾性コア4を連結する連結部材5と、下部パーツ2を前記車体側部材に取り付けるための取付部材6と、連結部材5と取付部材6とを連結するブラケット7とを備えている。
【0024】
本実施形態において、連結部材5は、弾性コア4の湾曲方向(本実施形態では、「弾性中心О1の周りを左右方向に回転する方向」)に延在している。本実施形態において、連結部材5は、左右方向(「幅方向」ともいう。)に延在する方向を長手方向とする一方で前後方向(
図1では、紙面垂直方向)を短手方向とする、板材によって構成されている。本実施形態において、連結部材5の左右方向は、湾曲部5aおよび平坦部5bによって構成されている。本実施形態において、湾曲部5aは、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲している。本実施形態において、湾曲部5aは、
図1に示すように正面(背面)視において、四分円で構成されている。ここで、四分円とは、円周角θが0<θ<90度の円弧をいう。本実施形態において、湾曲部5aの頂点(変曲点)は、左斜め下側(幅方向外方下側)に位置している。その一方で、平坦部5bは、左右方向に沿って延在している。平坦部5bは、湾曲部5aに連なることによって、連結部材5を構成している。
【0025】
さらに、本実施形態において、連結部材5の上面f5には、弾性コア4が連結されている。本実施形態において、連結部材5の上面f5は、湾曲面f51および平坦面f52によって構成されている。湾曲面f51は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲する、湾曲部5aの上面である。本実施形態において、湾曲面f51は、
図1に示すように正面(背面)視において、四分円の輪郭線で構成されている。本実施形態において、湾曲面f51の頂点(変曲点)もまた、左斜め下側(幅方向外方下側)に位置している。その一方で、平坦面f52もまた、左右方向に沿って延在している、平坦部5bの上面である。平坦面f52もまた、湾曲面f51に連なることによって、連結部材5の上面f5を形成している。本実施形態において、連結部材5の上面f5は、平滑な面によって形成されている。
【0026】
図2には、弾性連結具1Aが上側から示されている。本実施形態において、取付部材6は、左右方向に沿って延在する方向を長手方向とする一方で前後方向を短手方向とする、板材によって構成されている。本実施形態において、取付部材6には、当該取付部材6を貫通する取付穴A6が形成されている。本実施形態において、取付部材6は、平坦な本体部61を備えている。本実施形態において、取付穴A6は、本体部61に設けられている。本実施形態において、取付部材6には、例示的に、2つの取付穴A6が形成されている。ただし、取付穴A6は少なくとも1つであればよい。さらに、取付部材6は、取付穴A6以外の方法によって、前記車体側部材に取り付けることができる。
【0027】
図3には、弾性連結具1Aが背面(後側)から示されている。本実施形態において、取付部材6は、後述する車体側幅方向外側接触部62を備えている。本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62は、ブラケット7よりも幅方向外側に位置している。車体側幅方向外側接触部62は、上部パーツ3の上側の位置に配置されている。本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62は、下側に向かって延在している。本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62は、本体部61と一体的に連なっている。本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62は、上側に向かうにしたがって幅方向内側に近づく傾斜部によって構成されている。つまり、本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62の幅方向内側面は、上側に向かうにしたがって幅方向内側に近づく傾斜面f62によって構成されている。
【0028】
その一方で、本実施形態において、ブラケット7は、板状に形成された本体部71を備えている。本体部71は、連結部材5と取付部材6とを支持する支持壁72を備えている。本実施形態において、支持壁72の下端には、連結部材5が取り付けられた下側取付部73が設けられている。また、本実施形態において、支持壁72の上端には、取付部材6が取り付けられた上側取付部74が設けられている。
【0029】
さらに、本実施形態において、支持壁72の上半分は、後述する車体側幅方向内側接触部75を構成している。本実施形態において、車体側幅方向内側接触部75は、上側に向かうにしたがって幅方向外側に近づく傾斜部によって構成されている。つまり、本実施形態において、車体側幅方向内側接触部75の幅方向外側面は、上側に向かうにしたがって幅方向外側に近づく傾斜面f75によって構成されている。
【0030】
加えて、本実施形態において、支持壁72の下半分は、後述する車体側下側接触部76を構成している。本実施形態において、車体側下側接触部76は、幅方向外側に突出している突起部によって構成されている。本実施形態において、車体側下側接触部76は、上部パーツ3及び弾性コア4よりも後側(
図3では、紙面手前側)の位置に間隔をおいて配置されている。
【0031】
その一方で、上部パーツ3は、下部パーツ2の上側に間隔をおいて配置されている。本実施形態において、上部パーツ3は、左右方向に延在する方向を長手方向とする一方で前後方向(
図3では、紙面垂直方向)を短手方向とする、板状の部材によって構成されている。上部パーツ3は、左右方向に延在する下端部31を備えている。上部パーツ3の下端部31は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲している。本実施形態において、上部パーツ3の下端部31は、
図3に示すように背面(正面)視において、四分円で構成されている。本実施形態において、上部パーツ3の下端部31の頂点(変曲点)は、左斜め下側(幅方向外方下側)に位置している。
【0032】
さらに、本実施形態において、上部パーツ3の下端部31の下面f3(以下、「上部パーツ3の下面f3」ともいう。)は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲する湾曲面である。本実施形態において、上部パーツ3の下面f3は、平滑な面によって形成されている。本実施形態において、上部パーツ3の下面f3は、
図3に示すように背面(正面)視において、四分円の輪郭線で構成されている。本実施形態において、上部パーツ3の下面f3の頂点(変曲点)もまた、左斜め下側(幅方向外方下側)に位置している。
