(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050271
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造
(51)【国際特許分類】
B60G 7/02 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B60G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157034
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301DA87
3D301DB02
3D301DB10
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減及び構造の簡素化が図られた、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造を提供する。
【解決手段】弾性連結具1Aは、第1取付部21aと回転軸21bとを備えており回転軸21bが第1取付部21aの先端に取り付けられている第1取付用部材22と、第2取付部22aとブラケット22bとを備えており当該ブラケット22bが回転軸21bを収容する凹部C2と、第1取付部21aを揺動可能に貫通させる開口A2とを備えている第2取付用部材22と、回転軸21bとブラケット22bとを連結させる第1弾性部材23と、回転軸21bの先端側部分を覆う第2弾性部材25と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体又は車輪側部材及びサスペンション側部材の一方に取り付け可能な第1取付部と、前記第1取付部に対して交差する向きに延在する回転軸とを備えており、前記回転軸が前記第1取付部の先端に取り付けられている、第1取付用部材と、
前記車体又は車輪側部材及び前記サスペンション側部材の他方に取り付け可能な第2取付部と、前記第2取付部に連なるブラケットとを備えており、当該ブラケットが、前記第1取付用部材の前記回転軸を収容する凹部と、前記第1取付用部材の前記第1取付部を揺動可能に貫通させる開口とを備えている、第2取付用部材と、
前記第1取付用部材の前記回転軸と前記第2取付用部材の前記ブラケットとを連結させる第1弾性部材と、
前記回転軸の前記第1取付部側と反対側の先端側部分を覆う第2弾性部材と、を備える、サスペンション用弾性連結具。
【請求項2】
前記第2弾性部材は、スグリを備える、請求項1に記載されたサスペンション用弾性連結具。
【請求項3】
前記第2弾性部材を前記回転軸に押圧する押圧部材をさらに備える、請求項1に記載されたサスペンション用弾性連結具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたサスペンション用弾性連結具と、前記サスペンション用弾性連結具の前記第2取付部に取り付けられた、前記車体又は車輪側部材及び前記サスペンション側部材の前記他方とを備える、サスペンション用車体取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載されたサスペンション用車体取付構造であって、
前記第2弾性部材は、前記回転軸の中心軸線の周りを周方向に延在する湾曲面を有しており、
前記車体又は車輪側部材及び前記サスペンション側部材の前記他方は、前記第2弾性部材の前記湾曲面と合わさる湾曲面を備える、サスペンション用車体取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサスペンション用弾性連結具には、車体側取付部を両端部に有したシャフトに弾性部材を介して外筒を取り付けた防振ブッシュが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、当該特許文献1には、上記防振ブッシュを用いることによって、車両のサスペンションのアッパアーム及びロアアームのそれぞれを車体に取り付けたサスペンション用車体取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の防振ブッシュは、その外筒を溶接等によってサスペンションアームに結合させる一方で、前記シャフトをボルト等の締結手段によって車体側に設けたブラケットに締結させる必要がある。