(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050272
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ダンパーロッドマウント
(51)【国際特許分類】
F16F 9/54 20060101AFI20240403BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20240403BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20240403BHJP
B60G 15/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F15/06 A
F16F1/18 Z
B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157035
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301DA51
3D301DB11
3D301DB16
3D301DB17
3J048AC03
3J048BA25
3J048BC04
3J048EA16
3J059AA01
3J059AD02
3J059AE05
3J059BA13
3J059BC02
3J059BC07
3J059DA16
3J059DA26
3J059GA03
3J069CC34
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる、ダンパーロッドマウントを提供する。
【解決手段】ダンパーロッドマウント1Aは、ダンパーロッドと車体とを連結する。マウント1Aは、金属製の板ばねとして形成されている。マウント1Aは、ダンパーロッドが取り付けられるセンタ部2と、センタ部2を取り囲むリング部3と、センタ部2とリング部3とを連結する複数のアーム部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパーロッドと車体とを連結するダンパーロッドマウントであって、
金属製の板ばねとして形成されており、かつ、前記ダンパーロッドが取り付けられるセンタ部と、前記センタ部を取り囲むリング部と、前記センタ部と前記リング部とを連結する複数のアーム部と、を備える、ダンパーロッドマウント。
【請求項2】
前記アーム部は、下向きに湾曲する湾曲部分を備えている、請求項1に記載されたダンパーロッドマウント。
【請求項3】
前記センタ部および前記アーム部の少なくともいずれか一方に、開口を備える、請求項1に記載されたダンパーロッドマウント。
【請求項4】
前記アーム部の上面及び下面の少なくともいずれか一方を覆う高粘弾性部材をさらに備える、請求項1に記載されたダンパーロッドマウント。
【請求項5】
前記高粘弾性部材を覆う可撓性部材をさらに備える、請求項4に記載されたダンパーロッドマウント。
【請求項6】
前記アーム部の上面及び下面の少なくともいずれか一方に設けられたストッパと、前記ストッパと接触可能なストッパ受け部とをさらに備える、請求項1に記載されたダンパーロッドマウント。
【請求項7】
前記複数のアーム部は、3つ又は4つのアーム部である、請求項1~6のいずれか1項に記載されたダンパーロッドマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーロッドマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダンパーロッドマウントには、低周波数での大きな振動減衰性能と高周波数での良好な微小振動の吸収性能との両立を図るために、金属ばねとゴム弾性体とを複合させた複合ばねによって構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のダンパーロッドマウントは、ダンパーロッド(ピストンロッド)の不規則な動きによる入力をゴム弾性体によって吸収する構造としている。このため、上記従来のダンパーロッドマウントには、ゴム弾性体を金属板ばねとともにダンパーロッドに取り付けるための周辺部材(例えば、インナ部材、上下プレート)が必要となる。こうしたゴム弾性体及び周辺部材は、部品点数及び組付け工数を増加させることから、コスト増加の要因となっている。
【0005】
本発明の目的は、部品点数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる、ダンパーロッドマウントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る、ダンパーロッドマウントは、ダンパーロッドと車体とを連結するダンパーロッドマウントであって、金属製の板ばねとして形成されており、かつ、前記ダンパーロッドが取り付けられるセンタ部と、前記センタ部を取り囲むリング部と、前記センタ部と前記リング部とを連結する複数のアーム部と、を備える。本発明に係る、ダンパーロッドマウントによれば、部品点数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる。