【0033】
加えて、本実施形態において、上部パーツ3の下端部31の幅方向内側端(
図3では、下端部31の右側端)には、上側に起立している幅方向内側端部32が連なっている。さらに、本実施形態において、上部パーツ3の下端部31の幅方向外側端(
図3では、下端部31の左側端)にもまた、上側に起立している幅方向外側端部33が連なっている。つまり、本実施形態において、上部パーツ3は、U字状に折り曲げた板状の部分を有している。これによって、本実施形態の上部パーツ3において、下端部31、幅方向内側端部32および幅方向外側端部33は、前後が開放されているとともに上側が開放された凹部を形成している。
【0034】
さらに、本実施形態において、上部パーツ3は、後述するサスペンション側幅方向内側接触部37を備えている。本実施形態において、サスペンション側幅方向内側接触部37は、上部パーツ3の幅方向内側端部32と、当該上部パーツ3の幅方向内側端部32の幅方向内側面を被覆する弾性部材41とによって構成されている。サスペンション側幅方向内側接触部37は、下部パーツ2の車体側幅方向内側接触部75に接触させることができる。弾性部材41は、下部パーツ2の車体側幅方向内側接触部75と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材41は、省略することができる。
【0035】
加えて、本実施形態において、上部パーツ3は、後述するサスペンション側幅方向外側接触部38を備えている。本実施形態において、サスペンション側幅方向外側接触部38は、上部パーツ3の幅方向内側端部32と、当該上部パーツ3の幅方向内側端部32の幅方向外側面を被覆する弾性部材42とによって構成されている。サスペンション側幅方向外側接触部38は、下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62に接触させることができる。弾性部材42は、下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材42は、省略することができる。
【0036】
加えて、本実施形態において、上部パーツ3は、前壁34を備えている。本実施形態において、前壁34は、下端部31、幅方向内側端部32および幅方向外側端部33の前端に連なっており、前記凹部の前側開口を閉じている。これによって、本実施形態において、上部パーツ3は、前側が閉じられた凹部3Cを備えている。本実施形態において、下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62は、上部パーツ3の凹部3Cに収容されている。下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62は、上部パーツ3の前壁34に対して前後方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態において、上部パーツ3の前壁34は、サスペンション側前側接触部39を構成している。本実施形態において、上部パーツ3のサスペンション側前側接触部39(前壁34)は、上部パーツ3が後側に変位したとき、下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62に接触させることができる。つまり、本実施形態において、下部パーツ2の車体側幅方向外側接触部62は、後述する車体側後側接触部を兼ねている。
【0037】
さらに、
図2を参照すれば、上部パーツ3は、前記サスペンション側部材に取り付けるための取付部35を備えている。本実施形態において、取付部35は、上部パーツ3の前壁34から前側に向かって延在する板状の部分である。本実施形態において、取付部35には、当該取付部35を貫通する取付穴A35が形成されている。本実施形態において、取付部35には、例示的に、3つの取付穴A35が形成されている。ただし、取付穴A35は少なくとも1つであればよい。さらに、取付部35は、取付穴A35以外の方法によって、前記サスペンション側部材に取り付けることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、取付部35は、当該取付部35の幅方向内側端部が幅方向内側端部32の延長部分であるとともに当該取付部35の幅方向外側端部が幅方向外側端部33の延長部分である。これによって、本実施形態において、取付部35は、前後が開放されているとともに上側が開放された凹部を形成している。ただし、取付部35は、凹部を備える取付部ではなく、平坦な取付部とすることができる。なお、
図2において、弾性部材41、42は省略されている。
【0039】
加えて、本実施形態において、上部パーツ3は、後述するサスペンション側上側接触部36を備えている。本実施形態において、サスペンション側上側接触部36は、後側に突出している突起部によって構成されている。
図3に示すように、本実施形態において、サスペンション側上側接触部36は、車体側下側接触部76よりも上側に間隔をおいて配置されている。さらに、本実施形態において、サスペンション側上側接触部36は、車体側下側接触部76を前後方向(
図3の紙面垂直方向)に横切って当該車体側下側接触部76よりも後側に延在している(
図2参照。)。
図3の位置関係からも明らかなように、本実施形態において、上部パーツ3のサスペンション側上側接触部36は、上部パーツ3が下側に変位したとき、下部パーツ2の車体側下側接触部76に接触させることができる。
【0040】
その一方で、弾性コア4は、上述のとおり、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。本実施形態において、弾性コア4は、下部パーツ2の連結部材5の湾曲部5aおよび上部パーツ3(少なくとも上部パーツ3の下端部31)に連結されている。具体的には、弾性コア4は、連結部材5の湾曲面f51と上部パーツ3の下面f3との間で連結部材5および上部パーツ3に連結されている。これによって、弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって容易に湾曲させることができる。本実施形態において、弾性コア4もまた、
図3に示すように背面(正面)視において、四分円で構成されている。本実施形態において、弾性コア4の頂点(変曲点)は、左斜め下側(幅方向外方下側)に位置している。連結部材5の湾曲面f51および上部パーツ3の下面f3は、平滑であることが好ましいが、弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲していれば、平滑でなくてもよい。
【0041】