そのため、上記従来の防振ブッシュは、部品点数の削減及び構造の簡素化という点において改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、部品点数の削減及び構造の簡素化が図られた、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る、サスペンション用弾性連結具は、車体又は車輪側部材及びサスペンション側部材の一方に取り付け可能な第1取付部と、前記第1取付部に対して交差する向きに延在する回転軸とを備えており、前記回転軸が前記第1取付部の先端に取り付けられている、第1取付用部材と、前記車体又は車輪側部材及び前記サスペンション側部材の他方に取り付け可能な第2取付部と、前記第2取付部に連なるブラケットとを備えており、当該ブラケットが、前記第1取付用部材の前記回転軸を収容する凹部と、前記第1取付用部材の前記第1取付部を揺動可能に貫通させる開口とを備えている、第2取付用部材と、前記第1取付用部材の前記回転軸と前記第2取付用部材の前記ブラケットとを連結させる第1弾性部材と、前記回転軸の前記第1取付部側と反対側の先端側部分を覆う第2弾性部材と、を備える。本発明に係る、サスペンション用弾性連結具によれば、部品点数の削減及び構造の簡素化が図られる。
【0007】
(2)上記(1)のサスペンション用弾性連結具において、前記第2弾性部材は、スグリを備えるものとすることができる。この場合、第1取付部の延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を調整することができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)のサスペンション用弾性連結具において、前記第2弾性部材を前記回転軸に向かって押圧する押圧部材をさらに備えるものとすることができる。この場合、第2取付用部材が取り付けられる取付面の形状によらずに、当該第2弾性部材を圧縮させた状態で、第2取付用部材を取り付けることができる。
【0009】
(4)本発明に係る、サスペンション用車体取付構造は、上記(1)~(3)のいずれか1つのサスペンション用弾性連結具と、前記サスペンション用弾性連結具が取り付けられた車体又は車輪側部材とを備える。本発明に係る、サスペンション用車体取付構造は、部品点数の削減及び構造の簡素化が図られる。
【0010】
(5)上記(4)のサスペンション用車体取付構造であって、前記第2弾性部材は、前記回転軸の中心軸線の周りを周方向に延在する湾曲面を有しており、前記車体又は車輪側部材は、前記第2弾性部材の前記湾曲面と合わさる湾曲面を備えるものとすることができる。この場合、さらに、第1取付部の延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を高めるとともに回転軸の中心軸線周りのねじり剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数の削減及び構造の簡素化が図られた、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るサスペンション用車体取付構造の初期状態を概略的に示す正面図であり、当該サスペンション用車体取付構造は、本発明の第1実施形態に係るサスペンション用弾性連結具を用いることによって、サスペンション側部材と車体側部材とを連結している。
【
図2】
図1のサスペンション用車体取付構造を示す平面図である。
【
図5】
図4のサスペンション用車体取付構造の動作状態を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るサスペンション用車体取付構造の初期状態を
図1のX1-X1断面相当で概略的に示す断面図であり、当該サスペンション用車体取付構造は、本発明の第2実施形態に係るサスペンション用弾性連結具を用いることによって、サスペンション側部材と車体側部材とを連結している。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るサスペンション用車体取付構造の初期状態を
図2のX2-X2断面相当で概略的に示す断面図であり、当該サスペンション用車体取付構造は、本発明の第3実施形態に係るサスペンション用弾性連結具を用いることによって、サスペンション側部材と車体側部材とを連結している。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るサスペンション用車体取付構造の初期状態を
図1のX1-X1断面相当で概略的に示す断面図であり、当該サスペンション用車体取付構造は、本発明の第4実施形態に係るサスペンション用弾性連結具を用いることによって、サスペンション側部材と車輪側部材とを連結している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造について説明を行う。ただし、以下の説明では、次のとおりに定義し、実質的に同一の部分は、同一の符号を用いることとする。
【0014】
「上」、「下」、「前」、「後」、「左」および「右」とは、車両に配置された状態を基準とするものとする。本実施形態において、サスペンション用弾性連結具は、フロントサスペンションの左前輪に用いられているものとする。つまり、本実施形態において、サスペンション用車体取付構造は、フロントサスペンションの左前輪に採用された構造とするものとする。また、サスペンション用弾性連結具又はサスペンション用車体取付構造の初期状態とは、車両停止時の状態をいうものとする。