【0007】
(2)上記(1)の、ダンパーロッドマウントにおいて、前記アーム部は、下向きに湾曲する湾曲部分を備えていることが好ましい。この場合、ダンパーロッドの不規則な動きによる入力をより効果的に吸収することができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の、ダンパーロッドマウントは、前記センタ部および前記アーム部の少なくともいずれか一方に、開口を備えるものとすることができる。ダンパーロッドの不規則な動きによる入力をより効果的に吸収することができる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの、ダンパーロッドマウントは、前記アーム部の上面及び下面の少なくともいずれか一方を覆う高粘弾性部材をさらに備えるものとすることができる。この場合、ダンパーロッドマウントの共振を抑制することができる。
【0010】
(5)上記(4)の、ダンパーロッドマウントは、前記高粘弾性部材を覆う可撓性部材をさらに備えるものとすることができる。この場合、ダンパーロッドマウントの共振をさらに抑制することができる。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの、ダンパーロッドマウントは、前記アーム部の上面及び下面の少なくともいずれか一方に設けられたストッパと、前記ストッパと接触可能なストッパ受け部とをさらに備えるものとすることができる。この場合、上下方向に生じ得る、ダンパーロッドマウントの過大なストロークを抑制することができる。
【0012】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つの、ダンパーロッドマウントにおいて、前記複数のアーム部は、3つ又は4つのアーム部であるものとすることができる。この場合、比較的シンプルな構成で、部品点数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる、ダンパーロッドマウントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、ダンパーロッドマウントを概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1のダンパーロッドマウントとダンパーロッドとの締結状態を
図1のX1-X1断面で概略的に示す断面図である。
【
図3A】
図1のダンパーロッドマウントのバンプストローク時の状態を
図1のX1-X1断面で概略的に示す断面図である。
【
図3B】
図1のダンパーロッドマウントのリバウンドストローク時の状態を
図1のX1-X1断面で概略的に示す断面図である。
【
図3C】
図1のダンパーロッドマウントにおいて、ダンパーロッドが不規則に動いた時の状態を
図1のX1-X1断面で概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る、ダンパーロッドマウントを概略的に示す平面図である。
【
図5】
図4のダンパーロッドマウントを
図4のX2-X2断面で概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る、ダンパーロッドマウントを概略的に示す平面図である。
【
図7】
図6のダンパーロッドマウントを
図6のX3-X3断面で概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る、ダンパーロッドマウントを概略的に示す断面図である。
【
図9A】
図8のダンパーロッドマウントのバンプストローク時の状態を概略的に示す断面図である。
【
図9B】
図1のダンパーロッドマウントのリバウンドストローク時の状態を概略的に示す断面図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係る、ダンパーロッドマウントとダンパーロッドとの締結状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る、ダンパーロッドマウントについて説明を行う。ただし、以下の説明では、次のとおりに定義し、実質的に同一の部分は、同一の符号を用いることとする。
【0016】