また、本実施形態において、弾性コア4は、上下方向に交互に配置された、弾性部材4aと剛性部材4bとを備えている。本実施形態において、弾性コア4は、弾性部材4aと剛性部材4bとの積層構造体である。本実施形態において、弾性部材4aおよび剛性部材4bもまた、下側に向かって湾曲している。具体的には、弾性部材4aおよび剛性部材4bの頂点(変曲点)もまた、左斜め下側に位置している。
【0042】
本実施形態において、弾性部材4aは、ゴムによって形成されている。また、本実施形態において、剛性部材4bは、金属によって形成されている。本実施形態において、弾性コア4は、例えば、下部パーツ2の連結部材5、上部パーツ3および剛性部材4bとともに、弾性部材4aを加硫成形(又は加硫接着)することによって形成することができる。ただし、弾性部材4aは、ゴム部材に限定されるものでない。剛性部材4bもまたは、金属部材に限定されるものでない。
【0043】
従来の円筒ブッシュは、内筒と当該内筒を内側に収容した外筒とを弾性部材によって連結している。したがって、従来の円筒ブッシュによれば、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の一方を内筒に取り付ける一方で、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の他方を外筒に取り付けることになる。このため、前記弾性部材(円筒ブッシュ)の弾性中心は、実質的に内筒中心、つまり、円筒ブッシュの内部に設定されていることになり、それをさらに上側に設定するのには限界があった。加えて、車内での乗り心地等を考慮した場合、弾性中心を上側に設定することが好ましいときがある。ところが、従来の円筒ブッシュを用いる場合、弾性中心を上側に設定するのには限界があることから、例えば、乗員の足元に配置しつつ弾性中心をより上側に設定したいときには、車内の乗員スペースの確保が困難である。
【0044】
これに対し、弾性連結具1Aは、下部パーツ2と当該下部パーツ2よりも上側に配置された上部パーツ3とを弾性コア4によって連結させている。したがって、弾性連結具1Aによれば、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の一方を下部パーツ2に取り付ける一方で、前記車体側部材および前記サスペンション側部材の他方を上部パーツ3に取り付ける。さらに、弾性連結具1Aによれば、下部パーツ2および上部パーツ3を連結する弾性コア4を下側に向かって湾曲させている。これによって、弾性コア4(弾性連結具1A)の弾性中心О1は、例えば、
図3を示すように、弾性コア4よりも上側に設定されていることになる。このため、弾性連結具1Aを用いれば、例えば、円筒ブッシュと同様の設置高さを維持したまま、弾性中心О1を、円筒ブッシュより上側に設定することができる。つまり、弾性連結具1Aを用いれば、車内の足元に弾性連結具1Aを配置しつつ当該弾性連結具1Aの弾性中心О1を、円筒ブッシュより上側に設定することができる。したがって、弾性連結具1Aによれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心О1を上側に設定することができる。
【0045】
ところで、コンプライアンスブッシュは、ハーシュネス(地面凹凸の乗り越え時の衝撃音及び振動を発生する現象)を抑制する機能を有している。本実施形態において、弾性連結具1Aは、円筒ブッシュに代えて、フロントサスペンションのコンプライアンスブッシュとして、ロアアームの後端部を車体に取り付けるときに使用することができる。その一方で、前記フロントサスペンションのロアアームの後端部は、車両走行中において、左右方向(車幅方向)に振られる傾向にある。このため、弾性連結具1Aをコンプライアンスブッシュとして使用する場合、弾性コア4の剛性を高めることが好ましい。そこで、弾性連結具1Aにおいて、弾性コア4は、弾性部材4aと剛性部材4bとを備え、これらを上下方向に交互に配置した積層構造体としている。この場合、弾性コア4の剛性は、弾性部材のみで構成された弾性コアの剛性に比べて高まる。したがって、弾性連結具1Aは、フロントサスペンションのコンプライアンスブッシュとしての使用に有効である。
【0046】
また、弾性連結具1Aにおいて、上部パーツ3は、前記サスペンション側部材に取付可能なパーツである。そして、上部パーツ3は、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って(つまり、弾性中心О1の周りを周方向に)相対的に変位したとき、車体側に設けられた接触部(62,75)と接触可能な接触部(37,38)を備えている。言い換えれば、弾性連結具1Aにおいて、下部パーツ2は、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って(つまり、弾性中心О1の周りを周方向に)相対的に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部(37,38)と接触可能な接触部(62,75)を備えている。この場合、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。具体例としては、
図4および
図5で説明するとおりである。
【0047】
図4には、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って互いに接近するように過度に変位した状態が概略的に示されている。
図4に示すように、下部パーツ2(車体)と上部パーツ3(サスペンション)とが左右方向(幅方向)に過度に接近したときには、サスペンション側幅方向内側接触部37と車体側幅方向内側接触部75との接触によって、サスペンションと車体との間での過度の接近を抑制することができる。
【0048】
図5には、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って互いに遠ざかるように過度に変位した状態が概略的に示されている。
図5に示すように、下部パーツ2(車体)と上部パーツ3(サスペンション)とが左右方向(幅方向)に過度に遠ざかるときには、サスペンション側幅方向外側接触部38と車体側幅方向外側接触部62との接触によって、サスペンションと車体との間での過度の離間を抑制することができる。
【0049】