【0015】
図1には、本発明の第1実施形態に係るサスペンション用車体取付構造1A(以下、単に「車体取付構造1A」ともいう。)の初期状態が正面(前方)から概略的に示されている。車体取付構造1Aは、本発明の第1実施形態に係るサスペンション用弾性連結具2A(以下、単に「弾性連結具2A」ともいう。)を備えている。車体取付構造1Aは、弾性連結具2Aを用いることによって、車体側部材3とサスペンション側部材4とを連結している。符号О1は、後述する第1取付用部材21の中心軸線(延在軸線)である。
【0016】
図2には、車体取付構造1Aが上側から示されている。ここで、車体側部材3は、車体の全部又は一部を構成する部材である。サスペンション側部材4は、サスペンションアームの全部又は一部を構成する部材である。サスペンション側部材4は、回転中心線О2の周りを周方向に回転させることができる。本実施形態において、回転中心線О2は、第1取付用部材21の中心軸線О1(以下、単に「中心軸線О1」ともいう。)に対して直交している。
【0017】
図3には、車体取付構造1Aが
図1のX1-X1断面で示されている。X1-X1断面は、車体取付構造1Aが初期状態であるときの、中心軸線О1及び回転中心線О2を含む平面である。
【0018】
弾性連結具2Aは、第1取付用部材21を備えている。第1取付用部材21は、以下のように構成されている。
【0019】
第1取付用部材21は、車体側部材3及びサスペンション側部材4の一方に取り付け可能な第1取付部21aを備えている。本実施形態において、第1取付部21aは、サスペンション側部材4に取り付けられている。本実施形態において、第1取付部21aは、サスペンション側部材4と一体的に構成されている。つまり、本実施形態において、サスペンション側部材4は、第1取付部21aとともに中心軸線О1に沿って延在している。さらに、本実施形態において、サスペンション側部材4は、フロントサスペンションのアッパアーム又はロアアームの全部又は一部を構成している。ただし、第1取付部21aは、サスペンション側部材4と別体に構成することができる。この場合もまた、サスペンション側部材4は、フロントサスペンションのアッパアーム又はロアアームの全部又は一部を構成するものとすることができる。
【0020】
加えて、第1取付用部材21は、第1取付部21aに対して交差する向きに延在する回転軸21bを備えている。本実施形態において、回転軸21bは、回転中心線О2の周りを周方向に回転することができる。本実施形態において、回転軸21bは、回転中心線О2を中心軸線とする円柱軸である。回転軸21bは、第1取付部21aの先端に取り付けられている。本実施形態において、回転軸21bは、第1取付部21aの車体側先端に取り付けられている。本実施形態において、第1取付用部材21は、第1取付部21a及び回転軸21bを一体的に構成してなるものである。
【0021】
次いで、弾性連結具2Aは、第2取付用部材22を備えている。第2取付用部材22は、以下のように構成されている。
【0022】
第2取付用部材22は、車体側部材3及びサスペンション側部材4の他方に取り付け可能な第2取付部22aを備えている。本実施形態において、第2取付部22aは、車体側部材3に取り付けられている。本実施形態において、車体側部材3は、車体の全部又は一部を構成している。本実施形態において、第2取付部22aには、当該第2取付部22aを貫通する取付穴(図示省略。)が形成されている。第2取付部22aは、ねじ、ボルト、ピン等の締結要素30を前記取付穴に通して車体側部材3に結合させることができる。ただし、第2取付用部材22は、前記取付穴以外の方法によって、車体側部材3に取り付けることができる。
【0023】
加えて、第2取付用部材22は、第2取付部22aに連なるブラケット22bを備えている。本実施形態において、ブラケット22bは、2つの第2取付部22aの間に配置されている。本実施形態において、2つの第2取付部22aは、ブラケット22bの前後方向に配置されている。本実施形態において、第2取付用部材22は、2つの第2取付部22aとブラケット22bとを一体的に構成してなるものである。本実施形態において、第2取付用部材22は、板状の部材によって構成されている。ブラケット22bは、第1取付用部材21の回転軸21bを収容する凹部C2を備えている。加えて、ブラケット22bは、第1取付用部材21の第1取付部21aを揺動可能に貫通させる開口A2を備えている。本実施形態において、開口A2は、回転中心線О2の周りを周方向に延在しているスリット孔である。これによって、第1取付用部材21は、開口A2に沿って回転中心線О2の周りを周方向に揺動させることができる。
【0024】
次いで、弾性連結具2Aは、第1弾性部材23を備えている。第1弾性部材23は、以下のように構成されている。
【0025】