「上」、「下」、「前」、「後」、「左」および「右」とは、ダンパーロッドマウントが車両に配置された状態を基準とするものとする。また、符号О1は、ダンパーロッドマウントの中心軸線である。ダンパーロッドマウントの中心軸線О1(以下、単に「中心軸線О1」ともいう。)の延在方向は、軸線方向ともいい、上下方向に一致する場合を含む。また、中心軸線О1の延在方向に対して直交する方向は、径方向ともいう。さらに、径方向のうち、中心軸線О1に近い側を径方向内側といい、反対に中心軸線О1に遠い側を径方向外側ともいう。また、ダンパーロッドマウントの初期状態とは、車両停止時のダンパーロッドマウントの状態をいうものとする。
【0017】
図1には、本発明の第1実施形態に係るダンパーロッドマウント1Aが上側から示されている。
図2には、
図1のX1-X1断面が示されている。X1-X1断面は、中心軸線О1を含むとともに後述の2つのアーム部4を通る平面である。
【0018】
ダンパーロッドマウント1A(以下、単に「マウント1A」ともいう。)は、ダンパーロッドと車体(図示省略。)とを連結する。マウント1Aは、
図2に示すように、金属製の板ばねとして形成されている。
【0019】
本実施形態において、マウント1Aは、ばね鋼によって形成されている。ばね鋼としては、例えば、JIS G 4801に規定するばね鋼材(SUP材)を用いることができる。ただし、他のばね鋼材、例えば、JIS G 4313に規定するSUSばね材を用いることもできる。つまり、本実施形態において、マウント1Aは、板ばねとして機能させることができる金属によって形成されているものであれば、その材質は限定されない。
【0020】
図1を参照すれば、マウント1Aは、ダンパーロッド100が取り付けられるセンタ部2を備えている。本実施形態において、センタ部2には、ダンパーロッドを取り付けるための取付穴A2が形成されている。
図2に示すように、本実施形態において、取付穴A2は、センタ部2を軸線方向に貫通する貫通孔である。本実施形態において、ダンパーロッド100は、その先端ピン101を取付穴A2に貫通させ、当該先端ピン101にナット102を締めることによって、マウント1Aに対して固定される。また本実施形態において、センタ部2(取付穴A2)の中心軸線は、中心軸線О1と一致している。
【0021】
加えて、
図1を参照すれば、マウント1Aは、センタ部2を取り囲むリング部3を備えている。センタ部2及びリング部3は、径方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態において、リング部3の中心軸線もまた、中心軸線О1と一致している。本実施形態において、リング部3には、前記車体を取り付けるための取付穴A3が形成されている。
図2を参照すれば、本実施形態において、取付穴A3もまた、リング部3を軸線方向に貫通する貫通孔である。本実施形態において、マウント1Aは、例えば、取付穴A3にボルト等の締結要素を貫通させ、当該締結要素によって前記車体に固定される。本実施形態において、リング部3には、
図1に示すように、例示的に3つの取付穴A3が設けられている。本実施形態において、リング部3の径方向外側縁は、タンパースプリング(図示省略)を取り囲むサイドウォール部5に連なっている。サイドウォール部5は、リング部3の径方向外側縁とともに、中心軸線О1の周りを周方向に環状に延在している。
図2を参照すれば、本実施形態において、サイドウォール部5は、リング部3の径方向外側縁から下側に延在している。
【0022】
さらに、
図1を参照すれば、マウント1Aは、センタ部2とリング部3とを連結する複数のアーム部4を備えている。アーム部4はそれぞれ、センタ部2から径方向に放射状に延在している。中心軸線О1の周方向で隣り合うアーム部4の間には、センタ部2とリング部3とともに区画された隙間Cが形成されている。
図2を参照すれば、本実施形態において、センタ部2およびリング部3は、径方向に沿って延在する平坦(水平)な部分である。これに対し、本実施形態において、アーム部4は、マウント1Aの初期状態において、リング部3からセンタ部2に向かうにしたがって下側に傾斜するように延在している。言い換えれば、本実施形態において、マウント1Aは、水平なリング部3と、当該リング部3の径方向内側の位置であるとともに当該リング部3よりも下側の位置に配置された水平なセンタ部2とを、複数のアーム部4によって連結した、下側に向かうにしたがって中心軸線О1に向かって傾斜する先細りの外形形状を有している。つまり、マウント1Aは、金属製の板ばねとして形成されており、かつ、ダンパーロッド100が取り付けられるセンタ部2と、センタ部2を取り囲むリング部3と、センタ部2とリング部3とを連結する複数のアーム部4と、によって構成されている。
【0023】
加えて、本実施形態において、アーム部4は、
図2に示すように、下向きに湾曲する湾曲部分4aを備えている。