サスペンション側幅方向内側接触部37及びサスペンション側幅方向外側接触部38は、サスペンション(例えば、サスペンション側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、サスペンション側幅方向内側接触部37及びサスペンション側幅方向外側接触部38は、上部パーツ3として一体的に設けられている。この場合、弾性連結具1Aの内部で左右方向の相対的な変位を制限することできる。このため、弾性連結具1Aの周囲のサスペンションに別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合、車内構成を簡素化することができる。同様に、車体側幅方向外側接触部62及び車体側幅方向内側接触部75は、車体(例えば、車体側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、車体側幅方向外側接触部62及び車体側幅方向内側接触部75は、下部パーツ2として一体的に設けられている。この場合もまた、弾性連結具1Aの周囲の車体に別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合もまた、車内構成を簡素化することができる。
【0050】
サスペンション側前側接触部39は、サスペンション(例えば、サスペンション側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、サスペンション側前側接触部39は、上部パーツ3として一体的に設けられている。この場合、弾性連結具1Aの内部で前後方向の相対的な変位を制限することできる。このため、弾性連結具1Aの周囲のサスペンションに別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合、車内構成を簡素化することができる。同様に、車体側幅方向外側接触部(車体側後側接触部)62は、車体側(例えば、車体側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、車体側幅方向外側接触部(車体側後側接触部)62は、下部パーツ2として一体的に設けられている。この場合もまた、弾性連結具1Aの周囲の車体に別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合もまた、車内構成を簡素化することができる。
【0051】
ここで、
図6には、弾性連結具1Aを採用可能な、フロントサスペンション100Aのロアアーム101の一例が概略的に示されている。
図6中、ロアアーム101は、車両左側のみが示されている。符号102は、ストラットである。タイヤ200は、ナックル103によってロアアーム101に結合している。本実施形態において、弾性連結具1Aの上部パーツ3は、
図6に示すように、ロアアーム101の後端部に取り付けられている。
【0052】
図7には、制動時における車両の沈み込み状態が概略的に示されている。車両は一般的に、制動時にノーズダイブ(前のめり現象)を生じさせる傾向にある。ノーズダイブを生じたとき、車両は、
図7に示すように、ピッチ回転中心OPを中心にピッチ回転をすることによって前側が沈み込んだ沈み込み状態となる。車両に生じるピッチングを抑制するための手段として、フロントサスペンションのサスペンションジオメトリ(サスペンションを構成する要素の幾何学的な形状及び位置関係)を設定する方法がある。
図7を参照すれば、前記ノーズダイブは、車両のピッチ回転中心OPが車両の重心OGに近づけることによって抑制することができる。
【0053】
図8は、従来の円筒ブッシュBによって設定可能なピッチ回転中心OP0と、弾性連結具1Aによって設定可能なピッチ回転中心OP1との関係を概略的に示すスケルトン図である。
図8を参照すれば、従来の円筒ブッシュBを
図8に示す位置に配置した場合、当該円筒ブッシュBの弾性中心は、破線で示すように、当該円筒ブッシュBの内部に設定される。このため、従来の円筒ブッシュBをロアアーム101の後端部に取り付けられるコンプライアンスブッシュとして使用した場合、ピッチ回転中心OP0は、
図8に示す位置になる。これに対し、
図8に示すように、弾性連結具1Aを円筒ブッシュBと同じ位置に配置した場合、当該弾性連結具1Aの弾性中心О1は、円筒ブッシュB(弾性連結具1A)よりも上側に設定される。このため、弾性連結具1Aをロアアーム101の後端部に取り付けられるコンプライアンスブッシュとして使用した場合、ピッチ回転中心OP1は、
図8に示すように、車両の重心OGに対して、より近い位置になる。
【0054】
ところで、円筒ブッシュBを用いた場合でも、ピッチ回転中心OP0は、ロアアーム101の前側に取り付けられるストラット102の取付部P1の高さを下げることによって、車両の重心OGに近づけることができる。しかしながら、ストラット102をロアアーム101に取り付けたときの取付部P1の高さは、路面との関係から、下側に下げるのには限界がある。
【0055】
その一方で、ロアアーム101の後側に取り付けられる円筒ブッシュBの設置高さを上げることによって、当該円筒ブッシュBの設置高さを弾性中心О1の位置まで引き上げれば、円筒ブッシュBを用いることによっても、車両の重心OGに近づけることができる。しかしながら、ロアアーム101の後側は、前側乗員の足元の下の位置となるため、円筒ブッシュBの設置高さを上げた場合、快適な乗員スペースを確保することができないことがある。
【0056】
これに対し、円筒ブッシュBに代えて、弾性連結具1Aを用いれば、当該弾性連結具1Aの設置高さを円筒ブッシュBの設置高さに維持したまま、ピッチ回転中心OP1を車両の重心OGに対して、より近づけることができる。したがって、弾性連結具1Aによれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、制動時における車両の沈み込み状態を抑制することができる。つまり、弾性連結具1Aによれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、乗り心地と操縦安定性との両立を図ることができる。
【0057】
図9には、本発明の第2実施形態に係る、車両サスペンション用弾性連結具1B(以下、単に、「弾性連結具1B」ともいう。)が上側から概略的に示されている。
図10には、弾性連結具1Bが当該弾性連結具1Bの左側面から概略的に示されている。さらに、
図11は、
図9の弾性連結具1BがX2-X2断面で示されている。
【0058】
弾性連結具1Bもまた、車体側部材(図示省略。)とサスペンション側部材(図示省略。)と、を連結することができる。本実施形態において、弾性連結具1Bは、リアサスペンションのトレーリングアームを車体に取り付ける。本実施形態において、弾性連結具1Bは、当該弾性連結具1Bの右側面が車幅方向内側に位置するとともに当該弾性連結具1Bの左側面が車幅方向外側に位置するように、前記トレーリングアームを車体に取り付けるものとする。本実施形態において、弾性連結具1Bは、左後タイヤのロアサスペンションのトレーリングアームの前端部に取り付けられるトーコレクトブッシュとして機能する。
【0059】
弾性連結具1Bは、前記サスペンション側部材に取付可能な下部パーツ2と、前記車体側部材に取付可能な上部パーツ3と、下部パーツ2および上部パーツ3の間で下部パーツ2および上部パーツ3に連結された弾性コア4と、を備えている。本実施形態においても、