第1弾性部材23は、第1取付用部材21の回転軸21bと第2取付用部材22のブラケット22bとを連結している。本実施形態において、第1弾性部材23は、第1取付用部材21の第1取付部21aを挟んだ前後方向の位置のそれぞれでブラケット22bに結合している。
【0026】
図4には、車体取付構造1Aが
図2のX2-X2断面で示されている。X2-X2断面は、車体取付構造1Aが初期状態であるときの、中心軸線О1及び上下軸線(
図2では、紙面の垂線)を含む平面である。本実施形態において、第1弾性部材23はさらに、上下方向でブラケット22bに結合している。加えて、本実施形態において、第1取付用部材21の第1取付部21aは、回転軸21bの近傍に第3弾性部材25を備えている。第3弾性部材25は、
図4に示すように、回転軸21bからブラケット22bの開口A2を通って当該開口A2を横切るように延在している。また、ブラケット22bの内面のうちの、サスペンション側内面f22bは、
図4に示すように縦断面視(本実施形態では、正面視)において、第1取付用部材21の回転軸21bの回転中心線О2と同心の、曲率半径R(回転軸21bの半径rよりも大きな曲率半径)の曲線を輪郭線とする曲面によって構成されている。
【0027】
加えて、弾性連結具2Aは、第2弾性部材24を備えている。第2弾性部材24は、以下のように構成されている。
【0028】
第2弾性部材24は、回転軸21bの第1取付部側と反対側の先端側部分を覆っている。本実施形態では、第2弾性部材24は、回転軸21bの車体側先端部分を覆っている。本実施形態において、第2弾性部材24は、回転軸21bの車体側先端面(
図4では、回転軸21bの外表面の少なくとも右側半分の外表面)f21bの全体を被覆している。また、本実施形態において、第2弾性部材24は、第1弾性部材23と一体的に構成されている。この場合、第2弾性部材24は、第1弾性部材23とともに1つの弾性部材として取り扱うことができる。ただし、第2弾性部材24は、第1弾性部材23と別体に構成することもできる。
【0029】
第2弾性部材24は、
図4に示すように、第2取付用部材22が車体側部材3に取り付けられている状態において、車体側部材3と回転軸21bとの間において、車体側部材3に対して中心軸線О1の延在方向に沿って圧縮された状態で、車体側部材3と回転軸21bとの間に配置されている。つまり、第1取付用部材21(サスペンション側部材4)は、初期状態において、第2弾性部材24の付勢力(復元力)によって、サスペンション側(本実施形態では、左側)に付勢されている。
図3を参照すれば、本実施形態において、第2弾性部材24は、弾性連結具2Aを車体側部材3に取り付ける前の状態において、第2取付用部材22の車体側取付面f22よりも外側(本実施形態では、車体側)に突出している。これによって、第2弾性部材24は、弾性連結具2Aを車体側部材3に取り付けた状態で、車体側部材3とブラケット22bとの間で圧縮された状態で配置されることになる。本実施形態において、第2弾性部材24の車体側先端面f24は、車体側部材3の取付面f3と同様に、平坦な面である。ただし、第2弾性部材24の車体側先端面f24は、後述するように、平坦な面に限定されない。
【0030】
車体取付構造1Aにおいて、第1取付用部材21が中心軸線О1に沿って車体側に押し込まれると、第1取付用部材21の回転軸21bは、第2弾性部材24を介して車体側部材3の取付面f3を押圧する。これに対し、第1取付用部材21の回転軸21bには、当該回転軸21bの押圧力に抗して、当該押圧力とは反対向きに、車体側部材3の取付面f3から第2弾性部材24を介して当該第2弾性部材24の付勢力(復元力)が付加される。これによって、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、第1取付用部材21の延在方向(中心軸線О1の延在方向)からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を高めることができる。
【0031】
また、
図5には、車体取付構造1Aの動作状態が概略的に示されている。
図5に示すように、車体取付構造1Aにおいて、車輪が持ち上がるとき(車体側が沈み込むとき)、第1取付用部材21(サスペンション側部材4)は回転中心線О2を中心に上側に向かって揺動(回転)する。このとき、第1弾性部材23及び第2弾性部材24は、第1取付用部材21の回転軸21bと第2取付用部材22のブラケット22bとの間で、回転中心線О2を中心に第1取付用部材21の揺動方向(回転方向)とは逆向きにねじれる。つまり、第1取付用部材21が上側に向かって揺動(回転)するとき、第1弾性部材23及び第2弾性部材24は、第1取付用部材21の回転軸21bと第2取付用部材22のブラケット22bとの間で、せん断変形を生じる。これによって、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、第1取付用部材21が回転中心線О2の周りを周方向に上側に向かって揺動するとき、回転軸21bの回転中心線О2周りのねじり剛性を高めることができる。