図2を参照すれば、本実施形態において、湾曲部分4aは、アーム部4の一部を下側に折り曲げた後に上側に折り返した逆U字形の断面形状を有している。さらに、本実施形態において、湾曲部分4aは、
図1に示すように平面視において、アーム部4の延在方向に対して直交する方向に延在している。本実施形態において、アーム部4は、径方向に間隔をおいて、複数の湾曲部分4aが配置されている。具体的には、アーム部4は、2つの湾曲部分4aを備えている。本実施形態において、2つの湾曲部分4aの一方は、リング部3よりもセンタ部2により近い位置に配置されている。これに対し、本実施形態において、2つの湾曲部分4aの他方は、センタ部2よりもリング部3により近い位置に配置されている。
【0024】
図3Aには、マウント1Aのバンプストローク時の状態がX1-X1断面で概略的に示されている。
図3Aに示すように、マウント1Aによれば、車輪が車体に近づいたとき、アーム部4が変形することによって、ダンパーロッドの上向きの動きによる入力を吸収することができる。
【0025】
また、
図3Bには、マウント1Aのリバウンドストローク時の状態がX1-X1断面で概略的に示されている。
図3Bに示すように、マウント1Bによれば、車輪が車体から離れるときもまた、アーム部4が変形することによって、ダンパーロッドの下向きの動きによる入力を吸収することができる。
【0026】
さらに、
図3Cには、ダンパーロッドが不規則に動いた時の状態が
図1のX1-X1断面で概略的に示されている。
図3Cに示すように、マウント1Aによれば、ダンパーロッド100が不規則に動いたときもまた、アーム部4が変形することによって、その動きに伴う力の入力を吸収することができる。
図3Cでは、具体的には、中心軸線О1を挟んで対向するアーム部4がそれぞれ、逆相で変位することで、ダンパーロッド100のこじりに伴う力の入力が吸収されている。ここで、ダンパーロッド100のこじりとは、ダンパーロッド100の中心軸線О100がマウント1Aの中心軸線О1に対して傾いた状態で、ダンパーロッド100がマウント1Aの中心軸線О1の周りを回転することをいう。
【0027】
加えて、マウント1Aは、単一の板ばねによって構成されている。このため、金属ばねとゴム弾性体とを複合させた従来のダンパーロッドマウントに比べて、ダンパーロッドマウントの部品点数及び組付け工数を削減することができる。
【0028】
したがって、マウント1Aによれば、部品点数及び組付け工数を削減するとともにダンパーロッドの不規則な動きによる入力を吸収することができる。
【0029】
特に、本実施形態において、アーム部4は、下向きに湾曲する湾曲部分4aを備えている。具体的には、湾曲部分4aは、下向きに突出した逆U字形状をなしている。この場合、アーム部4の径方向長さは、当該湾曲部分4aが径方向に開閉(伸縮)することによって、より大きく変化させることができる。つまり、本実施形態において、マウント1Aは、センタ部2とリング部3との間で、湾曲部分4aの分だけ、より大きく変化させることができる。したがって、この場合、ダンパーロッド100からの入力、特に、ダンパーロッド100の不規則な動きによる入力をより効果的に吸収することができる。特に、本実施形態において、2つの湾曲部分4aの一方は、センタ部2に近い位置に配置され、かつ、2つの湾曲部分4aの他方は、リング部3に近い位置に配置されている。この場合、センタ部2及びアーム部4の連結部分並びにリング部3及びアーム部4の連結部分に生じ得る応力集中を緩和させることができる。また、本実施形態において、アーム部4は、複数の湾曲部分4aを備えている。湾曲部分4aの個数を増減させれば、アーム部4の径方向長さの変化量を調整することができる。ただし、湾曲部分4aは少なくとも1つであればよい。
【0030】
ところで、アーム部4は、4つとすることができる。
図4には、本発明の第2実施形態に係る、ダンパーロッドマウント1B(以下、「マウント1B」ともいう。)が上側から概略的に示されている。
図5には、マウント1Bが
図4のX2-X2断面で概略的に示されている。第1実施形態に係るマウント1Aは、3つのアーム部4を備えている。これに対し、本実施形態に係る、マウント1Bは、4つのアーム部4を備えている。マウント1Bもまた、マウント1Аと同様の機能を発揮させることができる。つまり、マウント1A及びマウント1Bの場合、比較的シンプルな構成で、部品点数を削減するとともにダンパーロッド100の不規則な動きによる入力を吸収することができる。ただし、アーム部4は、2つ以上設けることができる。
【0031】
ところで、本発明によれば、アーム部4は、湾曲部分4aに代えて、センタ部2およびアーム部4の少なくともいずれか一方に設けた開口を備えるものとすることができる。この場合も、アーム部4に湾曲部分4aを設けた場合と同様に、ダンパーロッド100からの入力、特に、ダンパーロッド100の不規則な動きによる入力をより効果的に吸収することができる。