図11に示すように、弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。
【0060】
図11を参照すれば、本実施形態において、下部パーツ2は、当該下部パーツ2の下側部分に下端部21を含んでいる。本実施形態において、下部パーツ2は、左右方向(
図11では、紙面垂直方向)に延在する方向を端手方向とする一方で前後方向を長手方向とする、板状の部分によって構成されている。本実施形態において、下端部21は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲している。本実施形態において、下端部21は、
図11に示すように断面(側面)視において、下側に突出している。本実施形態において、下端部21の頂点(変曲点)は、下側(真下)に位置している。
【0061】
さらに、本実施形態において、下部パーツ2の上面f2には、弾性コア4が連結されている。本実施形態において、下部パーツ2の上面f2には、湾曲面f21を含んでいる。湾曲面f21は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲する、下端部21の上面である。本実施形態において、湾曲面f21は、
図11に示すように縦断面視において、下側に突出する輪郭線で構成されている。本実施形態において、湾曲面f21の頂点(変曲点)は、下側(真下)に位置している。本実施形態において、湾曲面f21は、平滑な面によって形成されている。
【0062】
図10を参照すれば、下部パーツ2は、側壁22を備えている。本実施形態において、側壁22は、下端部21に連なって当該下端部21とともに板状に構成されている。本実施形態において、下部パーツ2は、下端部21の少なくとも一部を含んだ、湾曲板状の側壁22を備えている。つまり、本実施形態において、側壁22には、下端部21の少なくとも一部が含まれている。ただし、側壁22は、下端部21を含んでいなくてもよい。さらに、本実施形態において、側壁22は、当該側壁22を左右方向(
図10において紙面垂直方向)に貫通する開口23を備えている。
【0063】
さらに、本実施形態において、下部パーツ2は、取付部分24を備えている。本実施形態において、取付部分24は、側壁22に連なる取付板25を備えている。本実施形態において、下部パーツ2には、取付板25を貫通する取付穴A25が形成されている。本実施形態において、取付部分24には、例示的に、2つの取付穴A25が形成されている。ただし、取付穴A25は少なくとも1つであればよい。さらに、取付部分24は、取付穴A25以外の方法によって、前記サスペンション側部材に取り付けることができる。
【0064】
その一方で、上部パーツ3は、下部パーツ2の上側に間隔をおいて配置されている。上部パーツ3は、その上側部分に、取付部分80を備えている。
図9を参照すれば、本実施形態において、取付部分80は、フランジとして構成されている。本実施形態において、上部パーツ3には、取付部分80を貫通する取付穴A80が形成されている。本実施形態において、取付部分80の幅方向内側部分81は、前後方向に延在している。本実施形態において、取付部分80の幅方向内側部分81には、例示的に、2つの取付穴A80が形成されている。ただし、取付穴A80は少なくとも1つであればよい。また、本実施形態において、取付部分80は、車体側下側接触部82を備えている。本実施形態において、車体側下側接触部82は、取付部分80の幅方向外側部分である。車体側下側接触部82は、幅方向に延在している。本実施形態において、車体側下側接触部82は、下部パーツ2の側壁22に形成された開口23を貫通して幅方向外側に露出させている。本実施形態において、下部パーツ2の側壁22は、サスペンション側上側接触部29を備えている。本実施形態において、サスペンション側上側接触部29は、開口23の上側に形成された側壁22の梁部である。サスペンション側上側接触部29は、前後方向に延在している。本実施形態において、車体側下側接触部82の露出部分には、例示的に、1つの取付穴A80が形成されている。ただし、取付穴A80は少なくとも1つであればよい。本実施形態において、上部パーツ3は、ボルト等の締結要素を取付穴A80に貫通させることによって、車体側部材の下面に固定することができる。ただし、取付部分80は、取付穴A80以外の方法によって、前記サスペンション側部材に取り付けることができる。
【0065】
図11を参照すれば、本実施形態において、上部パーツ3は、左右方向(
図11では、紙面垂直方向)に延在する方向を短手方向とする一方で前後方向を長手方向とする、板状の部分によって構成されている。上部パーツ3は、当該上部パーツ3の下側部分に下端部31を備えている。上部パーツ3の下端部31は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲している。本実施形態において、上部パーツ3の下端部31は、
図11に示すように断面(側面)視において、下側に突出している。本実施形態において、下端部31の頂点(変曲点)は、下側(真下)に位置している。
【0066】
さらに、本実施形態において、上部パーツ3の下面f3のうち、下端部31の下面(以下、「上部パーツ3の下面」ともいう。)は、上側に曲率中心を有し下側に向かって湾曲する湾曲面f31である。本実施形態において、湾曲面f31は、
図11に示すように断面(側面)視において、下側に突出している。本実施形態において、湾曲面f31の頂点(変曲点)は、下側(真下)に位置している。本実施形態において、上部パーツ3の下面f3は、平滑な面によって形成されている。
【0067】
その一方で、弾性コア4は、上述のとおり、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲している。本実施形態において、弾性コア4は、下部パーツ2(少なくともの下部パーツ2の下端部21)および上部パーツ3(少なくとも上部パーツ3の下端部31)に連結されている。具体的には、弾性コア4は、下部パーツ2の湾曲面f21と上部パーツ3の湾曲面f31との間で下部パーツ2および上部パーツ3に連結されている。これによって、弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって容易に湾曲させることができる。本実施形態において、弾性コア4もまた、
図11に示すように断面(側面)視において、下側に突出している。本実施形態において、弾性コア4の頂点(変曲点)は、下側(真下)に位置している。下部パーツ2の湾曲面f21および上部パーツ3の湾曲面f31は、平滑であることが好ましいが、弾性コア4は、当該弾性コア4の弾性中心О1が当該弾性コア4よりも上側に位置するように、下側に向かって湾曲していれば、平滑でなくてもよい。