【0032】
これに対し、車体取付構造1Aにおいて、車輪が下側に下がるとき(車体が浮き上がるとき)には、第1取付用部材21(サスペンション側部材4)は回転中心線О2を中心に下側に向かって揺動(回転)する。このときも、第1弾性部材23及び第2弾性部材24は、第1取付用部材21の回転軸21bと第2取付用部材22のブラケット22bとの間で、回転中心線О2を中心に第1取付用部材21の揺動方向(回転方向)とは逆向きにねじれる。つまり、第1取付用部材21が下側に向かって揺動(回転)するときもまた、第1弾性部材23及び第2弾性部材24は、第1取付用部材21の回転軸21bと第2取付用部材22のブラケット22bとの間で、せん断変形を生じさせる。これによって、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、第1取付用部材21が回転中心線О2の周りを周方向に下側に向かって揺動するときもまた、回転軸21bの回転中心線О2周りのねじり剛性を高めることができる。
【0033】
つまり、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、従来の防振ブッシュ(円筒ブッシュ)を用いることなく、当該円筒ブッシュと同様の機能を発揮させることができる。円筒ブッシュを用いた従来の車体取付構造によれば、当該防振ブッシュの外筒を車体側部材3に取り付けるための、さらなる取付用ブラケット等が必要となる。これに対し、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、第2取付用部材22のブラケット22bは、取付面(本実施形態では、車体側部材3の取付面f3)の側が開放された凹部C2を備えており、当該凹部C2から第2弾性部材24を露出させた状態で、前記取付面(本実施形態では、車体側部材3の取付面f3)に取り付けることができる。このため、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、円筒ブッシュに比べて部品点数を削減することができるとともに、弾性連結具、つまり、車体取付構造を簡素化することができる。したがって、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、部品点数の削減及び構造の簡素化が図られる。その結果、弾性連結具2Aを備えた車体取付構造1Aによれば、重量の軽減を図ることができ、トータルコストも抑えることができる。
【0034】
ところで、弾性連結具を備えた車体取付構造において、第2弾性部材24は、スグリを備えるものとすることができる。ここで、スグリとは、第2弾性部材24の車体側先端面f24に形成された凹部又は貫通孔をいう。この場合、スグリ27の大きさ、形状等を適宜、変更すれば、第1取付部21aの延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を調整することができる。
【0035】
図6には、本発明の第2実施形態に係るサスペンション用車体取付構造1B(以下、単に「車体取付構造1B」ともいう。)の初期状態が
図1のX1-X1断面相当で概略的で示されている。車体取付構造1Bは、本発明の第2実施形態に係るサスペンション用弾性連結具2B(以下、単に「弾性連結具2B」ともいう。)を用いることによって、車体側部材3とサスペンション側部材4とを連結している。
【0036】
図6に示すように、弾性連結具2Bの第2弾性部材24は、スグリ27を備えている。第2弾性部材24にスグリ27を設ければ、第1取付用部材21の第1取付部21aの延在方向(中心軸線О1の延在方向)からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を低く抑えることができる。したがって、弾性連結具2Bを備えた車体取付構造1Bによれば、スグリ27の大きさ、形状等を適宜、変更することによって、第1取付部21aの延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を調整することができる。
【0037】
ところで、第2弾性部材24は、回転軸21bの回転中心線О2の周りを周方向に延在する湾曲面を有しているものとすることができる。そして、車体側部材3は、第2弾性部材24の前記湾曲面と合わさる湾曲面を備えるものとすることができる。この場合、さらに、第1取付部21aの延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を高めるとともに回転軸21bの回転中心線О2の周りのねじり剛性を高めることができる。
【0038】
図7には、本発明の第3実施形態に係るサスペンション用車体取付構造1C(以下、単に「車体取付構造1C」ともいう。)が