【0032】
図6には、本発明の第3実施形態に係る、ダンパーロッドマウント1C(以下、「マウント1C」ともいう。)が上側から概略的に示されている。
図7は、マウント1Cとダンパーロッド100との締結状態を
図6のX3-X3断面で概略的に示されている。
【0033】
マウント1Cは、センタ部2およびアーム部4のそれぞれに、取付穴A2及びA3と異なる位置に開口(すぐり)21,41を備えている。
図6を参照すれば、本実施形態において、センタ部2は、中心軸線О1の周りを周方向に互いに隣り合うアーム部4の間に形成された隙間Cに突出する突出部分22を備えている。本実施形態において、開口21は、突出部分22に形成されている。本実施形態において、開口21は、
図6に示すように平面視において、アーム部4の径方向内側を周方向に横切って当該アーム部4の周方向両側に位置する突出部分22に延在している。マウント1Cは、例示的に4つの開口21を備えている。次いで、
図6を参照すれば、本実施形態において、開口41は、アーム部4に形成されている。本実施形態において、開口21は、
図6に示すように、アーム部4の径方向外側に配置されている。
図7に示すように、開口21は、突出部分22を軸線方向に貫通する貫通孔である。そして、開口41もまた、アーム部4を軸線方向に貫通する貫通孔である。
【0034】
マウント1Cの場合も、センタ部2の突出部分22とアーム部4とのそれぞれに、開口21,41が設けられた分だけ、センタ部2とリング部3との間をより大きく変化させることができる。したがって、この場合もまた、アーム部4に湾曲部分4aを設けたときと同様に、ダンパーロッド100からの入力、特に、ダンパーロッド100の不規則な動きによる入力をより効果的に吸収することができる。
【0035】
ところで、金属ばねは、振動に対する減衰が小さい。このため、本発明にように、ダンパーロッドマウントが金属ばねのみによって形成されている場合、当該ダンパーロッドマウントに振動が入力されたとき、当該ダンパーロッドマウントが入力された振動に対して共振し、その結果、ノイズを発生させることが懸念される。
【0036】
これに対し、本発明に係る、ダンパーロッドマウントは、アーム部4の上面及び下面の少なくともいずれか一方を覆う高粘弾性部材6をさらに備えるものとすることができる。本発明において、高粘弾性部材6は、アーム部4の上面及び下面の少なくともいずれか一方の全体又は一部を覆っていればよい。この場合、ダンパーロッドマウントの共振を抑制することができる。高粘弾性部材6は、本発明に係るダンパーロッドマウントよりも高い粘弾性を有する材料によって形成された部材である。高粘弾性材料としては、例えば、粘弾性特性として、損失正接(損失係数)tan δが0.2以上の材料、具体例としては、ブチルゴム(IIR)が挙げられる。
【0037】
さらに、本発明に係る、ダンパーロッドマウントは、高粘弾性部材6を覆う可撓性部材7をさらに備えるものとすることができる。本発明において、可撓性部材7は、高粘弾性部材6の全体又は一部を覆っていればよい。この場合、ダンパーロッドマウントの共振をさらに抑制することができる。可撓性部材7は、本発明に係るダンパーロッドマウントを構成する金属ばね以上の、高い屈曲性を有する材料によって形成された部材である。高屈曲性材料としては、例えば、粘弾性特性として、損失正接(損失係数)tan δが0.2以上の材料、具体例としては、ブチルゴム(IIR)が挙げられる。
【0038】
図8には、本発明の第4実施形態に係る、ダンパーロッドマウント1D(以下、「マウント1D」ともいう。)が中心軸線О1を含む断面で概略的に示されている。
【0039】
マウント1Dは、例示的に、マウント1Bをベースとして備えている。加えて、マウント1Dにおいて、マウント1Bの上面は高粘弾性部材6によって覆われている。本実施形態において、高粘弾性部材6は、アーム部4の上面の全体を覆っている。高粘弾性部材6は、例えば、接着によって、アーム部4の上面に結合されている。この場合、高粘弾性部材6は、アーム部4の動きに追従して変形する。これによって、マウント1Bの振動に対する減衰は、マウント1Bのみの場合に比べて大きくなる。したがって、マウント1Bを高粘弾性部材6によって被覆すれば、マウント1Bの共振を抑制することができる。
【0040】
さらに、本実施形態において、マウント1Bの上側には、可撓性部材7が配置されている。本実施形態において、可撓性部材7は、