【0068】
なお、本実施形態において、弾性コア4は、弾性材料のみによって形成されている。つまり、本実施形態において、弾性コア4は、剛性部材(4b)が省略された、弾性部材(4a)のみによって構成されている。
【0069】
弾性連結具1Bの具体例は、
図12で説明するとおりである。
図12の実線は、弾性連結具1Bの下部パーツ2が上部パーツ3に対して弾性コア4の湾曲方向(本実施形態では、「弾性中心О1の周りを前後方向に回転する方向」)に沿って後方下側に変位した状態を概略的に示している。さらに
図12の破線は、下部パーツ2が上部パーツ3に対して弾性コア4の湾曲方向に沿って後方上側に変位した状態を概略的に示している。
図12に示すように、弾性連結具1Bもまた、その弾性中心О1を弾性コア4よりも上側の位置として、コンプライアンスブッシュとしての機能を発揮することができる。
【0070】
図13には、弾性連結具1Bが
図10のX3-X3断面で概略的に示されている。
【0071】
下部パーツ2は、上述のとおり、側壁22を備えている。上部パーツ3は、下部パーツ2の側壁22よりも幅方向内側に配置されているとともに当該下部パーツ2の側壁22と隣り合う側壁302を備えている。弾性コア4は、下部パーツ2の側壁22および上部パーツ3の側壁301の間で下部パーツ2および上部パーツ3に連結されている。弾性コア4は、
図13に示すように断面(平面)視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜している。
【0072】
図13を参照すれば、下部パーツ2の側壁22は、前後方向に延在する方向を長手方向とする一方で上下方向(
図13では、紙面垂直方向)を端手方向とする、板状に構成されている。本実施形態において、側壁22は、
図13に示すように断面(平面)視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜している。加えて、本実施形態において、下部パーツ2は、前壁27を備えている。本実施形態において、側壁22の前端は、前壁27に連なっている。前壁27は、左右方向に沿って延在している。さらに、本実施形態において、下部パーツ2は、後壁28を備えている。本実施形態において、側壁22の後端は、後壁28に連なっている。後壁28は、左右方向に沿って延在している。本実施形態において、側壁22は、下部パーツ2の左側壁を構成している。本実施形態において、下部パーツ2の右側面には、右側壁が存在しない。つまり、本実施形態において、下部パーツ2の右側面には、開口が形成されている。したがって、本実施形態において、下部パーツ2の右側面は、前記開口を通して外界に開放されている。本実施形態において、下部パーツ2の下端部21は、側壁22、前壁27および後壁28に連なっている。これによって、下部パーツ2の下端は閉じられている。
【0073】
本実施形態において、弾性コア4は、下部パーツ2の側壁22の内面f22に連結されている。本実施形態において、側壁22の内面f22は、
図13に示すように断面(平面)視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜している輪郭線で構成されている。また、本実施形態において、側壁22の内面f22は、平滑な面によって形成されている。
【0074】
さらに、本実施形態において、下部パーツ2は、後述するサスペンション側前側接触部210を備えている。本実施形態において、サスペンション側前側接触部210は、下部パーツ2の前壁27と、当該下部パーツ2の前壁27の後面f27を被覆する弾性部材43とによって構成されている。サスペンション側前側接触部210は、後述する上部パーツ3の車体側前側接触部310に接触させることができる。弾性部材43は、上部パーツ3の車体側前側接触部310と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材43は、省略することができる。
【0075】
さらに、本実施形態において、下部パーツ2は、後述するサスペンション側後側接触部220を備えている。本実施形態において、サスペンション側後側接触部220は、下部パーツ2の後壁28と、当該下部パーツ2の後壁28の前面f28を被覆する弾性部材44とによって構成されている。サスペンション側後側接触部220は、後述する上部パーツ3の車体側後側接触部320に接触させることができる。弾性部材44は、上部パーツ3の車体側後側接触部320と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材44は、省略することができる。
【0076】
本実施形態において、上部パーツ3の側壁302もまた、前後方向に延在する方向を長手方向とする一方で上下方向(
図13では、紙面垂直方向)を短手方向とする、板状の部分に構成されている。本実施形態において、側壁302は、
図13に示すように断面(平面)視において、前側から後側に向かうにしたがって幅方向外側に向かって傾斜している。加えて、本実施形態において、上部パーツ3は、前壁303を備えている。本実施形態において、側壁302の前端は、前壁303に連なっている。前壁303は、左右方向に沿って延在している。さらに、本実施形態において、上部パーツ3は、後壁304を備えている。本実施形態において、側壁302の後端は、後壁304に連なっている。後壁304は、左右方向に沿って延在している。本実施形態において、側壁302は、上部パーツ3の左側壁を構成している。本実施形態において、上部パーツ3は、他の側壁305を備えている。つまり、本実施形態において、上部パーツ3は、
図13に示すように断面(平面)視において、中空の部材である。本実施形態において、上部パーツ3の下端部31は、前壁303、後壁304、側壁302及び305に連なっている。これによって、上部パーツ3の下端は閉じられている。
【0077】
さらに、本実施形態において、上部パーツ3は、車体側前側接触部310を備えている。本実施形態において、車体側前側接触部310は、上部パーツ3の前壁303と、当該前壁303の前面f303を被覆する弾性部材45とによって構成されている。車体側前側接触部310は、下部パーツ2のサスペンション側前側接触部210に接触させることができる。弾性部材45は、下部パーツ2のサスペンション側前側接触部210と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材45は、省略することができる。
【0078】
さらに、本実施形態において、上部パーツ3は、車体側後側接触部320を備えている。本実施形態において、車体側後側接触部320は、上部パーツ3の後壁304と、当該後壁304の前面f304を被覆する弾性部材46とによって構成されている。車体側後側接触部320は、下部パーツ2のサスペンション側後側接触部220に接触させることができる。弾性部材46は、下部パーツ2のサスペンション側後側接触部220と接触するときの緩衝部材として機能する。ただし、弾性部材46は、省略することができる。