図2のX2-X2断面で概略的に示されている。車体取付構造1Cは、本発明の第3実施形態に係るサスペンション用弾性連結具2C(以下、単に「弾性連結具2C」ともいう。)を用いることによって、車体側部材3とサスペンション側部材4とを連結している。
【0039】
弾性連結具2Cにおいて、回転軸21bの車体側先端面f21bは、
図7に示すように縦断面視(正面視)において、回転軸21bの回転中心線О2の周りを周方向に延在する湾曲面によって構成されている。前記湾曲面は、車体側に突出している。そして、車体側部材3の取付面f3は、
図7に示すように縦断面視(正面視)において、第2弾性部材24の車体側先端面f24と合わさる湾曲面f31を備えている。この場合、さらに、第1取付部21aの延在方向からの入力に対するばね剛性(ばね定数)を高めるとともに回転軸21bの回転中心線О2周りのねじり剛性を高めることができる。この例では、車体側部材3の湾曲面f31は、車体側部材3の取付面f3に形成された凹部である。第2弾性部材24は、回転軸21bの車体側先端面f21bと車体側部材3の湾曲面f31との間で、他の実施形態と同様に、中心軸線О1において圧縮された状態で配置されている。この場合、第2弾性部材24は、回転軸21bの車体側先端面f21bと車体側部材3の湾曲面f31とのいずれか一方が平坦な面にある時に比べて、回転軸21bの回転中心線О2の周りで当該回転中心線О2の径方向において均等に圧縮されることによって、車体側部材3の取付面f3に沿って摩耗しにくく、さらにずれにくい。したがって、弾性連結具2Cを備えた車体取付構造1Cによれば、耐久性の向上と、車体側部材3の取付面f3に対しての(本実施形態では上下方向での)滑りの抑制を図ることができる。
【0040】
さらに、本発明に係るサスペンション用弾性連結具において、第2弾性部材24を回転軸23bに押圧する押圧部材28をさらに備えるものとすることができる。この場合、第2取付用部材22が取り付けられる取付面の形状に寄らずに、第2弾性部材23を圧縮させた状態で、第2取付用部材22を取り付けることができる。
【0041】
図8には、本発明の第4実施形態に係るサスペンション用車体取付構造1E(以下、単に「車体取付構造1E」ともいう。)の初期状態がX1-X1断面相当で概略的に示されている。車体取付構造1Eは、本発明の第4実施形態に係るサスペンション用弾性連結具2E(以下、単に「弾性連結具2E」ともいう。)を用いることによって、車輪側部材31とサスペンション側部材4とを連結している。
【0042】
図8中、符号32は、車輪側部材である。車輪側部材32は、例えば、ナックル等の、車輪に連なる部材である。
図8を参照すれば、弾性連結具2Eにおいて、ブラケット22bの内部には、押圧部材28が配置されている。第2弾性部材24は、回転軸21bと押圧部材28との間で、中心軸線О1に沿って圧縮された状態で配置されている。本実施形態において、押圧部材28は、車輪側部材32に取り付け可能な取付部28aを備えている。本実施形態において、押圧部材28は、2つの取付部28aを備えており、当該2つの取付部28aの間には、第2弾性部材24を押圧する押圧部28bが連なっている。押圧部材28は、ブラケット22bとともに、締結要素30によって車輪側部材32に取り付けられる。これによって、弾性連結具2Eを備えた車体取付構造1Eによれば、第2取付用部材22が取り付けられる取付面の形状によらずに、第2弾性部材23を圧縮させた状態で、第2取付用部材22を取り付けることができる。
【0043】
上述したところは、本発明に係る、サスペンション用弾性連結具及びサスペンション用車体取付構造のいくつかの実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、互いに組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1A:サスペンション用車体取付構造(第1実施形態), 1B:サスペンション用車体取付構造(第2実施形態), 1C:サスペンション用車体取付構造(第3実施形態), 1D:サスペンション用車体取付構造(第4実施形態), 2A:サスペンション用弾性連結具(第1実施形態), 1B:サスペンション用弾性連結具(第2実施形態), 1C:サスペンション用弾性連結具(第3実施形態), 1D:サスペンション用弾性連結具(第4実施形態), 3:車体側部材, 32:車輪側部材, 4:サスペンション側部材, 21:第1取付用部材, 21a:第1取付部, 21b:回転軸, f21b:回転軸21bの車体側先端面, 22:第2取付用部材, 22a:第2取付部, 22b:ブラケット, A2:開口, 23:第1弾性部材, 24:第2弾性部材, f24:第2弾性部材24の車体側先端面, 25:第3弾性部材, 27:スグリ, 28:押圧部材, C2:凹部, О1:第1取付用部材21の中心軸線, О2:回転軸の回転中心線