図8に示すように、径方向に延在するプレート部材である。本実施形態において、可撓性部材7は、当該可撓性部材7とアーム部4との間に、高粘弾性部材6が配置される隙間を形成している。本実施形態において、可撓性部材7の径方向外側部分は、リング部3に結合されている。その一方で、前記隙間は、可撓性部材7の径方向内側部分とアーム部4との間に形成されている。本実施形態において、高粘弾性部材6は、例えば、接着によって、アーム部4の上面と、可撓性部材7の下面とのそれぞれに結合されている。本実施形態において、可撓性部材7は、高粘弾性部材6の上面の一部を覆っている。具体的には、可撓性部材7は、リング部3の側からセンタ部3側の湾曲部分4aを除いたアーム部4を覆っている。
【0041】
図9Aには、マウント1Dのバンプストローク時の状態がX2-X2断面相当の断面で概略的に示されている。また、
図9Bには、マウント1Dのリバウンドストローク時の状態がX2-X2断面相当の断面で概略的に示されている。
図9A及び
図9Bに示すように、マウント1Dがストロークするとき、高粘弾性部材6は、可撓性部材7とともにアーム部4に追従しながら屈曲することによって、アーム部4と可撓性部材7との間で径方向に沿ってせん断変形する。これによって、マウント1Bの振動に対する減衰は、マウント1Bのみの場合に比べてより大きくなる。したがって、マウント1Dによれば、ダンパーロッドマウントの共振をさらに抑制することができる。なお、マウント1Dのベースは、マウント1Bに代えて、マウント1A、マウント1C等の、金属ばねのみからなる、本発明に係るダンパーロッドマウントに置き換えることができる。
【0042】
さらに、本発明にかかるダンパーロッドマウントは、アーム部4の上面及び下面の少なくともいずれか一方に設けられたストッパ8と、ストッパ8と接触可能なストッパ受け部9とをさらに備えるものとすることができる。この場合、上下方向に生じ得る、ダンパーロッドマウントの過大なストロークを抑制することができる。
【0043】
図10には、本発明の第5実施形態に係る、ダンパーロッドマウント1Eとダンパーロッド100との締結状態が中心軸線О1を含む断面で概略的に示されている。
【0044】
マウント1Eは、例えば、サイドウォール部5を取り除いたマウント1Bをベースとしている。本実施形態において、ストッパ8は、アーム部4の径方向内側に設けられている。ストッパ8は、例えば、ゴム、樹脂等の弾性部材によって構成されている。また、本実施形態において、ストッパ受け部9は、例えば、金属等によって形成されている。さらに、本実施形態において、ストッパ受け部9は、リング部3に結合されている。
【0045】
詳細には、
図10中、符号8aは、アーム部4の上面に設けられた上側ストッパである。上側ストッパ8aは、アーム部4の上面から上側に突出している。また、符号9aは、上側ストッパ8aの上側に配置された上側ストッパ受け部である。上側ストッパ8aは、例えば、バンプストロークが過大な場合、上側ストッパ受け部9aと接触することによって、過大なバンプストロークを抑制することができる。
【0046】
また、
図10中、符号8bは、アーム部4の下面に設けられた下側ストッパである。下側ストッパ8bは、アーム部4の下面から下側に突出している。また、符号9bは、下側ストッパ8bの下側に配置された下側ストッパ受け部である。下側ストッパ8bは、例えば、リバウンドストロークが過大な場合、下側ストッパ受け部9bと接触することによって、過大なリバウンドストロークを抑制することができる。
【0047】
したがって、マウント1Eによれば、上下方向に生じ得る、当該マウント1Eの過大なストロークを抑制することができる。
【0048】
上述したところは、ダンパーロッドに取り付け可能なセンタ部と、車体に取り付け可能なリング部とを、複数のアーム部によって連結した、本発明にダンパーロッドマウントのいくつかの実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、互いに組み合わせて使用することができる。本実施形態において、アーム部4は、湾曲部分4a又は開口21及び41を用いることによって、センタ部2及びリング部3の間で動きやすくしている。ただし、アーム部4は、アーム部4の弾性率を局所的に低下させることによって、例えば、アーム部4の厚さを局所的に薄くする等によって、センタ部2及びリング部3の間で動きやすくすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1A:ダンパーロッドマウント(第1実施形態), 1B:ダンパーロッドマウント(第2実施形態), 1C:ダンパーロッドマウント(第3実施形態), 1D:ダンパーロッドマウント(第4実施形態), 1E:ダンパーロッドマウント(第5実施形態), 2:センタ部, 21:開口, 22:センタ部の突出部分, 3:リング部, 4:アーム部, 4a:湾曲部分, 41:開口, 5:側壁部, 6:高粘弾性部材, 7:可撓性部材, 8:ストッパ, 8a:上側ストッパ, 8b:下側ストッパ, 9:ストッパ受け部, 9a:上側ストッパ受け部, 9b:下側ストッパ受け部