【0079】
図14Aには、弾性連結具1Bによって車体に取り付けられた左後タイヤに幅方向外側の向きの力が加えられたときの当該下部パーツ2の変位状態が概略的に示されている。車両の前進中、当該車両を左旋回させたとき、
図14Aの白抜き矢印に示すように、左後タイヤは、路面より、車両内側から外側に向かう横力を受ける。これによって、トレーリングアームが取り付けられた下部パーツ2は、車体に取り付けられた上部パーツ3に対して、黒色矢印に示すように、前側から後側に変位する。これによって、本実施形態において、車両前進中の左旋回時において、左後タイヤは、旋回方向内側に傾斜する。この場合、車両前進中の左旋回時において、車両に生じ得るスピンを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、車両前進中の左旋回時において、トーコレクト機能(車両旋回時において、タイヤ接地点に横力が負荷されたときに当該タイヤの向きが旋回内側方向へ向くように弾性的な反力を生じさせる機能)を発揮させることができる。
【0080】
次いで、
図14Bには、弾性連結具1Bによって車体に取り付けられた左後タイヤに幅方向内側の向きの力が加わったときの当該下部パーツ2の変位状態が概略的に示されている。車両の前進中、当該車両を右旋回させたとき、
図14Bの白抜き矢印に示すように、左後タイヤは、路面より、車両外側から内側に向かう横力を受ける。これによって、トレーリングアームが取り付けられた下部パーツ2は、車体に取り付けられた上部パーツ3に対して、黒色矢印に示すように、後側から前側に変位する。これによって、本実施形態において、車両前進中の右旋回時においてもまた、左後タイヤは、旋回方向内側に傾斜する。この場合、車両前進中の右旋回時において、車両に生じ得るスピンを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、車両前進中の右旋回時においてもまた、トーコレクト機能(車両進行中の旋回時における横力に対して旋回内側にタイヤを向けることによって車両がスピンしないようにする。)を発揮させることができる。
【0081】
したがって、弾性連結具1Bは、リアサスペンションのトーコレクトブッシュとしての使用に有効である。
【0082】
また、弾性連結具1Bにおいて、上部パーツ3は、前記車体側部材に取付可能なパーツである。そして、上部パーツ3は、下部パーツ2および上部パーツ3が前後方向に相対的に変位したとき、サスペンション側に設けられた接触部(210,220)と接触可能な接触部(310,320)を備えている。言い換えれば、弾性連結具1Bにおいて、下部パーツ2は、弾性コア4が前後方向に相対的に変位したとき、車両側に設けられた接触部(310,320)と接触可能な接触部(210,220)を備えている。この場合、下部パーツ2および上部パーツ3が湾曲方向に沿って過度に相対変位したときの安全対策とすることができる。具体例としては、
図14Aおよび
図14Bで説明するとおりである。
【0083】
図14Aに示すように、下部パーツ2(サスペンション)と上部パーツ3(車体)とが前後方向前側に過度に接近するときには、サスペンション側前側接触部210と車体側前側接触部310との接触によって、前側における、サスペンションと車体との間での過度の接近を抑制することができる。これに対し、
図14Bに示すように、下部パーツ2(サスペンション)と上部パーツ3(車体)とが前後方向後側に過度に接近するときには、サスペンション側後側接触部220と車体側後側接触部320との接触によって、後側における、サスペンションと車体との間での過度の接近を抑制することができる。
【0084】
サスペンション側前側接触部210及びサスペンション側後側接触部220は、サスペンション(例えば、サスペンション側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、サスペンション側前側接触部210及びサスペンション側後側接触部220は、下部パーツ2として一体的に設けられている。この場合、弾性連結具1Bの内部で前後方向の相対的な変位を制限することできる。このため、弾性連結具1Bの周囲のサスペンションに別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合、車内構成を簡素化することができる。同様に、車体側前側接触部310及び車体側後側接触部320は、車体(例えば、車体側部材)に設けることができる。これに対し、本実施形態において、車体側前側接触部310及び車体側後側接触部320は、上部パーツ3として一体的に設けられている。この場合もまた、弾性連結具1Bの周囲の車体に別途接触部を設ける必要がない。したがって、この場合もまた、車内構成を簡素化することができる。さらに、本実施形態において、前記接触部(210,220,310,330)はそれぞれ、弾性コア4と一体的に設けられている。この場合、弾性連結具1Bの内部構成を簡素化することができる。
【0085】
図15には、弾性連結具1Bを採用可能な、リアサスペンション100Bのトレーリングアームメンバ104の一例が概略的に示されている。トレーリングアームメンバ104は、左右方向に間隔をおいて配置された2つのトレーリングアーム105と、当該2つのトレーリングアーム105を連結するトーションビーム106と、を備えている。トレーリングアーム105の後端部には、タイヤを結合させるためのナックル103が設けられている。
【0086】
本実施形態において、弾性連結具1Bの上部パーツ3は、車体側部材の下面に取り付けられている。弾性連結具1Bの上部パーツ3は、取付穴A80を通してボルト等の締結要素によって車体側部材に固定されている。その一方で、本実施形態において、弾性連結具1Bの下部パーツ2は、トレーリングアーム105の前端部に取り付けられている。
図16を参照すれば、本実施形態において、トレーリングアーム105の前端部には、取付穴A105が形成されている。弾性連結具1Bの上部パーツ3は、取付穴A25を通して送られたボルト等の締結要素によってトレーリングアーム105の取付穴A105に固定されている。本実施形態において、弾性連結具1Bは、左後タイヤ側(
図15では、紙面左側)のトレーリングアーム105の前端部に取り付けられている。なお、左後タイヤ側(
図15では、紙面左側)のトレーリングアーム105の前端部には、弾性連結具1Bと左右対称な弾性連結具(1B)が取り付けられている。
【0087】
図7において説明したノーズダイブに起因する車両の沈み込みは、リアサスペンションのサスペンションジオメトリを設定することによっても抑制することができる。具体例としては、フロントサスペンション側と同様に、トレーリングアーム105の前端部に取り付けられたトレーリングアームブッシュの弾性中心をより上側の位置に配置することが挙げられる。
【0088】
従来の円筒ブッシュBをトレーリングアーム105の前端部に取り付けた場合、フロントサスペンション側と同様に、円筒ブッシュBの設置高さを上げれば、円筒ブッシュBの弾性中心を上側の位置に配置することができる。しかしながら、トレーリングアーム105の前端部は、後側乗員の足元の下の位置となる場合、フロントサスペンション側と同様に、円筒ブッシュBの高さを上げたとき、快適な乗員スペースを確保することができないことがある。
【0089】
これに対し、円筒ブッシュBに代えて、弾性連結具1Bを用いれば、当該弾性連結具1Bの設置高さを円筒ブッシュBの設置高さに維持したまま、弾性中心O1を弾性コア4よりも上側に設定することができる。したがって、弾性連結具1Bによれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、制動時における車両の沈み込み状態を抑制することができる。つまり、弾性連結具1Bによれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、乗り心地と操縦安定性との両立を図ることができる。
【0090】
図17には、弾性連結具1Bの変形例が
図9のX2-X2断面相当で示されている。本実施形態において、弾性コア4は、当該弾性コア4の内部に空間S1を備えている。この場合、弾性コア4の内部に空間S1を形成することによって、弾性コア4の剛性を低下させることができる。したがって、弾性コア4の内部に、所望の空間S1を設ければ、弾性コア4の剛性を容易に調整することができる。これによって、例えば、上下方向のばねを所望の値に容易に調整することができる。
【0091】
図17の弾性連結具1Bでは、下部パーツ2は、弾性コア4の空間S1を下側に開放する開口A2を備えている。これによって、弾性コア4の空間S1の下側は、下部パーツ2の開口A2を通して外界に通じている。また、本実施形態において、上部パーツ3は、弾性コア4の空間S1を上側に開放する開口A3を備えている。これによって、弾性コア4の空間S1の上側は、上部パーツ3の開口A3を通して外界に通じている。これによって、上下方向のばねをより広い値の範囲に容易に調整することができる。
【0092】
図18には、弾性連結具1Bの、他の変形例が
図9のX2-X2断面相当で示されている。本実施形態において、下部パーツ2の前側には、チッピング(車両走行中の石跳ね等に起因して生じる、塗装の剥がれ落ち現象。)を防止するため、チッピング防止カバーCが設けられている。この場合、チッピングによる塗装ダメージで錆が発生することを防止することができる。チッピング防止カバーCは、例えば、弾性部材、具体的には、ゴムが挙げられる。
【0093】
上述のとおり、本発明によれば、車内の乗員スペースを確保しつつ、弾性中心を上側に設定することができる、弾性連結具1A、1Bを提供することができる。
【0094】
加えて、従来の円筒ブッシュは、内筒および外筒のそれぞれに弾性コアを結合し、当該弾性コアにトーコレクト機能を発揮させるため、例えば、車体に設けたブラケットに外筒を圧入することによって、当該車体に取り付ける必要がある。このように、円筒ブッシュは、内筒、外筒、弾性コアおよび外筒を圧入するブラケットの、少なくとも4つのパーツで構成されることから、構造が複雑になり重量・コストに課題がある。また、円筒ブッシュは圧入によって取り付けられることから、交換には特別な設備・治具が必要でメンテナンス性に課題がある。
【0095】
これに対し、弾性連結具1Aおよび1Bはそれぞれ、下部パーツ2、上部パーツ3および弾性コア4の、少なくとも3つのパーツによって構成されることから、構造が簡素になり重量・コストも軽減される。また、弾性連結具1Aおよび1Bはそれぞれ、車体側部材またはサスペンション側部材に直接取り付けられることから、交換には特別な設備・治具が不要となり、メンテナンス性にも改善される。
【0096】
上述したところは、本発明のいくつかの実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、互いに組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1A:弾性連結具(第1実施形態), 1B:弾性連結具(第1実施形態), 2:下部パーツ, 3:上部パーツ, 31:上部パーツの下端部, f3:上部パーツの下面, f31:上部パーツの下端部の下面, 32:上部パーツの幅方向内側端部(第1実施形態), 33:上部パーツの幅方向外側端部(第1実施形態), 34:上部パーツの前壁(サスペンション側前側接触部39)(第1実施形態), 35:上部パーツの取付部(第1実施形態), 37:サスペンション側幅方向内側接触部(第1実施形態), 38:サスペンション側幅方向外側接触部(第1実施形態), 4:弾性コア, 4a:弾性部材, 4b:剛性部材, 5:連結部材, 5a:湾曲部, 5b:平坦部, 6:下部パーツの取付部材(第1実施形態), 61:取付部材の本体部(第1実施形態), 62:車体側幅方向外側接触部(車体側後側接触部)(第1実施形態), f62:車体側幅方向外側接触部の幅方向内側面(傾斜面), 7:ブラケット(第1実施形態), 71:ブラケットの本体部(第1実施形態), 72:ブラケットの本体部の支持壁(第1実施形態), 73:ブラケットの本体部の下側取付部(第1実施形態), 74:ブラケットの本体部の上側取付部(第1実施形態), 75:車体側幅方向内側接触部(第1実施形態), f75:車体側幅方向内側接触部の幅方向外側面(傾斜面)(第1実施形態), 76:車体側下側接触部(第1実施形態), 21:下部パーツの下端部(第2実施形態), 22:下部パーツの側壁(第2実施形態),23:下部パーツの側壁の開口(第2実施形態), 24:下部パーツの取付部分(第2実施形態), 25:下部パーツの取付部分の取付板(第2実施形態), 29:下部パーツのサスペンション側上側接触部(第2実施形態), 80:上部パーツの取付部(第2実施形態), 81:上部パーツの取付部分の幅方向内側部分(第2実施形態), 82:上部パーツの車体側下側接触部(第2実施形態), 302:上部パーツの側壁(第2実施形態), A6,A25,A80:取付穴, О1:弾性中心(第1及び第2実施形態), OP:ピッチ回転中心, ОG:車両の重心, 100A:フロントサスペンション, 100B:リアサスペンション, 101:ロアアーム, 102:ストラット, 103:ナックル, 104;トレーリングアームメンバ, 105:トレーリングアーム, 106:トーションビーム